JP3719237B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
例えば、テレビ受像機などの画像表示に用いられるプラズマディスプレイパネル表示装置に関し、特に、紫外線により励起されて発光する蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する)は、電極を備えた2枚のガラス基板と、基板間に設けられた隔壁によって形成される多数の微少放電空間(以下、セルという)とを有している。各セルを囲む隔壁の側面と底面(一方のガラス基板)とには、赤(R)、緑(G)、青(B)等に発光する蛍光体層が設けられている。セルは、隔壁により所定形状に形成され、基板上に規則正しく配置されて、Xe、Ne等を主成分とする放電ガスが封入されている。このセルは、放電の拡がりを一定領域に抑えるものであり、電極間に電圧を印加して放電させると、放電ガスに起因する紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて可視光を発光する。セルあるいはセルの一部を選択的に放電させることにより所望の情報をフルカラーで表示することができる。
【0003】
従来、このようなセルの構造としては、隔壁を平面視においてストライプ状に形成したストライプ型のものが主流であったが、近年では、例えば、特開2001−283734号公報に開示されるように、基板上に隔壁を平面視において格子状に形成した格子型のものが提案されている。ストライプ型では、セルの両側にある隔壁側面と底面との合計3面にしか蛍光体層を設けることができなかったが、格子型にすることにより、セルを囲む4つの隔壁側面と底面との合計5面に蛍光体層を設けることができる。このため、セルの内側に面する蛍光体層面積が増えるので発光に関与する蛍光体量が増え、PDPの輝度が向上する。
現在、蛍光体層の厚さは20〜30μm程度である。蛍光体層を構成する蛍光体粒子の粒径は1μmよりも大きなものが主として使用され、平均粒径は1.3〜7μm程度となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、現在、PDPの性能向上のために、輝度向上、画像表示の高精細化、発光ムラの解消等が求められている。
そこで、輝度を向上させるには、まず、蛍光体層を厚くして発光に寄与する蛍光体量を増加させることが考えられる。しかし、限られた空間のセル内で、蛍光体層を厚くすると、その分だけ放電空間の容積が狭められる。これにより、放電時の紫外線発生量が減少し、かえって輝度が低下する恐れがある。特に、上記した格子型のセルでは、ストライプ型のものと較べるとセルの放電空間が小さく、蛍光体層を一定の厚さ以上にすることができない。
【0005】
次に、画像表示の高精細化にはセルを微細化することが考えられる。しかし、微細化したセルに従来と同じ厚さの蛍光体層を設けると、上記と同様に十分な放電空間を確保することができず輝度が低下する。このため、蛍光体層の薄膜化が求められるが、蛍光体層を薄膜化すると、蛍光体量が減少してさらに輝度が低下する。そこで、輝度の低下を補うために、プラズマ放電を維持するために印加する電圧を高くすることも考えられるが、これは消費電力が嵩み経済的ではない。
【0006】
そして、PDPの発光ムラをなくすためには、蛍光体層を緻密で均一に形成し、且つ、各セル毎に均質に形成する必要がある。しかし、従来、蛍光体は一般に固相法で製造されており、この固相法で得られる蛍光体は粒径にバラツキのあるものになっていた。粒径にバラツキがあると、蛍光体層の内部に蛍光体粒子を効率よく充填することができず、層の厚さ方向に不定形状の空隙が生じる他、層の表面にも凹凸が生じる恐れがあった。このため、蛍光体層が不均一なものとなり、セル毎にバラツキが生じ、発光ムラの原因となる可能性が高かった。
本発明の課題は、蛍光体層を薄膜化しても高輝度を達成し、発光ムラなく、情報等を美しく表示できるプラズマディスプレイパネルを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、所定間隔をあけて対向配置された2つの基板と、基板間に設けられて基板間の空間を複数に区画する隔壁と、前記隔壁と基板とに囲まれて形成された放電セルと、前記放電セルの内側に面する隔壁表面と一方の基板表面とを覆う蛍光体層とを備えたプラズマディスプレイパネルにおいて、前記蛍光体層の厚さは5〜20μmであり、前記蛍光体層を構成する蛍光体の平均粒径は0.1〜0.3μmであり、当該蛍光体は球状又は球状粒子が複数結合した形状を有するとともに、その表面又は内部に空孔を有し、前記放電セルの静電容量が6〜30μF/m2であることを特徴とする。
【0008】
ここで、蛍光体の平均粒径は、電子顕微鏡(例えば、日立製作所(株)製、S−900等)を用いて、蛍光体層中の蛍光体粒子300個の平均粒径を測定した平均値をいう。また、ここでいう粒径とは、蛍光体粒子が立方体あるいは八面体の所謂正常晶の場合には、蛍光体粒子の稜の長さを言う。正常晶でない場合、例えば蛍光体粒子が球状、棒状あるいは平板状粒子の場合には、蛍光体粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を言う。
また、ここで、蛍光体層の厚さは、任意の6点の平均値であり、例えば、電子顕微鏡(日立製作所(株)製S−900)を用いて、放電セルの底面又は側面から蛍光体層の上面までの距離を測定した値により求めることができる。なお、放電セルの底面とは、いずれか一方の対向面をいい、放電セルの側面とは、放電セルの内側に面する隔壁表面をいう。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、平均粒径が0.02〜1μm、特に0.1〜0.3μmの極めて微粒子の蛍光体から蛍光体層を構成しているので、従来の平均粒径が1.3〜7μmの蛍光体から蛍光体層を構成する場合と比較すると、同じ厚さの蛍光体層であっても層内に蛍光体を効率よく充填できる。したがって、発光に関与する蛍光体の量が増加し、PDPの輝度を確実に向上することができる。
また、従来の蛍光体層は、放電空間を確保した上で一定の輝度を達成するためには、20〜30μmの厚さにしなければならなかった。しかし、本発明では、上記微粒子の蛍光体を用いて蛍光体層を構成することにより、5〜20μmの範囲で薄膜化が可能である。その結果、放電空間を拡大し、蛍光体を発光させる紫外線の発生量を増加することができる。また、上記のように従来と同じ厚さであっても蛍光体層に含まれる蛍光体の量が増加する。このため、蛍光体層を薄膜化しても、製造したPDPを高輝度にすることができる。
【0010】
また、蛍光体の平均粒径が0.02〜1μm、特に0.1〜0.3μmであるので、層の内部に不定形状の空隙ができたとしても、従来の平均粒径が1.3〜7μmのものと比べると空隙が小さくより均一に近いものとなり、層の表面の凹凸も小さくすることができる。このため、蛍光体層を緻密で均一にすることができ、セル毎のバラツキを防ぐことができる。このため、発光させたときに、セル毎の発光量を等しくすることができ、プラズマディスプレイパネル全面で均一に発光させることができる。
また、蛍光体層の表面の凹凸が小さく、表面の平滑性が高いので、従来のように蛍光体層からの発光を表面の凹凸により乱反射させて光を損失させない。したがって、輝度の低下や発光ムラを防ぎ、発光を効率的に表示に用いることができる。
また、静電容量が6μF/m2〜30μF/m2の範囲であるので、電極間に電圧を印加したときに、放電セル内で良好に放電させることができ、異常放電や発光ムラ等を防ぐことができる。
【0011】
また、蛍光体は上記したように微粒子であり、かつ、その表面又は内部に空孔を有するので、蛍光体粒子の帯電性及び比誘電率が低下する。一般に、蛍光体層を薄く、且つ、蛍光体を層内に効率的に充填すると、蛍光体層の静電容量は増加する傾向にある。例えば、電極間に一定周期毎に極性の反転する交流電圧を印加して放電させる場合には、電極周囲の基板面には印加された電圧とは逆極性の壁電圧が生じる。この壁電圧の大きさは、静電容量の増加に伴って大きくなる。したがって、放電を維持するためには、この壁電圧の分だけ高い電圧を印加しなければならず、消費電力が嵩む原因となっていた。しかし、本発明では、蛍光体粒子の帯電性及び比誘電率が低下することにより、静電容量の増加を防ぐことができる。よって、薄膜化しても放電を維持するために印加する電圧を従来と同等もしくは低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記蛍光体は、蛍光体原料を液相中で反応させる液相合成法により製造されたことを特徴とする。
