JP2007070704A - 高温鋼板の冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 高温の鋼板を冷却するに際し、鋼板を連続冷却パターンで冷却するに必要な冷却ゾーンおよび各冷却ゾーンの水量密度を設定すると共に、中心部と表層部との冷却速度を管理すべき鋼板の管理温度範囲と、該管理温度範囲における中心部の冷却速度下限値と表層部の冷却速度上限値を設定し、当該冷却ゾーンの前の冷却ゾーンまでの冷却履歴に基づいて、連続冷却パターンで設定した水量密度で冷却した場合の管理温度範囲となる次冷却ゾーンから当該冷却ゾーンまでの中心部および表層部の冷却速度を演算し、この結果に基づいて水量密度を設定し、冷却する。
【選択図】図1
Description
しかしながら、鋼板の水冷において通常実施されている連続冷却では、鋼板板厚方向の表層部と中心部とで冷却速度が異なり、鋼板の表層部の冷却速度は板厚中心部の冷却速度に比べて大きいため、表層部と中心部とで温度差が生じ、これに起因して問題が生じている。
例えば、表層部に圧縮、内部に引っ張りの残留応力が生じるため、鋼板の変形や鋼板の切断や溶接などの加工の際に変形を生じることや、また、表層部の変態が中心部に比べて促進されるため、強度や硬さなどの機械的特性が表層部と中心部とで差が生じるといった材質の不均一を招くことになる。
また、特許文献2には、高温鋼板を冷却むらなく均一に冷却するために、冷却ゾーンを鋼板の移送方向に複数の冷却ブロックに区画し、各冷却ブロックにおける鋼板の冷却水による冷却を核沸騰状態で行い、且つ各冷却ブロックに対する冷却水の供給をブロック単位または複数の冷却ブロック単位でオンオフ制御して鋼板の冷却速度を制御する、いわゆる間歇冷却方法を提案している。
また、特許文献3には、板厚方向の材質差の小さい高張力鋼板を製造するために、(Ar3−50)℃以上で熱間圧延を終了し、鋼板表面温度が(Ar3−50)℃以上の温度域から((Ar3−300)℃〜(Ar3−150)℃の温度域まで20℃/s以上50℃/s以下の鋼板表面の冷却速度で冷却し、引き続き500〜650℃の鋼板平均温度までを12℃/s以上の平均冷却速度で冷却する方法を提案している。
また、特許文献2の方法では、冷却ブロック毎のオンオフによる間歇冷却は行われ、表層と中心部の温度差は小さくできるものの、中心部の冷却速度に対する影響は考慮されていないため、特許文献1と同様、温度差を小さくしようとすると鋼板全体としての冷却速度が低下し、材質や生産性への影響が避けられない。
また、この文献の技術では、ブロック毎の冷却水の水量密度は、冷却面内で全面にわたって核沸騰状態が維持されるように、鋼板の温度に応じて設定されており、材質や生産性の観点を考慮したものではない。
また、特許文献3の方法では、冷却における鋼板表面の冷却速度を前段と後段で変えることにより、板厚方向の材質差は小さくなるが、表層部と中心部の温度差は依然として存在し、温度差は、十分には解消されていない。
本発明は、上述の従来の状態に鑑み、高温鋼板の冷却に際して、中心部の冷却速度を確保しつつ、鋼板の板厚方向の温度差を小さくしてでき、均一な冷却、材質を得ることのできる冷却制御方法を提供することを課題とする。
(1)熱間圧延された高温の鋼板を冷却する方法であって、当該鋼板を連続冷却パターンで冷却するに必要な冷却ゾーンおよび各冷却ゾーンの水量密度を設定すると共に、高温鋼板を冷却する際に、鋼板の中心部と表層部における冷却速度を管理すべき温度範囲である管理温度範囲と、この管理温度範囲における鋼板の中心部の冷却速度下限値および表層部の冷却速度上限値をそれぞれ設定し、鋼板がこの管理温度範囲内となる各冷却ゾーンにおいて、当該冷却ゾーンの前の冷却ゾーンまでの冷却履歴に基づいて、前記連続冷却パターンで設定した水量密度で冷却した場合の管理温度範囲となる冷却ゾーンから当該冷却ゾーンまでの間の鋼板の中心部および表層部の冷却速度を演算し、該演算した中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値以上であり、かつ該演算した表層部の冷却速度が前記表層部の冷却速度上限値以下である場合は、当該冷却ゾーンの水量密度を連続冷却パターンにおいて設定したままとし、
