JP2007056092A - ケイ酸亜鉛系蛍光体及びプラズマディスプレイパネル - Google Patents

ケイ酸亜鉛系蛍光体及びプラズマディスプレイパネル Download PDF

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Kazuyoshi Goan
一賀 午菴
Hisahiro Okada
尚大 岡田
Kazuya Tsukada
和也 塚田
Hideki Hoshino
秀樹 星野
Naoko Furusawa
直子 古澤
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Abstract

【課題】 発光強度の向上と短残光を両立し、表面電位が正極性を有するマンガン賦活ケイ酸亜鉛系蛍光体及び該蛍光体を用いたプラズマディスプレイパネルを提供することである。
【解決手段】 下記式(1)で表されるケイ酸亜鉛系蛍光体のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が、粒子内部に対し粒子表面が0.8〜1.1であり、かつ粒子表面のSiに対するZnとMnの和のモル比が1.7〜2モルの粒子が全体の70%以上であることを特徴とするケイ酸亜鉛系蛍光体。
式(1) Zn(2-x-y-z)SiO4:Mnx,M1y,M2z
(式中、M1及びM2はアルカリ土類金属であり、0<x≦0.3、0≦y≦0.2、0≦z≦0.2である。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、ケイ酸亜鉛系蛍光体及びプラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、電極を備えた2枚のガラス基板と、基板間に設けられた隔壁によって形成される多数のセル内に蛍光体層が設けられている。電極間に電圧を印加してセルを放電させると、セル内に封入された放電ガスに起因する紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて可視光を発光する。
現在、PDP用の蛍光体として主に使用されているものに、(Y、Gd)BO3:Eu(赤)、Zn2SiO4:Mn(緑)、BaMgAl1017:Eu(青)等がある。
ところで、PDP等のディスプレイでは、輝度向上や滑らかな動画表示等が求められている。そこで、輝度を高めるために、蛍光体の発光強度を向上することが考えられる。特に、緑色蛍光体は視感度が高く、白色輝度を向上させるためには、緑色蛍光体の発光強度を高めることが重要である。一方、滑らかな動画表示のためには、極めて短い単位時間ごとに次々と情報を表示しなければならず、残光時間の短い蛍光体が求められる。
しかしながら、上記で挙げたZn2SiO4:Mn(緑)は他の色と比べて残光時間が長く、次の新たな情報を表示したときに画像のちらつき等を生じる恐れがあるため、発光強度の向上とともに残光時間の短縮化が求められている。
一般にZn2SiO4:Mn等のマンガンを賦活したケイ酸亜鉛蛍光体は、賦活剤であるマンガン量を変化させることにより発光強度や残光時間をコントロールすることができる。しかしながら、発光強度と残光時間は多くの場合トレードオフの関係にあり、マンガン賦活量を多くすると残光時間は短くなるものの発光強度は低下していた。
また、一般的にZn2SiO4:Mnは、表面電位が負極性を有する。他の色の蛍光体に対して、緑色の蛍光体のみが負極性に帯電しているため、プラズマディスプレイパネルにおける放電特性のバラツキは、この帯電量が起因していると推測される。
帯電量による放電特性を改良するための方法が提案されている。例えば、特許文献1では、表面電位が負極性を有する蛍光体と正極性を有する蛍光体を混合した蛍光面を備えたプラズマディスプレイ装置で、緑色蛍光体は負極性を有するマンガン賦活ケイ酸亜鉛と正極性を有するテルビニウム賦活希土類ほう酸塩を混合する。一般的に緑色蛍光体として用いられるマンガン賦活ケイ酸亜鉛は負極性を有するため、放電ミスや放電バラツキが問題となる。また、特許文献2では、蛍光体表面に酸化物を添加あるいはコーティングすることにより、帯電量を0に調整し、パネル内で発生した不純ガスの吸着、放電プラズマによる輝度劣化を防止する方法を提案している。これらの方法では、色度が変化したり、表面にコーティングすることによる輝度劣化を伴い、十分な解決策とは言えなかった。
特開2001−236893号公報 特開2004−323576号公報
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は発光強度の向上と短残光を両立し、表面電位が正極性を有するマンガン賦活ケイ酸亜鉛系蛍光体及び該蛍光体を用いたプラズマディスプレイパネルを提供することである。
