JP2007083309A - レーザ加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 種々の積層構造を有する加工対象物を高精度に切断し得るレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】 本レーザ加工方法は、基板15と基板15の表面に設けられた積層部17a,17bとを有する加工対象物1の基板15の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、基板15の内部に改質領域7を形成し、この改質領域7によって、加工対象物1の切断予定ラインに沿って加工対象物1のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、切断起点領域を形成した後に、加工対象物1に対して積層部17a,17b側から応力を印加することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物1を切断する工程と、を備える。
【選択図】 図16

Description

本発明は、基板の表面に積層部が設けられて構成された加工対象物の切断に使用されるレーザ加工方法に関する。
近年、半導体デバイス用としてAl基板上にGaN等の半導体動作層を結晶成長させたものや、液晶表示装置用としてガラス基板上に他のガラス基板を貼り合わせたもの等、種々の積層構造を有する加工対象物を高精度に切断する技術が求められている。
従来、これらの積層構造を有する加工対象物の切断には、ブレードダイシング法やダイヤモンドスクライブ法が使用されるのが一般的である。
ブレードダイシング法とは、ダイヤモンドブレード等により加工対象物を切削して切断する方法である(例えば、特許文献1参照)。一方、ダイヤモンドスクライブ法とは、ダイヤモンドポイントツールにより加工対象物の表面にスクライブラインを設け、このスクライブラインに沿うよう加工対象物の裏面にナイフエッジを押し当てて、加工対象物を割って切断する方法である(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−197561号公報 特開昭62−296579号公報
しかしながら、ブレードダイシング法にあっては、例えば、加工対象物が上述した液晶表示装置用のものである場合、ガラス基板と他のガラス基板との間に間隙が設けられているため、この間隙に削り屑や潤滑洗浄水が入り込んでしまうおそれがある。
また、ダイヤモンドスクライブ法にあっては、加工対象物がAl基板等の硬度の高い基板を有している場合や、或いは、加工対象物がガラス基板同士を貼り合わせたものである場合等に、加工対象物の表面だけでなく裏面にもスクライブラインを設けなければならず、この表面と裏面とに設けられたスクライブラインの位置ずれによって切断不良が生じるおそれがある。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、上述したような問題を解決し、種々の積層構造を有する加工対象物を高精度に切断することのできるレーザ加工方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るレーザ加工方法は、基板と基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、基板の内部に改質領域を形成し、この改質領域によって、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、切断起点領域を形成した後に、加工対象物に対して積層部側から応力を印加することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断する工程と、を備えることを特徴とする。
このレーザ加工方法によれば、基板と基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物に対し、基板の内部に形成される改質領域によって、加工対象物を切断すべき所望の切断予定ラインに沿った切断起点領域を形成することができる。したがって、切断起点領域を切断の起点として、基板と基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができ、種々の積層構造を有する加工対象物を高精度に切断することが可能となる。
なお、基板の表面に設けられた積層部とは、基板の表面に堆積されたもの、基板の表面に貼り合わされたもの、或いは基板の表面に取り付けられたもの等をいい、基板に対し異種材料であるか同種材料であるかは問わない。そして、基板の表面に設けられた積層部には、基板に密着して設けられるものや、基板と間隙を取って設けられるもの等がある。例としては、基板上に結晶成長により形成された半導体動作層や、ガラス基板上に貼り合わされた他のガラス基板等があり、積層部は異種材料を複数層形成したものも含む。また、基板の内部とは、積層部が設けられている基板の表面上をも含む意味である。また、集光点とは、レーザ光が集光した箇所のことである。さらに、切断起点領域とは、加工対象物が切断される際に切断の起点となる領域を意味する。したがって、切断起点領域は、加工対象物において切断が予定される切断予定部である。そして、切断起点領域は、改質領域が連続的に形成されることで形成される場合もあるし、改質領域が断続的に形成されることで形成される場合もある。
本発明に係るレーザ加工方法によれば、種々の積層構造を有する加工対象物を高精度に切断することが可能となる。
以下、図面と共に本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係るレーザ加工方法では、加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を形成する。そこで、このレーザ加工方法、特に多光子吸収について最初に説明する。
