JP2007077930A - 水素利用内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】 水素利用内燃機関に関し、システムの複雑化を招くことなく、液体燃料に加えて水素ガスも燃料として利用できるようにする。
【解決手段】 内燃機関2に水素ガスを供給する必要性を判定する。水素ガスを供給する必要があると判断されたときには、水素生成手段50を作動させて、貯蔵手段40に貯蔵されている液体水素化合物から水素ガスを生成する。また、水素混合手段52を作動させて、燃料噴射装置18に供給される液体燃料に水素生成手段50によって生成された水素ガスを混合する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、炭化水素系の液体燃料と水素ガスとを燃料として使用可能な水素利用内燃機関に関する。
従来、ガソリン等の液体燃料とともに水素ガスを燃料として使用する内燃機関(水素利用内燃機関)が知られている。水素ガスは液体燃料に比較して燃焼性に優れている特性を有している。このため、低負荷時には、液体燃料に水素ガスを添加することで内燃機関のリーンバーン領域を拡大することができ、燃費の向上やNOx排出量の低減といった顕著な効果を得られるようになる。一方、高負荷時には、液体燃料に水素ガスを添加することでノッキングを抑制することができ、出力を向上させて車両の加速性能を維持することができる。
このような水素利用内燃機関の1つの例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の水素利用内燃機関は、液体燃料を噴射する噴射弁と水素タンクとを水素導管を介して接続し、1つの噴射弁から液体燃料と水素ガスとを同時に噴射できるようにしている。
特開2003−293809号公報 特開2004−100501号公報
しかしながら、上記の従来の水素利用内燃機関では、2系統の燃料供給系、すなわち、水素ガスを噴射弁に供給する供給系と、液体燃料を噴射弁に供給する供給系を別々に設ける必要がある。このため、液体燃料のみを使用する内燃機関に比較して、システム構成は極めて複雑になり、部品点数の増加に伴う車両への搭載性の悪化や、製造コストの増加を招いてしまう。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、システムの複雑化を招くことなく、液体燃料に加えて水素ガスも燃料として利用できるようにした、水素利用内燃機関を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、炭化水素系の液体燃料と水素ガスとを燃料として使用可能な水素利用内燃機関において、
液体燃料を噴射する燃料噴射装置と、
液体水素化合物を貯蔵する貯蔵手段と、
前記貯蔵手段に貯蔵されている液体水素化合物から水素ガスを生成する水素生成手段と、
前記燃料噴射装置に供給される液体燃料に前記水素生成手段によって生成された水素ガスを混合する水素混合手段と、
前記内燃機関に水素ガスを供給する必要性を判定する判定手段と、
前記判定手段により水素ガスを供給する必要があると判断されたとき、前記水素生成手段及び前記水素混合手段を作動させる制御手段と、
を備えることを特徴としている。
第2の発明は、第1の発明において、
前記水素混合手段は、水素ガスの微細気泡を発生させる手段を含み、水素ガスの微細気泡を液体燃料に混合することを特徴としている。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記判定手段により水素ガスを供給する必要があると判断された場合に、必要な水素混合量を決定する水素混合量決定手段を備え、
前記制御手段は、前記水素混合量決定手段により決定された水素混合量に従って前記水素生成手段に水素ガスを生成させることを特徴としている。
第4の発明は、第3の発明において、
前記水素混合量決定手段は、前記内燃機関の運転状態に基づいて必要な水素混合量を決定することを特徴としている。
第5の発明は、第3の発明において、
前記水素混合量決定手段は、液体燃料の性状に基づいて必要な水素混合量を決定することを特徴としている。
第6の発明は、第3の発明において、
前記水素混合量決定手段は、大気の状態に基づいて必要な水素混合量を決定することを特徴としている。
第7の発明は、第3の発明において、
前記水素混合量決定手段は、前記内燃機関の排気通路に配置される触媒の状態に基づいて必要な水素混合量を決定することを特徴としている。
また、第8の発明は、第7の発明の水素利用内燃機関とモータとを有し、少なくとも前記モータにより車両を駆動可能なハイブリッド車両の制御装置において、
水素ガスを供給する必要があると判断されたとき、前記内燃機関の燃焼が停止している状態において前記モータによって前記内燃機関を強制的に回転させるとともに、前記水素生成手段及び前記水素混合手段を作動させ、水素ガスが混合した液体燃料を前記燃料噴射装置から噴射することを特徴としている。
第1の発明によれば、水素ガスは液体水素化合物の状態で貯蔵され、水素ガスを供給する必要があるときに液体水素化合物から生成されるので、水素ガスを取り扱いが難しく且つ搭載効率の劣る気体の状態で貯蔵する必要が無い。また、生成された水素ガスは液体燃料へ混合されて燃料噴射装置に供給されるので、水素ガスを気体の状態で扱う範囲は水素ガスの生成から液体燃料への混合までの間に限定され、さらに、水素ガスを液体燃料と一体に液体として噴射することができる。したがって、第1の発明によれば、水素ガスと液体燃料を別々の燃料供給系を用いて燃料噴射装置に供給する場合のような複雑なシステムは不要であり、システムの複雑化を招くことなく液体燃料に加えて水素ガスも燃料として使用することができる。
第2の発明によれば、水素ガスを微細気泡にして液体燃料に混合することで、水素ガスを液体燃料中に均一に混合することができ、また、水素ガスの液体燃料への溶解を促進することができる。これにより、水素ガスの混合から燃料噴射までの間に水素ガスが液体燃料から分離する可能性は少なく、分離した水素ガスに対する対策が不要になって、システム構成をより簡略化することができる。
第3の発明によれば、水素ガスを供給する必要があるときに必要な量の水素ガスが生成されるので、必要量の水素ガスを過不足なく液体燃料に混合することができる。これにより、水素ガスの生成量と供給量とのずれを調整するためのバッファタンクは不要となり、システム構成をより簡略化することができる。
第4の発明によれば、内燃機関の運転状態に応じた混合割合で水素を液体燃料に混合することができる。
第5の発明によれば、液体燃料の性状に応じた混合割合で水素を液体燃料に混合することができる。
第6の発明によれば、大気の状態に応じた混合割合で水素を液体燃料に混合することができる。
第7の発明によれば、触媒の状態に応じた混合割合で水素を液体燃料に混合することができる。
第8の発明によれば、触媒の還元や暖機のために水素ガスを供給する必要があると判断されたときには、モータにより内燃機関を強制回転させた時のポンプ作用によって、水素ガスが混合された液体燃料を排気通路に送ることができ、触媒の還元処理や暖機処理を効率的に行うことができる。また、第8の発明によれば、内燃機関の燃焼を停止させてもモータによって走行が可能であるので、触媒の還元処理や暖機処理を必要なときに行うことができる。
実施の形態1.
