以下、本発明に係る電源システム及びその制御方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
まず、本発明に係る電源システムに適用される水素生成部の構成について説明する。
[水素生成部]
図1は、第1の実施形態に係る電源システムに適用される水素生成部の構成例を示す概略ブロック図である。
本発明に係る電源システムに適用される水素生成部は、図1に示すように、炭化水素系の発電用燃料(以下、一例としてメタノールCH3OHを用いた場合について説明する)及び水H2Oを加熱して気化(蒸発)させる発電燃料気化器110と、発電燃料気化器110において気化された発電燃料ガス(メタノールガス及び水蒸気の混合気体)から水素ガスH2を含む改質ガスを生成する燃料改質器(改質手段)120と、燃料改質器120において水素ガスH2の生成の際に副生成物として生成される一酸化炭素COと水H2O及び酸素O2から所定の触媒反応により、水素ガスH2と二酸化炭素CO2を生成し、一酸化炭素CO(特定物質)を除去する2組(一対)のCO除去器(特定物質除去部、除去手段)130A、130Bと、燃料改質器120において生成された改質ガスを上記CO除去器130A、130Bのいずれかに選択的に供給するための切換バルブ(流路切換手段)CV1と、CO除去器130A、130Bのいずれかを介して排出された水素ガスH2(改質ガス)を、図示を省略した負荷(以下、便宜的に「水素駆動負荷」と記す;後述する発電セル部)に供給するための切換バルブ(流路切換手段)CV2と、上記発電燃料気化器110とは別に設けられ、発電用燃料(メタノールCH3OH)を加熱して気化させる燃焼燃料気化器140と、該燃焼燃料気化器140により気化された燃焼燃料ガス(メタノールガス)を燃焼させて得られる熱エネルギーにより、上記燃料改質器120における化学反応を促進させる触媒燃焼器150と、少なくとも発電燃料気化器110及び燃料改質器120、CO除去器130A、130B、燃焼燃料気化器140の各々における各化学反応を促進するための温度条件を制御する電気ヒータ(薄膜ヒータ)兼温度計HS1、HS2、HS3A、HS3B、HS4と、CO除去器130A、130Bのいずれかから切換バルブCV2を介して、図示を省略した水素駆動負荷に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度を検出するCO濃度計(濃度検出手段)DSMと、を備えて構成されている。
ここで、図1に示した発電燃料気化器110、燃料改質器120及びCO除去器130A、130Bは、上述した従来技術に示した電源システム(図12参照)と同等の機能を有し、図13と同等の一連の化学反応により、発電用燃料を気化した発電燃料ガスを水蒸気改質反応により改質して水素H2を含む改質ガスを生成し、水性シフト反応及び選択酸化反応により改質ガス中に含まれる有害な一酸化炭素COを除去して、高濃度の水素ガスH2を生成するように構成されている。また、CO除去器130A、130Bは、各々同等の構成を有し、同等の温度条件で一酸化炭素除去処理(CO除去処理)を実行することにより、相互に同等の一酸化炭素除去能力(CO除去能力)を有している。
燃焼燃料気化器14及び触媒燃焼器150は、発電用燃料を気化した燃焼燃料ガスと酸素O2を用いて触媒燃焼反応により熱エネルギーを取り出して燃料改質器120における温度制御を行うほか、水素駆動負荷を駆動する際に残留した水素ガス(後述する発電セル部における電気化学反応において未反応で残留した水素ガス;オフガス)と酸素O2を反応させて熱エネルギーを取り出して温度制御を行うものであってもよい。
また、電気ヒータ兼温度計HS1、HS2、HS3A、HS3B及びHS4は、本実施形態に係る水素生成部の起動時には、例えば、図示を省略した電源(例えば、蓄電池等の二次電池)からの電力により発熱し、一連の化学反応(図13参照)により水素ガスが安定的に生成されて、水素駆動負荷(例えば、後述する発電セル部)により電気エネルギーが生成されるようになってからは、当該電気エネルギー(電力)を電源として切り換えて発熱することにより、発電燃料気化器110及び燃料改質器120、CO除去器130A、130B、燃焼燃料気化器140の各々における各化学反応を促進するための温度条件を制御するものであってもよい。
[水素生成部の制御方法]
このような構成を有する水素生成部において、メタノールCH3OHと水H2Oから水素ガスH2を生成する場合について具体的に説明すると、図13(a)に示したように、まず、発電燃料気化器110における蒸発過程において、電気ヒータ兼温度計HS1を制御して、メタノールCH3OH及び水H2Oの沸点程度の温度条件にあわせて発電燃料気化器110の加熱温度(例えば、概ね120℃程度)に設定することにより、メタノールCH3OH及び水H2Oを個別に加熱して、もしくは、混合液体(メタノール水溶液)を一括して加熱して気化させ、発電燃料ガスを生成する。
また、この蒸発過程に並行して、あるいは、任意のタイミングで、電気ヒータ兼温度計HS4を制御して、メタノールCH3OHの沸点程度の温度条件にあわせて燃焼燃料気化器140の加熱温度(例えば、概ね120℃程度)に設定することにより、メタノールCH3OHを加熱して気化させて、燃焼燃料ガスを生成する燃焼燃料気化器140における蒸発過程を実行する。
次いで、燃料改質器120における水蒸気改質反応過程においては、電気ヒータ兼温度計HS2及び触媒燃焼器150における燃焼燃料ガスの触媒燃焼反応を制御して、概ね280℃程度の温度条件に設定することにより、次の化学反応式(1)に示すように、上記発電燃料ガスから水素H2を含む改質ガスを生成する。なお、この水蒸気改質反応においては、上述したように、水素H2以外に副生成物として微量の二酸化炭素CO2及び一酸化炭素COが生成される。
CH3OH+H2O
→ 3H2+CO2 ・・・(1)
このような有害な副生成物を除去するため、CO除去器130A、130BにおけるCO除去過程において、CO除去器130A、130Bのいずれかにおいて、電気ヒータ兼温度計HS3A、HS3Bを制御して、概ね180℃程度の温度条件に設定することにより、図13(b)に示したように、次の化学反応式(2)、(3)に示すように、一酸化炭素COに対して水H2O(水蒸気)を反応させて、二酸化炭素CO2と水素H2を生成する水性シフト反応、さらに、該水性シフト反応において二酸化炭素CO2と水素H2に変換されなかった一酸化炭素COに対して、大気中の酸素O2を反応させて、二酸化炭素CO2を生成する選択酸化反応が実行される。
CO+H2O →CO2+H2 ・・・(2)
CO+(1/2)O2 →CO2 (3)
特に、本実施形態に係る水素生成部においては、燃料改質器120における水蒸気改質反応過程において、副生成物として生成される一酸化炭素COを除去するためのCO除去器を2組(複数)備え、当該CO除去器から水素駆動負荷に供給される水素ガス中の一酸化炭素濃度をCO濃度計DSMで常時検出し、当該一酸化炭素濃度に基づいて、少なくとも、一方のCO除去器におけるCO除去能力が低下した場合、あるいは、改質ガス中の一酸化炭素濃度が異常に上昇した場合には、切換バルブCV1、CV2を切り換えて、他方のCO除去器により一酸化炭素COを除去するように制御される。
また、上記切換バルブCV1、CV2の切換制御によりCO除去動作を実行していないCO除去器に対して、酸化剤(回復物質)を添加するとともに所定の温度条件に設定することにより、当該CO除去器のCO除去能力を回復させる。ここで、酸化剤としては、上記CO除去処理に用いられる酸素O2を適用することができ、CO除去処理時と同様に、所定量の酸素を継続して供給するとともに、電気ヒータ兼温度計により所定の熱エネルギーを供給することにより、酸素が酸化剤として機能し、低下したCO除去能力を回復させることができる。
このように、水素ガス中の一酸化炭素濃度に基づいてCO除去器を切り換えて、水素ガス中の一酸化炭素を除去又は低減しつつ、同時並行してCO除去能力の回復を図る制御動作を実行することにより、水素駆動負荷に対して高濃度の水素ガスH2を継続して供給することができ、水素駆動負荷を安定的に駆動させることができる。
なお、上述した切換バルブCV1、CV2の切り換え設定は、CO濃度計DSMにより検出された水素ガス中の一酸化炭素濃度に基づいて制御されるが、この制御動作は、図示を省略した制御手段(例えば、後述するシステム制御部)により実行される。
[電源システム]
次に、上述した水素生成部を備えた電源システム及びその制御方法について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る電源システムの一具体例を示す概略構成図である。なお、ここでは、上述した水素生成部と同様に、発電用燃料としてメタノールを使用する場合について説明する。また、上述した水素生成部と同等の構成については、同一又は同等の符号を付して説明する。
