JP2007091257A - シーリング材を備えた密閉容器 - Google Patents

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光生 町田
Shiyusoku Takano
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Abstract

【課題】閉蓋時の気密性を確保すると共に経時的な気密性の低下を抑える。
【解決手段】インキ缶は蓋3と缶胴4及び底部とを備えている。蓋3のリング状嵌合凹部8に発泡性のシリコーン系のシーリング材9を設けて、缶胴4との嵌合時に気密にシールする。シーリング材9は硬度がHS(ショア硬度)15〜19に設定すると共に圧縮永久歪み率を40〜70%に設定する。シーリング材9は、厚さを2.0mm〜3.5mmに設定する。嵌合後に蓋3の嵌合凹部8の外周側部のかしめ部8aを缶胴4側にかしめることで閉蓋を完了する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、インキ等の各種の液状またはペースト状等の内容物を気密に密閉するインキ缶等の密閉容器に関する。
従来、この種の密閉容器として、例えばインキ缶がある。インキ缶は蓋と缶胴と底部とを有していていわゆる2ピース缶と3ピース缶とがある。2ピース缶は打ち抜きで缶胴と底部とを一体形成してなり、3ピース缶は缶胴の両側部を溶接で接合して溶接継ぎ目を形成し、更に底部を缶胴に巻き締めて一体化している。
酸化重合型のインキはインキ缶内に充填したインキの表面が空気に接触すると乾燥硬化して皮張りといわれる皮膜が形成されてしまう。そのため、PETシートフィルム等からなる中蓋をインキ表面に被せて空気に接触するのを遮断している。しかしながら、中蓋にインキが付着するために全量使用するには中蓋に付着したインキをこそげ取って使用しなければならず、煩雑であった。また中蓋は開蓋後に廃棄して産業廃棄物となる等の問題があるために、中蓋に代えて缶内を窒素ガス等の不活性ガスで充填する方法が採用されてきている。
そのため、インキの充填後にインキ缶を気密に密封して閉蓋する必要性が増している。この場合、インキ缶内を減圧状態にして不活性ガスで置換して閉蓋する方法と、常圧下で不活性ガスに置換して閉蓋する方法とが行われている。前者の方法は減圧チャンバーやポンプ等を必要とし、コスト高になる上に、減圧によってインキ中に含まれる空気が表面に浮上するため、閉蓋後の缶内の酸素濃度が3〜6%になりインキ表面に皮張りができ易かった。しかも缶内は減圧状態で閉蓋するために缶内部が負圧になり、人の手による開蓋が困難であるという欠点がある。後者の方法は、減圧チャンバーやポンプを必要としないために低コストであり、缶内の酸素濃度も皮張りを防止できる0.5%程度に抑制できるが、3ピース缶では缶胴が溶接で接合されているために接合継ぎ目に段差ができてしまい、気密性が失われ易いので高いシール性が要求されている。
このような3ピース缶について下記特許文献1に記載されたものがある。このインキ缶では、蓋の内面に発泡性のシーリング材をライニングして、閉蓋時にシーリング材を缶胴の上縁部で圧縮接合することで気密に封止している。
また缶蓋用のシーリング材として下記特許文献2に記載された塩化ビニル系の材質を用いたものがある。
実用新案登録第3075439号公報 特開2005−75355号公報
ところで、常圧下で閉蓋する場合、特許文献1では、シーリング材として単に発泡性ポリビニルクロライド等の塩化ビニルを採用するというだけの記載しかなく、硬度等のシーリング材の特性が不明であるために、蓋を缶本体に嵌合した際にシーリング材による缶本体との気密性を必ずしも十分得られなかった。特に、2ピース缶は缶胴に溶接継ぎ目による段差がないためにシーリング材による気密性を比較的得やすいが、3ピース缶では缶胴に溶接継ぎ目による段差があるためにシーリング材との間に隙間ができ易く厳密な気密封止が困難であった。
