JP2007077549A - カットパイルカーペットおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明の課題は、立毛感、嵩高感が高くなおかつ風合いが良好である、車両用オプションマット、ラグまたはピースカーペット等に好適に用いる事が可能なカットパイルカーペットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記ポリプロピレンフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる異収縮混繊糸からなるパイルが基布上に形成されているカットパイルカーペットであって、該パイルと基布とのなす角度が50°以上であるカットパイルカーペットとする。
【選択図】 なし
本発明の課題は、立毛感、嵩高感が高くなおかつ風合いが良好である、車両用オプションマット、ラグまたはピースカーペット等に好適に用いる事が可能なカットパイルカーペットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記ポリプロピレンフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる異収縮混繊糸からなるパイルが基布上に形成されているカットパイルカーペットであって、該パイルと基布とのなす角度が50°以上であるカットパイルカーペットとする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ポリプロピレン異収縮混繊糸を用いた、立毛感や嵩高感が高くなおかつ良好な風合いを有するカットパイルカーペットおよびその製造方法に関する。
カットパイルカーペットに求められる特性には、立毛感、嵩高感、風合いなどがある。そしてこれらの特性を高めるために、例えば、特許文献1に記載されているように、カットパイル糸の単繊維繊度の調整やパイル糸に対する捲縮加工が行われることがある。しかしながら、単繊維繊度が太いと嵩高感は増すが風合いのソフト感が悪く、一方、単繊維繊度が細いと、風合いのソフト感は増すが嵩高感は低下する傾向がある。一方で、パイル糸の捲縮率を高くすると、嵩高感や風合いのソフト感は増すが立毛感は低下し、逆に捲縮率を低くすると、立毛感は増すが嵩高感が低下する傾向があった。
また、嵩高感および立毛感を高めるために、パイル糸の総繊度を高くする方法や、タフト密度を上げてカーペットの打ち込み密度を高く設計する方法もある。しかしながら、パイル糸が高密度のカーペットはソフト感が低下するという問題があり、さらに、高密度のカーペットを得るために、パイル糸の打ち込み本数を増やすまたは打ち込み間隔を狭くするなどの方法もあるが、これらの方法には基布の破れが発生するなどのタフト工程における工程通過性の問題があった。
また、特許文献2、特許文献3には、異収縮混繊糸をパイル糸に用いた、嵩高性に優れたパイルカーペットが記載されている。
特開2000−220050号公報
特開平7−324275号公報
特開2003−201623号公報
しかし、特許文献2に記載のパイルカーペットは、タフト後の乾燥工程で十分な異収縮差、捲縮が発現しにくくソフト感が不十分となる恐れがある。また、特許文献3に記載のパイルカーペットは、その製造工程において180℃の高温で捲縮加工を行っているため、捲縮の発現によりタフト工程の安定性が不十分となりやすく、捲縮の発現が大きいために立毛感も不十分となる。
本発明はこれらの問題を解決するものであり、立毛感、嵩高感が高くなおかつ風合いが良好であるカットパイルカーペットを提供することにある。
本発明はこれらの問題を解決するものであり、立毛感、嵩高感が高くなおかつ風合いが良好であるカットパイルカーペットを提供することにある。
本発明の第1の要旨は、ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記ポリプロピレンフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる異収縮混繊糸からなるパイルが基布上に形成されているカットパイルカーペットであって、該パイルと基布とのなす角度が50°以上であるカットパイルカーペットにある。
