JP2007055442A - 前輪用サスペンション装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 前輪用サスペンション装置において、据え切り時における操舵ハンドルの手ごたえ感を減らす。
【解決手段】 前後一対のロアアーム21,22および前後一対のアッパアーム23,24は、車両幅方向に延設されていて、各内端にてゴムブッシュ21a〜24aを介して車体に連結され、各外端にてボールジョイント21b〜24bを介してナックル(前輪支持部材)にそれぞれ連結される。仮想キングピン軸KPは、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定される。ステア時にて内輪側の仮想キングピン軸KPは、キングピン傾角およびキャスタ角を何れも減少させるように移動方向が設定される。
【選択図】 図6
【解決手段】 前後一対のロアアーム21,22および前後一対のアッパアーム23,24は、車両幅方向に延設されていて、各内端にてゴムブッシュ21a〜24aを介して車体に連結され、各外端にてボールジョイント21b〜24bを介してナックル(前輪支持部材)にそれぞれ連結される。仮想キングピン軸KPは、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定される。ステア時にて内輪側の仮想キングピン軸KPは、キングピン傾角およびキャスタ角を何れも減少させるように移動方向が設定される。
【選択図】 図6
Description
本発明は、前輪用サスペンション装置に関し、特に、サスペンションジオメトリを考慮に入れた車両の前輪用サスペンション装置に関する。
この種の前輪用サスペンション装置の一つとして、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前輪支持部材の下部に連結された前後一対のロアアームと、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前記前輪支持部材の上部に連結された前後一対のアッパアームとを備え、前記前後一対のロアアームおよび前記前後一対のアッパアームによる仮想キングピン軸が、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定されたものがあり、例えば、下記特許文献1に記載されている。
特開平5−270224号公報
上記した特許文献1に記載されている前輪用サスペンション装置においては、前輪の直進走行位置(非ステア時)にて、制動時に両前輪にトーイン方向のモーメントが作用するように仮想キングピン軸の中立位置が設定されている。そして、前輪の旋回走行位置(ステア時)にて、両前輪のキャスタ角が増大し、かつ制動時に外輪および内輪に対して非ステア時の車輪位置に戻す方向のモーメントが作用するように各仮想キングピン軸の移動方向が設定されている。
ここで、仮想キングピン軸が、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定されている場合には、一般に、ステアによる内輪側(内切り側)にポジティブキャンバが付き、外輪側(外切り側)にネガティブキャンバが付く。このため、内輪の方が外輪に比して、タイヤ中心の移動量が大きくなり、タイヤの接地部全体が路面に引きずられる移動量も大きくなる。したがって、ハンドル操舵力の軽重に関しては、内輪の仮想キングピン軸の移動量およびその移動方向が大きな影響を与える。
ところで、上記した特許文献1に記載されている前輪用サスペンション装置では、ステアによる仮想キングピン軸の移動により、内輪側のキングピン傾角およびキャスタ角が何れも非ステア時に比して増大し、ステア時の内輪が非ステア時の車輪位置に戻ろうとする復元力が大きくなるように設定されている。このため、据え切り時においては、操舵ハンドルの手ごたえ感が過大になるという問題がある。
したがって、本発明では、上記問題に対処するために、据え切り時における操舵ハンドルの手ごたえ感を減らし得る前輪側サスペンション装置を提供することをその目的としている。
上記目的を達成するため、本発明においては、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前輪支持部材の下部に連結された前後一対のロアアームと、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前記前輪支持部材の上部に連結された前後一対のアッパアームとを備え、前記前後一対のロアアームおよび前記前後一対のアッパアームによる仮想キングピン軸が、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定された車両の前輪用サスペンション装置において、ステア時にて内輪側の仮想キングピン軸は、キングピン傾角およびキャスタ角を何れも減少させるように移動方向が設定されていることに特徴がある。
この前輪用サスペンション装置では、ステア時に内輪側のキングピン傾角およびキャスタ角が減少するように、内輪側の仮想キングピン軸の移動方向が設定されている。このため、ステア時の内輪が非ステア時の車輪位置に戻ろうとする復元力が小さくなる。したがって、上記した従来技術の前輪用サスペンション装置に比して、据え切り時のハンドル操舵力を低減させることが可能となって、操舵ハンドルの手ごたえ感を減らすことが可能である。