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.下記式(1)で表されるケイ酸亜鉛系蛍光体のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が、粒子内部に対し粒子表面が0.8〜1.1であり、かつ粒子表面のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が1.7〜2モルの粒子が全体の70%以上であることを特徴とするケイ酸亜鉛系蛍光体。
式(1) Zn(2-x-y-z)SiO4:Mnx,M1y,M2z
(式中、M1及びM2はアルカリ土類金属であり、0<x≦0.3、0≦y≦0.2、0≦z≦0.2である。)
2.粒子内部のMn/Znの平均モル比が0.075以上であることを特徴とする前記1項に記載のケイ酸亜鉛系蛍光体。
3.前記1または2項に記載のケイ酸亜鉛系蛍光体を用いた緑色の蛍光面を備えたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
本発明によれば、発光強度の向上と短残光を両立し、表面電位が正極性を有するマンガン賦活ケイ酸亜鉛系蛍光体及び該蛍光体を用いたプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
本発明者は鋭意検討の結果、前記式(1)で表されるケイ酸亜鉛系蛍光体のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が、粒子内部に対し粒子表面が0.8〜1.1であり、かつ粒子表面のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が1.7〜2モルの粒子が全体の70%以上であるケイ酸亜鉛系蛍光体により、発光強度の向上と短残光を両立し、表面電位が正極性を有するマンガン賦活ケイ酸亜鉛系蛍光体が得られることを見出した。
また、この蛍光体を用いたプラズマディスプレイパネルは残像が少なく画像のちらつきがなかった。
以下、本発明について詳細に説明する。
蛍光体の製造方法としては、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と賦活剤元素を含む化合物を所定量混合し、焼成して固体間反応を行う固相法と、蛍光体母体を構成する元素を含む溶液と賦活剤元素を含む溶液を混合して溶液中で蛍光体の前駆体の沈澱を生成させ、この前駆体を固液分離してから焼成する液相法があるが、本発明の蛍光体の製造方法は、液相法が好ましい。
液相法は、ゾルゲル法、晶析法等の一般的な方法を用いることができる。
ゾルゲル法による蛍光体前駆体の製造方法とは、一般的には母体、賦活剤または共賦活剤に用いる元素(金属)を、例えば、Si(OCH34やEu3+(CH3COCHCOCH33等の金属アルコキシドや金属錯体またはそれらの有機溶媒溶液に金属単体を加えて作るダブルアルコキシド(例えば、Al(OC493の2−ブタノール溶液に金属マグネシウムを加えて作るMg[Al(OC4932等)、金属ハロゲン化物、有機酸の金属塩、金属単体として必要量混合し、熱的または化学的に重縮合することによる製造方法を意味する。
晶析法による蛍光体前駆体の製造方法とは、冷却、蒸発、pH調節、濃縮等による物理的または化学的な環境の変化、あるいは化学反応によって混合系の状態に変化を生じる場合等において液相中から固相が析出してくることがあり、一般に晶析現象と言われているが、このような晶析現象発生の誘因となりえる物理的、化学的操作による製造方法を意味する。
本発明のケイ酸亜鉛系蛍光体は、前記式(1)で表されるケイ酸亜鉛系蛍光体のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が、粒子内部に対し粒子表面が0.8〜1.1であり、かつ粒子表面のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が1.7〜2モルの粒子が全体の70%以上であることが特徴である。
Siに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)は、粒子内部に対し粒子表面が0.85〜1.0がより好ましく、粒子表面のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が1.7〜2モルの粒子が全体の80%以上であることがより好ましい。
また、粒子内部のMn/Znの平均モル比が0.075以上であることが好ましいが、0.09〜0.13であることがより好ましい。
本発明において、Siに対するZnとMnの蛍光体表面の含有率は、X線光電子分光法によって確認を行った。