図2に示すように、第1の実施形態に係る電源システムは、大別して、発電用燃料であるメタノールCH3OHを封入したメタノールタンク210と、水H2Oを封入した水タンク220と、メタノールタンク210から供給されるメタノールCH3OH、水タンク220から供給される水H2O及び大気中の酸素O2を用いた改質反応により水素H2を生成する燃料改質部100と、該燃料改質部100から供給される水素H2及び大気中に含まれる酸素O2を用いた電気化学反応により電気エネルギーを生成、出力する固体高分子型の燃料電池からなる発電セル部(燃料電池本体;水素駆動負荷、発電手段)160と、当該発電セル部160から出力される電気エネルギーを、図示を省略した負荷(以下、便宜的に「電力駆動負荷」と記す)の駆動制御に適した電圧に変換するDC/DCコンバータ170と、主に上記燃料改質部100における改質反応の進行状況を制御するシステム制御部(制御手段)180と、発電セル部160から出力される電気エネルギーを蓄積する蓄電池等の二次電池190と、を備えた構成を有している。
以下、各構成について詳細に説明する。
(燃料改質部)
燃料改質部100は、具体的には、メタノールタンク210から供給されるメタノールCH3OH(発電用燃料)、及び、水タンク220から供給される水H2Oを加熱して気化(蒸発)させてメタノールガスを生成する発電燃料気化器110と、発電燃料気化器110により気化されたメタノールガス及び水蒸気を用いた触媒反応(水蒸気改質反応)により水素H2を含む改質ガスを生成する燃料改質器(改質手段)120と、燃料改質器120において水素ガスの生成の際に副生成物として生成される一酸化炭素CO、水H2O及び酸素O2を用いた触媒反応(水性シフト反応、選択酸化反応)により一酸化炭素CO(特定物質)を除去して水素ガスH2と二酸化炭素CO2を生成する一対(2組)のCO除去器(特定物質除去部、除去手段)130A、130Bと、メタノールタンク210から供給されるメタノールCH3OHを気化させ、メタノールガスと大気中の酸素O2を用いた触媒反応(燃料反応)により少なくとも上記燃料改質器120における化学反応を促進するための熱エネルギーを生成する燃焼燃料気化器140及びメタノール触媒燃焼器150Aと、発電セル部160に供給された水素ガスH2のうち、当該発電セル部160における電気化学反応に用いられなかった未反応ガス(オフガスH2)と大気中の酸素O2を用いた触媒反応(燃料反応)により少なくとも上記燃料改質器及120における化学反応を促進するための熱エネルギーを生成するオフガス触媒燃焼器150Bと、発電セル部160において生成された電気エネルギー又は二次電池190に蓄積された電気エネルギーを用いて少なくとも上記発電燃料気化器110、燃料改質器120及びCO除去器130A、130B、燃焼燃料気化器140における化学反応を促進するための熱エネルギーを生成する電気ヒータ兼温度計HS1、HS2、HS3A、HS3B及びHS4と、を備えて構成されている。
また、上記燃料改質部100の周辺装置として、図2に示すように、燃料改質器120において生成される改質ガスを、上記一対のCO除去器130A、130Bのいずれか一方にのみ、選択的に供給する供給側切換バルブ(流路切換手段)CV1と、上記一対のCO除去器130A、130Bの各々からの水素ガスの排出経路(水素供給経路)を個別に制御する排出側切換バルブ(流路切換手段)CV2A、CV2Bと、上記一対のCO除去器130A、130Bから発電セル部160に供給される水素ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を検出するCO濃度計(濃度検出手段)DSMと、発電セル部160に供給される水素ガスの流量(供給量)を検出する流量計FL7と、が設けられた構成を有している。
各切換バルブCV1、CV2A、CV2Bは、システム制御部180からの指令(制御信号)に基づいて切換制御され、また、CO濃度計DSM及び流量計FL7は、燃料改質部100から発電セル部160に供給される水素ガスに含まれる一酸化炭素COの濃度データ(一酸化炭素濃度の検出データ)CN及び水素ガスの流量データ(供給量データ)FOをシステム制御部180に出力する。
メタノールタンク210と発電燃料気化器110間、及び、メタノールタンク210と燃焼燃料気化器140間のメタノール供給経路には、メタノールタンク210からメタノールを送出(吐出)するための流体ポンプPN1と、該流体ポンプPN1の駆動状態を制御する制御ドライバDR1と、発電燃料気化器110及び燃焼燃料気化器140へのメタノールの供給量を各々設定するための流体バルブVL1、VL4と、当該供給量を各々検出するための流量計FL1、FL4と、が設けられている。
また、水タンク220と発電燃料気化器110間の水供給経路には、水タンク220から水を送出(吐出)するための流体ポンプPN2と、該流体ポンプPN2の駆動状態を制御する制御ドライバDR2と、発電燃料気化器110への水の供給量を設定するための流体バルブVL2と、当該供給量を測定するための流量計FL2と、が設けられている。なお、図示を省略したが、水タンク220と各CO除去器130A、130B間の水供給経路にも、各CO除去器130A、130Bへの水の供給量を設定するための流体バルブと、当該供給量を測定するための流量計と、が個別に設けられている。
さらに、各CO除去器130A、130B、メタノール触媒燃焼器150A、オフガス触媒燃焼器150B及び発電セル部160における各種の化学反応(触媒反応、電気化学反応等)においては、酸素を必要とするため、大気中の酸素を取り込んで送出する空気ポンプPN3と、該空気ポンプPN3の駆動状態を制御する制御ドライバDR3と、CO除去器130A、130B、メタノール触媒燃焼器150A、オフガス触媒燃焼器150B及び発電セル部160の各々への酸素の供給量を設定するための流体バルブVL3A、VL3B、VL5A、VL5B及びVL6と、当該供給量を測定するための流量計FL3A、FL3B、FL5A、FL5B及びFL6と、が設けられている。
ここで、各制御ドライバDR1、DR2及びDR3は、システム制御部180からの指令(制御信号CD)に基づいて、各ポンプPN1、PN2及びPN3における駆動状態を制御する。また、流量計FL1、FL2、FL3A、FL3B、FL4、FL5A、FL5B、FL6は、各構成に供給されるメタノール、水及び空気の流量データFOをシステム制御部180に出力する。
また、発電燃料気化器110、燃料改質器120、CO除去器130A、130B及び燃焼燃料気化器140に隣接(密着)して設けられた各電気ヒータ兼温度計HS1、HS2、HS3A、HS3B及びHS4には、上記各化学反応を促進するために適した熱エネルギーを生成するとともに、当該熱エネルギーを検出(温度を測定)する制御を行うための制御ドライバDR5、DR6、DR7A、DR7B及びDR4が個別に設けられている。各制御ドライバDR5、DR6、DR7A、DR7B及びDR4は、システム制御部180からの指令(制御信号CD)に基づいて、各電気ヒータ兼温度計HS1、HS2、HS3A、HS3B及びHS4により検出される温度を監視しながら放出する熱エネルギーを調整する。
このような構成を有する電源システムにおいて、本実施形態に係る燃料改質部100は、上記オフガス触媒燃焼器150B、メタノール触媒燃焼器150A、燃料改質器120、一対のCO除去器130A、130B、発電燃料気化器110及び燃焼燃料気化器140の各々を、例えば、半導体デバイス製造技術を適用して、絶縁性の基板に微細な溝状の反応流路を形成し、該流路内壁に所定の触媒を塗布形成した微小な化学反応器(マイクロリアクタ)として構成することができる。また、電気ヒータ兼温度計HS2、HS3A、HS3B、HS1及びHS4は、薄膜抵抗材料を上記各構成に密着させて形成することができる。
さらに、各化学反応器と薄膜抵抗とを順次積層した構成、すなわち、図2に示すように、積層したオフガス触媒燃焼器150B、メタノール触媒燃焼器150A、電気ヒータ兼温度計HS2及び燃料改質器120を順次積層した第1のユニットと、電気ヒータ兼温度計HS3A及びCO除去器130Aを積層した第2のユニットと、電気ヒータ兼温度計HS3B及びCO除去器130Bを積層した第3のユニットと、電気ヒータ兼温度計HS1及び発電燃料気化器110を積層した第4のユニットと、電気ヒータ兼温度計HS4及び燃焼燃料気化器140を積層した第5のユニットと、を積層した構成が、真空断熱容器中に封止された構成を適用することができる。