該算定した中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値未満であるか、または、該演算した表層部の冷却速度が前記設定した表層部の冷却速度上限値を超える場合には、当該冷却ゾーンと当該次の冷却ゾーンとを組み合わせて、鋼板の中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値以上であり、かつ、表層部の冷却速度が前記設定した表層部の冷却速度上限値以下となるように、当該冷却ゾーンおよび当該次の冷却ゾーンの水量密度を設定して冷却することを特徴とする高温鋼板の冷却方法。
図7は、本発明を実施するための冷却設備の一例を示す概要図である。
圧延機1の後面には、テーブルロール2と水切りロール3が上下に一対となって鋼板7の進行方向に(矢印→)配置されており、テーブルロール2と水切りロール3の進行方向の間隙には上下に冷却装置4が設けられ、複数の冷却ゾーン9が構成されている。この例では冷却装置4は、冷却水ヘッダー5に取り付けられたスプレーノズル6と給水ヘッダーへの冷却水量を調整する流量調整弁7を備えている。
冷却水は、給水管(図示しない)から流量調整弁7を経て冷却水ヘッダー5に供給され、スプレーノズル6から鋼板8の上下面に噴射され、鋼板が冷却される。なお、冷却装置は、スプレー方式に限るものではなく、スリットノズル、パイプノズルなど単独または組み合わせて冷却ゾーンを構成しうることは言うまでもない。
本発明の高温鋼板の冷却には、先ず、(i)圧延後の高温鋼板に必要な冷却条件、すなわち、使用する冷却ゾーンi(i=1〜N)、および各冷却ゾーンの水量密度Wi(m3/m2.min)を設定する。これは、通常の冷却制御と同様に、連続冷却を行うこと(以下、連続冷却パターンとも記載する)を前提として必要な水冷ゾーン数と各水冷ゾーンの水量密度などの冷却条件を設定するものであり、鋼板の中心部について所定の材質および生産性を確保するために予め設定された仕上圧延温度、所要冷却速度(中心部)、冷却開始温度、冷却停止温度、および対象鋼板の板厚、冷却水温度などの実測値或いは計算値などに基づいて演算して設定する。
なお、本発明において表層部とは板厚の表面から1mmまでの範囲をいうものとする。
次に、2)算定した中心部の冷却速度α’が、上記設定した中心部の冷却速度下限値α以上であるか、かつ、算定した表層部の冷却速度β’が、上記設定した表層部の冷却速度上限値β以下であるか否か、すなわち、α’≧αかつ、β’≦βであるか否か、を判定する。
すなわち、α’<αであると所定の材質を得ることができず、β’>βであると、表層部の材質が悪化したり、厚さ方向での材質が不均一で、鋼板が変形したりする。
なお、この表層冷却速度制御冷却は、後述するように、当該冷却ゾーンと当該次の冷却ゾーン或いは、さらに当該次の冷却ゾーンの下流側の冷却ゾーンを組み合わせて、これらの冷却ゾーンにおける鋼板の中心部および表層部の平均冷却速度α’およびβ’がi)で設定した中心部の冷却速度下限値αおよび表層部の冷却速度上限値βとの関係において、α’≧α、β’≦βとなるように、当該冷却ゾーンおよび当該次の冷却ゾーン、或いはさらに下流側の冷却ゾーンの水量密度を設定して行うことができることはいうまでもない。