X線光電子分光法とは、試料に単色化されたX線を照射して表面から放出された光電子の運動エネルギーを分析する方法であり、試料表面の深さ数十Åに存在する元素組成を定性及び定量することができる。さらに各元素のスペクトルには隣接する元素の影響を受けて化学シフト、電荷移動遷移に基づくとされるサテライト、多重項結合による内殻順位の分裂等が出現することから、各元素の化学状態の情報が得られる。
本発明において、Siに対するZnとMnの蛍光体内部の含有率は、誘導結合プラズマ発光分光法によって確認を行った。
誘導結合プラズマ発光分光法とは、アルゴンプラズマの高温中に試料を導入し、発生する各元素に特有の光を測定する方法であり、その光の強度を試料中の元素の量に比例することから、試料の高感度定性・定量分析が可能である。プラズマが高温であるためにほとんどの元素の最適測定条件がほぼ同じで、多元素同時分析や多元素逐次分析が可能である。
(蛍光体組成)
本発明のケイ酸亜鉛系蛍光体は、マンガンと少なくとも一種類のアルカリ土類金属とが賦活されたものであり、下記式(1)で表すことができる。
式(1) Zn(2-x-y-z)SiO4:Mnx,M1y,M2z
式中、M1及びM2はアルカリ土類金属であり、0<x≦0.3、0≦y≦0.2、0≦z≦0.2である。
本発明のケイ酸亜鉛系蛍光体は、前記式(1)に示すように、アルカリ土類金属の中から一種類の元素を用いてもよいし、二種類の元素を用いてもよい。アルカリ土類金属は、いずれも好ましく使用することができるが、特に、マンガン賦活で緑色発光の蛍光体の場合にはマグネシウムを用いることが好ましい。マグネシウムを用いることにより、発光強度が向上し、残光時間を短くすることができるほか、発光色度も良好になる。
本発明において、マンガンの賦活量xは、上記のように、0<x≦0.3が好ましく、0.03≦x≦0.2とするのがより好ましい。賦活量xが0.3を超えると濃度消光等により、輝度が低下する等、所望の効果が得られない。
また、M1としてマグネシウムを用いた場合、その賦活量yは、上記の通り、0≦y≦0.2が好ましく、0.003≦y≦0.1とするのがより好ましい。賦活量yが0.2を超えると、マグネシウムを賦活しても、発光強度の向上や、残光時間の短縮化という効果が得られなくなる。
また、本発明のケイ酸亜鉛系蛍光体の平均粒径は0.01〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8μmであり、さらに好ましくは0.01〜0.5μmであり、最も好ましくは0.01〜0.3μmである。
ここで示す平均粒径とは、粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶の場合には粒子の綾の長さをいう。また、正常晶ではない場合、例えば、球状、棒状あるいは平板状の場合には、粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
また、本発明のケイ酸亜鉛系蛍光体は、粒径分布の変動係数が100%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。ここで、粒径分布の変動係数とは、下記式によって定義される値である。
粒径分布の変動係数(%)=粒子サイズの標準偏差/粒子サイズの平均値×100
《蛍光体の製造方法》
次に、本発明に係る蛍光体の製造方法について説明する。本発明に係る蛍光体の製造方法は、蛍光体の前駆体を形成する前駆体形成工程、前駆体形成工程により得られた前駆体を焼成して蛍光体粒子を得る焼成工程、焼成工程において得られた蛍光体粒子の表面にエッチング処理を施して不純物等を除去するエッチング工程を含む。
(前駆体形成工程)
まず、前駆体形成工程について説明する。本発明に係る前駆体形成工程においては、いかなる方法を使用してもよいが、液相法(液相合成法ともいう。)により前駆体を合成することが特に好ましい。前駆体とは、蛍光体の中間生成物であり、後述するように、焼成工程においてこの前駆体を所定の温度で焼成することにより蛍光体粒子を得ることができる。
液相法とは、液体の存在下または液中で前駆体を作製(合成)する方法である。液相法では、蛍光体原料を液相中で反応させるので、蛍光体を構成する元素イオン間での反応が行われ、化学量論的に高純度な蛍光体が得やすい。また、固相間反応と粉砕工程とを繰り返し行いながら蛍光体を製造する固相法と比して、粉砕工程を行わずとも微少な粒径の粒子を得ることができ、粉砕時にかかる応力による結晶中の格子欠陥を防ぎ、発光効率の低下を防止することができる。
なお、本実施形態における液相法には、冷却晶析を代表とする一般的な晶析法や、ゾルゲル法が用いられるが、特に反応晶析法を好ましく用いることができる。