材料の吸収のバンドギャップEよりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よって、材料に吸収が生じる条件はhν>Eである。しかし、光学的に透明でも、レーザ光の強度を非常に大きくするとnhν>Eの条件(n=2,3,4,・・・)で材料に吸収が生じる。この現象を多光子吸収という。パルス波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光点のピークパワー密度(W/cm)で決まり、例えばピークパワー密度が1×10(W/cm)以上の条件で多光子吸収が生じる。ピークパワー密度は、(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光のビームスポット断面積×パルス幅)により求められる。また、連続波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光点の電界強度(W/cm)で決まる。
このような多光子吸収を利用する本実施形態に係るレーザ加工の原理について、図1〜図6を参照して説明する。図1はレーザ加工中の加工対象物1の平面図であり、図2は図1に示す加工対象物1のII−II線に沿った断面図であり、図3はレーザ加工後の加工対象物1の平面図であり、図4は図3に示す加工対象物1のIV−IV線に沿った断面図であり、図5は図3に示す加工対象物1のV−V線に沿った断面図であり、図6は切断された加工対象物1の平面図である。
図1及び図2に示すように、加工対象物1の表面3には、加工対象物1を切断すべき所望の切断予定ライン5がある。切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である(加工対象物1に実際に線を引いて切断予定ライン5としてもよい)。本実施形態に係るレーザ加工は、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射して改質領域7を形成する。なお、集光点とはレーザ光Lが集光した箇所のことである。
レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち矢印A方向に沿って)相対的に移動させることにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。これにより、図3〜図5に示すように改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部にのみ形成され、この改質領域7によって切断起点領域(切断予定部)8が形成される。本実施形態に係るレーザ加工方法は、加工対象物1がレーザ光Lを吸収することにより加工対象物1を発熱させて改質領域7を形成するのではない。加工対象物1にレーザ光Lを透過させ加工対象物1の内部に多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。
加工対象物1の切断において、切断する箇所に起点があると加工対象物1はその起点から割れるので、図6に示すように比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。よって、加工対象物1の表面3に不必要な割れを発生させることなく加工対象物1の切断が可能となる。
なお、切断起点領域を起点とした加工対象物の切断には、次の2通りが考えられる。1つは、切断起点領域形成後、加工対象物に人為的な力が印加されることにより、切断起点領域を起点として加工対象物が割れ、加工対象物が切断される場合である。これは、例えば加工対象物の厚さが大きい場合の切断である。人為的な力が印加されるとは、例えば、加工対象物の切断起点領域に沿って加工対象物に曲げ応力やせん断応力を加えたり、加工対象物に温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることである。他の1つは、切断起点領域を形成することにより、切断起点領域を起点として加工対象物の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ、結果的に加工対象物が切断される場合である。これは、例えば加工対象物の厚さが小さい場合には、1列の改質領域により切断起点領域が形成されることで可能となり、加工対象物の厚さが大きい場合には、厚さ方向に複数列形成された改質領域により切断起点領域が形成されることで可能となる。なお、この自然に割れる場合も、切断する箇所において、切断起点領域が形成されていない部位に対応する部分の表面上にまで割れが先走ることがなく、切断起点領域を形成した部位に対応する部分のみを割断することができるので、割断を制御よくすることができる。近年、シリコンウェハ等の加工対象物の厚さは薄くなる傾向にあるので、このような制御性のよい割断方法は大変有効である。
さて、本実施形態において多光子吸収により形成される改質領域としては、次の(1)〜(3)がある。
(1)改質領域が1つ又は複数のクラックを含むクラック領域の場合
加工対象物(例えばガラスやLiTaOからなる圧電材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。このパルス幅の大きさは、多光子吸収を生じさせつつ加工対象物の表面に余計なダメージを与えずに、加工対象物の内部にのみクラック領域を形成できる条件である。これにより、加工対象物の内部には多光子吸収による光学的損傷という現象が発生する。この光学的損傷により加工対象物の内部に熱ひずみが誘起され、これにより加工対象物の内部にクラック領域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。なお、多光子吸収によるクラック領域の形成は、例えば、第45回レーザ熱加工研究会論文集(1998年.12月)の第23頁〜第28頁の「固体レーザー高調波によるガラス基板の内部マーキング」に記載されている。
本発明者は、電界強度とクラックの大きさとの関係を実験により求めた。実験条件は次ぎの通りである。
(A)加工対象物:パイレックス(登録商標)ガラス(厚さ700μm)
(B)レーザ
光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長:1064nm
レーザ光スポット断面積:3.14×10−8cm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:出力<1mJ/パルス
レーザ光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ
レーザ光波長に対する透過率:60パーセント
(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
なお、レーザ光品質がTEM00とは、集光性が高くレーザ光の波長程度まで集光可能を意味する。