また、本発明の第2の要旨は、ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記マルチフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる混繊糸に、120℃以上160℃以下で捲縮加工を施した後に撚糸して得られる異収縮混繊糸を、基布にタフトしてカットパイルを形成するカットパイルカーペットの製造方法にある。
また、本発明の第2の要旨は、ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記マルチフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる混繊糸に、120℃以上160℃以下で捲縮加工を施した後に撚糸して得られる異収縮混繊糸を、基布にタフトしてカットパイルを形成するカットパイルカーペットの製造方法にある。
本発明によれば、立毛感、嵩高感が高くなおかつ風合いが良好なカットパイルカーペットとなるので、車両用オプションマット、ラグまたはピースカーペット等に好適に用いる事が可能であり、立毛感が高いことからパイルの少なくとも一部に原着繊維を用いて柄入りとしたときに、より鮮やかな色合いのカーペットが得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のパイルカーペットのパイル糸は、ポリポリピレンマルチフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記ポリプロピレンマルチフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる異収縮混繊糸で構成されている。
本発明のパイルカーペットのパイル糸は、ポリポリピレンマルチフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記ポリプロピレンマルチフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる異収縮混繊糸で構成されている。
カットパイルカーペットに嵩高感やソフト感を付与するために、従来は異収縮混繊糸を高温で捲縮加工することが行われてきたが、この方法では大きな捲縮が発現することにより立毛感が大きく低下してしまう恐れがあった。
一方、本発明では、ポリプロピレンフィラメント糸Bの130℃における乾熱収縮率を前記ポリプロピレンマルチフィラメント糸Aよりも低くすることにより、130℃程度の温度で適度な収縮差を発現させ、嵩高感およびソフト感を付与すると共に、捲縮の発現を必要最小限に抑えることで、パイル糸に立毛感を付与することが可能となる。
一方、本発明では、ポリプロピレンフィラメント糸Bの130℃における乾熱収縮率を前記ポリプロピレンマルチフィラメント糸Aよりも低くすることにより、130℃程度の温度で適度な収縮差を発現させ、嵩高感およびソフト感を付与すると共に、捲縮の発現を必要最小限に抑えることで、パイル糸に立毛感を付与することが可能となる。
本発明の異収縮混繊糸は、パイル糸として適度な収縮差を発現させるために、特に、ポリプロピレンフィラメント糸Aの130℃における乾熱収縮率は5〜15%であって、かつ、ポリプロピレンフィラメント糸Bの130℃における乾熱収縮率が、ポリプロピレンフィラメント糸Aの130℃における乾熱収縮率よりも1〜5%の範囲で低いことが好ましい。
ポリプロピレンフィラメント糸Aの130℃における乾熱収縮率が5%未満である場合や、ポリプロピレンフィラメント糸Aとポリプロピレンフィラメント糸Bとの130℃における乾熱収縮率の差が1%未満である場合、両フィラメント糸の収縮差が小さく、十分な嵩高感が得られない。
ポリプロピレンフィラメント糸Aの130℃における乾熱収縮率が5%未満である場合や、ポリプロピレンフィラメント糸Aとポリプロピレンフィラメント糸Bとの130℃における乾熱収縮率の差が1%未満である場合、両フィラメント糸の収縮差が小さく、十分な嵩高感が得られない。
