以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車両用制動制御装置200の全体構成図である。車両用制動制御装置200は、バッテリ22、電子制御ユニット100(以下、「ECU100」という)、および液圧ブレーキ装置などを有している。
液圧ブレーキ装置は、右前輪ブレーキ92FR、左前輪ブレーキ92FL、右後輪ブレーキ92RR、左後輪ブレーキ92RL(以下、必要に応じこれらを総称して「ブレーキ92」という)、ブレーキ液圧発生装置20、ブレーキペダル52、およびストロークセンサ40などを有している。液圧ブレーキ装置は、車輪とともに回転する回転体に摩擦部材を液圧に応じて押圧して車輪に制動力を与える液圧制動装置として機能する。
右前輪ブレーキ92FR、左前輪ブレーキ92FL、右後輪ブレーキ92RR、左後輪ブレーキ92RLは、それぞれ右前輪14FR、左前輪14FL、右後輪14RR、左後輪14RL(以下、必要に応じこれらを総称して「車輪14」という)に対応して設けられている。右前輪ブレーキ92FR、左前輪ブレーキ92FL、右後輪ブレーキ92RR、左後輪ブレーキ92RLには、それぞれ右前輪用ホイールシリンダ18FR、左前輪用ホイールシリンダ18FL、右後輪用ホイールシリンダ18RR、左後輪用ホイールシリンダ18RL(以下、必要に応じこれらを総称して「ホイールシリンダ18」という)が設けられている。ホイールシリンダ18は、ブレーキ液圧発生装置20に接続されており、ブレーキ液圧発生装置20によって、ホイールシリンダ18の作動液圧としてのホイールシリンダ圧が増圧および減圧される。
ホイールシリンダ圧が増圧されると、車輪14と共に回転する回転体としてのディスクロータに、摩擦部材としてのブレーキパッドが、キャリパによりホイールシリンダ圧に応じて押圧される。これによって、車輪14に制動力が与えられ、または車輪14に与えられた制動力が増加させられる。また、ホイールシリンダ圧が減圧されると、ブレーキパッドがディスクロータから引き戻され、車輪14に与えられていた制動力が解除され、または低減させられる。
なお、本実施形態においては、4つのブレーキ92すべてにディスクブレーキが採用されているが、4つの車輪14すべて、または2つの後輪にドラムブレーキが採用されてもよいことは勿論である。この場合、ホイールシリンダ圧が増圧されると、車輪14と共に回転する回転体としてのドラムに、摩擦部材としてのライニングがブレーキシューとともに、ホイールシリンダ圧に応じて押圧される。これによって、車輪14に制動力が与えられ、または車輪14に与えられた制動力が増加させられる。また、ホイールシリンダ圧が減圧されると、シュースプリングによりライニングがブレーキシューとともに引き戻され、車輪14に与えられていた制動力が解除され、または低減させられる。
ブレーキ液圧発生装置20は電動アクチュエータとしてのポンプモータ90を有している。ポンプモータ90はリレー26を介してECU100に接続されており、ECU100はリレー26のオン・オフを制御する。リレー26はバッテリ22にも接続されており、リレー26がオンにされたときは、バッテリ22からポンプモータ90に電力が供給され、ポンプモータ90が作動する。
車両用制動制御装置200は、車輪速センサ16、バッテリ残量センサ24、外気温センサ50などのセンサも有している。車輪速センサ16は車輪14近傍に設けられ、電磁ピックアップ方式またはホールIC方式などの回転センサにより車輪14の回転を検出する。バッテリ残量センサ24はバッテリ22に設けられ、バッテリ22の電位差を検出することにより、バッテリ22の残量を検出する。外気温センサ50は、車体12のエンジンルーム前方に設けられ、車両10の外気温を検出する。これらのセンサはECU100に接続されており、これらのセンサによる検出結果はECU100に入力される。
図2は、第1の実施形態に係る液圧ブレーキ装置150の全体構成図である。液圧ブレーキ装置150は、ブレーキ液圧発生装置20、マスタシリンダ56、ブレーキ92などを備える。本実施形態においては、液圧ブレーキ装置150には電子制御ブレーキシステムが採用されている。電子制御ブレーキシステムによって、車輪14の各々に、ブレーキペダル52の操作量や車輪14の各々の回転速度などに応じた制動力が与えられる。
ブレーキペダル52には、運転者によってブレーキペダル52が踏み込まれた操作量を検出するストロークセンサ40が設けられている。ブレーキペダル52とマスタシリンダ56との間にはドライストロークシミュレータ54が設けられている。
マスタシリンダ56には、右前輪用のブレーキ油圧制御導管68及び左前輪用のブレーキ油圧制御導管70の一端が接続されている。これらのブレーキ油圧制御導管は、それぞれ、右前輪用ホイールシリンダ18FRおよび左前輪用ホイールシリンダ18FL接続されている。したがって、マスタシリンダ56と右前輪用ホイールシリンダ18FRは、ブレーキ油圧制御導管68によって連通されている。また、マスタシリンダ56と左前輪用ホイールシリンダ18FLは、ブレーキ油圧制御導管70によって連通されている。このため、ブレーキ油圧制御導管68およびブレーキ油圧制御導管70は、マスタシリンダ56と前輪のマスタシリンダとを連通するマスタシリンダ連通路として機能する。マスタシリンダ56は、運転者によるブレーキペダル52の踏み込み操作に応じ、作動液としてのブレーキオイルを、ブレーキ油圧制御導管68およびブレーキ油圧制御導管70に圧送する。
ブレーキ油圧制御導管68の途中には、右マスタ遮断弁72FRが設けられる。右マスタ遮断弁72FRは、通常は開状態(以下、「常開型」という)の電磁弁であり、マスタシリンダ56と右前輪用ホイールシリンダ18FRとの連通を遮断し、および遮断を解除する。また、ブレーキ油圧制御導管70の途中には、左マスタ遮断弁72FLが設けられる。左マスタ遮断弁72FLは常開型の電磁弁であり、マスタシリンダ56と左前輪用ホイールシリンダ18FLとの連通を遮断し、および遮断を解除する(以下、必要に応じて、右マスタ遮断弁72FRおよび左マスタ遮断弁72FLを総称して「マスタ遮断弁72」という)。駆動回路112は、ECU100から入力された制御電流に応じたデューティーでマスタ遮断弁72に電流を供給する。マスタ遮断弁72は、供給された電流に応じて開弁および閉弁し、マスタシリンダ56とホイールシリンダ18との連通を遮断し、および遮断を解除する。
ブレーキ油圧制御導管68には、右マスタシリンダ圧センサ66FRが設けられ、ブレーキ油圧制御導管70には左マスタシリンダ圧センサ66FLが設けられる(以下、右マスタシリンダ圧センサ66FRおよび左マスタシリンダ圧センサ66FLを総称して「マスタシリンダ圧センサ66」という)。右マスタシリンダ圧センサ66FRおよび左マスタシリンダ圧センサ66FLは、マスタシリンダ56の作動液圧としてのマスタシリンダ圧を検出する。右マスタシリンダ圧センサ66FRおよび左マスタシリンダ圧センサ66FLはECU100に接続されており、これらによる検出結果はECU100に入力される。
マスタシリンダ56にはリザーバタンク58が接続されている。また、マスタシリンダ56には開閉弁60を介してウェットストロークシミュレータ62が接続されている。リザーバタンク58には、油圧給排導管64の一端が接続されている。油圧給排導管64には、ポンプ80が設けられ、ポンプ80の吐出側は、高圧導管86に接続されている。ポンプ80は、電動アクチュエータとしてのポンプモータ90によって駆動される。高圧導管86には、アキュムレータ82が設けられる。アキュムレータ82は、ポンプモータ90によって増圧された、たとえば16〜21.5MPaの高圧の作動液圧を蓄圧する蓄圧手段としての機能を有する。高圧導管86はリリーフバルブ84に接続されている。アキュムレータ82の作動液圧としてのアキュムレータ圧が、たとえば30MPaといった高圧になったとき、このリリーフバルブ84が開弁され、油圧給排導管64へ高圧の作動液が逃がされる。
高圧導管86には、アキュムレータ圧を検出するアキュムレータ圧センサ88が設けられる。アキュムレータ圧センサ88はECU100に接続されており、アキュムレータ圧センサ88の検出結果はECU100に入力される。ECU100は、入力を受けたアキュムレータ圧センサ88の検出結果に基づいて、ポンプモータ90の作動および作動停止を制御する。