ゾルゲル法による無機蛍光体の前駆体の製造方法とは、一般的には母体、賦活剤または共賦活剤として、例えばSi(OCH34や、Eu3+(CH3COCHCOCH33等の金属アルコキシド、Al(OC493の2−ブタノール溶液に金属マグネシウムを加えて作るMg[Al(OC4932等の金属錯体またはそれらの有機溶媒溶液に金属単体を加えて作るダブルアルコキシド、金属ハロゲン化物、有機酸の金属塩または金属単体を用いて、これらを必要量混合し、熱的または化学的に重縮合することによる製造方法を意味する。
反応晶析法による無機蛍光体の前駆体の製造方法とは、晶析現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液または原料ガスを、液相または気相中で混合させることによって前駆体を作製する方法のことである。ここで、晶析現象とは、冷却、蒸発、pH調節、濃縮等による物理的若しくは化学的な環境の変化、または化学反応により混合系の状態に変化を生じる場合等に気相中から固相が析出してくる現象のことをいい、反応晶析法においては、このような晶析現象の発生に起因する物理的、化学的操作による製造方法を意味する。
なお、反応晶析法を適用する際の溶媒は、反応原料が溶解すれば何れの溶液も適用可能であるが、過飽和度に対する制御の容易性の観点から、水が好ましい。また、複数の反応原料を用いる場合、原料を添加する順序は、同時であっても異なっていてもよく、活性に応じて適切な順序を適宜選択することが可能である。
さらに、前駆体の形成においては、より微小で粒径範囲の狭い蛍光体を製造するために、反応晶析法を含め、2液以上の原料溶液を保護コロイドの存在下で貧溶媒中に液中添加することが好ましい。また、蛍光体の種類により、反応中の温度、添加速度、攪拌速度、pH等、諸条件を調整することが好ましく、反応中に超音波を照射してもよい。粒径制御のために界面活性剤やポリマー等を添加してもよい。原料を添加し終ったら必要に応じて液を濃縮及び/または熟成することも好ましい態様の1つである。
保護コロイドは、微粒子化した前駆体粒子同士の凝集を防ぐために機能するもので、天然、人工を問わず各種高分子化合物を用いることができるが、中でもタンパク質を好ましく使用することができる。
タンパク質としては、例えば、ゼラチン、水溶性タンパク質、水溶性糖タンパク質が挙げられる。具体的には、アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質、遺伝子工学的に合成されたタンパク質等を挙げることができる。
また、ゼラチンとしては、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを挙げることができ、これらを併用してもよい。さらに、これらのゼラチンの加水分解物、酵素分解物を用いてもよい。
保護コロイドは、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。具体的には、例えば、上記ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマーを用いることができる。
なお、保護コロイドの平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000〜300,000がより好ましく、10,000〜30,000が特に好ましい。また、保護コロイドは、原料溶液の一つ以上に添加することができ、原料溶液の全てに添加してもよく、保護コロイドを添加する量や、反応液の添加速度により、前駆体の粒径を制御することができる。
また、焼成後の蛍光体粒子の粒径、粒径分布、発光特性等の蛍光体の諸特性は、前駆体の性状に大きく左右されるため、前駆体形成工程において、前駆体の粒径制御を行うことにより、前駆体を十分小さくすることが好ましい。また、前駆体を微粒子化すると、前駆体同士の凝集が起こりやすくなるため、保護コロイドを添加することにより前駆体同士の凝集を防いだ上で、前駆体を合成することは極めて有効であり、粒径制御が容易になる。なお、保護コロイドの存在下で反応を行う場合には、前駆体の粒径分布の制御や副塩等の不純物排除に十分配慮することが必要である。
上述した前駆体形成工程にて、上記のように、適宜、粒径制御等を行って、前駆体を合成した後、遠心分離等の方法で前駆体を回収し、その後に好ましくは洗浄、脱塩処理工程を行う。
脱塩処理工程は前駆体から副塩等の不純物を取り除くための工程であり、各種膜分離法、凝集沈降法、電気透析法、イオン交換樹脂を用いた方法、ヌーデル水洗法、限外濾過膜を用いた方法等を適用することができる。
なお、脱塩工程の時期は、前駆体形成終了直後に行ってもよい。また、原料の反応具合に応じて、複数回行われてもよい。