また、ポリプロピレンフィラメント糸Aの乾熱収縮率が15%を超える場合や、ポリプロピレンフィラメント糸Aとポリプロピレンフィラメント糸Bとの130℃における乾熱収縮率の差が5%を超える場合、低収縮性のポリプロピレンフィラメント糸Bとの収縮差が大きくなりすぎて、収縮差が大きくなりすぎ、二糸間に糸割れ等が発生し、風合いの低下が起こる恐れがある。
本発明のポリプロピレンフィラメント糸Aおよびポリプロピレンフィラメント糸Bの種類は、特に制限なく選択でき、市販品や従来公知の重合方法により得られるポリプロピレンポリマーのいずれも用いることができる。また、本発明におけるポリプロピレンフィラメント糸とは、ポリプロピレンホモポリマーのみで構成されたフィラメント糸のみならず、プロピレンを主体して、エチレンやブテン-1など他のオレフィンと共重合したポリオレフィン系コポリマーから得られるフィラメント糸も含まれる。
特に、本発明のカットパイルカーペットでは、ポリプロピレンフィラメント糸Aがエチレン−プロピレンコポリマーからなるポリプロピレンフィラメント糸であり、ポリプロピレンフィラメント糸Bがポリプロピレンホモポリマーからなるポリプロピレンフィラメント糸であることが好ましい。ポリマーの組合せとして、エチレン−プロピレンコポリマーとポリプロピレンホモポリマーを採用することにより、ポリプロピレンフィラメント糸Aとポリプロピレンフィラメント糸Bとの乾熱収縮率の差が適度のものとなり、なおかつ立毛感の高いカットパイルカーペットとなる。
このエチレン-プロピレンランダムコポリマーは、エチレン単量体単位の含有量がポリマー全量に対して3質量%以下であると好ましい。エチレン単量体単位含有量が3質量%を超えると、ポリマーの融点が低くなりすぎ、ポリプロピレンフィラメント糸Aを溶融紡糸後に延伸・捲縮などの加工を行う際に糸切れ等が発生しやすくなり、加工時の安定性が悪化しやすい。
また、このエチレン−プロピレンランダムコポリマーとして、メタロセン触媒で重合したエチレン−プロピレンランダムコポリマーを用いることが好ましい。メタロセン触媒で重合したエチレン−プロピレンランダムコポリマーは、他のポリオレフィンの重合触媒、例えば、チーグラー・ナッタ触媒などを用いて重合されたエチレン−プロピレンコポリマーと比べ、重合度の低いオリゴマーを含む可能性が低くなる。重合度の低いオリゴマーを多く含むポリマーを用いて紡糸すると、紡糸時に糸切れが発生しやすくなるなど、紡糸安定性が悪くなる恐れがある。
さらにポリプロピレンフィラメント糸Aおよびポリプロピレンフィラメント糸Bには、各フィラメント糸の特性が失われない範囲で、顔料、分散剤、蛍光増白剤、艶消剤、滑剤、帯電防止剤、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、耐光安定剤等の添加剤が配合されていてもよい。さらに、これら添加剤の種類及び量は各フィラメント糸ごとに異なっていてもよく、また、これらの添加剤がポリプロピレン以外のポリマーからなっていても良い。
本発明の異収縮混繊糸におけるポリプロピレンフィラメント糸Aとポリプロピレンフィラメント糸Bとの混繊率は、ポリプロピレンフィラメント糸Aを20%〜80%とすることが好ましい。高収縮成分であるポリプロピレンフィラメント糸Aの混繊率が20%未満であると、製織後のカーペットに異収縮混繊糸を用いることによる特徴である嵩高感が得られにくい。また、ポリプロピレンフィラメント糸Aの混繊率が80%を超えると、カットパイルカーペットの風合いが硬くなってソフト感が低下する。
本発明で用いられる異収縮混繊糸の総繊度は、1000dtex〜4000dtexであることが好ましい。4000dtexを超えると、高密度のカーペットとなって嵩高性を高めることはできるが、タフト時の工程通過性が悪くなる恐れがある。一方、1000dtex未満とすると、得られるカットパイルカーペットの嵩高感が低くなる場合がある。
さらにまた、本発明においては、ポリプロピレンフィラメント糸Aの単繊維繊度がポリプロピレンフィラメント糸Bの単繊維繊度以上であることが好ましい。異収縮混繊糸を乾熱処理したときに高収縮成分であるポリプロピレンフィラメント糸Aと低収縮成分であるポリプロピレンフィラメント糸Bとの間に適切な収縮差を発現させて、低収縮フィラメント糸の単繊維でカーペット表面を覆って好ましいソフト感を与えることができる。