図7は上記実験の結果を示すグラフである。横軸はピークパワー密度であり、レーザ光がパルスレーザ光なので電界強度はピークパワー密度で表される。縦軸は1パルスのレーザ光により加工対象物の内部に形成されたクラック部分(クラックスポット)の大きさを示している。クラックスポットが集まりクラック領域となる。クラックスポットの大きさは、クラックスポットの形状のうち最大の長さとなる部分の大きさである。グラフ中の黒丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が100倍、開口数(NA)が0.80の場合である。一方、グラフ中の白丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が50倍、開口数(NA)が0.55の場合である。ピークパワー密度が1011(W/cm)程度から加工対象物の内部にクラックスポットが発生し、ピークパワー密度が大きくなるに従いクラックスポットも大きくなることが分かる。
次に、本実施形態に係るレーザ加工において、クラック領域形成による加工対象物の切断のメカニズムについて図8〜図11を用いて説明する。図8に示すように、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射して切断予定ラインに沿って内部にクラック領域9を形成する。クラック領域9は1つ又は複数のクラックを含む領域である。このクラック領域9によって切断起点領域が形成される。図9に示すようにクラック領域9を起点として(すなわち、切断起点領域を起点として)クラックがさらに成長し、図10に示すようにクラックが加工対象物1の表面3と裏面21に到達し、図11に示すように加工対象物1が割れることにより加工対象物1が切断される。加工対象物の表面と裏面に到達するクラックは自然に成長する場合もあるし、加工対象物に力が印加されることにより成長する場合もある。
(2)改質領域が溶融処理領域の場合
加工対象物(例えばシリコンのような半導体材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。これにより加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域や、まさに溶融状態の領域や、溶融状態から再固化する状態の領域であり、相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。つまり、例えば、単結晶構造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。
本発明者は、シリコンウェハの内部で溶融処理領域が形成されることを実験により確認した。実験条件は次の通りである。
(A)加工対象物:シリコンウェハ(厚さ350μm、外径4インチ)
(B)レーザ
光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長:1064nm
レーザ光スポット断面積:3.14×10−8cm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:20μJ/パルス
レーザ光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ
倍率:50倍
N.A.:0.55
レーザ光波長に対する透過率:60パーセント
(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
図12は、上記条件でのレーザ加工により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。シリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13が形成されている。なお、上記条件により形成された溶融処理領域13の厚さ方向の大きさは100μm程度である。
溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを説明する。図13は、レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。ただし、シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し、内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚さtが50μm、100μm、200μm、500μm、1000μmの各々について上記関係を示した。
例えば、Nd:YAGレーザの波長である1064nmにおいて、シリコン基板の厚さが500μm以下の場合、シリコン基板の内部ではレーザ光が80%以上透過することが分かる。図12に示すシリコンウェハ11の厚さは350μmであるので、多光子吸収による溶融処理領域13はシリコンウェハの中心付近、つまり表面から175μmの部分に形成される。この場合の透過率は、厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると、90%以上なので、レーザ光がシリコンウェハ11の内部で吸収されるのは僅かであり、ほとんどが透過する。このことは、シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収されて、溶融処理領域13がシリコンウェハ11の内部に形成(つまりレーザ光による通常の加熱で溶融処理領域が形成)されたものではなく、溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを意味する。多光子吸収による溶融処理領域の形成は、例えば、溶接学会全国大会講演概要第66集(2000年4月)の第72頁〜第73頁の「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」に記載されている。