高圧導管86は、右前輪増圧用リニアバルブ74FR、左前輪増圧用リニアバルブ74FL、右後輪増圧用リニアバルブ74RR、左後輪増圧用リニアバルブ74RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「増圧用リニアバルブ74」という)に接続されている。右前輪増圧用リニアバルブ74FR、左前輪増圧用リニアバルブ74FL、右後輪増圧用リニアバルブ74RR、左後輪増圧用リニアバルブ74RLは、それぞれ右前輪用ホイールシリンダ18FR、左前輪用ホイールシリンダ18FL、右後輪用ホイールシリンダ18RR、左後輪用ホイールシリンダ18RLに接続されている。したがって、アキュムレータ82は、増圧用リニアバルブ74を介して、4つの車輪14の各々のホイールシリンダ18に接続されている。
増圧用リニアバルブ74は、通常は閉じた状態(これを「常閉型」という)の電磁弁であり、ECU100からの作動指令に応答して、アキュムレータ82とホイールシリンダ18の間の連通を遮断し、および遮断を解除する。増圧用リニアバルブ74が開弁されることによって、アキュムレータ82に蓄圧された作動液圧がホイールシリンダ18に供給され、ホイールシリンダ圧が増圧される。
右前輪用ホイールシリンダ18FR、左前輪用ホイールシリンダ18FL、右後輪用ホイールシリンダ18RR、左後輪用ホイールシリンダ18RLの各々は、右前輪減圧用リニアバルブ76FR、左前輪減圧用リニアバルブ76FL、右後輪減圧用リニアバルブ76RR、左後輪減圧用リニアバルブ76RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「減圧用リニアバルブ76」という)を介して油圧給排導管64へ接続されている。油圧給排導管64はリザーバタンク58に接続されている。したがって、ホイールシリンダ18は減圧用リニアバルブ76を介してリザーバタンク58に接続されている。
右前輪減圧用リニアバルブ76FRおよび左前輪減圧用リニアバルブ76FLは、常閉型の電磁弁であり、右後輪減圧用リニアバルブ76RRおよび左後輪減圧用リニアバルブ76RLは、常開型の電磁弁である。減圧用リニアバルブ76は、ECU100からの作動指令に応答して、リザーバタンク58とホイールシリンダ18の間の連通を遮断し、および遮断を解除する。減圧用リニアバルブ76が開弁されることによって、ホイールシリンダ18の作動液がリザーバタンク58に逃がされ、ホイールシリンダ圧が減圧される。
各々のホイールシリンダ18の近傍には、右前輪用W/C圧センサ78FR、左前輪用W/C圧センサ78FL、右後輪用W/C圧センサ78RR、左後輪用W/C圧センサ78RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「W/C圧センサ78」という)が設けられる。W/C圧センサ78は、ホイールシリンダ18の各々のホイールシリンダ圧を検出する。W/C圧センサ78は、ECU100に接続されており、W/C圧センサ78による検出結果はECU100に入力される。
図3は、第1の実施形態に係る車両用制動制御装置200におけるECU100の機能ブロック図である。ECU100は、マイクロコンピュータによる演算ユニット102、ROM104、RAM106など有している。
ROM104には、増圧用リニアバルブ制御プログラム等の複数のプログラムや、温度に対するポンプ駆動開始圧Ponおよびポンプ駆動停止圧Poffが示されたポンプ駆動テーブルなどの複数のテーブルが格納されている。RAM106は、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用される。演算ユニット102は、ROM104に格納されたプログラムやRAM106に格納されたデータなどを利用して様々な演算を実行する。
演算ユニット102は、ストロークセンサ40の検出結果とマスタシリンダ圧センサ66の検出結果を利用してブレーキペダル52の操作量および操作力を算出する。また、演算ユニット102は、W/C圧センサ78の検出結果を利用してホイールシリンダ圧を算出する。また、演算ユニット102は、車輪速センサ16の検出結果を利用して車輪14の各々の回転速度を算出する。演算ユニット102は、算出したブレーキペダル52の操作量および操作力、ホイールシリンダ圧、車輪14の回転速度などに基づき、車輪14の各々の目標ホイールシリンダ圧を演算する。演算ユニット102は、演算された目標ホイールシリンダ圧から、増圧用リニアバルブ74および減圧用リニアバルブ76に供給する制御電流を算出する。算出された制御電流は駆動回路108および駆動回路110に出力される。駆動回路108および駆動回路110は、入力された制御電流に応じたデューティーで増圧用リニアバルブ74および減圧用リニアバルブ76に電流を供給する。増圧用リニアバルブ74および減圧用リニアバルブ76は、供給された電流に応じて開弁および閉弁し、ホイールシリンダ圧を増圧および減圧する。このようにして電子制御ブレーキシステムは、4つの車輪14の各々の目標ホイールシリンダ圧を算出し、4つの車輪14の各々のホイールシリンダ圧を算出された目標ホイールシリンダ圧になるように制御する。
また、演算ユニット102は、アキュムレータ圧センサ88の検出結果を利用して、アキュムレータ圧を算出する。ECU100は、ROM104に格納されたポンプ駆動テーブルを参照し、算出したアキュムレータ圧が、ポンプ駆動開始圧Ponよりも低いか否かを判断する。算出したアキュムレータ圧がポンプ駆動開始圧Ponよりも低い場合、リレー26をオンにしてポンプモータ90を作動させ、アキュムレータ圧を増圧する。ECU100は、ROM104に格納されたポンプ駆動テーブルを参照し、算出したアキュムレータ圧が、ポンプ駆動停止圧Poffよりも高いか否かを判断する。算出したアキュムレータ圧がポンプ駆動停止圧Poffよりも高い場合、リレー26をオフにしてポンプモータ90の作動を停止し、アキュムレータ圧の増圧を停止する。こうしてECU100は、アキュムレータ圧を所定の圧力の範囲内となるように制御する。
演算ユニット102は、バッテリ残量センサ24の検出結果を利用してバッテリ22の残量を算出する。ECU100は、算出したバッテリ22の残量と、ROM104に格納されたシステムリセットを実行するときの残量とを比較する。バッテリ22の残量がシステムリセットを実行するときの残量より少ない場合、ECU100は、システムリセットを実行し、ポンプモータ90、増圧用リニアバルブ74、減圧用リニアバルブ76、およびマスタ遮断弁72への電力の供給を停止する。
システムリセットが実行されると、増圧用リニアバルブ74および減圧用リニアバルブ76によってホイールシリンダ圧を増圧および減圧することができなくなる。一方、マスタ遮断弁72は常開型の電磁弁のため、マスタ遮断弁72への電源の供給が停止されることにより、マスタ遮断弁72が開弁する。これによって、マスタシリンダ56と右前輪用ホイールシリンダ18FRおよび左前輪用ホイールシリンダ18FLが連通する。ブレーキペダル52の操作によって増圧されたマスタシリンダ圧は、ブレーキ油圧制御導管68およびブレーキ油圧制御導管70により、右前輪用ホイールシリンダ18FRおよび左前輪用ホイールシリンダ18FLに直接伝達され、右前輪14FRおよび左前輪14FLに制動力が与えられる。このように、システムリセットが実行されることにより、引き続き車輪14に制動力を与えることは可能となるが、電子制御ブレーキシステムにより、4つの車輪14の各々に良好に制動力を与えることが困難となる。
また、システムリセットが実行されない状態では、ホイールシリンダ圧はマスタシリンダ圧よりも通常高くなっている。このため、システムリセットが実行されると、作動液がホイールシリンダ18からマスタシリンダ56に逆流する。このとき、マスタシリンダ56が増圧され、ブレーキペダル52を操作方向と逆方向に押し戻す、いわゆるキックバックが発生する。運転者がブレーキペダル52を操作しているときにこのキックバックが発生すると、運転者はブレーキペダル52を押し戻される感触を受けるので、運転者の操作性を損ねる可能性がある。このように、電子制御ブレーキシステムにより車輪14に良好に制動力を与えるため、および運転者の操作性の低減を抑制するため、システムリセットが実行されることを抑制することが要求される。
