JP2007091257A - シーリング材を備えた密閉容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インキ缶は蓋3と缶胴4及び底部とを備えている。蓋3のリング状嵌合凹部8に発泡性のシリコーン系のシーリング材9を設けて、缶胴4との嵌合時に気密にシールする。シーリング材9は硬度がHS(ショア硬度)15〜19に設定すると共に圧縮永久歪み率を40〜70%に設定する。シーリング材9は、厚さを2.0mm〜3.5mmに設定する。嵌合後に蓋3の嵌合凹部8の外周側部のかしめ部8aを缶胴4側にかしめることで閉蓋を完了する。
【選択図】 図6
Description
酸化重合型のインキはインキ缶内に充填したインキの表面が空気に接触すると乾燥硬化して皮張りといわれる皮膜が形成されてしまう。そのため、PETシートフィルム等からなる中蓋をインキ表面に被せて空気に接触するのを遮断している。しかしながら、中蓋にインキが付着するために全量使用するには中蓋に付着したインキをこそげ取って使用しなければならず、煩雑であった。また中蓋は開蓋後に廃棄して産業廃棄物となる等の問題があるために、中蓋に代えて缶内を窒素ガス等の不活性ガスで充填する方法が採用されてきている。
このような3ピース缶について下記特許文献1に記載されたものがある。このインキ缶では、蓋の内面に発泡性のシーリング材をライニングして、閉蓋時にシーリング材を缶胴の上縁部で圧縮接合することで気密に封止している。
また缶蓋用のシーリング材として下記特許文献2に記載された塩化ビニル系の材質を用いたものがある。
また、特許文献2では、シーリング材として塩化ビニル系の材質を採用していて材質の硬度がショア硬度20〜30程度と大きいために、製造当初の嵌合時には弾性圧縮性能によるかしめを十分行えて気密性を確保して微粉等のカス発生を防止できるものの、インキ缶等は製造日から数ヶ月、1年或いは2年程度の期間未開蓋で性能保証されているため、経時的にシーリング材の弾性圧縮性能が劣化して気密性が低下することが抑制されなければならなかった。しかしながら、上述した塩化ビニル系等のシーリング材を用いると未開封でも経時的な劣化を起こすためにインキ缶内部に空気がリークされ易いという欠点があった。そのために数ヶ月から1年または2年に亘る経時変化によって、シーリング材の気密性が低下してインキ等の内容物の表面に皮張りを生じ易くなるという不具合があった。
本発明では、蓋と胴部との密閉部分で、シーリング材が発泡性を有することで硬度が大きくなりすぎるのを抑制し、ショア硬度HS15〜19、圧縮永久歪み率40〜70%に設定したから硬度が適度でシーリング材を弾性的に圧縮変形させて十分かしめることができて気密性(耐圧性)を確保できると共に微粉等のカスが発生するのを防止できる。しかも製造(閉蓋)時だけでなく時間が経過した後でもシーリング材による密封性の低下を抑制して気密性を維持できる。
シーリング材の厚みが上記範囲内であれば、閉蓋時に蓋と胴部の嵌合によってシーリング材が圧縮されて弾性変形することで確実に気密シールでき、特に蓋と溶接継ぎ目を有する胴部とを備えた密閉容器に好適である。しかも、閉蓋時に圧縮されるシーリング材がちぎれたり摩耗したりして微粉等のカスが発生するのを防止できる。
他方、シーリング材の厚みが2.0mm未満であると気密性が低下し、3.5mmを越えると厚すぎるために閉蓋時のかしめの際等に蓋と胴部との間でシーリング材のカスが発生し易い欠点が生じ、また開蓋時に支点に相当するシーリング材部分の厚み変化が生じ難く開蓋が困難になる不具合が発生したり再度のかしめ等による閉蓋がしにくいという不具合が生じる。
図1及び図2に示すインキ缶1(密閉容器)は、例えばブリキ材で形成されていて1kgの酸化重合型インキを充填する缶である。インキ缶1は缶本体2と蓋3とで構成されており、缶本体2は缶胴4(胴部)と底部5とを例えば巻き締め接合することで構成されている。蓋3は略円形の中央平面部7とその周囲のリング状凹部7aと更にその外周側に設けたリング状の嵌合凹部8とで構成されている。