また、特許文献2では、シーリング材として塩化ビニル系の材質を採用していて材質の硬度がショア硬度20〜30程度と大きいために、製造当初の嵌合時には弾性圧縮性能によるかしめを十分行えて気密性を確保して微粉等のカス発生を防止できるものの、インキ缶等は製造日から数ヶ月、1年或いは2年程度の期間未開蓋で性能保証されているため、経時的にシーリング材の弾性圧縮性能が劣化して気密性が低下することが抑制されなければならなかった。しかしながら、上述した塩化ビニル系等のシーリング材を用いると未開封でも経時的な劣化を起こすためにインキ缶内部に空気がリークされ易いという欠点があった。そのために数ヶ月から1年または2年に亘る経時変化によって、シーリング材の気密性が低下してインキ等の内容物の表面に皮張りを生じ易くなるという不具合があった。
本発明は、このような実情に鑑みて、製造時はもとより経時的にも気密性を維持できるようにした密閉容器を提供することを目的とする。
本発明による密閉容器は、蓋と胴部及び底部とを備えていて、蓋と胴部との嵌合部分に設けた発泡性のシリコーン系シーリング材によって蓋と胴部とを気密にシールするようにしたシーリング材を備えた密閉容器であって、シーリング材は硬度がHS(ショア硬度)15〜19に設定されていると共に圧縮永久歪み率が40〜70%に設定されていることを特徴とする。
本発明では、蓋と胴部との密閉部分で、シーリング材が発泡性を有することで硬度が大きくなりすぎるのを抑制し、ショア硬度HS15〜19、圧縮永久歪み率40〜70%に設定したから硬度が適度でシーリング材を弾性的に圧縮変形させて十分かしめることができて気密性(耐圧性)を確保できると共に微粉等のカスが発生するのを防止できる。しかも製造(閉蓋)時だけでなく時間が経過した後でもシーリング材による密封性の低下を抑制して気密性を維持できる。
本発明による密閉容器によれば、閉蓋時に蓋と胴部との密閉部分でショア硬度HS15〜19、圧縮永久歪み率40〜70%の発泡性のシーリング材が圧縮されて弾性変形して気密性を確保すると共にカスの発生を防止できる。しかも、閉蓋時だけでなく経時的にも密封性の低下を抑制して気密性を維持できる。
本発明による密封容器では、シーリング材は、胴部と嵌合する前の状態で厚みが2.0mm〜3.5mmに設定されていることが好ましい。
シーリング材の厚みが上記範囲内であれば、閉蓋時に蓋と胴部の嵌合によってシーリング材が圧縮されて弾性変形することで確実に気密シールでき、特に蓋と溶接継ぎ目を有する胴部とを備えた密閉容器に好適である。しかも、閉蓋時に圧縮されるシーリング材がちぎれたり摩耗したりして微粉等のカスが発生するのを防止できる。
他方、シーリング材の厚みが2.0mm未満であると気密性が低下し、3.5mmを越えると厚すぎるために閉蓋時のかしめの際等に蓋と胴部との間でシーリング材のカスが発生し易い欠点が生じ、また開蓋時に支点に相当するシーリング材部分の厚み変化が生じ難く開蓋が困難になる不具合が発生したり再度のかしめ等による閉蓋がしにくいという不具合が生じる。
以下、本発明の一実施例について図1乃至図6を参照しながら説明する。図1はインキ缶の蓋、図2は缶胴及び底部を示す図、図3は蓋のシーリング材部分の部分縦断面図、図4は缶胴の上縁部の部分縦断面図、図5は蓋と缶胴の嵌合状態を示す要部縦断面図、図6は缶胴と嵌合した蓋をかしめた状態の要部縦断面図である。
図1及び図2に示すインキ缶1(密閉容器)は、例えばブリキ材で形成されていて1kgの酸化重合型インキを充填する缶である。インキ缶1は缶本体2と蓋3とで構成されており、缶本体2は缶胴4(胴部)と底部5とを例えば巻き締め接合することで構成されている。蓋3は略円形の中央平面部7とその周囲のリング状凹部7aと更にその外周側に設けたリング状の嵌合凹部8とで構成されている。