このため、本実施形態に係る車両用制動制御装置200は、液圧ブレーキ装置150の状態に基づいて、ポンプモータ90に供給する電力を低減する。具体的には、車両用制動制御装置200は、液圧ブレーキ装置150のアキュムレータ82の温度に基づいて、ポンプ駆動開始圧Ponを変更する。ECU100は、外気温センサ50の検出結果を利用して、ポンプ駆動開始圧Ponを変更するか否かを判断する。
図4は、第1の実施形態に係る車両用制動制御装置200におけるポンプ駆動開始圧を示す図である。本図において、横軸はアキュムレータ82のガス容量Vを示し、縦軸はアキュムレータ圧Paccを示す。本図の左側の曲線は、アキュムレータ温度Taccが閾値温度T1以下の場合のガス容量Vとアキュムレータ圧Paccの関係を示し、本図の右側の曲線は、アキュムレータ温度Taccが閾値温度T1より高い場合のガス容量Vとアキュムレータ圧Paccの関係を示す。
アキュムレータ圧Paccが低圧異常圧力Peに低下してしまうと、ECU100は、アキュムレータ82が異常であると判断し、電子制御ブレーキシステムによる制動制御を停止する。このため、ポンプモータ90が作動してからアキュムレータ82に作動液圧の蓄圧が開始されるまでに多少の時間を要する。アキュムレータ圧Paccが低圧異常圧力Peに低下することを抑制するため、低圧異常圧力Peとなるときのガス容量V1から、ΔVだけ余裕を見たガス容量V2となるときのアキュムレータ圧P1が、ポンプ駆動開始圧Ponとして通常設定されている。
アキュムレータ82の温度が低い場合には、本図の左側の曲線に示されるように、アキュムレータ圧Paccに対してガス容量Vが低い値となる。アキュムレータ82の温度が高くなると、本図の右側の曲線に示されるように、アキュムレータ圧Paccに対してガス容量Vが高くなる。このため、低圧異常圧力Peとなるときのガス容量がV1よりも大きいV3へと変化する。このとき、ポンプ駆動開始圧Ponを変更しない場合は、ポンプモータ90が作動してからアキュムレータ82に作動液圧の蓄圧が開始されるまでの余裕分が、ΔVよりも大きいV3−V2’となる。
そこで、本実施形態においては、アキュムレータ82が閾値温度T1より高温になった場合に、低圧異常圧力Peとなるときのガス容量であるV3から、ΔVだけ余裕を見たガス容量であるV4となるときのアキュムレータ圧であるP2に、ポンプ駆動開始圧Ponを変更する。これによって、アキュムレータ圧Paccが低圧異常圧力Peに低下することを抑制しながら、ポンプ駆動開始圧Ponを変更前のP1より低い値のP2へ変更することができる。このようにポンプ駆動開始圧Ponを低い値に変更することにより、高温時においては、たとえばアキュムレータ圧Paccが変更前のP1より低い値に低下した場合であっても、変更後のP2以上であればポンプモータ90の作動が抑止される。このため、ポンプモータ90を作動させる機会を低減することができ、ポンプモータ90の消費電力を低減することができる。また、ポンプモータ90を作動させる機会が低減されるので、ポンプモータ90による作動音を低減することができる。また、リレー26をオン・オフする機会も低減することができ、リレー26の高寿命化を実現することができる。
図5は、第1の実施形態に係る車両用制動制御装置200の処理を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、ECU100の電源がオンにされたときに開始し、ECU100の電源がオフにされるまで所定時間毎に繰り返される。
ECU100は、ポンプモータ90が作動していないか否かを判断する(S11)。ポンプモータ90が作動していないか否かは、ポンプモータ90への電流の供給が停止されているか否かを検出することなどにより判断される。
ポンプモータ90が作動していないと判断された場合(S11のY)、ECU100は、アキュムレータ圧センサ88の検出結果を利用して、アキュムレータ圧Paccが、低温時のポンプ駆動開始圧P1より小さいか否かを判断する(S12)。アキュムレータ圧PaccがP1以上と判断された場合(S12のN)、アキュムレータ圧Paccはポンプ駆動開始圧まで低下していないので、ECU100は、ポンプモータ90を作動させない。
アキュムレータ圧PaccがP1より小さいと判断された場合(S12のY)、ECU100は、ポンプ駆動開始圧Ponを変更すべきか否かを判断する、ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理に移行する。ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理では、ECU100は、バッテリ残量XB、車速YC、アキュムレータ温度Tacc、目標ホイールシリンダ圧PWTから、ポンプ駆動開始圧Ponを変更すべきか否かを判断する。
まず、ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理において、ECU100は、バッテリ残量センサ24の検出結果を利用して、バッテリ残量XBが、システムリセットが実行されるときのバッテリ残量に近い所定のバッテリ残量X1より小さいか否かを判断する(S13)。バッテリ残量XBがX1以上と判断された場合(S13のN)、バッテリ残量が少なくなることによりシステムリセットが実行される可能性が低く、ポンプモータ90の消費電力を低減する必要性が低いため、ポンプ駆動開始圧Ponを変更しない。ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ポンプモータ90を作動させる(S18)。
バッテリ残量XBがX1より小さいと判断された場合(S13のY)、ECU100は、バッテリ残量XBがシステムリセットが実行されるときのバッテリ残量に近づいていると判断する。このため、ECU100は、次に、アキュムレータ圧を低下させることによる車両走行時の車両の制動への影響を抑制するため、車輪速センサ16の検出結果を利用して車速YCがゼロであるか否かを判断する(S14)。
車速YCがゼロでないと判断された場合、すなわち車両が走行中と判断された場合(S14のN)、ECU100は、車両走行時の車両の制動への影響を抑制するため、ポンプ駆動開始圧Ponの変更を行わない。ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ポンプモータ90を作動させる(S18)。
車速YCがゼロであると判断された場合、すなわち車両が停止中と判断された場合(S14のY)、ECU100は、外気温センサ50の検出結果を利用して、アキュムレータ温度Taccが所定の閾値温度T1より高いか否かを判断する(S15)。なお、外気温センサ50およびアキュムレータ82は、同じエンジンルーム近傍に設けられることから、本実施形態に係る車両用制動制御装置200では、外気温センサ50によって検出された外気温がアキュムレータ温度Taccとして取り扱われる。
アキュムレータ温度TaccがT1以下と判断された場合(S15のN)、ECU100は、アキュムレータ圧Paccが低圧異常圧力Peに低下することを抑制するため、ポンプ駆動開始圧Ponを変更しない。ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ポンプモータ90を作動させる(S18)。
アキュムレータ温度TaccがT1より高いと判断された場合(S15のY)、ECU100は、ポンプ駆動開始圧Ponを低い値に変更してもアキュムレータ圧Paccが低圧異常圧力Peに低下することを抑制することができると判断する。このため、ECU100は、次に目標ホイールシリンダ圧PWTが、ブレーキペダル52が強く操作されたときの目標シリンダ圧を表す所定のホイールシリンダ圧PW1より低いか否かを判断する(S16)。
目標ホイールシリンダ圧PWTがPW1以上と判断された場合(S16のN)、ECU100は、ブレーキペダル52が強く操作されたため車輪に強い制動力を与える必要があり、ホイールシリンダ圧を高く増圧する必要があると判断し、ポンプ駆動開始圧Ponを変更しない。ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ポンプモータ90を作動させる(S18)。
