JP2007052152A - プラスチック光学材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大口径ながら生産性や取り扱い性に優れる光学材料を製造する。
【解決手段】中空管の中に重合性組成物を注入し重合させる工程を繰り返し行うことにより第1〜第n層が同心円状に積層された重合体を形成する。中空管を除去した円筒状または円柱状のn層構造の重合体を芯材11とする。市販の溶融押出成形により重合性組成物を用いて円筒状の外径調整材12を形成する。組立工程における芯材11の長手方向での長さL1と、外径調整材12の長手方向での長さL2とがL2>L1とする。外径調整材12の中に芯材11を挿入して前駆体13とする。そして、この前駆体13を加熱させて芯材11と外径調整材12とを同時に延伸させる延伸工程を行う。本発明により、強靭性に優れ、かつ大口径ながら生産性や取り扱い性に優れる所望の径の光学材料を得ることができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、プラスチック光学材料の製造方法に関するものであり、特に光ファイバなどの光導波路やレンズに利用することができるプラスチック光学材料の製造方法に関する。
従来より、光学材料として、ガラス(光学ガラス)が使用されている。光学ガラスは、化学的に安定であり、優れた透明性や成形性,硬度などの特性を有することから、光ファイバや光導波路,レンズ,電子部品などに利用されている。ところが、最近では、光学ガラスに代替する光学材料として、プラスチック材料が注目されている。光学用プラスチック材料は、空気中からポリマー中へ入射した光が表面で反射しながらポリマー中を通過する現象を利用したものであり、透明性が高く、光学ガラスと比較して、軽量性,加工性に優れるなどの特色を有していることから、様々な技術へ応用されている。
例えば、光ファイバへ利用したプラスチック光ファイバ素線(Plastic Optical Fiber;POF)が挙げられる。POFは、互いに屈折率の異なる重合性組成物から形成された光を伝播する光伝播部と、この光伝播部の外周に配される外殻部とからなり、光伝播部に所定の角度で光を入射させて、屈折率の異なる界面で光を全反射させることにより光を伝播させる光伝送体である。最近では、このPOFの中でも、中心から外側に向かって屈折率に高低分布を設けた屈折率分布型POFが注目されている。屈折率分布型POFは、その特有の屈折率分布により、中心を通る光と周辺を経由する光とがほぼ同時に伝播される。そのため、入力信号に歪が発生しないので、高い伝送容量を発現させて大幅な高速通信を実現することができる。
一般的に、屈折率分布型POFの製造方法としては、POFの前駆体となる光ファイバ母材(プリフォーム)を作製した後、このプリフォームを加熱溶融させた状態で延伸させることにより所望の径のPOFとする。この延伸時においては、途中で切断することなくできる限りプリフォームを延伸させることができると、長いPOFを得ることができ、効率が上がる。
また、強靭性を向上させた屈折率分布型POFとして、C−H結合を有さない含フッ素樹脂からなる内層の外周に所定の引張り弾性率を示す外層を設けたPOF(例えば、特許文献1参照)や、同じくC−H結合を有さない非結晶性の含フッ素重合体からなる内層の外周に、この内層と親和性を有し、さらに低屈折率である含フッ素重合体からなる外層を設けたPOF(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
特開平11−109144号公報 特開2002−071972号公報
特許文献1では、光の通路となる内層の外周に熱可塑性樹脂からなる外層を設けることにより強靭性を向上させることができる。また、特許文献2では、内層と親和性を有し、さらには内層よりも屈折率の低い外層を外周に設けるようにしたので、強靭性を向上させるだけでなく、耐熱性や耐湿熱性の向上も図ることができる。しかしながら、いずれのPOFも内層を形成させる材料が限定されているため、利用範囲が限られてしまう。また、強靭性向上という機械強度の向上に関する効果が謳われているが、生産性や取り扱い性については言及されていない。くわえて、POFを製造する際には、上記のようにプリフォームを構成する光伝播部と外殻部とを同時に延伸させるが、延伸初期においては、急速に所望の細径とすると切断してしまうなどの恐れがあるため、ある程度の延伸時間が必要である。しかし、延伸初期のプリフォームは所望の径ではなく規格外であるため、製品として使用することができない。これは、規格外製品の増加による生産性の低下を招くほか、生産コストの増大という問題を引き起こす。したがって、強靭性に優れるとともに、生産性や取り扱い性に優れるPOFを代表とする光学材料を得ることができる製造方法の提案が望まれている。
本発明は、光学レンズや屈折率分布型POFを含む光ファイバとして利用することができる光学材料およびその製造方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明のプラスチック光学材料の製造方法は、光を伝播する芯材と芯材の外周に配される外径調整材とからなるプラスチック光学材料の製造方法において、円筒状または円柱状の芯材を、円筒状の外径調整材の中に挿入してプラスチック光学材料の前駆体を形成する組立工程と、前駆体を加熱させて、芯材と外径調整材とを同時に延伸する延伸工程とを有し、この組立工程における芯材の長手方向の長さをL1とし、外径調整材の長手方向の長さをL2とするとき、L2>L1であることを特徴とする。
芯材は、円筒状または円柱状の内芯部と、内芯部の外周に配される円筒状の外芯部とからなることが好ましい。また、芯材は、径の中心に向かうにしたがい屈折率の高さが連続的に変化する高低分布を有することが好ましい。そして、芯材の外径をD1(mm)とし、外径調整材の内径をD2(mm)とするとき、0.01<D2−D1<1.0の条件を満たすことが好ましい。
また、芯材と外径調整材とは樹脂からなることが好ましい。そして、芯材の長手方向の長さL1と外径調整材の長手方向の長さL2とが、0<L2−L1≦200であることが好ましい。なお、芯材における内芯部は、径の外側から中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなることが好ましい。
本発明をPOFの製造に利用すると、強靭性に優れるとともに、生産性や取り扱い性に優れるPOF(特に、屈折率分布型POF)を得ることができる。なお、このPOFは、透明性に優れた光学特性を有する光学材料として使用することができる。また、本発明の光学材料および製造方法は、プラスチック光導波路やプラスチックレンズとして利用することができる。特にプラスチックレンズに使用する場合には、集光特性に優れたレンズを提供することができる。
本発明の実施形態について図を引用しながら説明する。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明での光学材料10の製造工程図である。ここでは工程の流れについてのみする。
本発明の光学材料10は、芯材11と外径調整材12とを別々に作製した後、これらの部材を組立てた前駆体13を延伸させることにより製造される。したがって、光学材料10の製造工程は、芯材形成工程15と外径調整材形成工程16と、芯材11と外径調整材12とを組立てて前駆体13とする組立工程17と、前駆体13を延伸させて光学材料10とする加熱延伸工程18とを有する。
次に、各工程の詳細を説明する。芯材形成工程15は、光を伝播する芯材11を形成させる。この芯材11は、径の中心に向かうにしたがい屈折率の高さが連続的に変化する内芯部20と、この内芯部20の外周に配される外芯部21とを有する。したがって、芯材形成工程15は、内芯部形成工程22と外芯部形成工程23と、内芯部20と外芯部21とを組立てて芯材11とする芯材組立工程24とを有する。
