JP2007095776A - 面発光レーザ素子およびレーザアレイ - Google Patents

面発光レーザ素子およびレーザアレイ Download PDF

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Abstract

【課題】転位の増殖を抑制して偶発故障の故障発生率を低減し、一層の高信頼化を実現できること。
【解決手段】面発光レーザ素子1は、p−GaAsである基板2上に、順に、下部多層膜反射鏡3と、下部クラッド層4と、多重量子井戸構造の活性層5と、上部クラッド層6と、上部多層膜反射鏡7とが積層された構造を有する。かかる積層構造において、下部多層膜反射鏡3の上端部から上の積層部は、切頭円錐状のメサポストMP1として形成されている。活性層5の中央部の発光領域を包囲する輪帯領域5aは、発光領域からの自然放出光の吸収に基づくキャリアの発生または伝播を抑制するキャリア抑制構造として形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、基板に対して垂直方向にレーザ光を射出する面発光レーザ素子およびレーザアレイに関するものである。
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser。以下、面発光レーザ素子と称す。)は、その名の示す通り、光の共振する方向が基板面に対して垂直であり、基板面に対して垂直方向にレーザ光が射出される構造を有する。このため、面発光レーザ素子は、従来の端面発光型レーザ素子と比較して、素子の2次元配列を容易に形成できる。また、面発光レーザ素子は、端面発光型レーザ素子と異なり、ミラーを設けるために劈開する必要がないことや、活性層の体積が格段に小さいため極低閾値でレーザ発振が可能であり、消費電力が小さいこと等の利点を有する(たとえば、特許文献1参照)。
図7は、従来の面発光レーザ素子の構成を例示する斜視断面図である。図7に示すように、面発光レーザ素子41は、p−GaAsである基板2上に、順に、下部多層膜反射鏡43と、下部クラッド層44と、多重量子井戸構造の活性層45と、上部クラッド層46と、上部多層膜反射鏡47とが積層された構造のメサポストMP4を有する。
下部多層膜反射鏡43は、例えばp−Al0.2Ga0.8As/p−Al0.9Ga0.1Asを1ペアとして35ペア積層した構造を有し、上部多層膜反射鏡47は、例えばn−Al0.2Ga0.8As/n−Al0.9Ga0.1Asを1ペアとして25ペア積層した構造を有する。なお、下部多層膜反射鏡43および上部多層膜反射鏡47を形成する各半導体層の厚さは、λ/4n(λ:発振波長、n:屈折率)である。また、下部多層膜反射鏡43の上端層には、メサポストMP4の中軸上に位置し電流注入領域として機能する開口部43aを有する電流狭窄層としての選択酸化層43bが形成されている。この選択酸化層43bは、レーザ光を閉じ込める光閉じ込め層としても機能する。
上部多層膜反射鏡47の上部には、この上部多層膜反射鏡47と電気的接続を果たすリング状のn側電極9が形成され、n側電極9に対向する基板2の裏面にはp側電極10が形成されている。n側電極9は、メサポストMP4の上面部中央に開口部を有し、この開口部は、活性層45で発生したレーザ光LOを外部に出力するための射出窓として機能する。また、メサポストMP4の周囲にはポリイミド層8が配置されており、n側電極9は、上部多層膜反射鏡47の上部からポリイミド層8の上面を覆うように形成されている。
かかる構成によって面発光レーザ素子41は、n側電極9とp側電極10との間に適当な電圧が印加された場合、n側電極9の中央開口部からメサポストMP4の上方に向けて、例えば波長850nmのレーザ光LOを射出する。
特開2003−347670号公報
ところで、面発光レーザ素子は、低閾値電流、高効率、低消費電力、高速動作等の優れた性能を有することから発振波長850nm帯を中心に光通信用デバイスとして利用が拡大している。かかる面発光レーザ素子では、磨耗故障に関して、室温で数百万時間を越える長寿命を有することが報告される一方、偶発故障に関して、他の通信用光デバイスと比較して故障発生率がppmオーダーと大きいことが問題とされている。発振波長850nm帯の面発光レーザ素子は、年間600万個レベルの膨大な数の利用が実現されているため、故障発生率の一層の低減が要求される。