なお、シリコンウェハは、溶融処理領域によって形成される切断起点領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ、その割れがシリコンウェハの表面と裏面とに到達することにより、結果的に切断される。シリコンウェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし、シリコンウェハに力が印加されることにより成長する場合もある。なお、切断起点領域からシリコンウェハの表面と裏面とに割れが自然に成長する場合には、切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から割れが成長する場合と、切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から再固化する際に割れが成長する場合とのいずれもある。ただし、どちらの場合も溶融処理領域はシリコンウェハの内部のみに形成され、切断後の切断面には、図12のように内部にのみ溶融処理領域が形成されている。加工対象物の内部に溶融処理領域によって切断起点領域を形成すると、割断時、切断起点領域ラインから外れた不必要な割れが生じにくいので、割断制御が容易となる。
(3)改質領域が屈折率変化領域の場合
加工対象物(例えばガラス)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1ns以下の条件でレーザ光を照射する。パルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物の内部に起こさせると、多光子吸収によるエネルギーが熱エネルギーに転化せずに、加工対象物の内部にはイオン価数変化、結晶化又は分極配向等の永続的な構造変化が誘起されて屈折率変化領域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns以下が好ましく、1ps以下がさらに好ましい。多光子吸収による屈折率変化領域の形成は、例えば、第42回レーザ熱加工研究会論文集(1997年.11月)の第105頁〜第111頁の「フェムト秒レーザー照射によるガラス内部への光誘起構造形成」に記載されている。
以上、多光子吸収により形成される改質領域として(1)〜(3)の場合を説明したが、ウェハ状の加工対象物の結晶構造やその劈開性などを考慮して切断起点領域を次のように形成すれば、その切断起点領域を起点として、より一層小さな力で、しかも精度良く加工対象物を切断することが可能になる。
すなわち、シリコンなどのダイヤモンド構造の単結晶半導体からなる基板の場合は、(111)面(第1劈開面)や(110)面(第2劈開面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。また、GaAsなどの閃亜鉛鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる基板の場合は、(110)面に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。さらに、サファイア(Al)などの六方晶系の結晶構造を有する基板の場合は、(0001)面(C面)を主面として(1120)面(A面)或いは(1100)面(M面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。
なお、上述した切断起点領域を形成すべき方向(例えば、単結晶シリコン基板における(111)面に沿った方向)、或いは切断起点領域を形成すべき方向に直交する方向に沿って基板にオリエンテーションフラットを形成すれば、そのオリエンテーションフラットを基準とすることで、切断起点領域を形成すべき方向に沿った切断起点領域を容易且つ正確に基板に形成することが可能になる。
次に、上述したレーザ加工方法に使用されるレーザ加工装置について、図14を参照して説明する。図14はレーザ加工装置100の概略構成図である。
レーザ加工装置100は、レーザ光Lを発生するレーザ光源101と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、レーザ光Lの反射機能を有しかつレーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、ダイクロイックミラー103で反射されたレーザ光Lを集光する集光用レンズ105と、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1が載置される載置台107と、載置台107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109と、載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるためのY軸ステージ111と、載置台107をX軸及びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ステージ113と、これら3つのステージ109,111,113の移動を制御するステージ制御部115とを備える。
この集光点PのX(Y)軸方向の移動は、加工対象物1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させることにより行う。Z軸方向は、加工対象物1の表面3と直交する方向なので、加工対象物1に入射するレーザ光Lの焦点深度の方向となる。よって、Z軸ステージ113をZ軸方向に移動させることにより、加工対象物1の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせることができる。これにより、例えば、加工対象物1が多層構造を有しているような場合に、加工対象物1の基板や或いは当該基板上の積層部等、所望の位置に集光点Pを合わせることができる。
レーザ光源101はパルスレーザ光を発生するNd:YAGレーザである。レーザ光源101に用いることができるレーザとして、この他、Nd:YVOレーザ、Nd:YLFレーザやチタンサファイアレーザがある。本実施形態では、加工対象物1の加工にパルスレーザ光を用いているが、多光子吸収を起こさせることができるなら連続波レーザ光でもよい。
レーザ加工装置100はさらに、載置台107に載置された加工対象物1を可視光線により照明するために可視光線を発生する観察用光源117と、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された可視光用のビームスプリッタ119とを備える。ビームスプリッタ119と集光用レンズ105との間にダイクロイックミラー103が配置されている。ビームスプリッタ119は、可視光線の約半分を反射し残りの半分を透過する機能を有しかつ可視光線の光軸の向きを90°変えるように配置されている。観察用光源117から発生した可視光線はビームスプリッタ119で約半分が反射され、この反射された可視光線がダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105を透過し、加工対象物1の切断予定ライン5等を含む表面3を照明する。なお、加工対象物1の裏面が集光用レンズ105側となるよう加工対象物1が載置台107に載置された場合は、ここでいう「表面」が「裏面」となるのは勿論である。