図3に示すように、嵌合凹部8は凹部7aとは上下逆方向に凹陥部を形成した略逆U字状を呈しており、その内奥部には厚みtのシーリング材9が嵌合凹部8に沿ってリング状に配設されている。嵌合凹部8の外側側部は凹部7aよりも下方に延びて蓋カール部10が全周に形成されている。嵌合凹部8の外側側部のうち、シーリング材9と蓋カール部10との間の領域がかしめ部8aに相当する。
他方、缶胴4は図2及び図4に示すように、底部5から上端縁4aの開口部に向かって漸次内径が拡径するテーパ筒状に形成され、上端縁6の近傍には外側に略V字状に突出するビード部12が全周に亘って形成されている。このビード部12は閉蓋状態で蓋3の蓋カール部10との間に開缶工具(オープナ)の先端部を差し込んで捻ることで蓋3を開缶させるために用いる(図6参照)。
缶胴4の上端縁4aは外側にカールして缶胴カール部13が全周に亘って形成されている。そして缶本体2の上端縁4aに蓋3の嵌合凹部8を対向させて嵌合させることで、缶胴カール部13に蓋3の嵌合凹部8が嵌め込まれ、缶胴カール部13でシーリング材9を圧縮して接合し、気密に封止されることになる。
ここで、蓋3の嵌合凹部8内に設けたシーリング材9は図3に示すように縦断面視略半円状に形成され、乾燥固化前に塗布性と発泡性とを有している、例えばシリコーン系コンパウンドからなる。その成分は例えば、ポリエーテル系ポリマーを主成分として、ポリエステル系重合可塑剤またはエポキシ大豆油等の可塑剤も含んでいる。
そして、その他充填剤、安定剤、発泡剤、硬化剤、軟化剤、樹脂等を適宜含有している。充填剤はシーリング材9の強度や耐衝撃性を向上させるもので、例えば、コロイダルシリカ、無水ケイ酸等を配合できる。安定剤は貯蔵安定性を向上させるもので、脂肪族不飽和結合含有化合物、有機窒素化合物等を配合する。発泡剤はシーリング材9を塗布した後の乾燥固化による収縮を防ぎ弾力性と柔軟性、膨張性を確保するもので、空気や不活性ガスを混入させるか、或いは重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機発泡剤や有機発泡剤を用いる。硬化剤としてヒドロシリル基含有化合物などを用いる。軟化剤は必ずしも必要ではないが、硬化後のシーリング材に可塑性を付与するのに用いてもよく、ゴム用軟化剤、塩化ビニル樹脂等の軟化剤等を採用できる。
そして、シーリング材9の塗布に当たっては、例えば、上述の組成物を混合してなる液状のシーリング材9を蓋3の嵌合凹部8内に滴下し、蓋3を中心軸回りに1回転することで嵌合凹部8内を液状のシーリング材9が全周に展延するディスペンサー塗布法を用い、展延後に乾燥固化させる。
特に、シーリング材9は、乾燥固化後であって閉蓋前の状態で、その硬度をショア硬度HS15〜19の範囲内に設定する。この範囲内であれば、閉蓋時に、蓋3と缶胴4を嵌合してシーリング材9を缶胴カール部13に圧縮し、蓋3のかしめ部8aを内側にかしめた状態でシーリング材9がちぎれたり摩耗したりしてカスが発生することを防止できる強度を有すると共に、缶胴カール部13で弾性的に圧縮されたシーリング材9に十分な弾性と復元性を確保して気密にシールできる。
他方、ショア硬度HSが15未満であると、シーリング材9の硬度が低いのでかしめ時にシーリング材9が巻き込まれてかしめ量が多すぎてしまい蓋に引っかかって開缶しにくくなると共に微粉がちぎれてカス(パッキンカス)として落下し易い。またHSが19を越えると弾性(クッション性)が低下するために嵌合時やかしめ時に弾性が不十分で十分な気密性を得られないことになる。
硬度の設定はシーリング材9の組成物の混合時に硬化剤や軟化剤の配合量を調整することで行うことができる。