また、上記目的を達成するため、本発明においては、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前輪支持部材の下部に連結された前後一対のロアアームと、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前記前輪支持部材の上部に連結された前後一対のアッパアームとを備え、前記前後一対のロアアームおよび前記前後一対のアッパアームによる仮想キングピン軸が、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定された前輪用サスペンション装置において、ステア時にて内輪側の仮想キングピン軸は、この内輪側のタイヤの接地部を車両前方に移動させるように移動方向が設定されていることに特徴がある。
この前輪用サスペンション装置では、ステア時に内輪側のタイヤの接地部が車両前方に移動するように仮想キングピン軸の移動方向が設定されている。ステアによるタイヤの接地部形状の変化を考慮に入れると、タイヤの接地部を車両前方に移動させることで、タイヤの接地部全体が路面に引きずられる移動量の総和を小さく抑えることが可能である。このため、上記した従来技術の前輪用サスペンション装置に比して、据え切り時のハンドル操舵力をより一層低減させることが可能となって、操舵ハンドルの手ごたえ感をより一層減らすことが可能である。
また、上記目的を達成するため、本発明においては、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前輪支持部材の下部に連結された前後一対のロアアームと、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され外端にて前記前輪支持部材の上部に連結されたA形のアッパアームとを備え、前記前後一対のロアアームおよび前記A形のアッパアームによる仮想キングピン軸が、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に下方が移動可能に設定された前輪用サスペンション装置において、ステア時にて内輪側の仮想キングピン軸は、この内輪側のタイヤの接地部を車両前方に移動させるように移動方向が設定されていることに特徴がある。
この前輪用サスペンション装置では、前後一対のロアアームとA形のアッパアームを備えてなり、ステア時に仮想キングピン軸の上方は移動せず、下方のみが移動するように設定されている。このため、上記した前後一対のロアアームおよび前後一対のアッパアームを備えてなる前輪用サスペンション装置のように、ステア時にキングピン傾角およびキャスタ角が減少するように仮想キングピン軸の移動方向を設定することは困難であるが、タイヤの接地部が車両前方に移動するように仮想キングピン軸の移動方向を設定することで、タイヤの接地部全体が路面に引きずられる移動量の総和を小さく抑えることは可能である。したがって、この場合にも、上記した従来技術の前輪用サスペンション装置に比して、据え切り時のハンドル操舵力を低減させることが可能となって、操舵ハンドルの手ごたえ感を減らすことが可能である。
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明による前輪用サスペンション装置の第一実施形態における右前輪側を概略的に示していて、この第1実施形態においては、右前輪10を回転可能に支持する前輪支持部材としてのナックル11が、前後一対のロアアーム21,22、前後一対のアッパアーム23,24、タイロッド25などによって車体30に連結されている。なお、前輪用サスペンション装置の左前輪側についても、右前輪側と同様に構成されているため、ここでは右前輪側を代表して説明することとし、左前輪側についての説明を省略する。
前後一対のロアアーム21,22は、何れもI形のものであり、それぞれ車両幅方向に延設されていて、各内端にてゴムブッシュ21a,22aを介して車体30の一部に連結され、各外端にてボールジョイント21b,22bを介してナックル11の下部に連結されている。
前方のロアアーム(以下、フロントロアアームという)21は、その外端が内端より車両後方に位置するように傾斜した状態で配置されている。また、後方のロアアーム(以下、リアロアアームという)22は、その外端が内端より車両前方に位置するように傾斜した状態で配置されている。フロントロアアーム21およびリアロアアーム22の各軸線は、車両幅方向外方の交差点PL1で交差している。
前後一対のアッパアーム23,24は、何れもI形のものであり、それぞれ車両幅方向に延設されていて、各内端にてゴムブッシュ23a,24aを介して車体30の一部に連結され、各外端にてボールジョイント23b,24bを介してナックル11の上部に連結されている。
前方のアッパアーム(以下、フロントアッパアームという)23は、その外端が内端より車両後方に位置するように傾斜した状態で配置されている。また、後方のアッパアーム(以下、リアアッパアームという)24は、その外端が内端より車両前方に位置するように傾斜した状態で配置されている。フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24の各軸線は、車両幅方向外方の交差点PU1で交差している。そして、この交差点PU1と前記交差点PL1を結んだ直線により仮想キングピン軸KPが形成されるようになっている。