【0017】
ここで、液相合成法とは、反応晶析法、共沈法、ゾルゲル法などの液相中での反応方法を称して表している。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、蛍光体原料を液相中で反応させる液相合成法により蛍光体を製造するので、反応は蛍光体を構成する元素イオン間で行われる。このため、化学量論的に高純度な蛍光体が得やすい。一方、従来の固相合成法では、固体間反応であるために、反応しない余剰の不純物や反応によって生ずる副塩等が残留することが往々にして起こり、化学量論的に高純度な蛍光体を得にくい。したがって、液相合成法により化学量論的に高純度な蛍光体を得ることで、発光効率と収率を高めることができる。
【0019】
また、固相合成法では、反応時に固体同士を粉砕しながら機械的に攪拌するため、得られた蛍光体は多面体となる場合が多く、粒径分布も広くなる。特に、焼成時に多量の融剤を用いる場合には、蛍光体の粒径分布は正規分布に近いものとなる。このように粒径分布の広い蛍光体を用いて蛍光体層を形成すると、上記したように、層の厚さ方向において不均一であり、表面に凹凸が生じる可能性が高い。このため、形成された蛍光体層は不均質なものとなり易い。
【0020】
一方、液相合成法では、元素イオンを液体中で反応させるので、蛍光体の平均粒径や粒子形状、粒子径分布、発光特性等をより精密に制御することができ、本発明の平均粒径0.02〜1μmの粒子を狭い粒径分布で得ることができる。
このため、従来の固相合成法により製造された微粒子の蛍光体を用いる場合と比べて、液相合成法により製造された微粒子の蛍光体を用いることにより、蛍光体層が薄い場合であっても発光効率の高い、輝度の優れたプラズマディスプレイパネルを製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明のプラズマディスプレイパネルに係る実施の形態について詳細に説明する。
本発明のプラズマディスプレイは、電極が設けられた2枚の基板と、基板間に設けられた隔壁によって区画される多数の微少放電空間(以下、放電セルという)とを有している。放電セルには蛍光体層が設けられている。PDPは、この放電セル内でプラズマ放電を発生させ、それにより蛍光体から可視光を発光させる。そして、その可視光を表示側に配置される基板を透過させて、ディスプレイ画面上に種々の情報表示を行う。本発明ではこの蛍光体層の厚さを5〜20μmとし、蛍光体層を構成する蛍光体の平均粒径を0.02〜1μmとした。
【0022】
まず、本発明におけるPDPの構成例を図1〜図4を参照して説明する。
PDPは、電極の構造および動作モードから、直流電圧を印加するDC型と、交流電圧を印加するAC型とに大別できる。図1にはAC型のPDP1を示したが、本発明のPDPはこれに限定されるものではない。
【0023】
図1に示す2枚の基板10、20のうち、一方は表示側に配置される前面板10であり、他方は背面側に配置される背面板20である。前面板10と背面板20は、この基板10、20間に設けられる隔壁30によって所定間隔をあけて対向配置されている。
前面板10には、複数の表示電極11(透明電極11a,バス電極11b)、誘電体層12、保護層13等が備えられている。背面板20には、複数のアドレス電極21、誘電体層22、隔壁30等が備えられている。
前面板10及び背面板20は、例えば、ソーダライムガラス等から形成することができる。
【0024】
前面板10に設けられた表示電極11は帯状に形成されており、所定間隔をあけて互いに平行に、且つ、規則的に配置されている。これらの表示電極11は、図2に示すように、前面板10の端10aから端10bまで連続して横切るように設けられる。各表示電極11はそれぞれパネル駆動回路15に接続されており、所望の電極11に電圧を印加することができる。なお、表示電極11は所定の放電ギャップをあけて対向配置された2つで一組となっている。この一組の表示電極11、11間で、プラズマ放電を行うことにより、蛍光体層35から可視光を生じさせることができる。
【0025】
背面板20に設けられたアドレス電極21についても帯状に形成されており、所定間隔毎に設けられている。アドレス電極21の両側には前記隔壁30が設けられている。アドレス電極21は背面板20の中央部24で、分割されており、それぞれがパネル駆動回路25a、25bに接続されている。このパネル駆動回路25により、所望の電極21に電圧を印加することができる。
【0026】
表示電極11とアドレス電極21は、図2に示すように、平面視において互いに直交し、マトリックス状になっている。一組の表示電極11とアドレス電極21が交差する点で選択的に放電を行わせることにより、所望の情報が表示可能となっている。
【0027】
これらの電極11、21は、次のような材料から構成される。表示電極11については、前面板10に設けるものであり、蛍光体からの発光を透過する必要があることから、ITO、SnO2、等の導電性金属酸化物からなる幅広の透明電極11aの上に幅細のCr−Cu−Cr電極(バス電極11b)を積層させた組み合わせ電極を用いることが好ましい。また、表示電極11をこのような構成とすることは、放電セル31内の放電面積を広く確保する上でも好ましい。
アドレス電極21は、Agペースト又はAlペーストから構成される。
【0028】
図1に示すように、前面板10に設けた誘電体層12は、前面板10の表示電極11が配された表面全体を覆っている。この誘電体層12は誘電物質からなり、一般に、鉛系低融点ガラスから形成されることが多い。この他に、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等で誘電体層12を形成しても良い。
【0029】
この誘電体層12の表面は保護層13により全体的に覆われている。保護層13は、酸化マグネシウム(MgO)からなる薄層が好ましい。
【0030】
背面板20に設けられた誘電体層22は、背面板20のアドレス電極21が配された表面全体を覆っている。この誘電体層22についても、上記と同様に、鉛系低融点ガラスや、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等から構成することができる。さらに、これらの誘電物質にTiO2粒子を混合し、可視光反射層としての働きも兼ねるようにすると好ましい。可視光反射層としても機能させると、蛍光体層35からの背面板20側に発光しても、これを前面板10側に反射して、前面板10を透過する光を増やし、輝度を向上させることができる。
【0031】
上記の誘電体層22の上面には隔壁30が背面板20側から前面板10側に突出するように設けられている。隔壁30は基板10、20間の空間を所定形状に複数区画して、前述したように放電セル31を形成している。隔壁30は、ガラス材料等の誘電物質から形成される。
【0032】
放電セル31は、上記のように隔壁30と基板10、20とによって囲まれた放電空間であり、放電セル31の内側に面する隔壁30の側面30aと放電セルの底面31aには、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光する蛍光体層35がR、G、Bの順に規則正しく設けられる。放電セル31内部には、希ガスを主体とする放電ガスが封入されている。放電ガスとしては、特にNeを主放電ガスとし、これに放電により紫外線を発生するXeを混合した混合ガスを用いると好ましい。
【0033】
図1に示した放電セル31は、いわゆるストライプ型のものであり、隔壁30が前記したアドレス電極21の両側に設けられ、この隔壁30により平行な溝状に形成されたものである。表示電極11はセルを横切り、平面視においてアドレス電極21と表示電極11の交点が一つのセル内に多数構成され、セル内の一つ一つの交点が最小の発光単位となる。近接するR、G、Bの3つの発光単位で1画素となる。
【0034】
本発明に係るPDPのセル構造はこれに限定されるものではなく、例えば図3に示すように格子状に隔壁40を設けて略矩形状の放電セル41を形成した格子型のものでもよい。この場合、一つの放電セル41の内側に、表示電極とアドレス電極の交点が少なくとも一つ設けられる。
