JP2007073289A - 光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 新規金属錯体色素を用いた熱および光に対する安定性および光電変換効率に優れた色素増感光電変換素子を提供する。
【解決手段】 下記一般式で表される、5座以上で配位できる配位子を含む金属錯体色素により増感された半導体微粒子を含むことを特徴とする光電変換素子。
Figure 2007073289

【選択図】 なし

Description

本発明は、熱および光に対する安定性および光電変換効率に優れた光電変換素子に関する。
太陽光発電に使用する太陽電池として単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、またはテルル化カドミウム、セレン化インジウム銅等の化合物からなる太陽電池が実用化もしくは主な研究開発の対象となっているが、家庭用電源等に広く普及させる上では、製造コストが高いこと、原材料の確保が困難であること、エネルギーペイバックタイムが長いこと等の問題点があり、これらを克服する必要がある。一方、大面積化や低価格化を目的として、有機材料を用いた太陽電池も多く提案されてきたが、一般に変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があった。
一方、ルテニウム錯体色素により分光増感された二酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式光電変換素子が提案された(例えば,非特許文献1、特許文献1,2参照。)。この湿式光電変換素子は、二酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度に精製することなく用いることができるため、安価な光電変換素子を提供できること、及び、用いられる分光増感色素の吸収がブロードなため、可視光線のほぼ全ての波長領域の光を電気に変換できることの利点を有していた。しかしながら、これらに開示されている公知のルテニウム錯体色素は、配位子としてチオシアネート基またはイソチオシアネート基を有していて、このチオシアネート基およびイソチオシアネート基は熱または光により脱硫黄化されシアノ基に変化する不安定性を有していた。そのため、チオシアネート基またはイソチオシアネート基を有するルテニウム錯体色素を含む光電変換素子の場合、熱または光により光電変換効率の低下した。
金属錯体色素で分光増感する試みは、多くの特許文献に開示されている。例えば、金属フタロシアニン(特許文献3参照。)、ターピリジン金属錯体(特許文献4,5参照。)、2座配位子を用いた金属錯体(特許文献6参照。)、2〜4座の平面配位の配位子を有する金属錯体を上下に架橋したビス型金属錯体(特許文献7参照。)が開示されている。
しかしながら、いずれも可視域の広い範囲に渡って高い感度を有すること、かつ熱および光に対する堅牢性に優れることを共に満足するに至っていない。
高感度(即ち光電変換効率が高い)であり,かつ堅牢性に優れた分光増感技術の開発が強く求められた。
Nature、第353巻,第737〜740頁(1991年) 米国特許4927721号明細書 WO94/04497号明細書 特表2001−510199号明細書 特開2001−60467号明細書 特開2003−51343号明細書 特開2003−3083号明細書 特開2004−155711号明細書
本発明の目的は、分光増感色素として新規な金属錯体色素を見出すことにより、熱および光に対する安定性および光電変換効率に優れた光電変換素子を提供する事である。
本発明の上記課題は、下記の光電変換素子を見出すことによって達成された。
<1> 5座以上で配位できる配位子を含む金属錯体色素により増感された半導体微粒子を含むことを特徴とする光電変換素子。
<2> 前記金属錯体が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする<1>に記載の光電変換素子:
Figure 2007073289
(一般式(1)中、M1は金属イオンを表す。L11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17はそれぞれ独立にM1に配位する配位基を表す。Y11、Y12、Y13、Y14およびY15はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n11は0または1を表す。n12は0〜4の整数を表す。さらに、L11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。)。
<3> 前記金属錯体が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする<1>に記載の光電変換素子:
Figure 2007073289
(一般式(2)中、M2は金属イオンを表す。L21、L22、L23、L24、L25、L26およびL27はそれぞれ独立にM2に配位する配位基を表す。Y21、Y22、Y23およびY24はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n21は0または1を表す。n22は0〜4の整数を表す。さらに、L21、L22、L23、L24、L25、L26およびL27の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。)。
<4> 前記金属錯体が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする<1>に記載の光電変換素子:
Figure 2007073289
(一般式(3)中、M3は金属イオンを表す。L31、L32、L33、L34、L35、L36およびL37はそれぞれ独立にM3に配位する配位基を表す。Y31、Y32、Y33、Y34およびY35はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n31は0または1を表す。n32は0〜4の整数を表す。さらに、L31、L32、L33、L34、L35、L36およびL37の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。)
<5> 前記金属錯体中の金属イオンが白金イオン、イリジウムイオン、レニウムイオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、タングステンイオン、鉄イオン、オスミウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、亜鉛イオンおよび銅イオンの群から選ばれる1種であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<6> 前記半導体微粒子が二酸化チタン微粒子であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
本発明者らは、可視域の広い波長範囲に渡って高い光電変換効率を有しかつ光および熱安定性に優れた分光増感剤を探索した結果、二酸化チタンを感光体としたときの分光増感として5座以上で配位できる配位子を有する金属錯体色素が優れた性能を示すことを見出し、本発明の光電変換素子に到達した。この結果、有機材料を用いた光電変換素子の変換効率が低く、耐久性も悪いという従来の問題が解消され、安価で大量に利用され得る光電変換素子を提供できる。
1.分光増感色素
本発明の光電変換素子は、分光増感色素として、5座以上で配位できる配位子を有する金属錯体を用いることを特徴とする。
以下に本発明における5座以上の配位子を有する金属錯体(以下、「本発明の錯体」という)について、その構造等について詳細に説明する。
1)金属イオン
本発明の金属錯体の金属イオンは特に限定されないが、白金イオン、イリジウムイオン、レニウムイオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、タングステンイオン、鉄イオン、オスミウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、亜鉛イオン、および銅イオンなどが挙げられる。
好ましくは、白金イオン、イリジウムイオン、パラジウムイオン、ルテニウムイオン、鉄イオン、またはオスミウムイオンである。
2)配位子
前記金属イオンに配位する部分の原子としては特に限定はないが、好ましくは酸素原子、窒素原子、炭素原子、硫黄原子、りん原子、ハロゲン原子であり、より好ましくは酸素原子、窒素原子、炭素原子、硫黄原子、りん原子、塩素原子であり、更に好ましくは酸素原子、窒素原子、炭素原子、りん原子であり、特に好ましくは酸素原子、窒素原子、炭素原子である。
前記配位子の配位基の構造としては特に限定はないが、例えば芳香族炭化水素環配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、更に好ましくは炭素数6〜16であり、例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントラセン配位子などが挙げられる。)、ヘテロ環配位子((好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、更に好ましくは炭素数1〜12であり、特に好ましくは芳香族ヘテロ環配位子である。好ましいヘテロ環配位子の具体例としては、例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサジアゾール配位子、チアジアゾール配位子、及び、それらを含む縮環体(例えばインドール配位子、キノリン配位子、イソキノリン配位子、キノキサリン配位子、プリン配位子、カルバゾール配位子、フェナントロリン配位子、ベンゾチアゾール配位子、ベンズイミダゾール配位子など)およびこれらの互変異性体)などが挙げられる。これらのヘテロ環配位子はヘテロ環内のヘテロ原子または炭素原子のいずれで金属イオンに配位しても良い。)、
アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、シリルオキシ配位子(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、
カルボキシラト配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルボキシラト、メチルカルボキシラト、フェニルカルボキシラト、ナフチルカルボキシラト、ピリジンカルボキラト、キノリンカルボキシラトなどが挙げられる。)、エーテル配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばジアルキルエーテル配位子(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなど)、ジアリールエーテル配位子(例えばジフェニルエーテルなど)、フリル配位子などが挙げられる。)、
