JP2007070719A - 堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面にMg、Si、FeおよびOからなる堆積酸化膜が形成されており、前記Mg、Si、FeおよびOからなる堆積酸化膜は、表面に向かってMgおよびO含有量が増加し、表面に向かってFe含有量が減少し、Siは堆積酸化膜の最表面近傍において最表面に近いほどSi含有量が増加するSiの濃度勾配を有し、素地中に金属なFeが含まれており、平均結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有する。
【選択図】 図1
Description
(イ)このMg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜に含まれるMgは最表面に近いほどMg含有量が増加するMgの濃度勾配を有し、Oは最表面に近いほどO含有量が増加するOの濃度勾配を有し、一方、Feは最表面に近いほどFe含有量が減少する濃度勾配を有し、Siは堆積酸化膜の最表面近傍において最表面に近いほどSi含有量が増加するSiの濃度勾配を有する、
(ロ)前記Mg、Si、FeおよびOからなる堆積酸化膜には、素地中に、MgおよびOが結晶質のMgO固溶ウスタイト(MgOがウスタイト(FeO)に固溶している物質)型相を含まれており、FeおよびSiの一部は金属FeまたはFe−Si合金として含まれており、前記Mg、Si、FeおよびOからなる堆積酸化膜は金属Feを含むために靭性を有し、圧粉成形時の粉末の変形に追従しやすい、
(ハ)前記Mg、Si、FeおよびOからなる堆積酸化膜は、結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有するために靭性を有し、圧粉成形時の粉末の変形に追従しやすい、などの研究結果が得られ、
この表面にMg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜が形成された堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末は、従来のFe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面にMg含有フェライト酸化膜を形成したMg含有フェライト酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末に比べてFe−Si系鉄基軟磁性粉末に対する酸化膜の密着性が格段に優れることから、プレス成形中に絶縁皮膜である酸化膜が破壊されてFe−Si系鉄基軟磁性粉末同士が接触することが少なく、また前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜はMg含有フェライト酸化膜に比べて化学的に安定であることから、プレス成形後に高温歪取り焼成を行っても酸化膜の絶縁性が低下することなく高抵抗を維持することができて渦電流損失が低くなり、さらに歪取り焼成を行った場合に、より保磁力が低減できることからヒステリシス損失を低く抑えることができ、したがって、低鉄損を有する複合軟磁性材料が得られるという研究結果が得られたのである。
この発明は、これら研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面にMg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜が形成されている堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末、
(2)前記Fe−Si系鉄基軟磁性粉末は、Si:0.1〜10質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する前記(1)記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末、
(3)前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜は、表面に向かってMgおよびO含有量が増加し、表面に向かってFe含有量が減少し、Siは堆積酸化膜の最表面近傍において最表面に近いほどSi含有量が増加するSiの濃度勾配を有する前記(1)または(2)記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末、
(4)前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜には、結晶質のMgO固溶ウスタイト型相として含まれており、金属FeまたはFe−Si合金が含まれている前記(1)、(2)または(3)記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末、
(5)前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜は、平均結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有する前記(1)、(2)、(3)または(4)記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末、に特徴を有するものである。
また、前記Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面にFe−Si系鉄基軟磁性粉末に含まれるSiよりも高濃度のSiを含む高濃度Si拡散層を有するFe−Si系鉄基軟磁性粉末は、Fe粉末にSi粉末を添加し混合したのち非酸化性雰囲気中で加熱し、Fe粉末にSiを拡散浸透させることにより得ることができる。
(6)Fe−Si系鉄基軟磁性粉末またはFe粉末にSi粉末を添加し混合したのち非酸化性雰囲気中で加熱することによりFe−Si系鉄基軟磁性粉末またはFe粉末の表面に前記Fe−Si系鉄基軟磁性粉末またはFe粉末に含まれるSiよりも高濃度のSiを含む高濃度Si拡散層を有するFe−Si系鉄基軟磁性粉末を作製し、得られた高濃度Si拡散層を有するFe−Si系鉄基軟磁性粉末を酸化処理することにより高濃度Si拡散層の上に酸化層を有する表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末を作製し、この高濃度Si拡散層の上に酸化層を有する表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末にMg粉末を添加し混合して得られた混合粉末を温度:150〜1100℃、圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱する堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の製造方法、