本発明者らは、かかる問題点を解決するべく調査および研究を重ねた結果、面発光レーザ素子の偶発故障は、メサポスト側面部に生じた転位に起因して発生しており、メサポスト側面部から転位が拡大および増殖して活性層内の発光領域(電流注入領域)に到達した途端に故障するモードであるという事実を見出した。
図8および図9は、図7に示した面発光レーザ素子41のメサポストMP4内の活性層45に生じた転位を説明する模式図であって、活性層45をレーザ光LOの射出方向から見た断面図として示している。面発光レーザ素子の偶発故障のモードでは、まず、図8に示すように、活性層45の周縁部に複数の転位DLが生じる。これらの転位DLは、メサポストMP4を形成するためのエッチング工程で与えられるダメージや、その後の酸化工程で形成される酸化部分(特に多層膜反射鏡内の高アルミ層であるAl0.9Ga0.1As層の酸化部分)によって与えられるダメージ(歪、応力)によって発生するものと考えられる。
本発明者らは、かかる転位DLが、活性層45内の発光領域から導波した自然放出光の吸収に基づいて生成されるキャリアに依存して拡大し、増殖するという事実を見出した。そして、図9に示すように、活性層45の周縁部から増殖した転位DLが発光領域EAに到達した場合に、偶発故障を誘発するという事実を見出した。
通常、面発光レーザ素子は、活性層の近傍に、レーザ光を閉じ込める光閉じ込め層を備えており、この光閉じ込め層が有する開口部を活性層上に投影した開口投影領域の内部にある活性層の部分的な領域が、発光領域とされている。すなわち、図9に示す発光領域EAは、開口部43aを活性層45上に投影した開口投影領域に相当する。ただし、厳密には、開口投影領域の外周から外側に3μm程度の領域まで光の染み出しがあり、この染み出した領域までが発光領域と考えられる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、転位の増殖を抑制して偶発故障の故障発生率を低減し、一層の高信頼化を実現できる面発光レーザ素子およびレーザアレイを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1にかかる面発光レーザ素子は、半導体基板上に積層された活性層を備え、前記半導体基板に対して垂直方向にレーザ光を射出する面発光レーザ素子において、前記活性層は、該活性層中の発光領域を包囲する外周領域内に、前記発光領域を取り囲み、該発光領域から放出される自然放出光の吸収に基づくキャリアを抑制するキャリア抑制構造を有することを特徴とする。
また、請求項2にかかる面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記キャリア抑制構造は、前記活性層を混晶化して形成され、前記自然放出光に対する非吸収性を有することを特徴とする。
また、請求項3にかかる面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記キャリア抑制構造は、前記活性層を高抵抗化して形成され、前記キャリアに対する吸収性を有することを特徴とする。
また、請求項4にかかる面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記キャリア抑制構造は、前記活性層の積層面に対する屈曲部を有することを特徴とする。
また、請求項5にかかる面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記半導体基板と前記活性層との間に積層される下部反射層、または前記活性層の上部に積層される上部反射層の内部に、外周から外側が酸化された非酸化開口部を有する電流狭窄層を備えたことを特徴とする。
また、請求項6にかかる面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記活性層の近傍に、イオン注入によって形成された電流狭窄構造を備えたことを特徴とする。