以下、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は本発明の実施の形態1としての水素利用内燃機関(以下、単にエンジンという)のシステム構成を示す図である。本実施形態のエンジンは、複数の気筒(図1では1つの気筒のみを示している)からなるエンジン本体2を有している。エンジン本体2は、気筒毎にピストン8を有し、各気筒の内部にはピストン8の上下運動によって膨張と収縮を繰り返す燃焼室10が形成されている。エンジン本体2には、各気筒の燃焼室10に空気を供給するための吸気通路4と、燃焼室10から燃焼ガスを排出するための排気通路6が接続されている。排気通路6には燃焼ガスを浄化するための触媒(例えばNOx触媒)20が配置されている。
エンジン本体2において、吸気通路4と燃焼室10との接続部には、その連通状態を制御する吸気バルブ12が設けられ、排気通路6と燃焼室10との接続部には、その連通状態を制御する排気バルブ14が設けられている。また、燃焼室10には、その内部に燃料を直接噴射する筒内インジェクタ18と、その内部の混合ガスに点火する点火プラグ16が取り付けられている。
上記の筒内インジェクタ18は、燃料供給ライン36によって燃料タンク30に接続されている。燃料タンク30には炭化水素系の液体燃料であるガソリンが貯蔵されている。燃料タンク30内の液体燃料は、燃料供給ライン36に配置された燃料ポンプ(高圧ポンプ)32によって吸い上げられ、燃焼室10内の燃焼ガス圧よりも高い所定圧まで圧縮されてから筒内インジェクタ18へ供給される。燃料ポンプ32は、エンジン本体2によって駆動される機械式ポンプでもよく、モータによって駆動される電動式ポンプでもよい。燃料タンク30には、重質度、オクタン価、アルコール添加度等、燃料タンク30内の液体燃料の性状(燃料性状)に応じた信号を出力する燃料性状センサ54が取り付けられている。
燃料供給ライン36における燃料ポンプ32の下流には、もう一方の燃料である水素ガスを液体燃料に混合するためのマイクロバブル発生装置52が配置されている。マイクロバブル発生装置52は、水素ガスを直径数十μm以下の微細気泡(マイクロバブルという)にして燃料供給ライン36中の液体燃料に混合する。なお、マイクロバブル発生装置52によるマイクロバブルの発生方法は、液体燃料中で水素ガスをマイクロバブルにすることができるものであれば、その方法に限定はない。以下に列挙するマイクロバブルの発生方法は、本実施形態のマイクロバブル発生装置52において採り得る方法の一例である。
まず、マイクロバブルの発生方法の第1例は、液体燃料の激しい流れの中に水素ガスを吹き込むことで、そこに発生する強いせん断力により水素ガスを粉砕する方法である。
マイクロバブルの発生方法の第2例は、水素ガスを加圧してより多く液体燃料中に溶解させた状態から、液体燃料の流速を上げる等してキャビテーションを発生させる方法である。
そして、マイクロバブルの発生方法の第3例は、超音波を与えることで液体燃料中の水素ガスの気泡を加振して分裂させる方法である。
マイクロバブル発生装置52により水素ガスをマイクロバブル化して液体燃料に混合することで、水素ガスを液体燃料中に均一に混合することができ、また、水素ガスの液体燃料への溶解を促進することができる。また、水素ガスをマイクロバブル化することで、飽和水素量を超える水素ガスを供給した場合であっても、ある程度の量であれば、液体燃料から分離することなくマイクロバブルの状態で液体燃料中に均一に存在させることができる。したがって、一旦混合された水素ガスが燃料噴射までの間に液体燃料から分離する可能性は少なく、マイクロバブル発生装置52から筒内インジェクタ18まで、水素ガスを液体燃料と一体に実質的に液体の状態で取り扱うことが可能になる。
マイクロバブル発生装置52により液体燃料に混合される水素ガスは、水素生成装置50から水素ガス供給ライン46を介して供給される。水素生成装置50は、液体水素化合物から水素ガスを即座に生成することができる装置である。液体水素化合物としては、水、アルコール、ガソリン、軽油等が使用可能である。本実施形態では、液体水素化合物として水が用いられている。水素生成装置50による水素ガスの生成方法としては、以下に例示するような方法を採ることができる。
まず、水素生成方法の第1例は、燃料電池に逆起電力を印加することで水を電気分解する方法である。
水素生成方法の第2例は、液体水素化合物を低温プラズマで分解する方法である。具体的には、液体水素化合物に対し直流パルス放電を行うことにより、水素ガスを生成することができる。
水素生成方法の第3例は、高活性状態の金属によって水を還元する方法である。例えば、純水中でアルミニウムやアルミニウム合金を摩擦することで、金属に対する水の腐食反応を加速させて水分子を分解し、純粋な水素ガスを発生させることができる。また、水素化マグネシウムや水素化マグネシウム合金の粉末に水を供給することでも、純粋な水素ガスを発生させることができる。さらに、酸化鉄を還元して得られた金属鉄に水蒸気を反応させることでも、金属鉄の酸化に伴って純粋な水素ガスを発生させることができる。
上記の何れの方法によっても、必要に応じて即座に水等の液体水素化合物から水素ガスを生成することができる。特に、第3例の方法によれば、純粋な水素ガスのみを生成することができる。また、上記の何れの方法でも、比較的低温或いは常温で水素ガスを生成することができるので、マイクロバブル発生装置52による液体燃料への混合時に、より多くの水素ガスを液体燃料に溶解させることができるという利点もある。
水素生成装置50により水素ガスを生成することで、水素ガスを液体の状態で貯蔵することが可能になる。これにより、水素ガスを圧力タンク等で気体の状態で貯蔵する場合に比較して、その取り扱いが容易になるだけでなく、高い搭載効率を実現することが可能になる。本実施形態では、水素生成装置50において水素ガスの生成に用いられる水は、水タンク40から水供給ライン44を介して供給される。水供給ライン44には、水タンク40から水を吸い上げて水素生成装置50に供給するための水ポンプ42が配置されている。