そして、7)得られた水量密度WNIが当該N冷却ゾーンの冷却設備能力の水量密度WNc(m3/m2・min)の範囲内であるかどうかを判定する。
その後、(1)に戻って上記の手順を繰り返し、当該N冷却ゾーンの一つおいて次の(N+2)冷却ゾーンの冷却速度を計算し、設定する。
なお、N+1冷却ゾーンの水量密度WN+1IIは、N冷却ゾーンの設備能力を超える分の水量密度のほかに、上記の復熱を考慮した結果として、調整分としての水量密度ΔW(m3/m2・min)を加えうることは言うまでもない。すなわち、WN+1II=((WNI−WNc)+ΔW))、ただし、ΔWは0を含むものとする。
その後、1)に戻って、当該N冷却ゾーンの一つおいて次のN+2冷却ゾーンについて、1)から12)を同様に繰り返し、冷却ゾーンの冷却速度を計算し、水量密度を設定する。
このX,Yおよびα、βは、上述のように、中心部と表層部との冷却速度差などに起因する温度差により生じる残留応力差、硬度差などを主体とする材質差が許容範囲内にあるかどうかを勘案し、鋼板の板厚、組成、および冷却条件などに応じて設定されている。
No.4冷却ゾーン通過後の鋼板をNo.5冷却ゾーンについて上記の連続冷却パターンで設定した水量密度W5で冷却した場合の中心部と表層部の冷却速度α’、β’を演算、推定し、これが、α’≧α、β’≦βであれば、No.5冷却ゾーンの水量密度は、連続冷却パターンで設定した水量密度W5に設定するのであるが、しかしながら、図3(b)の場合は、中心部と表層部の冷却速度が、上記関係α’≧α、β’≦βを満たさないため、間欠冷却を行なうようにしたものである。
しかしながら、上述のように、この水量密度W9IがNo.9冷却ゾーンの冷却設備能力の水量密度W9cを超える場合は、図5に示すように、超えた分(W9I−W9c)を当初空冷としたNo.10の少なくとも水量密度として設定した弱冷却ゾーンとした間欠冷却パターンIIとする。すなわち、図5は弱冷却ゾーンを設けた間欠冷却パターンIIの水量密度の設定例を示す図である。
なお、上述のように、上記の表層部の管理温度範囲において、所定のα、βについて上記関係を満たす冷却速度α’、β’、α’I、β’I、α’II、β’IIが得られない場合、当該冷却ゾーンおよび当該次の冷却ゾーンに、さらに当該次の冷却ゾーンの下流側の冷却ゾーンを順次組み合わせた冷却パターンとし、同様にα’、β’、α’I、β’I、α’II、β’IIを求め、それでも解が得られない場合は、当該冷却ゾーンの水量密度は連続冷却パターンで設定した水量密度Wiを設定するものとする。
これらの水量密度の設定には、オンライン冷却装置に設けられているオンライン計算機などを使用してシミュレーションなどにより実行可能である。
鋼板の表層部と中心部とで材質の偏差のあることが問題となる圧延ままの鋼板についてシミュレーションを行った。
板厚は85mm、冷却開始温度900℃、冷却停止温度550℃とし、従来の6個の冷却ゾーンを用いて連続冷却を行なった場合と、表層部の管理開始温度850℃、管理終了温度550℃として、6個の冷却ゾーンを22個の冷却ゾーンに分割して、本発明の冷却ゾーン毎の水量密度をそれぞれ設定した間欠冷却を行なった場合の鋼板の表層部と中心部との冷却速度をそれぞれシミュレーションにより求めた。
図6から判るように、従来の方法では、表層部の平均冷却速度(No.1〜6ゾーンの平均)が44℃/sec、中心部の平均冷却速度が6℃/secであるのに対して、本発明の方法では、表層部の平均冷却速度(No.1〜22ゾーンの平均)は25℃/sec、中心部の平均冷却速度は5℃/secであり、本発明の冷却方法によれば、従来の冷却方法と比べて、表層部の冷却速度が大幅に低減される一方、中心部での冷却速度は殆ど変わらないことが判る。