アミノ配位子(アルキルアミノ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられる。)、アリールアミノ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜10であり、例えばフェニルアミノなどが挙げられる。)、ヘテロ環アミノ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルアミノ、ピラジルアミノ、ピリミジルアミノ、キノリルアミノ、イソキノリルアミノ、キノキサリルアミノ、カルバゾリルアミノ、チエニルアミノ、フリルアミノ、チアゾリルアミノ、オキサゾリルアミノ、ピラゾリルアミノ、トリアゾリルアミノなどが挙げられる。)、アシルアミノ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ配位子(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、トリフルオロメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ、ペンタフルオロベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。))、
カルボニル配位子(例えばケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子など)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば2−ピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、チオカルボニル配位子(例えばチオケトン配位子、チオエステル配位子などが挙げられる。)、チオエーテル配位子(例えばジアルキルチオエーテル配位子、ジアリールチオエーテル配位子、チオフリル配位子などが挙げられる。)、及び上記の組み合せからなる基などが挙げられる。
配位基として好ましくは、芳香族炭化水素環配位子、芳香族へテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサジアゾール配位子、チアジアゾール配位子、及びそれらを含む縮環配位子(例えば、キノリン配位子、イソキノリン配位子、フェナントロリン配位子、ベンズオキサゾール配位子、ベンズイミダゾール配位子など)、及び、これらの互変異性体など)、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、エーテル配位子、アルキルチオ配位子、アリールチオ配位子、アルキルアミノ配位子、アリールアミノ配位子、アシルアミノ配位子、カルボキシラト配位子、及び、これらの組み合せからなる配位子であり、より好ましくは、芳香族炭素環配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、チオフェン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、キノリン配位子、イソキノリン配位子、ベンズイミダゾール配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、エーテル配位子、アルキルチオ配位子、アリールチオ配位子、アルキルアミノ配位子、アリールアミノ配位子、アシルアミノ配位子、カルボキシラト配位子、及びこれらの組み合せからなる基であり、更に好ましくは芳香族炭素環配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、キノリン配位子、イソキノリン配位子、ベンズイミダゾール配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、アルキルアミノ配位子、アリールアミノ配位子、アシルアミノ配位子、カルボキシラト配位子、及びこれらの組み合せからなる基である。
上記の少なくとも1つの配位基は、置換基としてカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含み、さらに可能な場合には別の置換基を有してもよい。置換基としては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、および3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、
アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、およびキノリルオキシなどが挙げられる。)、
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、およびフェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、およびフェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、および2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、およびフェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、およびアゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基同士で連結して環を形成してもよい。
本発明の錯体として好ましくは一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物である。
Figure 2007073289
一般式(1)中、M1は金属イオンを表す。L11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17はそれぞれ独立にM1に配位する配位基を表す。Y11、Y12、Y13、Y14およびY15はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n11は0または1を表す。n12は0〜4の整数を表す。さらに、L11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。
Figure 2007073289
一般式(2)中、M2は金属イオンを表す。L21、L22、L23、L24、L25、L26およびL27はそれぞれ独立にM2に配位する配位基を表す。Y21、Y22、Y23およびY24はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n21は0または1を表す。n22は0〜4の整数を表す。さらに、L21、L22、L23、L24、L25、L26およびL27の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。
Figure 2007073289
一般式(3)中、M3は金属イオンを表す。L31、L32、L33、L34、L35、L36およびL37はそれぞれ独立にM3に配位する配位基を表す。Y31、Y32、Y33、Y34およびY35はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n31は0または1を表す。n32は0〜4の整数を表す。さらに、L31、L32、L33、L34、L35、L36およびL37の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。
次に、一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
1で表される金属イオンは、前述の本発明の錯体の金属イオンと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17で表される配位基は、前述の本発明の錯体の配位基と同義である。L11、L12、L13、L14、L15、L16、およびL17は可能な場合には、それぞれ他のL11、L12、L13、L14、L15、L16、L17やY11、Y12、Y13、Y14、Y15と相互に連結してもよい。
11、Y12、Y13、Y14およびY15で表される連結基としては特に限定されないが、例えばアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロ環連結基、酸素原子連結基、硫黄原子連結基、ケイ素原子連結基、イミノ連結基、カルボニル連結基、及びこれらの組み合わせからなる連結基などが挙げられる。
11、Y12、Y13、Y14、およびY15として好ましくは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロ環連結基、イミノ連結基、酸素原子連結基、硫黄原子連結基、及びこれらの組み合わせからなる連結基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、含窒素芳香族ヘテロ環連結基、イミノ連結基、酸素原子連結基、及びこれらの組み合わせからなる連結基である。
11、Y12、Y13、Y14、およびY15で表される連結基の具体例を以下に示す。
Figure 2007073289
Figure 2007073289
11は0または1を表し、好ましくは1である。n12は0〜4の整数を表し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。n12が2〜4の整数の場合、複数のL17は同一または互いに異なっても良い。
一般式(1)で表される化合物のうち、好ましくは下記一般式(1−A)で表される化合物であり、より好ましくは下記一般式(1−B)で表される化合物である。
Figure 2007073289
一般式(1−A)中、M1、L11、L12、L13、L14、L15、L16、Y11、Y12、Y13、Y14、およびY15は、それぞれ一般式(1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
Figure 2007073289
一般式(1−B)中、M1、L12、L13、L15、L16、Y11、Y12、Y13、Y14、およびY15は、それぞれ一般式(1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
次に、一般式(2)で表される化合物について詳細に説明する。
2で表される金属イオンは、前述の本発明の錯体の金属イオンと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
21、L22、L23、L24、L25、L26およびL27で表される配位基は、前述の本発明の錯体の配位基と同義である。L21、L22、L23、L24、L25、L26、およびL27は可能な場合には、それぞれ他のL21、L22、L23、L24、L25、L26、L27やY21、Y22、Y23、Y24と相互に連結してもよい。
21、Y22、Y23およびY24で表される連結基としては特に限定されないが、例えば一般式(1)におけるY11〜Y15で挙げたものが適用できる。
21は0または1を表し、好ましくは1である。n22は0〜4の整数を表し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。n22が2〜4の整数の場合、複数のL27は同一または互いに異なっても良い。
一般式(2)で表される化合物のうち、好ましくは下記一般式(2−A)で表される化合物である。
Figure 2007073289
一般式(2−A)中、M2、L21、L22、L23、L24、L25、L26、Y21、Y22、Y23、およびY24は、それぞれ一般式(2)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
次に、一般式(3)で表される化合物について詳細に説明する。
3で表される金属イオンは、前述の本発明の錯体の金属イオンと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