内芯部形成工程22では、円柱状または円筒状の内芯部20を形成させる。内芯部20は、第1層,第2層,・・・・,第(n−1)層,第n層と、n層の各層が同心円状に積層されたn層構造(n≧2)を有する。したがって、内芯部形成工程22は、第1層形成工程30と第2層形成工程31と、・・・・、第(n−1)層形成工程32と第n層形成工程33とを有する。なお、中空管25は、あらかじめ市販の溶融押出成形により作製した管状の重合体を使用すればよく、その製造方法は、特に限定されない。
外芯部形成工程23では、円筒状の外芯部21を形成させる。このとき、外芯部21は、市販の溶融押出成形により所望の重合性組成物を用いて管状の重合体を作製すればよく、その製造方法などは特に限定されない。
芯材組立工程24では、内芯部20を外芯部21に挿入して芯材11を組立てる。本実施形態では、内芯部形成工程22で形成させた部材のうちで、中空管25を取り除いたn層構造のみを内芯部20とし、これを外芯部21の中に挿入して芯材11とする。ただし、中空管25の有無は前駆体13ならびに光学材料10の光学特性には影響しないため、n層構造の外周に中空管25を残したものを内芯部20として使用してもよい。
外径調整材形成工程16では、円筒状の外径調整材16を形成させる。なお、外径調整材16を形成させる際には、市販の溶融押出成形を用いればよい。続いて、組立工程17において、芯材11を外径調整材12の中に挿入して光学材料10の前進である前駆体13を形成させる。そして、加熱延伸工程18において、前駆体13を加熱し溶融させた状態で、その長手方向に張力を付与することにより延伸させる。これにより、前駆体13から所望の径の光学材料10を得ることができる。
また、芯材11と外径調整材12とは、所望の樹脂を用いて重合させることにより形成させる。なお、外径調整材12を形成させる樹脂としては、メタクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。これにより、強靭性に優れる前駆体13を得ることができるので、加熱延伸工程18において途中で切断することなく好ましい長さの光学材料10を得ることができる。その他にも、上記の樹脂は、透明性に優れるため、強靭性にくわえて優れた透明性を光学材料10に付与することができる。
図2は、内芯部形成工程22の流れを示す工程図である。内芯部形成工程22では、中空管25の中に所定の重合性組成物を注入した後、これを重合させて層を形成させる工程を所望の層数が得られるまで繰り返し行うことにより、n層構造を形成させる。
まず、第1層形成工程30を行って、中空管25の中に第1層30aを形成させる。予め作製しておいた中空管25の中に、第1注入工程30bとして第1の重合性組成物を注入する。そして、第1重合工程30cを行うことにより、第1の重合性組成物を重合させて第1層30aを形成させる。
続いて、第2層形成工程31として、この第1層30aの内側に第2層31aを形成させる。まず、第2注入工程31bとして第1層30aの内側に第2の重合性組成物を注入する。そして、第2重合工程31cとして、この第2の重合性組成物を重合させる。さらに、第(n−1)層注入工程32bと第(n−1)層重合工程32bcとからなる第(n−1)層形成工程32を行い、第(n−1)層32aを形成させる。最後に、第n層注入工程33bと第n層重合工程33bcとからなる第n層形成工程33を行うことにより、第n層33aを形成させる。なお、各重合工程では、中空管25を回転させることにより重合性組成物を重合させる回転重合法を用いる。回転重合法の詳細については後述する。
以上により、中空管25の内側に、第1層30aを最外層とし、径の中心に向かうにしたがい第2層31a,・・・・,第(n−1)層32a,第n層33aとが積層された内芯部20を形成させる。なお、内芯部形成工程22では、重合性組成物の注入量を内側の層に向かうにしたがい連続的に減らすと、各層の厚みを略一定に調整することができるので好ましい。ただし、この注入量は、特に限定されるものではなく、層の厚みが所望の値となるように適宜調整すればよい。
次に、前駆体13および、これを延伸させて得られる光学材料10について説明する。図3は、本発明の前駆体13の径方向での断面図である。前駆体13は、芯材11と外径調整材12とを有する。また、芯材11は、第1層〜第n層30a〜33aからなる内芯部20と外芯部21と空洞部35とを含む。このとき、芯材11と外径調整材12とは、外径および内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管状となっている。なお、各層の境界を示しているが、製造条件などにより境界の明確さは異なり、必ずしも確認できるものでなくてもよい。また、空洞部35は、製造条件などにより消失する場合があるが、その有無は光学特性に影響を与えるものではなく、特に限定されない。
芯材11と外径調整材12との間、および内芯部20と外芯部21との間には、それぞれ隙間36が形成されている。このとき、各部材の径は、各部材を組立てても互いに接触することが無いように任意に調整されている。例えば、芯材11の外径をD1(mm)とし、外径調整材12の内径をD2(mm)とすると、0.01<D2−D1<1.0の条件を満たすようにする。これにより、各部材は隙間36を形成させながら組合せることができるので、外気温による膨張などの影響を受けることなく簡易に組合せることができる。そのため作業性に優れる。また、各部材が互いに接触することなく、各部材を傷つけずに組合せることができるので、光学特性に優れた前駆体10を得ることができる。ただし、各部材の径の大きさが上記条件外の場合には、延伸後の外径非円率の悪化や、延伸後の各部材間での剥離の発生、さらには、組合せ工程18において各部材を組合せる際に、各部材が接触することにより欠損が生じてしまうことにより光学特性の劣化を招くため好ましくない。
図4に、長手方向を断面とする前駆体13の断面図を示す。なお、図3に示すように、芯材11はn層構造の内芯部20と外芯部21とを有するが、図面の煩雑さを避けるために記載を省略する。
本発明の前駆体13は、組立工程17における芯材11の長手方向の長さをL1とし、外径調整材12の長手方向の長さをL2とするとき、L2>L1となるようにそれぞれ調整された芯材11と外径調整材12とから構成されている。このような前駆体13を延伸させると、外径調整材12のみを延伸させた後に芯材11と外径調整材12とを延伸させることができる。これにより、延伸初期において所望の径とすることができずに規格外製品となる光学材料10の大半を外径調整材12のみから構成させることができるため、規格外製品中に占める芯材11の割合を低下させる。したがって、外径調整材12に比べて生産コストが高い芯材11を無駄なく延伸させることができるので、結果として生産コストの上昇を抑制することができるなどの効果が得られる。
また、本発明では、光を伝播する内芯部20を有する芯材11の外周に外径調整材12を配し、この外径調整材12の径を調整することにより光学材料10の径を決定する。これにより、芯材11の体積が小さい場合にも、外径調整材12の径を大きくすることにより、大口径の光学材料10を得ることができる。さらには、外径調整材12により優れた強靭性を有する前駆体13を得ることができるので、優れた取り扱い性や生産性を示す光学材料10を製造することができる。
なお、図4に示すように、前駆体13を構成する芯材11と外径調整材12とのどちらか一方の片端を揃えると、前駆体13を延伸させやすくすることができる。さらに、外径調整剤12の内部に前駆体13を挿入させ、前駆体13の両端とも外径調整材の両端より内部に位置するように固定することで、延伸後期の前駆体13の引き残りのロスを低減することができる。そのため、芯材11をより無駄なく延伸させることができる。また、芯材11の片端部を接着剤などの固定手段により留めておくと、延伸時において各部材の位置がずれることなく前駆体13を延伸させることができるので好ましい。この接着剤としては、市販されている接着剤を使用することができ、特に限定はされないが、芯材11や外径調整材12を形成する際に用いる材料の材質や親和性などを考慮して選択すると、互いの部材をより固定することができるので好ましい。