目標ホイールシリンダ圧PWTがPW1より低いと判断された場合(S16のY)、ECU100は、ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理において、ポンプ駆動開始圧Ponを変更するための、バッテリ残量XB、車速YC、アキュムレータ温度Tacc、目標ホイールシリンダ圧PWTのすべての条件を満足していると判断し、ポンプ駆動開始圧Ponを、低温時のポンプ駆動開始圧P1から高温時のポンプ駆動開始圧P2に変更する。
ポンプ駆動開始圧PonがP2に変更されたため、ECU100は、アキュムレータ圧PaccがP2より小さいか否かを判断する(S17)。アキュムレータ圧PaccがP2以上と判断された場合(S17のN)、ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponにまで達していないため、ポンプモータ90を作動させず、本フローチャートにおける処理を終了する。これによって、ポンプモータ90が作動させる機会が低減されるので、ポンプモータ90の消費電力を低減することができる。アキュムレータ圧PaccがP2より小さいと判断された場合(S17のY)、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ECU100は、ポンプモータ90を作動させる(S18)。
ポンプモータ90は作動させられていると判断された場合(S11のN)、ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動停止圧PoffであるP3より大きいか否かを判断する(S19)。アキュムレータ圧PaccがP3以下と判断された場合(S19のN)、アキュムレータ圧Paccはポンプ駆動停止圧Poffに達していないため、ECU100は、ポンプモータ90の作動を継続させる。アキュムレータ圧PaccがP3より大きいと判断された場合(S19のY)、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動停止圧Poffに達したと判断され、ECU100は、ポンプモータ90の作動を停止する(S20)。
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る車両用制動制御装置200におけるポンプ駆動開始圧およびポンプ駆動停止圧を示す図である。なお、第1の実施形態と同様の箇所については、説明を省略する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、アキュムレータ82のアキュムレータ温度Taccが所定の閾値温度T1よりも大きい場合に、ポンプ駆動開始圧PonをP1からP2に変更する。このとき、ECU100は、P3に設定されていたポンプ駆動停止圧PoffをP3よりも低い値のP4に変更する。ポンプ駆動停止圧Poffは、ポンプ駆動開始圧Ponとポンプ駆動停止圧Poffの差が変化しないように変更される。たとえば、本実施形態においては、P3−P1とP4−P2が等しくなるよう、ECU100は、ポンプ駆動停止圧Poffを変更する。
このようにポンプ駆動停止圧Poffを低い値に変更することにより、高温時においては、ポンプモータ90が作動しているときに、たとえばアキュムレータ圧Paccが変更前のP3に達していない場合であっても、変更後のP2に達していれば、ポンプモータ90の作動が停止される。このため、ポンプモータ90を作動させる機会を低減することによりポンプモータ90の消費電力を低減することができる。また、ポンプモータ90を作動させる機会が低減されるので、ポンプモータ90による作動音を低減することができる。また、リレー26をオン・オフする機会も低減することができ、リレー26の高寿命化を実現することができる。
図7は、第2の実施形態に係る車両用制動制御装置200の処理を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、ECU100の電源がオンにされたときに開始し、ECU100の電源がオフにされるまで所定時間毎に繰り返される。なお、図5と同様の箇所については説明を省略する。
S31からS37は、図5のS11からS17の説明と同様であるので、説明を省略する。本実施形態においても、ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理において、ポンプ駆動開始圧Ponの変更条件がすべて満たされる場合、ECU100は、ポンプ駆動開始圧Ponを変更前のP1よりも低い値のP2に変更する。ポンプ駆動開始圧Ponの変更条件はすべて満たされる場合とは、バッテリ残量XBが所定のバッテリ残量X1より小さいと判断され(S33のY)、車速YCがゼロであると判断され(S34のY)、アキュムレータ温度Taccが所定の閾値温度T1より高いと判断され(S35のY)、目標ホイールシリンダ圧PWTが所定のホイールシリンダ圧PW1より小さいと判断された場合(S36のY)、をいう。
ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理において、ポンプ駆動開始圧Ponの変更条件がすべて満たされ、ポンプ駆動開始圧PonがP2に変更された場合(S36のY)、ECU100は、アキュムレータ圧PaccがP2より低いか否かを判断する(S37)。アキュムレータ圧PaccがP2より低いと判断された場合(S37のY)、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ECU100は、ポンプモータ90を作動させ(S38)、ポンプ駆動停止圧PoffをP4に設定する(S39)。
ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理において、ポンプ駆動開始圧Ponの変更条件のいずれかが満たされない場合、ECU100は、ポンプ駆動開始圧PonをP1から変更しない。ポンプ駆動開始圧Ponの変更条件のいずれかが満たされない場合とは、バッテリ残量XBが所定のバッテリ残量X1以上と判断された場合(S33のN)、または車速YCがゼロより大きいと判断された場合(S34のN)、またはアキュムレータ温度Taccが所定の閾値温度T1以下と判断された場合(S35のN)、または目標ホイールシリンダ圧PWTが所定のホイールシリンダ圧PW1以上と判断された場合(S36のN)、をいう。ポンプ駆動開始圧PonがP1から変更されない場合、ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ポンプモータ90を作動させ(S40)、ポンプ駆動停止圧PoffをP3に設定する(S41)。
ポンプモータ90が作動していると判断された場合(S31のN)、ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動停止圧Poffの設定値より大きいか否かを判断する(S42)。すなわち、ポンプ駆動停止圧PoffがP3に設定されている場合は、ECU100は、アキュムレータ圧PaccがP3より大きいか否かを判断する。ポンプ駆動停止圧PoffがP4に設定されている場合は、ECU100は、アキュムレータ圧PaccがP4より大きいか否かを判断する。
アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動停止圧Poffの設定値以下と判断された場合(S42のN)、アキュムレータ圧Paccはポンプ駆動停止圧Poffに達していないため、ECU100は、ポンプモータ90の作動を継続させる。アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動停止圧Poffの設定値より大きいと判断された場合(S42のY)、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動停止圧Poffに達したと判断され、ECU100は、ポンプモータ90の作動を停止する(S43)。したがって、アキュムレータ82の温度が高く、ポンプ駆動開始圧PonがP4に設定された場合は、ポンプモータ90を作動させる機会が低減されるので、ポンプモータ90の消費電力を低減することができる。
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係る車両用制動制御装置200の全体構成図である。車両用制動制御装置200は、バッテリ22、ECU100、液圧ブレーキ装置、電動パーキングブレーキ装置などを有している。なお、前述の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