31、L32、L33、L34、L35、L36およびL37で表される配位基は、前述の本発明の錯体の配位基と同義である。L31、L32、L33、L34、L35、L36、およびL37は可能な場合には、それぞれ他のL31、L32、L33、L34、L35、L36、L37やY31、Y32、Y33、Y34、Y35と相互に連結してもよい。
31、Y32、Y33、Y34およびY35で表される連結基としては特に限定されないが、例えば一般式(1)におけるY11〜Y15で挙げたものが適用できる。
31は0または1を表し、好ましくは1である。n32は0〜4の整数を表し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。n32が2〜4の整数の場合、複数のL37は同一または互いに異なっても良い。
一般式(3)で表される化合物のうち、好ましくは下記一般式(3−A)で表される化合物である。
Figure 2007073289
(一般式(3−A)中、M3、L31、L32、L33、L34、L35、L36、Y31、Y32、Y33、Y34、およびY35はそれぞれ一般式(3)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
本発明の錯体は5座以上の配位子を有するが、中でも、5座〜10座の配位子を有することが好ましく、5座〜8座がより好ましく、さらに好ましくは5座又は6座であり、6座が特に好ましい。上記5座〜10座の範囲で配位子を有する錯体とすることにより、錯安定度が高くなり、それによって光および熱に対する堅牢性が良化する。また、広い波長範囲に分光感度を有するようになり光電変換効率も高くなる。
本発明の錯体は低分子化合物であっても良く、また、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(重量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、さらに好ましくは3000〜100000である。)であっても良い。ポリマー化合物の場合、錯体部分がポリマー主鎖中に含まれても良く、また、ポリマー側鎖に含まれていても良い。また、ポリマー化合物の場合、ホモポリマー化合物であっても良く、共重合体であっても良い。本発明の錯体は低分子化合物が好ましい。
次に本発明の錯体の化合物例を示すが、本発明はこれに限定されない。ここで、各化合物の構造式において、少なくとも1つの配位基を置換するカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基は、省略して示した。同様に、電荷を中和させる対イオンも省略して示した。
Figure 2007073289
Figure 2007073289
Figure 2007073289
Figure 2007073289
Figure 2007073289
Figure 2007073289
本発明の錯体は、Journal of Chemical Society,5008,(1952)に記載の方法等、また後述の合成手法等を用いることにより合成することができる。
例えば、配位子、またはその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、および水などが挙げられる)の存在下、又は溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキサイド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、および炭酸カリウムなどが挙げられる)、もしくは、塩基非存在下、室温以下、もしくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
本発明の錯体を合成する際の反応時間は反応の活性により異なり、特に限定されないが、1分以上5日以下が好ましく、5分以上3日以下がより好ましく、10分以上1日以下がさらに好ましい。
本発明の錯体を合成する際の反応温度は反応の活性により異なり、特に限定されないが、0℃以上300℃以下が好ましく、5℃以上250℃以下がより好ましく、10℃以上200℃以下がさらに好ましい。
本発明の錯体は、目的とする錯体の部分構造を形成している配位子を金属化合物に対し、好ましくは0.1当量〜20当量、より好ましくは0.3当量〜10当量、さらに好ましくは0.5当量〜6当量加えて合成することができる。前記の金属化合物としては、金属ハロゲン化物(例えば、塩化白金等)、金属アセテート(例えば、酢酸パラジウム等)、金属アセチルアセトナート(例えば、ユーロピウムアセチルアセトナート等)、又はそれらの水和物などがあげられる。
次に、本発明の錯体の代表的な合成法について6座配位子の合成を例に説明する。
Figure 2007073289
Figure 2007073289
前記6座配位子(上記スキームにおける化合物14−17)は、異なる3座配位子を連結することにより合成できる。
例えば、ベンゼン環上に、連結部位を有する1,3−ビス−(2−ピリジル)ベンゼン誘導体(3)は、1,3−ジブロモベンゼン誘導体(1)と2−(トリアルキルスタニル)ピリジンを出発原料として、Stilleカップリング反応を行い、メチル基を脱保護する(Journal of Organic Chemistry,741,11,(1946)に記載の方法、ピリジン塩酸塩中で加熱する等の方法を用いる)ことにより合成できる。
ピリジン環上に連結部位を有する1,3−ビス(2−ピリジル)ベンゼン誘導体(8)は、3−ヒドロキシフェニルホウ酸を出発原料にして、2−ブロモピリジンと鈴木カップリング反応を行った後、塩基存在下、無水トリフルオロメタンスルホン酸と反応させ、水酸基をトリフラート(6)へ変換、ビスピナコールボランとカップリング反応(Journal of Organic Chemistry,60,7508(1995)に記載の方法)を行い、3−(2−ピリジル)フェニルホウ酸誘導体(7)を得た後、さらに2−ブロモ−3−ヒドロキシピリジンと鈴木カップリング反応を行うことにより、合成できる。
ベンゼン環上に連結部位を有する2,6−ビフェニルピリジン誘導体(11)は、2−フェニルピリジン(9)をジメチルアミノエタノール/n−ブチルリチウムを用いて、ピリジン環上のα位をリチオ化し、4臭化炭素と反応させ、2−ブロモ−6−フェニルピリジン(10)とした後、4−ヒドロキシフェニルホウ酸と鈴木カップリング反応を行うことによって合成できる。
置換基の種類、数、及び置換基の置換位置の異なる3座配位子は、上記の方法を用いることにより合成することができる。
6座配位子(14)は、3座配位子(11)とハロアルコール類(例えば、8−ブロモオクタノールなど)を塩基(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン等)存在下で、反応させ、化合物(12)とした後、水酸基を3臭化燐で、ブロモ化、3座配位子(3)とカップリング反応(塩基存在下でのエーテル結合導入反応)を行うことにより合成できる。
同様の方法で、対応した3座配位子を出発原料に用いることにより、3座配位子を2箇所で連結した6座配位子(15〜17)も合成することができる。
2.光電変換素子
1)構成
本発明の光電変換素子は、上記金属錯体色素によって増感された半導体微粒子を感光体とするものである。好ましくは、該感光体を含む感光層と導電層とを有する。
好ましい構成例を図を用いて説明する。図1は本発明の光電変換素子の一例の部分断面を示す概略図である。導電層10、感光層20、電荷移動層30、対極導電層40の順に積層して有する。感光層20は、本発明の金属錯体色素によって増感された半導体微粒子と電荷輸送材料を含有する。
光電変換素子に強度を付与するため、導電層10側および対極導電層40側の少なくとも一方側に、基板50を設けてもよい。以下本発明では、導電層10および任意で設ける基板50からなる層を「導電性支持体」、対極導電層40および任意で設ける基板50からなる層を「対極」と呼ぶ。この光電変換素子を外部回路に接続して仕事をさせるようにしたものが光電気化学電池である。導電層10、対極導電層40、基板50は、それぞれ透明導電層10a、透明対極導電層40a、透明基板50aであってもよい。
本発明の光電変換素子においては、感光層20に入射した光は錯体色素を励起し、励起された色素から高エネルギーの電子が半導体微粒子の伝導帯に移動し、さらに拡散により導電層10に到達する。電子が抜けた色素分子は酸化体となっている。光電気化学電池においては、導電層10中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層40および電荷移動層30を経て色素の酸化体に戻り、色素が再生する。感光層20は負極として働く。それぞれの層の境界(例えば導電層10と感光層20との境界、感光層20と電荷移動層30との境界、電荷移動層30と対極導電層40との境界等)では、各層の構成成分同士が相互に拡散混合していてもよい。以下各層について詳細に説明する。
2)導電性支持体
導電性支持体は、導電層の単層であっても、導電層および基板の2層から構成されても良い。強度や密封性が十分に保たれる導電層の場合は、基板は必ずしも必要でない。
導電層単層の場合、金属のように十分な強度が得られ、かつ導電性がある導電層が用いる。
基板を用いる場合、感光層側に導電層を有する基板を使用するのが好ましい。好ましい導電層素材としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、または導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。導電層の厚さは0.02μm〜10μm程度が好ましい。
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲は100Ω/□以下であり、さらに好ましくは40Ω/□以下である。表面抵抗の下限には特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であるのが好ましく、70%以上が特に好ましい。
透明導電性支持体としては、ガラスまたはプラスチック等の透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布または蒸着等により形成したものが好ましい。なかでもフッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導電性ガラスが好ましい。また低コストでフレキシブルな光電変換素子または太陽電池とするには、透明ポリマーフィルムに導電層を設けたものを用いるのがよい。透明ポリマーフィルムの材料としては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等がある。十分な透明性を確保するために、導電性金属酸化物の塗布量はガラスまたはプラスチックの支持体1m2当たり0.01〜100gとするのが好ましい。
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。金属リードの材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が好ましく、特にアルミニウムおよび銀が好ましい。金属リードは透明基板に蒸着、スパッタリング等で設置し、その上にフッ素をドープした酸化スズ、またはITO膜からなる透明導電層を設けるのが好ましい。また透明導電層を透明基板に設けた後、透明導電層上に金属リードを設置するのも好ましい。金属リード設置による入射光量の低下は好ましくは10%以内、より好ましくは1〜5%とする。