従って、本発明の冷却方法によれば、板厚中心部での材質は十分確保されると共に、表層の硬化が抑制され、より均質な材質を有すると共に、残留応力差も小さくなり、加工時における変形の発生の少ない鋼板を得ることが出来ることが判る。
2 テーブルロール
3 水切りロール
4 冷却装置
5 冷却水ヘッダー
6 スプレーノズル
7 流量調整弁
8 鋼板
9 冷却ゾーン
Claims (3)
- 熱間圧延された高温の鋼板を冷却する方法であって、当該鋼板を連続冷却パターンで冷却するに必要な冷却ゾーンおよび各冷却ゾーンの水量密度を設定すると共に、高温鋼板を冷却する際に、鋼板の中心部と表層部における冷却速度を管理すべき温度範囲である管理温度範囲と、この管理温度範囲における鋼板の中心部の冷却速度下限値および表層部の冷却速度上限値をそれぞれ設定し、
鋼板がこの管理温度範囲内となる各冷却ゾーンにおいて、当該冷却ゾーンの前の冷却ゾーンまでの冷却履歴に基づいて、前記連続冷却パターンで設定した水量密度で冷却した場合の管理温度範囲となる冷却ゾーンから当該冷却ゾーンまでの間の鋼板の中心部および表層部の冷却速度を演算し、
該演算した中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値以上であり、かつ該演算した表層部の冷却速度が前記表層部の冷却速度上限値以下である場合は、当該冷却ゾーンの水量密度を連続冷却パターンにおいて設定したままとし、
該算定した中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値未満であるか、または、該演算した表層部の冷却速度が前記設定した表層部の冷却速度上限値を超える場合には、当該冷却ゾーンと当該次の冷却ゾーンとを組み合わせて、鋼板の中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値以上であり、かつ、表層部の冷却速度が前記設定した表層部の冷却速度上限値以下となるように、当該冷却ゾーンおよび当該次の冷却ゾーンの水量密度を設定して冷却することを特徴とする高温鋼板の冷却方法。 - 前記演算した鋼板の中心部の冷却速度が、前記設定した中心部の冷却速度下限値未満であるか、または、前記演算した鋼板の表層部の冷却速度が、前記設定した表層部冷却速度上限値を超える場合には、当該冷却ゾーンと、水量密度をゼロあるいは当該冷却ゾーンより小さくした当該次の冷却ゾーンとを組み合わせた間欠冷却パターンとし、鋼板の中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値以上、かつ表層部の冷却速度が前記設定した表層部の冷却速度上限以下となるように、当該冷却ゾーンと当該次の冷却ゾーンの水量密度を設定して冷却することを特徴とする請求項1に記載の高温鋼板の冷却方法。
- 前記当該冷却ゾーンおよび前記当該次の冷却ゾーンの水量密度について、前記鋼板の中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値以上、かつ、表層部の冷却速度が前記設定した表層部の冷却速度上限値以下となるような解が得られない場合は、
前記当該冷却ゾーンおよび前記当該次の冷却ゾーンに、さらに、前記当該次の冷却ゾーンの下流側の冷却ゾーンを順次組み合わせ、鋼板の中心部の冷却速度が前記設定した中心部の冷却速度下限値以上、かつ、前記鋼板の表層部の冷却速度が前記設定した表層部の冷却速度上限値以下となるように、当該冷却ゾーンおよび当該次の冷却ゾーン並び当該次の冷却ゾーンの下流側の冷却ゾーンの水量密度をそれぞれ設定して冷却することを特徴とする請求項1または2に記載の高温鋼板の冷却方法。
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