【0035】
また、セル構造は、図4に示すように隔壁50をハニカム状に設けたハニカム型のものであってもよい。ハニカム型のセル構造の場合には、略6角形状に隔壁で区切られた繰り返し構造を一つの放電セル51とし、格子型と同様に一つの放電セル51の内側に、表示電極とアドレス電極の交点が少なくとも一つ設けられる。
なお、上記で格子状、ハニカム状というのは、それぞれ背面板の基板面を水平に配置したときの平面視における形状を指す。
【0036】
放電セルの静電容量は、0.5〜30μF/m2であり、好ましくは、0.5〜10μF/m2であり、更に好ましくは1〜7μF/m2である。
静電容量が0.5μF/m2未満又は30μF/m2より大きくなると、良好な発光が得られず、好ましくない。
なお、静電容量はキャパシタメータ等により測定することができる。
【0037】
次に、蛍光体層について説明する。
蛍光体層の厚さは、上記した通り、5〜20μmである。
ここでいう層の厚さとは、任意の6点の平均値を指し、例えば、電子顕微鏡(日立製作所(株)製S−900)を用いて、放電セルの底面又は側面から蛍光体層の上面までの距離を測定した値により求めることができる。
【0038】
蛍光体層を構成する蛍光体の平均粒径は、上述したように、0.02〜1μmであるが、より好ましくは0.05〜0.7μmであり、更に好ましくは0.1〜0.3μmである。
ここで、蛍光体の平均粒径は、電子顕微鏡(例えば、日立製作所(株)製、S−900等)を用いて、蛍光体層中の蛍光体粒子300個の平均粒径を測定した平均値をいう。また、ここでいう粒径とは、蛍光体粒子が立方体あるいは八面体の所謂正常晶の場合には、蛍光体粒子の稜の長さを言う。正常晶でない場合、例えば蛍光体粒子が球状、棒状あるいは平板状粒子の場合には、蛍光体粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を言う。
【0039】
本発明では、平均粒径が0.02〜1μmの極めて微粒子の蛍光体から蛍光体層を構成しているので、従来の平均粒径が1.3〜7μmの蛍光体から蛍光体層を構成する場合と比較すると、同じ厚さの蛍光体層であっても層内に蛍光体を効率よく充填できる。したがって、発光に関与する蛍光体の量が増加し、PDPの輝度を確実に向上することができる。
また、従来の蛍光体層は、放電空間を確保した上で一定の輝度を達成するためには、20〜30μmの厚さにしなければならなかった。しかし、本発明では、上記微粒子の蛍光体を用いて蛍光体層を構成することにより、5〜20μmの範囲で薄膜化が可能である。その結果、放電空間を拡大し、蛍光体を発光させる紫外線の発生量を増加することができる。また、上記のように従来と同じ厚さであっても蛍光体層に含まれる蛍光体の量が増加する。このため、蛍光体層を薄膜化しても、製造したPDPを高輝度にすることができる。
【0040】
さらに、本発明の蛍光体は平均粒径が0.02〜1μmであるので、蛍光体層の内部に不定形状の空隙ができたとしても、空隙が小さくより均一に近いものとなり、層の表面の凹凸も小さくすることができる。このため、蛍光体層を緻密で均一にすることができ、セル毎のバラツキを防ぐことができる。よって、発光させたときに、セル毎の発光量が異なりプラズマディスプレイパネル全面で均一に発光させることができる。
また、蛍光体層の表面の凹凸が小さく、表面の平滑性が高いので、従来のように蛍光体層からの発光を表面の凹凸により乱反射させて光を損失させない。したがって、輝度の低下や発光ムラを防ぎ、効率的に発光させることができる。
【0041】
蛍光体の粒径分布は狭い方が好ましい。具体的には、粒径分布の変動係数が100%以下であることが好ましく、70%以下であることが更に好ましい。ここで、粒径分布の変動係数(粒径分布の広さ)とは、下記式(1)によって定義される値である。粒径分布の狭い蛍光体を用いることによって、蛍光体層をより均質に形成することができる。
【数1】
粒径分布の広さ(変動係数)(%)
=(粒子サイズ分布の標準偏差/粒子サイズの平均値)×100 (1)
【0042】
また、本発明の蛍光体は、球状又は球状粒子が複数結合した形状を有すると好ましい。また、表面又は内部に空孔が設けられていてもよく、多孔質であるとより好ましい。蛍光体の空孔率は、5〜90%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜80%であり、更に好ましくは20〜70%である。
なお、空孔率は、蛍光体粒子の体積に対して空孔の占める体積率で定義される値である。
【0043】
本発明に係る蛍光体は上記したように微粒子であり、かつ、その表面又は内部に空孔を有するので、蛍光体粒子の帯電性及び比誘電率が低下する。一般に、蛍光体層を薄く、且つ、蛍光体を層内に効率的に充填すると、蛍光体層の静電容量は増加する傾向にある。例えば、電極間に一定周期毎に極性の反転する交流電圧を印加し、一方の基板側で放電させる場合には、基板面には印加された電圧とは逆極性の壁電圧が生じる。この壁電圧の大きさは、静電容量の増加に伴って大きくなる。したがって、放電を維持するためには、この壁電圧の分だけ高い電圧を印加しなければならず、消費電力が嵩む原因となっていた。しかし、本発明では、蛍光体粒子の帯電性及び比誘電率が低下することにより、静電容量の増加を防ぐことができる。よって、薄膜化しても放電を維持するために印加する電圧を従来と同等もしくは低減することができる。
【0044】
蛍光体層を構成する蛍光体は、従来から公知の固相合成法ではなく、液相合成法によって製造されたものが好ましい。
本発明でいう液相合成法とは、蛍光体の原料となる元素を含む化合物を液相中で反応させる方法で、具体的には蛍光体前駆体の母核を構成する元素を含む溶液と賦活剤元素を含む溶液を共に混合して蛍光体前駆体を合成する方法であり、反応晶析法、共沈法、ゾルゲル法など液相中での反応方法を称して表している。本発明ではこれらの方法を適宜選択して蛍光体を製造することが可能である。
【0045】
液相合成法では、蛍光体原料を液相中で反応させるので、反応は蛍光体を構成する元素イオン間で行われ、化学量論的に高純度な蛍光体が得やすい。一方、従来の固相合成法では、固相間反応であるために、反応しない余剰の不純物や反応によって生ずる副塩等が残留することが往々にして起こり、化学量論的に高純度な蛍光体を得にくい。したがって、液相合成法により化学量論的に高純度な蛍光体を得ることで、発光効率と収率を高めることができる。
【0046】
また、固相合成法では、反応時に固体同士を粉砕しながら機械的に攪拌するため、得られた蛍光体は多面体となる場合が多く、粒径分布も広くなりやすい。一方、液相合成法では、元素イオンを液体中で反応させるので、蛍光体の平均粒径や粒子形状、粒径分布、発光特性等をより精密に制御することができ、本発明の粒径0.02〜1μmの粒子を狭い粒径分布で得ることができる。
【0047】
液相合成法を利用して蛍光体を製造する工程は、蛍光体原料を混合して蛍光体前駆体を形成する蛍光体前駆体形成工程と、蛍光体前駆体を乾燥する乾燥工程とを有している。乾燥工程後、必要に応じて焼成工程を行う。本発明に係る蛍光体を製造する際には、基本的には乾燥した蛍光体前駆体を焼成することにより、蛍光体前駆体粒子の表面が金属で被覆された蛍光体粒子を得ている。しかし、蛍光体の組成や反応条件等によっては焼成を行わなくとも、乾燥工程において蛍光体前駆体から蛍光体が得られる場合がある。その場合には焼成工程を省いてもよい。焼成工程後、得られた焼成物を冷却する冷却工程や、蛍光体の表面処理を行う工程等を行ってもよい。
なお、蛍光体前駆体とは製造される蛍光体の中間体化合物であり、上記したように乾燥、焼成等の処理により蛍光体となる化合物である。
【0048】
まず、前駆体形成工程について説明する。前駆体形成工程では、上述したように、反応晶析法、共沈法、ゾルゲル法等どのような液相合成法を適用してもよい。例えば、PDPで一般的に使用されている赤色発光蛍光体((Y,Gd)BO3:Eu3+)、青色発光蛍光体(BaMgAl10O17:Eu2+)については、後述する保護コロイドの存在下で反応晶析法により蛍光体前駆体を形成すると特に好ましい。このように製造することにより、微粒子でより粒径分布が狭く、発光強度のより高い蛍光体を得ることができる。
【0049】
