JP2007073717A - 有機薄膜太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、電荷取出し効率が良く、高効率の有機薄膜太陽電池を提供することを主目的とする。
【解決手段】 本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、少なくとも二層の光電変換層を有する有機半導体層と、上記有機半導体層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池であって、上記光電変換層間の界面が凹凸を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高効率の有機薄膜太陽電池に関し、特に複数層の有機半導体膜が積層された有機半導体層を備える有機薄膜太陽電池に関するものである。
有機薄膜太陽電池は、2つの異種電極間に、電子供与性および電子受容性の機能を有する有機薄膜を配置してなる太陽電池であり、シリコンなどに代表される無機太陽電池に比べて製造工程が容易であり、かつ低コストで大面積化が可能であるという利点を持つ。しかしながら、光電変換効率が低いことから実用に供することは困難であり、有機薄膜太陽電池においては、光電変換効率の高効率化が最大の課題となっている。
一般的な有機薄膜太陽電池としては、例えば透明基板と、透明電極層と、電子供与体および電子受容体として機能する有機半導体層と、金属電極層とが順次積層されたものが挙げられる。このように複数層が積層された有機薄膜太陽電池では、各層間の界面における平滑性や密着性などが太陽電池の性能に大きく影響する。有機薄膜太陽電池における電荷の取り出しは積極的な外部電場の補助を受けていないため、電荷の移動経路にわずかな欠陥や障壁が存在すると太陽電池の特性が大きく損なわれるものであり、各層間の界面における平滑性や密着性等に起因する界面抵抗が欠陥や障壁となるからである。
また、有機薄膜太陽電池では、有機半導体層として複数層の有機半導体膜を積層する場合があり、このような場合には、各有機半導体膜間の界面状態も太陽電池の性能に大きく影響する。
ここで一般に、上下の有機半導体膜の接触面積が増加することで、電荷の移動が円滑になり、太陽電池の性能が向上する傾向がある。しかしながら、蒸着法で複数層の有機半導体膜を積層した場合には、膜の表面状態にばらつきが生じるため、各有機半導体膜間の界面での平滑性や密着性が低いという問題がある。また、塗布法で有機半導体膜を形成することは可能であるが、二層までを積層するのが限界であり、三層以上の有機半導体膜を積層するのは技術的に困難であるという問題がある(例えば非特許文献1参照)。したがって、上下の有機半導体膜の接触面積を増加させる現実的な手段がないというのが現状である。
また、p型有機半導体膜とn型有機半導体膜とを積層する際に、蒸着法で形成した有機半導体膜上に塗布法により有機半導体膜を積層する方法が提案されている(例えば非特許文献2参照)。この方法によれば、蒸着膜である下の有機半導体膜上に塗工液を塗布すると、塗工液中の溶媒に下の有機半導体膜から有機半導体材料がわずかに溶出するので、下の有機半導体膜表面が荒れる。これにより、上下の有機半導体膜の界面が入り組んだ状態となるため、pn接合面積を増大させることができ、光電変換効率を向上させることができると考えられる。
しかしながら、この方法は、pn接合面積を増大させるものであり、接触面積を増大させて電荷の移動を円滑化させるものではない。
C.W.Tang, "Two-layer organic photovoltaic cell", Applied Physics Letters, vol.48, No.2, p.183-185(1986) A. Fujii, H. Mizukami, T. Umeda, T. Shirakawa, Y. Hashimoto and K. Yoshino, "Solvent dependence of interpenetrating interface formation in organic conducting polymer and C60", Jpn. J. Appl. Phys., 43, p.8312-8315(2004)
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、電荷取出し効率が良く、高効率の有機薄膜太陽電池を提供することを主目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、少なくとも二層の光電変換層を有する有機半導体層と、上記有機半導体層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池であって、上記光電変換層間の界面が凹凸を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供する。
本発明によれば、光電変換層間の界面が凹凸を有するので、隣接する光電変換層の接触面積が増加し、光電変換層間の電荷の移動が円滑になるため、電荷取出し効率を向上させることができる。これにより、光電変換効率の向上が図れる。
上記発明においては、上記有機半導体層がさらに電荷取出し促進層を有していてもよい。例えば光電変換層と第1電極層または第2電極層との間に電荷取出し促進層が形成されている場合には、光電変換層と第1電極層または第2電極層との界面における抵抗障壁を低減することができ、電荷を効率良く取り出すことが可能となるからである。
また本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、光電変換層および電荷取出し促進層を有する有機半導体層と、上記有機半導体層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池であって、上記光電変換層および上記電荷取出し促進層間の界面が凹凸を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供する。
本発明によれば、光電変換層および電荷取出し促進層間の界面が凹凸を有するので、光電変換層と電荷取出し促進層との接触面積が増加し、光電変換層および電荷取出し促進層間の電荷の移動が円滑になるため、電荷取出し効率を向上させることができる。また、例えば光電変換層と第1電極層または第2電極層との間に電荷取出し促進層が形成されている場合には、光電変換層と第1電極層または第2電極層との界面における抵抗障壁を低減することができ、電荷を効率良く取り出すことができる。これにより、光電変換効率を向上させることが可能である。
また本発明においては、上記有機半導体層が塗膜であることが好ましい。すなわち、有機半導体層が、塗布法により形成されたものであることが好ましい。例えば粘度の比較的高い塗工液を用いることにより塗布ムラが生じるので、表面に凹凸を有する層を形成することができるからである。また、このような表面に凹凸を有する層上にさらに塗工液を塗布すると、流動性が良いので、表面凹凸と密着するように上層を形成することができるからである。これにより、層間の界面が凹凸を有するように下層を形成できるとともに、層間の密着性を高めることができる。
また本発明においては、上記第1電極層と上記有機半導体層との間に正孔取出し層が形成されていてもよい。第1電極層が陽極である場合は、正孔取出し層を設けることにより有機半導体層から陽極への正孔取出し効率が高められるからである。
さらに本発明は、基板上に第1電極層を形成する第1電極層形成工程と、上記第1電極層上に、粘度が所定の範囲である下層形成用塗工液を塗布して下層の塗膜を形成する下層形成工程、および、上記下層の塗膜上に上層の膜を形成する上層形成工程を有し、少なくとも二層の膜を有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、上記有機半導体層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法を提供する。
本発明によれば、所定の粘度を有する下層形成用塗工液を用いることにより塗布ムラが生じるので、表面に凹凸を有する塗膜を形成することができる。次いで、このような表面に凹凸を有する塗膜上にさらに膜を形成すると、上下の膜の接触面積が増加し、光電変換層間の電荷の移動が円滑になるため、電荷取出し効率を向上させることができる。したがって、高効率の有機薄膜太陽電池を得ることができる。
上記発明においては、上記上層形成工程が、上記下層の塗膜上に上層形成用塗工液を塗布して上層の塗膜を形成する工程であることが好ましい。このような工程であれば、上記のような表面に凹凸を有する下層の塗膜上に、表面凹凸に追随するように上層形成用塗工液を塗布することができ、上下の膜の密着性を高めることができるからである。
また上記発明においては、上記下層形成用塗工液が、重量平均分子量が10万以上である有機半導体材料を含有することが好ましい。有機半導体材料の重量平均分子量が上記範囲であることにより、上層形成用塗工液中の溶媒に下層の塗膜中の有機半導体材料が溶出等するのを抑制することができるからである。また、従来のように溶媒に対する溶解度の差を利用して積層するというものではないので、上層形成用塗工液に使用される溶媒の種類や上層の膜の構成材料が制限されないという利点を有する。
本発明においては、隣接する光電変換層間の界面、あるいは、光電変換層と電荷取出し促進層との界面が凹凸を有するので、層間の接触面積が増加し、電荷の移動が円滑になるため、光電変換効率を向上させることができるという効果を奏する。
以下、本発明の有機薄膜太陽電池およびその製造方法について詳細に説明する。
A.有機薄膜太陽電池
本発明の有機薄膜太陽電池は、有機半導体層の構成により、二つの実施態様に分けることができる。本発明の有機薄膜太陽電池の第1実施態様は、有機半導体層が少なくとも二層の光電変換層を有し、光電変換層間の界面が凹凸を有することを特徴とする。また本発明の有機薄膜太陽電池の第2実施態様は、有機半導体層が光電変換層および電荷取出し促進層を有し、光電変換層および電荷取出し促進層間の界面が凹凸を有することを特徴とする。以下、各実施態様に分けて説明する。
1.第1実施態様
本発明の有機薄膜太陽電池の第1実施態様は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、少なくとも二層の光電変換層を有する有機半導体層と、上記有機半導体層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池であって、上記光電変換層間の界面が凹凸を有することを特徴とするものである。
本実施態様の有機薄膜太陽電池について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施態様の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。図1に示す例において、有機薄膜太陽電池10は、基板1上に第1電極層2、有機半導体層3および第2電極層4が順次積層されたものである。有機半導体層3は、二層の光電変換層13aおよび13bを有し、光電変換層13aおよび13bの界面が凹凸を有する。
本実施態様によれば、光電変換層間の界面が凹凸を有するので、隣接する光電変換層の接触面積が増加し、光電変換層間の電荷の移動が円滑になるため、電荷取出し効率が向上する。また、隣接する光電変換層の屈折率が互いに異なる場合には、界面の凹凸により光散乱効果および光閉じ込め効果が得られるので、光を有効に利用することができる。したがって、高い光電変換効率を達成することが可能である。
以下、このような有機薄膜太陽電池の各構成について説明する。
(1)有機半導体層
本実施態様に用いられる有機半導体層は、少なくとも二層の光電変換層を有するものである。ここで、「光電変換層」とは、有機薄膜太陽電池の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極層に向かって輸送する機能を有する部材をいう。
本実施態様においては、光電変換層が、電子受容性および電子供与性を有する電子正孔輸送層であってもよく、また電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。例えば図1において、光電変換層13aが電子輸送層および正孔輸送層が積層されたものである場合、図2に例示するように光電変換層13aは正孔輸送層17aおよび電子輸送層17bを有するものとなる。図2においては、光電変換層13bに接触する側が電子輸送層17bであるので電子輸送層17bの表面に凹凸が存在するが、光電変換層13bに接触する側が電子輸送層であっても正孔輸送層であってもよいので、図示しないが光電変換層13bに接触する側が正孔輸送層である場合は正孔輸送層側の表面に凹凸が存在することになる。