タイロッド25は、車両幅方向に延設されていて、その外端にてボールジョイント25aを介してナックル11の中間部に連結され、その内端にてラック軸(図示省略)に連結されている。このラック軸は、ハンドル操作によるピニオンシャフト(図示省略)の回転に応じて車両幅方向に移動される。
ここで、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22のアーム長、車両取り付け角などの諸元を、図2に基づいて具体的に説明しておく。フロントロアアーム21のアーム長Lfおよびリアロアアーム22のアーム長Lrは、(300mm≦Lf,Lr≦430mm)を満たすように設定されている。
平面視にて、フロントロアアーム21の外端のボールジョイント21b中心とリアロアアーム22の外端のボールジョイント22b中心間のボールジョイント距離D1は、(D1≦60mm)を満たすように設定されている。一般に、ボールジョイント距離D1が小さく設定されるほど、交差点PL1の移動量が小さくなる。
平面視にて、フロントロアアーム21の外端のボールジョイント21b中心とリアロアアーム22の外端のボールジョイント22b中心を結ぶ直線と、車両前後方向水平線L1間のボールジョイント取り付け角θ1は、(θ1≧5°)を満たすように設定されている。なお、ボールジョイント取り付け角θ1は、車両前後方向水平線L1に対してボールジョイント22b中心が車両幅方向外方に位置している場合を正とし、車両前後方向水平線L1に対してボールジョイント22b中心が車両幅方向内方に位置している場合を負とする。一般に、ボールジョイント取り付け角θ1が大きく設定されるほど、交差点PL1の車両幅方向外方への移動量が大きくなる。
平面視にて、フロントロアアーム21の軸線とリアロアアーム22の軸線間のアーム角δ1は、(δ1≧35°)を満たすように設定されている。一般に、アーム角δ1が小さく設定されるほど、交差点PL1の移動量が大きくなる。
平面視にて、リアロアアーム22の軸線と、このリアロアアーム22の外端のボールジョイント22b中心を通る車両幅方向水平線L2間における車両取り付け角α1は、(−10°≦α1≦10°)を満たすように設定されている。なお、車両取り付け角α1は、車両幅方向水平線L2に対してリアロアアーム22の内端が車両後方に位置している場合を正とし、車両幅方向水平線L2に対してリアロアアーム22の内端が車両前方に位置している場合を負とする。一般に、車両取り付け角α1が小さく設定されるほど、交差点PL1の車両幅方向外方への移動量が大きくなる。
平面視にて、フロントロアアーム21の軸線と、このフロントロアアーム21の外端のボールジョイント21b中心を通る車両幅方向水平線L3間における車両取り付け角β1は、(35°≦β1≦60°)を満たすように設定されている。なお、車両取り付け角β1は、車両幅方向水平線L3に対してフロントロアアーム21の内端が車両前方に位置している場合を正とし、車両幅方向水平線L3に対してフロントロアアーム21の内端が車両後方に位置している場合を負とする。
次に、フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24のアーム長、車両取り付け角などの諸元を、図3に基づいて具体的に説明しておく。フロントアッパアーム23のアーム長Ufは、フロントロアアーム21のアーム長Lfとの関係において、(Uf≦Lf)を満たすように設定されている。同様に、リアアッパアーム24のアーム長Urは、リアロアアーム22のアーム長Lrとの関係において、(Ur≦Lr)を満たすように設定されている。
平面視にて、フロントアッパアーム23の外端のボールジョイント23b中心とリアアッパアーム24の外端のボールジョイント24b中心間のボールジョイント距離D2は、上記ボールジョイント距離D1との関係において、(D2>D1)を満たすように設定されている。すなわち、交差点PU1の移動量が、交差点PL1の移動量に比して大きくなるように設定されている。
平面視にて、フロントアッパアーム23の外端のボールジョイント23b中心とリアアッパアーム24の外端のボールジョイント24b中心を結ぶ直線と、車両前後方向水平線L4間のボールジョイント取り付け角θ2は、ボールジョイント取り付け角θ1の場合と同様、(θ2≧5°)を満たすように設定されている。フロントアッパアーム23の軸線とリアアッパアーム24の軸線間のアーム角δ2は、(δ2≦55°)を満たすように設定されている。
平面視にて、リアアッパアーム24の軸線と、このリアアッパアーム24の外端のボールジョイント24b中心を通る車両幅方向水平線L5間における車両取り付け角α2は、リアロアアーム22の車両取り付け角α1の場合と同様、(−10°≦α2≦10°)を満たすように設定されている。また、平面視にて、フロントアッパアーム23の軸線と、このフロントアッパアーム23の外端のボールジョイント23b中心を通る車両幅方向水平線L6間における車両取り付け角β2は、(β2≧25°)を満たすように設定されている。
以上のように構成された第1実施形態の前輪用サスペンション装置においては、仮想キングピン軸KPが、図4に示すように、背面視にて、非ステア時に上方が下方より車両中央側に位置するように傾斜していて、鉛直線との間に所定大きさのキングピン傾角θK1が形成されるように設定されている。また、仮想キングピン軸KPは、図5に示すように、側面視にて、非ステア時に上方が下方より車両後方側に位置するように傾斜していて、鉛直線との間に所定大きさで正のキャスタ角θC1が形成されるように設定されている。