また、緑色発光蛍光体(Zn2SiO4:Mn2+)については、シリカ等のケイ素化合物を蛍光体前駆体の母核とし、共沈法により形成すると好ましい。このように製造することにより、微粒子でかつ発光強度に優れ、残光時間の短いものを得ることができる。以下、反応晶析法及び共沈法について説明する。
【0050】
反応晶析法とは、晶析現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液を混合することによって蛍光体前駆体を合成する方法をいう。晶析現象とは、冷却、蒸発、pH調節、濃縮等による物理的又は化学的な環境の変化、或は化学反応によって混合系の状態に変化を生じる場合等に液相中から固相が析出してくる現象を指す。
本発明における反応晶析法による蛍光体前駆体の製造方法は、上記の様な晶析現象発生の誘因となりえる物理的、化学的操作による製造方法を意味する。
【0051】
反応晶析法を適用する際の溶媒は反応原料が溶解すれば何を用いてもよいが、過飽和度制御のしやすさの観点から水が好ましい。複数の反応原料を用いる場合は、原料の添加順序は同時でも異なってもよく、活性によって適切な順序を適宜組み立てることができる。
【0052】
共沈法とは、共沈現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液を混合し、さらに沈殿剤を添加することによって、蛍光体前駆体の母核の周囲に賦活剤となる金属元素等が析出させた状態で、蛍光体前駆体を合成する方法を言う。共沈現象とは、溶液から沈殿を生じさせたとき、その状況では十分な溶解度があり、沈殿しないはずのイオンが沈殿に伴われる現象をいう。蛍光体の製造においては、蛍光体前駆体の母核の周囲に、賦活剤を構成する金属元素などが析出する現象を指す。
【0053】
上記したように、ケイ酸塩蛍光体からなる緑色蛍光体を得る際には、この共沈法を利用すると好ましい。その場合には、蛍光体前駆体の母核としてシリカ等のケイ素化合物を用い、これに、Zn、Mn等の緑色蛍光体を構成し得る金属元素を含む溶液とを混合し、さらに沈殿剤を含む溶液を加えると好ましい。
シリカとしては、気相法シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ等を好ましく使用することができ、下記溶媒に実質的に不溶であることが好ましい。
【0054】
共沈法の際に適用する溶媒としては、水またはアルコール類またはそれらの混合物を用いることができる。シリカ等のケイ素化合物を用いる場合には、ケイ素化合物が分散可能な、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらのうち、比較的ケイ素化合物が分散しやすいエタノールが好ましい。
【0055】
沈殿剤としては、有機酸または水酸化アルカリが好ましい。
有機酸としては、−COOH基を有する有機酸が好ましく、例えば、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等が挙げられる。特に、シュウ酸を用いた場合、Zn、Mn等の陽イオンと反応しやすく、Zn、Mn等の陽イオンがシュウ酸塩として析出しやすいため、より好ましい。また、沈殿剤として、加水分解等によりシュウ酸を生ずるもの、例えばシュウ酸ジメチル等を使用してもよい。
水酸化アルカリとしては、−OH基を有するもの、あるいは水と反応して−OH基を生じたり、加水分解により−OH基を生じたりするものであればいかなるものでもよく、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、尿素等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属を含まないアンモニアがよい。
【0056】
上記の反応晶析法及び共沈法を含めて、液相合成法で前駆体を合成する場合には、蛍光体の種類により、反応温度、添加速度や添加位置、攪拌条件、pH等、諸物性値を調整すると好ましい。また、蛍光体前駆体の母核を溶液中に分散させるときや反応中に超音波を照射してもよい。平均粒径制御のために保護コロイドや界面活性剤などを添加することも好ましい。原料を添加し終ったら必要に応じて液を濃縮、及び/または熟成することも好ましい態様の1つである。
添加する保護コロイドの量や超音波照射時間、攪拌条件等を制御し、溶液中の蛍光体前駆体の母核の分散状態を好ましい状態とすることにより、蛍光体前駆体粒子の粒径や凝集状態を制御し、焼成後の蛍光体粒子の平均粒径を所望の大きさにすることができる。
【0057】
粒径制御に用いる保護コロイドとしては、天然、人工を問わず各種高分子化合物を使用することができるが、特にタンパク質が好ましい。その際、保護コロイドの平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、10,000以上30,000以下が特に好ましい。
【0058】
タンパク質としては、例えば、ゼラチン、水溶性タンパク質、水溶性糖タンパク質が上げられる。具体的には、アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質、遺伝子工学的に合成されたタンパク質等がある。中でも、ゼラチンを特に好ましく使用できる。
ゼラチンとしては、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを挙げることができ、これらを併用してもよい。更に、これらのゼラチンの加水分解物、これらのゼラチンの酵素分解物を用いてもよい。
【0059】
また、前記保護コロイドは、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。具体的には、例えば、上記ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマーを用いることができる。
【0060】
保護コロイドは、原料溶液の一つ以上に添加することができる。原料溶液の全てに添加してもよい。保護コロイドの存在下で、蛍光体前駆体を形成することにより、蛍光体前駆体同士が凝集するのを防ぎ、蛍光体前駆体を十分小さくすることができる。それにより、焼成後の蛍光体をより微粒子で、粒径分布が狭く、発光特性を良好にするなど、蛍光体の種々の特性を向上することができる。なお、保護コロイドの存在下で反応を行う場合には、蛍光体前駆体の粒径分布の制御や副塩等の不純物排除に十分配慮することが必要である。
【0061】
蛍光体前駆体形成工程にて蛍光体前駆体を合成した後、乾燥工程や焼成工程に先立って脱塩工程を経ることにより、蛍光体前駆体から副塩などの不純物を取り除くことが好ましい。
脱塩工程としては、各種膜分離法、凝集沈降法、電気透析法、イオン交換樹脂を用いた方法、ヌーデル水洗法などを適用することができる。
【0062】
脱塩工程を行うことにより、前駆体脱塩後の電気伝導度が0.01〜20mS/cmの範囲とすることが好ましく、更に好ましくは0.01〜10mS/cmであり、特に好ましくは0.01〜5mS/cmである。
0.01mS/cm未満の電気伝導度にすると生産性が低くなる。また、20mS/cmを超えると副塩や不純物が充分に除去できていない為に粒子の粗大化や粒子径分布が広くなり、発光強度が劣化する。
上記の電気伝導度の測定方法はどのような方法を用いることも可能であるが、市販の電気伝導度測定器を使用すればよい。
【0063】
その後、濾過、蒸発乾固、遠心分離等の方法で前駆体を回収する。
本発明においては、回収された前駆体について乾燥工程を行う。蛍光体前駆体の乾燥方法は特に限定されるものではなく、真空乾燥、気流乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等、あらゆる方法を用いることができる。
乾燥温度は限定されないが、使用した溶媒が気化する温度付近以上の温度であることが好ましく、具体的には50〜300℃の範囲であることが好ましい。乾燥温度が高い場合は乾燥と同時に焼成が施されることがあり、後述の焼成工程を行わなくとも蛍光体が得られる場合がある。
【0064】
焼成工程では、いかなる方法を用いてもよく、焼成温度や時間は適宜調整すればよい。例えば、蛍光体前駆体をアルミナボートに充填し、所定のガス雰囲気中で所定の温度で焼成することで所望の蛍光体を得ることができる。ガス雰囲気として、還元雰囲気下、酸化雰囲気下、又は硫化物存在下、不活性ガス等のどの条件下でも良く、適宜選択することができる。
