JP2007091622A - 炎症反応に関連した酸化的損傷のマーカー及びその利用 - Google Patents

炎症反応に関連した酸化的損傷のマーカー及びその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】炎症反応の程度を検知するのに適したマーカーを提供する。
【解決手段】8−ブロモデオキシグアノシンを炎症反応に特異的なDNAの酸化的損傷のマーカーとして利用する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炎症反応に関連する酸化的損傷の程度を検出することのできるマーカー及びその利用に関し、詳しくは、該マーカーを特異的に認識する抗体、測定キット、酸化的損傷の測定方法、炎症反応に関連する化合物のスクリーニング方法に関する。
DNAの酸化的損傷はガンを含めて各種の疾患との関連が示唆されている。各種の酸化ストレスによって生体内で生じた活性酸素種により、DNA中の塩基のうち最も酸化されやすいグアニン(G)がその8位の炭素が酸化されて8−ヒドロキシデオキシグアノシンが生成することがわかっている。8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8−OHdG)については、モノクローナル抗体をはじめ(特許文献1)、各種の検査方法が開発されている。
近年、発ガン因子の一つに慢性炎症の関与が示唆されている。図9に示すように、免疫担当細胞である好中球は、それ自身が有するミエロパーオキシダーゼ(MPO)により、生体内で生成した過酸化水素からHOBrやHOClなどのハロゲン化活性酸素種を生成して、こうした活性酸素種を用いて生体防御を行っている。一方、こうしたハロゲン化活性酸素種は強力な細胞毒性を備えている。したがって、過剰な炎症反応や慢性の炎症反応によって、こうした活性酸素種が過剰又は恒常的に存在するときなどには、生体成分を傷害する可能性がある。近年、ハロゲン化活性酸素種は、核酸を構成するシトシンやウラシルをハロゲン化することが試験管内において確認されている(非特許文献1)。また、最近、クロル化されたデオキシシチジンが生体内の炎症部位で見出されている(非特許文献2)。
特許公報第3091974号公報 Yoshichika et al., J. Biol. Chem. 276、7867-7875 J. P. Henderson et al., J. Biol. Chem. 279、51241-51249
炎症反応、特に、過剰な又は慢性的な炎症反応による生体成分の酸化的損傷の程度を検知することは、そうした炎症反応の存在を知ることができるとともに、こうした生体状況に対する予防又は治療的処置が可能となる点において有用である。
しかしながら、こうしたハロゲン化塩基あるいは当該塩基を含むヌクレオチドなどの生体における生成機構は明らかになっているわけではない。したがって、上記したハロゲン化修飾塩基がマーカーとして有用であるとは限らない。また、8−OHdGは有用なマーカーではあるが、炎症反応あるいは炎症反応によるDNA損傷のマーカーについて有用であるというわけではない。
そこで、本発明は、炎症反応の程度を検知するのに適したマーカー及び当該マーカーを利用した診断方法、抗体及びスクリーニング方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、炎症反応による酸化的損傷の程度を検知するのに適したマーカー、当該マーカーを利用した診断方法、当該マーカーに特異的な抗体、及び当該マーカーを利用したスクリーニング方法を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、好中球内に多量に存在するアミノ酸様化合物であってハロゲン化過酸化水素の消去剤ともされているタウリンに着目し、好中球の過剰発現により、タウリン由来のブロマミンが8−BrdGの生成を特異的に促進するという知見を得、8−BrdGが炎症反応や炎症反応によるDNAの酸化的損傷を検知するための有用なマーカーとなりえることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明の一つの形態によれば、8−ブロモデオキシグアノシンを特異的に認識する抗体が提供される。この抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。
さらに、本発明の他の一つの形態によれば、上記いずれかの抗体を備える、8−ブロモデオキシグアノシン量の測定キットが提供される。この測定キットは、動物から採取される被験試料中の8−ブロモデオキシグアノシン量を測定することにより前記動物における炎症反応の程度を判定するためのキットであることが好ましい。また、この測定キットは、8−ブロモデオキシグアノシン量を測定することにより前記動物における炎症反応に由来するDNA損傷の程度を判定するためのキットであることも好ましい。
また、本発明の他の一つの形態によれば、固相担体と、該固相担体に固定化される上記抗体と、を備える、固定化体が提供される。
また、本発明の他の一つの形態によれば、上記いずれかに記載の抗体を産生するハイブリドーマも提供される。
また、本発明の他の一つの形態によれば、生体における酸化的損傷の測定方法であって、動物から採取される被験試料中の8−ブロモデオキシグアノシン量を測定する工程を備える、測定方法が提供される。
この形態において、前記測定工程は、8−ブロモデオキシグアノシン量を上記いずれかに記載の抗体を用いて測定する工程であることが好ましく、より好ましくは、前記測定工程はELISA法によって実施する。
また、この形態において、前記測定工程の測定結果に基づいて前記動物における炎症反応の程度を判定する判定工程を備えることができ、また、前記測定工程の測定結果に基づいて前記動物における炎症反応によるDNA損傷の程度を判定する判定工程を備えることができる。さらに、前記測定工程の測定結果に基づいて前記動物における8−ブロモデオキシグアノシンが関連する疾患を診断する診断工程を備えることができる。
また、本発明の他の一つの形態によれば、炎症反応に関連する化合物のスクリーニング方法であって、(a)1種又は2種以上の試験化合物と活性化された好中球とを臭素イオンの存在下に接触させる工程と、(b)前記(a)工程で得られた好中球培養液の8−ブロモデオキシグアノシンを測定する測定工程と、を備える、スクリーニング方法が提供される。