液圧ブレーキ装置は、図1および図2において説明した液圧ブレーキ装置150と同様の電子制御ブレーキシステムが採用されている。電子制御ブレーキシステムによって、車輪14の各々に、ブレーキペダル52の操作量や車輪14の各々の回転速度などに応じた制動力が与えられる。
電動パーキングブレーキ装置は、電動アクチュエータとしてのブレーキモータ30、減速機構32、張力センサ34、基本ワイヤ35、バランサ36、右ワイヤ38R、左ワイヤ38L、右後輪ブレーキ92RR、左後輪ブレーキ92RL、パーキングブレーキスイッチ46などを有している。本実施形態においては、右後輪ブレーキ92RRおよび左後輪ブレーキ92RLは液圧ブレーキ装置と共用となる。電動パーキングブレーキ装置は、車輪とともに回転する回転体に摩擦部材を液圧に電力により押圧駆動して車輪に制動力を与える電動制動装置として機能する。
ブレーキモータ30には、正・逆回転可能なモータが採用されており、供給される電流に応じてモータ軸が正回転および逆回転する。ブレーキモータ30は駆動回路28を介してECU100に接続されている。また、ブレーキモータ30は、駆動回路28を介して、バッテリ22にも接続されている。したがって、バッテリ22はポンプモータ90およびバッテリ22の双方に電力を供給する。ECU100は、制御電流を駆動回路28に供給し、駆動回路28は供給された制御電流に応じたデューティーで電流をブレーキモータ30に供給する。ブレーキモータ30は、供給された電流のデューティに応じたトルクで回転する。
ブレーキモータ30のモータ軸は歯車機構により構成される減速機構32に接続されており、減速機構32は基本ワイヤ35の一端に接続されている。減速機構32は、低トルクのブレーキモータ30の回転運動を、高い引張り力の基本ワイヤ35の引張り運動に変換する。また、減速機構32は、基本ワイヤ35の引張り力がブレーキモータ30に伝達されないように構成される。これによって、たとえばブレーキモータ30に電力が供給されず、ブレーキモータ30によって減速機構32にトルクが与えられない場合においても、電動パーキングブレーキ装置は、右後輪ブレーキ92RRおよび左後輪ブレーキ92RLを保持することができ、右後輪14RRおよび左後輪14RLに継続して制動力を与えることが可能となる。
基本ワイヤ35には、基本ワイヤ35の張力を検出する張力センサ34が設けられている。張力センサ34はECU100に接続されており、張力センサ34の検出結果はECU100に入力される。
基本ワイヤ35の他端は、バランサ36の略中央に接続されている。バランサ36の右端部には右ワイヤ38Rの一端が接続されており、左端部には左ワイヤ38Lの一端が接続されている。右後輪ブレーキ92RR内において、右ワイヤ38Rの他端がブレーキシューレバー(図示せず)を介してブレーキシューに接続されている。同様に左後輪ブレーキ92RL内において、左ワイヤ38Lの他端がブレーキシューレバーを介してブレーキシューに接続されている。
車両10の室内には、パーキングブレーキスイッチ46が設けられている。パーキングブレーキスイッチ46は、操作者によってオンおよびオフの操作が可能に構成されており、パーキングブレーキスイッチ46は操作者によるオンおよびオフの操作を検出する。パーキングブレーキスイッチ46はECU100に接続されており、検出結果はECU100に入力される。
パーキングブレーキスイッチ46が操作者によってオフからオンに操作されると、ECU100は、ブレーキモータ30のモータ軸が正回転するように駆動回路28に制御電流を入力し、ブレーキモータ30を制御する。ブレーキモータ30のモータ軸が正回転することにより、減速機構32を介して基本ワイヤ35に引張り力が与えられる。これによって、バランサ36を介して右ワイヤ38Rおよび左ワイヤ38Lにも引張り力が与えられる。
右後輪ブレーキ92RRおよび左後輪ブレーキ92RLにおいて、右ワイヤ38Rおよび左ワイヤ38Lに引張り力が与えられると、これらに結合されたブレーキシューが駆動される。これらの引張り力に応じて、摩擦部材としてのライニングが、車輪14とともに回転する回転体としてのドラムに押圧駆動され、右後輪14RRおよび左後輪14RLに制動力が与えられる。
このとき、バランサ36は、右ワイヤ38Rおよび左ワイヤ38Lの張力の相違に応じて、基本ワイヤ35が接続された略中央部を中心に回動する。右ワイヤ38Rと左ワイヤ38Lの長さが異なっていたり、経時変化などによって長さが変化しても、右ワイヤ38Rと左ワイヤ38Lに略均等な引張り力が与えられるので、右後輪14RRおよび左後輪14RLに均等な制動力を与えることが可能となる。張力センサ34の検出結果から、基本ワイヤ35の張力が目標の値に達したと判断された場合は、ECU100は、ブレーキモータ30に供給する電流の増加を停止し、ブレーキモータ30に供給する電流を一定に維持する。
パーキングブレーキスイッチ46が操作者によってオンからオフに操作されると、ECU100は、モータ軸が逆回転するようブレーキモータ30を制御する。ブレーキモータ30のモータ軸が逆回転することにより、基本ワイヤ35に与えられていた引張り力が徐々に低下させられ、右ワイヤ38Rおよび左ワイヤ38Lに与えられていた引張り力も徐々に低減される。右ワイヤ38Rおよび左ワイヤ38Lにに結合されたブレーキシューが、ライニングとともにシュースプリングによりドラムから引き戻され、車輪14に与えられていた制動力が解除される。張力センサ34の検出結果から、基本ワイヤ35の張力が所定の値まで低減されたと判断された場合は、ECU100は、ブレーキモータ30への電流の供給を停止し、ブレーキモータ30の作動を停止する。
図9は、第3の実施形態に係る車両用制動制御装置200の処理を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、ECU100の電源がオンにされたときに開始し、ECU100の電源がオフにされるまで所定時間毎に繰り返される。
ECU100は、車速YCがゼロより大きいか否か、すなわち車両10が走行中か否かを判断する(S51)。車速YCがゼロより大きい、すなわち車両10が走行中と判断された場合(S51のY)、ECU100は、液圧ブレーキ優先制御を実施する(S52)。車速YCがゼロ、すなわち車両10が停止中と判断された場合(S51のN)、ECU100は、パーキングブレーキ優先制御を実施する(S53)。
本実施形態に係る液圧ブレーキ優先制御は、電子制御ブレーキシステムが採用された液圧ブレーキ装置150による車輪14の制動と電動パーキングブレーキ装置による車輪14の制動が同時に実施される場合に、液圧ブレーキ装置150による車輪14の制動を優先し、電動パーキングブレーキ装置の消費電力を低減する制御をいう。また、パーキングブレーキ優先制御とは、液圧ブレーキ装置150による車輪14の制動と電動パーキングブレーキ装置による車輪14の制動が同時に実施される場合に、電動パーキングブレーキ装置による車輪14の制動を優先し、液圧ブレーキ装置150の消費電力を低減する制御をいう。液圧ブレーキ装置150は、電動パーキングブレーキ装置よりも走行中の車両10を制動することに適している。このため、車両10の走行中は、液圧ブレーキ装置150が車両10を制動する機能の低下を抑制するため、液圧ブレーキ優先制御が実施される。また、電動パーキングブレーキ装置は、車両10の停止状態を維持することが可能である。このため、車両10が停止中は、電動パーキングブレーキ装置が車両10を制動する機能の低下を抑制するため、パーキングブレーキ優先制御が実施される。
図10は、図9におけるS52の液圧ブレーキ優先制御の処理を示すフローチャートである。液圧ブレーキ優先制御において、ECU100は、まず液圧ブレーキ装置150がオフからオンに操作されたか否か、すなわちブレーキペダル52が運転者によって操作されたか否かを判断する(S61)。ブレーキペダル52が操作されたか否かは、ストロークセンサ40の検出結果とマスタシリンダ圧センサ66の検出結果を利用して判断される。
液圧ブレーキ装置150がオフからオンに操作されたと判断された場合(S61のY)、ECU100は、張力センサ34の検出結果を利用して、基本ワイヤ35の張力FPが所定の張力F1より大きいか否かを判断する(S62)。これにより、ECU100は、電動パーキングブレーキ装置によって右後輪14RRおよび左後輪14RLに制動力が与えられているか否かを判断する。