レーザ加工装置100はさらに、ビームスプリッタ119、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された撮像素子121及び結像レンズ123を備える。撮像素子121としては例えばCCDカメラがある。切断予定ライン5等を含む表面3を照明した可視光線の反射光は、集光用レンズ105、ダイクロイックミラー103、ビームスプリッタ119を透過し、結像レンズ123で結像されて撮像素子121で撮像され、撮像データとなる。
レーザ加工装置100はさらに、撮像素子121から出力された撮像データが入力される撮像データ処理部125と、レーザ加工装置100全体を制御する全体制御部127と、モニタ129とを備える。撮像データ処理部125は、撮像データを基にして観察用光源117で発生した可視光の焦点を加工対象物1の表面3上に合わせるための焦点データを演算する。この焦点データを基にしてステージ制御部115がZ軸ステージ113を移動制御することにより、可視光の焦点が加工対象物の表面3に合うようにする。よって、撮像データ処理部125はオートフォーカスユニットとして機能する。また、撮像データ処理部125は、撮像データを基にして表面3の拡大画像等の画像データを演算する。この画像データは全体制御部127に送られ、全体制御部で各種処理がなされ、モニタ129に送られる。これにより、モニタ129に拡大画像等が表示される。
全体制御部127には、ステージ制御部115からのデータ、撮像データ処理部125からの画像データ等が入力し、これらのデータも基にしてレーザ光源制御部102、観察用光源117及びステージ制御部115を制御することにより、レーザ加工装置100全体を制御する。よって、全体制御部127はコンピュータユニットとして機能する。
次に、本実施形態に係るレーザ加工方法について、図14及び図15を参照して説明する。図15は、本実施形態に係るレーザ加工方法を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態において、加工対象物1は、基板と当該基板の表面に設けられた積層部とを有している。また、加工対象物1は、図14に示すレーザ加工装置100の載置台107に、基板の裏面が集光用レンズ105側となるよう載置される。すなわち、レーザ光Lは、加工対象物1が有している基板の裏面側から照射される。
まず、加工対象物1の基板の光吸収特性を図示しない分光光度計等により測定する。この測定結果に基づいて、加工対象物1の基板に対して透明な波長又は吸収の少ない波長のレーザ光Lを発生するレーザ光源101を選定する(S101)。なお、このレーザ光Lは基板の裏面側から照射されることとなるため、基板の表面に設けられた積層部がこのレーザ光に対し遮光性や吸収性を有している場合であっても、レーザ加工の妨げとなるようなことはない。
続いて、加工対象物1の基板の厚さや屈折率、及び基板の表面に形成されている積層部の厚さや材質等を考慮して、加工対象物1のZ軸方向の移動量を決定する(S103)。これは、加工対象物1が有している基板内部の所望の位置にレーザ光Lの集光点Pを合わせるために、加工対象物1の基板の裏面に位置するレーザ光Lの集光点Pを基準とした加工対象物1のZ軸方向の移動量である。この移動量は全体制御部127に入力される。
加工対象物1をレーザ加工装置100の載置台107に基板の裏面が集光用レンズ105側となるよう載置する。そして、観察用光源117から可視光を発生させて加工対象物1の基板の裏面を照明する(S105)。照明された切断予定ライン5を含む裏面を撮像素子121により撮像する。切断予定ライン5は、加工対象物1を切断すべき所望の仮想線である。撮像素子121により撮像された撮像データは撮像データ処理部125に送られる。この撮像データに基づいて撮像データ処理部125は、観察用光源117の可視光の焦点が加工対象物1の基板の裏面に位置するような焦点データを演算する(S107)。
この焦点データはステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115は、この焦点データを基にしてZ軸ステージ113をZ軸方向の移動させる(S109)。これにより、観察用光源117の可視光の焦点が加工対象物1の基板の裏面に位置する。なお、撮像データ処理部125は撮像データに基づいて、切断予定ライン5を含む加工対象物1の基板裏面の拡大画像データを演算する。この拡大画像データは全体制御部127を介してモニタ129に送られ、これによりモニタ129に切断予定ライン5付近の拡大画像が表示される。
全体制御部127には予めステップS103で決定された移動量データが入力されており、この移動量データがステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の基板の内部となる位置に、Z軸ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動させる(S111)。
続いて、レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の基板裏面の切断予定ライン5に照射する。レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の基板の内部に位置しているので、改質領域は加工対象物1の基板の内部にのみ形成される。そして、切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、切断予定ライン5に沿うよう形成された改質領域によって切断予定ライン5に沿う切断起点領域を加工対象物1の内部に形成する(S113)。
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工方法によれば、加工対象物1が有する基板の裏面側からレーザ光Lを照射し、当該基板の内部に、多光子吸収により形成される改質領域によって、加工対象物1を切断すべき所望の切断予定ライン5に沿った切断起点領域を形成することができる。そして、基板の内部に形成された改質領域の位置は、基板の表面に設けられている積層部の厚さや材質等を考慮して、レーザ光Lの集光点Pを合わせる位置を調節することにより制御されている。したがって、基板の内部に形成された切断起点領域を起点として、基板の表面に積層部が設けられて構成された加工対象物1を比較的小さな力で割って切断することができる。