ここで、発電燃料気化器110の排出口は燃料改質器120の供給口に接続され、燃料改質器120の排出口は供給側切換バルブCV1を介して一対のCO除去器130A、130Bの供給口に接続され、CO除去器130A、130Bの各排出口が排出側切換バルブCV2A、CV2B及びCO濃度計DSM、流量計FL7を介して発電セル部に接続され、燃焼燃料気化器140の排出口はメタノール触媒燃焼器150Aの供給口に接続され、メタノール触媒燃焼器150A及びオフガス触媒燃焼器150Bの排出口は外気に連通するように流路が形成されている。
なお、本実施形態においては、メタノールタンク210に封入されたメタノールが発電燃料気化器110及び燃焼燃料気化器140に供給されて、発電用燃料の一部を熱エネルギーを生成するための触媒燃焼用の燃料として利用する構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、燃焼用燃料を別のメタノールタンク210は別個に設けられたタンクから供給するようにしてもよいし、また、発電用燃料及び燃焼用燃料に異なる液体燃料を適用するものであってもよい。
(発電セル部)
図3は、本実施形態に係る電源システムに適用される発電セル部(燃料電池本体)の一例を示す概略構成図である。ここでは、発電セル部を構成する燃料電池の一例として、固体高分子型の燃料電池を適用した場合について説明する。
発電セル部(燃料電池本体)160は、図3に示すように、概略、白金や白金・ルテニウム等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなるアノード極(陽極)ELaと、白金等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなるカソード極(陰極)ELcと、アノード極ELaとカソード極ELcの間に介挿されたフィルム状の電解質膜(イオン交換膜)LYiと、を有し、アノード極ELa側には、上述した燃料改質部100により発電用燃料(メタノールCH3OH)を改質して得られた高純度(高濃度)の水素ガスH2が供給され、一方、カソード極ELc側には、上述した空気ポンプPN3により取り込まれ、流体バルブVL6及び流量計FL6を介して、所定の流量で大気中の酸素O2が常時供給されるように構成されている。
ここで、本実施形態に係る発電セル部160においては、メタノールタンク210から取り出されたメタノールCH3OHが燃料改質部120に供給されて改質され、CO除去器130により一酸化炭素COを除去して得られた高濃度の水素ガスH2のみがアノード極ELaに供給されるとともに、水タンク220から取り出された水H2Oが直接、又は、発電セル部160において後述する発電動作に伴って副生成物として生成される水H2Oが回収されて、電解質膜LYiに供給される。
そして、このような構成を有する発電セル部(燃料電池本体)160における発電動作に係る電気化学反応は、アノード極ELaに水素ガスH2が供給されると、次の化学反応式(4)に示すように、触媒反応により電子e−が分離して水素イオンH+が発生し、電解質膜LYiを介してカソード極ELc側に通過するとともに、アノード極ELaを構成する炭素電極により電子e−が取り出されて負荷LDに供給される。
2H2
→ 4H++4e− ・・・(4)
一方、カソード極ELcに空気中の酸素O2が供給されることにより、次の化学反応式(5)に示すように、触媒により負荷LDを経由した電子e−と電解質膜LYiを通過した水素イオンH+と酸素O2が反応して、副生成物として水H2Oが生成される。
4H++O2+4e− → 2H2O ・・・(5)
ここで、上述した一連の電気化学反応((4)式及び(5)式)は、概ね60〜80℃の比較的低温の温度条件で進行し、電気エネルギー(電力)以外の副生成物は基本的に水H2Oのみとなる。このような電気化学反応により取り出される電気エネルギーは、発電セル部160のアノード極ELaに供給される水素H2の量に依存する。したがって、上述した燃料改質100において生成される水素H2の量を、DC/DCコンバータ160を介して接続される電力駆動負荷(負荷LD)の駆動状態に応じて適宜調整することにより、当該電力駆動負荷を安定的に駆動させることができる電気エネルギーを出力することができる。
なお、上述した発電セル部(燃料電池本体)160における電気化学反応において、アノード極ELa側に供給され、未反応のまま残留した水素H2は、上記燃料改質部100のオフガス触媒燃焼器150Bに供給されて、触媒燃焼反応により熱エネルギーに変換されて、燃料改質器120における化学反応を促進するために利用される。
(システム制御部)
システム制御部130は、例えば、図示を省略したCPU、ROM、RAM、A/D変換器およびD/A変換器等を備え、上述した各構成の動作を制御する。
具体的には、電源システムの使用者等による起動操作等に基づいて、メタノールタンク210から流体ポンプPN1及び流体バルブVL1、流量計FL1を介して、所定量のメタノールCH3OHを所定のタイミングで発電燃料気化器110に供給し、一方、水タンク220から流体ポンプPN2及び流体バルブVL2、流量計FL2を介して、所定量の水H2Oを所定のタイミングで発電燃料気化器110に供給するとともに、電気ヒータ兼温度計HS1に電力を供給して所定の熱エネルギーを放出させることにより、発電燃料気化器110においてメタノールCH3OH及び水H2Oを蒸発させてメタノールガス及び水蒸気からなる発電燃料ガスを生成する蒸発過程(燃料気化動作)の動作状態を制御する。
また、システム制御部130は、メタノールタンク210から流体ポンプPN1及び流体バルブVL4、流量計FL4を介して、所定量のメタノールCH3OHを所定のタイミングで燃焼燃料気化器140に供給するとともに、電気ヒータ兼温度計HS4に電力を供給して所定の熱エネルギーを放出させることにより、燃焼燃料気化器140においてメタノールCH3OHを蒸発させてメタノールガスからなる燃焼燃料ガスを生成する蒸発過程の動作状態を制御する。
また、システム制御部130は、発電燃料気化器110により生成された発電燃料ガスを所定のタイミングで燃料改質器120に供給するとともに、電気ヒータ兼温度計HS2に電力を供給して所定の熱エネルギーを放出させ、また、燃焼燃料気化器140により生成された燃焼燃料ガスを所定のタイミングでメタノール触媒燃焼器150Aに供給するとともに、空気ポンプPN3及び流体バルブVL5A、流量計FL5Aを介して、所定量の酸素O2を所定のタイミングでメタノール触媒燃焼器150Aに供給して所定の熱エネルギーを放出させることにより、燃料改質器120において発電燃料ガス(メタノールCH3OH及び水H2O)を改質して水素H2を含む改質ガスを生成する水蒸気改質反応過程(燃料改質動作)の動作状態を制御する。
ここで、この燃料改質器120における水蒸気改質反応過程においては、上述した電気ヒータ兼温度計HS2及びメタノール触媒燃焼器150Aから放出される熱エネルギーに加えて、発電セル部(燃料電池本体)160における電気化学反応において未反応で残留した水素ガス(オフガス)をオフガス触媒燃焼器150Bに供給するとともに、空気ポンプPN3及び流体バルブVL5B、流量計FL5Bを介して、所定量の酸素O2を所定のタイミングでオフガス触媒燃焼器150Bに供給することにより放出される熱エネルギーを用いるものであってもよい。
さらに、システム制御部130は、燃料改質器120により生成された改質ガスを供給側切換バルブCV1を介して、所定のタイミングで2組のCO除去器130A、130Bのいずれか一方に供給し、空気ポンプPN3、流体バルブVL3A又はVL3B、流量計FL3A又はFL3Bを介して、所定量の酸素O2を所定のタイミングでCO除去器130A又は130Bに供給するとともに、電気ヒータ兼温度計HS3A又はHS3Bに電力を供給して所定の熱エネルギーを放出させることにより、CO除去器130A又は130Bにおいて改質ガス中の一酸化炭素COを除去して高濃度の水素ガスH2を生成する水性シフト反応及び選択酸化反応からなるCO除去過程(CO除去動作)の動作状態を制御する。
ここで、このCO除去器130A又は130BにおけるCO除去過程(水性シフト反応及び選択酸化反応)において生成された水素ガスH2は、排出側切換バルブCV2A又はCV2B、CO濃度計DSM及び流量計FL7を介して、所定量が発電セル部160に供給される。
加えて、システム制御部130は、CO除去器130A又は130Bを介して生成された高濃度の水素ガスをアノード電極ELa側に供給するとともに、空気ポンプPN3、流体バルブVL6、流量計FL6を介して、所定量の酸素O2を所定のタイミングでカソード極ELc側に供給することにより、上述した一連の電気化学反応に基づいて所定の電気エネルギーを生成する発電動作の動作状態を制御する。