脱水、脱塩処理工程後、さらに乾燥工程を行う。乾燥工程は、洗浄後または脱塩後に行うと好ましく、真空乾燥、気流乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等、あらゆる方法で行うことができる。乾燥温度は特に限定されないが、使用した溶媒が気化する温度付近以上の温度であることが好ましく、乾燥温度が高過ぎると、乾燥と同時に焼成が施されて、後続の焼成処理が行われることなく蛍光体が得られてしまうため、具体的には50〜300℃が好ましい。より好ましくは100〜200℃である。
(焼成工程)
次に、焼成工程について説明する。本発明のケイ酸亜鉛系蛍光体は、その前駆体を焼成処理することにより得られる。ここで、焼成処理の条件(焼成条件)について説明する。
焼成工程では、いかなる方法を用いてもよく、焼成温度や時間は本発明の範囲内で適宜調整すればよい。例えば、前駆体をアルミナボートに充填し、所定のガス雰囲気中で所定の温度で焼成することで所望の蛍光体を得ることができる。
焼成装置(焼成容器)は現在知られているあらゆる装置を使用することができる。例えば箱型炉、坩堝炉、円柱管型、ボート型、ロータリーキルン等が好ましく用いられる。
また、焼成時には必要に応じて焼結防止剤を添加してもよい。添加する必要のない場合はもちろん添加しなくてもよい。焼結防止剤を添加する場合は、前駆体形成時にスラリーとして添加してもよく、また、粉状の焼結防止剤を乾燥済前駆体と混合して焼成してもよい。
焼結防止剤は特に限定されるものではなく、蛍光体の種類、焼成条件によって適宜選択される。例えば、蛍光体の焼成温度域によって800℃以下での焼成にはTiO2等の金属酸化物が、1000℃以下での焼成にはSiO2が、1700℃以下での焼成にはAl23が、それぞれ好ましく使用される。従って、本発明においては、Al23を使用することが好ましい。
さらに、必要に応じて焼成の後に還元処理または酸化処理等を施してもよい。また、焼成工程後、冷却処理、表面処理、分散処理等を施してもよく、分級してもよい。
冷却処理は、焼成工程で得られた焼成物を冷却する処理であり、焼成物を前記焼成装置に充填したまま冷却することが可能である。
冷却処理は特に限定されないが、公知の冷却方法より適宜選択することができ、例えば、放置により温度低下させる方法でも、冷却機を用いて温度制御しながら強制的に温度低下させる等の方法の何れであってもよい。
(表面処理)
本発明で製造される蛍光体は、種々の目的で吸着・被覆等の表面処理を施すことができる。どの時点で表面処理を施すかはその目的によって異なり、適宜適切に選択するとその効果がより顕著になる。例えば、分散処理工程前の何れかの時点でSi、Ti、Al、Zr、Zn、In、Snから選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物で蛍光体の表面を被覆すると、分散処理時における蛍光体の結晶性の低下を抑制でき、さらに蛍光体の表面欠陥に励起エネルギーが捕獲されることを防ぐことにより、発光強度の低下を抑制できる。また、分散処理工程後の何れかの時点で有機高分子化合物等により蛍光体の表面を被覆すると、耐候性等の特性が向上し、耐久性に優れた蛍光体を得ることができる。これら表面処理を施す際の被覆層の厚さや被覆率等は、適宜任意に制御することができる。
(分散処理)
次に、分散処理工程について説明する。本発明では、焼成工程において得られる蛍光体粒子に対して下記のような分散処理を施すことが好ましい。
分散処理方法としては、例えば、高速攪拌型のインペラー型の分散機、コロイドミル、ローラーミル、また、ボールミル、振動ボールミル、アトライタミル、遊星ボールミル、サンドミル等媒体メディアを装置内で運動させてその衝突(crush)及び剪断力の両方により微粒化するもの、またはカッターミル、ハンマーミル、ジェットミル等の乾式型分散機、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
これらの中でも、本発明では特に媒体(メディア)を使用する湿式メディア型分散機を使用することが好ましく、連続的に分散処理が可能な連続式湿式メディア型分散機を使用することがさらに好ましい。複数の連続式湿式メディア型分散機を直列に接続する態様等も適用できる。ここで言う「連続的に分散処理が可能」とは、少なくとも蛍光体及び分散媒体を、時間当たり一定の量比で途切れることなく分散機に供給しながら分散処理すると同時に、前記分散機内で製造された分散物を供給に押し出される形で途切れることなく分散機より吐出する形態を指す。蛍光体の製造方法で分散処理工程として媒体(メディア)を使用する湿式メディア型分散機を用いる場合、その分散室容器(ベッセル)は縦型でも横型でも適宜選択することが可能である。
(エッチング処理)
次にエッチングによる表面処理工程について説明する。
本発明の蛍光体には、電界発光型蛍光体のように、表面の凸部により発光強度を向上させるという役割がないため、蛍光体粒子を蛍光体層に密に充填するという観点及び蛍光体粒子に表面に対して均一にエッチング処理を施すという観点から、粒子表面における凸部が少ない、または凸部がない蛍光体粒子に対してエッチング処理を施すことが好ましい。