この形態において、前記測定工程は、8−ブロモデオキシグアノシン量を上記いずれかに記載の抗体を用いて測定する工程であることが好ましい。
また、この形態において、前記炎症反応に関連する化合物は、炎症反応を調節する化合物とすることができる。また、前記炎症反応に関連する化合物は、炎症反応に由来するDNA損傷を抑制する化合物とすることができる。さらに、前記炎症反応に関連する化合物は、DNA損傷が関連する疾患の予防用又は治療用の薬剤とすることができる。
また、本発明の一つの形態によれば、8−ブロモデオキシグアノシンを含有する、炎症反応関連酸化的損傷マーカー化合物が提供される。
本発明は、図1に示すように、好中球において生成した次亜臭素酸がグアニンを攻撃して生成する8−ブロモデオキシグアノシンの検出に関し、特に、8−ブロモデオキシグアノシン(8−BrdG)を特異的に認識する抗体及びその利用に関する。本発明の抗体は、8−BrdGに対して高い結合能を有しており、被験試料中の8−BrdGを感度よく特異的に定量することができる。このため、慢性の炎症反応や過剰の炎症反応などの炎症反応の程度又はこうした炎症反応によるDNA損傷程度を容易に判定することができる。また、こうしたDNA損傷が関連する疾患や生理的状況などの診断が可能である。また、本発明の抗体によれば、炎症反応によるDNA傷害を抑制することのできる化合物のスクリーニングや炎症反応を調節する化合物のスクリーニングが可能となる。
以下、本発明の一つの実施形態である抗体について説明するとともに、他の実施形態について説明する。
(抗体)
本発明において、8−BrdGは、ヌクレオシド誘導体の一部又は全部であって、以下の式(1)で表される。
(ただし、Xは、水素原子、3’→5’ホスホジエステル結合で連結される1又は2以上のヌクレオチド残基のC5位リン酸モノエステル基のリン原子を表し、Xは、水素原子、一リン酸エステル基、二リン酸エステル基若しくは三リン酸エステル基又は3’→5’ホスホジエステル結合で連結される1又は2以上のヌクレオチド残基のC3位のリン酸モノエステル基のリン原子を表す。ただし、Xが3’→5’ホスホジエステル結合で連結される1又は2以上のヌクレオチド残基のC5位リン酸モノエステル基のリン原子であるとき、Xは、一リン酸エステル基を表す。)
式(1)において、XがHであり、XがHのとき、ヌクレオシド誘導体は、8−ブロモデオキシグアノシンであり、XがHであり、Xが一、二及び三リン酸エステルのとき、同誘導体は、8−ブロモデオキシグアノシン一リン酸、同二リン酸、及び同三酸リン酸である。
また、式(1)においてXが他のヌクレオチド残基のリン原子であるか又はXがヌクレオチド残基のリン原子である場合には、本発明のヌクレオシド誘導体は、2以上のヌクレオチド残基を有するヌクレオチドのポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドとしては、オリゴヌクレオチドも含んでいる。ポリヌクレオチドは、デオキシリボースを構成単糖とすることが好ましく、一重鎖であっても二重鎖であってもよい。
本発明の抗体は、こうしたヌクレオシド誘導体(以下、8−BrdG誘導体ともいう。)の8−BrdG部位を特異的に認識することができる。したがって、本発明の抗体は、ヌクレオシドである8−BrdG、ヌクレオチドにおける8−BrdG、ポリヌクレオチド中のヌクレオチド残基における8−BrdGを特異的に認識することができる。好ましくは、ヌクレオシドとしての8−BrdGを高い感度で特異的に認識する。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。
(抗体の作製)
次に、本発明の抗体の抗原の調製及び抗体の作製方法について説明する。
(1)抗原の調製
本発明の抗体を作製するための抗原としては、8−BrdG誘導体とタンパク質などの適当なキャリアとを結合させた結合体を用いることが好ましい。こうした結合体としては、例えば、8−BrdGのデオキシリボースの5位の炭素原子に適当なリンカーを介してキャリアタンパク質を備える結合体が挙げられる。
抗原材料として用いる8−BrdG誘導体としては、ヌクレオシド、ヌクレオチドを用いることが好ましいが、より好ましくはヌクレオシド(8−BrdG)を用いる。8−BrdGは化学的に合成することもできるが、dG等を酵素的に修飾することにより得ることもできる。すなわち、次亜臭素酸:HOBrの存在下、dGをインキュベーションすることにより、dGにBrを導入することが可能である。反応条件としては、pH2〜9のリン酸緩衝液中で、0.5〜2mMのdGと0.05〜1mMのHOBrとをインキュベートすることにより得ることができる。インキュベートは30〜40℃程度で、1時間程度とすることができる。反応を、4〜10mM程度のメチオニンを添加することにより停止させ、その後、HPLC等により8−BrdGを精製することができる。なお、H、塩素イオン及び臭素イオンの存在下、MPOとともにインキュベートすることによって酵素反応によっても8−BrdGを合成可能である。
キャリアタンパク質としては、従来公知のキャリアタンパク質が用いられるが、なかでもウシ血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン、リポプロテイン、ヘモシアニンなどが好ましく用いられる。より好ましくは、カギアナカサガイのヘモシアニン(KLH)である。こうしたキャリアタンパク質は、商業的に容易に入手可能である。なお、キャリアとしては、ポリアミノ酸、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリビニルなどの重合体又は共重合体等の合成高分子を用いることができる。
8−BrdGとキャリアタンパク質との結合体を得る方法としては、特に限定しないが、適当な溶媒中で、8−BrdGにカルボキシル基を導入したカルボキシル基付加体とキャリアタンパク質とを適用な架橋剤の存在下で反応させて酸アミド結合を形成させる方法が挙げられる。カルボキシル基付加体は、8−BrdGのデオキシリボ−スの5位の炭素原子にカルボキシル基を有していることが好ましい。こうしたカルボキシル基付加体は、8−BrdGとジカルボン酸やその酸無水物及び酸クロリドなどと反応させることにより得ることができる。なお、ジカルボン酸としては、コハク酸、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸などが挙げられる。
カルボキシル基付加体とキャリアタンパク質との結合反応は、架橋剤としてEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド)などの水溶性カルボジイミドを使用することができる。なお、他の架橋剤を用いてもよい。結合反応のための溶媒としては、トリス(Tris)、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の緩衝液を用いることができ、例えば、1mM〜0.5M、より好ましくは10mM〜100mMのリン酸緩衝液が挙げられる。pHは、結合反応が進行する限り限定しないが、好ましくはpH6〜11、より好ましくはpH7〜9である。反応時間は、例えば、25〜60℃で1時間以上、好ましくは30〜40℃で5〜40時間である。得られた結合体は、最終的にはカラムによる分離精製、透析などの一般的なタンパク質の分離精製方法を単独であるいは組み合わせて採用して抗原として用いることができる。
効率的に結合体を得るには、カルボキシル付加体をEDCなどの水溶性カルボジイミドと反応させた後、さらにsulfo−NHS(N−ヒドロキシスルホスクシンイミド)と反応させてアミン反応性スルホ−NHSエステルとした上で、スルホ−NHSエステルとキャリアタンパク質と反応させることができる。この場合、スルホ−NHSエステルを得るための反応溶媒としては、水と混和可能な有機溶媒であれば特に限定されないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びエタノールを単独であるいは組み合わせて用いることができる。反応条件は、20〜60℃で5〜40時間、好ましくは、20〜40℃で20〜30時間程度である。次に、スルホ−NHSエステルを含む反応液をキャリアタンパク質溶液と混合して結合反応を進行させる。キャリアタンパク質を溶解する溶液としては、既に説明した結合反応のための溶媒を好ましく用いることができ、pHも同様である。また、反応時間は、1時間以上、好ましくは2〜10時間程度とすることができる。
また、この他、キャリアタンパク質と8−BrdGとを、グルタルアルデヒド等のジアルデヒドや、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとによって反応させてもよい。
本発明の抗体を得るのに好ましい抗原としては、例えば、図2に示すように、8−BrdGのスクシニル化物を、EDC及びスルホ−NHSとDMF中、室温(25〜35℃)で24時間反応させた後、KLHを加えて室温で4時間反応させることにより得られる化合物(8−BrdG−KLH)が挙げられる。
(2)抗体の作製
こうして調製した抗原で温血動物を免疫し、最終的に、目的とする抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、このハイブリドーマの産生する抗体を精製することにより本発明の抗体を得ることができる。温血動物としては、特に、限定しないで、マウス、ハムスター、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ニワトリ等を用いることができる。ハイブリドーマとして用いる細胞が限定されている場合、当該ミエローマの由来動物と同一の動物を用いることが好ましく、通常用いられるミエローマはマウス由来であることから、温血動物としてはマウスを用いることが好ましい。
抗原で温血動物を免疫するには、従来公知の方法を採用できる。例えば、抗原を、温血動物に対して皮下注射、皮内注射、腹膜腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射等から選択される1又は2以上の投与経路で、7〜30日、好ましくは12〜16日間間隔で合計2〜10回程度投与する。
なお、抗原は適当な緩衝液、例えばフロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントのうちの1種を含有するリン酸緩衝液、生理食塩水等に溶解して用いることができるが、こうしたアジュバントを必ずしも使用する必要はない。ここで、アジュバントとは抗原と共に投与したとき、非特異的に抗原に対する免疫反応を増強する物質を意味する。
抗原を免疫した温血動物を7〜30日間処置せずに放置した後、該温血動物の血清を少量採取し、抗体価を測定する。抗体価の上昇に応じて、抗原の追加投与を適当回数行うこともできる。例えば、0.01〜1mg、特に、0.05〜0.5mgの投与量で1回もしくは2回の追加投与が行われる。なお、抗体価の測定方法としては、酵素免疫測定法、ウエスタンブロット法、凝集法、一元放射状免疫拡散法等から選ばれた測定法を用いることができるが、酵素免疫測定法が好ましい。
抗体価が認められた温血合物への最後の投与の1〜30日後、特に好ましくは1〜7日後に免疫した温血動物から脾臓又はリンパ節を摘出し、この組織から抗体産生細胞を採取し、継代培養可能な骨髄腫由来細胞(ミエローマ)と融合させることにより、抗体産生ハイブリドーマを得ることができる。
ハイブリドーマは、例えば、「単クローン抗体実験操作入門」(講談社サイエンティフィック 安藤民衛ら 1991)等に記載されている方法を用いることができる。すなわち、抗体産生細胞とミエローマとを融合させる。誘導促進剤としては、センダイウイルスやポリエチレングリコールが用いられる。ミエローマとしては、抗体産生細胞の由来動物と同一の動物とすることが好ましい。
実際に用いられる細胞融合の方法としては、公知の技術(J ImmunolMethod 39:285−308,1980)を用いることができる。例えば、免疫されたマウスから得られた脾臓細胞等とマウスミエローマ細胞をポリエチレングリコール存在下で融合させ、ハイブリッド細胞のみが生育可能であるHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン添加培地)により選択的にハイブリッド細胞を増殖させ、ハイブリッド細胞がコロニーを形成した後、培養上清中の抗体をスクリーニングすることで目的の抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。本発明によれば、こうした抗体を産生するハイブリドーマも提供される。