上述したような各動作制御は、システム制御部130において、CPUがROM等に格納された各種制御プログラムを実行することにより、各流量計FL1〜FL7の各流量データ(供給量データ)FOや電気ヒータ兼温度計HS1〜HS4により計測された各温度データ(厳密には、各制御ドライバを介して伝送されるデータ信号)、CO濃度計DSMにより計測される濃度データ(検出データ)CN、及び、発電セル部120の出力電流値(もしくは、DC/DCコンバータ170の出力電流値)等をA/D変換して取り込み、各データ(計測値)に基づいて、D/A変換された、流体バルブVL1〜VL7を駆動するバルブ駆動信号VD、ポンプPN1〜PN3及び電気ヒータ兼温度計HS1〜HS4を駆動するドライバDR1〜DR7A、DR7Bを制御するドライバ制御信号CD等を出力し、電源システムの燃料改質部100及び発電セル部160の各構成における動作状態(化学反応及び電気化学反応等)が適切に実行されるように制御する。
また、発電セル部160における電気化学反応により生成された電気エネルギーは、DC/DCコンバータ170により所定の電圧値に変換されて、図示を省略した電力駆動負荷に供給されるとともに、システム制御部180及び上記各制御ドライバDR1〜DR7A、DR7Bに対して駆動電力として供給される。発電セル部160から出力される電気エネルギーは、直接又はDC/DCコンバータ170を介して、システム制御部180により常時又は定期的に計測(モニタ)され、当該電気エネルギーが電力駆動負荷の駆動に適した電力を有し、かつ、安定して供給されるように、燃料改質部100及び発電セル部160等の動作状態が制御される。さらに、上記電気エネルギーの一部は、二次電池190に蓄積されて、電源システムの起動電力として適用される。
そして、本実施形態に係る電源システムにおけるシステム制御部180は、特に、CO除去器130A、130Bのいずれかを介してCO除去処理され、発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素濃度をCO濃度計DSMにより計測し、該濃度データ(検出データ)CNに基づいて、CO除去器130A又は130B(CO除去動作を実行している側のCO除去器)のCO除去能力の劣化状態、又は、改質ガス中の一酸化炭素濃度の異常な上昇を判定して、CO除去器130A、130Bの供給側に設けられた供給側切換バルブCV1、及び、排出側に設けられた排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御する。
すなわち、初期状態においては、一方のCO除去器(例えば、CO除去器130A)によりCO除去動作が実行されるように、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御した状態で、当該CO除去器を介して発電セル部160に供給される水素ガスの一酸化炭素濃度をCO濃度計DSMにより常時又は定期的(あるいは、任意のタイミング)に計測し、濃度データが予め設定した規定値よりも高くなった場合には、当該CO除去器のCO除去能力が劣化、もしくは、改質ガス中の一酸化炭素濃度が異常に上昇したものと判定して、他方のCO除去器(例えば、CO除去器130B)によりCO除去動作が実行されるように、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御する。
このとき、供給側切換バルブCV1を切換制御することにより、燃料改質器120からの改質ガスは、他方のCO除去器(CO除去器130B)にのみ供給され、一方のCO除去器(CO除去器130A)への供給は遮断される。また、この状態で、空気ポンプPN3、流体バルブVL3A(添加手段)及び流量計FL3Aを介して、所定量の酸素O2を一方のCO除去器(CO除去動作を実行していない側のCO除去器130A)に供給するとともに、電気ヒータ兼温度計HS3Aから所定の熱エネルギーを供給することにより、酸素O2が酸化剤(回復物質)として機能して、当該CO除去器130AのCO除去能力を徐々に回復させることができる。
これにより、他方のCO除去器を介して発電セル部160に供給される水素ガスの一酸化炭素濃度が規定値よりも高くなった場合には、再び一方のCO除去器(CO除去器130A)によりCO除去動作が実行されるように、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御する。
したがって、本実施形態に係る電源システムにおいては、並列に配置された複数(2組)のCO除去器を交互に切り換えて、常に正常なCO除去能力を有するCO除去器によりCO除去動作を実行することができるので、発電セル部160に供給される水素ガスの一酸化炭素濃度を常時規定値以下に制御することができ、発電セル部(燃料電池本体の陽極)の被毒化を防止又は抑制して、発電性能を常に良好な状態に保持することができる。
なお、本実施形態に係る電源システムにおいては、2組のCO除去器130A又は130Bを選択的に切り換える動作において、選択側(改質ガスが供給され、CO除去動作が実行されている側)のCO除去器の排出側バルブは、CO除去処理後の水素ガスをCO濃度計DSM及び流量計FL7を介して発電セル部160に供給する流路を形成するように設定され、一方、非選択側(改質ガスの供給が遮断され、CO除去動作が実行されていない側)のCO除去器の排出側バルブは、例えば、当該CO除去器内に残留する水素ガスや酸素等をメタノール触媒燃焼器150Aに供給する流路に設定されることにより、メタノール触媒燃焼器150Aにおける触媒燃焼反応に利用される。
(DC/DCコンバータ・二次電池)
DC/DCコンバータ160は、電源システムの起動時や過負荷時等に、二次電池190に蓄積された電気エネルギーを用いて、システム制御部180や各ドライバ、電力駆動負荷に所定の電圧値を有する駆動電力を出力し、電源システムが定常状態に移行してからは発電セル部160から出力される電気エネルギーを所定の電圧値に変換して電力駆動負荷に供給するとともに、二次電池190に蓄積(充電)する。なお、二次電池は、周知の各種蓄電池を適用するものであってもよいし、薄型かつ小型軽量化が可能でありながら、充放電特性に優れた電気二重層コンデンサ等を適用するものであってもよい。
[電源システムの制御方法]
次に、上述した構成を有する電源システムにおける制御方法について、具体的に説明する。
図4は、本実施形態に係る電源システムにおける制御方法の一例を示すフローチャートであり、図5は、本実施形態に係る電源システムの制御方法の一例を説明するための動作概念図である。
本実施形態に係る電源システムにおいては、上述したように、燃料改質器120の後段に複数個(本実施形態では2組)のCO除去器130A、130Bを並列に設け、当該CO除去器130A又は130Bを介して発電セル部160に供給される水素ガスの一酸化炭素濃度に基づいて、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御することにより、複数のCO除去器130A、130Bのうち、いずれかのCO除去器により改質ガスに対して常にCO除去処理が施され、一酸化炭素濃度の低い高純度(高濃度)の水素ガスが常時発電セル部160に供給されるように制御される。
すなわち、例えば、電源システムの使用者によりシステムの起動操作、あるいは、起動制御が行われると、図4に示すように、まず、メタノールタンク210及び水タンク220から供給された所定量のメタノールCH3OH及び水H2Oが、発電燃料気化器110において上述した蒸発過程に基づいて、メタノールガス及び水蒸気からなる発電燃料ガスが生成される(燃料蒸発処理S101)。
この発電燃料ガスは、燃料改質器120において上述した水蒸気改質反応に基づいて、水素H2を含む改質ガスに改質される(燃料改質処理S102)。この改質ガスには、上述したように、水素H2とともに、微量の二酸化炭素CO2及び一酸化炭素COが含まれている。
次いで、並列に配置されたCO除去器130A、130Bのうち、いずれか一方のCO除去器(例えば、CO除去器130A)に、上記改質ガスを供給することにより、上述した水性シフト反応過程及び選択酸化反応過程に基づいて、一酸化炭素COを除去して高濃度の水素ガスH2を生成する(CO除去処理S103)。この水素ガスH2は、CO濃度計DSM及び流量計FL7を介して発電セル部160のアノード極側に供給される。
この状態(初期状態)においては、図5(a)に示すように、CO除去器130A、130Bの供給側に設けられる供給側切換バルブCV1は、燃料改質器120からの改質ガスがCO除去器130Aにのみ供給されるように流路が設定されている。また、CO除去器130Aの排出側に設けられる排出側切換バルブCV2Aは、CO除去処理した改質ガス(水素ガス)がCO濃度計DSM及び流量計FL7を介して発電セル部160に供給されるように流路が設定され、CO除去器130Bの排出側に設けられる排出側バルブCV2Bは、CO除去器130B内に残留するガス(水素ガスや酸素)が燃焼燃料としてメタノール触媒燃焼器150Aに供給されるように流路が設定されている。