さらにまた、本発明においては、ポリプロピレンフィラメント糸Aの単繊維繊度がポリプロピレンフィラメント糸Bの単繊維繊度以上であることが好ましい。異収縮混繊糸を乾熱処理したときに高収縮成分であるポリプロピレンフィラメント糸Aと低収縮成分であるポリプロピレンフィラメント糸Bとの間に適切な収縮差を発現させて、低収縮フィラメント糸の単繊維でカーペット表面を覆って好ましいソフト感を与えることができる。
さらにまた、本発明で用いる異収縮混繊糸の捲縮率は、5〜20%が好ましく、10〜15%以上がより好ましい。10〜15%とすると、嵩高でありながらより立毛感の高いカットパイルカーペットとすることができる。
また、異収縮混繊糸の各繊維の繊維断面は、円形、三角、扁平、中空や多芯中空断面、Y断面もしくは十字型断面など葉(リブ)を有する多葉断面等いずれでもよく、ポリプロピレンフィラメント糸Aとポリプロピレンフィラメント糸Bそれぞれの繊維断面が異なっていても良い。特に、ポリプロピレンフィラメント糸Aが多葉断面であって、ポリプロピレンフィラメント糸Bが三角断面であると、カットパイルカーペットの嵩高感と表面の光沢性の両方を同時に向上できるのでより好ましい。
本発明のカットパイルカーペットは、パイルと基布とのなす角度が50°以上である。カットパイルと基布とのなす角度を50°以上とすることにより、立毛感の高いカットパイルカーペットとなる。本発明のカットパイルと基布とのなす角度は、次のようにして測定することができる。まず、そのカットパイルの根元部が断面表面に表れるようにカットパイルカーペットを、垂直に切断する。そして、その断面写真上に、カットパイルの根元部と基布と交点からカットパイルの最外部に向けて接線を引き、この接線と基布表面が形成する直線とがなす角度をカットパイルと基布のなす角度とする。
次に、本発明のカットパイルカーペットの製造方法を説明する。
本発明では、ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記マルチフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる異収縮混繊糸に、捲縮加工することが必要である。130℃において該マルチフィラメント糸Aよりも該マルチフィラメント糸Bの乾熱収縮率が低いことにより、捲縮加工の際に糸長差が発現し、嵩高感、ソフト感に優れたものとなる。
本発明では、ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記マルチフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる異収縮混繊糸に、捲縮加工することが必要である。130℃において該マルチフィラメント糸Aよりも該マルチフィラメント糸Bの乾熱収縮率が低いことにより、捲縮加工の際に糸長差が発現し、嵩高感、ソフト感に優れたものとなる。
また、ポリプロピレンフィラメント糸Bの130℃における乾熱収縮率は、ポリプロピレンフィラメント糸Aの乾熱収縮率よりも1〜5%の範囲で低いことが好ましい。該マルチフィラメント糸Aと該マルチフィラメント糸Bとの乾熱収縮率の差が5%を超えると、収縮差が大きいため発生する糸長差が大きくなりすぎ、両糸間に糸割れ等が発生しやすくなる。一方、その差が1%未満となると、該マルチフィラメント糸Aと該マルチフィラメント糸Bの収縮差が十分に発現しにくいため、嵩高感、ソフト感が低下する恐れがある。
このようなポリプロピレンフィラメント糸Aとポリプロピレンフィラメント糸Bは、例えば、ポリプロピレンホモポリマーからなるものや、プロピレンを主体して、エチレン、ブテン−1など他のオレフィンと共重合したポリオレフィン系コポリマーからなるものが挙げられる。
該マルチフィラメント糸A、該マルチフィラメント糸Bは、それぞれ別々に紡糸し巻き取った後、混繊を行っても、紡糸工程において混繊を行った後に巻き取ってもよい。さらに、紡糸後一旦巻き取ることなく混繊し、次の捲縮加工を行ってもよい。