2)感光層
本発明の金属錯体色素により増感された半導体微粒子を含む感光層において、半導体微粒子はいわゆる感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い、電子と正孔を生ずる。色素増感された半導体微粒子では、光吸収およびこれによる電子および正孔の発生は主として色素において起こり、半導体微粒子はこの電子を受け取り、伝達する役割を担う。
<半導体微粒子>
半導体微粒子としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、III−V系化合物半導体、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、またはペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、またはニオブ酸カリウム等)等を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブまたはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物等が挙げられる。
本発明に用いる半導体の好ましい具体例は、Si、TiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、CdS、ZnS、PbS、Bi23、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、またはCuInSe2等であり、さらに好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Fe23、WO3、Nb25、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS2またはCuInSe2であり、特に好ましくは、TiO2またはNb25であり、最も好ましくはTiO2である。
本発明に用いる半導体は単結晶でも多結晶でもよい。変換効率の観点からは単結晶が好ましいが、製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバックタイム等の観点からは多結晶が好ましい。
半導体微粒子の粒径は一般にnm〜μmのオーダーであるが、投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子の平均粒径は5nm〜200nmであるのが好ましく、8nm〜100nmがより好ましい。また分散液中の半導体微粒子(二次粒子)の平均粒径は0.01μm〜100μmが好ましい。
粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは5nm以下であるのが好ましい。入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒径の大きな、例えば300nm程度の半導体粒子を混合してもよい。
半導体微粒子の作製法としては、作花済夫の「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技術情報協会の「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(1995年)等に記載のゾル−ゲル法、杉本忠夫の「新合成法ゲル−ゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」、まてりあ,第35巻,第9号,1012〜1018頁(1996年)等に記載のゲル−ゾル法が好ましい。またDegussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましい。
半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾル−ゲル法、ゲル−ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法および塩素法を用いることもできる。さらにゾル−ゲル法として、バーブらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157頁〜3171頁(1997年)に記載の方法や、バーンサイドらのケミカル・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419頁〜2425頁に記載の方法も好ましい。
<感光層の塗布>
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布するには、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法の他に、前述のゾル−ゲル法等を使用することもできる。光電変換素子の量産化、半導体微粒子液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮した場合、湿式の製膜方法が比較的有利である。湿式の製膜方法としては、塗布法、印刷法が代表的である。
半導体微粒子の分散液を作製する方法としては、前述のゾル−ゲル法の他に、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。
分散媒としては、水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、または酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を分散助剤として用いてもよい。
塗布方法としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分にできるものとして、特公昭58−4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択する。
半導体微粒子の分散液の粘度は半導体微粒子の種類や分散性、使用溶媒種、界面活性剤やバインダー等の添加剤により大きく左右される。高粘度液(例えば0.001〜50Pa・s)ではエクストルージョン法、キャスト法、スクリーン印刷法等が好ましい。また低粘度液(例えば0.01Pa・s以下)ではスライドホッパー法、ワイヤーバー法またはスピン法が好ましく、均一な膜にすることが可能である。なおある程度の塗布量があれば低粘度液の場合でもエクストルージョン法による塗布は可能である。このように塗布液の粘度、塗布量、支持体、塗布速度等に応じて、適宜湿式製膜方法を選択すればよい。
半導体微粒子の層は単層に限らず、粒径の違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が異なる半導体微粒子(あるいは異なるバインダー、添加剤)を含有する塗布層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布で膜厚が不足の場合にも多層塗布は有効である。多層塗布には、エクストルージョン法またはスライドホッパー法が適している。また多層塗布をする場合は同時に多層を塗布してもよく、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。さらに順次重ね塗りであればスクリーン印刷法も好ましく使用できる。
<膜厚>
一般に半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため、光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。したがって、半導体微粒子層の好ましい厚さは0.1μm〜100μmである。光電気化学電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは1μm〜30μmが好ましく、2μm〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m2当たり塗布量は0.5g〜400gが好ましく、5g〜100gがより好ましい。
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。このため半導体微粒子の層を支持体上に塗布した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であるのが好ましく、さらに100倍以上であるのが好ましい。この上限は特に制限はないが、通常1000倍程度である。
<加熱処理>
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布した後で半導体微粒子同士を電子的に接触させるとともに、塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させるために、加熱処理するのが好ましい。好ましい加熱温度の範囲は40℃以上700℃未満であり、より好ましくは100℃以上600℃以下である。また加熱時間は10分〜10時間程度である。ポリマーフィルムのように融点や軟化点の低い支持体を用いる場合、高温処理は支持体の劣化を招くため、好ましくない。またコストの観点からもできる限り低温であるのが好ましい。低温化は、先に述べた5nm以下の小さい半導体微粒子の併用や鉱酸の存在下での加熱処理等により可能となる。
<メッキ処理>
加熱処理後半導体微粒子の表面積を増大させたり、半導体微粒子近傍の純度を高め、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
<半導体微粒子への金属錯体色素の吸着>
半導体微粒子に金属錯体色素を吸着させるには、金属錯体色素の溶液中によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬するか、金属錯体色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。なお浸漬法の場合、金属錯体色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号に記載されているように加熱還流して行ってもよい。また後者の塗布方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、またはスプレー法等があり、印刷方法としては、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等がある。溶媒は、金属錯体色素の溶解性に応じて適宜選択できる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、t−ブタノール、またはベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、または3−メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、またはクロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、または炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、またはトルエン等)、水やこれらの混合溶媒等が挙げられる。
金属錯体色素の溶液の粘度についても、半導体微粒子層の形成時と同様に、高粘度液(例えば0.001〜50Pa・s)ではエクストルージョン法の他に各種印刷法が適当であり、また低粘度液(例えば0.01Pa・s以下)ではスライドホッパー法、ワイヤーバー法またはスピン法が適当であり、いずれも均一な膜にすることが可能である。