好ましい焼成条件の例としては、大気中で600℃〜1800℃の間で適当な時間焼成することがある。また、800℃程度で焼成を行い有機物を酸化した後に、1100℃で90分大気中で焼成するという方法も有効である。
【0065】
焼成装置(焼成容器)は現在知られているあらゆる装置を使用することができる。例えば箱型炉、坩堝炉、円柱管型、ボート型、ロータリーキルン等が好ましく用いられる。雰囲気も前駆体組成に合わせて酸化性、還元性、不活性ガス等を用いることができる。
【0066】
また、焼成時には必要に応じて焼結防止剤を添加してもよい。焼結防止剤を添加する場合には、蛍光体前駆体形成時にスラリーとして添加することができる。粉状のものを乾燥済前駆体と混合して焼成してもよい。
焼結防止剤は特に限定されるものではなく、蛍光体の種類、焼成条件によって適宜選択される。例えば、蛍光体の焼成温度域によって800℃以下での焼成にはTiO2等の金属酸化物が使用され、1000℃以下での焼成にはSiO2が、1700℃以下での焼成にはAl2O3が、それぞれ好ましく使用される。
更に、焼成後、必要に応じて還元処理又は酸化処理等を施しても良い。
【0067】
焼成工程では、球状に形成された蛍光体前駆体粒子又は球状に凝集した蛍光体前駆体粒子が焼成により一部が溶融して結合し、その状態で表面が金属で被覆されると考えられる。これにより、得られる蛍光体は、球状又は球状粒子が複数結合した形状を呈し、表面又は内部に空孔が形成されるのではないかと考えられる。
【0068】
焼成工程後、冷却工程、表面処理工程、分散工程等の諸工程を施してもよく、分級してもよい。
【0069】
冷却工程では、焼成工程で得られた焼成物を冷却する処理を行う。このとき、該焼成物を前記焼成装置に充填したまま冷却することができる。
冷却処理は特に限定されないが、公知の冷却方法より適宜選択することができ、例えば、放置により温度を低下させる方法でも、冷却機を用いて温度制御しながら強制的に温度低下させる等の方法の何れであってもよい。
【0070】
本発明で製造される蛍光体は、種々の目的で吸着・被覆等の表面処理を施すことができる。どの時点で表面処理を施すかはその目的によって異なり、適宜適切に選択するとその効果がより顕著になる。例えば、後述するように蛍光体ペーストを調整する際に、蛍光体の分散性を良好にするために表面処理を行うと好ましい。
【0071】
次に、上記で得られた蛍光体を用いて蛍光体層を形成する方法を説明する。
蛍光体層の形成に当たっては、蛍光体をバインダ、溶剤、分散剤などの混合物に分散し、適度な粘度に調整された蛍光体ペーストを放電セルに塗布又は充填し、その後焼成することにより隔壁側面及び底面に蛍光体層を形成する。蛍光体ペースト中の蛍光体の含有量としては30質量%〜60質量%の範囲にするのが好ましい。
【0072】
ペースト中の蛍光体粒子の分散性を向上させるために、蛍光体粒子の表面に酸化物やフッ化物等を付着あるいはコーティングする等の表面処理を施すと好ましい。このような酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、アルミニウム酸化物(Al2O3)、酸化珪素(SiO2)、酸化インジウム(InO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y2O3)が挙げられる。この中で、SiO2は負に帯電する酸化物として知られ、一方、ZnO、Al2O3、Y2O3は正に帯電する酸化物として知られており、特にこれらの酸化物を付着あるいはコーティングさせることは有効である。
【0073】
以下、蛍光体と混合するバインダ、溶剤、分散剤等について説明する。
蛍光体粒子を良好に分散させるのに適したバインダとしては、エチルセルロースあるいはポリエチレンオキサイド(エチレンオキサイドのポリマ)が挙げられ、特に、エトキシ基(−OC2H5)の含有率が49〜54%のエチルセルロースを用いるのが好ましい。また、バインダとして感光性樹脂を用いることも可能である。バインダの含有量としては0.15質量%〜10質量%の範囲内が好ましい。なお、隔壁間に塗布される蛍光体ペーストの形状を整えるため、バインダの含有量は、ペースト粘度が高くなり過ぎない範囲内で多めに設定するのが好ましい。
【0074】
溶剤としては、水酸基(OH基)を有する有機溶剤を混合したものを用いるのが好ましく、その有機溶剤の具体例としては、ターピネオール(C10H18O)、ブチルカルビトールアセテート、ペンタンジオール(2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート)、ジペンテン(Dipentene、別名Limonen)、ブチルカルビトール等が挙げられる。これらの有機溶剤を混合した混合溶剤は、上記のバインダを溶解させる溶解性に優れており、蛍光体ペーストの分散性が良好になり好ましい。
【0075】
蛍光体ペースト中の蛍光体粒子の分散安定性を向上させるために、分散剤として、界面活性剤を添加すると好ましい。蛍光体ペースト中の界面活性剤の含有量としては、分散安定性の向上効果あるいは後述する除電効果等を効果的に得る観点から、0.05質量%〜0.3質量%が好ましい。
【0076】
界面活性剤の具体例としては、(a)アニオン性界面活性剤、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ノニオン性界面活性剤を用いることができ、それぞれ具体的には下記のようなものがある。
(a)アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸、エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸ポリカルボン酸高分子等が挙げられる。
(b)カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等が挙げられる。
(c)ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0077】
更に、蛍光体ペーストに除電物質を添加すると好ましい。上記挙げた界面活性剤は、一般的に蛍光体ペーストの帯電を防止する除電作用も有しており、除電物質に該当するものが多い。但し、蛍光体、バインダ、溶剤の種類によって除電作用も異なるので、色々な種類の界面活性剤について試験を行って、結果の良好なものを選択するのが好ましい。
【0078】
除電物質としては、界面活性剤の他に、導電性の材料からなる微粒子も挙げることができる。導電性微粒子としては、カーボンブラックをはじめとするカーボン微粉末、グラファイトの微粉末、Al、Fe、Mg、Si、Cu、Sn、Agといった金属の微粉末、並びにこれらの金属酸化物からなる微粉末が挙げられる。このような導電性微粒子の添加量は、蛍光体ペーストに対して0.05〜1.0質量%の範囲とするのが好ましい。
【0079】
蛍光体ペーストに除電物質を添加することによって蛍光体ペーストの帯電により、例えば、パネル中央部のアドレス電極の切れ目における蛍光体層の盛り上がりや、セル内に塗布される蛍光体ペーストの量や溝への付着状態に若干のばらつきが生じる等の蛍光体層の形成不良を防ぎ、セル毎に均質な蛍光体層を形成することができる。
【0080】
なお、上記のように除電物質として界面活性剤やカーボン微粉末を用いた場合には、蛍光体ペーストに含まれている溶剤やバインダを除去する蛍光体焼成工程において除電物質も蒸発あるいは焼失されるので、焼成後の蛍光体層中には除電物質が残存しない。従って、蛍光体層中に除電物質が残存することによってPDPの駆動(発光動作)に支障が生じる可能性も無い。
【0081】
蛍光体を上記各種混合物に分散する際には、例えば高速攪拌型のインペラー型の分散機、コロイドミル、ローラーミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライタミル、遊星ボールミル、サンドミルなど媒体メディアを装置内で運動させてその衝突(crush)及び剪断力の両方により微粒化するもの、又はカッターミル、ハンマーミル、ジェットミル等の乾式型分散機、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0082】
これらの中でも、本発明では特に分散媒体(メディア)を使用する湿式メディア型分散機を使用することが好ましく、連続的に分散処理が可能な連続式湿式メディア型分散機を使用することが更に好ましい。複数の連続式湿式メディア型分散機を直列に接続する態様等も適用できる。