本実施態様においては、有機半導体層は複数層の光電変換層を有し、隣接する光電変換層の界面のうち、少なくとも一つの界面が凹凸を有していればよい。具体的には、光電変換層間の界面において中心線平均粗さ(Ra)が10nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、中でも10nm〜500nmの範囲内、特に10nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。すなわち、凹凸を有する界面において下層となる光電変換層の表面の中心線平均粗さ(Ra)が上記範囲となることが好ましい。中心線平均粗さが上記範囲より小さいと、光電変換層間の密着性が低下し、かえって接触面積が減少してしまうおそれがあるからである。また、塗布法により、表面の中心線平均粗さが上記範囲より小さい光電変換層を形成するのは困難であるからである。一方、中心線平均粗さが上記範囲より大きいと、接触面積を増大させる効果が十分に得られない可能性があるからである。
なお、上記中心線平均粗さ(Ra)は、スキャン範囲:10μm、スキャン速度:0.4Hzの条件下で、原子間力顕微鏡(ビーコインスツルメンツ(DI)社製 ナノスコープIIIa)を用いて測定した値である。
また、下層となる光電変換層の表面凹凸は、緩やかな傾斜の凹凸であることが好ましい。急峻な傾斜の凹凸であると、光電変換層間の密着性が低下し、かえって接触面積が減少してしまうおそれがあるからである。
さらに、下層となる光電変換層の表面粗さは、粗さが小さいことが好ましい。一般に、表面粗さ(表面性状)は、図3に例示するように粗さとうねりで表すことができる。粗さとは、比較的小さい間隔をもつ表面の凹凸をいい、うねりとは、比較的大きな間隔をもつ表面の起伏をいう。粗さが大きすぎると、光電変換層間の密着性が低下し、かえって接触面積が減少してしまうおそれがある。
光電変換層の積層数としては、2層以上であればよいが、中でも2層〜5層程度であることが好ましく、より好ましくは2層または3層である。積層数が多すぎると、有機半導体層の透過率が低下し、光の利用効率が低下するからである。
例えば光電変換層が三層以上積層されている場合、隣接する光電変換層の界面のうち、少なくとも一つの界面が凹凸を有していればよい。例えば図4に示すように、全ての光電変換層13a,13b,13cの界面が凹凸を有していてもよい。
本実施態様の有機薄膜太陽電池は、少なくとも二層の光電変換層が直接積層されたものである。このように複数層の光電変換層が直接積層された有機薄膜太陽電池では、各光電変換層に互いに異なる吸収波長領域を有する材料をそれぞれ用いることができるので、有機薄膜太陽電池全体として吸収波長領域を広げることができる。また、各光電変換層に同一の吸収波長領域を有する材料を用いた場合には、一層のみの光電変換層を有する有機薄膜太陽電池に比べて、複数層の光電変換層を有する有機薄膜太陽電池では厚みが厚くなるので、厚みの増加に伴って吸光度を大きくすることもできると考えられる。したがって、複数層の光電変換層を直接積層することにより、広範囲の波長領域にわたって発電が可能であり、また、高い光電変換効率を実現できる有機薄膜太陽電池とすることができる。
ここで、図6に有機薄膜太陽電池の一例を示す。2つの電極層21,23の間に光電変換層22を挟んだ構成の有機薄膜太陽電池Sにおいて、光電変換層22にある光エネルギーLを照射することでJの電流が生じ、Vの起電力が得られるとする(図6(a))。この有機薄膜太陽電池Sを2個直列に接続し、そこに2Lの光エネルギーを照射したとき、仮に2個それぞれの有機薄膜太陽電池Sに対して等価な光エネルギー(=2L/2=L)を供給することができるとすれば、2倍の起電力(=2V)を得ることができる(図6(b))。すなわち、直列につないだ複数の有機薄膜太陽電池がどれも光吸収できるのであれば、その分起電力は増えるのである。
本実施態様においては、例えば光電変換層22a,22bを直接積層することにより、擬似的には、二つの有機薄膜太陽電池を直列につないだ場合と同程度の起電力2Vを得ることができると期待される(図6(c))。したがって、光電変換効率を高めることができ、さらに理想的には複数の有機薄膜太陽電池を直列につなぐのではなく、一つの有機薄膜太陽電池として利用することができる。
また本実施態様においては、有機半導体層がさらに電荷取出し促進層を有していてもよい。電荷取出し促進層を有する有機薄膜太陽電池の例を図7に示す。図7に示す有機薄膜太陽電池10では、基板1上に第1電極層2と有機半導体層3と第2電極層4とが順次積層されており、有機半導体層3が、電荷取出し促進層15と二層の光電変換層13a,13bとが積層されたものとなっている。光電変換層13aおよび13b内部ではそれぞれ電子および正孔が発生し、この電子および正孔は第1電極層2または第2電極層4に向かってそれぞれ逆方向に移動する。この場合、光電変換層13aと第1電極層2との間に電荷取出し促進層15が形成されているので、光電変換層13aと第1電極層2との界面における抵抗障壁を低減することができ、電荷を効率良く取り出すことが可能である。
また、電荷取出し促進層を有する有機薄膜太陽電池の他の例を図8に示す。図8に示す有機薄膜太陽電池10では、基板1上に第1電極層2と有機半導体層3と第2電極層4とが順次積層されており、有機半導体層3が、光電変換層13aと電荷取出し促進層15と二層の光電変換層13b,13cとが積層されたものとなっている。光電変換層13a、13bおよび13c内部ではそれぞれ電子および正孔が発生し、この電子および正孔は第1電極層2または第2電極層4に向かってそれぞれ逆方向に移動する。この場合、光電変換層13aと光電変換層13bとの間に電荷取出し促進層15が形成されているので、光電変換層13aと光電変換層13bとの界面における抵抗障壁を低減することができ、光電変換層13bから光電変換層13aに電荷が移動しやすくなるため、電荷取出し効率を向上させることが可能である。
このように、電荷取出し促進層が形成されている場合には、層間の界面おける抵抗障壁が緩やかになり、電荷の取り出しを促進することができる。また、電荷の取り出しを促進することができるので、従来のような電荷取出し層(正孔取出し層や電子取出し層)を別途設ける必要がないという利点を有する。
さらに、上記電荷取出し促進層が形成されている場合、光電変換層および電荷取出し促進層間の界面が凹凸を有していてもよい。この場合、光電変換層および電荷取出し促進層間の界面の中心線平均粗さ(Ra)が10nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜500nm、さらに好ましくは10nm〜300nmの範囲内である。光電変換層と電荷取出し促進層との接触面積を増加させて、電荷取出し効率をさらに高めることができるからである。
以下、有機半導体層を構成する光電変換層および電荷取出し促進層、ならびに有機半導体層の層構成について説明する。
(i)光電変換層
本実施態様に用いられる光電変換層は、上述したように、電子受容性および電子供与性を有する電子正孔輸送層であってもよく、また電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。以下、電子正孔輸送層、電子輸送層、および正孔輸送層について説明する。
(電子正孔輸送層)
本実施態様に用いられる電子正孔輸送層は、電子供与性の有機半導体材料および電子受容性の有機半導体材料を含有するものである。電子正孔輸送層は、電子受容性および電子供与性の両方の機能を有する層であり、電子正孔輸送層内で形成されるpn接合を利用して電荷分離が生じるため、単独で光電変換層として機能する。
効率良く電荷を発生させるためには、電子正孔輸送層内にて電子供与性の有機半導体材料および電子受容性の有機半導体材料が均一に分散されていることが好ましい。この際、電子供与性の有機半導体材料および電子受容性の有機半導体材料の混合比は、使用する有機半導体材料の種類により最適な混合比に適宜調整される。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、塗布法により製膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。
ここで、導電性高分子はいわゆるπ共役高分子であり、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系から成り立っており、半導体的性質を示すものである。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利である。また、導電性高分子材料は、導電性高分子材料を溶媒に溶解もしくは分散させた塗工液を用いることにより塗布法により容易に製膜可能であることから、大面積の有機薄膜太陽電池を高価な設備を必要とせず低コストで製造できるという利点がある。
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポルフィリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、フタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等を挙げることができる。
上記の中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、フェニレンエチニレン−フルオレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好ましく用いられる。これらは、多くの電子受容性の有機半導体材料に対して、エネルギー準位差が適当であるからである。
なお、例えばフェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体(Poly[1,4-phenyleneethynylene-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)-1,4-phenyleneethene-1,2-diyl-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)ethene-1,2-diyl])の合成方法については、Macromolecules, 35, 3825 (2002) や、Mcromol. Chem. Phys., 202, 2712 (2001) に詳しい。
また、電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、塗布法により製膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。
電子受容性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、カーボンナノチューブ、フラーレン誘導体、CN基またはCF基含有ポリマーおよびそれらの−CF置換ポリマー等を挙げることができる。ポリフェニレンビニレン誘導体の具体例としては、CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])、MEH−CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])等が挙げられる。
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることもできる。中でも、電子供与性化合物もしくは電子受容性化合物がドープされた導電性高分子材料が好ましく用いられる。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利であり、また、電子供与性化合物や電子受容性化合物をドープすることによりπ共役主鎖中に電荷が発生し、電気伝導度を大きく増大させることが可能であるからである。
電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述した電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。
また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl(III)、AlCl、AlBr、AsFやハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