このように金属錯体色素の塗布液の粘度、塗布量、導電性支持体、塗布速度等に応じて、適宜色素の吸着方法を選択すればよい。塗布後の色素吸着に要する時間は、量産化を考えた場合、なるべく短い方がよい。
未吸着の金属錯体色素の存在は素子性能の外乱になるため、吸着後速やかに洗浄により除去するのが好ましい。湿式洗浄槽を使い、アセトニトリル等の極性溶剤、アルコール系溶剤のような有機溶媒で洗浄を行うのが好ましい。また色素の吸着量を増大させるため、吸着前に加熱処理を行うのが好ましい。加熱処理後、半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるため、常温に戻さずに40℃〜80℃の間で素早く色素を吸着させるのが好ましい。
金属錯体色素の全使用量は、導電性支持体の単位表面積(1m2)当たり0.01mmol〜100mmolが好ましい。また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01mmol〜1mmolであるのが好ましい。このような金属錯体色素の吸着量とすることにより、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素が少なすぎると増感効果が不十分となり、また色素が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果を低減させる原因となる。
光電変換の波長域をできるだけ広くするとともに変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することもできる。この場合、光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素およびその割合を選ぶのが好ましい。具体的には、本発明の金属錯体色素を2種以上併用したり、本発明の金属錯体色素と従来の金属錯体色素および/またはポリメチン色素とを併用することが可能である。
会合のような金属錯体色素同士の相互作用を低減する目的で、無色の化合物を半導体微粒子に共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられる。また紫外線吸収剤を併用することもできる。
余分な金属錯体色素の除去を促進する目的で、金属錯体色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としてはピリジン、4−t−ブチルピリジン、およびポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
4)電荷移動層
電荷移動層は金属錯体色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。電荷移動層に用いることのできる代表的な材料として、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体(電解液)、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩等が挙げられる。さらに固体電解質や正孔(ホール)輸送材料を用いることもできる。
<電解質>
本発明で使用する電解液は電解質、溶媒および添加物からなるのが好ましい。電解質としては、(a)I2とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、またはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩等)との組み合わせ、(b)Br2と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物、またはテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物の臭素塩等)との組み合わせ、(c)フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、(d)ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等の硫黄化合物、(e)ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等を用いることができる。なかでも、I2とLiIやピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩とを組み合わせた電解質が好ましい。上記電解質は混合して用いてもよい。また電解質はEP718288、WO95/18456、J.Electrochem.Soc.,Vol.143,No.10,3099(1996)、Inorg.Chem.,35,1168〜1178(1996)に記載された室温で溶融状態の塩(溶融塩)を使用することもできる。溶融塩を電解質として使用する場合、溶媒は使用しなくても構わない。
好ましい電解質濃度は0.1mol/L〜15mol/Lであり、さらに好ましくは0.2mol/L〜10mol/Lである。また電解質にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01mol/L〜0.5mol/Lである。
<電解質用溶媒>
電解質用溶媒としては、低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度が高めるか、あるいはその両方であるために、優れたイオン伝導性を発現できる化合物を使用するのが望ましい。このような溶媒の例として、例えば下記のものが挙げられる。
(a)炭酸エステル類
例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、またはジプロピルカーボネート等が好ましい。
(b)ラクトン類
例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプリロラクトン、クロトラクトン、γ−カプロラクトン、またはδ−バレロラクトン等が好ましい。
(c)エーテル類
例えばエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、トリメトキシメタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、または1,4−ジオキサン等が好ましい。
(d)アルコール類
例えばメタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、またはポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等が好ましい。
(e)グリコール類 例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはグリセリン等が好ましい。
(f)グリコールエーテル類
例えばエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、またはポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等が好ましい。
(g)テトラヒドロフラン類
例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が好ましい。
(h)ニトリル類
例えばアセトニトリル、グルタロジニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、またはベンゾニトリル等が好ましい。
(i)カルボン酸エステル類
例えばギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、またはプロピオン酸メチル等が好ましい。
(j)リン酸トリエステル類
例えばリン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が好ましい。
(k)複素環化合物類
例えばN−メチルピロリドン、4−メチル−1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−プロパンサルトン、またはスルホラン等が好ましい。
(l)その他
ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、またはニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒、水等が好ましい。
これらの中では、炭酸エステル系、ニトリル系、または複素環化合物系の溶媒が好ましい。これらの溶媒は必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
また本発明では、J.Am.Ceram Soc.,80(12),p.3157〜3171(1997)に記載されているようなt−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を添加することもできる。塩基性化合物を添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05mol/L〜2mol/Lである。
<ゲル電解質>
電解質はポリマーやオイルゲル化剤の添加、共存する多官能モノマー類の重合、ポリマーとの架橋反応等の方法により、ゲル化(固体化)させて使用することもできる。ポリマーの添加によりゲル化させる場合は、「Polymer Electrolyte Reviews−1,2」(J.R.MacCaLLumとC.A.Vincentの共編、ELSEIVER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物を使用することができるが、特にポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンを使用するのが好ましい。オイルゲル化剤の添加によりゲル化させる場合は、J.Chem.Soc.Japan,Ind.Chem.Sec.,46,779(1943)、J.Am.Chem.Soc.,111,554(1989)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1993,390、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,35,p.1949(1996)、Chem.Lett.,p.885(1996)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,p.545(1997)等に記載されている化合物を使用することができる。なかでも好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する化合物である。
電解質に共存させた多官能モノマー類の重合によりゲル電解質を形成する場合、多官能モノマー類、重合開始剤、電解質および溶媒から溶液を調製し、キャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法等の方法により色素増感半導体微粒子層上に塗布する。
色素増感半導体微粒子間の空隙にゾル状電解質を充填するとともに、感光層上にゾル状電解質層を形成し、その後ラジカル重合することによりゲル化させる方法が好ましい。