ここで言うメディアとは、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズ等の固体粒子の分散媒体を指す。また、「連続的に分散処理が可能」とは、少なくとも蛍光体及び分散媒体を、時間当たり一定の量比で途切れることなく分散機に供給しながら分散処理すると同時に、前記分散機内で製造された分散物を供給に押し出される形で途切れることなく分散機より吐出する形態を指す。蛍光体の製造方法で分散処理工程として媒体(メディア)を使用する湿式メディア型分散機を用いる場合、その分散室容器(ベッセル)は縦型でも横型でも適宜選択することが可能である。
【0083】
湿式メディア分散機のベッセル中のメディアの充填量としては、50容積%〜90容積%の範囲とするのが好ましく、60容積%〜80容積%の範囲とするのが更に好ましい。メディアの充填量が50容積%を下回ると蛍光体の分散が不十分となり、また、90容積%を上回るとベッセル内でのメディアの分布が不均一になって局部的に分散が進行するため好ましくない。湿式メディア分散機を用いる際の周速は特に制限は無いが、3m/s〜20m/sであることが、実用上好ましい。
【0084】
メディア分散機を用いて分散する場合、蛍光体の分散が非常に良好になり、平均粒径分布の再現性に優れたものを得る観点から、該メディア分散機に印加する単位質量当たりの積算動力を0.1kWh/kg〜10kWh/kgの範囲で適宜調整することが好ましい。
【0085】
また、蛍光体ペースト調整時には、蛍光体の輝度等の諸特性の劣化を防止する観点から、分散開始から終了までの該分散物温度が70℃を超えないように制御しながら分散処理を施すことが好ましく、50℃を超えないように制御しながら分散処理を施すことが更に好ましい。
【0086】
また、分散を良好に行うために、分散力の弱い(エネルギー付与の小さい)分散機を用いて粗分散を行う第1の分散工程と、分散力の強い(エネルギー付与が大きい)分散機を用いて固体微粒子分散物を作製する第2の分散工程等、分散時に分散質に付与されるエネルギーが異なる分散工程を少なくとも2回行うとよい。
【0087】
上記のように調整した蛍光体ペーストを放電セルに塗布又は充填する際には、スクリーン印刷法、フォトレジストフィルム法、インクジェット法など種々の方法で行うことができる。
【0088】
特に、インクジェット法は、隔壁のピッチが狭く、放電セルが微細に形成されている場合であっても、隔壁間に低コストで容易に精度良く均一に蛍光体ペーストを塗布又は充填できるので好ましい。本発明においては、蛍光体粒子の平均粒径は、0.02〜1μmであるので、インクジェット法を適用してもノズルの目づまりや吐出不良、蛍光体粒子の沈殿が抑制され、精度良く均一に薄い蛍光体層を形成することができる。
【0089】
蛍光体ペーストを塗布又は充填後、乾燥又は焼成することにより有機成分等を除去し、隔壁側面や放電セル底面に付着した蛍光体層を形成する。
【0090】
【実施例】
以下、実施例I、実施例IIを挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0091】
〔実施例I〕
実施例Iでは、平均粒径が0.75μm、0.15μmの蛍光体を各色毎に製造し、得られた蛍光体をペースト状に調整し、これをPDPの放電セルに20μm、10μm、6μmの厚さでインクジェット法により塗布してPDPを製造し、輝度を評価した。
【0092】
1.赤色発光蛍光体〔(Y,Gd)BO3:Eu3+〕の製造
(1)赤色発光蛍光体A(平均粒径0.7μm)の製造
保護コロイドの存在下で反応晶析法により赤色発光蛍光体前駆体を形成した。
まず、純水300mlにゼラチン(平均分子量約1万5千)をその濃度が5重量%となるように溶解しa液とした。
また、硝酸イットリウム6水和物28.99gと、硝酸ガドリニウム15.77gと、硝酸ユウロピウム6水和物2.60gを純水に溶解して150mlに調整してb液とした。
さらに、ホウ酸7.20gを純水に溶解して150mlに調整してc液とした。
【0093】
次に、反応容器にa液を入れ温度を60℃に保ち、攪拌翼を用いて攪拌を行った。その状態で同じく60℃に保ったb液、c液をa液の入った反応容器下部ノズルより60ml/minの速度で等速添加を行った。添加後10分間熟成を行い、赤色発光前駆体を得た。その後赤色発光前駆体を濾過、乾燥(105℃、16時間)し、乾燥赤色発光蛍光体前駆体を得た。
さらに乾燥赤色発光蛍光体前駆体を1,200℃酸化条件下で2時間焼成して、平均粒径0.75μmの赤色発光蛍光体Aを得た。
【0094】
(2)赤色発光蛍光体B(平均粒径0.15μm)の製造
a液にゼラチン(平均分子量1万5千)の濃度が10重量%となるように、水1000mlにゼラチンを溶解させたことを除いては、上記の1(1)と同様に製造し、平均粒径0.15μmの赤色発光蛍光体を得た。
【0095】
2.青色発光蛍光体(BaMgAl10O17:Eu2+)の製造〕
(1)青色発光蛍光体C(平均粒径0.7μm)の製造
上記1(1)と同様に、純水300mlにゼラチン(平均分子量約1万5千)をその濃度が5重量%となるように溶解し、a液とした。
また、硝酸バリウム4.70gと、硝酸ユウロピウム6水和物0.89gと、硝酸マグネシウム6水和物5.13gを純水295.22mlに溶解し、b液とした。
さらに、硝酸アルミニウム9水和物75.03gを純水268.74mlに溶解し、c液とした。
上記の様に調整したa液、b液、c液を上記の1(1)で示した方法と同様に反応晶析法により青色発光蛍光体前駆体を形成し、焼成等を行い、平均粒径0.7μmの青色発光蛍光体Cを得た。
【0096】
(2)青色発光蛍光体D(平均粒径0.15μm)の製造
a液にゼラチン(平均分子量1万5千)の濃度が10重量%となるように、水1000mlにゼラチンを溶解させたことを除いては、上記の2(1)と同様に反応晶析法により青色発光蛍光体前駆体を形成し、焼成等を行い、平均粒径0.15μmの青色発光蛍光体Dを得た。
【0097】
3.緑色発光蛍光体(Zn2SiO4:Mn2+)の製造〕
(1)緑色発光蛍光体E(平均粒径0.7μm)の製造
シリカを蛍光体前駆体の母核とし、共沈法により緑色発光蛍光体前駆体を製造した。
まず、二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製AEROSIL200、BET比表面積200m2/g)4.51gを純水297.95gに混合してa液を調整した。このとき、a液を20℃以下に保った超音波分散を5分間行った。
次に、硝酸亜鉛6水和物42.39gと硝酸マンガン6水和物2.15gを純水126.84gに溶解してb液を調整した。
さらに、アンモニア水(28%)21.90gを純水125.67gに溶解してc液をそれぞれ調製した。
【0098】
次に、図5に示す反応装置100を用いて、a液を撹拌しながら、ローラーポンプ110を使ってb液とc液を10cc/minの添加速度でa液表面にダブルジェットで同時添加した。b液、c液の添加終了後、吸引濾過により固液分離を行いながら、純水を用いて十分に洗浄を行った。次いで、100℃、12時間乾燥を行い、乾燥済み前駆体を得た。得られた前駆体を窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間焼成して、平均粒径0.75μmの緑色発光蛍光体Eを得た。
【0099】
(2)緑色発光蛍光体F(平均粒径0.15μm)の製造
a液を15分間超音波分散することを除いては、上記の3(1)と同様に、蛍光体前駆体を形成し、焼成等を行い0.15μmの緑色発光蛍光体Fを製造した。
【0100】
4.蛍光体ペーストの調整
(1)赤色発光蛍光体ペーストの調整
▲1▼赤色発光蛍光体ペーストAの調整
上記の平均粒径0.75μmの赤色発光蛍光体Aを用いて、下記の組成で蛍光体懸濁液をそれぞれ調合して赤色発光蛍光体組成物とした。これをスターラーで撹拌した。
赤色発光蛍光体A 45重量%
ターピネオール,ペンタンジオールの1:1混合液 545.5重量%
エチルセルロース(エトキシ基の含有率50%) 0.3重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.2重量%
組成物をIKA JAPAN社製ホモジナイザを用いて予備分散を行った。予備分散の条件は以下の通り。
翼径 :20mm
回転数 :8000rpm