電子正孔輸送層の膜厚としては、一般的にバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができ、表面に凹凸を有するか否かにより適宜調整される。例えば、電子正孔輸送層が一方の表面に凹凸を有し、積層する際に下層となる場合、および、電子正孔輸送層が両方の表面に凹凸を有する場合は、塗布法で形成した際に塗布ムラが生じるような厚みであることが好ましい。また例えば、電子正孔輸送層が一方の表面に凹凸を有し、積層する際に上層となる場合は、下層の表面凹凸を埋めることができるような厚みであることが好ましい。具体的には、0.2nm〜3000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜600nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子正孔輸送層における体積抵抗が高くなったり、また凹凸の形成が困難となったりする場合があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できなかったり、また凹凸の形成が困難となったり、下層の表面凹凸を埋めることが困難となったりする場合があるからである。
(電子輸送層)
本実施態様に用いられる電子輸送層は、電子受容性の有機半導体材料を含有するものである。
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、塗布法により製膜可能なものであることが好ましく、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記電子正孔輸送層に用いられる電子受容性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
電子輸送層の膜厚としては、表面に凹凸を有するか否かにより適宜調整される。例えば、電子輸送層が一方の表面に凹凸を有し、積層する際に下層となる場合、および、電子輸送層が両方の表面に凹凸を有する場合は、塗布法で形成した際に塗布ムラが生じるような厚みであることが好ましい。また例えば、電子輸送層が一方の表面に凹凸を有し、積層する際に上層となる場合は、下層の表面凹凸を埋めることができるような厚みであることが好ましい。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子輸送層における体積抵抗が高くなったり、また凹凸の形成が困難となったりする可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できなかったり、また凹凸の形成が困難となったり、下層の表面凹凸を埋めることが困難となったりする場合があるからである。
(正孔輸送層)
本実施態様に用いられる正孔輸送層は、電子供与性の有機半導体材料を含有するものである。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、塗布法により製膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記電子正孔輸送層に用いられる電子供与性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
正孔輸送層の膜厚としては、表面に凹凸を有するか否かにより適宜調整される。例えば、正孔輸送層が一方の表面に凹凸を有し、積層する際に下層となる場合、および、正孔輸送層が両方の表面に凹凸を有する場合は、塗布法で形成した際に塗布ムラが生じるような厚みであることが好ましい。また例えば、正孔輸送層が一方の表面に凹凸を有し、積層する際に上層となる場合は、下層の表面凹凸を埋めることができるような厚みであることが好ましい。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、正孔輸送層における体積抵抗が高くなったり、また凹凸の形成が困難となったりする可能性があるからである。一方。膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できなかったり、また凹凸の形成が困難となったり、下層の表面凹凸を埋めることが困難となったりする場合があるからである。
(ii)電荷取出し促進層
本実施態様に用いられる電荷取出し促進層は、電子供与性または電子受容性のいずれかを有しており、少なくとも二層が積層された光電変換層に対して陽極側に配置されるか陰極側に配置されるかにより、機能が適宜選択されるものである。電荷取出し促進層が、少なくとも二層が積層された光電変換層に対して陽極側に配置される場合には、正孔が取り出しやすいように電子供与性の有するものが用いられる。一方、電荷取出し促進層が、少なくとも二層が積層された光電変換層に対して陰極側に配置される場合には、電子が取り出しやすいように電子受容性の有するものが用いられる。
なお、電子供与性を有する電荷取出し促進層については、上記正孔輸送層と同様であり、また電子受容性を有する電荷取出し促進層については、上記電子輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(iii)有機半導体層の層構成
本実施態様に用いられる有機半導体層は、少なくとも二層の光電変換層を有するものであり、この光電変換層は、電子正孔輸送層であってもよく、電子輸送層と正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。また、電子正孔輸送層と、電子輸送層および正孔輸送層との積層の組み合わせについては特に限定されるものではない。例えば、電子正孔輸送層が複数層積層されたものであってもよく、電子輸送層および正孔輸送層がこの順に繰り返し積層されたものであってもよく、電子正孔輸送層と、電子輸送層および正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。さらに、有機半導体層は電荷取出し促進層を有していてもよい。
これらの層の積層の組み合わせとしては、特に限定されるものではない。光電変換層が複数層積層されている例としては、(1)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(2)光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層);(3)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層);(4)光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(5)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(6)光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層);(7)光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(8)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(9)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層);(10)光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(11)光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層);(12)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層);などの組み合わせを挙げることができる。
また、複数層の光電変換層と電荷取出し促進層が積層されている例としては、(13)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(14)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(15)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(16)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(17)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(18)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);などの組み合わせを挙げることができる。
なお、例えば「A/B/C」とは、A,BおよびCの順に積層されていることを示す。
上記の組み合わせの中でも、光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)が好適である。光電変換層の積層による光の有効利用によって高い光電変換効率が期待できるからである。また、電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性)の組み合わせも好ましい。電荷取出し促進層による電荷の取出し促進によって高い光電変換効率が期待できるからである。
光電変換層(電子正孔輸送層、または、正孔輸送層および電子輸送層)が複数層積層されている場合には、上述したように光の有効利用が可能である。この場合、複数層の光電変換層に使用される有機半導体材料が互いに異なる吸収波長領域を有するものである場合には吸収波長領域の拡張が可能であり、複数層の光電変換層に使用される有機半導体材料が同一の吸収波長領域を有するものである場合には吸光度の増大が可能である。
光の有効利用を実現するには、電子供与性の有機半導体材料または電子受容性の有機半導体材料の吸収波長領域を適宜選択すればよい。電子正孔輸送層は電子供与性の有機半導体材料と電子受容性の有機半導体材料とを含有するので、電子供与性の有機半導体材料または電子受容性の有機半導体材料のいずれか一方が、所定の吸収極大波長を有するものであればよい。また、正孔輸送層および電子輸送層では、正孔輸送層が電子供与性の有機半導体材料を含有し、電子輸送層が電子受容性の有機半導体材料を含有するので、正孔輸送層に用いる電子供与性の有機半導体材料または電子輸送層に用いる電子受容性の有機半導体材料のいずれか一方が、所定の吸収極大波長を有するものであればよい。
この際、電子供与性の有機半導体材料が所定の吸収極大波長を有するものである場合は、電子受容性の有機半導体材料は、上記電子供与性の有機半導体材料とpn接合を形成して電荷分離を生じさせるものであれば特に限定されるものではない。同様に、電子受容性の有機半導体材料が所定の吸収極大波長を有するものである場合は、電子供与性の有機半導体材料は、上記電子受容性の導電性高分子材料とpn接合を形成して電荷分離を生じさせるものであれば特に限定されるものではない。
電子正孔輸送層や正孔輸送層に互いに異なる吸収波長領域を有する電子供与性の有機半導体材料を用いる場合には、太陽光(白色光)を広範囲で吸収するために、各々の電子供与性の有機半導体材料のもつ吸収極大波長が50nm程度以上異なることが好ましい。
またこの場合、光電変換層(電子正孔輸送層、または、正孔輸送層および電子輸送層)が三層積層されていることが特に好ましい。例えば一層目に赤色の波長領域に吸収極大波長をもつ電子供与性の有機半導体材料を用い、二層目に緑色の波長領域に吸収極大波長をもつ電子供与性の有機半導体材料を用い、三層目に青色の波長領域に吸収極大波長をもつ電子供与性の有機半導体材料を用いることにより、太陽光(白色光)をより広範囲で吸収することができるからである。
具体的な構成としては、(a)電子正孔輸送層/電子正孔輸送層/電子正孔輸送層;(b)正孔輸送層/電子輸送層/正孔輸送層/電子輸送層/正孔輸送層/電子輸送層;(c)正孔輸送層/電子輸送層/電子正孔輸送層/電子正孔輸送層;(d)電子正孔輸送層/正孔輸送層/電子輸送層/電子正孔輸送層;(e)電子正孔輸送層/電子正孔輸送層/正孔輸送層/電子輸送層;(f)正孔輸送層/電子輸送層/正孔輸送層/電子輸送層/電子正孔輸送層;(g)正孔輸送層/電子輸送層/電子正孔輸送層/正孔輸送層/電子輸送層;(h)電子正孔輸送層/正孔輸送層/電子輸送層/正孔輸送層/電子輸送層;などが挙げられる。
本実施態様においては、有機半導体層中の各層の界面のうち、隣接する光電変換層間の界面が凹凸を有していればよい。また、隣接する光電変換層間の界面が複数存在する場合は、それらの界面のうち、少なくとも一つの界面が凹凸を有していればよい。さらに、光電変換層および電荷取出し促進層間の界面が凹凸を有していてもよい。
(iv)有機半導体層の形成方法