なお、加工対象物1の積層部に対して透明な波長又は吸収の少ない波長のレーザ光Lにより、積層部の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを照射し、積層部の内部にも切断予定ライン5に沿った切断起点領域を形成してもよく、この場合、加工対象物1をより小さな力で割って切断することができる。
本実施形態に係るレーザ加工方法の実施例について、図16〜図21を参照して説明する。
[実施例1]
図16(a)は、実施例1に係る加工対象物1において基板15の裏面近傍に改質領域7を形成した場合を示す図であり、図16(b)は、実施例1に係る加工対象物1において基板15の表面近傍に改質領域7を形成した場合を示す図である。図16(a)及び図16(b)に示す加工対象物1としては、次世代高速・低消費電力デバイス用のものや次世代デバイス用のものがある。
次世代高速・低消費電力デバイス用における基板15/第1の積層部17a/第2の積層部17bは、それぞれSi(500μm)/SiO(1μm)/Si(3μm)である。一方、次世代デバイス用における基板15/第1の積層部17a/第2の積層部17bは、それぞれSi(500μm)/SrTiO(数100nm)/GaAs(数100nm)である(括弧内の数値は厚さを示す)。
図16(a)に示すように、改質領域7が加工対象物1の裏面21近傍に位置する場合には、改質領域7でもって形成された切断起点領域に沿うよう加工対象物1の表面3にナイフエッジ23を押し当てて、加工対象物1を割って切断する。これは、ナイフエッジ23の押し当てにより生じる曲げ応力のうち大きな引張応力が改質領域7に作用するため、比較的小さな力で加工対象物1を切断することができるからである。一方、図16(b)に示すように、改質領域7が加工対象物1の表面3近傍に位置する場合には、同様の理由から、加工対象物1の裏面3にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。
なお、「改質領域7が加工対象物1の裏面21近傍に位置する」とは、切断起点領域を構成する改質領域7が、加工対象物1の厚さ方向における中心位置(厚さの半分の位置)から裏面21側に偏倚して形成されていることを意味する。つまり、加工対象物1の厚さ方向における改質領域7の幅の中心位置が、加工対象物1の厚さ方向における中心位置から裏面21側に偏倚して位置している場合を意味し、改質領域7の全ての部分が加工対象物1の厚さ方向における中心位置に対して裏面21側に位置している場合のみに限る意味ではない。同様に、「改質領域7が加工対象物1の表面3近傍に位置する」とは、切断起点領域を構成する改質領域7が、加工対象物1の厚さ方向における中心位置から表面3側に偏倚して形成されていることを意味する。以上のことは、基板15に対する改質領域7の形成位置についても同様である。
[実施例2]
図17(a)は、実施例2に係る加工対象物1において基板15の裏面近傍に改質領域7を形成した場合を示す図であり、図17(b)は、実施例2に係る加工対象物1において基板15の表面近傍に改質領域7を形成した場合を示す図である。図17(a)及び図17(b)に示す加工対象物1は青色LD・LED用のものであり、基板15/積層部17としては、Al(500μm)/GaN等の半導体結晶を複数層形成した積層機能膜(数100nm)や、Al(500μm)/ZnO等の層を複数層形成した積層機能膜(数100nm)の場合がある(括弧内の数値は厚さを示す)。
実施例1に係る加工対象物1の場合と同様の理由から、図17(a)に示すように、改質領域7が加工対象物1の裏面21近傍に位置する場合には、加工対象物1の表面3にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。一方、図17(b)に示すように、改質領域7が加工対象物1の表面3近傍に位置する場合には、加工対象物1の裏面21にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。
[実施例3]
図18(a)は、実施例3に係る加工対象物1において基板15の表面近傍と積層部17とに改質領域7を形成した場合を示す図であり、図18(b)は、実施例3に係る加工対象物1において基板15の裏面近傍に改質領域7を形成した場合を示す図であり、図18(c)は、実施例3に係る加工対象物1において基板15の表面近傍に改質領域7を形成した場合を示す図である。図18(a)〜図18(c)に示す加工対象物1は赤外光検出デバイス用のものであり、基板15/積層部17としては、Al(500μm)/PbSe(10μm)や、Al(500μm)/HgCdTe(10μm)の場合がある(括弧内の数値は厚さを示す)。
実施例1に係る加工対象物1の場合と同様の理由から、図18(a)及び図18(c)に示すように、改質領域7が加工対象物1の表面3近傍に位置する場合には、加工対象物1の裏面21にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。一方、図18(b)に示すように、改質領域7が加工対象物1の裏面21近傍に位置する場合には、加工対象物1の表面3にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。
[実施例4]
図19は、実施例4に係る加工対象物1を示す図である。図19に示す加工対象物1は多層ガラスであり、基板15としてのガラス基板上に第1の積層部17a及び第2の積層部17bとしてのガラス基板2枚を貼り合わせて積層させたものである。各ガラス基板における改質領域7は、加工対象物1の裏面21側に形成されている。この場合も、実施例1に係る加工対象物1の場合と同様の理由から、加工対象物1の表面3にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。このように積層部の厚さが厚い場合や積層部の硬度が高い場合には、積層部の内部にも切断起点領域を形成すれば、加工対象物1をより小さな力で割って切断することができる。
[実施例5]