また、請求項7にかかるレーザアレイは、請求項1〜6のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子を同一基板上に複数備え、該面発光レーザ素子を1次元または2次元に集積したことを特徴とする。
本発明にかかる面発光レーザ素子およびレーザアレイによれば、転位の増殖を抑制して偶発故障の故障発生率を低減し、一層の高信頼化を実現できる。
以下、添付図面を参照して、本発明にかかる面発光レーザ素子およびレーザアレイの好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる面発光レーザ素子について説明する。図1は、本実施の形態1にかかる面発光レーザ素子1の構成を示す斜視断面図である。また、図2は、図1に示すメサポストMP1の構成を示す断面図である。図1に示すように、面発光レーザ素子1は、p−GaAsである基板2上に、順に、下部多層膜反射鏡3と、下部クラッド層4と、多重量子井戸構造の活性層5と、上部クラッド層6と、上部多層膜反射鏡7とが積層された構造を有する。かかる積層構造において、下部多層膜反射鏡3の上端部から上の積層部は、切頭円錐状のメサポストMP1として形成されている。なお、図1に示す構成部分のうち、図6と同じ構成部分には同一の符号を付している。
下部多層膜反射鏡3は、分布反射型反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)として形成され、例えばp−Al0.2Ga0.8As/p−Al0.9Ga0.1Asを1ペアとして35ペア積層した構造を有する。また、上部多層膜反射鏡7は、分布反射型反射鏡として形成され、例えばn−Al0.2Ga0.8As/n−Al0.9Ga0.1Asを1ペアとして25ペア積層した構造を有する。なお、下部多層膜反射鏡3および上部多層膜反射鏡7を形成する各半導体層の厚さは、λ/4n(λ:発振波長、n:屈折率)である。
下部多層膜反射鏡3の上端層には、メサポストMP1の中軸上に開口部3aを有する電流狭窄層としての選択酸化層3bが形成されている。選択酸化層3bは、図2に示すように、下部多層膜反射鏡3の上端層をメサポストMP1の側面部から選択的に距離W1だけ酸化して形成され、開口部3aは、酸化層中にあって酸化されていない非酸化開口部として形成される。開口部3aの開口外周から外側は、酸化によって絶縁性を有している。かかる選択酸化層3bは、p側電極10から注入される電流を狭窄して活性層5内の電流密度を高め、開口部3aは、電流注入領域として機能する。また、開口部3aは、開口外周から外側が酸化により開口内部と異なる屈折率を有するため、光閉じ込め層として発振横モードを制御する機能を有する。
下部クラッド層4および上部クラッド層6は、活性層5を上下から挟み込むように積層され、活性層5とともに光共振器を形成する。下部クラッド層4は、例えばp−Al0.3Ga0.7Asによって形成され、上部クラッド層6は、例えばn−Al0.3Ga0.7Asによって形成される。なお、光共振器内に生成される定在波の腹が活性層5の層厚方向の中心部にくるように、下部クラッド層4および上部クラッド層6は、互いにほぼ等しい光学長を実現する膜厚を有することが好ましい。
活性層5は、例えばGaAs/Al0.2Ga0.8Asからなる多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有する。開口部3aを活性層5上に投影した開口投影領域5b内の活性層5は、p側電極10から注入され、選択酸化層3bによって狭窄された電流に応じて光を放出する発光領域として機能する。この発光領域から放出された自然放出光は、下部クラッド層4および上部クラッド層6が形成する光共振器によって増幅され、上部多層膜反射鏡7の上面部からレーザ光LOとして射出される。
上部多層膜反射鏡7の上部にはn側電極9が形成され、n側電極9に対向する基板2の裏面にはp側電極10が形成されている。n側電極9は、メサポストMP1の上面部中央に、レーザ光LOを外部に射出する射出窓としての開口部を有する。また、メサポストMP1の周囲にはポリイミド層8が形成され、n側電極9は、上部多層膜反射鏡7の上部からポリイミド層8の上面を覆うように形成される。