多官能性モノマーはエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であるのが好ましく、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、またはトリメチロールプロパントリアクリレート等が好ましい。
ゲル電解質は、上記多官能性モノマー以外に単官能モノマーを含んでいてもよい。単官能モノマーとしては、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸等)類から誘導されるエステル類またはアミド類(例えばN−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、N−プロピルアクリレート、N−ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、またはシクロヘキシルアクリレート等)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(例えばマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、またはフマル酸ジエチル等)、有機酸塩類(例えばマレイン酸、フマル酸またはp−スチレンスルホン酸のナトリウム塩等)、ニトリル類(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン等)、芳香族ビニル化合物類(例えばスチレン、p−クロルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等)、含窒素複素環を有するビニル化合物類、4級アンモニウム塩を有するビニル化合物類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル等)、オレフィン類(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等)、N−フェニルマレイミド等が好ましい。モノマー全量に対する多官能性モノマーの割合は0.5質量%〜70質量%であるのが好ましく、さらに好ましくは1.0質量%〜50質量%である。
上記ゲル電解質用モノマーは、大津隆行・木下雅悦共著の「高分子合成の実験法」(化学同人)や、大津隆行著の「講座重合反応論1ラジカル重合(I)」(化学同人)等に記載された一般的な高分子合成法であるラジカル重合法により重合することができる。ゲル電解質用モノマーのラジカル重合は加熱、光、紫外線、電子線により、または電気化学的に行うことができるが、特に加熱によりラジカル重合させるのが好ましい。
加熱により架橋高分子を形成する場合、好ましい重合開始剤は、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等である。重合開始剤の好ましい添加量は、モノマー総量に対して0.01質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%〜10質量%である。
ゲル電解質に占めるモノマー類の重量組成範囲は0.5質量%〜70質量%であるのが好ましく、さらに好ましくは1.0質量%〜50質量%である。
ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋性反応基を有するポリマーおよび架橋剤を併用するのが望ましい。好ましい架橋性反応基は、含窒素複素環(例えばピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、またはピペラジン環等)であり、また好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能性以上の試薬(例えばハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、またはイソシアネート等)である。
<正孔輸送材料>
電解質の代りに有機および/または無機の正孔輸送材料を使用することもできる。本発明に好ましく用いることのできる有機正孔輸送材料としては、以下のものが挙げられる。
(a)芳香族アミン類
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(J.Hagen et al.,Synthetic Metal,89,p.2153〜220(1997))、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(Nature,Vol.395(8),p.583−585(Oct.1998),およびWO97/10617)、1,1−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサンの3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号)、4,4’−ビス[(N−1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルのように、2個以上の3級アミンを含み、2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に結合した芳香族アミン(特開平5−234681号)、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4923774号、特開平4−308688号)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4764625号)、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)フェニル]−p−キシレン(特開平3−269084号)、p−フェニレンジアミン誘導体、分子全体が立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号)、ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号)、エチレン基で3級芳香族アミン単位を連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号)、ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号)、フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473号)、トリアミン化合物(特開平5−239455号)、ビス(ジピリジルアミノ)ビフェニル(特開平5−320634号)、N,N,N−トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号)、フェノキザジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号)、ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号)等。
(b)オリゴチオフェン化合物
α−オクチルチオフェンおよびα,ω−ジヘキシル−α−オクチルチオフェン(Adv. Mater.,Vol.9,No.7,p.5578(1997))、ヘキサドデシルドデシチオフェン(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,Vol.34,No.3,p.303−307(1995))、2,8−ジヘキシルアンスラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェン(JACS,Vol.120,No.4,p.664〜672(1998))等。
(c)導電性高分子
ポリピロール(K.Murakoshi et al.,Chem.Lett.,1997,p.471)、およびポリアセチレンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレン)およびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、およびポリトルイジンおよびその誘導体等(それぞれ「Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers」,Vol.1〜4(NALWA著、WILEY出版)に記載されている)。
有機正孔(ホール)輸送材料に、Nature,Vol.395,No.8.p.583〜585(1998)に記載されているように、ドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を添加したり、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CF3SO22N]のような塩を添加してもよい。
<電荷移動層の製造>
有機正孔輸送材料は真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができる。また正孔輸送材料を電解液の替わりに使用するときは、短絡防止のためElectorochim.Acta,Vol.40,p.643〜652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス等の手法を用いて、二酸化チタン薄層を下塗り層として塗設するのが好ましい。
無機固体化合物を電解質の代わりに使用する場合、ヨウ化銅(p−CuI)(J.Phys.D:Appl.Phys.,Vol.31,p.1492〜1496(1998))、チオシアン化銅(Thin Solid Films,Vol.261(1995),p.307〜310、J.Appl.Phys.,Vol.80(8),15 October(1996),p.4749〜4754、Chem.Mater.,1998,Vol.10,p.1501〜1509、SemiCond.Sci.Technol.,Vol.10,p.1689〜1693)等を、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解メッキ法等の手法により電極内部に導入することができる。
電荷移動層を形成するには以下の2通りの方法を利用できる。1つは、色素増感した半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を貼り合わせておき、両者の開放端を電解質溶液に浸漬することにより、半導体微粒子層内および半導体微粒子層と対極との空隙に電解質溶液を浸透させる方法である。もう1つは、半導体微粒子層に電解質溶液を塗布することにより、半導体微粒子層内に電解質溶液を浸透させるとともに、半導体微粒子層上に電荷移動層を形成し、最後に対極を設ける方法である。
前者の場合、半導体微粒子層と対極との空隙に電解質溶液を浸透させる方法として、毛管現象を利用する常圧法と、半導体微粒子層と対極との上部開放端(電解質溶液に浸漬していない方の開放端)から吸い上げる減圧法がある。
後者の場合、湿式の電荷移動層のときには未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置を施す。またゲル電解質の場合には、湿式で塗布して重合等の方法により固体化した後に対極を設けてもよいし、対極を設けた後に固体化してもよい。電解液の他に湿式有機正孔輸送材料やゲル電解質の層を形成する方法としては、半導体微粒子層の形成や色素吸着の場合と同様に、浸漬法、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、エクストルージョン法、スライドホッパー法、ワーヤーバー法、スピン法、スプレー法、キャスト法、各種印刷法等を利用できる。固体電解質や固体の正孔(ホール)輸送材料の場合には、真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷移動層を形成し、その後対極を設けてもよい。