本実施態様において、有機半導体層の形成方法としては、安定して各層を積層することができる方法であればよく、表面に凹凸を有する層を形成するか否か等により適宜選択される。例えば、表面に凹凸を有する層を形成する場合、凹凸を形成することができる方法であればよく、具体的には比較的高い粘度の塗工液を塗布し、緩やかに乾燥することで表面凹凸を有する層を形成してもよく、塗工液をロールコート法で塗布し、未乾燥の塗膜面に対して、乾燥初期にドライヤーから吹き出した気流を調整してあてることにより所望の凹凸状態を形成してもよい。さらに、後加工によって表面凹凸を有する層を形成することもできる。例えばマイクロプリンティング法により形成された柔らかい塗膜面に、所望の微細構造を有した版を押し当てる方法や、ブラスト処理により不要な部分を削りとり、所望の凹凸状態を形成する方法などが挙げられる。
上記の中でも、有機半導体層の形成方法としては、塗工液を用いた塗布法であることが好ましい。すなわち、光電変換層や電荷取出し促進層が塗膜であることが好ましい。上述したように、例えば粘度の比較的高い塗工液を用いることにより塗布ムラが生じるので、表面に凹凸を有する層を形成することができるからである。また、このような表面に凹凸を有する層上にさらに塗工液を塗布すると、塗工液の流動性が良いので、表面凹凸に追随するように塗工液を塗布することができ、層間の密着性を高めることができるからである。
なお、塗布法による有機半導体層の形成方法については、後述する「B.有機薄膜太陽電池の製造方法」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
(2)第1電極層
本実施態様に用いられる第1電極層の形成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、光の照射方向や、後述する第2電極層の形成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。
例えば第2電極層の形成材料を仕事関数の低い材料とした場合には、第1電極層の形成材料は仕事関数の高い材料であることが好ましい。仕事関数の高い材料としては、例えばAu、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、SnO、フッ素をドープしたSnO、ZnO等を挙げることができる。
また、基板側を受光面とした場合には、第1電極層を透明電極とすることが好ましい。この場合、一般的に透明電極として使用されているものを用いることができる。具体的には、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を挙げることができる。
本実施態様おいては、第1電極層の全光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。基板側を受光面とした場合、第1電極層の全光線透過率が上記範囲であることにより、第1電極層にて光を十分に透過することができ、光電変換層にて光を効率的に吸収することができるからである。
なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
また、本実施態様においては、第1電極層のシート抵抗が20Ω/□以下、中でも10Ω/□以下、特に5Ω/□以下であることが好ましい。シート抵抗が上記範囲より大きい場合、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があるからである。
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の低効率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
上記第1電極層は、単層であってもよく、また異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
この第1電極層の膜厚としては、単層である場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1〜500nmの範囲内、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、第1電極層のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚い場合には、全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
また、上記第1電極層は、基板上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
(3)第2電極層
本実施態様に用いられる第2電極層は、上記第1電極層と対向する電極である。第2電極層の形成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、光の照射方向や、上記第1電極層の形成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。
例えば基板側を受光面とした場合には、上記第1電極層が透明電極となり、このような場合には、第2電極層は透明でなくともよい。
また、第1電極層を仕事関数の高い材料を用いて形成した場合には、第2電極層は仕事関数の低い材料を用いて形成することが好ましい。具体的に仕事関数の低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr、LiF等を挙げることができる。
第2電極層は、単層であってもよく、また、異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
上記第2電極層の膜厚は、単層である場合にはその膜厚が、複数層からなる場合には各層を合わせた総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、第2電極層のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚い場合には全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
また、上記第2電極層は、光電変換層上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
(4)基板
本実施態様に用いられる基板は、透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、例えば基板側が光の受光面となる場合には、透明基板であることが好ましい。この透明基板としては、特に限定されるものではなく、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を挙げることができる。
本発明においては、上記の中でも基板が透明樹脂フィルム等のフレキシブル材であることが好ましい。透明樹脂フィルムは、加工性に優れており、製造コスト低減や軽量化、割れにくい有機薄膜太陽電池の実現において有用であり、曲面への適用等の種々のアプリケーションへの適用可能性が広がるからである。
(5)正孔取出し層
本実施態様においては、有機半導体層と陽極との間に正孔取出し層が形成されていてもよい。第1電極層が陽極である場合は、例えば図9に示すように、有機半導体層3と第1電極層2との間に正孔取出し層5が形成される。また、第2電極層が陽極である場合は、図示しないが、有機半導体層と第2電極層との間に正孔取出し層が形成される。
正孔取出し層は、有機半導体層から陽極への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、有機半導体層から陽極への正孔取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
このような正孔取出し層に用いられる材料としては、有機半導体層から陽極への正孔の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、Au、In、Ag、Pd等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、特にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、トリフェニルジアミン(TPD)が好ましく用いられる。
上記正孔取出し層の膜厚としては、上記有機材料を用いた場合は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、上記金属薄膜である場合は、0.1nm〜5nmの範囲内であることが好ましい。
(6)電子取出し層
本実施態様においては、有機半導体層と陰極との間に電子取出し層が形成されていてもよい。第2電極層が陰極である場合は、例えば図9に示すように、有機半導体層3と第2電極層4との間に電子取出し層6が形成される。また、第1電極層が陰極である場合は、図示しないが、有機半導体層と第1電極層との間に電子取出し層が形成される。
電子取出し層は、有機半導体層から陰極への電子の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、有機半導体層から陰極への電子取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
このような電子取出し層に用いられる材料としては、有機半導体層から陰極への電子の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属との金属ドープ層が挙げられる。好適な材料としては、バソキュプロイン(BCP)または、バソフェナントロン(Bphen)と、Li、Cs、Ba、Srなどの金属ドープ層が挙げられる。
(7)その他の構成部材
本実施態様の有機薄膜太陽電池は、上述した構成部材の他にも、必要に応じて後述する構成部材を有していてもよい。例えば、本実施態様の有機薄膜太陽電池は、保護シート、充填材層、バリア層、保護ハードコート層、強度支持層、防汚層、高光反射層、光封じ込め層、紫外線・赤外線遮断層、封止材層等の機能層を有していてもよい。また、層構成に応じて、各機能層間に接着層が形成されていてもよい。
(i)保護シート
本実施態様においては、第2電極層上に保護シートが形成されていてもよい。保護シートは、本発明の有機薄膜太陽電池を外界から保護するために設けられる層である。
保護シートに用いられる材料としては、例えばアルミニウム等の金属板もしくは金属箔、フッ素系樹脂シート、環状ポリオレフィン系樹脂シート、ポリカーボネート系樹脂シート、ポリ(メタ)アクリル系樹脂シート、ポリアミド系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、または耐候性フィルムとバリアフィルムとをラミネート積層した複合シートなどが挙げられる。
上記保護シートの厚みは、20μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは50μm〜200μmの範囲内である。
また、上記保護シートは、後述するバリア層の項に記載するような、バリア性を有するものであってもよい。
さらに、上記保護シートには、着色等により意匠性を付与することもできる。この際、保護シートへの顔料の練り込等により着色してもよく、例えば青色ハードコート層等の着色層を積層することにより着色してもよい。
(ii)充填材層
本実施態様においては、第2電極層と保護シートとの間に充填材層が形成されていてもよい。充填材層は、有機薄膜太陽電池の裏面側、すなわち第2電極層と上記保護シートとを接着させ、有機薄膜太陽電池を封止するために設けられる層である。
このような充填材層としては、一般に太陽電池の充填材層として使用されているものであればよく、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が挙げられる。
また、上記充填材層の厚みは、50μm〜2000μmの範囲内であることが好ましく、200μm〜800μmの範囲内であることがより好ましい。厚みが上記範囲より薄くなると強度が低下し、逆に厚みが上記範囲より厚くなるとクラック等が発生しやすくなるからである。
(iii)バリア層
本実施態様においては、上記基板の表面、または上記保護シートの表面にバリア層が形成されていてもよい。また、上記基板または上記保護シートが複数層からなる場合は、各層の間にバリア層を設けてもよい。本実施態様に用いられるバリア層は、透明な層であり、かつ外部からの酸素や水蒸気の浸入を妨げ、本発明の有機薄膜太陽電池を保護するために設けられる層である。