本実施の形態1にかかる面発光レーザ素子1では、特に、メサポストMP1内の外周部DPは、図2に示すように、各種ドーピングによって不純物が添加された構造に形成されている。これによって、活性層5の外周部DP内に位置する領域、すなわち、活性層5内の中央部の発光領域を包囲する外周領域としての輪帯領域5aは、発光領域を取り囲み、この発光領域からの自然放出光の吸収に基づくキャリアの発生または伝播を抑制するキャリア抑制構造として形成されている。また、このキャリア抑制構造としての輪帯領域5aは、発光領域を規定する開口投影領域5bを取り囲むようにも形成されている。
このキャリア抑制構造は、具体的には、活性層5の輪帯領域5aをドーピングにより混晶化し、活性層5内の発光領域からの自然放出光に対する非吸収性を有するものとして形成される。すなわち、このキャリア抑制構造では、混晶化によってバンドギャップ(エネルギー禁制帯幅)が拡大され、元の活性層5に比して自然放出光に対する非発光再結合が減少する。かかるキャリア抑制構造によると、選択酸化層3bを形成するための酸化工程において活性層5の外周部に転位が生じた場合に、この転位部での自然放出光の吸収を抑制することが可能であり、自然放出光の吸収に起因するキャリアの発生とともに転位の拡大および増殖を抑制することができる。
あるいは、キャリア抑制構造は、活性層5の輪帯領域5aをドーピングにより電気的に高抵抗化し、活性層5内の発光領域からの自然放出光の吸収に応じて発生したキャリアに対する吸収性を有するものとして形成するようにしてもよい。かかるキャリア抑制構造によると、活性層5の外周部に転位が生じた場合に、この転位部での光の吸収に応じて発生したキャリアを吸収、すなわち電気的に消費することが可能であり、キャリアの発生に起因する転位の拡大および増殖を抑制することができる。
このように混晶化、高抵抗化等によってキャリア抑制構造を形成した結果として、この面発光レーザ素子1では、転位部が活性層5の発光領域に到達することを防止し、偶発故障の発生を未然に防ぐことができる。
なお、キャリア抑制構造を形成するドーピング方法には、イオン注入、亜鉛(Zn)拡散、IFVD法等の各種の不純物拡散技術、あるいは超格子構造の無秩序化技術等が利用可能であり、特定のドーピング方法に限定されるものではない。
例えば、イオン注入では、図2に示すように、まず、上部多層膜反射鏡7上面で外周部DPに対応する領域に、注入後に高抵抗となる元素としてのH(プロトン)等が注入され、その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)等による熱処理が行われる。この熱処理によって、イオン注入に応じて発生した原子空孔が活性層5内の輪帯領域5aに拡散され、輪帯領域5aが混晶化とともに高抵抗化される。
また、Zn拡散では、同様に、上部多層膜反射鏡7上面で外周部DPに対応する領域にZn膜が形成され、その後、熱処理によってZnが輪帯領域5aに拡散され、輪帯領域5aが混晶化される。なお、基板2がn型半導体によって形成される場合などには、拡散不純物元素としてZnに替えてSi(シリコン)を用いることもできる。
一方、IFVD法は、誘電体膜を利用した原子空孔の拡散技術であって、半導体層の表面に誘電体膜を形成して熱処理することにより、半導体中の構成原子を誘電体膜中に拡散させて原子空孔を発生させるとともに、原子空孔を半導体中に拡散させて半導体結晶を混晶化させる技術である。面発光レーザ素子1では、図2に示すように、まず、上部多層膜反射鏡7上面で外周部DPに対応する領域にSiNx、SiO2等の誘電体膜が形成され、その後、熱処理によって原子空孔が輪帯領域5aに拡散され、輪帯領域5aが混晶化される。
なお、図2では、メサポストMP1が形成された後に、メサポストMP1の上面である上部多層膜反射鏡7上面にイオン注入または膜形成を行って輪帯領域5aを混晶化、高抵抗化するように示したが、より好ましくは、エッチング等によってメサポストMP1を形成する前の工程において、上部多層膜反射鏡7の一部もしくは全部を積層した段階で混晶化、高抵抗化を行うとよい。