該マルチフィラメント糸A、該マルチフィラメント糸Bは、それぞれ別々に紡糸し巻き取った後、混繊を行っても、紡糸工程において混繊を行った後に巻き取ってもよい。さらに、紡糸後一旦巻き取ることなく混繊し、次の捲縮加工を行ってもよい。
本発明における捲縮加工は、捲縮加工を行う際の温度は120℃以上160℃以下とすることが必要であり、130℃以上150℃以下であることが好ましい。120℃未満では、該マルチフィラメント糸Aと該マルチフィラメント糸Bの収縮差が十分発現しないため、嵩高感、ソフト感が不十分となる。160℃を越えると捲縮の発現が大きく、嵩高感は大きくなるが、タフト工程の安定性が低下し、また、立毛感も低下する。なお、捲縮加工は、延伸と同時に行ってもよく、延伸後一旦巻き取った後に行っても良い。
続いて、捲縮加工を行った糸に対して撚糸を行う。本発明において、撚糸を行う際の、撚り方法、撚り方向(S撚り、Z撚り)に制限は無い。また、一般に撚糸後においてスチームセットなど、熱加工による撚止めセットが施される場合もあるが、本発明ではむしろ熱加工による撚止めセットを行わないほうが、カーペットとしたときのソフト感が向上するので好ましい。
一方で、ペンシルポイント感が高いカットパイルカーペットとしたい場合には、熱加工による撚止めセットを行ってもよいが、その場合は、110℃以下で熱セット加工することが好ましい。110℃以下で撚止めセットを行うことで、撚止めセット後であってもパイル糸が硬くなりすぎず、タフト後の乾燥工程でも収縮差を発現させ十分な嵩高感、ソフト感を発現することが可能となる。また、撚止めセットの温度条件が110℃を越えると、タフト後の乾燥工程において、十分な収縮差が発現せず、嵩高感、ソフト感が得られない。なお撚止めセットは、いわゆるスチームセットや、一旦ボビン等に巻き取り、110℃以下にセットした熱風乾燥機中に静置するなどの方法で行うことができる。
次いで、得られた異収縮混繊糸を用いて、基布にタフトすることによりループパイルとし、該ループパイルをカットすることによりカットパイルを形成する。このとき、すべてのループをカットしても、一部のループのみをカットしてカットパイル部とループパイル部が混在した状態としても良い。
カットパイルを形成後、接着剤を基布の裏面に塗布し、該接着剤を加熱乾燥・硬化してパイルを固定することにより、本発明のカットパイルカーペットが得られる。本発明においては、この乾燥工程の加熱により、混繊糸の収縮差が発現し嵩高感およびソフト感が向上する。この工程における乾燥温度は120℃以上、より好ましくは150℃以上とすることが好ましい。120℃以上で乾燥することにより、高収縮成分糸が沈み、根元の繊維が高密度となり、繊維が倒れ難くなりカーペット表面が低密度となるため風合いが良好となる。そのため、カットパイルと基布のなす角度も50°以上になりやすく、立毛感も増して、柄入りカーペットとした時に明瞭な柄となる。
さらに、150℃を越える温度条件で乾燥すると、異収縮混繊糸の収縮差やさらなる捲縮の発現により嵩高感や風合いが向上する。なお、基布に接着材により固定されているため、かかる高温で乾燥しても立毛感が低下することは無い。
このとき、この接着剤を介して基材の裏面に、そのカットパイルカーペットの用途に応じた裏地、例えば、合成ゴムまたは塩化ビニル樹脂からなる樹脂シートや麻布などを貼り付けても良い。また、用いる接着剤は、その用途や裏地の材質に応じて任意の接着剤を用いることができ、例えば、アクリル系ラテックス接着剤やウレタン系接着剤などその基布の種類に合わせて適宜選択することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、評価および測定は以下の方法で行った。
(130℃における乾熱収縮率)
1)各フィラメント糸を束ねてカセ状のサンプル糸を作成する。
2)サンプル糸を垂直の状態にし、下記の測定荷重をかけ1分放置後糸長(L1)を測定する。
測定荷重(g)=サンプル糸の総繊度[dtex]×(2/11)×(2×巻回数)
3)サンプル糸から加重を外し、130℃で10分乾熱処理する。
4)乾熱処理後取り出し、10分間室温で放置する。
5)サンプル糸を再び垂直の状態にし、上記の測定荷重をかけ1分放置後糸長(L2)を測定する。
6)次式により、試料の乾熱収縮率を算出する。