8−BrdG抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング方法としては、種々の方法が採用できる。抗体価の測定には、例えば、上記した抗体価の測定と同様の方法を採用できる。好ましくは酵素免疫測定法である。具体的には、8−BrdGを含むヌクレオシド誘導体を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した抗8−BrdGモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した8−BrdGヌクレオシド誘導体を加え、固相に結合した8−BrdGモノクローナル抗体を検出する方法などがあげられる。また、限界希釈法を繰り返すことにより、8−BrdGを産生する単一のハイブリドーマを得ることができる。
こうしてスクリーニングされたハイブリドーマをモノクローナル抗体を産生する環境下(温血動物の生体外又は生体内)で培養して、体液又は培養液から抗体を採取することにより、本発明の抗体を製造することができる。本発明の抗体は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に行うことができる。すなわち、免疫グロブリンの分離精製法、例えば、塩析法、アルコール沈澱法、等電点沈澱法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法などに従って行われる。
なお、8−BrdGに対する高い反応特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングするには、間接競合ELISA又は直接競合ELISAによって8−BrdGに対する特異性と類似化合物に対する交差反応性を調べることが好ましい。類似化合物としては、dG(デオキシグアノシン)、G(グアニン)、8−BrG(8−ブロモグアニン)、8−CldG(8−クロロデオキシグアノシン)などが挙げられる。本発明のモノクローナル抗体は、8−BrdGに対するIC50(間接競合ELISAによる)が、50μg/ml以下であることが好ましく、より好ましくは、20μg/ml以下である。また、本発明のモノクローナル抗体の8−BrdGに対するIC50(間接競合ELISA)は、100μg/ml以上であることが好ましく、より好ましくは、200μg/ml以上である。なお、ここで、IC50とは、間接競合ELISAまたは直接競合ELISAによる標準阻害曲線において50%阻害を示す濃度である。
本発明のモノクローナル抗体はヒトの8−BrdGの検出だけでなく、ヒト以外の異種の温血動物マウス、ハムスター、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ等の生体中に存在する8−BrdG誘導体の検出にも応用することができる。
(測定キット)
本発明の測定キットは、ヌクレオシド誘導体における8−BrdGを特異的に認識する抗体を含むため、被験試料中の8−BrdGを簡便に測定することができ、後述する8−BrdGの測定方法に好適に使用することができる。本測定キットは、さらに、測定法に応じて、標識された二次抗体もしくは標識された8−BrdGハプテン(抗原)、緩衝液、検出試薬および/または8−BrdG標準溶液等を含む。好ましいキットは、ELISA法に用いられうるものであり、固相化抗原を保持する担体、本発明の抗体、酵素標識された二次抗体および検出試薬などを含むことができる。
本発明の抗体が特異的に認識する8−BrdGは、炎症反応により生体内で生成されるものであるので、本測定キットによれば、被験試料中の8−BrdGを測定することで被験試料の採取部位又は採取個体における炎症反応の程度を検出することができる。また、8−BrdGは、傷害を受けたDNAであることから、本測定キットによれば、被験試料中の8−BrdGを測定することで、被験試料の採取部位又は採取個体における炎症反応程度や炎症反応によるDNA傷害の程度など生体における酸化的損傷程度を判定することができる。
(固定化体)
本発明の固定化体は、固相担体と、該固相担体に固定化される本発明の抗体とを備えている。固相担体は、基板状、ビーズ状等特に形態を限定しないし、その材質も、ガラス、セラミックス、プラスチック、金属など従来公知の材料を用いることができる。さらに、多孔質であっても緻密質であってもよい。本発明の抗体の固相担体への固定化形態は特に限定しないで共有結合、静電的結合など、抗体などのタンパク質を固相に保持できる従来公知の手法で固定化されていればよい。本発明の固定化体は、本発明の抗体が、基板状の固相担体上に他の抗体とともに予め位置情報を伴って固定化されていることが好ましい。こうした本発明の固定化体は、複数個の抗体が一つの基板状の固相担体に固定化された抗体チップの形態を採ることができる。
(炎症反応関連酸化的損傷マーカー化合物)
本発明によれば、8−BrdGは炎症反応関連酸化的損傷マーカー化合物として利用することができる。8−BrdGは、好中球の炎症反応に伴って生じるグアノシンの酸化損傷物であることから、8−BrdGは慢性的又は過剰な炎症反応やそれによるDNA損傷が生じている生理的状態を検出し、生体における酸化的損傷程度を判定するためのマーカーとして利用できる。さらに、個体のエージング状態を診断するマーカーとしても利用できる。
(生体における酸化的損傷の測定方法:8−BrdGの測定方法)
本発明の測定方法は、動物から採取される被験試料中の8−BrdGを測定する方法である。8−BrdGは、HPLC、LC/MS、LC/MS/MS等により測定することができるが、好ましくは、本発明の抗体、より好ましくはモノクローナル抗体を用いて測定する。測定方法としては、通常の抗原−抗体反応を利用する方法であれば特に制限されず、放射性同位元素免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫組織化学法、蛍光もしくは発光測定法、凝集法、イムノブロット法、イムノクロマト法等(Meth. Enzymol., 92, 147−523 (1983), Antibodies Vol.II IRL Press Oxford (1989)) が挙げられるが、感度や簡便性等の点からELISAが好ましい。ELISAに用いる酵素としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等が挙げられる。