(7)Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面に、Fe−Si系鉄基軟磁性粉末全体に含まれるSi組成よりも高濃度のSiを含む高濃度Si拡散層が形成されており、この高濃度Si拡散層の上にさらに酸化層が形成されてなる前記(1)、(2)、(3)、(4)または(5)記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末を製造するための表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末、に特徴を有するものである。
また、この発明の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末を圧粉成形し、得られた圧粉成形体を温度:500〜1000℃で燒結することにより複合軟磁性材を作製することができる。
この発明の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末を用いて作製した複合軟磁性材は高密度、高強度、高比抵抗および高磁束密度を有し、この複合軟磁性材は、高磁束密度で高周波低鉄損の特徴を有する事からこの特徴を生かした各種電磁気回路部品の材料として使用できる。前記電磁気回路部品は、磁心、電動機コア,発電機コア、ソレノイドコア、イグニッションコア、リアクトル、トランス、チョークコイルコアまたは磁気センサコアなどがある。そして、この発明の酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末を用いた高抵抗を有する複合軟磁性材からなる電磁気回路部品を組み込んだ電気機器には、電動機、発電機、ソレノイド、インジェクタ、電磁駆動弁、インバータ、コンバータ、変圧器、継電器、磁気センサシステム等があり、電気機器の高効率高性能化や小型軽量化を行うことができる。
原料粉末として平均粒径:75μmを有し、Si:1質量%、残りFeおよび不可避不純物からなるFe−Si系鉄基軟磁性粉末を用意し、さらに平均粒径:1μm以下の純Si粉末を用意した。さらに平均粒径:50μmのMg粉末を用意した。
さらに、Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜の深さ方向のMg、O、SiおよびFeの濃度分布をオージェ電子分光装置を用いて測定し、その結果を表1に示した。本発明堆積酸化膜被覆粉末1のMg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜の深さ方向のMg、O、SiおよびFeの濃度分布をオージェ電子分光装置を用いて測定した時の測定図を図1に示す。図1において、横軸のEtching Timeの0の所が最表面であるから、図1において、Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜に含まれるMgおよびOは表面に向かってMgおよびO含有量が増加し、Feは表面に向かってが減少し、Siは堆積酸化膜の最表面近傍において最表面に近いほどSi含有量が増加するSiの濃度勾配を有することが分かる。
このようにして得られた本発明堆積酸化膜被覆粉末1を金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を窒素雰囲気中、温度:500℃、30分保持の条件で焼成を行い、板状およびリング状焼成体からなる複合軟磁性材を作製し、この板状焼成体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表1に示し、さらにリング状焼成体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度1.5T、周波数50Hzの時の鉄損および磁束密度1.0T、周波数400Hzの時の鉄損などの磁気特性を測定し、それらの結果を表1に示した。
実施例1で用意したFe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面にMg含有フェライト酸化物層を化学的に形成した従来Mg含有フェライト酸化物被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末(以下、従来堆積酸化膜被覆粉末という)を作製し、この従来堆積酸化膜被覆粉末を金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を窒素雰囲気中、温度:500℃、30分保持の条件で焼結を行い、板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性材を作製し、板状焼結体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表1に示し、さらにリング状焼結体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度1.5T、周波数50Hzの時の鉄損および磁束密度1.0T、周波数400Hzの時の鉄損などの磁気特性を測定し、それらの結果を表1に示した。
原料粉末として、表2に示される粒度を有しかつSi:1質量%を含有し、残りFeおよび不可避不純物からなる組成のFe−Si系鉄基軟磁性粉末を用意した。さらに平均粒径:1μm以下の純Si粉末および平均粒径:50μmのMg粉末を用意した。
これら粒度の異なるFe−Si系鉄基軟磁性粉末に純Si粉末をFe−Si系鉄基軟磁性粉末:純Si粉末=97質量%:2%質量となるように配合し、混合して混合粉末を作製し、得られた混合粉末を水素雰囲気中、温度:950℃、1時間保持の条件で熱処理することによりFe−Si系鉄基軟磁性粉末表面に高濃度Si拡散層を形成し、その後、大気中、温度:220℃の条件で保持することにより高濃度Si拡散層の上に酸化層を有する表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末を作製した。
さらに、Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜の深さ方向のMg、O、SiおよびFeの濃度分布をオージェ電子分光装置を用いて測定したところ、堆積酸化膜に含まれるMgおよびOは表面に向かってMgおよびO含有量が増加し、Feは表面に向かってが減少し、Siは堆積酸化膜の最表面近傍において最表面に近いほどSi含有量が増加するSiの濃度勾配を有することが分かった。