上記のようなシステム構成によれば、水素ガスを気体の状態で取り扱う必要のある範囲は、水素生成装置50からマイクロバブル発生装置52までの水素ガス供給ライン46に限定される。これにより、従来のように貯蔵タンクから燃料噴射までの間、水素ガスを気体の状態で取り扱う場合に比較して、水素ガスの漏れ等への対策が簡単になる。また、筒内インジェクタ18に供給される液体燃料に水素ガスが混合した水素添加燃料は、実質的に液体であるので、従来の液体燃料用の筒内インジェクタをそのまま用いることができる。
本実施形態のエンジンは、その制御装置としてECU(Electronic Control Unit)60を備えている。ECU60の出力側には前述の点火プラグ16、筒内インジェクタ18、燃料ポンプ32、水ポンプ42、マイクロバブル発生装置52、水素生成装置50等の種々の機器が接続されている。ECU60の入力側には、前述の燃料性状センサ54の他、エンジン本体2の運転状態に関する情報(アクセル開度、車速、エンジン回転数、空燃比、水温、ノック信号等)を取得する運転状態測定装置62や、大気の状態に関する情報(温度、湿度、大気圧等)を取得する大気状態測定装置64等の種々のセンサ類が接続されている。ECU60は、各センサの出力に基づき、所定の制御プログラムにしたがって各機器を制御している。
本実施形態のエンジンは、液体燃料への水素ガスの添加を高負荷運転時におけるノッキングの抑制に用いている。図2は、本実施形態においてECU60により実行される水素添加制御のルーチンを示すフローチャートである。図2に示すルーチンは、所定のクランク角毎に周期的に実行されている。
図2に示すルーチンの最初のステップS100では、運転状態測定装置62によってエンジン本体2に発生しているノッキングの大きさ(ノックレベル)が測定される。次のステップS102では、測定されたノックレベルから水素添加なしのときのノックレベルが求められ、この水素無添加時のノックレベルに基づいて水素添加の実行条件の成否が判定される。水素添加の実行条件が成立した場合には、ステップS104乃至ステップS110の処理によって液体燃料への水素ガスの添加が行われる。
ステップS104では、予め記憶されているマップから、ノックレベルとそれ以外のエンジン本体2の運転状態、例えば、アクセル開度、エンジン回転数、水温、空燃比等に応じた要求水素添加割合が求められる。水素添加割合は、例えば、液体燃料と水素ガスを合わせた燃料全体の総発熱量に対する水素ガスの発熱量の比として定義することができる。マップでは、水素添加なしのときのノックレベルが大きいほど要求水素添加割合も大きく設定されている。
次のステップS106では、要求水素添加割合に応じた要求水素生成量(水素ガスの必要生成量)が求められる。具体的には、アクセル開度やエンジン回転数等からエンジン本体2の要求負荷が求められ、この要求負荷と要求水素添加割合とから、水素ガスが分担する負荷(水素負荷)が求められる。そして、水素ガスの単位量当たりの発熱量等に基づいて、水素負荷に応じた水素ガス量が要求水素生成量として算出される。
次のステップS108では、水ポンプ42の作動により要求水素生成量に応じた水が水タンク40から水素生成装置50に供給される。そして、水素生成装置50の作動により水素生成処理が実行されて要求水素生成量の水素ガスが生成される。生成された水素ガスが、水素生成装置50からマイクロバブル発生装置52へ供給される。
次のステップS110では、マイクロバブル発生装置52により水素ガスがマイクロバブル化され、このマイクロバブル化された水素ガスが液体燃料に混合される。水素ガスが混合された液体燃料は、マイクロバブル発生装置52から筒内インジェクタ18に供給され、筒内インジェクタ18から燃焼室10内に直接噴射される。
燃焼性に優れた水素ガスを含む燃料が噴射されることで、高負荷時のノッキングは抑制され、ステップS100で測定されるノックレベルは小さくなる。ステップS102の判定において水素添加実行条件が成立しなかったときには、水素生成装置50における水素生成処理が停止され(ステップS112)、続いて、マイクロバブル発生装置52によるマイクロバブル化処理も停止される(ステップS114)。
上記の水素添加制御ルーチンによれば、ノッキング抑制のために水素ガスが必要となったとき、水素生成装置50により水から水素ガスが即座に生成され、生成された水素ガスはマイクロバブル化されて液体燃料に混合される。これにより、高負荷運転時におけるノッキングを速やかに抑制することができ、点火時期の進角等による高効率な運転が可能になる。
また、上記のように、必要に応じて水から水素ガスを生成することで、水素ガスを取り扱いが難しく且つ搭載効率の劣る気体の状態で貯蔵する必要が無い。しかも、水素ガスは必要量のみ生成され、生成された必要量の水素ガスは全てマイクロバブル化されて液体燃料に混合されるので、水素ガスの生成量と供給量とのずれを調整するためのバッファタンクを設ける必要もない。
なお、本実施形態では、ECU60によりステップS100及びS102の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「判定手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS108及びS110、或いはS112及びS114の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「制御手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS104及びS106の処理が実行されることにより、第3の発明にかかる「水素混合量決定手段」が実現されている。
実施の形態2.