またシーリング材9の圧縮永久歪み率は40%〜70%の範囲内で製造当初はもとより未開蓋で数ヶ月から1年や2年経過した状態でも十分な気密性を確保できて内容物の酸化等を確実に防止できる。他方、圧縮永久歪み率が40%未満であると復元性は一層良好になるが歪み率が低すぎて硬いゴム状になりパッキン材として製作できず、十分なかしめを行えない欠点がある。また70%を越えると復元性が大きく低下するために気密性が低下する欠点がある。
また、シーリング材9は、1kgインキ缶の場合、閉蓋前の状態で嵌合凹部8内で厚みtが2.0mm〜3.5mmの範囲に設定するものとし、好ましくは2.4mm〜3.4mmの範囲、更に好ましくは3.0mmに設定する。厚みtが2.0mm〜3.5mmの範囲内であれば、上述した硬度との関係で、嵌合及びかしめ時に十分な弾性と復元性による気密シール性を確保できる。厚みtが2.0mm未満であると嵌合時やかしめ時にシーリング材9と缶胴カール部13との接触面積が小さくなって気密シール性が不十分になりインキの皮張りが発生し易く、3.5mmを越えるとシーリング材9が厚すぎてかしめが困難(缶胴に座屈が起きる)になったり、かしめ位置が変わることにより作業性(蓋開作業及び再度の閉蓋作業)が悪化するおそれがある。
本実施例による3ピース缶のインキ缶1は上述の構成を有しており、その閉蓋工程を説明する。先ず常圧下で、酸化重合型のインキを充填した缶本体2の開口部付近に蓋3を対向させて配設し、窒素ガス充填用の不活性ガスノズルを開口部内に挿入して缶本体2の内部の空気を窒素ガスに置換する。そして蓋3の嵌合凹部8を缶本体2の缶胴4の上端縁4aに設けた缶胴カール部13に圧縮嵌合させる。これによって図5に示すように、嵌合凹部8内のシーリング材9が缶胴カール部13で圧縮変形されて嵌合する。
そして蓋3のかしめ部8aを缶胴4側に絞り込んで内側に凹ませることで全周に亘ってかしめを行う。これによって図6に示すように嵌合凹部8が更に缶胴カール部13の回りに絞り込まれ、シーリング材9は更に缶胴カール部13に圧縮され、圧縮部分を中心にその周囲を含めて弾性力で缶胴カール部13に密着することになって一層確実に気密にシールされる。
特に本実施例では、ショア硬度と圧縮永久歪み率の数値範囲をバランスさせることで製造(閉蓋)時はもとより時間が経過した状態でもシーリング材9の気密性を確保できる。
上述のように本実施例によれば、シリコーン系コンパウンドで構成したシーリング材9を、その硬度をHS15〜19、圧縮永久歪み率を40〜70%、厚みtを2.0〜3.5mmの範囲に設定することで、かしめ時にシーリング材9からカス等が発生せず確実に気密に封止できる。特に3ピース缶を用いて缶胴4の溶接継ぎ目に段差があっても確実に気密にシールできる。しかもインキ缶1の製造時の嵌合及びかしめ時だけでなく、その後4ヶ月、1年、2年と時間が経過した状態でもシーリング材9の気密性の低下を抑制できる。
(試験例)
次に本発明の実施例についてシーリング材9の硬度と圧縮永久歪み率による閉蓋時の気密性とシーリング材9の損傷(カスの発生)について、そして経時変化後の気密性について試験を行った。
試験に用いるインキ缶1はブリキ製による3ピース缶とし、酸化重合型のインキ1kgを充填する缶を用いた。インキは例えば黄色系有機顔料であるジスアゾを用いた黄色インキを用いた。蓋3の内径は蓋カール部10を除いて例えば141.5mm、嵌合凹部8の幅3.75mm、蓋カール部10を含む高さ8.5mm、缶本体2の高さ95.0mm、缶胴カール部13の外径140.7mm、缶胴カール部13の幅2,5mm、高さ2.4mmとした。
試験に用いるシーリング材9は、液状のシーリング材9を蓋3の嵌合凹部8内に170rpmで回転させながら滴下し、シーリング材9をライニングさせた。乾燥後に得られたシーリング材9の厚みtは3.0mmとした(厚みtの誤差は±0.5mm以内)。