図5に、本発明での光学材料10の一例の断面図を示す。光学材料10は、芯材111と外径調整材112とを有する。また、芯材111は、第1〜第n層130a〜133aからなる内芯部120と外芯部121とを含む。
光学材料10は、前駆体13を長手方向に延伸させることにより形成される。このとき、前駆体13に比べて光学材料10は細径となるため、芯材111と外径調整材112、および内芯部120と外芯部121とは密着される。これにより、前駆体13に存在していた空洞部35や隙間36は消失する。そして、前駆体13の延伸の割合を制御することにより、所望の径の光学材料10を得ることができる。なお、延伸時において空洞部35を減圧しながら加熱延伸させると、前駆体13の内部に気泡が発生することを抑制することができ、結果として気泡などの欠陥の少ない光学材料10を得ることができるので好ましい。
本発明で得られる光学材料10は、屈折率の異なる複層で形成された内芯部120を含む芯材111を有するため、低伝送損失である。また、光を伝播する芯材111の外周に樹脂で形成された外径調整材112が配されているので、強靭性および透明性に優れる光学材料10を得ることができる。したがって、前駆体13を延伸させる際には、途中で切断することなく長手方向の長さを確保しながら光学材料10を製造することができるので、生産性や取り扱い性を向上させて作業を行うことができるなどの効果が得られる。
図6に、本発明での光学材料10の屈折率分布の一例を示す。図6の縦軸は、屈折率の高さであり、上に行くほど高い値を示す。また、横軸は、光学材料10の半径方向を示す。なお、横軸の(A)で表される領域は、図5の外径調整材112に等しく、横軸の(B)は芯材111に等しい。
第1〜第n層130a〜133aで構成される内芯部120は、各層が異なる屈折率となるように形成されている。これにより、芯材111は、径の中心に向かうにしたがい屈折率の高さが連続的に変化する高低分布を有する。なお、図6では、内芯部120の第1層130aと外芯部121との屈折率、および外芯部154と外径調整材142との屈折率をいずれも略同等としたが、所望の屈折率の高低分布を発現させるように異なる値としてもよい。
また、本実施形態では、芯材111での屈折率分布として径の外側から中心に向かって屈折率が次第に高くなる形態を示したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。図7に、図6とは異なる光学材料10の屈折率分布の一例を示す。本発明は、図7に示すように、径の外側から中心に向かって屈折率が次第に低くなる形態にも適用することができる。そして、このような屈折率の高低分布を示す光学材料10は、凹レンズの機能を発揮する。なお、図7における横軸、縦軸、および符号は、図6と等しいため、同符号を付すとともに、説明を省略する。
上記のように、特定の屈折率の高低分布を有する光学材料10を作製する方法としては、所望の屈折率分布を有する前駆体13を作製後、この前駆体13を延伸させて光学材料10とする。前駆体13に屈折率の高低分布を発現させる方法は、所望の屈折率の高低分布を発現させることができる方法であれば、特に限定されない。例えば、互いに屈折率の異なる重合性組成物を少なくとも2種類用いて層を形成させ、同じ複数種の重合性組成物を用いながら各重合性組成物の配合を変更することにより、各層の屈折率を変化させる方法が挙げられる。このように、異なる屈折率を示す重合性組成物を異なる配合比で共重合させると、各層の屈折率に差を発現させることができ、本実施形態ではこの方法を採用している。
したがって、本実施形態では、径の中心に向かうにしたがい屈折率の高い重合性組成物の配合を高くしながら各層を形成させることにより内芯部21を形成させる。そして、このような内芯部21を有する前駆体13を延伸させることにより、図6に示す屈折率の高低分布を有する内芯部121を形成させる。また、各層は同じ重合性組成物を用いて形成されるので、隣接する層で形成される界面での親和性を向上させることができ、結果として、界面における散乱を低減させることができる。一方、各層を異なる重合組成物を用いて形成させると、隣接する層で形成される界面の親和性を向上させることが困難であり、散乱損失を増加させてしまうため好ましくない。なお、図7に示す屈折率分布を発現させるためには、屈折率の異なる複数種の重合性組成物を用いて各層を形成させる際に、径の中心に向かうにしたがい屈折率が低い重合性組成物の配合を高くすればよい。
また、本発明の芯材は、屈折率の異なる複数の層により構成された複層構造を有するため、高屈折率化が可能となり、ロッドレンズなどをはじめとする光学レンズとして好ましく用いることができる。くわえて、同じ種類の樹脂により層を形成させることにより、隣接する界面での整合性を向上させることができるので、優れた伝送帯域を発現させることができる。このような光学材料は、光ファイバとして利用することができ、特に、屈折率分布型POFとして好ましく用いることができる。なお、径方向での屈折率の高低分布の違いに関わらず、複層構造の屈折率の変化の仕方は、段階的であってもよいし、連続的であってもよい。
また、各層を形成させる際には、隣接する層界面の親和性やポリマーの調整、および製造におけるハンドリング性の観点から、上記のように屈折率の異なる2種類のモノマーの配合比を調整して製造することが好ましいが、最終製品の光学的および/または機械的性能向上や製造適性を考慮して、3種類以上の重合性組成物を用いてもよい。なお、その際には、層ごとに成分や配合比が変化していてもよい。
なお、特定の屈折率の高低分布を有する光学材料10を作製する方法としては、上記の他に、例えば、前駆体13を形成させる際に、内芯部20を構成する各層に用いる重合性組成物に添加量を調整しながら屈折率調整剤を添加することにより、所望の屈折率分布を付与する方法が挙げられる。このとき、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなるようにするには、径の中心に向かう層ほど屈折率調整剤の添加量を高くして形成させればよい。屈折率調整剤の詳細に関しては、後で説明する。
本発明の光学材料およびその作り方を利用して製造することができる一例として、POFを製造する例を挙げる。
図8は、POFの製造工程の流れを示す製造工程図である。POF40は、芯材41と外径調整材42とを組立てたプリフォーム43を延伸させることにより得ることができる。したがって、POF40の製造工程は、芯材形成工程45と外径調整材形成工程46と芯材41を外径調整材42の中に挿入してプリフォーム43とする組立工程47と、プリフォーム43を加熱延伸させてプラスチック光ファイバ素線(POF)40とする加熱延伸工程48とを有する。
芯材形成工程45は、POF40において光の伝播部となる芯材41を形成させる。芯材形成工程45は、内芯部形成工程51と外芯部形成工程53とを有する。本実施形態では、パイプ50の内側に重合性組成物を注入し重合させる工程を繰り返し行うことによりn層構造を形成させた後、パイプ50を除去したn層構造の重合体を内芯部52として形成させる。パイプ50は、市販の溶融押出成形により作製させた管状の重合体であり、その製造方法は特に限定はされない。なお、内芯部形成工程51は、図2に示す工程と同じであるため、説明は省略する。
ただし、内芯部形成工程51では、屈折率の異なる少なくとも2種類以上の重合性組成物を配合し、径の中心に向かう層ほど屈折率の高い重合性組成物の配合を高くする。これにより、径の外側から中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなるn層構造を形成させることができる。また、外芯部形成工程53では、円筒状の外芯部54を作製する。このとき、外芯部54は、市販の溶融押出成形により形成させればよい。そして、芯材組立工程55では、管状の外芯部54の中に内芯部52を挿入して芯材41を作製する。