固体化できない電解液や湿式の正孔輸送材料の場合には塗布後速やかにエッジ部分を封止するのが好ましく、また固体化可能な正孔輸送材料の場合には湿式付与により正孔輸送層を膜形成した後、例えば光重合や熱ラジカル重合等の方法により固体化するのが好ましい。このように膜付与方式は電解液物性や工程条件により適宜選択すればよい。
なお、電荷移動層中の水分量は10,000ppm以下が好ましく、さらに好ましくは2,000ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以下である。
5)対極
対極は、光電変換素子を光電気化学電池としたとき、光電気化学電池の正極として作用するものである。対極は前記の導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層の単層構造でもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電材としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、またはインジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等が挙げられる。対極の好ましい支持基板の例は、ガラスおよびプラスチックであり、これに上記の導電材を塗布または蒸着して用いる。対極導電層の厚さは特に制限されないが、3nm〜10μmが好ましい。対極導電層が金属製である場合は、その厚さは好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは5nm〜3μmの範囲である。
導電性支持体と対極のいずれか一方または両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極の少なくとも一方が実質的に透明であればよい。発電効率の向上の観点からは、導電性支持体を透明にして、光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合対極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このような対極としては、金属または導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチック、あるいは金属薄膜を使用できる。
対極支持体を設ける手順としては、(イ)電荷移動層を形成した後でその上に設ける場合と、(ロ)色素増感半導体微粒子の層の上にスペーサーを介して対極を配置した後でその空隙に電解質溶液を充填する場合の2通りある。(イ)の場合、電荷移動層上に直接導電材を塗布、メッキまたは蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を有する基板の導電層側を貼り付ける。また(ロ)の場合、色素増感半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を組み立てて固定し、得られた組立体の開放端を電解質溶液に浸漬し、毛細管現象または減圧を利用して色素増感半導体微粒子層と対極との空隙に電解質溶液を浸透させる。
なお、このとき電解質が高分子電解質の場合等は必要に応じて加熱等により架橋させる。また、導電性支持体の場合と同様に、特に対極が透明の場合には、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。なお、好ましい金属リードの材質および設置方法、金属リード設置による入射光量の低下等は導電性支持体の場合と同じである。
5)その他の層
電極として作用する導電性支持体および対極の一方または両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法を利用できるが、生産性の観点からは同時多層塗布法が好ましい。同時多層塗布法では、生産性および塗膜の均一性を考えた場合、スライドホッパー法やエクストルージョン法が適している。これらの機能性層の形成には、その材質に応じて蒸着法や貼り付け法等を用いることができる。
7)光電変換素子の構造の具体例
光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と、片面からのみ光の入射が可能な構造が可能である。本発明に好ましく適用できる光電変換素子の内部構造を図を用いて例示する。
図2は、透明導電層10aと透明対極導電層40aとの間に、感光層20と、電荷移動層30とを介在させたものであり、両面から光が入射する構造となっている。透明基板50aによって両面より担持されている。
図3は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、さらに透明導電層10aを設け、下塗り層60、感光層20、電荷移動層30および対極導電層40をこの順で設け、さらに支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造となっている。
図4は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに電荷移動層30と透明対極導電層40aとを設け、一部に金属リード11を設けた透明基板50aを、金属リード11側を内側にして配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。
図5は、2つの透明基板50a上にそれぞれ金属リード11を設け、各々透明導電層10aまたは透明対極導電層40aを設けたものの間に下塗り層60と感光層20と電荷移動層30とを介在させたものであり、両面から光が入射する構造である。
図6は、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに電荷移動層30および対極導電層40を設け、この上に支持基板50を配置したものであり導電層側から光が入射する構造である。
図 HYPERLINK "" \l "fig7" 7は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに電荷移動層30および透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。
図8は、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに電荷移動層30および透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、両面から光が入射する構造となっている。
図9は、支持基板50上に導電層10を設け、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに固体の電荷移動層30を設け、この上に一部対極導電層40または金属リード11を有するものであり、対極側から光が入射する構造となっている。
3.光電気化学電池
本発明の光電気化学電池は、上記光電変換素子に外部回路で仕事をさせるようにしたものである。光電気化学電池は構成物の劣化や内容物の揮散を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封するのが好ましい。導電性支持体および対極にリードを介して接続される外部回路自体は公知のものでよい。
4.色素増感型太陽電池
本発明の光電変換素子をいわゆる太陽電池に適用する場合、そのセル内部の構造は基本的に上述した光電変換素子の構造と同じである。以下、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池のモジュール構造について説明する。
本発明の色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の色素増感型太陽電池も使用目的や使用場所および環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側または両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リードまたはフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルムまたは充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、または上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。支持基板の周囲は、内部の密封およびモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料および封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールは、例えば、基板供給装置から送り出されたフロント基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルを封止材料−セル間接続用リード線、背面封止材料等と共に順次積層した後、背面基板または背面カバーを乗せ、外縁部にフレームをセットして作製することができる。
一方、サブストレートタイプの場合、基板供給装置から送り出された支持基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルをセル間接続用リード線、封止材料等と共に順次積層した後、フロントカバーを乗せ、周縁部にフレームをセットして作製することができる。
本発明の光電変換素子を基板一体型モジュール化した構造の一例を図10に示す。図10は、透明な基板50aの一方の面上に透明な導電層10aを有し、この上にさらに色素吸着TiO2を含有した感光層20、固体の電荷移動層30および金属対極導電層40を設けたセルがモジュール化されており、基板50aの他方の面には反射防止層70が設けられている構造を表す。このような構造とする場合、入射光の利用効率を高めるために、感光層20の面積比率(光の入射面である基板50a側から見たときの面積比率)を大きくした方が好ましい。
図10に示した構造のモジュールの場合、基板上に透明導電層、感光層、電荷移動層、対極等が立体的かつ一定間隔で配列されるように、選択メッキ、選択エッチング、CVD、PVD等の半導体プロセス技術、あるいはパターン塗布または広幅塗布後のレーザースクライビング、プラズマCVM(Solar Energy Materials and Solar Cells,Vol.48,p.373−381等に記載)、研削等の機械的手法等によりパターニングすることで所望のモジュール構造を得ることができる。
以下にその他の部材や工程について詳述する。
封止材料としては、耐候性付与、電気絶縁性付与、集光効率向上、セル保護性(耐衝撃性)向上等の目的に応じ液状EVA(エチレンビニルアセテート)、フィルム状EVA、フッ化ビニリデン共重合体とアクリル樹脂の混合物等、様々な材料が使用可能である。モジュール外縁と周縁を囲むフレームとの間は、耐候性および防湿性が高い封止材料を用いるのが好ましい。また、透明フィラーを封止材料に混入して強度や光透過率を上げることができる。