バリア層は、酸素透過率が5cc/m/day/atm以下であり、中でも0.1cc/m/day/atm以下であることが好ましい。一方、酸素透過率の下限は測定装置の精度から5.0×10−3cc/m/day/atmとする。なお、上記酸素透過率は、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/21)を用い、23℃、90%Rhの条件で測定した値である。
また、バリア層の水蒸気透過率は、37.8℃、100%Rhの条件において5g/m/day以下であり、中でも0.01g/m/day以下であることが好ましい。さらに、40℃、90%Rhの条件においては、水蒸気透過率が1g/m/day以下であることが好ましく、測定装置の精度から水蒸気透過率の下限は5.0×10−3g/m/dayとする。なお、上記水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 3/33)を用いて測定した値である。
バリア層の形成材料としては、上述したバリア性が得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば無機酸化物、金属、ゾルゲル材料等が挙げられる。具体的には、無機酸化物としては、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化イットリウム、酸化ホウ素(B)、酸化カルシウム(CaO)、酸化窒化炭化ケイ素(SiO)等が挙げられ、金属としては、Ti、Al、Mg、Zr等が挙げられ、ゾルゲル材料としてはシロキサン系ゾルゲル材料等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記バリア層の膜厚は、用いられる材料の種類等により適宜選択されるが、10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記の範囲より薄いと、十分なバリア性が得られない可能性があり、膜厚が上記範囲より厚いと、成膜に長時間を要するからである。
また、バリア層は、単一の層であってもよく、複数の層が積層されたものであってもよい。複数層積層する場合には、直接積層形成してもよく、貼り合わせてもよい。
バリア層の形成方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法やCVD法などの蒸着法、またはロールコート法、スピンコート法などが挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
さらに、バリア層としては、上述したバリア性を有する層であれば特に限定されるものではないが、そのバリア性の高さ等から、蒸着法により形成された蒸着層を有することが好ましい。
上記蒸着層としては、蒸着法により形成される層であれば、その蒸着法の種類等は特に限定されるものではなく、CVD法であってもよく、またPVD法であってもよい。蒸着層が、例えばプラズマCVD法等のCVD法により形成される場合には、緻密でバリア性の高い層を形成することが可能となるが、製造効率やコスト等の面からはPVD法が好ましい。PVD法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられるが、中でも、そのバリア性等の面から真空蒸着法であることが好ましい。真空蒸着法として、例えばエレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法、または高周波誘電加熱方式による真空蒸着法等が挙げられる。
また、上記蒸着層の材料としては、金属または無機酸化物が好ましく、Ti、Al、Mg、Zr、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化窒化ケイ素、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化イットリウム、B、CaO等を挙げることができ、中でも酸化ケイ素が好ましい。酸化ケイ素からなる層は、高いバリア性および透明性を有するからである。
上記蒸着層の厚さは、用いられる材料の種類や構成により最適条件が異なり適宜選択されるが、5nm〜1000nm、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。蒸着層の厚さが上記の範囲より薄い場合には、均一な層とすることが困難な場合があり、上記バリア性を得ることができない場合があるからである。また、蒸着層の厚さが上記の範囲より厚い場合には、成膜後に引っ張り等の外的要因により蒸着層に亀裂が生じること等により、バリア性が著しく損なわれる可能性があるからである。また形成に時間を要し、生産性も低下するからである。
また、バリア層の下地層として、アンカー層が形成されていてもよい。これにより、バリア性や耐候性を高めることができるからである。アンカー層の形成材料としては、例えば接着性樹脂、無機酸化物、有機酸化物、金属等が挙げられる。
アンカー層の形成方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法、ロールコート法、スピンコート法などが挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。中でも、成膜時のインラインコートが好ましい。これは、量産性に優れ、アンカー層の密着性を高めることができるからである。
(iv)保護ハードコート層
本実施態様においては、有機薄膜太陽電池の最外面に保護ハードコート層が設けられていてもよい。保護ハードコート層は、紫外線遮蔽性および耐候性を有するものであり、有機薄膜太陽電池を外部環境から保護するため、有機半導体層を保護し、有機半導体層に含まれる有機半導体材料の劣化を防ぐために設けられる層である。
保護ハードコート層の形成材料としては、紫外線遮蔽性および耐候性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記樹脂に耐光性添加剤を添加してもよい。耐光性添加剤としては、光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤(UVA)等が挙げられる。
上記保護ハードコート層の膜厚は、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄いと、紫外線遮蔽性および耐候性が不十分となる場合があり、また膜厚が上記範囲より厚いと、コーティング加工が困難となり、量産性に劣る場合があるからである。
保護ハードコート層の形成方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法、ロールコート法、スピンコート法などが挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。中でも、ロールコート法が好ましく用いられる。ロールコート法は量産性に優れ、紫外線遮蔽および耐候性の良好な保護ハードコート層を形成できるからである。
また、保護ハードコート層の下地層として、アンカー層が形成されていてもよい。これにより、耐候性を高めることができるからである。
アンカー層の形成方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法、ロールコート法、スピンコート法などが挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。中でも、成膜時のインラインコートが好ましい。これは、量産性に優れ、アンカー層の密着性を高めることができるからである。
(v)強度支持層
本実施態様においては、上記保護ハードコート層の内側に強度支持層が形成されていてもよい。強度支持層の形成位置としては、保護ハードコート層の内側であればいずれの位置に設置されていてもよいが、好ましくは各機能層間に設けられる。また、基板自体に強度支持層の機能が付与されていてもよい。
強度支持層は、耐熱性、耐湿熱性、耐加水分解性、透明性に優れるものである。
耐熱性としては、温度100℃で72時間保持する耐熱試験を行った場合に、耐熱試験前に対する耐熱試験後の発電効率の低下率が10%以内であることが好ましい。さらに、温度125℃で72時間保持する耐熱試験を行った場合に、耐熱試験前に対する耐熱試験後の発電効率の低下率が10%以内であることが好ましい。なお、耐熱試験は、JIS C60068-2-2に準ずるものとする。
耐湿熱性としては、あらかじめ温度40℃以上、湿度90%RH以上の条件に調整された恒温恒湿槽環境内に有機薄膜太陽電池を96時間以上保持する耐湿熱試験を行った場合に、耐湿熱試験前に対する耐湿熱試験後の発電効率の低下率が10%以内であることが好ましい。さらに、あらかじめ温度80℃以上、湿度80%RH以上の条件に調整された恒温恒湿槽環境内に有機薄膜太陽電池を500時間以上保持する耐湿熱試験を行った場合に、耐湿熱試験前に対する耐湿熱試験後の発電効率の低下率が10%以内であることが好ましい。なお、耐湿熱試験は、JIS C60068-2-3に準じ、楠本化成(株)製 環境試験機「HIFLEX αシリーズ FX424P」を用いて評価するものとする。
透明性としては、全光線透過率が70%以上、中でも85%以上であることが好ましい。なお、全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
これは、有機薄膜太陽電池には優れた耐熱性、耐湿熱性、透過性が要求されるためである。
強度支持層の形成材料としては、例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)系樹脂、ポリアミド(PA)系樹脂、ポリアセタール(POM)系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(mPPE)系樹脂、ポロフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)系樹脂、ポリスルホン(PSF)系樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)系樹脂、ポリアリレート(PAR)系樹脂、ポリアミドイミド(PAI)系樹脂、ポリイミド(PI)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(PE)、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。また、これらの樹脂の耐候グレードを用いることもできる。さらに、これらの樹脂をガラス繊維等と組み合わせることにより更に強化してもよい。
上記強度支持層の膜厚は、10μm〜800μmの範囲内であることが好ましく、特に100μm〜400μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄いと、十分な強度が得られない場合があり、また膜厚が上記範囲より厚いと、製造工程上の加工が困難となる場合があるからである。
(vi)接着層
本実施態様においては、層構成に応じて、各層間に接着層が形成されていてもよい。
接着層は、耐熱性、耐湿熱性に優れるものである。
耐熱性としては、温度100℃で72時間保持する耐熱試験を行った場合に、耐熱試験前に対する耐熱試験後の発電効率の低下率が10%以内であることが好ましい。さらに、温度125℃で72時間保持する耐熱試験を行った場合に、耐熱試験前に対する耐熱試験後の発電効率の低下率が10%以内であることが好ましい。
耐湿熱性としては、あらかじめ温度40℃以上、湿度90%RH以上の条件に調整された恒温恒湿槽環境内に有機薄膜太陽電池を96時間以上保持する耐湿熱試験を行った場合に、耐湿熱試験前に対する耐湿熱試験後の発電効率の低下率が10%以内であることが好ましい。さらに、あらかじめ温度80℃以上、湿度80%RH以上の条件に調整された恒温恒湿槽環境内に有機薄膜太陽電池を500時間以上保持する耐湿熱試験を行った場合に、耐湿熱試験前に対する耐湿熱試験後の発電効率の低下率が10%以内であることが好ましい。
これは、有機薄膜太陽電池には優れた耐熱性、耐湿熱性が要求されるためである。なお、耐熱試験および耐湿熱試験については、上述したものと同様である。
接着層の形成材料としては、例えばシリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ホットメルト系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、スチレンブタジエン系樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の耐候グレードを用いることもできる。