外径調整材形成工程46では、円筒状の外径調整材42を作製させる。このとき、外径調整材42は、市販の溶融押出成形により管状の重合体を形成させればよく、その製造方法は限定されない。
組立工程47では、管状の外径調整材42の中に芯材41を挿入してプリフォーム43を作製させる。続いて、加熱延伸工程48において、このプリフォーム43を加熱し溶融させた状態で長手方向に張力を付与することにより延伸させて、所望の径のPOF40が製造される。
また、POF40の外周を被覆工程56において被覆材により被覆すると、プラスチック光ファイバコード57を得ることができる。被覆工程56では、一次被覆を実施した後に二次被覆を実施する方法が一般的である。ただし、被覆層の数については1層または2層に限定されるものではない。被覆工程56を経たPOF40は、プラスチック光ファイバ心線またはプラスチック光ファイバコード57(ともに、Plastic Optical Code)と称される。
そして、複芯化工程58において、複数のプラスチック光ファイバコード57を1本に束ねて、この外周を被覆することによりプラスチック光ファイバケーブル59(Plastic Optical Cable)とする。本発明においては、このファイバコード57が1本のままであって必要に応じてさらに被覆を施されたものをシングルファイバケーブルと称する。また、ファイバコード57がテンションメンバなどとともに複数本組合されてさらなる被覆材が被されたものをマルチファイバケーブルと称する。なお、プラスチック光ファイバケーブル59は、これらのシングルファイバケーブルとマルチファイバケーブルとの両方を含む。
次に、本発明により得られるプリフォーム43およびPOF40について説明する。図9は、本発明により製造されるプリフォーム43の一例の断面図である。ただし、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。
プリフォーム43は、芯材41と、芯材41の外周に配された外径調整材42とを有する。また、芯材41は、複層構造を示す内芯部52と、内芯部52の外周に配される外芯部54とを含む。
内芯部52は、第1層65を最外層とし、その内側に第2層66,・・・・,第(n−1)層67,第n層68とが同心円状に積層されたn層構造を有する。さらに、第n層68の内側には空洞部60が形成されている。ただし、空洞部60は、製造条件により消失している場合があるが、その有無は、光学特性などに影響しないため特に限定はされない。また、プリフォーム43の断面円形の径とプリフォーム43の外径との比率も、製造条件に応じて変動するものであり、本形態に限定されるものではない。なお、説明の便宜上、内芯部52を構成する第1〜第n層65〜68の各層間の境界を示しているが、製造条件などにより境界の明確さは異なり、必ずしも確認できるものでなくてもよい。例えば、第1層65と第2層66とを形成する重合性組成物同士が接触すると、互いにしみ込むなどして界面が認められない場合がある。
芯材41および外径調整材42の延伸方向での長さは、互いに所定の条件を満たすように形成されている(図3参照)。そして、組立工程47での芯材41の長手方向の長さをL1とし、外径調整材12の長手方向の長さをL2とするとき、L2>L1となるようにそれぞれ調整されている。このようなプリフォーム43を延伸させると、芯材41を無駄なく延伸させることができるので好ましい。なお、プリフォーム43を加熱溶融後長手方向に延伸させることにより所望の径のPOF40とするが、延伸されずに、このプリフォーム43のままでも光伝送体としての機能を発現する。
また、芯材41の外径と外径調整材42の内径とは、互いに所定の条件を満たすように形成されている(図4参照)。すなわち、芯材41の外径をD1(mm)とし、外径調整材42の内径をD2(mm)とすると、0.01<D2−D1<1.0の条件を満たすようにする。これにより、隙間61が形成され、各部材を傷つけることなく組立てることができるので、低伝送損失であるなどの優れた光学特性を有するプリフォーム43ならびにPOF40を得ることができる。
また、本発明では、芯材41の外周に外径調整材42を配し、この外径調整材12の径を調整することによりPOF40の径を決定する。そのため、芯材41の体積が小さい場合にも、外径調整材42の径を大きくすることにより、大口径のPOF40を得ることができる。さらに、外径調整材42により優れた強靭性を有するプリフォーム43を得ることができるので、取り扱い性や生産性に優れるPOF40を製造することができる。
また、芯材41と外径調整材42とは、ともに樹脂から形成させる。さらに、本実施形態では、プリフォーム43を構成する各部材を同一種の重合性組成物を用いて形成させる。これにより、隣接する層界面での親和性を向上させることができるので、伝送帯域や密着性に優れるPOF40を得ることができる。
図10に、プリフォーム43より得られるPOF40の断面図を示す。POF40は、第1〜第n層165〜168で構成された内芯部152と外芯部154とを含む芯材141と、外径調整材142とを有する。
POF40は、プリフォーム43を加熱溶融させた状態で長手方向に張力が付与されることにより延伸させられて細径となる。そのため、プリフォーム43に存在していた空洞部60や隙間61は消失する。なお、空洞部60を減圧しながらプリフォーム43を加熱延伸させると、気泡の発生を抑制しながらPOF40を製造することができるので好ましい。
また、POF40は、径の中心に向かうにしたがい屈折率の高さが連続的に変化する高低分布を有するように形成される。本実施形態では、図6に示す屈折率の高低分布を有するように、内芯部152の屈折率が外芯部154の屈折率よりも高く、径の外側から中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなる芯材141を有するPOF40を製造する。
上記のような屈折率の高低分布を発現させるために、本実施形態では、プリフォーム43を作製する際に、異なる屈折率を示す重合性組成物を少なくとも2種類用いて内芯部52を構成する第1〜第n層65〜68を形成させる。また、各層の重合性組成物の配合比が異なるように適宜調整する。これにより、径の外側から中心に向かうにしたがい次第に屈折率が変化する内芯部52を形成させる。
本実施形態では、異なる屈折率を示す重合性組成物として、重合体の屈折率が1.41である重水素置換した2,2,2トリフルオロエチルメタクリレート(3FMd7)と、重合体の屈折率が1.49である重水素置換したペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPMAd5)とをそれぞれ用いて、第1〜第n層65〜68での配合比を調整し、これらを重合させることにより内芯部52を形成させる。また、径の中心に向かうにしたがい屈折率が高いPFPMAd5の配合量を多くしている。これにより、第1層65の屈折率が最も低く、第2層66,・・・・,第(n−1)層67,第n層68の順に次第に屈折率が高くなるように制御される。
そして、このようなプリフォーム43からは、第1層165の屈折率がもっとも低く、第2層166,・・・,第(n−1)層167,第n層168の順に、次第に屈折率が高くなる内芯部152を有するPOF40を得ることができる。なお、本実施形態のように、各層を形成させる際に、水素原子が一部重水素原子とされた3FMd7とPFPMAd5とを使用すると、伝送損失を低下させることができるので好ましい。なお、各層に所望の屈折率の高低分布を付与する方法としては、上記以外に、屈折率調整剤を用いて、その添加量または添加の有無を調整することにより、所望の屈折率を発現させてもよい。また、屈折率の大きさの変化は、段階的であっても連続的であってもよく、特に限定はされない。
径方向での屈折率の高低分布として、本実施形態では、芯材41と外径調整材42との屈折率が異なる形態を示しているが、径方向に屈折率の高さが連続的に変化する所望の高低分布が得られるように調整すればよく、特に限定されるものではない。なお、各層または部材の屈折率が異なるように調整する方法としては、本実施形態のように、各層または部材を形成させる重合性組成物の種類または配合量を調整することもできるし、各重合性組成物に屈折率調整剤を添加し、その添加量を調整してもよい。屈折率調整剤に関しては、後で説明する。