図20(a)〜図21(b)は、実施例5に係る加工対象物1を示す図である。図20(a)は、実施例5に係る加工対象物1において基板15の表面近傍と積層部17の表面近傍とに改質領域7を形成した場合を示す図であり、図20(b)は、実施例5に係る加工対象物1において基板15の裏面近傍と積層部17の裏面近傍とに改質領域7を形成した場合を示す図である。また、図21(a)は、実施例5に係る加工対象物1において基板15の表面近傍と積層部17の裏面近傍とに改質領域7を形成した場合を示す図であり、図21(b)は、実施例5に係る加工対象物1において基板15の裏面近傍と積層部17の表面近傍とに改質領域7を形成した場合を示す図である。
図20(a)〜図21(b)に示す加工対象物1は反射型の液晶表示装置用のものである。基板15は、共通電極が形成されたガラス基板(厚さ1.8mm、外径8インチ)であり、積層部17は、TFTが形成されたSi基板(厚さ500μm、外径8インチ)である。基板15と積層部17とは、液晶が入る間隙を設けて接着剤25により互いに貼り付けられている。
図20(a)及び図20(b)の場合は、加工対象物1の裏面21側からレーザ光を照射して、積層部17の内部に改質領域7を形成し、その後、加工対象物1の裏面21側からレーザ光を照射して、基板15の内部に改質領域7を形成している。これは、レーザ光が基板15及び積層部17の両者に対して透明な波長又は吸収の少ない波長を有しているからである。そして、実施例1に係る加工対象物1の場合と同様の理由から、図20(a)の場合には、加工対象物1の裏面21にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。一方、図20(b)の場合には、加工対象物1の表面3にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。
このように、基板15及び積層部17の両者に対して透明な波長又は吸収の少ない波長を有するレーザ光を用いて基板15と積層部17とに切断起点領域を形成すれば、従来のダイヤモンドスクライブ法で行われる加工対象物1の反転作業を省くことができ、反転作業時の加工対象物1の破壊等を防止することができる。また、基板15と積層部17とに形成される切断起点領域に位置ずれが生じることも防止することができ、これにより精度の高い加工対象物1の切断が可能となる。さらに、従来のブレードダイシング法では必須である潤滑洗浄水が不要であるため、基板15と積層部17と間の間隙に潤滑洗浄水が入り込んでしまうというような問題もない。
図21(a)及び図21(b)の場合は、加工対象物1の裏面21側からレーザ光を照射して、基板15の内部に改質領域7を形成し、その後、加工対象物1の表面3側からレーザ光を照射して、積層部17の内部に改質領域7を形成している。そして、実施例1に係る加工対象物1の場合と同様の理由から、図21(a)の場合には、最初に加工対象物1の裏面21にナイフエッジ23を押し当てて基板15を割って切断し、次に加工対象物1の表面3にナイフエッジ23を押し当てて積層部17を割って切断する。一方、図21(b)の場合には、最初に加工対象物1の表面3にナイフエッジ23を押し当てて基板15を割って切断し、次に加工対象物1の裏面21にナイフエッジ23を押し当てて積層部17を割って切断する。
[実施例6]
図22は、実施例6に係る加工対象物1の要部を示す拡大断面図である。この加工対象物1は、シリコンウェハである基板15上に多数のチップ形成領域Fを設け、隣り合うチップ形成領域F,F間をダイシングライン領域Dとしたものであり、図22は、チップ形成領域Fとダイシングライン領域Dとが連続する部分の断面を示している。なお、切断予定ラインは、このダイシングライン領域Dに沿って設定される。
同図に示すように、基板15上には層間絶縁膜(積層部)31が形成されており、基板15のチップ形成領域Fにおいては、層間絶縁膜31上に金属配線層32が設けられている。さらに、基板15上には、層間絶縁膜31及び金属配線層32を覆うように層間絶縁膜(積層部)33が形成され、基板15のチップ形成領域Fにおいては、層間絶縁膜33上に金属配線層34が設けられている。そして、基板15と金属配線層32とは、層間絶縁膜31を貫通するプラグ35により電気的に接続されている。また、金属配線層32と金属配線層34とは、層間絶縁膜33を貫通するプラグ36により電気的に接続されている。
このように構成された加工対象物1に対して基板15の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、ダイシングライン領域D沿って(すなわち、切断予定ラインに沿って)基板15の内部に改質領域7を形成し、この改質領域7によって切断起点領域を形成する。そして、切断起点領域に沿って加工対象物1の表面3又は裏面21にナイフエッジ23を押し当てることで、加工対象物1を高精度に切断することができる。
以上の実施例6に係る加工対象物1のように、基板15の切断予定ライン上に、SiOやSiN等からなる絶縁膜31,32が積層部として形成されている場合にも、加工対象物1を高精度に切断することが可能である。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
上記実施形態では、基板と当該基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物に対してレーザ光を照射し切断起点領域を形成する場合について説明したが、本発明では、基板に対してレーザ光を照射し切断起点領域を形成した後に、基板の表面に積層部を設けて加工対象物を形成してもよい。
このレーザ加工方法によれば、基板の表面に積層部を設ける前に、基板の内部に切断起点領域を形成するが、多光子吸収による改質領域の形成は局所的なものであって、基板の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないため、基板の表面が溶融するようなことはない。よって、基板の内部に改質領域が形成されていない場合と同様に、基板の表面に積層部を設けて加工対象物を形成することができる。このようにして形成された加工対象物は、上記実施形態と同様の理由により、基板の内部に形成された切断起点領域を起点として比較的小さな力で割って切断することができる。