収縮率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
1)各フィラメント糸を束ねてカセ状のサンプル糸を作成する。
2)サンプル糸を垂直の状態にし、下記の測定荷重をかけ1分放置後糸長(L1)を測定する。
測定荷重(g)=サンプル糸の総繊度[dtex]×(2/11)×(2×巻回数)
3)サンプル糸から加重を外し、130℃で10分乾熱処理する。
4)乾熱処理後取り出し、10分間室温で放置する。
5)サンプル糸を再び垂直の状態にし、上記の測定荷重をかけ1分放置後糸長(L2)を測定する。
6)次式により、試料の乾熱収縮率を算出する。
収縮率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
(捲縮率)
1)異収縮混繊糸を束ねてカセ状のサンプル糸を作成する。
2)サンプル糸を80℃で10分間熱処理をする。
3)熱処理後、荷重をかけずに室温で10分以上放置する。
4)サンプル糸の一端に測定荷重Aをかけ、その1分後に糸長(L3)を測定する。
測定荷重A=サンプル糸の総繊度[dtex]×(1/10)×(2×巻き回数)
5)測定荷重Aを取り除き2分間放置する
6)サンプル糸の一端に測定荷重Bをかけ、1分後に糸長(L4)を測定する
測定荷重B=糸の総繊度[dtex]×(1/1000)×(2×巻き回数)
7)次式により、試料の捲縮率を算出する。
捲縮率(%)=〔(L3−L4)/L3〕×100
1)異収縮混繊糸を束ねてカセ状のサンプル糸を作成する。
2)サンプル糸を80℃で10分間熱処理をする。
3)熱処理後、荷重をかけずに室温で10分以上放置する。
4)サンプル糸の一端に測定荷重Aをかけ、その1分後に糸長(L3)を測定する。
測定荷重A=サンプル糸の総繊度[dtex]×(1/10)×(2×巻き回数)
5)測定荷重Aを取り除き2分間放置する
6)サンプル糸の一端に測定荷重Bをかけ、1分後に糸長(L4)を測定する
測定荷重B=糸の総繊度[dtex]×(1/1000)×(2×巻き回数)
7)次式により、試料の捲縮率を算出する。
捲縮率(%)=〔(L3−L4)/L3〕×100
(圧縮回復率)
1)カーペットサンプル中央部の厚さを測定し、これをT1(mm)とする。
2)サンプル中央部に、カーペットにかかる圧力が98kPa(10kgf)となる荷重をかけ、5分経過後に、その状態のままカーペット中央部付近の厚さを測定し、これをT2(mm)とする。
3)荷重を取り除き、5分経過後の厚さを測定しこれをT3(mm)とする。
4)次式により、カーペットの圧縮回復率を算出する。
圧縮回復率(%)={(T3−T2)/(T1−T2)}×100
1)カーペットサンプル中央部の厚さを測定し、これをT1(mm)とする。
2)サンプル中央部に、カーペットにかかる圧力が98kPa(10kgf)となる荷重をかけ、5分経過後に、その状態のままカーペット中央部付近の厚さを測定し、これをT2(mm)とする。
3)荷重を取り除き、5分経過後の厚さを測定しこれをT3(mm)とする。
4)次式により、カーペットの圧縮回復率を算出する。
圧縮回復率(%)={(T3−T2)/(T1−T2)}×100
(カットパイルと基布とのなす角度)
1)カットパイルの根元部が断面表面に表れるように、カットパイルカーペットを基布に対して垂直に切断する。
2)その断面写真を撮影する。
3)写真上に、カットパイルの根元部と基布と交点からカットパイルの最外部に向けて接線を引き、この接線と基布表面が形成する直線とがなす角度をカーペットのパイルの根元部と基布のなす角度とする。この角度の測定は、一枚のカットパイルカーペットから切り出した、連続する5本のカットパイルについて測定し、その平均値をそのカーペットの根元部と基布とのなす角度とする。
1)カットパイルの根元部が断面表面に表れるように、カットパイルカーペットを基布に対して垂直に切断する。
2)その断面写真を撮影する。
3)写真上に、カットパイルの根元部と基布と交点からカットパイルの最外部に向けて接線を引き、この接線と基布表面が形成する直線とがなす角度をカーペットのパイルの根元部と基布のなす角度とする。この角度の測定は、一枚のカットパイルカーペットから切り出した、連続する5本のカットパイルについて測定し、その平均値をそのカーペットの根元部と基布とのなす角度とする。