以下、図3を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態のエンジンは、実施の形態1にかかるシステム構成において、ECU60に、図2のルーチンに代えて図3のルーチンを実行させることにより実現することができる。本実施形態のエンジンは、液体燃料への水素ガスの添加をリーンバーン運転時における燃焼変動の抑制に用いている。図3は、本実施形態においてECU60により実行される水素添加制御のルーチンを示すフローチャートである。図3に示すルーチンは、所定のクランク角毎に周期的に実行されている。
図3に示すルーチンの最初のステップS200では、運転状態測定装置62によってエンジン本体2に発生している燃焼変動の大きさ(燃焼変動レベル)が測定される。燃焼変動レベルは、具体的には、エンジン回転数や筒内圧力の変動から測定することができる。次のステップS202では、測定された燃焼変動レベルから水素添加なしのときの燃焼変動レベルが求められ、この水素無添加時の燃焼変動レベルに基づいて水素添加の実行条件の成否が判定される。水素添加の実行条件が成立した場合には、ステップS204乃至ステップS210の処理によって液体燃料への水素ガスの添加が行われる。
ステップS204では、予め記憶されているマップから、燃焼変動レベルとそれ以外のエンジン本体2の運転状態、例えば、アクセル開度、エンジン回転数、水温、空燃比等に応じた要求水素添加割合が求められる。マップでは、水素添加なしのときの燃焼変動レベルが大きいほど、また、アクセル開度やエンジン回転数から求まるエンジン負荷が低いほど、要求水素添加割合も大きく設定されている。次のステップS206では、要求水素添加割合に応じた要求水素生成量が求められる。
次のステップS208では、水ポンプ42及び水素生成装置50の作動により要求水素生成量に応じた水素生成処理が実行される。水素生成装置50により生成された水素ガスは、マイクロバブル発生装置52によってマイクロバブル化されて液体燃料に混合される(ステップS210)。水素ガスが混合された液体燃料は、マイクロバブル発生装置52から筒内インジェクタ18に供給され、筒内インジェクタ18から燃焼室10内に直接噴射される。
燃焼性に優れた水素ガスを含む燃料が噴射されることで、低負荷時の燃焼変動は抑制され、ステップS200で測定される燃焼変動レベルは小さくなる。ステップS202の判定において水素添加実行条件が成立しなかったときには、水素生成装置50における水素生成処理が停止され(ステップS212)、続いて、マイクロバブル発生装置52によるマイクロバブル化処理も停止される(ステップS214)。
上記の水素添加制御ルーチンによれば、燃焼変動の抑制のために水素ガスが必要となったとき、水素生成装置50により水から水素ガスが即座に生成され、生成された水素ガスはマイクロバブル化されて液体燃料に混合される。これにより、リーンバーン運転時の燃焼変動を速やかに抑制することができ、リーンバーン領域を拡大することができる。
なお、本実施形態では、ECU60によりステップS200及びS202の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「判定手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS208及びS210、或いはS212及びS214の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「制御手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS204及びS206の処理が実行されることにより、第3の発明にかかる「水素混合量決定手段」が実現されている。
実施の形態3.