予備分散時間:2分
【0101】
続いて横型連続式メディア分散機(VMA−GETZMANN社製DISPERMATT SL−C5)を用いて下記の分散条件により本分散処理を行い、赤色発光蛍光体ペーストAを得た。
ディスク回転数:5,520rpm
ビーズ種 :ジルコニア
ビーズ径 :0.3mm
ビーズ充填率 :70%
流量 :120ml/min
分散時間 :3分間
【0102】
▲2▼赤色発光蛍光体ペーストBの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.75μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が0.15μmの赤色発光蛍光体Bを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0103】
(2)青色発光蛍光体ペーストの調整
▲1▼青色発光蛍光体ペーストCの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.75μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が0.75μmの青色発光蛍光体Cを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0104】
▲2▼青色発光蛍光体ペーストDの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.75μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が0.15μmの青色発光蛍光体Dを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0105】
(3)緑色発光蛍光体ペーストの調整
▲1▼緑色発光蛍光体ペーストEの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.75μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が0.75μmの緑色発光蛍光体Eを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0106】
▲2▼緑色発光蛍光体ペーストFの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.75μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が0.15μmの緑色発光蛍光体Fを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0107】
5.PDPの製造
図1に示した、ストライプ型のセル構造を持つ、交流面放電型のPDP1を製造した。
まず、前面板10となるガラス基板上に、所定の位置に透明電極を配置してから、この上に、Cr−Cu−Crをスパッタリングし、フォトエッチングを行うことにより表示電極11を形成する。そして、前面板10上に、前記表示電極11を介して低融点ガラスを印刷し、これを500〜600℃で焼成することにより誘電体層12を形成し、さらにこの上に、MgOを電子ビーム蒸着して保護膜13を形成する。
【0108】
一方、背面板20となるガラス基板上に、Ag厚膜を印刷し、これを焼成することにより、アドレス電極21を形成する。そして、背面板20上に、ストライプ状の隔壁30を形成する。これは、低融点ガラスをピッチ0.2mmで印刷し、焼成することにより形成する。
【0109】
さらに、前記隔壁30により仕切られたセル31の内側に面する底面31aと前記隔壁30の側面30aとに、上記4で調整した各色に発光する蛍光体ペーストA〜Fをインクジェット法により塗布する。
このとき、次の6種類のPDP用の背面板を形成した。最初の3種類は、蛍光体の平均粒径が0.75μmである蛍光体ペーストA、C、Eを用いて作製した。これらの蛍光体ペーストA、C、Eを隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序で塗布し、蛍光体層の厚さが20μm、10μm、6μmの3種類の厚さにした。残りの3種類のPDP用の背面板は、蛍光体の平均粒径が0.15μmである蛍光体ペーストB、D、Fを用いて作製した。これらの蛍光体ペーストB、D、Fを隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序で塗布し、蛍光体層の厚さを20μm、10μm、6μmの3種類の厚さにした。
【0110】
そして、前記電極11、21等が配置された前面板10と上記のいずれかの背面板20とを、それぞれの電極配置面が向き合うように位置合わせし、隔壁30により約1mmのギャップを保った状態で、その周辺をシールガラスにより封止する。そして、前記基板10、20間に、放電により紫外線を発生するキセノン(Xe)と主放電ガスのネオン(Ne)とを混合したガスを封入して気密密閉した後、エージングを行った。
【0111】
以上により、図6に示すように、蛍光体層35を構成する蛍光体の平均粒径が0.75μmで蛍光体層35の厚さが20μm、10μm、6μmに形成されたPDPを製造し、それぞれ実施例I−1、I−2、I−3とした。また、蛍光体層35を構成する蛍光体の平均粒径が0.15μmで蛍光体層35の厚さが20μm、10μm、6μmのPDPを製造し、それぞれ実施例I−4、I−5、I−6とした。
【0112】
〔比較例I〕
上記実施例Iの比較例として、下記に示す方法で平均粒径が1.3μmの蛍光体G〜Iを各色毎に製造し、得られた蛍光体G〜Iをペースト状に調整し、これをPDPの放電セルに20μm、10μm、6μm、4μmの厚さでインクジェット法により塗布してPDPを製造した。また、実施例Iで調整した蛍光体ペーストA〜Fを用いて、蛍光体層の厚さが4μmのPDPを製造した。以下、各工程について説明する。
【0113】
1.蛍光体の製造
(1)平均粒径1.3μmの赤色発光蛍光体Gの製造
上記実施例Iの1(1)において、a液にゼラチン(平均分子量1万5千)の濃度が1重量%となるように、水1000mlにゼラチンを溶解させたことを除いては、実施例Iの1(1)と同様に製造し、平均粒径1.3μmの赤色発光蛍光体Gを得た。
【0114】
(2)平均粒径1.3μmの青色発光蛍光体Hの製造〕
上記実施例Iの2(1)において、a液にゼラチン(平均分子量1万5千)の濃度が1重量%となるように、水1000mlにゼラチンを溶解させたことを除いては、実施例Iの2(1)と同様に製造し、平均粒径1.3μmの青色発光蛍光体Hを得た。
【0115】
(3)平均粒径1.3μmの緑色発光蛍光体Jの製造
上記実施例Iの3(1)において、a液を5分間超音波分散する代わりに、マグネチックスターラーで10分間分散させることを除いては、上記実施例Iの3(1)と同様に、蛍光体前駆体を形成し、焼成等を行い0.15μmの緑色発光蛍光体Jを製造した。
【0116】
2.蛍光体ペーストの調整
(1)赤色発光蛍光体ペーストGの調整
上記実施例Iの4(1)▲1▼において、赤色発光蛍光体Aに代えて、比較例Iの1(1)で製造した平均粒径が1.3μmの赤色発光蛍光体Gを用いた以外は実施例Iの4(1)と同様にして赤色発光蛍光体ペーストGを作成した。
【0117】
(2)青色発光蛍光体ペーストHの調整
上記実施例Iの4(2)▲1▼において、青色発光蛍光体Cに代えて、比較例Iの1(2)で製造した平均粒径が1.3μmの青色発光蛍光体Hを用いた以外は実施例Iの4(2)▲1▼と同様にして青色発光蛍光体ペーストHを作成した。
【0118】
(3)緑色発光蛍光体ペーストIの調整
上記実施例Iの4(3)▲1▼において、緑色発光蛍光体Eに代えて、比較例Iの1(3)で製造した平均粒径が1.3μmの緑色発光蛍光体Jを用いた以外は実施例Iの4(3)▲1▼と同様にして緑色発光蛍光体ペーストIを作成した。
【0119】
3.PDPの製造
上記実施例Iの5において、上記比較例Iの2.で調整した平均粒径が1.3μmの各色蛍光体ペーストG〜Iを用いて、20μm、10μm、6μm、4μmの厚さの蛍光体層を形成した以外は、実施例の5と同様にPDPを製造し、図6に示すように比較例I−1〜I−4とした。