図3に示すように、嵌合凹部8は凹部7aとは上下逆方向に凹陥部を形成した略逆U字状を呈しており、その内奥部には厚みtのシーリング材9が嵌合凹部8に沿ってリング状に配設されている。嵌合凹部8の外側側部は凹部7aよりも下方に延びて蓋カール部10が全周に形成されている。嵌合凹部8の外側側部のうち、シーリング材9と蓋カール部10との間の領域がかしめ部8aに相当する。
缶胴4の上端縁4aは外側にカールして缶胴カール部13が全周に亘って形成されている。そして缶本体2の上端縁4aに蓋3の嵌合凹部8を対向させて嵌合させることで、缶胴カール部13に蓋3の嵌合凹部8が嵌め込まれ、缶胴カール部13でシーリング材9を圧縮して接合し、気密に封止されることになる。
そして、その他充填剤、安定剤、発泡剤、硬化剤、軟化剤、樹脂等を適宜含有している。充填剤はシーリング材9の強度や耐衝撃性を向上させるもので、例えば、コロイダルシリカ、無水ケイ酸等を配合できる。安定剤は貯蔵安定性を向上させるもので、脂肪族不飽和結合含有化合物、有機窒素化合物等を配合する。発泡剤はシーリング材9を塗布した後の乾燥固化による収縮を防ぎ弾力性と柔軟性、膨張性を確保するもので、空気や不活性ガスを混入させるか、或いは重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機発泡剤や有機発泡剤を用いる。硬化剤としてヒドロシリル基含有化合物などを用いる。軟化剤は必ずしも必要ではないが、硬化後のシーリング材に可塑性を付与するのに用いてもよく、ゴム用軟化剤、塩化ビニル樹脂等の軟化剤等を採用できる。
特に、シーリング材9は、乾燥固化後であって閉蓋前の状態で、その硬度をショア硬度HS15〜19の範囲内に設定する。この範囲内であれば、閉蓋時に、蓋3と缶胴4を嵌合してシーリング材9を缶胴カール部13に圧縮し、蓋3のかしめ部8aを内側にかしめた状態でシーリング材9がちぎれたり摩耗したりしてカスが発生することを防止できる強度を有すると共に、缶胴カール部13で弾性的に圧縮されたシーリング材9に十分な弾性と復元性を確保して気密にシールできる。
他方、ショア硬度HSが15未満であると、シーリング材9の硬度が低いのでかしめ時にシーリング材9が巻き込まれてかしめ量が多すぎてしまい蓋に引っかかって開缶しにくくなると共に微粉がちぎれてカス(パッキンカス)として落下し易い。またHSが19を越えると弾性(クッション性)が低下するために嵌合時やかしめ時に弾性が不十分で十分な気密性を得られないことになる。
硬度の設定はシーリング材9の組成物の混合時に硬化剤や軟化剤の配合量を調整することで行うことができる。
そして蓋3のかしめ部8aを缶胴4側に絞り込んで内側に凹ませることで全周に亘ってかしめを行う。これによって図6に示すように嵌合凹部8が更に缶胴カール部13の回りに絞り込まれ、シーリング材9は更に缶胴カール部13に圧縮され、圧縮部分を中心にその周囲を含めて弾性力で缶胴カール部13に密着することになって一層確実に気密にシールされる。
特に本実施例では、ショア硬度と圧縮永久歪み率の数値範囲をバランスさせることで製造(閉蓋)時はもとより時間が経過した状態でもシーリング材9の気密性を確保できる。
次に本発明の実施例についてシーリング材9の硬度と圧縮永久歪み率による閉蓋時の気密性とシーリング材9の損傷(カスの発生)について、そして経時変化後の気密性について試験を行った。
試験に用いるインキ缶1はブリキ製による3ピース缶とし、酸化重合型のインキ1kgを充填する缶を用いた。インキは例えば黄色系有機顔料であるジスアゾを用いた黄色インキを用いた。蓋3の内径は蓋カール部10を除いて例えば141.5mm、嵌合凹部8の幅3.75mm、蓋カール部10を含む高さ8.5mm、缶本体2の高さ95.0mm、缶胴カール部13の外径140.7mm、缶胴カール部13の幅2,5mm、高さ2.4mmとした。