なお、蛍光体粒子の表面の不純物に応じて適宜選択することが可能であり、例えば、微粒子や、イオンスパッタ等により、表面を削る物理的な方法であってもよいが、エッチング液に蛍光体粒子を浸して表面の不純物等を溶解する等の化学的な方法が効果的である。この際、エッチング液が蛍光体粒子本体を侵食すると発光強度は低くなってしまうため、エッチングは注意深く行う必要がある。
エッチング液の種類は、不純物等に応じて決定され、酸性またはアルカリ性であってもよく、水溶液または有機溶剤であってもよい。この際、酸性の水溶液を用いた場合には、効果が顕著に現れるため、特に強酸が用いられることが好ましい。なお、強酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、過塩素酸等が適用可能であるが、塩酸、硝酸、硫酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。
また、エッチング後は、水洗処理等を行い、エッチング液を除去することが好ましい。
(プラズマディスプレイパネル)
最後に、上述した蛍光体を利用したPDPについて説明する。
一般的に、PDPは、電極の構造及び動作モードから、直流電圧を印加するDC型と、交流電圧を印加するAC型とに大別されるが、本実施形態では、図1に示すようなAC型のPDPを参照しながら、以下詳細について説明する。
本実施形態におけるPDP1は、図1に示すように、平板状に成型された前面板10と、前面板10と略同一形状であって、前面板10の一面と対向する位置に配置された背面板20とを備えて構成されている。これら基板10、20のうち、前面板10は、放電セルから発せられる可視光を透過し、基板上に各種の情報表示を行うようになっており、PDP1の表示画面として機能する。
この前面板10には、ソーダライムガラス、いわゆる青板ガラス等の可視光を透過する材料が好適に用いられ、その厚さは1〜8mmが好ましく、2mmであることがより好ましい。
また、前面板10には、前面板10の背面板20と対向する面に複数の表示電極11が、一定の間隔毎に配置されている。これら表示電極11には、幅広の帯状に形成された透明電極11aと、透明電極11aと同一形状に形成されたパス電極11bとが備えられ、透明電極11aの上面にパス電極11bが積層された構造となっている。
表示電極11は、平面視において隔壁31と直交しており、所定の放電ギャップを設けて対向する位置関係に配置された2つで一組になっている。
透明電極11aとしては、ネサ膜等の透明電極が適用可能であり、そのシート抵抗は、100Ω以下であることが好ましい。また、透明電極11aの幅寸法は10〜200μmが好ましい。
パス電極11bは、抵抗を下げるためのものであり、Cr/Cu/Crのスパッタリング等により形成される。またパス電極11bの幅寸法は、透明電極11aよりも小さく形成されており、5〜50μmが好ましい。
前面板10に配設された表示電極11は、その表面全体が誘電体層12により被覆されている。この誘電体層12は、低融点ガラス等の誘電物質から形成することが可能であり、厚さ寸法は、20〜30μmが好ましい。
誘電体層12の上面は、その表面全体が保護層13により被覆されている。この保護層13は、MgO膜が適用可能であり、その厚さ寸法は0.5〜50μmが好ましい。
一方、前面板10の一面と対向する位置に配置された背面板20は、前面板10と同様に、ソーダライムガラス、いわゆる青板ガラス等が適用可能であり、その厚さは1〜8mmが好ましく、2mm程度がより好ましい。
この背面板20の前面板10と対向する面には、複数のアドレス電極21が配設されている。これらアドレス電極21は、透明電極11a及びパス電極11bと同一の形状に形成されており、平面視において、上記した表示電極11と直交するように、一定の間隔毎に設けられている。また、アドレス電極21は、Ag厚膜電極等の金属電極が適用可能であり、その幅は100〜200μmが好ましい。
さらに、アドレス電極21は、その表面全体が誘電体層22により被覆されており、この誘電体層22は、低融点ガラス等の誘電物質から形成することが可能であり、その厚さは20〜30μmが好ましい。
誘電体層22の上面には、背面板20に対して垂直方向に突出した形状の隔壁30が配設されている。これら隔壁30は、長尺に形成されており、アドレス電極21の両側であって、隣接する隔壁30の長手方向が互いに平行となるように配置されている。また、隔壁30により、所定形状に区画された複数の微少放電空間(以下、放電セル31)は、平面視において、ストライプ状に形成されている。