本発明法1〜3により得られた堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末に対し、配合比2質量%でシリコーン樹脂を添加し混合して堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面をシリコーン樹脂で被覆した樹脂被覆複合粉末を作製し、この樹脂被覆複合粉末を120℃に加熱した金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を真空中、温度:700℃、30分保持の条件で焼成を行い、板状およびリング状焼成体からなる複合軟磁性材を作製し、この板状焼成体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表2に示し、さらにリング状焼成体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度0.1T、周波数20kHzの時の鉄損を測定し、それらの結果を表2に示した。
原料粉末として、表2に示される粒度を有しかつSi:1質量%を含有し、残りFeおよび不可避不純物からなる組成のFe−Si系鉄基軟磁性粉末を用意し、このFe−Si系鉄基軟磁性粉末をMg被覆処理することなく配合比2質量%でシリコーン樹脂を添加し、混合してFe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面をシリコーン樹脂で被覆した樹脂被覆複合粉末を作製した。この樹脂被覆複合粉末を120℃に加熱した金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を真空中、温度:700℃、30分保持の条件で焼成を行い、板状およびリング状焼成体からなる複合軟磁性材を作製し、この板状焼成体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表2に示し、さらにリング状焼成体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度0.1T、周波数20kHzの時の鉄損を測定し、それらの結果を表2に示した。
原料粉末として、表3に示される粒度を有しかつSi:3質量%を含有し、残りFeおよび不可避不純物からなる組成のFe−Si系鉄基軟磁性粉末を用意した。さらに平均粒径:1μm以下の純Si粉末および平均粒径:50μmのMg粉末を用意した。
これら粒度の異なるFe−Si系鉄基軟磁性粉末に純Si粉末をFe−Si系鉄基軟磁性粉末:純Si粉末=99.5質量%:0.5%質量となるように配合し混合して混合粉末を作製し、得られた混合粉末を水素雰囲気中、温度:950℃、1時間保持の条件で熱処理することによりFe−Si系鉄基軟磁性粉末表面に高濃度Si拡散層を形成し、その後、大気中、温度:220℃の条件で保持することにより高濃度Si拡散層の上に酸化層を有する表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末を作製した。
本発明法4〜6により得られた堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末に形成された堆積酸化膜は、Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜であることおよびこの堆積酸化膜には素地中に金属FeおよびFe−Si合金が含まれていることはX線光電子分光装置により分析を行い、結合エネルギーを解析することにより確認した。さらに、酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末における堆積酸化膜の組織を電子顕微鏡で観察し、さらに前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜に含まれるMgおよびOは結晶質のMgO固溶ウスタイト型相として含まれていることは電子線回折図形により確認した。
さらに、Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜の深さ方向のMg、O、SiおよびFeの濃度分布をオージェ電子分光装置を用いて測定したところ、堆積酸化膜に含まれるMgおよびOは表面に向かってMgおよびO含有量が増加し、Feは表面に向かってが減少し、Siは堆積酸化膜の最表面近傍において最表面に近いほどSi含有量が増加するSiの濃度勾配を有することが分かった。
本発明法4〜6により得られた堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末に対し、配合比2質量%でシリコーン樹脂を添加し混合して堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面をシリコーン樹脂で被覆した樹脂被覆複合粉末を作製した。この樹脂被覆複合粉末を120℃に加熱した金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を真空中、温度:700℃、30分保持の条件で焼成を行い、板状およびリング状焼成体からなる複合軟磁性材を作製し、この板状焼成体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表3に示し、さらにリング状焼成体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度0.1T、周波数20kHzの時の鉄損を測定し、それらの結果を表3に示した。
原料粉末として、表3に示される粒度を有しかつSi:1質量%を含有し、残りFeおよび不可避不純物からなる組成のFe−Si系鉄基軟磁性粉末を用意し、このFe−Si系鉄基軟磁性粉末をMg被覆処理することなく配合比2質量%でシリコーン樹脂を添加し、混合してFe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面をシリコーン樹脂で被覆した樹脂被覆複合粉末を作製した。この樹脂被覆複合粉末を120℃に加熱した金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を真空中、温度:700℃、30分保持の条件で焼成を行い、板状およびリング状焼成体からなる複合軟磁性材を作製し、この板状焼成体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表2に示し、さらにリング状焼成体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度0.1T、周波数20kHzの時の鉄損を測定し、それらの結果を表3に示した。