試験に用いるシーリング材9は、液状のシーリング材9を蓋3の嵌合凹部8内に170rpmで回転させながら滴下し、シーリング材9をライニングさせた。乾燥後に得られたシーリング材9の厚みtは3.0mmとした(厚みtの誤差は±0.5mm以内)。
比較例は、発泡剤を含有するシリコーンを主成分として、硬度HS15〜19、圧縮永久歪み率40〜70%のいずれかを満たさないシーリング材と、塩化ビニル系のシーリング材とを用いた。比較例のシーリング材は、上述のシリコーン系コンパウンドと同様な成分を含む、硬度HS28のシリコーン系コンパウンドである比較例1、硬度HS4のシリコーン系コンパウンドである比較例2、永久圧縮歪み率31%、硬度HS29の非発泡性シリコーン系コンパウンドである比較例3、塩化ビニル系シーリング材として、1種の塩化ビニル(PVC)FH330−3(福岡パッキング(株)製)のシーリング材である比較例4、2種の塩化ビニルFH330−3(福岡パッキング(株)製)及びDAREX(登録商標) COV H29OP (グレースジャパン(株)製)の配合比率(重量%比)を2:1で混合したシーリング材である比較例5を用いた。
硬度測定に際しては、各サンプルについてJIS K6301−1995に準拠した性能を持つ硬度計を用いて測定した。測定時間は30秒:印加する荷重1kg:温度20℃・65%RHとした。
(2)圧縮永久歪み率の測定
圧縮永久歪み率の測定に際しては、JIS K6262−1997に規定する「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」に準拠して圧縮永久歪み率を測定した。試験は圧縮率50%とし、雰囲気温度70℃で72時間圧縮する。そして開放後20分経過した後のシーリング材の厚みt′を測定した。得られた圧縮永久歪み率は数値が小さい程復元性が良好といえる。
インキ缶1の内部について常圧で窒素ガスに置換しているが、気密性の試験に際しては、密閉したインキ缶1の外部から内部への空気のリークは測定困難であるため、次の耐圧試験方法を採用した。即ち、図7に示すように気密に密閉したインキ缶1の蓋3に圧縮空気注入用のチューブ20を貫通させて気密状態に保持する。他方、蓋3と缶胴4とのシーリング材9による嵌合部分の周囲全周に亘って石けん水21を塗布しておく。そして、0.005MPaきざみで加圧した加圧空気をチューブ20を通してインキ缶1内に順次注入してインキ缶1内部の内圧を加圧させて、蓋3及び缶胴4の嵌合部からの加圧空気の漏洩を石けん水21の膜膨張の有無によって目視で確認した。そして石けん水21の膜膨張時をリーク発生時として圧力メータ(レギュレータ)で内圧を測定し、これを耐圧圧力値とした。
耐圧試験において、インキ缶1の内圧が0.03MPaを越えた場合には石けん水21の膜の膨張(リーク)が全くないものとして○、内圧が0.02〜0.03MPaの範囲内であったものを△、内圧が0.02MPa未満のものを×とした(表1参照)。
(4)パッキンカス評価(発生率)
シーリング材9については閉蓋時(製造時)に蓋3を缶胴4に嵌合させてかしめ部8aでかしめた後、開蓋した際に微粉のカスが発生しているか否かを目視で観察した。各実施例及び比較例についてそれぞれ10缶づつ試験を行い、各缶毎に目視確認できるカスの有無によって発生率(%)を測定した。
各シーリング材9として、上述したシリコーン系コンパウンドからなる実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、各比較例1、比較例2、比較例3を用い、塩化ビニルからなる比較例4、比較例5について、製造時の圧縮永久歪み率(%)、ショア硬度HSを測定し、耐圧試験、パッキンカスの発生率を測定すると下記表1に示す通りになった。