隔壁30は、低融点ガラス等の誘電物質から形成することが可能であり、その幅は10〜500μmが好ましく、100μm程度がより好ましい。また、隔壁30の高さは、通常10〜100μmであり、50μm程度が好ましい。
本実施形態における放電セル31は、前面板10及び背面板20が水平に配置されたときに、隔壁30が所定の間隔毎に平行に、すなわちストライプ状に配置されていることから、ストライプ型を呼ばれている。
なお、放電セルの構造は、このようなストライプ型のものに限定されるものではなく、平面視において格子状に設けた格子型の放電セルであってもよいし、互いに対象な屈曲した一組の隔壁によりハニカム状(八角形状)の放電セルであってもよい。
各放電セル31R、31G、31Bには、本発明において製造された赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光する蛍光体から構成された蛍光体層35R、35G、35Bのいずれかが一定の順序で設けられている。また、各放電セル31R、31G、31Bの内部中空には、放電ガスが封入されており、平面視において、表示電極11と、アドレス電極21とが交差する点が少なくとも一つ設けられている。さらに、各蛍光体層35R、35G、35Bの厚さは特に限定されず5〜50μmが好ましい。
各蛍光体層35R、35G、35Bは、隔壁の側面や、底面に形成されている。これら蛍光体層35R、35G、35Bは、まず始めに、上記した蛍光体をバインダ、溶剤、分散剤等の混合物に分散させることで蛍光体ペーストが作製される。そして、これら蛍光体ペーストが適度な粘度に調整され、対応する各放電セル31R、31G、31Bに塗布または充填されて、最後に乾燥または焼成されることにより形成されている。
なお、蛍光体ペーストの調整は、従来公知の方法により行うことが可能である。また、蛍光体ペーストを放電セル31R、31G、31Bに塗布または充填する方法としては、スクリーン印刷法、フォトレジストフィルム法、インクジェット法等種々の方法が適用可能である。
上記した構成からなるPDP1は、表示に際して、アドレス電極21と、一組の表示電極11、11のうちいずれか一方の表示電極11との間で選択的にトリガー放電を行わせることにより、表示を行う放電セルが選択される。その後、選択された放電セルの内部において、一組の表示電極11、11の間でサステイン放電を行わせることにより、放電ガスに起因する紫外線を生じさせ、蛍光体層35R、35G、35Bから可視光を生じさせるようになっている。
以上より、本発明に係るPDP1は、上述した蛍光体を用いて製造された放電セル31を有するので、放電セル31の発光強度の向上を図ることが可能となり、これによって、PDP1の発光強度の向上を図ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
実施例
(液相法による蛍光体の作製)
組成式:Zn2SiO4:Mn2+
二酸化ケイ素45gを含むコロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製、PL−3)とアンモニア水(28%)207gを純水に混合して液量を1500mlに調整したものをA液とした。同時に、硝酸亜鉛6水和物(関東化学株式会社製、純度99.0%)402gと硝酸マンガン6水和物(関東化学株式会社製、純度98.0%)34gを純水に溶解して液量を1500mlとしたものをB液とした。
A液とB液を50℃に保温した後、図2に示すY字形反応装置にローラーポンプを使って、混合部のレイノルズ数が4000になる添加速度で供給した。
反応により得られた沈殿物を含む水分散体を、遠心分離装置を用いて脱塩及び脱水を行った。遠心分離装置の遠心力Gの値を300として、スラリー供給用ホッパーより前駆体の凝集体スラリーを供給した。供給終了後、30秒間脱水を行い、引き続き洗浄水供給用ノズルより洗浄水を供給してケーキ洗浄を開始した。濾液の電気伝導度をモニターし、伝導度が20mS/cm以下になったところで洗浄水の供給を止め、脱塩を終了した。その後、1分以内に遠心力Gの値を600として脱水を行ない、脱水済み前駆体1を得た。
表1に示すようにアンモニア水、硝酸亜鉛6水和物、硝酸マンガン6水和物の量を変えた以外は、脱水済み前駆体1と同様にして脱水済み前駆体2〜15を得た。
得られた脱水済み前駆体1〜15を、箱型乾燥炉を用いて105℃で、含水率が0.5%になるまで乾燥を行い、それぞれ乾燥済み前駆体1〜15を得た。
次に得られた乾燥済み前駆体を焼成炉内を窒素100%の雰囲気に置換した後、1300℃で3時間焼成することにより蛍光体1〜15を得た。
続いて、得られた蛍光体1〜15に、それぞれ等量の純水を加え、ポットミルによる解砕及び分散処理を行った。その後、微小粒子及び巨大粒子を除去するために、篩による分級処理を行い、蛍光体分散溶液を得た。