動物としては、ヒトの他、ヒト以外の異種の温血動物マウス、ハムスター、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリが挙げられる。また、被験試料は、動物から採取される血液、血漿、血清、尿、卵胞液、脊髄液、脳髄液、精液などの液体試料や、動物の炎症部位等から採取される細胞や組織等の固形試料が挙げられる。細胞や組織などの固形試料に対しては免疫組織化学染色法により、細胞内又は組織における8−BrdGの局在を検出することができる。組織やこうした被験試料は、その種類及び必要に応じて適宜前処理がなされる。
ELISAによる測定法は、間接競合ELISAまたは直接競合ELISAなどがあげられる。例えば、間接競合ELISAは、以下のような手順により行うことができる。
(1)固相化用抗原である8−BrdGとキャリアとの結合体を担体に固相化する。用いる担体は、96穴、48穴、192穴等のマイクロタイタープレートが好ましい。固相化は、例えば、固相化用抗原を含む緩衝液を担体上に載せ、インキュベーションすればよい。緩衝液中の抗原の濃度は、通常0.01μg/mlから100μg/ml程度である。緩衝液としては、検出手段に応じて公知のものを使用することができる。
(2)担体の固相表面へのタンパク質の非特異的吸着を防止するため、固相化用抗原が吸着していない固相表面部分を、抗原と無関係なタンパク質等によりブロッキングする。ブロッキング剤としては、BSAもしくはスキムミルク溶液、または市販のブロックエース(大日本製薬社製)等を使用することができる。ブロッキングは、前記ブロッキング剤を担体に添加し、例えば、約4℃で一晩インキュベーションした後、洗浄液で洗浄することにより行われる。洗浄液としては特に制限はないが、前記(1)と同じ緩衝液を使用することができる。
(3)前記(1)および(2)で処理された固相表面に各種濃度の8−BrdG誘導体を含む被験試料および本発明の抗体溶液を加え、該抗体を前記固相化抗原および被験試料中の8−BrdGに競合的に反応させて、固相化抗原−抗体複合体および8−BrdG−抗体複合体を生成させる。反応は、10℃〜40℃、好ましくは25℃〜37℃で0.5〜数時間程度で行うことができる。
(4)固相化抗原−抗体複合体の量を測定することにより、予め作成した検量線から試料中の8−BrdG量を決定することができる。固相化抗原−抗体複合体の量は、酵素標識した二次抗体(8−BrdG抗体を認識する抗体)を添加して測定することができる。例えば8−BrdG抗体としてマウスモノクローナル抗体を用いる場合、酵素標識(例えば、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ等)した抗マウスーヤギ抗体を用いて、担体に結合した8−BrdG抗体と反応させるのが望ましい。反応は、前記(3)と同様の条件下で行えばよい。反応後、緩衝液で洗浄する。
(5)担体に結合した二次抗体の標識酵素と反応する発色基質溶液を加え、吸光度を測定することによって検量線から8−BrdGの量を算出することができる。二次抗体に結合する酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、例えば、過酸化水素と、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンまたはo−フェニレンジアミンを含む発色基質溶液を使用することができる。通常、発色基質溶液を加えて室温で約10分程度反応させた後、硫酸を加えることにより酵素反応を停止させる。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを使用する場合、450nmの吸光度を測定する。o−フェニレンジアミンを使用する場合、492nmの吸光度を測定する。なお、バックグランド値を補正するため、630nmの吸光度も同時に測定することが望ましい。二次抗体に結合する酵素としてアルカリホスファターゼを使用する場合には、例えばp−ニトロフェニルリン酸を基質として発色させ、NaOH溶液を加えて酵素反応を止め、415nmでの吸光度を測定する方法があげられる。
8−BrdGを添加しない反応溶液の吸光度に対して、8−BrdGを添加して抗体と反応させた溶液の吸光度の減少率を阻害率として計算する。既知の濃度のアラクロールを添加した反応液の阻害率により予め作成しておいた検量線を用いて、試料中の8−BrdG濃度を算出することができる。
また、8−BrdGは、以下のようにして直接競合ELISAにより測定できる。すなわち、固相化抗原に替えて、8−BrdG抗体を担体に固相化し、被験試料と混合する抗体に替えて8−BrdGと酵素を結合させた酵素結合ハプテンを用い、二次抗体を用いないで固相化抗体と結合しなかった酵素結合ハプテンを除去した上、固相化抗体−酵素結合ハプテン複合体の量を間接競合ELISAと同様の方法により発色させて吸光度を測定することにより、予め作成した検量線から被験試料中の8−BrdGの量を決定することができる。
なお、本発明の測定方法においては、被験試料に応じた前処理をして試料とした後、間接競合ELISA、直接競合ELISAやその他の測定方法に供せられる。
本発明の測定方法は、8−BrdGを感度よく定量できるため、炎症反応の際の酸化ストレス及び該酸化ストレスに基づくDNA損傷に関する研究用途、炎症反応の程度の判定、炎症反応によるDNA損傷の程度の判定などの酸化的損傷程度の判定、及びこうしたDNA損傷が関連する疾患の診断等に用いることができる。
すなわち、本発明の測定方法は、炎症反応に伴って8−BrdGが増加するため、8−BrdG含有量を測定することにより、被験試料の採取部位又は採取個体における炎症反応の程度を判定できる。また、本測定方法は、8−BrdGはDNAの酸化的損傷の結果物であるから、8−BrdGを測定することにより、被験試料の採取部位又は採取個体における炎症反応によるDNA損傷の程度を判定できる。特に、8−BrdGは慢性的な炎症反応や過剰な炎症反応が生体において生じている場合に生成されると考えられるため、8−BrdGを測定することで慢性的又は過剰な炎症反応やそれによるDNA損傷が生じている生理的状態を検出し、生体における酸化的損傷程度を判定することができる。さらに、酸化的損傷の程度を判定することで、個体のエージング状態を診断し、酸化的損傷の生じている生理的状態を改善し又は予防するアンチエージング的な措置や治療が可能となる。