[実施例1]
ポリプロピレンフィラメント糸A用のポリマーAとして、エチレン−プロピレンランダムコポリマー(日本ポリケム社製 商品名:ウィンテックXK1183(MFR9g/10分、融点=134℃、エチレン含有量2.5質量%))を70質量%とし、ポリプロピレンホモポリマー(日本ポリケム製、商品名:SA03(MFR=31g/10分、融点=164℃))を30質量%の割合でブレンドしたものを用い、ポリプロピレンフィラメント糸B用のポリマーBとして、ポリプロピレンフィラメント糸Aで使用したものと同じポリプロピレンホモポリマーを用いた。このポリプロピレンフィラメント糸A及びポリプロピレンフィラメント糸Bの130℃における乾熱収縮率を測定したところ、それぞれ7%および2%であった。
ポリプロピレンフィラメント糸A用のポリマーAとして、エチレン−プロピレンランダムコポリマー(日本ポリケム社製 商品名:ウィンテックXK1183(MFR9g/10分、融点=134℃、エチレン含有量2.5質量%))を70質量%とし、ポリプロピレンホモポリマー(日本ポリケム製、商品名:SA03(MFR=31g/10分、融点=164℃))を30質量%の割合でブレンドしたものを用い、ポリプロピレンフィラメント糸B用のポリマーBとして、ポリプロピレンフィラメント糸Aで使用したものと同じポリプロピレンホモポリマーを用いた。このポリプロピレンフィラメント糸A及びポリプロピレンフィラメント糸Bの130℃における乾熱収縮率を測定したところ、それぞれ7%および2%であった。
溶融押出機を用いて、ポリマーAとポリマーBを押出温度210℃で、それぞれ個別の孔形状がY形状の紡糸口金(孔数60)に供給し、紡糸温度210℃、引き取り速度900m/分で紡糸した後、巻き取ること無しに得られた未延伸のマルチフィラメント糸Aとマルチフィラメント糸Bとを一旦引き揃え混繊糸とし、この糸を延伸倍率2.0倍、ローラー温度110℃、熱風温度150℃で同時延伸ホットエアー捲縮加工を行い、さらにエアー交絡を行って、緩和率17%で巻き取り、総繊度1780dtex、フィラメント数60の捲縮加工糸を得た。この捲縮加工糸をリング撚糸機を用いて、撚り数50T/mでS方向に片撚りすることにより、異収縮混繊糸を得た。このとき撚止めセットは行わなかった。得られた異収縮混繊糸の捲縮率を測定したところ8%であった。
得られた異収縮混繊糸を、1/8ゲージのタフティングマシンを用い、パイル打ち込み密度12本/インチ、パイル高さ:10mmで、ポリエステル繊維で構成されたスパンボンド不織布からなる基布にタフトしてループパイルを形成し、このループパイルをカットすることによりカットパイルとした。さらに基布の裏面にアクリルラテックス系接着剤を塗布したのち、乾燥機で140℃の条件で3分間乾燥してカットパイルを固定することにより、本発明のカットパイルカーペットを得た。
得られたカットパイルカーペットの、根元部と基布とのなす角度を測定したところ64°であり、圧縮回復率を測定したところ、35%と高い値になり嵩高感が高いことがわかった。また風合いも良好なカットパイルカーペットとなった。
[比較例1]
実施例1で用いた異収縮混繊糸に代えて、実施例1で用いたのポリプロピレンホモポリマーのみを用いて、パイル形成に用いるマルチフィラメント糸を紡糸した。溶融押出機にて、ポリプロピレンホモポリマー成分用の押出温度を210℃、紡糸温度210℃にて、孔形状がY形状の紡糸口金(孔数60)を用い、それぞれ供給して吐出させ紡糸速度900m/分で単繊維の断面がY断面を有するマルチフィラメント糸を得、引き続いて、一旦巻き取ること無く、得られた未延伸糸を延伸倍率2.0倍、ローラー温度110℃、熱風温度150℃で同時延伸ホットエアー捲縮加工を行い、さらにエアー交絡を行って、緩和率17%で巻き取り、総繊度1780dtex、フィラメント数60、捲縮率13%の捲縮糸を得た。この捲縮糸をリング撚糸機を用いて、撚り数50T/mでS方向に片撚りすることにより、単一の単繊維からなるマルチフィラメント糸からなる捲縮糸を得た。