ここで、CO濃度計DSMは、CO除去器130Aから発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度を常時又は定期的(あるいは、任意のタイミング)に検出(計測)して、濃度データCNとしてシステム制御部180に出力する(CO濃度計測S104)。
システム制御部180は、この濃度データCNを予め設定された規定値とを比較処理し(S105)、一酸化炭素濃度が規定値以下であると判定した場合には、現在の供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bの各流路設定を維持して、CO除去器130AによるCO除去動作を継続する(S107)。
一方、システム制御部180において、一酸化炭素濃度が規定値よりも大きいと判定した場合には、図5(b)に示すように、供給側切換バルブCV1の流路をCO除去器130B側に切換制御するとともに、排出側切換バルブCV2Aの流路をメタノール触媒燃焼器150A側に切換制御し、排出側切換バルブCV2Bの流路を発電セル部160側に切換制御する(バルブ切換制御S106)。
これにより、CO除去器130BによりCO除去処理された水素ガスH2が、CO濃度計DSM及び流量計FL7を介して発電セル部160のアノード極側に供給され、CO除去器130A内に残留するガス(水素ガスや酸素)が燃焼燃料としてメタノール触媒燃焼器150Aに供給される。
そして、CO除去器の切り換え後は、上述したステップS104、S105に戻って、再度、CO濃度計DSMにより、CO除去器130Bから発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度が常時又は定期的(あるいは、任意のタイミング)に検出(計測)され(CO濃度計測S104)、システム制御部180において、この一酸化炭素濃度と規定値とが比較処理される(S105)。
ここで、上述したステップS106において、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御して、改質ガスの供給及び水素ガスの排出をCO除去器130AからCO除去器130Bに切り換えた後、CO除去動作を実行していないCO除去器130Aに対して、図5(b)に示すように、所定量の酸素(空気)を供給するとともに所定の熱エネルギーを供給する動作を継続することにより、酸素が酸化剤として機能して、CO除去器130AのCO除去能力が徐々に回復する(CO除去能力の回復動作)。なお、上述したように、CO除去器130A、130Bを含む各構成を、微小な化学反応器を積層して構成した場合にあっては、改質ガスの供給が遮断された(CO除去動作を実行していない)CO除去器130Aに対しても周囲に設けられた各構成から熱エネルギーが伝達することにより、CO除去能力を回復するための酸化処理に適した所定の温度状態に設定される。
したがって、CO除去動作をCO除去器130Bにより実行するように切り換えた後、当該CO除去器130Bを介して排出される水素ガスの一酸化炭素濃度と規定値の比較処理において(S104、S105)、一酸化炭素濃度が規定値以下であると判定した場合には、現在の供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bの各流路設定を維持して、CO除去器130BによりCO除去動作を継続し(S107)、一酸化炭素濃度が規定値よりも大きいと判定した場合には、再度、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2Aの各流路をCO除去器130A側に切換制御するとともに、排出側切換バルブCV2Bの流路をメタノール触媒燃焼器150A側に切換制御する(S106)。
このような一連の動作ステップ(制御動作)は、電源システムの停止操作、あるいは、停止制御が行われるまで繰り返し実行される。
これによれば、並列に配置された2組(複数)のCO除去器130A及び130Bにより、交互にCO除去動作を実行することができるとともに、CO除去動作を実行していないCO除去器に酸化剤を添加してCO除去能力を回復させることができるので、改質ガスに対して継続的に十分なCO除去能力を有するCO除去器によりCO除去処理を施して、発電セル部に対して一酸化炭素濃度の低い高純度の水素ガスを長期的かつ安定的に供給することができ、発電セル部160において所望の電気エネルギーを安定して生成、出力することができる。
なお、本実施形態に係る電源システムにおいては、一方のCO除去器130AにおけるCO除去処理においてCO除去能力が低下したと判定した場合に、他方のCO除去器130Bに流路を切り換え、当該CO除去器130BによりCO除去動作を実行するとともに、一方のCO除去器に酸化剤(酸素)を添加してCO除去能力を回復させる動作を、2組のCO除去器130A、130Bで交互に繰り返し実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、各CO除去器におけるCO除去能力の回復特性(酸化剤添加時間とCO除去能力の関係)等が予め判明している場合には、他方のCO除去器130Bに切り換えた後、一定時間(回復時間)経過後に再び一方のCO除去器130Aに切り換えるようにしてもよい。この場合、一方のCO除去器130Aに再び切り換えた後、CO除去動作を実行していない他方のCO除去器130Bに所定量の酸素を供給(酸化剤を添加)して、当該CO除去能力を回復させるようにしてもよい。
また、本実施形態に係る電源システムにおいては、2組のCO除去器130A、130Bを備え、これら2組のCO除去器間で交互にかつ継続してCO除去動作を実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2以上の複数のCO除去器を並列的に設け、各CO除去器のCO除去能力の劣化の程度(すなわち、CO濃度計DSMにより計測される一酸化炭素濃度)に応じて、供給側の切換バルブ及び排出側の切換バルブを切り換えて、改質ガス及びCO除去処理後の水素ガスの供給流路及び排出経路を順次切り換えるように制御するものであってもよい。
次に、本実施形態に係る電源システムの制御方法の他の例について説明する。
図6は、本実施形態に係る電源システムにおける制御方法の他の例を示すフローチャートであり、図7は、本実施形態に係る電源システムの制御方法の他の例を説明するための動作概念図である。ここで、上述した制御方法(図4、図5参照)と同等のステップについては、その説明を簡略化して説明する。
上述した電源システムの制御方法(図4、図5参照)においては、燃料改質器120により生成された改質ガスを、2組のCO除去器130A、130Bのいずれか一方にのみ供給してCO除去動作を実行するように、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御する場合について説明したが、本制御方法においては、2組(複数)のCO除去器におけるCO除去能力がいずれも劣化した場合や、一のCO除去器のCO除去能力では改質ガス中の一酸化炭素濃度を充分に低下させることができない場合(例えば、改質ガスの一酸化濃度が異常に上昇した場合)等に対応した制御方法を有している。
すなわち、図6に示すように、電源システムが起動すると、上述した制御方法(ステップS101〜SS107)と同様に、まず、発電燃料気化器110において生成されたメタノールガス及び水蒸気からなる発電燃料ガスを、燃料改質器120において水蒸気改質反応により水素H2を含む改質ガスに改質する(燃料蒸発処理S111、燃料改質処理S112)。
次いで、図7(a)に示すように、並列に配置されたCO除去器130A、130Bのうち、一方のCO除去器130Aに、上記改質ガスを供給して、水性シフト反応及び選択酸化反応からなるCO除去過程により一酸化炭素COを除去して(CO除去処理S113)、高濃度の水素ガスH2を生成し、CO濃度計DSM及び流量計FL7を介して発電セル部160に供給する。
ここで、CO除去器130Aから発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度を、CO濃度計DSMにより常時又は定期的に検出(計測)し(CO濃度計測S114)、システム制御部180において、当該一酸化炭素濃度と規定値とを比較処理する(S115)。
そして、一酸化炭素濃度が規定値以下であると判定した場合には、現在の流路設定を維持して、CO除去器130AによるCO除去動作を継続し(S116)、一酸化炭素濃度が規定値よりも大きいと判定した場合には、図7(b)に示すように、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御して、CO除去器130BによりCO除去動作を実行する(バルブ切換制御S117)。