上記接着層の膜厚は、1μm〜200μmの範囲内、特に2μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄いと、強度が劣る可能性があり、また膜厚が上記範囲より厚いと、製造工程上の加工が困難となる場合があるからである。
接着層の形成方法としては、例えばドライラミネート法、溶融押し出しラミネート法等が挙げられる。また、粘着シートを介して積層してもよい。好ましくは、ロールコートによるドライラミネート法が用いられる。この方法は、量産性に優れ、良好な密着性が得られるからである。
2.第2実施態様
本発明の有機薄膜太陽電池の第2実施態様は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、光電変換層および電荷取出し促進層を有する有機半導体層と、上記有機半導体層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池であって、上記光電変換層および上記電荷取出し促進層間の界面が凹凸を有することを特徴とするものである。
本実施態様の有機薄膜太陽電池について図面を参照しながら説明する。
図10は、本実施態様の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。図10に示す例において、有機薄膜太陽電池10は、基板1上に第1電極層2、有機半導体層3および第2電極層4が順次積層されたものである。有機半導体層3は、光電変換層13および電荷取出し促進層15を有し、光電変換層13および電荷取出し促進層15間の界面が凹凸を有する。
本実施態様によれば、光電変換層および電荷取出し促進層間の界面が凹凸を有するので、光電変換層と電荷取出し促進層との接触面積が増加し、光電変換層および電荷取出し促進層間の電荷の移動が円滑になるため、電荷取出し効率が向上する。また、光電変換層および電荷取出し促進層の屈折率が異なる場合には、界面の凹凸により光散乱効果および光閉じ込め効果が得られるので、光を有効に利用することができる。したがって、高い光電変換効率を達成することが可能である。
なお、基板、第1電極層、第2電極層、およびその他の構成部材については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、有機半導体層について説明する。
(1)有機半導体層
本実施態様に用いられる有機半導体層は、光電変換層および電荷取出し促進層を有するものであり、光電変換層および電荷取出し促進層の界面が凹凸を有する。具体的には、光電変換層および電荷取出し促進層の界面において中心線平均粗さ(Ra)が10nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、中でも10nm〜500nmの範囲内、特に10nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。すなわち、中心線平均粗さ(Ra)が所定の範囲となる界面において下層となる光電変換層または電荷取出し促進層の表面の中心線平均粗さ(Ra)が上記範囲となることが好ましい。中心線平均粗さが上記範囲より小さいと、光電変換層および電荷取出し促進層間の密着性が低下し、かえって接触面積が減少してしまうおそれがあるからである。また、塗布法により、表面の中心線平均粗さが上記範囲より小さい光電変換層または電荷取出し促進層を形成するのは困難であるからである。一方、中心線平均粗さが上記範囲より大きいと、接触面積を増大させる効果が十分に得られない可能性があるからである。
なお、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法については、上記第1実施態様に記載した方法と同様である。
また、下層となる光電変換層または電荷取出し促進層の表面凹凸は、緩やかな傾斜の凹凸であることが好ましい。急峻な傾斜の凹凸であると、層間の密着性が低下し、かえって接触面積が減少してしまうおそれがあるからである。
さらに、下層となる光電変換層または電荷取出し促進層の表面粗さは、粗さが小さいことが好ましい。粗さが大きすぎると、層間の密着性が低下し、かえって接触面積が減少してしまうおそれがある。
本実施態様の有機薄膜太陽電池は、光電変換層と電荷取出し促進層とが直接積層されたものである。本実施態様の有機薄膜太陽電池の例を図11および図12にそれぞれ示す。
図11に示す有機薄膜太陽電池10では、基板1上に第1電極層2と有機半導体層3と第2電極層4とが順次積層されており、有機半導体層3が、電荷取り出し促進層15aと光電変換層13と電荷取出し促進層15bとがこの順に直接積層されたものとなっている。光電変換層13内部では電子および正孔が発生し、この電子および正孔は第1電極層2または第2電極層4に向かってそれぞれ逆方向に移動する。この場合、光電変換層13と第1電極層2および第2電極層4との間にそれぞれ電荷取出し促進層15aおよび15bが形成されているので、光電変換層13と第1電極層2および第2電極層4との界面における抵抗障壁を低減することができ、正孔および電子を効率良く取り出すことが可能である。
図12に示す有機薄膜太陽電池10では、基板1上に第1電極層2と有機半導体層3と第2電極層4とが順次積層されており、有機半導体層3が、光電変換層13aと電荷取り出し促進層15と光電変換層13bとがこの順に直接積層されたものとなっている。光電変換層13aおよび13b内部では電子および正孔が発生し、この電子および正孔は第1電極層2または第2電極層4に向かってそれぞれ逆方向に移動する。この場合、光電変換層13aおよび13bの間に電荷取り出し促進層15が形成されているので、光電変換層13aおよび13bの界面における抵抗障壁を低減することができ、電荷取出し効率を向上させることが可能である。
このように、光電変換層に隣接して電荷取出し促進層が形成されている場合には、層間の界面おける抵抗障壁が緩やかになり、電荷の取り出しを促進することができる。また、電荷の取り出しを促進することができるので、従来のような電荷取出し層(正孔取出し層や電子取出し層)を別途設ける必要がないという利点を有する。
また本実施態様においては、光電変換層が複数層積層されていてもよい。光の有効利用が可能となるからである。なお、光電変換層の積層数については、上記第1実施態様に記載したものと同様である。
光電変換層が複数層積層されている場合、隣接する光電変換層の界面が凹凸を有していてもよい。この場合、隣接する光電変換層の界面の中心線平均粗さ(Ra)が10nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜500nm、さらに好ましくは10nm〜300nmの範囲内である。隣接する光電変換層の接触面積を増加させて、電荷取出し効率をさらに高めることができるからである。
なお、光電変換層および電荷取出し促進層については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、有機半導体層の形成方法については、後述する「B.有機薄膜太陽電池の製造方法」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。以下、有機半導体層の層構成について説明する。
(i)有機半導体層の層構成
本実施態様に用いられる有機半導体層は、光電変換層および電荷取出し促進層を有するものである。この光電変換層は、電子正孔輸送層であってもよく、電子輸送層と正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
これらの層の積層の組み合わせとしては、特に限定されるものではない。例えば(1)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層);(2)光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(3)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(4)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(5)光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層);(6)光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性)/光電変換層(電子正孔輸送層);(7)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(8)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(9)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(10)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層);(11)光電変換層(正孔輸送層・電子輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(12)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層);(13)光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);(14)電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性);などの組み合わせを挙げることができる。
なお、例えば「A/B/C」とは、A,BおよびCの順に積層されていることを示す。
上記の組み合わせの中でも、電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性)、あるいは、電荷取出し促進層(電子供与性)/光電変換層(電子正孔輸送層)/光電変換層(電子正孔輸送層)/電荷取出し促進層(電子受容性)が好適である。電荷取出し促進層による電荷の取出し促進によって高い光電変換効率が期待できるからである。
本実施態様においては、有機半導体層中の各層の界面のうち、光電変換層と電荷取出し促進層との界面が凹凸を有していればよい。また、例えば図11や図12に示すように、光電変換層と電荷取出し促進層との界面が複数存在する場合は、その界面のうち、少なくとも一つの界面が凹凸を有していればよい。さらに、隣接する光電変換層間の界面が凹凸を有していてもよい。
B.有機薄膜太陽電池の製造方法
次に、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法について説明する。
本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、基板上に第1電極層を形成する第1電極層形成工程と、上記第1電極層上に、粘度が50cps〜6000cpsの範囲内である下層形成用塗工液を塗布して下層の塗膜を形成する下層形成工程、および、上記下層の塗膜上に上層の膜を形成する上層形成工程を有し、少なくとも二層の膜を有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、上記有機半導体層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有することを特徴とするものである。
図13に、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す。本発明においては、まず基板1上にイオンプレーティング法により第1電極層2を形成する(第1電極層形成工程、図13(a))。次に、第1電極層2上に、所定の粘度を有する下層形成用塗工液をスピンコート法にて塗布して下層の塗膜33aを形成し、乾燥させる(下層形成工程、図13(b))。下層形成用塗工液を塗布する際、下層形成用塗工液の粘度が比較的高いので、うねりのある塗膜33aを形成できる。さらに、乾燥させた下層の塗膜33a上に、上層の膜33bを形成する(上層形成工程、図13(c))。これにより、二層の膜33aおよび33bを有する有機半導体層3を形成する(有機半導体層形成工程)。そして、有機半導体層3上に蒸着法により第2電極層4を形成する(第2電極層形成工程、図13(d))。
本発明によれば、所定の粘度を有する下層形成用塗工液を用いることにより塗布ムラが生じるので、表面に凹凸を有する塗膜を形成することができる。次いで、このような表面に凹凸を有する塗膜上にさらに膜を形成すると、上下の膜の接触面積が増加し、光電変換層間の電荷の移動が円滑になるため、電荷取出し効率を向上させることができる。また、表面に凹凸を有する塗膜を形成できるので、上下の膜で屈折率が異なる場合には、光散乱効果および光閉じ込め効果を得ることができる。したがって、高効率の有機薄膜太陽電池を製造することが可能である。