この捲縮糸を用いて、実施例1と同様にしてカットパイルカーペットを得た。しかし、このカーペットは、パイル糸が根元から広がっており、基布と根元部のなす角度は35°であり立毛感の低いカーペットとなった。また、圧縮回復率も32%と低いカーペットとなった。
実施例1で用いた異収縮混繊糸に代えて、実施例1で用いたのポリプロピレンホモポリマーのみを用いて、パイル形成に用いるマルチフィラメント糸を紡糸した。溶融押出機にて、ポリプロピレンホモポリマー成分用の押出温度を210℃、紡糸温度210℃にて、孔形状がY形状の紡糸口金(孔数60)を用い、それぞれ供給して吐出させ紡糸速度900m/分で単繊維の断面がY断面を有するマルチフィラメント糸を得、引き続いて、一旦巻き取ること無く、得られた未延伸糸を延伸倍率2.0倍、ローラー温度110℃、熱風温度150℃で同時延伸ホットエアー捲縮加工を行い、さらにエアー交絡を行って、緩和率17%で巻き取り、総繊度1780dtex、フィラメント数60、捲縮率13%の捲縮糸を得た。この捲縮糸をリング撚糸機を用いて、撚り数50T/mでS方向に片撚りすることにより、単一の単繊維からなるマルチフィラメント糸からなる捲縮糸を得た。
この捲縮糸を用いて、実施例1と同様にしてカットパイルカーペットを得た。しかし、このカーペットは、パイル糸が根元から広がっており、基布と根元部のなす角度は35°であり立毛感の低いカーペットとなった。また、圧縮回復率も32%と低いカーペットとなった。
Claims (5)
- ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記ポリプロピレンフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる異収縮混繊糸からなるカットパイルが基布上に形成されているカットパイルカーペットであって、該パイルと基布とのなす角度が50°以上であるカットパイルカーペット。
- 該ポリプロピレンフィラメント糸Aの130℃における乾熱収縮率が5〜15%であって、かつ、該ポリプロピレンフィラメント糸Bの130℃における乾熱収縮率がポリプロピレンフィラメント糸Aの130℃における乾熱収縮率よりも1〜5%低い請求項1に記載のカットパイルカーペット。
- ポリプロピレンフィラメント糸Aと、ポリプロピレンフィラメント糸Aと、130℃における乾熱収縮率が前記マルチフィラメント糸Aよりも低いポリプロピレンフィラメント糸Bとからなる混繊糸に、120℃以上160℃以下で捲縮加工を施した後に撚糸して得られる異収縮混繊糸を、基布にタフトしてカットパイルを形成するカットパイルカーペットの製造方法。
- 撚糸後、基布にタフトしてパイルを形成するまでに撚止めセットを行わない請求項3に記載のカットパイルカーペットの製造方法。
- 撚糸後に、110℃以下の温度条件にて熱加工による撚止めセットを行う請求項3記載のカットパイルカーペットの製造方法。
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JP2005269410A JP2007077549A (ja) | 2005-09-16 | 2005-09-16 | カットパイルカーペットおよびその製造方法 |
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JP2019019426A (ja) * | 2017-07-18 | 2019-02-07 | パイロットインキ株式会社 | 捲縮糸パッケージ、繊維付設体の製造方法 |
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2005
- 2005-09-16 JP JP2005269410A patent/JP2007077549A/ja active Pending
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JP7064293B2 (ja) | 2017-07-18 | 2022-05-10 | パイロットインキ株式会社 | 繊維付設体の製造方法 |
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