以下、図4を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施形態のエンジンは、実施の形態1にかかるシステム構成において、ECU60に、図2のルーチンに代えて図4のルーチンを実行させることにより実現することができる。本実施形態のエンジンは、液体燃料への水素ガスの添加を燃料性状の補正に用いている。液体燃料の燃料性状が変化すると、それに応じてエンジン本体2の運転性能(失火限界、ノック限界等)も変化してしまう。本実施形態では、水素ガスの添加により燃料性状を補正することで、常に一定のエンジン性能が得られるようにしている。図4は、本実施形態においてECU60により実行される水素添加制御のルーチンを示すフローチャートである。図4に示すルーチンは、所定のクランク角毎に周期的に実行されている。
図4に示すルーチンの最初のステップS300では、燃料性状センサ54の信号から燃料タンク30に貯蔵されている液体燃料の燃料性状(重質度、オクタン価、アルコール添加度等)が推定される。なお、燃料性状は、エンジン回転数や筒内圧力の変動状態から推定することもできる。次のステップS302では、推定された燃料性状が水素添加を必要とする燃料性状か否か判定される。水素添加を必要とする燃料性状とは、例えば、重質燃料、低オクタン燃料、アルコール添加度の高い燃料等である。そして、水素添加を必要とする燃料性状と推定された場合に、ステップS304乃至ステップS310の処理によって液体燃料への水素ガスの添加が行われる。
ステップS304では、予め記憶されているマップから、燃料性状とエンジン本体2の運転状態に応じた要求水素添加割合が求められる。マップでは、重質なほど、オクタン価が低いほど、また、アルコール添加度が高いほど要求水素添加割合は大きく設定されている。次のステップS306では、要求水素添加割合に応じた要求水素生成量が求められる。
次のステップS308では、水ポンプ42及び水素生成装置50の作動により要求水素生成量に応じた水素生成処理が実行される。水素生成装置50により生成された水素ガスは、マイクロバブル発生装置52によってマイクロバブル化されて液体燃料に混合される(ステップS310)。水素ガスが混合された液体燃料は、マイクロバブル発生装置52から筒内インジェクタ18に供給され、筒内インジェクタ18から燃焼室10内に直接噴射される。
給油等により燃料タンク30内の液体燃料の性状が変化したときには、ステップS302の判定で水素添加の必要はないと判断される場合がある。その場合には、水素生成装置50における水素生成処理が停止され(ステップS312)、続いて、マイクロバブル発生装置52によるマイクロバブル化処理も停止される(ステップS314)。
上記の水素添加制御ルーチンによれば、液体燃料の性状が水素添加の必要な燃料性状のときには、水素生成装置50により水から水素ガスが即座に生成され、生成された水素ガスはマイクロバブル化されて液体燃料に混合される。これにより、燃料性状の差は水素の添加度によって補正され、燃料性状によらず常に一定のエンジン性能を維持することができる。
なお、本実施形態では、ECU60によりステップS300及びS302の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「判定手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS308及びS310、或いはS312及びS314の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「制御手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS304及びS306の処理が実行されることにより、第3の発明にかかる「水素混合量決定手段」が実現されている。
実施の形態4.
以下、図5を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施形態のエンジンは、実施の形態1にかかるシステム構成において、ECU60に、図2のルーチンに代えて図5のルーチンを実行させることにより実現することができる。本実施形態のエンジンは、大気状態がエンジン本体2の運転性能(失火限界、ノック限界等)に与える影響を補正すため、水素ガスを液体燃料に添加する。図5は、本実施形態においてECU60により実行される水素添加制御のルーチンを示すフローチャートである。図5に示すルーチンは、所定のクランク角毎に周期的に実行されている。
図5に示すルーチンの最初のステップS400では、大気状態測定装置64によって現在の大気の状態(温度、湿度、大気圧等)が測定される。次のステップS402では、測定された大気状態が水素添加を必要とする大気状態か否か判定される。例えば、ノッキングは高温、高圧、低湿度ほど発生しやすく、大気状態によってはノッキング抑制のために水素添加が必要となる。一方、失火は低温、低圧ほど発生しやすく、大気状態によっては失火防止のために水素添加が必要となる。水素添加を必要とする大気状態である場合には、ステップS404乃至ステップS410の処理によって液体燃料への水素ガスの添加が行われる。
ステップS404では、予め記憶されているマップから、大気状態とエンジン本体2の運転状態に応じた要求水素添加割合が求められる。マップでは、アクセル開度とエンジン回転数から求まるエンジン負荷が高負荷の場合には、高温ほど、高圧ほど、また、低湿度ほど要求水素添加割合は大きく設定されている。エンジン負荷が低負荷の場合には、低温ほど、また、低圧ほど要求水素添加割合は大きく設定されている。次のステップS406では、要求水素添加割合に応じた要求水素生成量が求められる。
次のステップS408では、水ポンプ42及び水素生成装置50の作動により要求水素生成量に応じた水素生成処理が実行される。水素生成装置50により生成された水素ガスは、マイクロバブル発生装置52によってマイクロバブル化されて液体燃料に混合される(ステップS410)。水素ガスが混合された液体燃料は、マイクロバブル発生装置52から筒内インジェクタ18に供給され、筒内インジェクタ18から燃焼室10内に直接噴射される。
天気の変化や車両の走行高度の変化等により大気状態が変化したときには、ステップS402の判定で水素添加の必要はないと判断される場合がある。その場合には、水素生成装置50における水素生成処理が停止され(ステップS412)、続いて、マイクロバブル発生装置52によるマイクロバブル化処理も停止される(ステップS414)。
上記の水素添加制御ルーチンによれば、現時点の大気状態が水素添加の必要な大気状態のときには、水素生成装置50により水から水素ガスが即座に生成され、生成された水素ガスはマイクロバブル化されて液体燃料に混合される。これにより、温度、湿度、大気圧等の影響による高負荷運転時のノッキングや低負荷運転時の失火は抑制され、大気状態によらず常に一定のエンジン性能を維持することができる。
なお、本実施形態では、ECU60によりステップS400及びS402の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「判定手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS408及びS410、或いはS412及びS414の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「制御手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS404及びS406の処理が実行されることにより、第3の発明にかかる「水素混合量決定手段」が実現されている。
実施の形態5.