本発明の測定方法によれば、8−BrdG含有量を測定することにより、炎症反応やDNA損傷が関連する疾患の診断ができる。すなわち、本発明の測定方法によればこうした疾患に罹患しているかどうか又は将来罹患する可能性が高いかどうかを診断することができる。疾患としては、DNAの酸化的損傷は発癌に関連していることから、例えば、各種の癌(例、大腸癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆道癌、脾臓癌、腎癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、子宮頸部癌、精巣癌、甲状腺癌、膵臓癌、脳腫瘍、血液腫瘍など)が挙げられる。
(スクリーニング方法)
本発明のスクリーニング方法は、炎症反応に関連する化合物のスクリーニング方法であって、(a)1種又は2種以上の試験化合物と活性化された好中球とを臭素イオンの存在下に接触させる工程と、(b)前記(a)工程で得られた好中球培養液の8−BrdGを測定する測定工程と、を備えている。この方法によれば、DNA損傷物である8−BrdGは好中球による炎症反応に伴って増加するため、試験化合物の添加により8−BrdG量の増大又は減少を検出することにより、試験化合物が炎症反応を促進するのか又は抑制するのかを評価することができる。この結果、本発明のスクリーニング方法によれば、炎症反応に関連する化合物として、炎症反応を調節する(促進又は抑制する)化合物をスクリーニングすることができる。
また、本発明のスクリーニング方法によれば、前記化合物として、炎症反応に由来するDNA損傷を抑制する化合物をスクリーニングすることができる。この方法によれば、DNA損傷物である8−BrdGは好中球による炎症反応に伴って増加するため、試験化合物の添加により8−BrdG量の増大又は減少を検出することにより、試験化合物が炎症反応によるDNA損傷を促進するのか又は抑制するのかを判定することができる。この結果、本発明のスクリーニング方法によれば、炎症反応に由来するDNA損傷を抑制する化合物をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法によれば、前記化合物としてDNA損傷が関連する疾患の予防用又は治療用の薬剤をスクリーニングできる。炎症反応による酸化ストレスやDNA損傷は、老化の指標であるとともに癌などDNA損傷が関連する疾患の要因となる。したがって、本発明のスクリーニング方法によれば、DNA損傷が関連する疾患の予防用又は治療用の医薬として用いることができる。また、本発明のスクリーニング方法によれば、炎症反応に由来するDNA損傷によって引き起こされる生理的状態を予防し又は改善する食品のスクリーニングも可能である。
本発明のスクリーニング方法における8−BrdG含有量の測定工程は、本発明の抗体を用いることが好ましい。抗体を用いた測定方法としては、既に説明した各種方法を用いることができ、好ましくはELISA法を用いることができる。好中球は、例えば、カゼイン等を腹腔内投与した動物の腹腔から回収できる。好中球内のタウリン量は、培地の浸透圧やタウリン量を調整することで必要に応じて調節することができる。また、培地中に、LPSなどの免疫応答を誘導する物質を添加することで、好中球を活性化させることができる。
以下、本発明の具体例を実施例として説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)dG濃度が2mM、HOBr濃度が1mM及び各種アミノ酸濃度が1mMとなるように、dGとHOBrとの50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)溶液に各種アミノ酸の50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)溶液を添加して、37℃で60分間インキュベートし、メチオニンを10mMとなるように添加して反応を停止し、8−BrdGの生成量を、HPLCにて測定した。結果を図3に示す。
(2)dG濃度が2mM及びタウリン濃度が0,50,100,300,500及び1000μMの50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)溶液を調製し、HOBr又はHOClを1mMとなるように添加し、1時間、37℃でインキュベートし、メチオニンを10mMとなるように添加して反応を停止し、8−BrdGの生成量を、HPLCにて測定した。結果を図4に示す。
なお、HPLCは以下の条件で行った。
HPLC条件
カラム:ODS−HG−5(直径4.6mm×250mm)
流速:1.0ml/分
移動相A:HO/0.1%酢酸
移動相B:メタノール/0.1%酢酸
グラジエント(移動相B濃度):0〜5分、B10%
5〜15分、20%
15〜20分、100%
20〜28分、100%
29〜39分、10%
図3に示すように、タウリン由来のブロマミンは8−BrdGの生成を促進していることがわかった。また、図4に示すように、タウリン濃度に応じて8−BrdGの生成量が増大していた。これに対して、8−CldG濃度とタウリン濃度にはこうした関係は認められなかった。以上のことから、タウリンが濃度依存的に8−BrdGの生成量を増大させることがわかった。
(実施例2)
(2−デオキシグアノシン(dG)と次亜臭素酸(HOBr)との反応)
50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)中、2mMのdGと1mMのHOBrとを37℃で1時間インキュベートし、10mMとなるようにメチオニンを添加して反応を停止させた。反応液をLC/MSに供して8−BrdGが合成されたことを確認した。8−BrdGはLCにより保持時間約15分程度に溶出し、MSにて8−BrdGに特異的なm/z345.9、347.9を確認した。HPLC条件を以下に示す。
HPLC条件
カラム:ODS−HG−5(直径4.6mm×250mm)
流速:1.0ml/分
移動相A:HO/0.1%酢酸