また、図2では、活性層5内の発光領域を包囲する輪帯領域5aの全域、すなわち、開口投影領域5bの外縁からメサポストM1の側面部までの全域をキャリア抑制構造として形成するように示したが、必ずしも全域に形成する必要はない。発光領域を取り囲み、この発光領域から放出される自然放出光がメサポストM1の側面部に生じた転位部へ到達することを抑制できるものであれば、キャリア抑制構造は、輪帯領域5a内の一部領域のみに形成してもよい。すなわち、開口投影領域5bの外周からメサポストM1の側面部までの一部領域のみに、開口投影領域5bを取り囲むように形成してもよい。
ただし、厳密には、開口投影領域5bの外周から外側に3μm程度の領域まで光の染み出しがあり、この染み出し領域までが発光領域と考えられる。このため、キャリア抑制構造は、この光の染み出し領域の外側に形成されることが好ましい。また、キャリア抑制構造は、このような発光領域の外側にあって、かつ、発光領域の近傍に形成されることが好ましい。
なお、面発光レーザ素子1では、図1および図2に示したように、選択酸化層3bを下部多層膜反射鏡3の上端層に形成するように示したが、上端層に限定して解釈する必要はなく、上端層より数層程度下方に位置する層に形成してもよい。
以上のようにして形成された面発光レーザ素子1は、n側電極9とp側電極10との間に適当な電圧が印加された場合、n側電極9の中央開口部からメサポストMPの上方に向けて、例えば発振波長850nm帯のレーザ光LOを射出する。なお、発振波長は、850nm帯に限定して解釈する必要はなく、650nm帯、980nm帯、1300nm帯、1550nm帯等であってもよい。この場合、適宜、活性層材料や反射鏡を調整する。また、p型半導体からなる基板2に替えて、n型半導体基板を用いてもよく、この場合、基板上に形成される各半導体層のp−nの構成が反対に構成される。
以上説明したように、本実施の形態1にかかる面発光レーザ素子では、活性層の外周部の混晶化、高抵抗化によって、活性層からの自然放出光の吸収に基づくキャリアの発生または伝播を抑制するキャリア抑制構造を形成するようにしているため、活性層の外周部に転位が生じた場合にも、この転位部でのキャリアの発生に起因する転位の拡大および増殖を抑制することができ、結果として、面発光レーザ素子の偶発故障の故障発生率を低減して一層の高信頼化を実現できる。
なお、本実施の形態1にかかる面発光レーザ素子1では、電流狭窄層としてAlを含む選択酸化層3bを備える構造としたが、選択酸化層3bに替えて、イオン注入によって形成した電流狭窄構造を備えるようにしてもよい。この場合にも、上述した面発光レーザ素子1のすべての効果を同様に享受できる。
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、活性層の混晶化、高抵抗化によってキャリア抑制構造を形成するようにしていたが、この実施の形態2では、積層構造のベンディングによってキャリア抑制構造を形成するようにしている。
図3は、本発明の実施の形態2にかかる面発光レーザ素子21の構成を示す斜視断面図である。また、図4は、図3に示すメサポストMP2の構成を示す断面図である。図3に示すように、面発光レーザ素子21は、面発光レーザ素子1が積層して備えた下部多層膜反射鏡3、下部クラッド層4、活性層5、上部クラッド層6および上部多層膜反射鏡7のそれぞれに替えて、下部多層膜反射鏡23、下部クラッド層24、活性層25、上部クラッド層26および上部多層膜反射鏡27を積層した構造を有する。
下部多層膜反射鏡23の上端部から上の積層部は、メサポストMP2として形成されている。また、下部多層膜反射鏡23の上端層には、選択酸化層3aおよび開口部3bに替えて、選択酸化層23aおよび開口部23bが形成され、基板2の上面中央部には、新たに円盤状の段部2aが形成されている。その他の構成は、実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