実施例は、発泡剤を含有するシリコーンを主成分として、硬度HS15〜19、圧縮永久歪み率40〜70%を満足するシーリング材9を用いた。試験に用いる実施例によるシーリング材(パッキン材)9のサンプルとして、シリコーン系コンパウンドである実施例1、実施例2、実施例3、実施例4を採用した。なお、各シリコーン系コンパウンドはポリエーテル系ポリマーを主成分として、ポリエステル系重合可塑剤またはエポキシ大豆油等の可塑剤と発泡剤を含み、更に硬化剤、発泡助剤、その他配合剤、充填材、滑剤、軟化剤、着色剤、粘着付与剤、界面活性剤、レベリング剤、減粘剤、増粘剤、樹脂等を適宜選択的に配合して組成した。
比較例は、発泡剤を含有するシリコーンを主成分として、硬度HS15〜19、圧縮永久歪み率40〜70%のいずれかを満たさないシーリング材と、塩化ビニル系のシーリング材とを用いた。比較例のシーリング材は、上述のシリコーン系コンパウンドと同様な成分を含む、硬度HS28のシリコーン系コンパウンドである比較例1、硬度HS4のシリコーン系コンパウンドである比較例2、永久圧縮歪み率31%、硬度HS29の非発泡性シリコーン系コンパウンドである比較例3、塩化ビニル系シーリング材として、1種の塩化ビニル(PVC)FH330−3(福岡パッキング(株)製)のシーリング材である比較例4、2種の塩化ビニルFH330−3(福岡パッキング(株)製)及びDAREX(登録商標) COV H29OP (グレースジャパン(株)製)の配合比率(重量%比)を2:1で混合したシーリング材である比較例5を用いた。
(1)シーリング材の硬度測定
硬度測定に際しては、各サンプルについてJIS K6301−1995に準拠した性能を持つ硬度計を用いて測定した。測定時間は30秒:印加する荷重1kg:温度20℃・65%RHとした。
(2)圧縮永久歪み率の測定
圧縮永久歪み率の測定に際しては、JIS K6262−1997に規定する「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」に準拠して圧縮永久歪み率を測定した。試験は圧縮率50%とし、雰囲気温度70℃で72時間圧縮する。そして開放後20分経過した後のシーリング材の厚みt′を測定した。得られた圧縮永久歪み率は数値が小さい程復元性が良好といえる。
(3)耐圧試験(気密性試験)
インキ缶1の内部について常圧で窒素ガスに置換しているが、気密性の試験に際しては、密閉したインキ缶1の外部から内部への空気のリークは測定困難であるため、次の耐圧試験方法を採用した。即ち、図7に示すように気密に密閉したインキ缶1の蓋3に圧縮空気注入用のチューブ20を貫通させて気密状態に保持する。他方、蓋3と缶胴4とのシーリング材9による嵌合部分の周囲全周に亘って石けん水21を塗布しておく。そして、0.005MPaきざみで加圧した加圧空気をチューブ20を通してインキ缶1内に順次注入してインキ缶1内部の内圧を加圧させて、蓋3及び缶胴4の嵌合部からの加圧空気の漏洩を石けん水21の膜膨張の有無によって目視で確認した。そして石けん水21の膜膨張時をリーク発生時として圧力メータ(レギュレータ)で内圧を測定し、これを耐圧圧力値とした。
耐圧試験において、インキ缶1の内圧が0.03MPaを越えた場合には石けん水21の膜の膨張(リーク)が全くないものとして○、内圧が0.02〜0.03MPaの範囲内であったものを△、内圧が0.02MPa未満のものを×とした(表1参照)。
(4)パッキンカス評価(発生率)
シーリング材9については閉蓋時(製造時)に蓋3を缶胴4に嵌合させてかしめ部8aでかしめた後、開蓋した際に微粉のカスが発生しているか否かを目視で観察した。各実施例及び比較例についてそれぞれ10缶づつ試験を行い、各缶毎に目視確認できるカスの有無によって発生率(%)を測定した。