封止材料をセル上に固定するときは、材料の物性に合った方法を用いる。フィルム状の材料の場合はロール加圧後加熱密着、真空加圧後加熱密着等、液またはペースト状の材料の場合はロールコート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷等の様々な方法が可能である。
支持基板としてPET、PEN等の可撓性素材を用いる場合は、ロール状の支持体を繰り出してその上にセルを構成した後、上記の方法で連続して封止層を積層することができ、生産性が高い。
発電効率を上げるために、モジュールの光取り込み側の基板(一般的には強化ガラス)の表面には反射防止処理が施される。反射防止処理方法としては、反射防止膜をラミネートする方法、反射防止層をコーティングする方法等がある。
また、セルの表面をグルービング、テクスチャリング等の方法で処理することによって、入射した光の利用効率を高めることが可能である。
発電効率を上げるためには、光を損失なくモジュール内に取り込むことが最重要であるが、光電変換層を透過してその内側まで到達した光を反射させて光電変換層側に効率良く戻すことも重要である。光の反射率を高める方法としては、支持基板面を鏡面研磨した後、AgやAl等を蒸着またはメッキする方法、セルの最下層にAl−Mg、Al−Ti等の合金層を反射層として設ける方法、アニール処理によって最下層にテクスチャー構造を作る方法等がある。
また、発電効率を上げるためにはセル間接続抵抗を小さくすることが、内部電圧降下を抑える意味で重要である。セル同士を接続する方法としては、ワイヤーボンディング、導電性フレキシブルシートによる接続が一般的であるが、導電性粘着テープや導電性接着剤を用いてセルを固定すると同時に電気的に接続する方法、導電性ホットメルトを所望の位置にパターン塗布する方法等もある。
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら前述の方法によって順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells,Vol.48,p.383−391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
5.本発明の用途
以上詳述したように、本発明の光電変換素子は、使用目的や使用環境に合わせて様々な形状と機能を持つ太陽電池に応用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
1.二酸化チタン分散液の調製
内側をテフロン(登録商標)コーティングした内容積200mLのステンレス製容器に二酸化チタン(日本アエロジル(株)製、Degussa P−25)15g、水45g、分散剤(アルドリッチ社製、Triton X−100)1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズをろ過により除去した。分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径はMALVERN社製のマスターサイザーにて測定した。
2.色素を吸着したTiO2電極の作製
フッ素をドープした酸化スズ層を有する導電性ガラス(旭硝子(株)製TCOガラス−Uを20mm×20mmの大きさに切断加工したもの、表面抵抗約30Ω/□)の導電面側にガラス棒を用いて上記分散液を塗布した(半導体微粒子の塗布量20g/m2)。その際、導電面側の一部(端から3mm)に粘着テープを張ってスペーサーとし、粘着テープが両端に来るようにガラスを並べて一度に8枚ずつ塗布した。塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1日間風乾した。次にこのガラスを電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃にて30分間焼成し、TiO2電極を得た。この電極を取り出し冷却した後、本発明の金属錯体色素K−5、K−7、K−16及び比較色素A、Bのそれぞれのメタノール溶液(いずれも3×10-4mol/L)に15時間浸漬した。色素の染着したTiO2電極を4−t−ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥した。得られた感光層の厚さは10μmであった。
Figure 2007073289
Figure 2007073289
3.光電気化学電池の作製
上述のようにして作製した色素増感TiO2電極基板(20mm×20mm)をこれと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせた。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を利用して電解液(3−メトキシプロピオニトリルに電解質として1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩(0.65mol/L)およびヨウ素(0.05mol/L)を加えたもの)をしみこませ、TiO2電極中に導入た後、エポキシ系封止剤で封止して光電気化学電池を得た。本実施例により、導電性ガラスからなる導電性支持体層(ガラスの透明基板50a上に導電層10aが設層されたもの)、色素増感TiO2の感光層20、上記電解液からなる電荷移動層30、白金からなる対極導電層40およびガラスの透明基板50aを順に積層した光電気化学電池が作製された。先に示した図1に相当する構成を有する。
4.光電変換効率、ならびに熱および光安定性の測定
1)光電変換効率の測定
得られた光電気化学電池に模擬太陽光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)にて測定した。模擬太陽光は、500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光を分光フィルター(Oriel社製AM1.5)およびシャープカットフィルター(Kenko L−42)を通すことにより発生させた。この模擬太陽光は紫外線を含まず、光の強度は86mW/cm2であった。
光電変換効率(η) = 出力(W)/入射光エネルギー(W)
2)光安定性および熱安定性
各光電気化学電池の光および熱安定性を、この模擬太陽光を80℃にて720時間、連続照射した後の変換効率の維持率(%)によって評価した。
3)熱安定性
本発明の金属錯体色素K−5、K−7、K−16及び比較色素A、Bの3−メトキシプロピオニトリル溶液(1×10-4mol/L濃度)をそれぞれ調製し、各色素の熱安定性を80℃、100時間後における極大吸光係数の残存率(%)によって評価した。
得られた結果を表1に示す。
Figure 2007073289
表1より、本発明の金属錯体色素を含む光電気化学電池は、比較色素Bと同等以上の変換効率を示し、比較色素AおよびBよりも優れた光安定性と熱安定性を有することがわかる。
本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。 本発明の金属錯体色素を用いた基板一体型太陽電池モジュールの構造の一例を示す部分断面図である。
符号の説明
10:導電層
10a:透明導電層
11:金属リード
20:感光層
21:半導体微粒子
22:金属錯体色素
23:電荷輸送材料
30:電荷移動層
40:対極導電層
40a:透明対極導電層
50:基板
50a:透明基板
60:下塗り層
70:反射防止層

Claims (6)

  1. 5座以上で配位できる配位子を含む金属錯体色素により増感された半導体微粒子を含むことを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記金属錯体が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子:
    Figure 2007073289
    (一般式(1)中、M1は金属イオンを表す。L11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17はそれぞれ独立にM1に配位する配位基を表す。Y11、Y12、Y13、Y14およびY15はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n11は0または1を表す。n12は0〜4の整数を表す。さらに、L11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。)。
  3. 前記金属錯体が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子:
    Figure 2007073289
    (一般式(2)中、M2は金属イオンを表す。L21、L22、L23、L24、L25、L26およびL27はそれぞれ独立にM2に配位する配位基を表す。Y21、Y22、Y23およびY24はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n21は0または1を表す。n22は0〜4の整数を表す。さらに、L21、L22、L23、L24、L25、L26およびL27の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。)。
  4. 前記金属錯体が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子:
    Figure 2007073289
    (一般式(3)中、M3は金属イオンを表す。L31、L32、L33、L34、L35、L36およびL37はそれぞれ独立にM3に配位する配位基を表す。Y31、Y32、Y33、Y34およびY35はそれぞれは独立に単結合または連結基を表す。n31は0または1を表す。n32は0〜4の整数を表す。さらに、L31、L32、L33、L34、L35、L36およびL37の少なくとも1つの配位基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を含む。さらに、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合には、対イオンを含む。)。
  5. 前記金属錯体中の金属イオンが白金イオン、イリジウムイオン、レニウムイオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、タングステンイオン、鉄イオン、オスミウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、亜鉛イオンおよび銅イオンの群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記半導体微粒子が二酸化チタン微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2036955A1 (en) 2007-09-17 2009-03-18 JSR Corporation Dyestuff, dye-sensitized solar cell, and method for manufacturing same
JP2012221699A (ja) * 2011-04-07 2012-11-12 Dainippon Printing Co Ltd 色素増感型太陽電池素子モジュール
JP2013058480A (ja) * 2012-09-18 2013-03-28 Dainippon Printing Co Ltd 色素増感型太陽電池素子モジュール

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