また、比較例I−5として、実施例Iの4で調整した平均粒径が0.75μmの各色に発光する蛍光体ペーストA、C、Eを用いて4μmの厚さの蛍光体層を備えたPDPを製造した。これと同様に、比較例I−6として、実施例Iの4で調整した平均粒径が0.15μmの各色に発光する蛍光体ペーストB、D、Fを用いて4μmの厚さの蛍光体層を備えたPDPを製造した。
【0120】
〔評価I〕
上記で製造した実施例I−1〜I−6のPDPおよび比較例I−1〜I−6のPDPについて、電極に同等維持電圧(170Vの交流電圧)を印加したときの白色輝度を測定した。そして、粒径1.3μm、蛍光体層の厚さが20μmの比較例I−1の白色輝度を100とし、実施例I−1〜I−6及び比較例I−2〜I−5の相対値を求め、この相対値により各PDPの輝度を評価した。図6及び図7に結果を示す。なお、ここでは、比較例I−1を従来の一般的なPDPに相当するものと位置づけた。
【0121】
図7は、図6に示した結果に基づいて、蛍光体層の厚さに対する相対輝度を蛍光体の平均粒径毎に示したものである。図7を概観すると、蛍光体層4μmから20μmへと厚くなるにつれて相対輝度が向上し、同じ厚さの蛍光体層では平均粒径1.3μmから0.15μmへと小さくなるほど相対輝度が高いことが分かる。つまり、実施例I−1〜I−6の相対輝度は、比較例I−1〜I−6に対して、全て高い値を示している。
【0122】
ここで、蛍光体層の厚さが20μmの場合についてみてみると、粒径が0.15μmの実施例I−4の相対輝度は、142であり、粒径が0.75μmの実施例I−1の相対輝度は、135である。一方、粒径が1.3μmの比較例I−1の相対輝度は100である。同じ層の厚さであっても比較例I−1に比べて、実施例I−1及びI−4の相対輝度は約4割高く、本発明に係る蛍光体を用いることにより、PDPの輝度が極めて向上することが分かる。
【0123】
次に、蛍光体層の厚さが10μmである実施例I−2、実施例I−5、比較例I−2についてみると、それぞれの相対輝度は、124、136、73となっている。つまり、本発明では、蛍光体の平均粒径を比較例I−1の1.3μmから実施例I−2の0.75μm、実施例I−5の0.15μmと微少化することにより、蛍光体層の厚さを比較例I−1の20μmから10μmと1/2に薄膜化しても、比較例I−1に対して輝度を24%、36%に向上することができる。これに対して、比較例I−2では、蛍光体層の厚さを比較例I−1から1/2にすると、相対輝度も比較例I−1に対して27%低下する。
【0124】
さらに、蛍光体層の厚さが6μmである実施例I−3、実施例I−6についてみると、それぞれの相対輝度は、102、114である。つまり、本発明では蛍光体層の厚さを比較例I−1の20μmから1/3以下の6μmにした場合でも、実施例I−3については従来と同等以上(2%向上)の輝度を達成しており、実施例I−6については14%も輝度が向上している。
一方、蛍光体層の厚さが同じく6μmである比較例I−3では、相対輝度が54であり、比較例I−1に対して輝度が46%も減少している。
したがって、粒径が0.75μmや0.15μmの極めて微粒子の蛍光体を用いることにより、従来と同程度以上の輝度を達成した上で、蛍光体層の厚さを20μmから6μmに薄膜化が可能である。
【0125】
なお、蛍光体層の厚さが4μmである比較例I−4〜I−6についてみると、蛍光体の平均粒径が1.3μmである場合は勿論のこと、実施例I−1〜I−3と等しい0.75μmの場合、実施例I−4〜I−6と等しい0.15μmの場合にも、相対輝度は100未満であり、それぞれ38、61、77であった。したがって、蛍光体層の厚さは5μm以上が必要であることが分かる。
【0126】
以上より次のことが分かる。平均粒径が1.3μmあるいはそれ以上大きさの従来の蛍光体では、蛍光体層を少なくとも20μmの厚さにする必要があり、輝度を向上させるためにはさらに蛍光体層を厚くしなければならなかった。しかし、放電空間を確保するためには、蛍光体層を一定以上に厚くすることができず、輝度向上には限界があった。しかし、本発明では、液相合成法により製造した1μm以下の微粒子の蛍光体を用いて、5〜20μmの厚さの蛍光体層を構成することにより、従来と比べると極めて高輝度のPDPを得ることができる。
また、本発明では、蛍光体層を6μmと、従来の1/3以下の厚さにしても、従来と同等以上の輝度を達成することができ、薄膜化が容易である。したがって、放電セルが微細化した場合であっても、蛍光体層を薄膜化して十分な放電空間を確保することができる。
【0127】
〔実施例II〕
1.PDPの製造
次に、実施例IIについて説明する。実施例IIでは、実施例Iで調整した平均粒径が0.15μmの各色の蛍光体ペーストA、C、Eを用いて、放電セルに20μの厚さの蛍光体層を形成した。このとき、前面板及び背面板に設ける誘電体層や、放電セルを区画する隔壁等を構成する材料や、層の厚さ等を調整して、放電セル全体の静電容量を5F・m2〜30F・m2の範囲で変化させたPDPを製造した。
なお、静電容量は次のようにして求めた。まず、各放電セルを構成する蛍光体層、隔壁、誘電体層を、スクリーン印刷法により別個に形成し、これを焼成したものを静電容量測定用試料とする。そして、この静電容量測定用試料の静電容量をキャパシタメータにてそれぞれ測定し、測定された蛍光体層、隔壁、誘電体層の静電容量の合成値を算出し、この合成値を放電セルの静電容量とした。
【0128】
2.評価
上記で製造したPDPに実施例Iと同じ大きさの電圧を印加して、プラズマ放電を維持したときの、発光を確認した。
その結果、異常放電や発光ムラ、輝度低下等は一切見られず、画像を美しく表示することができた。
【0129】
【発明の効果】
本発明によれば、PDPの放電セルに設ける蛍光体層の厚さを5〜20μmとし、この蛍光体層を構成する蛍光体の平均粒径を0.02〜1μmとすることにより、特に蛍光体の平均粒径0.1〜0.3μmであって前記放電セルの静電容量6〜30μF/m2であることにより、高輝度で、蛍光体層の薄膜化が可能であり、発光ムラのないPDPを得ることができた。これによりPDPに美しく情報等を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラズマディスプレイパネルの一例を示した斜視図である。
【図2】図1に示したプラズマディスプレイパネルに設けられた電極の配置を示した概略平面図である。
【図3】本発明に係るプラズマディスプレイパネルに設けられる放電セルの構造の他の例として、格子型のセル構造を示した概略平面図である。
【図4】本発明に係るプラズマディスプレイパネルに設けられる放電セルの構造の他の例として、ハニカム型のセル構造を示した概略平面図である。
【図5】本発明に係る蛍光体を共沈法により合成するときに使用する装置の一例を示した概略図である。
【図6】実施例Iにおいて、実施例I−1〜実施例I−6、比較例I−1〜比較例I−6の相対輝度を評価した結果を示したものである。
【図7】実施例Iにおいて、実施例I−1〜実施例I−6、比較例I−1〜比較例I−6について、蛍光体層の厚さに対する相対輝度を示したものである。
【符号の説明】
1 プラズマディスプレイパネル
10、20 基板
11、21 電極
30、40、50 隔壁
30a 隔壁表面
31、41、51 放電セル
31a 放電セルの内側に面する一方の基板表面
35 蛍光体層
Claims (2)
- 所定間隔をあけて対向配置された2つの基板と、基板間に設けられて基板間の空間を複数に区画する隔壁と、前記隔壁と基板とに囲まれて形成された放電セルと、前記放電セルの内側に面する隔壁表面と一方の基板表面とを覆う蛍光体層とを備えたプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記蛍光体層の厚さは5〜20μmであり、
前記蛍光体層を構成する蛍光体の平均粒径は0.1〜0.3μmであり、当該蛍光体は球状又は球状粒子が複数結合した形状を有するとともに、その表面又は内部に空孔を有し、
前記放電セルの静電容量が6〜30μF/m2であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記蛍光体は、蛍光体原料を液相中で反応させる液相合成法により製造されたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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