原料粉末として、表4に示される粒度を有するFe粉末を用意した。さらに平均粒径:1μm以下の純Si粉末および平均粒径:50μmのMg粉末を用意した。
これら粒度の異なるFe粉末に純Si粉末をFe粉末:純Si粉末=97質量%:3%質量となるように配合し混合して混合粉末を作製し、得られた混合粉末を水素雰囲気中、温度:950℃、1時間保持の条件で熱処理することによりFe−Si系鉄基軟磁性粉末表面に高濃度Si拡散層を形成し、その後、大気中、温度:220℃の条件で保持することにより高濃度Si拡散層の上に酸化層を有する表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末を作製した。
本発明法7〜9により得られた堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末に形成された堆積酸化膜は、Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜であることおよびこの堆積酸化膜には素地中に金属FeおよびFe−Si合金が含まれていることはX線光電子分光装置により分析を行い、結合エネルギーを解析することにより確認した。さらに、酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末における堆積酸化膜の組織を電子顕微鏡で観察し、さらに前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜に含まれるMgおよびOは結晶質のMgO固溶ウスタイト型相として含まれていることは電子線回折図形により確認した。
さらに、Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜の深さ方向のMg、O、SiおよびFeの濃度分布をオージェ電子分光装置を用いて測定したところ、堆積酸化膜に含まれるMgおよびOは表面に向かってMgおよびO含有量が増加し、Feは表面に向かってが減少し、Siは堆積酸化膜の最表面近傍において最表面に近いほどSi含有量が増加するSiの濃度勾配を有することが分かった。
本発明法7〜9により得られた堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末に対し、配合比2質量%でシリコーン樹脂を添加し混合して堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面をシリコーン樹脂で被覆した樹脂被覆複合粉末を作製した。この樹脂被覆複合粉末を120℃に加熱した金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体、外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を真空中、温度:700℃、30分保持の条件で焼成を行い、板状およびリング状焼成体からなる複合軟磁性材を作製し、この板状焼成体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表4に示し、さらに小径リング状焼成体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度0.1T、周波数20kHzの時の鉄損を測定し、それらの結果を表4に示した。
原料粉末として、表4に示される粒度を有するFe粉末を用意し、このFe粉末をMg被覆処理することなく配合比2質量%でシリコーン樹脂を添加し、混合してFe粉末の表面をシリコーン樹脂で被覆した樹脂被覆複合粉末を作製した。この樹脂被覆複合粉末を120℃に加熱した金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体、外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を真空中、温度:700℃、30分保持の条件で焼成を行い、板状およびリング状焼成体からなる複合軟磁性材を作製し、この板状焼成体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表4に示し、さらにリング状焼成体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度0.1T、周波数20kHzの時の鉄損を測定し、それらの結果を表4に示した。
実施例1で作製した本発明堆積酸化膜被覆粉末1を用いて外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体および外径:50mm、内径:25mm、高さ:25mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を真空中、温度:700℃、30分保持の条件で焼成を行うことによりこの小径リング状圧粉焼成体および大外径リング状圧粉焼成体を作製した。
この小径リング状圧粉焼成体を用いて磁束密度、保磁力およびおよび10kT、10kHz時の鉄損を測定し、さらに20A直流重畳時の20kHzにおけるインダクタンスを測定して交流の透磁率を求め、それらの結果を表5に示した。次に、大外径リング状圧粉焼成体に巻線を施してインダクタンスがほぼ一定になるリアクトルを作製した。一般的なアクティブフィルタ付きスイッチング電源に、このリアクトルを接続し、入力電力1000Wおよび1500Wに対する出力電力の効率(%)を測定し、その結果を表5に示した。
従来例1で作製した従来堆積酸化膜被覆粉末1を用いて外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体および外径:50mm、内径:25mm、高さ:25mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を真空中、温度:700℃、30分保持の条件で焼成を行うことによりこの小径リング状圧粉焼成体および大外径リング状圧粉焼成体を作製した。
この小径リング状圧粉焼成体を用いて磁束密度、保磁力および10kT、10kHz時の鉄損を測定し、さらに20A直流重畳時の20kHzにおけるインダクタンスを測定して交流の透磁率を求め、それらの結果を表5に示した。次に、大外径リング状圧粉焼成体に巻線を施してインダクタンスがほぼ一定になるリアクトルを作製した。一般的なアクティブフィルタ付きスイッチング電源に、このリアクトルを接続し、入力電力:1000Wおよび1500Wに対する出力電力の効率(%)を測定し、その結果を表5に示した。