なお、プリフォーム43を加熱延伸し、完全に空洞部61を消失させてPOF40とする前に、プリフォーム43を加熱延伸させて所望の径とした後、平板状などに切断しても空洞部61を消去させることができる。これにより、径の中心から外側に向かうにしたがい次第に屈折率の高さが連続的に変化するGRINレンズを製造することができる。
次に、芯材41および外径調整材42を形成させる材料について説明する。
芯材41、特に内芯部52を形成させる重合性組成物は、光散乱が生じないように非晶質のポリマーとし、互いに密着性に優れることが好ましい。より好ましくは、機械的特性や耐湿熱性に優れているポリマーとすることである。
第1層用モノマーは、ポリマーの中でも屈折率が低いものであることが好ましい。また、第1層〜第n層用モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、主鎖環状含フッ素ポリマー形成モノマー類(e)、非晶質フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標)AF)、AVA樹脂、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)ポリカーボネート類の原料であるビスフェノールAなどを重合性組成物として用いて重合させたものとすることができる。なお、各層用モノマーを選択する際には、少なくとも一方の屈折率や親和性などの関係を考慮することが好ましい。
上記の(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレートなどが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられ、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテートなど、(e)主鎖環状含フッ素ポリマー形成モノマー類としては、モノマーとして環状構造を有するまたもしくは環化重合することによって非晶質の主鎖に環状構造を有する含フッ素重合体を形成するポリマーを形成するものであり、サイトップ(登録商標)として知られるポリパーフルオロブタニルビニルエーテルや特開平8−334634などに例示される主鎖に脂肪環もしくは複素環を有するようなポリマーを形成するモノマー、および特願2004−186199号に例示されるものなどが挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではなく、重合性組成物の単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率が、光伝送体に成形されたときに所定の屈折率分布を成形体の中で有するように、種類や組成比を決定することが好ましい。
また、第1層用モノマーとしては、上記の各種化合物の他に以下のものが挙げられる。例えば、メチルメタクリレート(MMA)とトリフルオロエチルメタクリレート(3FM)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体がある。また、MMAと,tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体がある。さらには、ポリカーボネート(PC)、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)を用いることもできる。また、フッ素樹脂の共重合体(例えば、PVDF系共重合体)やテトラフルオロエチレンパーフルオロ(アルキルビニルエーテル(PFA))ランダム共重合体、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体などを用いることもできる。
また、POF40を近赤外光用途に用いるためには、ポリマーを構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報や特開2003−192708号公報などに記載されているような、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換したポリマーを用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。このようなポリマーとしては、例えば、重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを例示することができる。なお、原料となる化合物は、重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に除去されることが望ましい。
本発明においては、重合性組成物を重合させてコポリマーとする際において、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものが各種ある。例えばラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、これらに限定されるものではない。また、2種類以上を併用してもよい。
コポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには、連鎖移動剤を使うことができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなど)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオールなど)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
その他にも、内芯部52を構成する第1〜第n層65〜68の一部に、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、第1〜第n層65〜68もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。
また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として用いることができる。これらの添加剤も、前記原料となる各種重合性組成物に添加した後、重合することによって、第1〜第n層65〜68もしくはそれらの一部に含有させることができる。
所望の屈折率分布を付与する方法として、各層を形成させる主成分に屈折率調整剤を添加する場合には、屈折率調整剤として、非重合性の化合物を用いることが好ましい。芯材41を形成させる際に屈折率調整剤を添加する場合には、第1〜第n層65〜68を形成する主成分に対してその添加率が0.01〜25重量%とすることが好ましい。より好ましくは、添加率が1〜20重量%である。これにより、断面円形の径方向における屈折率分布係数を上記のような好ましい範囲により制御しやすくなる。
屈折率調整剤としては高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与せず、溶融状態のポリマー中で所定の拡散速度を有する低分子化合物を用いることが好ましい。なお、屈折率調整剤は、モノマーに限定されず、オリゴマー(ダイマー,トリマーなどを含む)であってもよい。
また、屈折率調整剤としては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN),硫化ジフェニル(DPS),リン酸トリフェニル(TPP),フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP),フタル酸ジフェニル(DPP),ジフェニル(DP),ジフェニルメタン(DPM),リン酸トリクレジル(TCP),ジフェニルスルホキシド(DPSO)などの非重合性低分子化合物を用いてもよく、中でも、BEN,DPS,TPP,DPSOを使用することが好ましい。このような屈折率調整剤を、芯材41や外径調整材42を形成させるホモポリマーに添加し、さらに、屈折率調整剤の濃度分布を調整することにより各部材の屈折率を所望の値に制御する。