以下、図6を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。
本実施形態のエンジンは、実施の形態1にかかるシステム構成において、ECU60に、図2のルーチンに代えて図6のルーチンを実行させることにより実現することができる。本実施形態のエンジンは、触媒20の還元処理或いは暖機処理のために水素ガスを液体燃料に添加する。図6は、本実施形態においてECU60により実行される水素添加制御のルーチンを示すフローチャートである。図6に示すルーチンは、所定のクランク角毎に周期的に実行されている。
図6に示すルーチンの最初のステップS500では、運転状態測定装置62によって触媒20の状態、具体的には、触媒20のNOx吸蔵量と触媒20の温度が測定される。触媒20のNOx吸蔵量は、前回の還元処理からのリーンバーン運転時間によって間接的に測定することができる。また、触媒20の温度は、温度センサにより直接測定することも、排気ガスの温度から間接的に測定することもできる。
次のステップS502では、ステップS500で測定された触媒20の状態から、触媒処理の要求の有無が判定される。例えば、触媒20のNOx吸蔵量が限界に近い場合は、触媒20の還元処理が必要と判断される。また、触媒20の温度がその浄化性能が最大となる適正温度よりも低い場合には、触媒20の暖機処理が必要と判断される。何れの場合にも、その処理の方法としては水素ガスを液体燃料に添加して触媒20に供給すればよい。還元処理のために水素ガスを添加する場合は、水素ガスを還元剤として触媒20に作用させて触媒20の吸蔵能力を効率的に回復することができる。暖機処理のために水素ガスを添加する場合は、水素ガスを触媒20上で酸素と反応させ、その際の反応熱によって触媒20を効率的に暖機することができる。したがって、何れかの触媒処理要求が有る場合には、ステップS504乃至ステップS510の処理によって液体燃料への水素ガスの添加が行われる。
ステップS504では、予め記憶されているマップから、触媒処理要求の内容(還元処理の要求か、或いは暖機処理の要求か)とエンジン本体2の運転状態に応じた要求水素添加割合が求められる。次のステップS506では、要求水素添加割合に応じた要求水素生成量が求められる。
次のステップS508では、水ポンプ42及び水素生成装置50の作動により要求水素生成量に応じた水素生成処理が実行される。水素生成装置50により生成された水素ガスは、マイクロバブル発生装置52によってマイクロバブル化されて液体燃料に混合される(ステップS510)。水素ガスが混合された液体燃料は、マイクロバブル発生装置52から筒内インジェクタ18に供給され、筒内インジェクタ18から燃焼室10内に直接噴射される。その際の燃料噴射の方法としては、吸気行程或いは圧縮行程で噴射する主噴射と、膨張行程或いは排気行程で噴射する副噴射の2段噴射が採られる。副噴射で噴射された燃料中の水素ガスは、燃焼することなくそのまま触媒20まで流れ、触媒20の還元処理或いは暖機処理に供せられる。
触媒20の還元処理或いは暖機処理が完了した場合には、ステップS502の判定において触媒処理の要求は撤回される。その場合には、水素生成装置50における水素生成処理が停止され(ステップS512)、続いて、マイクロバブル発生装置52によるマイクロバブル化処理も停止される(ステップS514)。
上記の水素添加制御ルーチンによれば、触媒20の還元処理或いは暖機処理が必要とされるときには、水素生成装置50により水から水素ガスが即座に生成され、生成された水素ガスはマイクロバブル化されて液体燃料に混合される。これにより、還元処理が要求されている場合には、触媒20のNOx吸蔵能力を速やかに回復することができ、また、暖機処理が要求されている場合には、触媒20の温度を適正温度まで速やかに暖機することができる。
なお、本実施形態では、ECU60によりステップS500及びS502の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「判定手段」が実現されている。また、ECU50によりステップS508及びS510、或いはS512及びS514の処理が実行されることにより、第1の発明にかかる「制御手段」が実現されている。また、ECU60によりステップS504及びS506の処理が実行されることにより、第3の発明にかかる「水素混合量決定手段」が実現されている。
実施の形態6.