次いで、CO除去器130Bへの切り換え後においては、上述したステップS114、S115と同様に、再度、CO濃度計DSMによりCO除去器130Bから発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度を検出(計測)し(CO濃度計測S118)、システム制御部180において、この一酸化炭素濃度と規定値とを比較処理する(S119)。
そして、一酸化炭素濃度が規定値以下であると判定した場合には、現在の流路設定を維持して、CO除去器130BによるCO除去動作を継続し(S120)、一酸化炭素濃度が規定値よりも大きいと判定した場合には、図7(c)に示すように、供給側切換バルブCV1の流路をCO除去器130A、130Bの双方に分岐するように切換制御するとともに、排出側切換バルブCV2A、CV2Bの流路をいずれも発電セル部160側に切換制御する(バルブ切換制御S121)。
これにより、CO除去器130A、130Bの双方に改質ガスが供給され、各CO除去器130A、130BによりCO除去処理された水素ガスH2が、排出側切換バルブCV2A、CV2B、CO濃度計DSM及び流量計FL7を介して発電セル部160に供給される。
ここで、改質ガスをCO除去器130A、130Bの双方に供給してCO除去動作を実行するように設定した状態においては、図7(c)に示すように、上述したCO除去処理に用いられる酸素に加え、所定量の酸素(空気)を、CO除去能力が低下した各CO除去器130A、130Bの双方に対して供給するとともに所定の熱エネルギーを供給する動作を継続することにより、酸素O2が酸化剤として機能して、CO除去器130A、130BのCO除去能力が徐々に回復する(CO除去能力の回復動作)。
次いで、CO除去器130A、130bの双方によりCO除去動作を実行するように切り換え後においては、上述したステップS114、S115(又は、ステップS118、S119)と同様に、再度、CO濃度計DSMによりCO除去器130A、130Bの双方から発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度を検出(計測)し(CO濃度計測S122)、システム制御部180において、この一酸化炭素濃度と規定値とを比較処理する(S123)。
そして、一酸化炭素濃度が、上記CO除去能力の回復動作による能力回復を示す所定値に達していない(低下していない)と判定した場合には、現在の流路設定を維持して、CO除去器130A、130Bの双方によるCO除去動作を継続し(S124)、一酸化炭素濃度が上記所定値以下に達した(低下した)と判定した場合には、CO除去器130A、130BのCO除去能力が回復したものと判断して、供給側切換バルブCV1及び排出側切換バルブCV2A、CV2Bを切換制御して、CO除去器130Aのみを用いて改質ガスのCO除去動作を実行する(バルブ切換制御S125)。
そして、このような一連の動作ステップ(制御動作)は、電源システムの停止操作、あるいは、停止制御が行われるまで繰り返し実行される。
したがって、本制御方法によれば、2組(複数)のCO除去器130A及び130Bが並列に配置され、一方のCO除去器のCO除去能力が低下した場合には、CO除去器を切り換えて他方のCO除去器を用いてCO除去動作を継続して実行することができるとともに、双方のCO除去器130A、130BのCO除去能力が低下した場合には、双方のCO除去器に改質ガスを分岐して供給し、2組(双方)のCO除去器130A、130Bを用いてCO除去動作を実行することができ、また、CO除去能力が低下した双方のCO除去器130A、130Bに酸化剤を添加してCO除去能力を回復させることができるので、発電セル部160に対して一酸化炭素濃度の低い水素ガスを長期的かつ安定的に供給することができ、所望の電気エネルギーを安定して出力することができる。
ここで、本制御方法を実現するためには、2組のCO除去器130A、130Bの供給側に設けられた供給側切換バルブCV1として、2組のCO除去器130A、130Bのいずれか一方へ改質ガスを供給する選択的な流路設定に加え、2組のCO除去器130A、130Bの双方に改質ガスを分岐して供給する流路設定が可能な構成を有していることを必要とする。
なお、上述した電源システムの制御方法においては、図4、図5に示した制御方法のように、2組(複数)のCO除去器130A、130Bのうち、一方のCO除去器によりCO除去動作を実行しつつ、他方のCO除去器のCO除去能力を回復させる動作を交互に繰り返し、いずれのCO除去器130A、130Bに切り換えた場合であっても一酸化炭素濃度が低下しない状態に至った場合に、双方のCO除去器130A、130Bを用いてCO除去動作を実行するように制御するものであってもよい。
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る電源システム及びその制御方法の第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[水素生成部]
図8は、第2の実施形態に係る電源システムに適用される水素生成部の構成例を示す概略ブロック図である。ここで、上述した第1の実施形態と同等の構成については同等又は同一の符号を付して説明を簡略化する。
上述した第1の実施形態においては、燃料改質器の後段に複数(2組)のCO除去器を並列に配置し、改質ガスの供給経路を交互に切り換えてCO除去動作を実行する構成を有しているが、本実施形態においては、複数のCO除去器を直列に配置し、改質ガス(水素ガス)の供給経路に含めるか否かを切り換えてCO除去動作を実行する構成を有している。
すなわち、本実施形態に係る水素生成部は、図8に示すように、上述した第1の実施形態(図1参照)と同等の構成を有する発電燃料気化器110、燃料改質器120、燃焼燃料気化器140、触媒燃焼器150、電気ヒータ(薄膜ヒータ)HS1、HS2、HS4に加え、燃料改質器120において生成される改質ガス中に含まれる一酸化炭素COを除去するCO除去器130Cと、CO除去器130Cの後段に配置され、CO除去器130Cにおいて生成された水素ガス中に含まれる一酸化炭素COをさらに除去するCO除去器130Dと、CO除去器130Cにおいて生成された水素ガスを、図示を省略した負荷(水素駆動負荷;後述する発電セル部)に直接供給する流路とCO除去器130Dを介して上記水素駆動負荷に供給する流路とを選択的に切り換える切換バルブ(流路切換手段)CV3と、CO除去器130C、130Dの各々における各化学反応を促進するための温度条件を制御する電気ヒータ(薄膜ヒータ)兼温度計HS3C、HS3Dと、CO除去器130Cにおいて生成された水素ガスに含まれる一酸化炭素COの濃度を検出するCO濃度計DSMと、を備えて構成されている。
ここで、CO除去器130C、130Dは、上述した実施形態に示したCO除去器と同様の機能を有し、水性シフト反応及び選択酸化反応により、改質ガス及び水素ガス中に含まれる有害な一酸化炭素を除去して、高濃度の水素ガスを生成するように構成されている。なお、CO除去器130C、130Dは、同等のCO除去能力を有している必要はなく、例えば、相互に異なる構造を有し、異なる温度条件でCO除去動作を実行するように構成されているものであってもよい。
また、電気ヒータ兼温度計HS3C、HS3Dについても、上述した実施形態に示した電気ヒータ兼温度計と同様に、水素生成部の起動時には、例えば、図示を省略した電源(二次電池)からの電力により発熱し、水素ガスが供給されて水素駆動負荷(発電セル部)により電気エネルギーが安定的に生成されるようになってからは、当該電気エネルギー(電力)を電源として切り換えて発熱するものであってもよい。
[水素生成部の制御方法]
このような構成を有する水素生成部において、まず、発電燃料気化器110における蒸発過程により、メタノールCH3OH及び水H2Oを気化させて、発電燃料ガスを生成し、次いで、燃料改質器120における水蒸気改質反応過程により、発電燃料ガスから水素H2を含む改質ガスを生成する。
ここで、本実施形態に係る水素生成部においては、燃料改質器120における水蒸気改質反応過程により、副生成物として生成される一酸化炭素COを、水性シフト反応及び選択酸化反応からなるCO除去過程により除去して、水素H2と二酸化炭素CO2を生成するCO除去器を2組(複数)備え、前段のCO除去器130CによりCO除去処理された水素ガス中の一酸化炭素濃度をCO濃度計DSMで常時検出し、当該CO除去器130CにおけるCO除去能力が低下した場合、あるいは、改質ガス中の一酸化炭素濃度が異常に上昇した場合には、切換バルブCV3を切り換えて、後段のCO除去器130DによりさらにCO除去動作を実行した後に、水素駆動負荷に水素ガスを供給するように制御する。