段部2aは、メサポストMP2の中心軸上で基板2に一体に所定の段差を有して形成される。かかる段部2aの上部に積層される各層は、段部2aの段差に応じてベンディングして形成される。これによって、活性層25には、図4に示すように、中央部の発光領域を包囲する輪帯領域25a内の発光領域との境界付近に屈曲部25bが形成される。また、この屈曲部25bは、開口部23bを活性層25上に投影した開口投影領域25cを取り囲むようにも形成される。かかる屈曲部25bは、活性層25内の発光領域からの自然放出光の導波を抑制することによってキャリアの発生を抑制するキャリア抑制構造として機能する。
すなわち、屈曲部25bは、中央部の発光領域から外周部へ活性層25内を導波する自然放出光を減衰または遮断することができ、活性層25の外周部に転位が生じた場合に、この転位部での自然放出光の吸収を抑制することができる。この結果、屈曲部25bは、転位部での自然放出光の吸収に起因するキャリアの発生とともに転位の拡大および増殖を抑制することができ、面発光レーザ素子21の偶発故障の発生を未然に防止することができる。
なお、面発光レーザ素子21では、図3に示したように、屈曲部25aを形成するための段部2aを基板2に対して凸状としたが、これとは逆に、段部を基板2に対して凹状(掘り込み形状)に形成してもよい。この場合、活性層25に形成される屈曲部は、発光領域を含む中央部に対して、キャリア抑制構造としての輪帯領域を積層方向に高くするように形成される。
さらに、面発光レーザ素子21では、段部2aを円盤状に形成したが、例えばリング状に段部を形成するようにしてもよい。その場合、段部は、発光領域とメサポスト側面との間にあればよい。図5は、この実施の形態2にかかる変形例として、基板2上にリング状の段部2bを形成した構造を有する面発光レーザ素子31の構成を示す斜視断面図である。図5に示すように、面発光レーザ素子31は、面発光レーザ素子21が積層して備えた下部多層膜反射鏡23、下部クラッド層24、活性層25、上部クラッド層26および上部多層膜反射鏡27のそれぞれに替えて、下部多層膜反射鏡33、下部クラッド層34、活性層35、上部クラッド層36および上部多層膜反射鏡37を積層した構造を有する。
下部多層膜反射鏡33の上端部から上の積層部は、メサポストMP3として形成されている。また、下部多層膜反射鏡33の上端層には、選択酸化層23aおよび開口部23bに替えて、選択酸化層33aおよび開口部33bが形成され、基板2の上面中央部には、円盤状の段部2aに替えて、リング状の段部2bが形成されている。その他の構成は、面発光レーザ素子21と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
段部2bは、リング状の中心をメサポストMP3の中軸上に配置して、基板2に一体に所定の段差を有して形成される。かかる段部2bの上部に積層される各層は、段部2bの段差に応じてベンディングして形成される。これによって、活性層35には、図6に示すように、中央部の発光領域を包囲する輪帯領域35a内の発光領域との境界付近に屈曲部35bが形成される。また、この屈曲部35bは、開口部33bを活性層35上に投影した開口投影領域35cを取り囲むようにも形成されている。かかる屈曲部35bは、屈曲部25bと同様にキャリア抑制構造として機能する。
すなわち、屈曲部35bは、中央部の発光領域から外周部へ活性層35内を導波する自然放出光を減衰または遮断することができ、活性層35の外周部に転位が生じた場合に、この転位部での自然放出光の吸収を抑制することができる。結果として、屈曲部35bは、屈曲部25bと同様の効果を奏する。
なお、面発光レーザ素子31では、図5に示したように、屈曲部35aを形成するための段部2bを基板2に対して凸状としたが、これとは逆に、段部を基板2に対して凹状(溝状)に形成してもよい。この場合、活性層35に形成される屈曲部は、発光領域を含む中央部に対して、キャリア抑制構造としての輪帯領域を積層方向に低くするように形成される。
以上説明したように、この実施の形態2にかかる面発光レーザ素子では、基板上に形成した段部の上部に活性層を形成することによって、活性層の中央部の発光領域を取り囲むように屈曲部を形成し、この屈曲部によって、発光領域から外周部へ活性層内を導波する自然放出光を減衰または遮断するようにしているため、活性層の外周部に転位が生じた場合にも、この転位部での自然放出光の吸収を抑制することが可能であり、自然放出光の吸収に起因するキャリアの発生とともに転位の拡大および増殖を抑制することができ、結果として、面発光レーザ素子の偶発故障の故障発生率を低減して一層の高信頼化を実現できる。