そして、右前輪10が、例えば内輪となるように右方向にステアされた場合には、図6に示すように、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22が各内端のゴムブッシュ21a,22aを回動中心として、図6中、実線で示した位置から二点鎖線で示した位置まで反時計回りにそれぞれ回動する。同様に、フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24が各内端のゴムブッシュ23a,24aを回動中心として、図6中、実線で示した位置から二点鎖線で示した位置まで反時計回りにそれぞれ回動する。
このため、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22の各軸線の交差点PL1が交差点PL2に移動し、フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24の各軸線の交差点PU1が交差点PU2に移動して、仮想キングピン軸KPの上方および下方が何れも移動する。
この場合、図4に示したように、ステアに応じて内輪側のキングピン傾角θK1が次第に減少して、ステアの最大時にはθK2の大きさまで減少するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されている。また、図5に示したように、ステアに応じて内輪側のキャスタ角θC1が次第に減少して、ステアの最大時にはθC2の大きさまで減少するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されている。
すなわち、フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24の各軸線の交差点PU1における車両幅方向外方への移動量が、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22の各軸線の交差点PL1における車両幅方向外方への移動量に比して大きくなるように設定されている。また、フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24の各軸線の交差点PU1における車両前方への移動量が、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22の各軸線の交差点PL1における車両前方への移動量に比して大きくなるように設定されている。
このため、ステア時の内輪が非ステア時の車輪位置に戻ろうとする復元力が小さくなる。その結果、従来技術の前輪用サスペンション装置に比して、据え切り時のハンドル操舵力が低減されて、操舵ハンドルの手ごたえ感が減少する。左前輪が内輪となるように左方向にステアされた場合についても、上記と同様の作用および効果が得られる。
また、この第1実施形態においては、図6に示したように、ステア時に内輪側のタイヤの接地部が車両前方に移動するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されている。この場合には、非ステア時における内輪側の仮想キングピン軸KPの路面との交差点PO1が、ステアによりその交差点PO1に対して車両前方側の交差点PO2に移動するようになっている。
ところで、仮想キングピン軸KPが、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され(図4参照)、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され(図5参照)、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定されている場合(図6参照)には、一般に、ステアにより内輪側(内切り側)にポジティブキャンバが付き、外輪側(外切り側)にネガティブキャンバが付く。このため、図7にて、例えば右前輪10が内輪または外輪となった場合を代表して示すように、内輪および外輪共にタイヤの接地部形状が変化するが、内輪の方が外輪に比して、タイヤ中心の移動量が大きくなり、タイヤの接地部全体が路面に引きずられる移動量が大きくなる。このため、ハンドル操舵力の軽重に関しては、内輪の仮想キングピン軸KPの移動量およびその移動方向が大きな影響を与える。
ここで、図8に基づいて、ステアにより内輪側のタイヤの接地部形状が変化した状態で、このタイヤを非ステア時の中立位置から周方向に等角度に分割した方向1〜方向8の各方向に移動させたときの、タイヤの接地部全体が路面に引きずられる移動量の総和をそれぞれ比較してみる。この場合、中立位置にあるタイヤ中心Ooから動作位置にあるタイヤ中心O1〜タイヤ中心O8までの距離を同じ大きさに設定する。
いま、中立位置にあるタイヤの接地部のうち、例えば前方右隅部の接地点A0に着目すると、この接地点A0は、図8に示すように、方向1〜方向8に応じて動作位置である接地点A1〜接地点A8にそれぞれ移動する。このとき、タイヤの接地部形状が略蹄状に変化するため、接地点A1〜接地点A8の移動中心は、中立位置の接地点A0ではなく、接地点A0からオフセットした点A01になる。このため、中立位置の接地点A0から各動作位置の接地点A1〜接地点A8までの移動量は、方向毎に異なり、接地点A0に関して言えば、方向7に移動したときの接地点A7までの移動量が最小になり、方向3に移動したときの接地点A3までの移動量が最大になる。