そして、各実施例と比較例それぞれ各10缶について試験を行った。
各シーリング材9として、上述したシリコーン系コンパウンドからなる実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、各比較例1、比較例2、比較例3を用い、塩化ビニルからなる比較例4、比較例5について、製造時の圧縮永久歪み率(%)、ショア硬度HSを測定し、耐圧試験、パッキンカスの発生率を測定すると下記表1に示す通りになった。
Figure 2007091257
表1に示す結果から、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4については硬度HS15〜19、圧縮永久歪み率40〜70%の範囲に入っており、耐圧試験、パッキンカス評価のいずれも良好であった。
これに対し、比較例1は気密性に劣り、比較例2はカスの発生率100%と多く、比較例3についてもカスの発生が100%と多かった。塩化ビニルの比較例5については耐圧試験、カス発生のいずれも良好であった。
次に実施例のうち測定結果の良好な実施例1を代表例として選択して各20缶、比較例として比較例1〜5中最も製造時の測定結果が良い2種混合塩化ビニルの比較例5を代表例として選択して各10缶、それぞれ経時的な気密性を耐圧試験で測定した。試験方法として実施例1の各20缶については製造時の0ヶ月から10ヶ月まで各1ヶ月毎、比較例5の各10缶についても製造時の0ヶ月から4ヶ月まで1ヶ月毎に上述の耐圧試験を行い、0ヶ月をサンプル1として1ヶ月づつ加算したそれぞれの月のインキ缶1をサンプル2〜5として示した。
試験結果において、実施例1は各20缶の平均耐圧(kPa)、比較例5は各10缶の平均耐圧(kPa)で示すと、下記の表2に示す通りになった。実施例1と比較例5について試験を行った月数(0〜10ヶ月、0〜4ヶ月)と耐圧(kPa)との関係を示すと図8に示すようになった。図8では実施例1と比較例5の耐圧をMPaで示している。
なお、表2及び図8において、比較例5が製造後4ヶ月までしか試験していないのは、塩化ビニル系2種混合のシーリング材は4ヶ月経過した状態での経時的な耐圧性の低下が大きい(下記記載のようにインキ表面に皮張りを発生させる耐圧値25kPaに近い値になる)ために4ヶ月以上の測定に意味がないからであり、そのため4ヶ月で試験を中止した。
Figure 2007091257
表2及び図8に示すように、耐圧試験において、製造時点における初期では実施例1のシリコーン系コンパウンドと比較例5の2種混合塩化ビニルとで耐圧性(気密性)に差はほとんどない。そして実施例1は、当初の1、2ヶ月では耐圧の低下が比較的大きいが、その後は耐圧性の低下率が押さえられ、10ヶ月保管経過した後の耐圧は0.034MPa(34kPa)であった。他方、比較例5は初期から4ヶ月経過までの耐圧性の低下が実施例1よりもかなり大きい。
そのため、実施例1は比較例5と比較して経時的に高い耐圧性を確保でき、閉蓋後に10ヶ月保管・経過して経時変化した後の密閉性が高いことを確認できる。
また、これら実施例1と比較例5の経時的な平均耐圧の減衰率をグラフで表すと図9に示すようになる。図9では、縦軸の平均耐圧(別の見方によるとシーリング材の応力緩和によるものと考えられる)を表2に示すようにkPaで表示し、横軸の放置日数を自然対数で示す(ln(t):t=日数)。図9において、表2に示す実施例1と比較例5の試験日の時間ln(t)と平均耐圧(kPa)をプロットして近似直線により平均耐圧の減衰率を書き込む。次いで、初期(ln(t)=0.0000)から300日(ln(t)=5.7038)までのデータで回帰式を求める。なお、一般に0.01時間後の応力を初期の応力としている(昭和54年4月、社団法人日本ゴム協会発行「ゴム工業便覧」P1246〜1247参照)。