以下、有機薄膜太陽電池の製造方法における各工程について説明する。
1.第1電極層形成工程
本発明における第1電極層形成工程は、基板上に第1電極層を形成する工程である。
第1電極層の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、あるいは、CVD法等の乾式塗工法が挙げられる。また、ITO微粒子を含有する塗工液等を塗布する湿式塗工法を用いることもできる。
また、第1電極層のパターニング方法としては、第1電極層を所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばフォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
なお、第1電極層のその他の点については、上記「A.有機薄膜太陽電池」の第1電極層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
2.有機半導体層形成工程
本発明における有機半導体層形成工程は、所定の粘度を有する下層形成用塗工液を塗布して下層の塗膜を形成する下層形成工程と、上記下層の塗膜上に上層の膜を形成する上層形成工程とを有するものであり、少なくとも二層の膜を有する有機半導体層を形成する工程である。以下、有機半導体層形成工程における各工程について説明する。
(1)下層形成工程
本発明における下層形成工程は、所定の粘度を有する下層形成用塗工液を塗布して下層の塗膜を形成する工程である。
本発明に用いられる下層形成用塗工液は、粘度が50cps〜6000cpsの範囲内であり、好ましくは100cps〜5000cps、より好ましくは100cps〜2000cpsの範囲内である。粘度が上記範囲より小さいと、塗布ムラを生じさせることが困難となる場合があり、粘度が上記範囲より大きいと、膜厚ムラが大きくなりすぎて、かえって接触面積が減少するおそれがあるからである。
なお、粘度は、JIS Z 8803(1991)に準じ、単一円筒型回転粘度計を用いて測定した値である。
また、下層形成用塗工液は、有機半導体材料を溶媒に溶解もしくは分散させたものである。
有機半導体材料は、重量平均分子量が10万以上であることが好ましく、より好ましくは30万以上、最も好ましくは50万以上である。また、重量平均分子量は500万以下であることが好ましく、より好ましくは300万以下である。重量平均分子量が小さすぎると、上層形成用塗工液中の溶媒に有機半導体材料が溶解してしまう可能性があるからである。逆に、重量平均分子量が大きすぎると、下層形成用塗工液の粘度が高くなりすぎる場合があるからである。
なお、上記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。測定条件を下記に示す。
測定用カラム:Shodex社製 HF-2002 スチレン−ジビニルベンゼン共重合体
検出器:示差屈折率検出器(RI) 島津製作所社製 RID-6A
紫外吸収検出器 測定波長254nm 島津製作所社製 SPD-10A
測定条件:移動相 クロロホルム
流量 3ml/min
注入方法 2mlをシリンジにて注入
また、有機半導体材料は、形成しようとする層に応じて適宜選択される。本発明においては、下層の塗膜は、光電変換層を構成する電子正孔輸送層であってもよく、電子輸送層または正孔輸送層であってもよく、あるいは電荷取出し促進層であってもよいので、それぞれの層に応じた有機半導体材料が用いられる。なお、各層に用いられる有機半導体材料については、上記「A.有機薄膜太陽電池」の有機半導体層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記有機半導体材料が所定の重量平均分子量となるように高分子量化する方法としては、一般的に用いられている方法を採用することができ、例えば酸化重合法、電解重合法、蒸着重合法、化学重合法、エネルギー照射重合法などが挙げられる。高分子量化する方法は、有機半導体材料の種類によって適宜選択される。
例えばポリフェニレンビニレン(MDMO−PPV;ポリ(2−メトキシ−5−(3´,7´−ジメチルオクチルオキシ)−1−4−フェニレンビニレン)を高分子量化する方法については、Thin Solid Films, 363, 98-101 (2002) に記載の方法を参考にすることができる。
また、下層形成用塗工液は、有機半導体材料および絶縁性樹脂材料を含有し、これらを溶媒に溶解もしくは分散させたものであってもよい。このような下層形成用塗工液を用いた場合には、絶縁性樹脂材料を含有する下層を形成できるので、下層の耐溶媒性を向上させることができ、さらに得られる下層の強度を向上させることができる。
本発明に用いられる絶縁性樹脂材料としては、下層の耐溶媒性を向上させ、膜強度を高めるものであれば特に限定されるものではなく、例えば熱可塑性樹脂材料、熱硬化性樹脂材料、電離放射線硬化性樹脂材料などが挙げられる。
熱可塑性樹脂材料としては、具体的にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等を挙げることができる。
熱硬化性樹脂材料としては、具体的にフェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
また、電離放射線硬化性樹脂材料としては、紫外線硬化性樹脂材料、電子線硬化性樹脂材料等が挙げられる。紫外線硬化性樹脂材料としては、具体的にウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート、アクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、オキセタン等を挙げることができる。電子線硬化性樹脂材料としては、具体的に不飽和ポリエステル、不飽和アクリル、ポリエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエン、ポリチオール等を挙げることができる。
上記絶縁性樹脂材料の重量平均分子量としては特に限定されるものではない。
例えば有機半導体材料が所定の重量平均分子量を有する場合、絶縁性樹脂材料の重量平均分子量は、有機半導体材料の重量平均分子量より小さくてもよい。絶縁性樹脂材料の重量平均分子量が上記有機半導体材料の重量平均分子量より小さくても、絶縁性樹脂材料が上層形成用塗工液に溶出等することはほとんどないと考えられるからである。この理由は明らかではないが、重量平均分子量が上記範囲である有機半導体材料を含有することにより、下層全体として下層中の構成材料が溶出等しにくくなると考えられる。
また例えば有機半導体材料が上述した重量平均分子量を有するものではない場合、絶縁性樹脂材料は、重量平均分子量が1万以上であることが好ましく、より好ましくは5万以上である。また、重量平均分子量は300万以下であることが好ましく、より好ましくは100万以下である。絶縁性樹脂材料の重量平均分子量が小さすぎると、上層形成用塗工液中の溶媒に絶縁性樹脂材料が溶解してしまう可能性があるからである。逆に、絶縁性樹脂材料の重量平均分子量が大きすぎると、下層形成用塗工液の粘度が高くなりすぎる場合があるからである。
なお、上記重量平均分子量の測定方法としては、上述した方法と同様である。
また、下層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記有機半導体材料を溶解もしくは分散させることが可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化脂肪族および芳香族炭化水素系溶媒等、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。より具体的には、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコール、酢酸ブチル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
上記下層形成用塗工液の塗布方法としては、塗布ムラの生じやすい方法であることが好ましく、例えばダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。中でも、スピンコート法が好ましく用いられる。この方法は、うねりのある塗膜を形成しやすいからである。
また、下層形成用塗工液を塗布した後は、通常、乾燥処理が行われる。乾燥方法としては、一般的な乾燥方法を用いることができ、例えば加熱する方法が挙げられる。加熱する方法としては、具体的にオーブンのような特定の空間全体を加熱する装置内を通過または静置させる方法、熱風を当てる方法、遠赤外線等により直接的に加熱する方法、あるいはホットプレートで加熱する方法等を用いることができる。この際の加熱温度としては、上記有機半導体材料を変質もしくは変性等させることがないような温度であれば特に限定されるものではなく、通常30℃〜300℃程度となるように設定され、好ましくは40℃〜150℃、より好ましくは50℃〜110℃の範囲内である。また、加熱時間は適宜調整される。
(2)上層形成工程
本発明における上層形成工程は、上記下層の塗膜上に上層の膜を形成する工程である。
上層の膜の形成方法としては、下層の塗膜上に均一な膜を形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、下層の塗膜上に上層形成用塗工液を塗布して上層の塗膜を形成することが好ましい。このような工程であれば、表面に凹凸を有する下層の塗膜上に、表面凹凸に追随するように上層形成用塗工液を塗布することができ、上下の膜の密着性を高めることができるからである。
本発明に用いられる上層形成用塗工液は、有機半導体材料を溶媒に溶解もしくは分散させたものである。
有機半導体材料は、形成しようとする層に応じて適宜選択される。本発明においては、上層の膜は、光電変換層を構成する電子正孔輸送層であってもよく、電子輸送層または正孔輸送層であってもよく、あるいは電荷取出し促進層であってもよいので、それぞれの層に応じた有機半導体材料が用いられる。なお、各層に用いられる有機半導体材料については、上記「A.有機薄膜太陽電池」の有機半導体層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記有機半導体材料を溶解もしくは分散させることが可能なものであれば特に限定されるものではない。本発明においては、下層中の有機半導体材料は上述したように重量平均分子量が大きいので、一般的な溶媒には溶解しにくいと考えられ、上層形成用塗工液に用いられる溶媒は制限されないのである。
また、上層形成用塗工液に用いられる溶媒は、下層形成用塗工液に用いられる溶媒に対して相溶性を有するものであっても有さないものであってもよい。上層形成用塗工液中の溶媒が下層形成用塗工液中の溶媒に対して相溶性を有さない場合は、下層に含まれる有機半導体材料が上層形成用塗工液中の溶媒に対して親和性がほとんどないということになるので、下層の有機半導体材料を溶出等させることがないという利点がある。一方、上層形成用塗工液中の溶媒が下層形成用塗工液中の溶媒に対して相溶性を有する場合は、下層に含まれる有機半導体材料が上層形成用塗工液中の溶媒に対して親和性をもつということになるが、上述したように下層の有機半導体材料の重量平均分子量が大きいので、上層形成用塗工液中の溶媒への下層の有機半導体材料の溶出等は抑制されるのである。
したがって、上層形成用塗工液中の溶媒が下層形成用塗工液中の溶媒に対して相溶性を有する場合には、本発明の効果が顕著に発揮される。
上層形成用塗工液に用いられる溶媒の具体例としては、上記の下層形成用塗工液に用いられる溶媒と同様のものを挙げることができる。
このような上層形成用塗工液の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えばダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。中でも、スピンコート法またはダイコート法が好ましく用いられる。これらの方法は、所定の膜厚となるように精度良く形成することができるからである。
また、上記上層形成用塗工液を塗布した後は、通常、乾燥処理が行われる。なお、乾燥方法については、上述した下層形成工程の欄に記載したものと同様である。
(3)その他
本発明においては、下層形成工程および上層形成工程を行うことにより、二層以上の膜を積層することが可能である。