移動相B:メタノール/0.1%酢酸
グラジエント:0〜5分、10%
5〜15分、20%
15〜20分、100%
20〜28分、100%
29〜39分、10%
(実施例3)
(1)抗原の調製
8−BrdGのスクシニル化物4.0mg、EDC(ピアス社製)2.0mg及びsulfo−NHS(ピアス社製)2.0mgをDMF160μlに溶解し、室温で24時間攪拌しながらインキュベートした。この液の半量を、KLH溶液(15.7mgを1.89mlの50mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解したもの)に加えて、室温で4時間インキュベートした。さらに、この反応液を、リン酸緩衝生理食塩水に対し、透析外溶液を適時に交換しながら4℃で3日間透析し、8−BrdG−KLHを得、これを抗原とした。なお、上記24時間インキュベーションした反応液の半量について、KLHに替えてBSAを用いる以外は同様の操作を行い、8−BrdG−BSAを得た。
(2)免疫方法
上記抗原(0.2〜0.6mg/mL)は等量のフロイントの完全アジュバントとよく混合してエマルジョンとし、これをマウス(BALB/c、オス、6〜8週齢)の腹腔内に100μl免疫した。初回免疫から10〜14日後、抗原と等量のフロイントの不完全アジュバントをよく混合してエマルジョンとして、追加免疫を行った。追加免疫から3週間後、抗原とリン酸緩衝生理食塩水(略号:PBS)を混合して最終免疫を行った。なお、抗体価は、追加免疫の1週間後、マウス尾静脈から血液を採取し、1時間室温で静置して凝固させた後、3500rpmで10分間遠心し上清(血清)を用いて酵素免疫化学的方法で抗原に対する抗体が産生していることを確認した。
抗体価の確認は以下のようにして行った。(1)で得た8−BrdG−BSAを5μg/mlとなるように、PBSで希釈して100μlずつを、96穴イムノプレートのウェルに分注し、4℃で一晩静置して物理吸着させた。その後、0.05%Tween20−リン酸緩衝食塩水(pH7.4)(以下、「TPBS」と略す。)200μlで3回洗浄した後、ブロックエース(雪印乳業(株)社製)0.4mgを水10mlに溶解させたもの(以下、「ブロッキング液」と略す。)200μlをウェルに分注し、37℃で一時間放置してブロッキングを行った。
上記と同様にして各ウェルを洗浄後、このプレートのウエルにマウスから得られた血清(緩衝液で希釈した血清を含む。)(100μL/ウエル)を入れて、37℃で2時間反応させた。
ウェルを洗浄後、ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識されているマウス抗体に反応するウサギ抗体をTPBSで5000倍希釈した液100μlを各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベーションした。ウエルを洗浄後、発色バッファー(40mMクエン酸と40mMNaHPOとを混合してpH5.0に合せたもの):テトラメチルベンジジン(TMB)のDMF溶液(TMB10mgをDMF1mlに溶解したもの):30%H混液(5000:50:2)(以下、これを発色液という。)100μlを添加しアルミホイルで遮光して10分間反応させ、発色反応を1Nリン酸を100μlづつ加えて停止させ、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定して抗体価の確認を行った。
(3)細胞融合
免疫したマウスからマウス脾臓を摘出し、よくほぐして脾細胞を得た。得られた脾細胞はFBS−FREE/DMEMで洗浄した。この洗浄した脾細胞と同様にFBS−FREE/DMEMでよく洗浄したミエローマ細胞であるマウス脾細胞(P3U1)との細胞数が10:1の割合になるように混和し、遠心して上清を捨てたあと、ポリエチレングリコール1500の75mMHEPES溶液(PEG1500 50w/v%溶液)1mlを1分間かけて添加して緩やかに攪拌した。これに、FBS−FREE/DMEM培地計10mlを数回に分けて徐々に添加した後、5分間遠心分離して上清を除去、ハイブリッド細胞を調製した。
(5)クローニング
得られたハイブリドーマに80mLのHAT培地を加えて細胞を懸濁し、96穴マイクロプレートの各ウエルに1滴ずつ分注し、HAT培地により選択的にハイブリッド細胞を増殖させた。融合から10日後、培養上清を用いて酵素免疫化学的方法によりスクリーニングを行った。なお、抗体価の確認方法は、前述の抗体価の確認方法と同様であるが、試験に用いる試料として血清の代わりに得られた培養上清を用いた。このスクリーニングにより抗体活性の確認されたウエルの細胞について再び限界希釈を行いHT(HAT培地からアミノプテリンを除いたもの)培地で培養し、最終的にはスクリーニングと限界希釈を繰り返すことにより8−BrdGに対して高い抗体活性を有し、且つ単一の細胞からなるクローン1株(8B3株)を得た。
なお、以上の操作において用いた培地等は以下の表1に示す組成であった。
(実施例3)
実施例2で得られたクローンから得られた抗体の反応特異性について確認を行った。なお、検討に用いるモノクローナル抗体(mAb8B3)は、培養上清を希釈してそのまま用いた。
(1)モノクローナル抗体の反応特異性の評価
本発明のモノクローナル抗体(mAb8B3)の反応特異性を酵素免疫測定法にて評価した。すなわち、96穴イムノプレート(Nunc社製、マキシソープ)にウエル当たり100μlのタンパク質あるいは修飾タンパク質(4μgタンパク質/ml)を加え、4℃で一昼夜静置してプレートに物理吸着させ、ウエル当たり300μlのTPBSで3回洗浄した後、1%BSA含有TPBSもしくは蒸留水で4倍希釈したブロックエース(雪印乳業(株)社製)をウエル当たり300μl加えてブロッキングした。このプレートを上記と同様にTPBSで3回洗浄した後、ウエル当たり100μlのTPBSで希釈した本モノクローナル抗体溶液(1μg/ml)を加えて、37℃で3時間インキュベートした。インキュベート後、上記と同様にTPBSで3回洗浄した後、ウエル当たり100μlの酵素標識抗体溶液を加えて、37℃で1時間インキュベートした。このプレートをTPBSで3回洗浄した後、ウエル当たり100μlの発色液を加えて室温で15−20分間インキュベートした。ウエル当たり100μlの反応停止液を加えた後、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定し、本発明のモノクローナル抗体の反応特異性を評価した。なお、タンパク質としては、BSAを用い、修飾タンパク質としては、8−BrdGと同様にしてBSAを修飾した8−BrdG−BSAを用いた。結果を図5に示す。図5に示すように、mAb8Bは、遊離の8−BrdGを認識することが明らかとなった。