基本ワイヤ35の張力FPが所定の張力F1より大きいと判断された場合(S62のY)、ECU100は、右後輪14RRおよび左後輪14RLに制動力が与えられていると判断し、右前輪14FRおよび左前輪14FLの制動制御を実施し、右後輪14RRおよび左後輪14RLの制動制御を停止する(S63)。これによって、右後輪14RRおよび左後輪14RLに重複した制動力が与えられることが抑制される。右後輪14RRおよび左後輪14RLの制動制御を停止するため、アキュムレータ82から右後輪14RRおよび左後輪14RLのホイールシリンダ18への作動液の供給が抑制される。このため、ポンプモータ90を作動させる機会が低減され、ポンプモータ90の消費電力を低減することができる。
なお、このとき、ECU100は、ブレーキモータ30への電力の供給を停止してもよい。ブレーキモータ30への電力の供給が停止された場合においても、減速機構32のギアの摩擦力などによって、電動パーキングブレーキ装置による右後輪14RRおよび左後輪14RLへ与えられる制動力は保持される。これによって、ポンプモータ90とブレーキモータ30が同時に作動させられることが抑制され、ポンプモータ90とブレーキモータ30が同時に消費する電力を低減することができる。
基本ワイヤ35の張力FPが所定の張力F1以下と判断された場合(S62のN)、ECU100は、電動パーキングブレーキ装置によって右後輪14RRおよび左後輪14RLに制動力が与えられていないと判断し、通常通り、電子制御ブレーキシステムによる4つの車輪14すべての制動制御を実施する(S64)。
液圧ブレーキ装置150がオフからオンに操作されていないと判断された場合(S61のN)、ECU100は、パーキングブレーキスイッチ46の検出結果を利用して、パーキングブレーキスイッチ46が操作者によってオフからオンに操作されたか否かを判断する(S65)。パーキングブレーキスイッチがオフからオンに操作されていないと判断された場合(S65のN)、ECU100は、液圧ブレーキ装置150および電動パーキングブレーキ装置をともに作動させない。
パーキングブレーキスイッチ46がオフからオンに操作されたと判断された場合(S65のY)、ECU100は、液圧ブレーキ装置150が作動しているか否かを判断する(S66)。液圧ブレーキ装置150が作動しているか否かは、ブレーキペダル52が運転者によって操作されているか否かによって判断される。したがって、液圧ブレーキ装置150が作動しているか否かは、ストロークセンサ40の検出結果を利用して判断される。
このように、液圧ブレーキ装置150が作動しているときに電動パーキングブレーキ装置を作動させる場合、ECU100は、ポンプモータ90の作動状態に基づいて、ブレーキモータ30に供給する電力を低減する。ポンプモータ90の作動状態に基づいてブレーキモータ30の消費電力を低減することができるため、ポンプモータ90とブレーキモータ30の双方によって同時に消費される電力を低減することが可能となる。したがって、第1制動装置または第2制動装置が車両を制動する機能の低下を抑制しながら、ポンプモータ90とブレーキモータ30の双方によって同時に多くの電力が消費されることを抑制することができる。
具体的には、液圧ブレーキ装置150が作動していると判断された場合(S66のY)、ECU100は、リレー26をオンにしているか否かを判断することにより、ポンプモータ90が作動しているか否かを判断する(S67)。ポンプモータ90が作動していると判断された場合(S67のY)、ECU100は、ブレーキモータ30へ供給する電流IPをゼロにする(S68)。これによって、ポンプモータ90とブレーキモータ30の双方によって同時に消費される電力を低減することが可能となる。
ポンプモータ90が停止中と判断された場合(S67のN)、ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponより低いか否かを判断する(S69)。アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponより低いと判断された場合(S69のY)、ECU100は、ブレーキモータ30へ供給する電流IPをゼロにする(S68)。これによって、ポンプモータ90とブレーキモータ30の双方によって同時に消費される電力を低減することが可能となる。
このように、ECU100は、ポンプモータ90とブレーキモータ30とを同時に作動させない。これによって、ポンプモータ90とブレーキモータ30により同時に多くの電力が消費されることを抑制することができる。また、ポンプモータ90またはブレーキモータ30のいずれか一方を作動させることができることから、液圧ブレーキ装置150および電動パーキングブレーキ装置によって車輪14に与える制動力を確保することができる。
なお、ポンプモータ90が作動しているとき、またはアキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponより低いとき、ECU100は、ブレーキモータ30へ供給する電流IPをゼロより大きい値に低減してもよいことは勿論である。これによっても、ポンプモータ90が作動しているとき、または作動する可能性が高いときに、ポンプモータ90とブレーキモータ30の双方によって同時に消費される電力を低減することが可能となる。
液圧ブレーキ装置150は作動していないと判断された場合(S66のN)、およびアキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Pon以上と判断された場合(S69のN)は、ECU100は、ポンプモータ90が停止していると判断する。ECU100は、基本ワイヤ35の張力FPを所定の張力F2になるまでブレーキモータ30を作動させ、電動パーキングブレーキ装置によって右前輪14FRおよび左前輪14FLに制動力を与える(S70)。
図11は、図9におけるS53のパーキングブレーキ優先制御の処理を示すフローチャートである。パーキングブレーキ優先制御において、ECU100は、まず液圧ブレーキ装置150が運転者によってオフからオンに操作されたか否かを判断する(S81)。ブレーキペダル52が操作されたか否かは、前述と同様にストロークセンサ40の検出結果を利用して判断される。
液圧ブレーキ装置150がオフからオンに操作されたと判断された場合(S81のY)、ECU100は、パーキングブレーキスイッチ46の検出結果を利用して、パーキングブレーキスイッチ46はオンになっているか否かを判断する(S82)。パーキングブレーキスイッチ46はオンになっていると判断された場合(S82のY)、ECU100は、電動パーキングブレーキ装置によって車輪14に制動力が与えられていると判断する。
ECU100は、右マスタシリンダ圧センサ66FRによって検出されたブレーキ油圧制御導管68におけるマスタシリンダ圧PMCと、右前輪用W/C圧センサ78FRによって検出された右前輪用ホイールシリンダ18FRのホイールシリンダ圧PWCとを比較する。本実施形態における液圧ブレーキ装置150のような電子制御ブレーキシステムにおいては、マスタシリンダ圧PMCよりもホイールシリンダ圧PWCの方が通常高い。ブレーキ油圧制御導管68のマスタシリンダ圧PMCと右前輪用ホイールシリンダ18FRのホイールシリンダ圧PWCが同一でない場合は、ECU100は、右前輪減圧用リニアバルブ76FRを作動させ、右前輪用ホイールシリンダ18FRのホイールシリンダ圧PWCをブレーキ油圧制御導管68のマスタシリンダ圧PMCと略同一になるまで低減する。
同様に、ECU100は、左マスタシリンダ圧センサ66FLによって検出されたブレーキ油圧制御導管70におけるマスタシリンダ圧PMCと、左前輪用W/C圧センサ78FLによって検出された左前輪用ホイールシリンダ18FLのホイールシリンダ圧PWCとを比較する。ブレーキ油圧制御導管70のマスタシリンダ圧PMCと左前輪用ホイールシリンダ18FLのホイールシリンダ圧PWCが同一でない場合は、ECU100は、左前輪減圧用リニアバルブ76FLを作動させ、左前輪用ホイールシリンダ18FLのホイールシリンダ圧PWCをブレーキ油圧制御導管70のマスタシリンダ圧PMCと略同一になるまで低減する(S83)。