そして、インキ缶1の最大耐用年数である2年後の耐圧を推定すると、実施例1ではln(720)=6.57925であり、耐圧は31.48kPaになる。他方、比較例5では同様にln(720)で、耐圧は20.05kPaになる。これまでの試験により、インキ缶1の耐圧が25kPa以下になるとインキ表面に皮張りが発生し易くなる。実施例1では耐圧は31.48kPaであるため、インキ表面に皮張りは発生せず、比較例5では耐圧は20.05kPaであるため、インキ表面に皮張りが発生すると推定できる。
従って、比較例5に対して実施例1によるインキ缶1は最大耐用年数経過後でも大きな気密性を確保できる。なお、通常インキ缶1は4ヶ月程度で使い切ることが多く、長くても1年程度で使い切ることになるため、この場合でも実施例1によるシリコーン系コンパウンドの方が比較例5による2種混合塩化ビニルのシーリング材よりも高い気密性(耐圧性)を維持できることを確認できた。
また、シーリング材の材質としてウレタン(圧縮永久歪み率が70〜96%、HS13〜20)を用いた場合、ウレタンはべたつく材質であるために、開蓋時にカスの発生が多い欠点があり、好ましくない。
尚、上述の実施例ではビード部12を設けた缶胴4を用いたが、図10に示すように缶胴4にビード部12を設けないストレート状や上縁部付近をその下部よりも拡径させた段差付きに形成してもよい。ビード部12を設けないため、例えば200kg程度の荷重で蓋3を缶本体2に嵌合しても、缶本体2に座屈を生じない。またインキがビード部12内面に残らない。
本発明による実施例では、缶胴に溶接継ぎ目を有する3ピース缶について説明したが、本発明は2ピース缶等にも採用できることはいうまでもない。また、本発明はインキ缶1に限定されることなく、各種の液状物やペーストや固体等を充填・収納して気密にシールする缶等の密閉容器全てに適用できる。
また本実施例ではシーリング材9の厚みtを2.0〜3.5mmに設定したが、これの限定されることはなく多少外れた厚みでもよい。例えば±0.5mm程度の誤差があってもよい。
本発明の実施例によるインキ缶の蓋を示すもので、(a)は部分平面図、(b)は一部破断側面図である。 図1に示す蓋を嵌合する缶本体を示す一部破断側面図である。 図1におけるA部拡大図である。 図2におけるB部拡大図である。 缶本体に蓋を嵌合させた状態を示す部分断面図である。 図5に示す嵌合状態のインキ缶について蓋をかしめた状態を示す部分断面図である 密閉したインキ缶に圧縮空気注入用のチューブを気密に差し込んだ圧縮試験用の説明図である。 密閉したインキ缶内の耐圧の経時的な変化を示す測定図である。 対数関数で示す経時的変化に対するインキ缶の平均耐圧の減衰率を示すグラフである。 ビード部を設けない缶胴を示す一部破断側面図である。
符号の説明
1 インキ缶(缶;密閉容器)
3 蓋
4 缶胴(胴部)
5 底部
8 嵌合凹部
8a かしめ部
9 シーリング材
10 蓋カール部(第一カール部)
13 缶胴カール部(第二カール部)

Claims (2)

  1. 蓋と胴部及び底部とを備えていて、前記蓋と胴部との嵌合部分に設けた発泡性のシリコーン系シーリング材によって前記蓋と胴部とを気密にシールするようにしたシーリング材を備えた密閉容器であって、
    前記シーリング材は硬度がHS(ショア硬度)15〜19に設定されていると共に圧縮永久歪み率が40〜70%に設定されていることを特徴とする密閉容器。
  2. 前記シーリング材は、蓋と胴部とを嵌合させる前の状態で厚みが2.0mm〜3.5mmに設定されている請求項1に記載の密閉容器。

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