このように、常設(既設)のCO除去器130CにおけるCO除去能力が劣化した場合や、改質ガス中の一酸化炭素濃度が一時的に上昇した場合等に、当該CO除去器130Cに加えて補助のCO除去器130Dを直接に配置して、常設のCO除去器130Cからの水素ガスを補助のCO除去器130Dにおいて、さらにCO除去処理することにより、水素ガス中の一酸化炭素濃度を低減することができるので、水素駆動負荷に対して高濃度の水素ガスH2を継続して供給することができ、水素駆動負荷を安定的に駆動させることができる。
[電源システム]
次に、上述した水素生成部を備えた電源システム及びその制御方法について説明する。
図9は、第2の実施形態に係る電源システムの一具体例を示す概略構成図である。なお、上述した水素生成部及び上述した第1の実施形態に係る電源システムと同等の構成については、同一又は同等の符号を付して説明する。
図9に示すように、第2の実施形態に係る電源システムは、上述した第1の実施形態(図2参照)と同等の構成を有するメタノールタンク210、水タンク220、発電セル部(燃料電池本体;水素駆動負荷)160、DC/DCコンバータ170、システム制御部180、二次電池190に加え、唯一のCO除去器(常設のCO除去器)130Cのみを備えた燃料改質部100と、当該燃料改質部100と発電セル部160間の水素供給経路に設けられた切換バルブ(流路切換手段)CV3及びCO除去器(補助のCO除去器;特定物質除去部、除去手段)130Dと、を備えて構成されている。
以下、本実施形態に特有の構成について具体的に説明する。
燃料改質部100は、第1の実施形態(図2参照)と同等の構成を有する発電燃料気化器110、燃料改質器120、燃焼燃料気化器140、メタノール触媒燃焼器150A、オフガス触媒燃焼器150B、電気ヒータ兼温度計HS1、HS2及びHS4に加え、燃料改質器120において生成された改質ガス中に含まれる一酸化炭素COを、上述した水性シフト反応及び選択酸化反応からなるCO除去過程により除去する唯一のCO除去器130Cと、発電セル部160において生成された電気エネルギー又は二次電池190に蓄積された電気エネルギーを用いてCO除去器130Cにおける各化学反応を促進するための熱エネルギーを生成する電気ヒータ兼温度計HS3Cと、を備えて構成されている。
ここで、CO除去器130Cに隣接(密着)して設けられた電気ヒータ兼温度計HS3Cには、CO除去処理における化学反応を促進するために適した熱エネルギーを生成するとともに、当該熱エネルギーを検出(温度を測定)する制御を行う制御ドライバDR7Cが設けられている。制御ドライバDR7Cは、システム制御部180からの指令(制御信号CD)に基づいて、当該電気ヒータ兼温度計HS3Cにより検出される温度を監視しながら放出する熱エネルギーを調整する。
また、上記燃料改質部100と発電セル部160との間の水素供給経路には、CO除去器130Cから発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素濃度を検出するCO濃度計DSMと、発電セル部160に供給される水素ガスH2の流量(供給量)を検出する流量計FL7と、上記CO濃度計DSMにより検出された一酸化炭素濃度に基づいて、CO除去器130Cからの水素ガスH2の供給経路を、発電セル部160側とCO除去器130D側のいずれかに、選択的に切り換える切換バルブCV3と、CO除去器130CによりCO除去処理された水素ガスH2中に含まれる一酸化炭素COを、上述した水性シフト反応及び選択酸化反応によりさらに除去するCO除去器130Dと、が設けられている。
ここで、切換バルブCV3は、燃料改質部100(CO除去器130C)から供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度を、CO濃度計DSMにより計測し、当該一酸化炭素濃度(濃度データCN)に基づいて、水素ガスH2をCO除去器130Dを経由することなく、直接発電セル部160に供給する流路、もしくは、CO除去器130Dを経由させて、さらにCO除去処理を施した後、発電セル部160に供給する流路のいずれかを選択的に設定するように切り換え制御される。このような一酸化炭素濃度の判定や切換バルブCV3の切換制御は、システム制御部180により実行される。
なお、CO除去器130Dには、上述した燃料改質部100に設けられたCO除去器130Cと同様に、当該CO除去器130Cにおける各化学反応を促進するための熱エネルギーを生成する電気ヒータ兼温度計HS3Dが密着して設けられており、図示を省略した制御ドライバによりCO除去器130Dに供給される熱エネルギーが制御される。
このような構成を有する電源システムにおいて、上述した第1の実施形態と同様に、燃料改質部100を構成する、オフガス触媒燃焼器150B、メタノール触媒燃焼器150A、燃料改質器120、CO除去器130C、発電燃料気化器110及び燃焼燃料気化器140の各々を、半導体デバイス製造技術を適用して微小な化学反応器(マイクロリアクタ)として構成することができ、また、電気ヒータ兼温度計HS2、HS3C、HS1及びHS4を、薄膜抵抗により上記各構成に密着させて形成することができる。さらに、図9に示すように、各化学反応器と薄膜抵抗とを順次積層した構成を、真空断熱容器中に封止された構成を適用することができる。
また、システム制御部130は、上述した燃料改質器100における一連の水素生成処理に関連する各種制御に加え、CO除去器130Cを介してCO除去処理された水素ガスH2に含まれる一酸化炭素濃度をCO濃度計DSMにより計測し、該濃度データ(検出データ)CNに基づいて、CO除去器130CのCO除去能力の劣化状態、又は、改質ガス中の一酸化炭素濃度の異常な上昇を判定して、切換バルブCV3を切換制御する。
これにより、CO除去器130CによりCO除去処理された水素ガスH2を、直接発電セル部160に供給する流路と、CO除去器130Dを介してさらにCO除去処理した後、発電セル部160に供給する流路のいずれかに設定される。
すなわち、初期状態においては、燃料改質部100に設けられたCO除去器130Cのみを用いてCO除去動作が実行されて、当該CO除去器130Cのみを介して発電セル部160に供給される水素ガスH2の一酸化炭素濃度をCO濃度計DSMにより常時又は定期的(あるいは、任意のタイミング)に計測し、濃度データCNが予め設定した規定値よりも高くなった場合には、当該CO除去器130CのCO除去能力が劣化、もしくは、改質ガス中の一酸化炭素濃度が異常に上昇したものと判定して、上記CO除去器130Cに加え、燃料改質部100の外部に設けられたCO除去器130Dを用いてCO除去動作が実行されるように、切換バルブCV3を切換制御する。
このとき、空気ポンプPN3、流体バルブVL3C及び流量計FL3Cを介して、所定量の酸素O2をCO除去器130Cに供給するとともに、電気ヒータ兼温度計HS3Cから所定の熱エネルギーを供給することにより、酸素O2が酸化剤として機能して、当該CO除去器130CのCO除去能力を徐々に回復させることができる(CO除去能力の回復動作)。
これにより、燃料改質部100内に設けられたCO除去器130Cから排出される水素ガスH2の一酸化炭素濃度が、CO除去能力の回復動作による能力回復を示す所定値よりも低くなった場合には、切換バルブCV3を切換制御して、CO除去器130Dへの水素ガスの供給を遮断して、CO除去器130CのみによりCO除去動作が実行されるように流路を設定する。
したがって、本実施形態に係る電源システムにおいては、直列に配置された複数(2組)のCO除去器への改質ガス(水素ガス)の供給経路を切り換えて、常に正常なCO除去能力を有するCO除去器の組み合わせ(CO除去器130C単独の場合も含む)によりCO除去動作を実行することができるので、発電セル部160に供給される水素ガスH2の一酸化炭素濃度を常時規定値以下に制御することができ、発電セル部160(燃料電池本体の陽極)の被毒化を防止又は抑制して、発電性能を常に良好な状態に保持することができる。
[電源システムの制御方法]
次に、上述した構成を有する電源システムにおける制御方法について、具体的に説明する。ここでは、本実施形態の特徴であるCO除去器の切換動作について詳しく説明する。
図10は、本実施形態に係る電源システムにおける制御方法の一例を示すフローチャートであり、図11は、本実施形態に係る電源システムの制御方法の一例を説明するための動作概念図である。なお、上述した第1の実施形態と同等の制御方法については、その説明を簡略化して説明する。
本実施形態に係る電源システムにおいては、上述したように、燃料改質器120の後段に複数個(本実施形態では2組)のCO除去器130C、130Dが直列に設けられ、CO除去器130Cを介して発電セル部160に供給される水素ガスH2の一酸化炭素濃度に基づいて、切換バルブCV3を切換制御することにより、CO除去器130C単独、又は、複数のCO除去器130C、130Dにより改質ガスをCO除去処理して、一酸化炭素濃度の低い高純度(高濃度)の水素ガスH2が常時発電セル部160に供給されるように制御される。