以下、図7及び図8を参照して、本発明の実施の形態6について説明する。
図7は本発明の水素利用内燃機関が適用されたハイブリッド車両の駆動システムの構成を示す図である。本実施形態にかかるハイブリッド車両の駆動システムは、その動力装置として、実施の形態1にかかるシステム構成のエンジン(図1に示すエンジン)を備えている。図7中、実施の形態1と同一の要素は同一の符号を付している。
この駆動システムは、もう1つの動力装置としてモータ72を備えている。また、駆動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ76も備えている。エンジン本体2、モータ72及びジェネレータ76は、動力分割機構70を介して相互に連結されている。動力分割機構70につながるモータ72の回転軸には、減速機74が接続されている。減速機74は、モータ72の回転軸と駆動輪92につながる駆動軸90とを連結している。動力分割機構70は、エンジン本体2の駆動力をジェネレータ76側と減速機74側とに分割する装置である。動力分割機構70による駆動力の配分は任意に変更することができる。
この駆動システムには、さらに、インバータ78、コンバータ80及び高圧バッテリ82が含まれている。インバータ78は、ジェネレータ76及びモータ72に接続されるとともに、コンバータ80を介して高圧バッテリ82にも接続されている。ジェネレータ76で発電された電力は、インバータ78を介してモータ72に供給することもできるし、インバータ78及びコンバータ80を介して高圧バッテリ82に充電することもできる。また、高圧バッテリ82に充電されている電力は、コンバータ80及びインバータ78を介してモータ72に供給することができる。
この駆動システムによれば、モータ72を停止させてエンジン本体2の駆動力のみによって駆動輪92を回転させることもできるし、逆に、エンジン本体2を停止させてモータ72の駆動力のみによって駆動輪92を回転させることもできる。モータ72とエンジン本体2の双方を作動させ、双方の駆動力によって駆動輪92を回転させることもできる。また、この駆動システムによれば、モータ72をエンジン本体2のスタータとして機能させることもできる。つまり、エンジン本体2の始動時、モータ72の駆動力の一部或いは全部を動力分割機構70を介してエンジン本体2に入力することで、エンジン本体2をクランキングすることができる。さらに、エンジン本体2の始動に関係なく、停止しているエンジン本体2を必要に応じて強制的に回転させることもできる。
本実施形態の駆動システムは、ECU60によって制御されている。ECU60は、エンジン本体2を含むエンジンシステムのみならず、モータ72、ジェネレータ76、動力分割機構70、インバータ78及びコンバータ80等を含む駆動システムの全体を総合的に制御している。図8は、本実施形態においてECU60により実行される水素添加制御のルーチンを示すフローチャートである。図8に示すルーチンは、所定のクランク角毎に周期的に実行されている。
図8に示すルーチンの最初のステップS600では、エンジン本体2が燃焼作動しているか否か判定される。エンジン本体2が燃焼作動している場合には、ステップS602乃至ステップS608の処理によって液体燃料への水素ガスの添加が行われる。
ステップS602では、予め記憶されているマップから、エンジン本体2の運転状態に応じた要求水素添加割合が求められる。例えば、高負荷運転時にはノッキングを抑制するための水素添加割合が求められ、低負荷運転時には失火や燃焼変動を抑制するための水素添加割合が求められる。次のステップS604では、要求水素添加割合に応じた要求水素生成量が求められる。
次のステップS606では、水素生成装置50の作動により要求水素生成量に応じた水素生成処理が実行される。水素生成装置50により生成された水素ガスは、マイクロバブル発生装置52によってマイクロバブル化されて液体燃料に混合される(ステップS608)。水素ガスが混合された液体燃料がエンジン本体2に供給されることで、高負荷運転時には、ノッキングを速やかに抑制して点火時期の進角等による高効率な運転が可能になる。また、低負荷運転時には、失火や燃焼変動を速やかに抑制してリーンバーン領域を拡大することが可能になる。
一方、ステップS600の判定でエンジン本体2の燃焼が停止している場合には、続いてステップS610の判定が行われる。ステップS610では、触媒20の状態から触媒処理の要求の有無が判定される。触媒20のNOx吸蔵量が限界に近い場合は、触媒20の還元処理が必要と判断される。また、触媒20の温度がその浄化性能が最大となる適正温度よりも低い場合には、触媒20の暖機処理が必要と判断される。ステップS610の判定の結果、何れかの触媒処理要求が有る場合には、以下に説明するステップS616乃至ステップS624の処理によって液体燃料への水素ガスの添加と、水素ガスが添加された液体燃料の触媒20への供給が行われる。
まず、ステップS616では、予め記憶されているマップから、触媒処理要求の内容(還元処理の要求か、或いは暖機処理の要求か)に応じた要求水素添加割合が求められる。ステップS618では、要求水素添加割合に応じた要求水素生成量が求められる。次のステップS620では、水素生成装置50の作動により要求水素生成量に応じた水素生成処理が実行される。水素生成装置50により生成された水素ガスは、マイクロバブル発生装置52によってマイクロバブル化されて液体燃料に混合される(ステップS622)。
次のステップS624では、動力分割機構70が操作され、モータ72の駆動力の一部或いは全部が動力分割機構70を介してエンジン本体2に入力される。これにより、エンジン本体2はモータ72の駆動力によって強制的に回転させられ、吸気通路から空気を吸い込んで排気通路6へ排出するポンプとして作動する。
また、ステップ624では、モータ72によるエンジン本体2の強制回転と同時に、ECU60から筒内インジェクタに噴射指令が供給され、水素ガスが混合された液体燃料(水素添加燃料)が筒内インジェクタから燃焼室内に噴射される。この場合、各気筒の筒内インジェクタを作動させてもよく、特定気筒の筒内インジェクタのみ作動させてもよい。或いは、水素添加燃料の供給量に応じて作動させる筒内インジェクタの本数を決めてもよい。
筒内インジェクタから燃焼室内に噴射された水素添加燃料は、エンジン本体2のポンプ作用によって、吸気通路から吸入された空気とともにそのまま排気通路6へ排出される。このとき、要求されている触媒処理が還元処理の場合には、吸気通路のスロットルは閉じられる。スロットルを閉じることで吸入空気量を絞り、水素添加燃料の空気による希釈度を小さくすることができる。これにより、触媒20には極めて水素濃度の高いガスが流入することとなり、触媒20の周囲雰囲気は濃い還元雰囲気とされる。
要求されている触媒処理が暖機処理の場合には、スロットルが開かれて燃料噴射量に応じた量の空気が燃焼室内へ吸入される。スロットルの開度は、水素添加燃料と空気の空燃比が触媒20上での燃焼反応に適した所定の空燃比になるように制御される。水素添加燃料と空気の混合気が排気通路6を通って触媒20に供給され、水素添加燃料と酸素が触媒20上で燃焼反応を起こすことで、触媒20の温度は上昇していく。
触媒20の還元処理或いは暖機処理が完了した場合には、ステップS610の判定において触媒処理の要求は撤回される。その場合には、水素生成装置50における水素生成処理が停止され(ステップS612)、続いて、マイクロバブル発生装置52によるマイクロバブル化処理も停止される(ステップS614)。
上記の水素添加制御ルーチンによれば、エンジン本体2の燃焼作動中は、エンジン本体2の運転状態に応じて液体燃料への水素添加を行うことで、ノック限界やリーン限界を拡大してエンジン本体2を効率的に運転することができる。そして、エンジン本体2の燃焼停止時に、モータ72によってエンジン本体2を回転させながら水素添加燃料の噴射を行うことで、エンジン本体2の運転性能に影響を与えることなく、触媒20の還元処理や暖機処理を効率良く行うことができる。
なお、本実施形態では、ECU60により上記の水素添加制御ルーチンが実行されることにより、第8の発明にかかる「制御装置」が実現されている。
その他.