なお、面発光レーザ素子21,31の各段部2a,2bは、図3および図5に示した断面内で等脚台形状の構造を有するものとしたが、かかる構造に限定して解釈する必要はなく、他の台形状、矩形状等、種々の構造を有する段部として形成してよい。
また、上述した実施の形態1および2にかかる面発光レーザ素子1,21,31等の本発明にかかる面発光レーザ素子は、面発光レーザ素子を同一基板上に1次元または2次元に配列して集積したレーザアレイにも、適用可能である。かかるレーザアレイでは、レーザアレイの信頼性として、集積された複数の面発光レーザ素子の全てにおいて信頼性が要求されるため、本発明にかかる面発光レーザ素子の適用が効果的である。
本発明の実施の形態1にかかる面発光レーザ素子の構成を示す斜視断面図である。 図1に示したメサポストの構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態2にかかる面発光レーザ素子の構成を示す斜視断面図である。 図3に示したメサポストの構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態2にかかる変形例としての面発光レーザ素子の構成を示す斜視断面図である。 図5に示したメサポストの構成を示す断面図である。 従来の面発光レーザ素子の構成を示す斜視断面図である。 活性領域に生じた転位を説明する図である。 活性領域に増殖した転位領域を説明する図である。
符号の説明
1,21,31,41 面発光レーザ素子
2 基板
2a,2b 段部
3,23,33,43 下部多層膜反射鏡
3a,23a,33a,43a 開口部
3b,23b,33b,43b 選択酸化層
4,24,34,44 下部クラッド層
5,25,35,45 活性層
5a,25a,35a 輪帯領域
5b,25c,35c 開口投影領域
6,26,36,46 上部クラッド層
7,27,37,47 上部多層膜反射鏡
8 ポリイミド層
9 n側電極
10 p側電極
25b,35b 屈曲部
DA 転位領域
DL 転位
EA 発光領域
LO レーザ光
MP1〜MP4 メサポスト

Claims (7)

  1. 半導体基板上に積層された活性層を備え、前記半導体基板に対して垂直方向にレーザ光を射出する面発光レーザ素子において、
    前記活性層は、該活性層中の発光領域を包囲する外周領域内に、前記発光領域を取り囲み、該発光領域から放出される自然放出光の吸収に基づくキャリアを抑制するキャリア抑制構造を有することを特徴とする面発光レーザ素子。
  2. 前記キャリア抑制構造は、前記活性層を混晶化して形成され、前記自然放出光に対する非吸収性を有することを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ素子。
  3. 前記キャリア抑制構造は、前記活性層を高抵抗化して形成され、前記キャリアに対する吸収性を有することを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ素子。
  4. 前記キャリア抑制構造は、前記活性層の積層面に対する屈曲部を有することを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ素子。
  5. 前記半導体基板と前記活性層との間に積層される下部反射層、または前記活性層の上部に積層される上部反射層の内部に、外周から外側が酸化された非酸化開口部を有する電流狭窄層を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
  6. 前記活性層の近傍に、イオン注入によって形成された電流狭窄構造を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子を同一基板上に複数備え、該面発光レーザ素子を1次元または2次元に集積したことを特徴とするレーザアレイ。
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