前述した重合開始剤や連鎖移動剤や屈折率調整剤の各添加量は、使用する第1層〜第n層用モノマーである重合性組成物の種類などに応じて、好ましい範囲を適宜決定することができる。本実施形態においては、重合開始剤は、第1〜第n層65〜68の重合性組成物に対して、0.005〜0.050質量%となるように添加しているが、この添加率を0.010〜0.020質量%とすることがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、第1〜第n層65〜68の重合性組成物に対して、0.10〜0.40質量%となるように添加しているが、この添加率を0.15〜0.30質量%とすることがより好ましい。
また、本実施形態においては、断面円形の径の外側から中心に向けて屈折率が連続的に高くなるように、第1〜第n層65〜68の生成方法として、後述のような回転ゲル重合法を適用している。また、第1〜第n層用モノマーは、3FMd7とPFPMAd5とをそれぞれ用いている。
プリフォーム43の製造方法について説明する。ただし、本実施形態は、本発明の一様態としての例示であり、限定されるものではない。図11に、プリフォーム43を作製する際に使用する重合容器の断面図を示す。重合容器80は、円筒管状の容器本体80aとこの容器本体80aの両端をそれぞれ塞ぐ蓋80bとを有し、本実施形態においてはSUS製とされる。また、重合容器80は、その内径が中に収容されるパイプ50の外径よりもわずかに大きいものであり、重合容器80の回転に伴ってパイプ50が回転することができるようにされている。
まず、この重合容器80に、あらかじめ、市販の溶融押出成形により成型したパイプ50を収容する。次に、栓81でパイプ50の片端部を塞ぐ。この栓81は第1〜第n層用モノマーに溶解しない素材からなり、可塑剤などを溶出させるような化合物も含まないものとする。このような素材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
片端部を栓81で塞いだ後、第1層65を形成させる第1層用モノマー65aをパイプ50の中に注入する。そして、他方の端部を栓81で塞いでから、重合容器80を回転させることにより第1層用モノマー65aを重合させて第1層65を形成させる。なお、パイプ50が重合容器80の回転に応じることができるように、重合容器80の内面などにパイプ50を支持する支持部材を設けてもよい。
上記のように重合容器80を回転させる際には、回転重合装置を利用する。図12に、回転重合装置91の概略図を示す。回転重合装置91は、装置本体92の中に設けられた複数の回転部材93と駆動部96と装置本体92内の温度を検知してその検知結果に応じて内部温度を制御するための温度コントローラ97とを有している。
回転部材93は、円柱形状であり、2本の周面で少なくともひとつの重合容器80を支持することができるように、長手方向が互いに概ね平行かつ略水平となっている。各回転部材93は、その一端が装置本体92の側面に回動自在に取り付けられており、駆動部96によりそれぞれ独立した条件で回転駆動される。なお、駆動部96には、駆動部96の駆動を制御するためにコントローラ(図示しない)が備えられている。
図13に、重合容器の回転方法についての説明図を示す。重合反応時においては、隣り合う回転部材93の周面により形成される谷部に重合容器80がセットされた後、回転部材93の回転に応じて重合容器80は回転させられる。図13では、回転部材93の回転軸を符号93aで示している。このように、回転重合装置91に重合容器80をセットさせて回転させることにより、第1層用モノマー65aを重合させることができる。なお、本実施形態では、重合容器80の回転をサーフェスドライブ式としているが、重合容器80の回転方式は、特に限定されるものではない。
また、本実施形態では、図13に示すように、重合容器80の両端の蓋80bに磁石80cを備えるとともに、隣り合う2本の回転部材93の間の下方に磁石95を備えている。これにより、回転時において重合容器80が回転部材93から浮くことを防止することができる。ただし、重合容器80の回転部材93からの浮きを防止する方法としては、本形態に限定されるものではない。例えば、回転部材93と同様な回転手段を、セットされた重合容器80の上部に接するように設けて、同様に回転させることにより重合容器80の浮きを防止する方法や重合容器80の上方に押さえ手段を設けて、重合容器80に所定の荷重をかけることにより浮きを防止する方法などが挙げられる。なお、本発明は浮き防止方法に依存するものではなく、いずれの方法も適用することができる。
また、回転重合の前に、パイプ50を立てた状態で第1層65を予備重合させてもよい。予備重合を行う際には、必要に応じて所定の回転機構によりパイプ50の円管軸を回転中心として回転させる。このようにパイプ50の長手方向を概ね水平に保ちながら回転させると、パイプ50の内面全体に第1層65が生成しやすくなるため好ましい。なお、本発明では、第1層65の重合時において、パイプ50の長手方向を水平とすることが、パイプ50の内面全体に第1層65を形成する上でもっとも好ましい。ただし、略水平であればよく、回転軸の許容される角度は水平に対して概ね5°以内である。
なお、第1〜第n層用モノマーを濾過や蒸留などを行うことにより、重合禁止剤や水分および不純物などをあらかじめ除去してから用いることが好ましい。なお、モノマーや重合開始剤を混合した後に、この混合物を超音波処理して溶存気体や揮発成分を除去することが好ましい。さらに、必要に応じて、第1層形成工程の前後において、公知の減圧装置によりパイプ50や第1層用モノマー65aを減圧処理してもよい。
以上のようにして、第1層65が形成されたパイプ50を、回転重合装置91から取り出した後、本実施形態では、所定温度に設定された恒温槽などの加熱手段により所定時間の加熱処理をしている。
次に、第2〜第n層66〜68を形成させる。図14に、第2〜第n層66〜68の生成開始時における重合容器80の断面図を示す。この重合容器80は、第1層65を生成させた際に用いたものと同じであるため同一の符号を用いる。まず、第2層用モノマー66aを第1層65の中空部に注入する。そして、栓81により注入口を塞ぎ、第1層65が形成されたパイプ50の長手方向を略水平状態とし、パイプ50の断面円形の中心が回転軸となるように回転させながら反応を開始する。このように回転させながら重合を進めることにより第2層66を形成させる。第2〜第n層用モノマーを重合させる際には、第1層65を作製する際に使用した回転重合装置91(図12参照)を用いる。なお、必要に応じては、第2層用モノマー66aをはじめとする第2〜第n層用モノマーを注入する前後において、公知の減圧装置によりパイプ50や注入物を減圧処理してもよい。
このとき、第2層用モノマー66aが重合を開始すると、第1層65の内壁が第2層用モノマー66aにより膨潤し、重合初期段階において膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっているため、重合速度が加速(ゲル効果と称する)する。このような現象から、本発明では、あらかじめ作製された管状部材を回転させながら、この管状部材と注入された重合性組成物との反応により膨潤層を形成させて重合性組成物を重合させる反応方法を回転ゲル重合法と称する。なお、この重合反応は、本実施形態のように、管状部材の長手方向が水平とされることがより好ましい。