同様にして、各接地点の移動量をそれぞれ計算し、その計算した各接地点の移動量を方向毎に総和する。その結果、タイヤの接地部全体が路面に引きずられる移動量の総和は、図9に示すように、タイヤの接地部を方向7に移動させたとき、すなわち車両前方に移動させたとき、各接地点の移動量を全て同じ大きさとしたときの基準移動量に比して最も小さくなる。なお、ステアさせずにタイヤを中立位置から各動作位置に移動させたときは、図10に接地点A0を代表して示すように、移動中心が中立位置に一致する。このため、各接地点の移動量の総和は、図11に示すように、移動方向に関わらず基準移動量となる。
したがって、この第1実施形態においては、タイヤの接地部を車両前方に移動させるようにしているので、タイヤの接地部全体が路面に引きずられる移動量の総和が小さく抑えられる。その結果、従来技術の前輪用サスペンション装置に比して、据え切り時のハンドル操舵力がより一層低減されて、操舵ハンドルの手ごたえ感がより一層減少する。左前輪が内輪となるように左方向にステアされた場合についても、上記と同様の作用および効果が得られる。
上記第1実施形態においては、フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24の各軸線間のアーム角δ2(δ2≦55°)を、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22の各軸線間のアーム角δ1(δ1≧35°)と異なる条件を満たすように設定し、フロントアッパアーム23の車両取り付け角β2(β2≧25°)を、フロントロアアーム21の車両取り付け角β1(35°≦β1≦60°)と異なる条件を満たすように設定して、フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24の各軸線の交差点PU1における車両幅方向外方および車両前方への移動量が、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22の各軸線の交差点PL1における車両幅方向外方および車両前方への移動量よりそれぞれ大きくなるようにした。
しかし、前記アーム角δ2を前記アーム角δ1と同じ条件(δ1≧35°)を満たすように設定し、前記車両取り付け角β2を前記車両取り付け角β1と同じ条件(35°≦β1≦60°)を満たすように設定することも可能である。この場合には、主として、フロントアッパアーム23およびリアアッパアーム24のボールジョイント距離D2を、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22のボールジョイント距離D1より所定量以上長く設定することによって、上記第1実施形態と同様の作用および効果を得ることが可能である。
上記第1実施形態およびその変形実施形態においては、ステアに応じて内輪側のキングピン傾角θK1およびキャスタ角θC1の何れもが減少するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されるとともに、ステア時に内輪側のタイヤの接地部が車両前方に移動するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されるように実施した。しかし、これに限らず、例えば、ステアに応じて内輪側のキングピン傾角θK1およびキャスタ角θC1のうちの何れか一方が減少するようにのみ仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されるように実施することも可能である。また、例えば、ステア時に内輪側のタイヤの接地部が車両前方に移動するようにのみ仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されるように実施することも可能である。
また、上記第1実施形態およびその変形実施形態においては、前後一対のアッパアーム23,24を備えた前輪用サスペンション装置に本発明を適用したが、前後一対のアッパアーム23,24を用いる代わりに、例えば図12に右前輪側を代表して示すように、前後アームが一体化されたA形のアッパアーム123を備えた前輪用サスペンション装置に本発明を適用することも可能である。なお、この第2実施形態の説明では、上記第1実施形態の前輪用サスペンション装置と異なる部分についてのみ説明し、同第1実施形態の前輪用サスペンション装置と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
アッパアーム123は、車両幅方向に延設されていて、各内端にてゴムブッシュ123a1,123a2を介して車体30の一部に連結され、外端にてボールジョイント123bを介してナックル11の上部に連結されている。
リアロアアーム22は、その内端が車両幅方向水平線L2に対して車両前方に位置していて、車両取り付け角α1が負に設定されている。また、ボールジョイント取り付け角θ1は、上記第1実施形態の場合に比して大きく設定されている。なお、その他の条件については、上記実施形態と同様に設定されている。