この場合、電動パーキングブレーキ装置によって右後輪14RRおよび左後輪14RLに制動力が与えられているので、ホイールシリンダ18へ供給する作動液圧を減圧しても車両10を制動した状態に維持することができる。また、右前輪用ホイールシリンダ18FRおよび右前輪用ホイールシリンダ18FRにおいてホイールシリンダ圧PWCを低減するので、ポンプモータ90を作動させる機会も低減することができる。このため、ポンプモータ90による消費電力を低減することができる。
また、たとえば、バッテリ22の残量が所定の値よりも少なくなると、システムリセットが実行される。システムリセットが実行されると、常開弁であるマスタ遮断弁72が開弁し、右前輪用ホイールシリンダ18FRがブレーキ油圧制御導管68を介してマスタシリンダ56と連通し、および左前輪用ホイールシリンダ18FLがブレーキ油圧制御導管70を介してマスタシリンダ56と連通する。この場合、ホイールシリンダ圧PWCはマスタシリンダ圧PMCよりも高いままにしておくと、ホイールシリンダの作動液圧がマスタシリンダに供給されることによってブレーキペダルを操作方向と逆方向に押し返すキックバックが発生し、運転者の操作性を損ねる可能性がある。
本実施形態に係る車両用制動制御装置200は、電動パーキングブレーキ装置によって車輪14に制動力が与えられている場合には、右前輪用ホイールシリンダ18FRおよび左前輪用ホイールシリンダ18FLのホイールシリンダ圧PWCをマスタシリンダ圧PMCと略同一にする。このため、システムリセットが実行されることによりホイールシリンダ18とマスタシリンダ56が連通してもキックバックの発生を抑制することができる。
パーキングブレーキスイッチ46はオフになっていると判断された場合(S82のN)、ECU100は、電動パーキングブレーキ装置によって車輪14に制動力が与えられていないと判断し、電子制御ブレーキシステムによる通常の制動制御を実施する(S84)。
液圧ブレーキ装置150がオフからオンに操作されていないと判断された場合(S81のN)、ECU100は、パーキングブレーキスイッチ46が運転者によってオフからオンに操作されたか否かを判断する(S85)。パーキングブレーキスイッチ46がオフからオンに操作されていないと判断された場合(S85のN)、ECU100は、液圧ブレーキ装置150および電動パーキングブレーキ装置をともに作動させない。
パーキングブレーキスイッチ46がオフからオンに操作されたと判断された場合(S85のY)、ECU100は、基本ワイヤ35の張力FPが所定の張力F2になるまでブレーキモータ30を作動させ、車輪14に制動力を与える(S86)。車輪14に制動力が与えられると、ECU100は、液圧ブレーキ装置150が作動しているか否かを判断する(S87)。この場合も、液圧ブレーキ装置150が作動しているか否かは、ブレーキペダル52が運転者によって操作されているか否かよって判断される。したがって、液圧ブレーキ装置150が作動しているか否かは、ストロークセンサ40の検出結果を利用して判断される。
液圧ブレーキ装置150が作動していないと判断された場合(S87のN)、ECU100は、液圧ブレーキ装置150の消費電力を低減する必要が低いことから、本フローチャートにおける処理を終了する。液圧ブレーキ装置150が作動していると判断された場合(S87のY)、ECU100は、電動パーキングブレーキ装置によって車輪14に制動力が与えられるので、S83と同様に、右前輪14FRおよび左前輪14FLのホイールシリンダ圧PWCをマスタシリンダ圧PMCと略同一になるまで低減する(S88)。これによって、ポンプモータ90の消費電力を低減することができる。また、システムリセットが実行されても、キックバックを抑制することができ、運転者の操作性の低下を抑制することができる。
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態に係る車両用制動制御システム300の全体構成図である。なお、前述の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
車両用制動制御システム300は、液圧ブレーキ装置、電動パーキングブレーキ装置、パワーステアリング装置98などを有する。パワーステアリング装置98は、車両の操舵を補助する操舵補助装置として機能する。液圧ブレーキ装置は、第1から第3の実施形態と同様であり、電動パーキングブレーキ装置は第1および第2の実施形態と同様である。
パワーステアリング装置98は、電動アクチュエータとしてのパワーステアリングモータ94、ギヤ機構96などを有する。ギヤ機構96はステアリングシャフト95に設けられており、パワーステアリングモータ94の駆動トルクをステアリングシャフト95に伝達する。ステアリングシャフト95は、ラックアンドピニオン方式のギアボックス(図示せず)を介して、車両10の横方向に延在するステアリングラックに接続される。このギアボックス内のラックギヤおよびピニオンギヤによって、ステアリングシャフト95に伝達されるトルクが車両10の横方向へのステアリングラックの推力に変換される。ステアリングラックが横方向に移動することによって、タイロッド(図示せず)およびナックルアーム(図示せず)を介して右前輪14FRおよび左前輪14FLが転舵され、車両10の操舵が実現される。
パワーステアリングモータ94は、駆動回路29を介してバッテリ22に接続されており、バッテリ22は、パワーステアリングモータ94に電力を供給する。したがって、バッテリ22は、パワーステアリングモータ94、液圧ブレーキ装置のポンプモータ90、および電動パーキングブレーキ装置のブレーキモータ30に電力を供給する。また、パワーステアリングモータ94は、駆動回路29を介してECU100にも接続されている。ECU100は、駆動回路29に制御電流を供給する。駆動回路29は、ECU100から供給された制御電流に応じたデューティーでパワーステアリングモータ94に電力を供給し、パワーステアリングモータ94を作動させる。
ステアリングシャフト95には、ハンドル45、操舵トルクセンサ42、および舵角センサ44が設けられている。操舵トルクセンサ42は、運転者がハンドル45を操作することによりハンドル45に与えられる操舵トルクを検出する。舵角センサ44は、運転者がハンドル45を操作した角度を検出する。操舵トルクセンサ42および舵角センサ44はECU100に接続され、各々の検出結果はECU100に入力される。
ECU100は、操舵トルクセンサ42の検出結果を利用して操舵トルクを算出する。ECU100は、算出した操舵トルクに応じて、駆動回路29に制御電流を供給し、パワーステアリングモータ94を作動させる。このようにして、ECU100は、パワーステアリング装置98により操舵トルクに応じて運転者の操舵を補助し、運転者がハンドル45を操作するトルクを軽減する。本実施形態に係る車両用制動制御システム300は、パワーステアリング装置98パワーステアリングモータ94の作動状態に基づいて、液圧ブレーキ装置のポンプモータ90または電動パーキングブレーキ装置のブレーキモータ30に供給する電力を低減する。
ECU100は、パワーステアリング装置98のパワーステアリングモータ94の作動状態に基づいて、ブレーキモータ30に供給する電力を低減する。具体的には、ECU100は、操舵角θhが所定の角度θ1よりも大きい角度までハンドル45が運転者により操舵された場合に、ブレーキモータ30への電力の供給を停止する。これによって、パワーステアリングモータ94とブレーキモータ30の双方によって同時に消費される電力を低減することが可能となる。なお、ECU100は、操舵角θhが所定の角度θ1よりも大きい角度までハンドル45が運転者により操舵された場合に、ブレーキモータ30への電力の供給を停止せずに、供給する電力をゼロより大きい値に低減してもよいことは勿論である。
また、ECU100は、パワーステアリング装置98のパワーステアリングモータ94の作動状態に基づいて、ブレーキモータ30に供給する電力を低減する。具体的には、ECU100は、操舵角θhが所定の角度θ1よりも大きい角度までハンドル45が運転者により操舵された場合に、ポンプモータ90のポンプ駆動開始圧Ponを低い値に変更する。この処理については、図13に示すフローチャートの説明において詳細に説明する。