なお、各重合反応の反応速度は、適宜調整されることが好ましい。例えば、各重合性組成物の反応度合いを表す転化率が、1時間あたり5〜90%となるように反応速度を調整することが好ましい。より好ましくは、1時間あたりの転化率が10〜85%となるように調整することであり、さらに好ましくは20〜80%である。この反応速度の制御は、重合開始剤の種類や重合温度の調整などにより制御することができる。なお、重合性組成物の転化率の求め方は周知の方法を用いればよく特に限定はされない。例えば、ガスクロマトグラフィによる残留モノマーの定量分析と目視評価とを実施して両者の関係をあらかじめ求めておき、この関係をもとに目視観察にて評価すればよい。なお、上記のような回転ゲル重合法においては、その反応温度を用いる重合性組成物の沸点以下とすることが好ましい。また、回転速度を適宜調整することにより、第1〜第n層65〜68の転化率などを制御する。
以上の方法により、所定の材料により第1〜第n層65〜68の複層構造をパイプ50の内側に形成させ、このパイプ50を取り除いたn層構造を内芯部52とする。また、あらかじめ市販の溶融押出成形により円筒状の外芯部54を作製する。そして、外芯部54の中に内芯部52を挿入して芯材41を作製する。
次に、組立工程47において、別途形成しておいた円筒状の外径調整材42の中に芯材41を挿入してプリフォーム43とする。このとき、芯材41と外径調整材42との延伸方向の長さおよび径の大きさは、所定の条件を満たすように調整しておく。
そして、加熱延伸工程48において、プリフォーム43を加熱しながら溶融延伸させることにより所望の直径(例えば、200〜1000μm)を有するPOF40を得ることができる。なお、プリフォーム43の延伸方法は、特開平07−234322号公報などに記載される各種延伸方法を適用することができる。
POF40は、曲げ、耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として、通常、その表面に1層以上の保護層を被覆して使用される。
なお、本発明により得られるPOF40は、被覆工程56として第1の被覆工程を経て光ファイバコード57となり、複芯化工程58において1本の心線または複数本の心線を束ねた形態で第2の被覆工程により被覆をされてプラスチック光ファイバケーブル59となる。ただし、光ケーブルの中でもシングルファイバケーブルとする場合には、第2の被覆工程を経ることなく、第1被覆工程における被覆層を外表としたままで光ケーブルとして用いることもある。光ケーブルとされるときの被覆の形態としては、一本の前記心線と被覆材との界面、あるいは複数本束ねた状態の光ファイバ心線の外周と被覆材との界面が、すべて接するように被覆されている密着型の被覆と、被覆材と光ファイバ心線との界面に空隙を有するルース型被覆とがある。ルース型被覆では、たとえばコネクタとの接続部において被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
しかし、被覆材と光ファイバ心線とが密着していないので、光ケーブルにかかる応力や熱などのダメージの多くを、被覆層により緩和させることができるという利点を有する。そのため、ルース型の被覆は、使用目的によっては好ましく用いることができる。ルース型被覆の場合のコネクタ接続部からの水分の伝播については、光ファイバ心線と被覆材との界面の空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することにより、防止することができる。さらに、これらの半固体や粉粒体に対して耐熱や機械的機能の向上などの他の異なる機能を付与させることにより、多機能な被覆層を形成した光ファイバケーブルを製造することができる。また、ルース型の被覆とするには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置による減圧度を加減することにより、前記空隙を有する層を形成することができる。この空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層とを加圧/減圧することにより調整することができる。なお、第1、第2の被覆工程で設けられる被覆材には、難燃剤や紫外線吸収剤,酸化防止剤,昇光剤,滑材などを光伝送特性に影響を及ぼさない条件範囲で添加してもよい。
難燃剤としては、臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤、リン含有のものがあるが、燃焼時における毒性ガス低減などの安全性の観点では、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が主流となりつつある。ただし、このような金属水酸化物は、その内部に水分を結晶水として有している。この水分は、これら金属水酸化物の製法過程における付着水に起因するものであり完全除去は不可能とされる。したがって、金属水酸化物による難燃性付与は、POF40に接する被覆層には含有させず、ケーブルとしての外表となる被覆層に対してのみ行うことが望ましい。
また、プラスチック光ファイバケーブル59に複数の機能を付与させるために、さらに、適宜機能性層となる被覆層を積層させてもよい。前記難燃化層以外の機能層としては、例えば、POF40の吸湿を抑制するためのバリア層や、POF40に含有された水分を除去するための吸湿材料層などが挙げられる。なお、この吸湿材料層の付与方法としては、例えば、吸湿テープや吸湿ジェルを所定の被覆層内や被覆層間に設ける方法がある。
さらに、その他の機能性層としては、可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や外部からの応力を緩衝するための緩衝材として機能する発泡材料層、剛性を向上させるための強化層などが挙げられる。また、プラスチック光ファイバケーブル59の構造材(被覆材)としては、樹脂以外にも、例えば、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線などの線材を熱可塑性樹脂に含有させたものが挙げられる。このような材料を用いると、プラスチック光ファイバケーブル59の力学的強度を補強することができるために好ましい。
なお、抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維が挙げられる。そして、金属線としては、ステンレス線,亜鉛合金線,銅線などが挙げられる。ただし、本発明に適用することができる抗張力繊維および金属線は、これらに限定されるものではない。また、その他にも、プラスチック光ファイバケーブル59を保護するための金属管の外装や架空用の支持線、配線時の作業性を向上させるための機構などをプラスチック光ファイバケーブル59の外周部に組み込むこともできる。
プラスチック光ファイバケーブル59の形状は使用形態によって、プラスチック光ファイバコード57を同心円上にまとめた集合型のものや一列に並べたテープ型のもの、さらに、それらを押え巻やラップシースなどでまとめたものなどが挙げられる。なお、これらの使用形態は、用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明のプリフォーム43から得られたプラスチック光ファイバケーブル59は、従来品と比べて軸ずれに対する許容度が高いために、突き合せにより接合しても用いることができる。ただし、より好ましくは、光ケーブルの端部に接続用光コネクタを備えて、互いの接続部を確実に固定することである。また、コネクタは、一般に知られているPN型,SMA型,SMI型などの市販の各種コネクタを利用することが可能である。そのため、本発明のプラスチック光ファイバケーブル59は、種々の発光素子や受光素子や光スイッチ,光アイソレータ,光集積回路,光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置などが組み合わされて好適に用いられる。この際、必要に応じて他の光ファイバなどと組合せてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用することができる。例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。