この第2実施形態においては、フロントロアアーム21およびリアロアアーム22の各軸線の交差点PL1とアッパアーム123の外端のボールジョイント123b中心を結んだ直線により仮想キングピン軸KPが形成されている。この仮想キングピン軸KPは、上記第1実施形態と同様、背面視にて、非ステア時に上方が下方より車両中央側に位置するように傾斜し、側面視にて、非ステア時に上方が下方より車両後方側に位置するように傾斜しているが、上記実施形態とは異なり、ステア時にその上方が移動せず、下方のみが移動するように設定されている。
この場合、ステアに応じて内輪側のキングピン傾角およびキャスタ角が次第に増大するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されている。したがって、上記第1実施形態のように、キングピン傾角およびキャスタ角の減少によりステア時の内輪が非ステア時の車輪位置に戻ろうとする復元力を小さくすることはできないが、ステア時に内輪側のタイヤの接地部が車両前方に移動するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されている。
このため、上記第1実施形態と同様、タイヤの接地部全体が路面に引きずられる移動量の総和が小さく抑えられる。その結果、この実施形態においても、従来技術の前輪用サスペンション装置に比して、据え切り時のハンドル操舵力が低減されて、操舵ハンドルの手ごたえ感が減少する。
上記各実施形態等においては、ステアによるタイヤの接地部形状の変化を考慮に入れた場合、ステア時に内輪側のタイヤの接地部が車両前方に移動するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されるように実施したが、図8にて方向1から方向7に渡るタイヤ接地部の移動量の総和が基準移動量より小さくなる領域内、すなわち、車両幅方向外方かつ車両前方に渡る領域内を、ステア時に内輪側のタイヤの接地部が移動するように仮想キングピン軸KPの移動方向が設定されるように実施することも可能である。
10…右前輪、11…ナックル(前輪支持部材)、21…前方のロアアーム、22…後方のロアアーム、21a,22a…ゴムブッシュ、21b,22b…ボールジョイント、23…前方のアッパアーム、24…後方のアッパアーム、23a,24a…ゴムブッシュ、23b,24b…ボールジョイント、25…タイロッド、30…車体、KP…仮想キングピン軸、θK1,θK2…キングピン傾角、θC1,θC2…キャスタ角、PL1,PL2,PU1,PU2,PO1,PO2…交差点
Claims (3)
- 車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前輪支持部材の下部に連結された前後一対のロアアームと、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前記前輪支持部材の上部に連結された前後一対のアッパアームとを備え、前記前後一対のロアアームおよび前記前後一対のアッパアームによる仮想キングピン軸が、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定された前輪用サスペンション装置において、
ステア時にて内輪側の仮想キングピン軸は、キングピン傾角およびキャスタ角のうちの少なくとも何れか一方を減少させるように移動方向が設定されていることを特徴とする前輪用サスペンション装置。 - 車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前輪支持部材の下部に連結された前後一対のロアアームと、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前記前輪支持部材の上部に連結された前後一対のアッパアームとを備え、前記前後一対のロアアームおよび前記前後一対のアッパアームによる仮想キングピン軸が、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に上方および下方が何れも移動可能に設定された前輪用サスペンション装置において、
ステア時にて内輪側の仮想キングピン軸は、この内輪側のタイヤの接地部を車両前方に移動させるように移動方向が設定されていることを特徴とする前輪用サスペンション装置。 - 車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され各外端にて前輪支持部材の下部に連結された前後一対のロアアームと、車両幅方向に延設されて各内端にて車体に連結され外端にて前記前輪支持部材の上部に連結されたA形のアッパアームとを備え、前記前後一対のロアアームおよび前記A形のアッパアームによる仮想キングピン軸が、非ステア時に背面視にて上方が下方より車両中央側に位置するように設定され、側面視にて上方が下方より車両後方側に位置するように設定され、かつステア時に下方が移動可能に設定された前輪用サスペンション装置において、
ステア時にて内輪側の仮想キングピン軸は、この内輪側のタイヤの接地部を車両前方に移動させるように移動方向が設定されていることを特徴とする前輪用サスペンション装置。
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- 2005-08-24 JP JP2005243048A patent/JP2007055442A/ja active Pending
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