本実施形態に係るレーザ加工方法によるレーザ加工中の加工対象物の平面図である。 図1に示す加工対象物のII−II線に沿った断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法によるレーザ加工後の加工対象物の平面図である。 図3に示す加工対象物のIV−IV線に沿った断面図である。 図3に示す加工対象物のV−V線に沿った断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法により切断された加工対象物の平面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法における電界強度とクラックスポットの大きさとの関係を示すグラフである。 本実施形態に係るレーザ加工方法の第1工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法の第2工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法の第3工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法の第4工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法におけるレーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。 本実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法を説明するためのフローチャートである。 第1の実施例に係る加工対象物を示す図であり、(a)に、基板の裏面近傍に改質領域を形成した場合を示し、(b)に、基板の表面近傍に改質領域を形成した場合を示す。 第2の実施例に係る加工対象物を示す図であり、(a)に、基板の裏面近傍に改質領域を形成した場合を示し、(b)に、基板の表面近傍に改質領域を形成した場合を示す。 第3の実施例に係る加工対象物を示す図であり、(a)に、基板の表面近傍と積層部とに改質領域を形成した場合を示し、(b)に、基板の裏面近傍に改質領域を形成した場合を示し、(c)に、基板の表面近傍に改質領域を形成した場合を示す。 第4の実施例に係る加工対象物を示す図である。 第5の実施例に係る加工対象物を示す図であり、(a)に、基板の表面近傍と積層部の表面近傍とに改質領域を形成した場合を示し、(b)に、基板の裏面近傍と積層部の裏面近傍とに改質領域を形成した場合を示す。 第5の実施例に係る加工対象物を示す図であり、(a)に、基板の表面近傍と積層部の裏面近傍とに改質領域を形成した場合を示し、(b)に、基板の裏面近傍と積層部の表面近傍とに改質領域を形成した場合を示す。 実施例6に係る加工対象物の要部を示す拡大断面図である。
符号の説明
1…加工対象物、5…切断予定ライン、7…改質領域、15…基板、17,17a,17b…積層部、L…レーザ光、P…集光点。

Claims (6)

  1. 基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記基板の内部に改質領域を形成し、この改質領域によって、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、
    前記切断起点領域を形成した後に、前記加工対象物に対して前記積層部側から応力を印加することにより、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
  2. 前記改質領域は、前記基板の内部においてクラックが発生した領域であるクラック領域、前記基板の内部において溶融処理した領域である溶融処理領域、及び前記基板の内部において屈折率が変化した領域である屈折率変化領域の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工方法。
  3. 基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせて、集光点におけるピークパワー密度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射し、前記基板の内部にクラック領域を含む改質領域を形成し、この改質領域によって、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、
    前記切断起点領域を形成した後に、前記加工対象物に対して前記積層部側から応力を印加することにより、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
  4. 基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせて、集光点におけるピークパワー密度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射し、前記基板の内部に溶融処理領域を含む改質領域を形成し、この改質領域によって、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、
    前記切断起点領域を形成した後に、前記加工対象物に対して前記積層部側から応力を印加することにより、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
  5. 基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせて、集光点におけるピークパワー密度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1ns以下の条件でレーザ光を照射し、前記基板の内部に屈折率が変化した領域である屈折率変化領域を含む改質領域を形成し、この改質領域によって、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、
    前記切断起点領域を形成した後に、前記加工対象物に対して前記積層部側から応力を印加することにより、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
  6. 前記加工対象物を切断する工程では、前記加工対象物に対して前記積層部側からナイフエッジを押し当てて応力を印加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
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