すなわち、電源システムが起動すると、図10に示すように、上述した第1の実施形態に示した制御方法(ステップS101〜SS107)と同様に、まず、発電燃料気化器110において生成されたメタノールガス及び水蒸気からなる発電燃料ガスを、燃料改質器120において水蒸気改質反応により水素H2を含む改質ガスに改質する(燃料蒸発処理S201、燃料改質処理S202)。
次いで、図11(a)に示すように、燃料改質部100に設けられたCO除去器130Cに上記改質ガスを供給して、水性シフト反応及び選択酸化反応からなるCO除去過程により一酸化炭素COを除去して(CO除去処理S203)、高濃度の水素ガスH2を生成し、CO濃度計DSM、流量計FL7及び切換バルブCV3を介して発電セル部160に供給する。このとき、切換バルブCV3は、システム制御部180により、CO除去器130Cからの水素ガスH2を、CO除去器130Dを経由することなく、直接発電セル部160に供給する流路に設定されている。
ここで、CO除去器130Cから発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度を、CO濃度計DSMにより常時又は定期的に検出(計測)し(CO濃度計測S204)、システム制御部180において、当該一酸化炭素濃度と規定値とを比較処理する(S205)。
そして、一酸化炭素濃度が規定値以下であると判定した場合には、現在の流路設定を維持して、CO除去器130CのみによるCO除去動作を継続し(S206)、一酸化炭素濃度が規定値よりも大きいと判定した場合には、切換バルブCV3を切換制御して流路を切り換えて、図11(b)に示すように、CO除去器130C及び130Dの双方によりCO除去動作を実行する(バルブ切換制御S207)。
ここで、上述したステップS206において、切換バルブCV3を切換制御して、改質ガスのCO除去処理をCO除去器130C及び130Dの双方により実行するように設定した場合、CO除去器130CのCO除去能力は低下しているので、実質的にCO除去器130DによりCO除去動作が実行される。このとき、CO除去能力が低下したCO除去器130Cに対して、図11(b)に示すように、所定量の酸素(空気)を供給するとともに所定の熱エネルギーを供給する動作を継続することにより、酸素O2が酸化剤として機能して、CO除去器130CのCO除去能力が徐々に回復する(CO除去能力の回復動作)。
次いで、CO除去器130C及び130Dの双方を経由したCO除去処理への切り換え後においては、上述したステップS204、S205と同様に、再度、CO濃度計DSMによりCO除去器130Cを介して排出される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素COの濃度を検出(計測)し(CO濃度計測S208)、システム制御部180において、この一酸化炭素濃度と規定値とを比較処理する(S209)。
そして、一酸化炭素濃度が、上記CO除去能力の回復動作による能力回復を示す所定値に達していない(低下していない)と判定した場合には、現在の流路設定を維持して、CO除去器130C、130Dの双方によるCO除去動作を継続し(S210)、一酸化炭素濃度が上記所定値以下に達した(低下した)と判定した場合には、CO除去器130CのCO除去能力が回復したものと判断して、切換バルブCV3を切換制御して、CO除去器130Cのみを用いて改質ガスのCO除去動作を実行する(バルブ切換制御S211)。
そして、このような一連の動作ステップ(制御動作)は、電源システムの停止操作、あるいは、停止制御が行われるまで繰り返し実行される。
これによれば、通常状態においては、唯一のCO除去器130CによりCO除去動作を実行し、当該CO除去器130CのCO除去能力が低下した場合には、CO除去器130Dを直列に接続するように切り換えてCO除去動作を継続して実行することができるとともに、CO除去能力が低下したCO除去器130Cに酸化剤を添加してCO除去能力を回復させることができるので、改質ガスに対して継続的に十分なCO除去能力を有するCO除去器によりCO除去処理を施して、発電セル部160に対して一酸化炭素濃度の低い水素ガスH2を長期的かつ安定的に供給することができ、所望の電気エネルギーを安定して出力することができる電源システムを提供することができる。
なお、本実施形態に係る電源システムにおいては、CO濃度計DSMを前段のCO除去器130Cの排出部(CO除去器130Cと切換バルブCV3との間の水素供給経路)に配置して、CO除去器130Cから排出される水素ガスに含まれる一酸化炭素濃度を直接検出(計測)する場合について示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発電セル部160の直前(切換バルブCV3と発電セル部160との間の水素供給経路)にCO濃度計DSMを配置して、発電セル部160に供給される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素濃度を検出するものであってもよい。この場合においては、CO除去器130Cと130Dの双方を経由して、CO除去処理された水素ガスH2に含まれる一酸化炭素濃度が検出されることになるが、この場合のCO除去処理は、実質的に後段に配置されたCO除去器130Dにより行われているので、上記一酸化炭素濃度の減少が検出された場合には、CO除去能力の回復動作が行われているCO除去器130Cの能力回復の効果によるものであると判断することができる。したがって、発電セル部160に供給される水素ガスH2の一酸化炭素濃度が所定値以下に至った場合には、前段のCO除去器130Cが十分なCO除去能力を有するまで回復したと判断して切換バルブCV3を切換制御し、後段のCO除去器130Dへの水素ガスH2の供給を遮断して、CO除去器130C単独でCO除去処理を実行するように制御する。
また、本実施形態においては、CO除去器130CにおけるCO除去能力の回復状態を、当該CO除去器130Cから排出される水素ガスH2に含まれる一酸化炭素濃度に基づいて判断する方法を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、前段のCO除去器130CにおけるCO除去能力の回復特性(酸化剤添加時間とCO除去能力の関係)等が判明している場合には、CO除去器130C及び130Dの双方によるCO除去処理に切り換えた後、一定時間(回復時間)経過後に再び前段のCO除去器130Cのみに切り換えるようにしてもよい。この場合、CO除去器130Cのみに切り換えた後、CO除去動作を実行していない後段のCO除去器130Dに対して所定量の酸素を供給(酸化剤を添加)して、当該CO除去能力を回復させるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、前段と後段の2組のCO除去器130C、130Dを備え、後段のCO除去器130Dの接続経路を切り換えることにより、継続してCO除去動作を実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、後段のCO除去器として2以上の複数のCO除去器を設け、これらの1乃至複数のCO除去器を、前段のCO除去器130CのCO除去能力の劣化の程度(すなわち、CO濃度計DSMにより計測される一酸化炭素濃度)に応じて、直列に接続するように切換制御するものであってもよい。
なお、上述した各実施形態に示した電源システムにおいては、発電用燃料としてメタノールを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その組成中に水素原子を含むものであれば、例えば、他の炭化水素系(アルコール類)の液体燃料を発電用燃料として適用するものであってもよい。
また、上述した電源システムにおいては、各実施形態に示した水素生成部により生成される水素ガスを用いて発電を行う水素駆動負荷として、固体高分子型の燃料電池について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構造を有する燃料電池であってもよいし、水素生成部により生成された水素ガスの燃焼反応等に伴う圧力エネルギーを用いて発電器を回転させて電気エネルギーを発生する力学的なエネルギー変換作用等によるもの(ガス燃焼タービンやロータリーエンジン、スターリングエンジン等の内燃、外燃機関発電)や、燃焼反応に伴う熱エネルギーによるもの(温度差発電)等、種々の形態を有する電源システムにも良好に適用することができる。