(2)モノクローナル抗体の反応特異性の解析
本発明のモノクローナル抗体(mAb8B3)の反応特異性を酵素免疫測定法にて評価した。すなわち、96穴イムノプレートに抗原の調製法に準じて調製した8−BrdG−BSAを加えてプレートに物理吸着させたプレートのウエルに、本発明によるモノクローナル抗体のかわりに、本発明によるモノクローナル抗体(1μg/mL)に各種濃度の競合物質を添加したものを試料とする以外は前記の(1)のモノクローナル抗体の反応特異性の評価に記載の方法と同様にして吸光度を測定し、本発明のモノクローナル抗体の反応特異性を評価した。
(1)糖の影響
競合物質として、G、dG、8−BrG、8−BrdGを用い、競合酵素免疫測定法により糖の影響を評価した。結果を図6に示す。図6に示すグラフにおいて、縦軸はそれぞれ競合物質の存在下における吸光度、横軸は競合物質の濃度を示している。図6に示すように、mAb8Bは、8−BrdGに対してのみ高い反応性を示したことから、糖を含んだ構造を認識すること及び8−BrdGを特異的に認識することが明らかであった。
(2)塩基及びハロゲンの影響
競合物質として、HOBr及びHOClで修飾dG、dC、dT、dAを用い競合酵素免疫測定法により他の塩基及びハロゲンの影響を評価した。結果を図7に示す。図7に示すように、mAb8Bは、8−BrdGのほか8−CldGを認識することが明らかとなった。
(3)dGの8位における置換基の影響
競合物資として、dG、8−BrdG、8−CldG、8−OHdGを用い競合酵素免疫測定法により、dGの8位における置換基の影響を評価した。結果を図8に示す。図8に示すように、mAb8Bは、8−BrdGに対して最も高い反応性を有していることが明らかであった。
なお、実施例3によれば、8−BrdGのIC50は12μg/mlであり、8−CldGのIC50は238μg/mlであった。
8−BrdGの生成反応を示す図である。 8−BrdG−KLHの合成の概要を示す図である。 各種アミノ酸のブロマミンと8−BrdGの生成量との関係を示す図である。 タウリン濃度と8−BrdG生成量との関係を示す図である。 実施例2で得られたモノクローナル抗体(mAb8B3)の反応性を示す図である。 実施例2で得られたモノクローナル抗体(mAb8B3)のエピトープの解析結果を示すグラフである。 実施例2で得られたモノクローナル抗体(mAb8B3)のエピトープの解析結果を示すグラフである。 実施例2で得られたモノクローナル抗体(mAb8B3)のエプトープの解析結果を示すグラフである。 好中球を介してハロゲン化過酸化種の生成による生体防御機構の概要を示す図である。

Claims (19)

  1. 8−ブロモデオキシグアノシンを特異的に認識する抗体。
  2. モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
  3. 請求項1又は2に記載の抗体を備える、8−ブロモデオキシグアノシンの測定キット。
  4. 前記測定キットは、動物から採取される被験試料中の8−ブロモデオキシグアノシン量を測定することにより前記動物における炎症反応の程度を判定する、請求項3に記載の測定キット。
  5. 前記測定キットは、動物から採取される被験試料中の8−ブロモデオキシグアノシン量を測定することにより前記動物における炎症反応に由来するDNA損傷の程度を判定する、請求項4に記載の測定キット。
  6. 固相担体と、
    該固相担体に固定化される請求項1又は2に記載の抗体と、
    を備える、固定化体。
  7. 請求項1又は2に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
  8. 生体における酸化的損傷の測定方法であって、
    動物から採取される被験試料中の8−ブロモデオキシグアノシン量を測定する工程を備える、測定方法。
  9. 前記測定工程は、8−ブロモデオキシグアノシン量を請求項1又は2のいずれかに記載の抗体を用いて測定する工程、
    を備える、測定方法。
  10. 前記測定工程は、ELISA法によって実施する、請求項9に記載の測定方法。
  11. 前記測定工程の測定結果に基づいて前記動物における炎症反応の程度を判定する判定工程を備える、請求項8〜10のいずれかに記載の測定方法。
  12. 前記測定工程の測定結果に基づいて前記動物における炎症反応によるDNA損傷の程度を判定する判定工程を備える、請求項8〜10のいずれかに記載の測定方法。
  13. 前記測定工程の測定結果に基づいて前記動物における8−ブロモデオキシグアノシンが関連する疾患を診断する診断工程を備える、請求項8〜10のいずれかに記載の測定方法。
  14. 炎症反応に関連する化合物のスクリーニング方法であって、
    (a)1種又は2種以上の試験化合物と活性化された好中球とを臭素イオンの存在下に接触させる工程と、
    (b)前記(a)工程で得られた好中球培養液の8−ブロモデオキシグアノシン量を測定する測定工程と、を備える、スクリーニング方法。
  15. 前記測定工程は、8−ブロモデオキシグアノシン量を請求項1又は2に記載の抗体を用いて測定する工程である、請求項14に記載のスクリーニング方法。
  16. 前記炎症反応に関連する化合物は、炎症反応を調節する化合物である、請求項14又は15に記載のスクリーニング方法。
  17. 前記炎症反応に関連する化合物は、炎症反応に由来するDNA損傷を抑制する化合物である、請求項14又は15に記載のスクリーニング方法。
  18. 前記炎症反応に関連する化合物は、DNA損傷が関連する疾患の予防用又は治療用の薬剤である、請求項14又は15に記載のスクリーニング方法。
  19. 8−ブロモデオキシグアノシンを含有する、炎症反応関連酸化的損傷マーカー化合物。
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