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、次のように変形して実施してもよい。
図1に示すエンジンでは、燃料噴射装置として、燃焼室10内に直接燃料を噴射する筒内インジェクタ18を備えているが、吸気ポートに燃料を噴射するポートインジェクタであってもよい。また、図1に示すエンジンは、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンとして構成されているが、本発明は軽油を燃料とするディーゼルエンジンにも適用することができる。
また、図7の構成では、ハイブリッド車両はエンジン本体2によってもモータ72によっても走行可能に構成されているが、本発明を適用するにあたってはハイブリッド車両は少なくともモータ72によって走行可能であればよい。つまり、エンジン本体2は発電専用であってもよい。
本発明の実施の形態1としての水素利用内燃機関のシステム構成を示す図である。 本発明の実施の形態1において実行される水素添加制御のルーチンについて示すフローチャートである。 本発明の実施の形態2において実行される水素添加制御のルーチンについて示すフローチャートである。 本発明の実施の形態3において実行される水素添加制御のルーチンについて示すフローチャートである。 本発明の実施の形態4において実行される水素添加制御のルーチンについて示すフローチャートである。 本発明の実施の形態5において実行される水素添加制御のルーチンについて示すフローチャートである。 本発明の水素利用内燃機関が適用されたハイブリッド車両の駆動システムの構成を示す図である。 本発明の実施の形態6において実行される水素添加制御のルーチンについて示すフローチャートである。
符号の説明
2 エンジン本体
4 吸気通路
6 排気通路
10 燃焼室
18 筒内インジェクタ
20 触媒
30 燃料タンク
32 燃料ポンプ
36 燃料供給ライン
40 水タンク
42 水ポンプ
44 水供給ライン
46 水素ガス供給ライン
50 水素生成装置
52 マイクロバブル発生装置
54 燃料性状センサ
60 ECU
62 運転状態測定装置
64 大気状態測定装置
70 動力分割機構
72 モータ
74 減速機
76 ジェネレータ
78 インバータ
80 コンバータ
82 高圧バッテリ

Claims (8)

  1. 炭化水素系の液体燃料と水素ガスとを燃料として使用可能な水素利用内燃機関において、
    液体燃料を噴射する燃料噴射装置と、
    液体水素化合物を貯蔵する貯蔵手段と、
    前記貯蔵手段に貯蔵されている液体水素化合物から水素ガスを生成する水素生成手段と、
    前記燃料噴射装置に供給される液体燃料に前記水素生成手段によって生成された水素ガスを混合する水素混合手段と、
    前記内燃機関に水素ガスを供給する必要性を判定する判定手段と、
    前記判定手段により水素ガスを供給する必要があると判断されたとき、前記水素生成手段及び前記水素混合手段を作動させる制御手段と、
    を備えることを特徴とする水素利用内燃機関。
  2. 前記水素混合手段は、水素ガスの微細気泡を発生させる手段を含み、水素ガスの微細気泡を液体燃料に混合することを特徴とする請求項1記載の水素利用内燃機関。
  3. 前記判定手段により水素ガスを供給する必要があると判断された場合に、必要な水素混合量を決定する水素混合量決定手段を備え、
    前記制御手段は、前記水素混合量決定手段により決定された水素混合量に従って前記水素生成手段に水素ガスを生成させることを特徴とする請求項1又は2記載の水素利用内燃機関。
  4. 前記水素混合量決定手段は、前記内燃機関の運転状態に基づいて必要な水素混合量を決定することを特徴とする請求項3記載の水素利用内燃機関。
  5. 前記水素混合量決定手段は、液体燃料の性状に基づいて必要な水素混合量を決定することを特徴とする請求項3記載の水素利用内燃機関。
  6. 前記水素混合量決定手段は、大気の状態に基づいて必要な水素混合量を決定することを特徴とする請求項3記載の水素利用内燃機関。
  7. 前記水素混合量決定手段は、前記内燃機関の排気通路に配置される触媒の状態に基づいて必要な水素混合量を決定することを特徴とする請求項3記載の水素利用内燃機関。
  8. 請求項7記載の水素利用内燃機関とモータとを有し、少なくとも前記モータにより車両を駆動可能なハイブリッド車両の制御装置において、
    水素ガスを供給する必要があると判断されたとき、前記内燃機関の燃焼が停止している状態において前記モータによって前記内燃機関を強制的に回転させるとともに、前記水素生成手段及び前記水素混合手段を作動させ、水素ガスが混合した液体燃料を前記燃料噴射装置から噴射することを特徴とする水素利用内燃機関を有するハイブリッド車両の制御装置。
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