これに対し、比較例1は気密性に劣り、比較例2はカスの発生率100%と多く、比較例3についてもカスの発生が100%と多かった。塩化ビニルの比較例5については耐圧試験、カス発生のいずれも良好であった。
試験結果において、実施例1は各20缶の平均耐圧(kPa)、比較例5は各10缶の平均耐圧(kPa)で示すと、下記の表2に示す通りになった。実施例1と比較例5について試験を行った月数(0〜10ヶ月、0〜4ヶ月)と耐圧(kPa)との関係を示すと図8に示すようになった。図8では実施例1と比較例5の耐圧をMPaで示している。
なお、表2及び図8において、比較例5が製造後4ヶ月までしか試験していないのは、塩化ビニル系2種混合のシーリング材は4ヶ月経過した状態での経時的な耐圧性の低下が大きい(下記記載のようにインキ表面に皮張りを発生させる耐圧値25kPaに近い値になる)ために4ヶ月以上の測定に意味がないからであり、そのため4ヶ月で試験を中止した。
そのため、実施例1は比較例5と比較して経時的に高い耐圧性を確保でき、閉蓋後に10ヶ月保管・経過して経時変化した後の密閉性が高いことを確認できる。
また、これら実施例1と比較例5の経時的な平均耐圧の減衰率をグラフで表すと図9に示すようになる。図9では、縦軸の平均耐圧(別の見方によるとシーリング材の応力緩和によるものと考えられる)を表2に示すようにkPaで表示し、横軸の放置日数を自然対数で示す(ln(t):t=日数)。図9において、表2に示す実施例1と比較例5の試験日の時間ln(t)と平均耐圧(kPa)をプロットして近似直線により平均耐圧の減衰率を書き込む。次いで、初期(ln(t)=0.0000)から300日(ln(t)=5.7038)までのデータで回帰式を求める。なお、一般に0.01時間後の応力を初期の応力としている(昭和54年4月、社団法人日本ゴム協会発行「ゴム工業便覧」P1246〜1247参照)。
そして、インキ缶1の最大耐用年数である2年後の耐圧を推定すると、実施例1ではln(720)=6.57925であり、耐圧は31.48kPaになる。他方、比較例5では同様にln(720)で、耐圧は20.05kPaになる。これまでの試験により、インキ缶1の耐圧が25kPa以下になるとインキ表面に皮張りが発生し易くなる。実施例1では耐圧は31.48kPaであるため、インキ表面に皮張りは発生せず、比較例5では耐圧は20.05kPaであるため、インキ表面に皮張りが発生すると推定できる。
また、シーリング材の材質としてウレタン(圧縮永久歪み率が70〜96%、HS13〜20)を用いた場合、ウレタンはべたつく材質であるために、開蓋時にカスの発生が多い欠点があり、好ましくない。
本発明による実施例では、缶胴に溶接継ぎ目を有する3ピース缶について説明したが、本発明は2ピース缶等にも採用できることはいうまでもない。また、本発明はインキ缶1に限定されることなく、各種の液状物やペーストや固体等を充填・収納して気密にシールする缶等の密閉容器全てに適用できる。
また本実施例ではシーリング材9の厚みtを2.0〜3.5mmに設定したが、これの限定されることはなく多少外れた厚みでもよい。例えば±0.5mm程度の誤差があってもよい。
3 蓋
4 缶胴(胴部)
5 底部
8 嵌合凹部
8a かしめ部
9 シーリング材
10 蓋カール部(第一カール部)
13 缶胴カール部(第二カール部)
Claims (2)
- 蓋と胴部及び底部とを備えていて、前記蓋と胴部との嵌合部分に設けた発泡性のシリコーン系シーリング材によって前記蓋と胴部とを気密にシールするようにしたシーリング材を備えた密閉容器であって、
前記シーリング材は硬度がHS(ショア硬度)15〜19に設定されていると共に圧縮永久歪み率が40〜70%に設定されていることを特徴とする密閉容器。 - 前記シーリング材は、蓋と胴部とを嵌合させる前の状態で厚みが2.0mm〜3.5mmに設定されている請求項1に記載の密閉容器。
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