Claims (18)
- Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面にMg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜が形成されており、かつ前記Fe−Si系鉄基軟磁性粉末は、表面層が粉末全体に含まれるSi組成よりも高濃度のSiを含む高濃度Si拡散表面層であることを特徴とする堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末。
- 前記Fe−Si系鉄基軟磁性粉末は、Si:0.1〜10質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有することを特徴とする請求項1記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末。
- 前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜は、表面に向かってMgおよびO含有量が増加し、表面に向かってFe含有量が減少し、Siは堆積酸化膜の最表面近傍において最表面に近いほどSi含有量が増加するSiの濃度勾配を有することを特徴とする請求項1または2記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末。
- 前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜には、結晶質のMgO固溶ウスタイト型相が含まれていることを特徴とする請求項1、2または3記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末。
- 前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜には、金属FeまたはFe−Si合金が含まれていることを特徴とする請求項1、2または3記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末。
- 前記Mg,Si,FeおよびOからなる堆積酸化膜は、平均結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末。
- Fe−Si系鉄基軟磁性粉末またはFe粉末にSi粉末を添加し混合したのち非酸化性雰囲気中で加熱することによりFe−Si系鉄基軟磁性粉末またはFe粉末の表面に前記Fe−Si系鉄基軟磁性粉末またはFe粉末に含まれるSiよりも高濃度のSiを含む高濃度Si拡散層を有するFe−Si系鉄基軟磁性粉末を作製し、得られた高濃度Si拡散層を有するFe−Si系鉄基軟磁性粉末を酸化処理することにより高濃度Si拡散層の上に酸化層を有する表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末を作製し、この高濃度Si拡散層の上に酸化層を有する表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末にMg粉末を添加し混合して得られた混合粉末を温度:150〜1100℃、圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱することを特徴とする堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の製造方法。
- 請求項7記載の高濃度Si拡散層を有するFe−Si系鉄基軟磁性粉末の酸化処理は、軟磁性金属粉末を酸化雰囲気中、温度:50〜500℃で加熱処理することを特徴とする堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の製造方法。
- 請求項7または8記載の方法で製造した高濃度Si拡散層を有するFe−Si系鉄基軟磁性粉末を、さらに酸化雰囲気中、温度:50〜400℃で加熱処理することを特徴とする堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の製造方法。
- Fe−Si系鉄基軟磁性粉末を酸化処理してなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末を製造するための表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末。
- Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の表面に、Fe−Si系鉄基軟磁性粉末全体に含まれるSi組成よりも高濃度のSiを含む高濃度Si拡散層が形成されており、この高濃度Si拡散層の上にさらに酸化層が形成されてなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末を製造するための表面酸化Fe−Si系鉄基軟磁性原料粉末。
- 請求項1、2、3、4、5または6記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の圧粉焼成体からなることを特徴とする複合軟磁性材。
- 請求項1、2、3、4、5または6記載の堆積酸化膜被覆Fe−Si系鉄基軟磁性粉末の粒子間にシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂またはPPS樹脂の絶縁材料が介在してなる圧粉焼成体からなることを特徴とする請求項12記載の複合軟磁性材。
- Fe−Si系鉄基軟磁性粒子相とこのFe−Si系鉄基軟磁性粒子相を包囲する粒界相からなり、前記粒界相には結晶質のMgO固溶ウスタイト型相を含有する酸化物が含まれていることを特徴とする請求項12または13記載の複合軟磁性材。
- 請求項12、13または14記載の複合軟磁性材からなることを特徴とするリアクトル用コア。
- 請求項12、13または14記載の複合軟磁性材からなることを特徴とするコアを有するリアクトル。
- 請求項12、13または14記載の複合軟磁性材からなる磁心、電動機コア,発電機コア,ソレノイドコア,イグニッションコア,トランスコア,チョークコイルコアまたは磁気センサコアであることを特徴とする電磁気回路部品。
- 請求項17記載の前記電磁気回路部品を組み込んだ電気機器。
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