次に、得られた蛍光体分散溶液を40℃に保温しながら、蛍光体1g当たり0.002モルの塩酸を添加して20分間攪拌し、純水による洗浄処理を行った後、100℃の温度で12時間乾燥して、粉末状の蛍光体1〜15を得た。
Figure 2007056092
(固相法による蛍光体の作製)
組成式:Zn2SiO4:Mn2+
蛍光体原料として、酸化ケイ素、酸化亜鉛、炭酸マンガンを質量比で表2になるように秤量し、ボールミルで十分に混合した。その後、焼成炉内を窒素100%の雰囲気に置換した後、1400℃で3時間焼成することにより蛍光体16〜20を得た。
焼成して得られた蛍光体に等量の純水を加えてポットミルを用いて解砕及び分散を行った。その後、微小粒子及び巨大粒子を除くため、篩にかけて分級を行い、蛍光体分散溶液を得た。
次に、得られた蛍光体分散液を反応容器中で40℃に保温し、2N塩酸で酸処理を行った。添加終了後、20分間攪拌した後、純水にて十分に洗浄を行った後、100℃で12時間乾燥を行い、粉末状の蛍光体16〜20を得た。
得られた蛍光体1〜20について、X線光電子分光法及び誘導結合プラズマ発光分光法を用いて組成の定量を行った。X線光電子分光法はESCALab200R(Scientific社製)、誘導結合プラズマ発光分光法はSPS−4000(セイコー電子工業社製)を用いて測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
Figure 2007056092
(蛍光体の評価)
得られた蛍光体1〜20について、下記の評価を行った。評価の結果を表3に示す。
〈発光強度〉
各蛍光体に対して0.1〜1.5Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて真空紫外線を照射し、得られた緑色光を検出器(MCPD−3000:大塚電子株式会社製)を用いて測定した。発光強度は蛍光体1の発光強度を100とする相対値で表す。
〈残光時間〉
各蛍光体の残光時間はPTI−3000(大塚電子株式会社製)を用いて1/10残光時間を測定した。
〈帯電量〉
各蛍光体の帯電量はブローオフ測定法を用いて測定した。この評価手段では、蛍光体のみを通過させ得る径を備えた開口を一部に有する金網(メッシュ)を張った金属容器中に、キャリアに蛍光体が静電気的に付着している分散液を入れた後、乾燥空気等の気体を吹き付けて、トナーとキャリアを攪拌しつつ、蛍光体のみを金属容器外へ吹き飛ばしている。これにより容器全体として蛍光体の電荷量と同じ電荷量で逆極性を有する電荷が検出できる。この帯電量は、数値が正極性になることによって、他の色の蛍光体(例えば、赤色蛍光体として(Y,Gd)BO3:Eu、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Eu)の帯電量に近づくことになり、プラズマディスプレイパネルに適用したときの放電バラツキが低減され、表示品質の向上、消費電力の低減が可能になる。
Figure 2007056092
表3から明らかなように、本発明の蛍光体において、Siに対するZnとMnのモル数の和で、粒子表面/粒子内部の平均モル数比が0.8以上のものは発光強度が高く、かつ粒子表面のZnとMnのモル数の和が1.7〜2モルの粒子が全粒子に対して70%以上のものは帯電量が正極性を示す。
さらに、粒子内部のMn/Zn比が0.075以上のものは残光値が短く、プラズマディスプレイに適用した場合に、残像が少なく画像のちらつきがなくなる。
プラズマディスプレイパネルの構造を示す斜視図である。 Y字形反応装置の概略図である。
符号の説明
1 プラズマディスプレイパネル(PDP)
10 前面板
20 背面板
30 隔壁
11 表示電極
21 アドレス電極
31 放電セル
P ポンプ
M 攪拌モーター

Claims (3)

  1. 下記式(1)で表されるケイ酸亜鉛系蛍光体のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が、粒子内部に対し粒子表面が0.8〜1.1であり、かつ粒子表面のSiに対するZnとMnの和のモル比((Zn+Mn)/Si)が1.7〜2モルの粒子が全体の70%以上であることを特徴とするケイ酸亜鉛系蛍光体。
    式(1) Zn(2-x-y-z)SiO4:Mnx,M1y,M2z
    (式中、M1及びM2はアルカリ土類金属であり、0<x≦0.3、0≦y≦0.2、0≦z≦0.2である。)
  2. 粒子内部のMn/Znの平均モル比が0.075以上であることを特徴とする請求項1に記載のケイ酸亜鉛系蛍光体。
  3. 請求項1または2に記載のケイ酸亜鉛系蛍光体を用いた緑色の蛍光面を備えたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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