例えば図4に示すように、三層の膜(13a,13b,13c)の全ての界面にて凹凸が存在するように三層の膜を積層する場合には、下層形成工程により一層目の膜(13a)を形成し、次いでまた下層形成工程により二層目の膜(13b)を形成し、最後に上層形成工程により三層目の膜(13c)を形成する。一層目および二層目の膜(13a,13b)を所定の重量平均分子量を有する有機半導体材料や絶縁性樹脂材料を用いて形成することで、三層目までを安定して積層することができるのである。このように、有機半導体層中の全ての膜の界面において凹凸が存在するように形成するには、下層形成工程および上層形成工程を行うことで複数層の膜を積層することが可能である。
一方、例えば図5に示すように、三層の膜(13a,13b,13c)の界面のうち、二層目と三層目の界面にのみ凹凸が存在するように三層の膜を積層する場合、二層目の膜(13b)は下層形成工程により形成し、三層目の膜(13c)は上層形成工程により形成することができ、一層目の膜(13a)については次のような第1層形成工程により形成することができる。
第1層形成工程において、膜の形成方法としては特に限定されるものではなく、例えば蒸着法や塗布法を用いることができる。
第1層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成する塗布法を用いる場合には、第1層形成用塗工液が、重量平均分子量が10万以上である有機半導体材料を含有することが好ましい。所定の重量平均分子量を有する有機半導体材料を用いることで、例えば図5において一層目の膜(13a)上に二層目の膜(13b)を安定して積層することができるからである。
また、第1層形成用塗工液は、有機半導体材料と絶縁性樹脂材料とを含有するものであってもよい。この場合も同様に、絶縁性樹脂材料を用いることで、例えば図5において一層目の膜(13a)の耐溶媒性を向上させることができ、二層目の膜(13b)を安定して積層することができるからである。
上記第1層形成用塗工液の粘度としては、うねりのある膜を形成する必要がないので、特に限定されるものではない。
この第1層形成用塗工液は有機半導体材料を溶媒に溶解もしくは分散させたものであり、通常、第1層形成用塗工液を塗布した後に乾燥処理が行われる。なお、有機半導体材料、絶縁性樹脂材料、および溶媒、ならびに、第1層形成用塗工液の塗布方法および乾燥処理については、上記下層形成工程の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
例えば図2に示す有機半導体層3も、三層の膜(17a,17b,13b)の界面のうち、二層目と三層目の界面にのみ凹凸が存在するように三層の膜を積層する場合であるので、上記のようにして形成することができる。上記「A.有機薄膜太陽電池」の有機半導体層の項に記載したように、電子輸送層と正孔輸送層とを積層することにより光電変換層とする場合には、電子輸送層を一層の膜、正孔輸送層を一層の膜として、本発明が適用される。
また、図示しないが、三層の膜の界面のうち、一層目と二層目の界面にのみ凹凸が存在するように三層の膜を積層する場合、一層目の膜は下層形成工程により形成し、二層目の膜は上層形成工程により形成することができ、三層目の膜については次のような第2層形成工程で形成することができる。
第2層形成工程において、膜の形成方法としては特に限定されるものではなく、例えば蒸着法や塗布法を用いることができる。
第2層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成する塗布法を用いる場合、上記上層形成工程と同様にして膜を形成すればよい。
このように、本発明においては、下層形成工程、上層形成工程、第1層形成工程、第2層形成工程を組み合わせることにより、複数の層を積層することが可能である。
3.第2電極層形成工程
本発明における第2電極層形成工程は、上記有機半導体層上に第2電極層を形成する工程である。
第2電極層の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法等の乾式塗工法を挙げることができる。また、Ag等の金属コロイドを含有する金属ペースト等を用いて塗布する湿式塗工法を用いることもできる。
また、第2電極層のパターニング方法としては、第2電極層を所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばフォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
なお、第2電極層のその他の点については、上記「A.有機薄膜太陽電池」の第2電極層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例]
(第1電極層の形成)
ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム基板(厚み:125μm)の表面にPVD法によりSiO薄膜を形成し、そのSiO薄膜の上面に透明電極であるITO膜(膜厚:150nm、シート抵抗:20Ω/□)を圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法(パワー:3.7kW、製膜圧力:0.3Pa、製膜レート:150nm/min、基板温度:20℃)により製膜した後に、エッチングによりパターンニングした。次いで、ITOパターンが形成された基板をアセトン、基板洗浄液、IPAをそれぞれ用いて洗浄した。
(正孔取出し層の形成)
正孔取出し層形成用塗工液(導電性高分子ペースト;ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェンの水分散体)を、上記ITOパターンが形成された基板上にスピンコート法にて製膜し、150℃で30分間乾燥させて正孔取出し層(膜厚:100nm)を形成した。
(有機半導体層の形成)
次に、一層目の電子正孔輸送層を形成した。ポリアルキルチオフェン(P3HT;ポリ3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル(レジオレギュラー))の0.3wt%クロロホルム溶液と、ポリフェニレンビニレン(MDMO−PPV;ポリ(2−メトキシ−5−(3´,7´−ジメチルオクチルオキシ)−1−4−フェニレンビニレン))(重量平均分子量:120万)の0.3wt%クロロホルム溶液と、フラーレン(PCBM;1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6、6)−C60)の0.1wt%クロロホルム溶液とを重量比3:5:2で混合し、混合溶液をφ1μmのろ紙でろ過して、一層目の電子正孔輸送層形成用塗工液を調製した。
この電子正孔輸送層形成用塗工液を上記正孔取出し層上にスピンコート法にて塗布し、110℃で10分間乾燥させて一層目の電子正孔輸送層(膜厚:30nm)を形成した。
さらに、二層目の電子正孔輸送層を形成した。ポリフェニレンビニレン(MDMO−PPV;ポリ(2−メトキシ−5−(3´,7´−ジメチルオクチルオキシ)−1−4−フェニレンビニレン))(重量平均分子量:120万)の0.3wt%クロロホルム溶液と、フラーレン(PCBM;1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6、6)−C60)の0.1wt%クロロホルム溶液とを重量比5:3で混合した。混合溶液を減圧および加熱条件下で溶媒除去し、固形分が析出しないように蒸発速度を制御しながら、溶液濃度が1.5%になるまで濃縮した。得られた溶液をφ1μmのろ紙でろ過して、二層目の電子正孔輸送層形成用塗工液を調製した。この電子正孔輸送層形成用塗工液の粘度は50cpsであった。
電子正孔輸送層形成用塗工液を一層目の電子正孔輸送層上に回転数2000rpmの条件でスピンコート法にて塗布し、塗膜面に塗工液が一部残留している半乾燥状態のまま、無風下で基板側から温度110℃で10分間乾燥させて、二層目の電子正孔輸送層(膜厚:30nm)を形成した。この電子正孔輸送層の表面には凹凸が存在しており、中心線平均粗さ(Ra)は60nmであった。
そして、三層目の電子正孔輸送層を形成した。ポリアルキルチオフェン(P3HT;ポリ3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル(レジオレギュラー))の0.3wt%クロロホルム溶液と、フラーレン(PCBM;1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)−C60)の0.1wt%クロロホルム溶液とを重量比3:1で混合し、混合溶液をφ1μmのろ紙でろ過して、三層目の電子正孔輸送層形成用塗工液を調製した。
この電子正孔輸送層形成用塗工液を二層目の電子正孔輸送層上にスピンコート法にて塗布し、110℃で10分間乾燥させて三層目の電子正孔輸送層(膜厚:30nm)を形成した。
(第2電極層の形成)
次に、有機半導体層上に、Ca薄膜(膜厚:100nm)、Al薄膜(膜厚:500nm)を順次蒸着法にて製膜し、金属電極とした。
(有機薄膜太陽電池の作製)
最後に、封止用ガラス材により金属電極の上から封止して、バルクヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池を作製した。
本発明の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 表面粗さを説明するための説明図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。
符号の説明
1 … 基板
2 … 第1電極層
3 … 有機半導体層
4 … 第2電極層
5 … 正孔取出し層
6 … 電子取出し層
10 … 有機薄膜太陽電池
13,13a,13b,13c … 光電変換層
15,15a,15b … 電荷取出し促進層

Claims (8)

  1. 基板と、前記基板上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、少なくとも二層の光電変換層を有する有機半導体層と、前記有機半導体層上に形成された第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池であって、
    前記光電変換層間の界面が凹凸を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池。
  2. 前記有機半導体層がさらに電荷取出し促進層を有することを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
  3. 基板と、前記基板上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、光電変換層および電荷取出し促進層を有する有機半導体層と、前記有機半導体層上に形成された第2電極層とを有する有機薄膜太陽電池であって、
    前記光電変換層および前記電荷取出し促進層間の界面が凹凸を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池。
  4. 前記有機半導体層が塗膜であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の有機薄膜太陽電池。
  5. 前記第1電極層と前記有機半導体層との間に正孔取出し層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の有機薄膜太陽電池。
  6. 基板上に第1電極層を形成する第1電極層形成工程と、
    前記第1電極層上に、粘度が50cps〜6000cpsの範囲内である下層形成用塗工液を塗布して下層の塗膜を形成する下層形成工程、および、前記下層の塗膜上に上層の膜を形成する上層形成工程を有し、少なくとも二層の膜を有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、
    前記有機半導体層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程と
    を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法。
  7. 前記上層形成工程が、前記下層の塗膜上に上層形成用塗工液を塗布して上層の塗膜を形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
  8. 前記下層形成用塗工液が、重量平均分子量が10万以上である有機半導体材料を含有することを特徴とする請求項7に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
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