図13は、第4の実施形態に係る車両用制動制御システム300の処理を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、ECU100の電源がオンにされたときに開始し、ECU100の電源がオフにされるまで所定時間毎に繰り返される。なお、前述の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
ECU100は、ポンプモータ90が作動していないか否かを判断する(S91)。ポンプモータ90が作動していないか否かは、ポンプモータ90へ電流が供給されているか否かを検出することなどにより判断される。
ポンプモータ90が作動していないと判断された場合(S91のY)、ECU100は、アキュムレータ圧センサ88の検出結果を利用して、アキュムレータ圧Paccが所定のアキュムレータ圧P5より低いか否かを判断する(S92)。アキュムレータ圧PaccがP5以上と判断された場合(S92のN)、アキュムレータ圧Paccはポンプ駆動開始圧まで低下していないので、ECU100は、ポンプモータ90を作動させない。
アキュムレータ圧PaccがP5より低いと判断された場合(S92のY)、ECU100は、ポンプ駆動開始圧Ponを変更すべきか否かを判断する、ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理に移行する。ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理では、ECU100は、操舵角θh、目標ホイールシリンダ圧PWTから、ポンプ駆動開始圧Ponを変更すべきか否かを判断する。
ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理において、まずECU100は、操舵トルクセンサ42の検出結果を利用して、操舵角θhが所定の操舵角θ1より大きいか否かを判断する(S93)。操舵角θhがθ1以下と判断された場合(S93のN)、操舵角θhが小さくパワーステアリングモータ94の消費電力が大きくないため、ポンプ駆動開始圧Ponを変更しない。ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ポンプモータ90を作動させる(S96)。
操舵角θhがθ1より大きいと判断された場合(S93のY)、ECU100は、目標ホイールシリンダ圧PWTがPW2より低いか否かを判断する(S94)。目標ホイールシリンダ圧PWTがPW2以上と判断された場合(S94のN)、ECU100は、ブレーキペダル52が強く操作されたため車輪に強い制動力を与える必要があり、ホイールシリンダ圧を高く増圧する必要があると判断し、ポンプ駆動開始圧Ponを変更しない。ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ポンプモータ90を作動させる(S96)。
目標ホイールシリンダ圧PWTがPW2より低いと判断された場合(S94のY)、ECU100は、ポンプ駆動開始圧Ponの変更判断処理において、ポンプ駆動開始圧Ponを変更するための操舵角θおよび目標ホイールシリンダ圧PWTの条件を満足していると判断し、ポンプ駆動開始圧Ponを、P5よりも低い値のP6に変更する。P6は、液圧ブレーキ装置により車輪14に与える制動力が低減されることを抑制し、パワーステアリングモータ94およびポンプモータ90の双方によって同時に消費される電力を低減することができる値に設定される。P6は、ECU100のROM104に格納されている。
ポンプ駆動開始圧PonがP6に変更されると、ECU100は、アキュムレータ圧PaccがP6より低いか否かを判断する(S95)。アキュムレータ圧PaccがP6以上と判断された場合(S95のN)、ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponにまで達していないため、ポンプモータ90を作動させず、本フローチャートにおける処理を終了する。これによって、ポンプモータ90を作動させる機会を低減することによりポンプモータ90の消費電力を低減することができる。アキュムレータ圧PaccがP6より低いと判断された場合(S95のY)、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動開始圧Ponに達しているため、ECU100は、ポンプモータ90を作動させる(S96)。
ポンプモータ90が作動されていないと判断された場合(S91のN)、ECU100は、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動停止圧PoffとしてのP7より大きいか否かを判断する(S97)。アキュムレータ圧PaccがP7以下と判断された場合(S97のN)、アキュムレータ圧Paccはポンプ駆動停止圧Poffに達していないため、ECU100は、ポンプモータ90の作動を継続させる。アキュムレータ圧PaccがP7より大きいと判断された場合(S97のY)、アキュムレータ圧Paccがポンプ駆動停止圧Poffに達したと判断され、ECU100は、ポンプモータ90の作動を停止する(S98)。
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
第1から第3の実施形態において、車両用制動制御装置200は、たとえばPレンジやDレンジなど、シフトの位置を検出するシフトセンサを有していてもよい。ECU100は、このシフトセンサの検出結果を利用して車両10が走行中か停止中かを判断してもよい。これによっても、車両10が走行中か停止中かをECU100が判断することが可能となる。
第3および第4の実施形態において、ECU100は、バッテリ22の残量が所定の値より少なくなった場合に、ポンプモータ90の作動状態に基づいて、ブレーキモータ30に供給する電力を低減してもよい。また、ECU100は、バッテリ22の残量が所定の値より少なくなった場合に、ブレーキモータ30の作動状態に基づいて、ポンプモータ90に供給する電力を低減してもよい。これによって、バッテリ22の残量が少なくなったときに、ポンプモータ90およびブレーキモータ30が同時に消費する電力を低減することができる。
第3の実施形態において、ECU100は、液圧ブレーキ装置に異常が発生し、電動パーキングブレーキ装置によって車輪14に制動力が与えられている場合に、右前輪用ホイールシリンダ18FRおよび左前輪用ホイールシリンダ18FLのホイールシリンダ圧PWCを、マスタシリンダ圧PMCと略同一になるまで減圧してもよい。この場合、異常が発生していない車輪14のホイールシリンダ18のホイールシリンダ圧PWCを変更してもよい。これによって、液圧ブレーキ装置に異常が発生した場合においても、ポンプモータの消費電力を低減することができる。
第4の実施形態において、ECU100は、操舵トルクセンサ42によって検出された操舵トルクが所定の値より大きい場合に、ポンプ駆動開始圧Ponを低い値に変更してもよい。この場合、操舵トルクを検出することによって、パワーステアリング装置98のパワーステアリングモータ94と、液圧ブレーキ装置のポンプモータ90または電動パーキングブレーキ装置のブレーキモータ30によって同時に消費される電力を低減することが可能となる。
第4の実施形態において、ECU100は、ポンプ駆動停止圧PoffをP7よりも低い値のP8に変更してもよい。ポンプ駆動停止圧Poffは、ポンプ駆動開始圧Ponとポンプ駆動停止圧Poffの差が変化しないように変更してもよい。たとえば、本実施形態においては、P7−P5とP8−P6が等しくなるよう、ECU100は、ポンプ駆動停止圧Poffを変更してもよい。これによって、ポンプモータ90を作動させる機会を低減することができ、ポンプモータ90の消費電力を低減することができる。また、ポンプモータ90による作動音低減、およびリレー26の高寿命化を実現することができる。
10 車両、 14 車輪、 16 車輪速センサ、 18 ホイールシリンダ、 22 バッテリ、 24 バッテリ残量センサ、 26 リレー、 30 ブレーキモータ、 42 操舵トルクセンサ、 44 舵角センサ、 46 パーキングブレーキスイッチ、 50 外気温センサ、 56 マスタシリンダ、 80 ポンプ、 82 アキュムレータ、 90 ポンプモータ、 94 パワーステアリングモータ、 98 パワーステアリング装置、 100 ECU、 150 液圧ブレーキ装置、 200 車両用制動制御装置、 300 車両用制動制御システム。