また、これらの文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線,車両や船舶などの内部配線,光端末とデジタル機器,デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LANなどをはじめとする高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号公報に記載の導波路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号などの各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号などの各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号などの公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号などの各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号などに記載の光信号処理装置;特開2001−86537号などに記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号などに記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号などの各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用したより高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも、照明(導光)やエネルギー伝送,イルミネーション、レンズ、センサ分野にも用いることができる。なお、レンズとしては、例えば、径の中心から外側に向かって次第に屈折率が低くなる凸レンズや、逆に、径の中心から外側に向かって次第に屈折率が高くなる凹レンズにも本発明を適用させることができる。
以下、実施例を示し、本発明の効果を具体的に説明する。ただし、本発明に関する実施例は、ここに示す形態に限定されるものではない。また、プリフォーム43やPOF40の製造条件および製造方法などに関しては、実施例1において詳細に説明し、実施例2において、実施例1と同じ場合には説明を省略する。なお、実施例2は実施例1の比較例である。
図8に示すPOF製造工程にしたがいPOF40を作製した。まず、溶融押出成形により作製した内径19.5mm、長さ27cmの中空状のPVDF管をパイプ50とし、この中に第1層用モノマー65aを、孔径が0.2μmのPTFEメンブランフィルターを用いて濾過しながら注入した。第1層用モノマー75aとしては、重合性組成物として3FMd7(以下、aと称する)を21.73mlおよび重合性組成物としてPFPMAd5(以下、bと称する)を4.56ml混合してから、重合開始剤として2,2ジメチルアゾビスイソブチレートを0.1mol%とドデシルメルカプタンを0.05mol%とを添加したものを調製した。
次に、第1層用モノマー65aが注入されたパイプ50を、回転重合装置91の重合器本体80aに長手方向が水平となるようにセットし、2000rpmで回転させながら90℃の雰囲気下で2時間の加熱重合を行った。重合容器80はSUS製のものを使用した。このとき、回転する重合容器80の近傍、具体的には1〜2cm離れた位置に非接地型熱電対を設けて、温度を測定し、この測定温度を重合反応による温度としてみなした。また、この方法により測定された重合反応の発熱における温度ピーク(発熱ピーク)を求めた。実施例1では、重合開始から約1時間20分経過したときに67℃の発熱ピークが認められた。以上により、パイプ50の内面に第1層65を形成させた。なお、得られた重合体の転化率は90%であった。
次に、重合容器80から第1層65が形成されたパイプ50を取り出し、その中空部に第2層用モノマー66aを注入し、回転重合させることにより第2層66を形成させた。このとき、第1層65を形成したときと同じ条件,方法を用いた。第2層用モノマー66aとしては、aを7.57mlおよびbを1.99ml混合してから、重合開始剤として2,2ジメチルアゾビスイソブチレートを0.1mol%とドデシルメルカプタンを0.05mol%とを添加した混合溶液を用いた。そして、第2層66を形成した後、表1に示すように配合比としてb/aが異なるように調製した第3〜第11混合溶液を用いて、径の中心に向かうにしたがい各層用モノマーの注入量を表1のように減らしながら、上記と同じ工程を繰り返し行うことにより、パイプ50の内側に11層の複層構造を形成させた。第11混合溶液を重合させた後、90℃に加熱させた状態で6時間保持し残存している重合性組成物を反応させた。その後、パイプ50を除去してn層構造の重合体を内芯部52とした。
そして、芯材組立工程55として、あらかじめ溶融押出成形により市販のDyneon(登録商標;住友スリーエム(株)製)ペレットを用いて作製した内径が20mm,外径D1が21.0mmであり、屈折率が1.36の外芯部54の中空部に、内芯部52を挿入して芯材41を作製した。このとき、芯材41の長手方向の長さL1は270mmであり、外径D1は21.5mmであった。
次に、あらかじめ市販の溶融押出成形により市販のPMMAペレット(アクリペット(登録商標);三菱レイヨン(株)製)を用いて作製した内径D2が21.5mm,外径が48mm、長手方向での長さL2が370mmであり、屈折率が1.49の外径調整材42の中に、芯材41を挿入してプリフォーム43とした。
プリフォーム43は、外径調整材42の両端から50mm内側(図3において、X=Y=50)に位置するように芯材41を配し、芯材41と外径調整材42との片端を接着剤により固定して、延伸時において各部材の位置がずれないようにした。また、プリフォーム43の空洞部60を減圧させながら、200℃に加熱溶融させた状態で長手方向に延伸させた。これにより、空洞部60および隙間61を消失させた。そして、芯材41が全て所望の延伸率に延伸された時点で延伸を終了させた。その結果、外径が750μm、芯材41の外径が250μmであり、長さが1500mのPOF40を得た。このとき、POF40の外径の変動は±15μmであった。
実施例2では、外径調整材42の長さが270mmであること以外は全て実施例1と同様にしてプリフォーム43を作製した。そして、このプリフォーム43を延伸させてPOF40を製造した。その結果、外径が750μm、芯材41の外径が250μmであり、長さが1000mのPOF40を得た。なお、POF40の外径の変動は±15μmであった。
実施例1,2で使用した混合溶液の配合比を表1に示す。
Figure 2007052152
実施例1,2では、同一主成分ながら配合比を変更した複数種類の混合溶液を使用して第1〜第11層のn層構造を有する内芯部52を形成するとともに、同一のポリマーを用いて管状の外芯部54および外径調整材42を形成した。そして、外芯部54の中に内芯部52を挿入して芯材41とした後、この芯材41を外径調整材42の中に挿入してプリフォーム43とし、このプリフォーム43を延伸させてPOF40とした。ただし、実施例1では、芯材41の長さよりも外径調整材42の方が100mm大きくなるようにした一方で、実施例2では、芯材41と外径調整材42との長さを同じにした。
その結果、実施例1では、外径が750μmと大口径ながら、延伸の途中で切断することなく、かつ芯材41の全てを延伸させることができ、結果として1500mのPOF40を得ることができた。これに対して、実施例2では、加熱延伸工程48を行う際に、プリフォーム43の径の安定しない延伸初期と延伸後期において内芯部52と外芯部54がうまく延伸されずに外径調整材42の中に残存してしまい、結果として外径750μmと大口径ながら、規格内製品となったPOF40は1000mしか得ることができなかった。実施例2で得られたPOF40は、実施例1に対して66.7%の長さしか得ることができなかったことから、生産性が低下したといえる。したがって、プリフォームを作製する際に、芯材と外径調整材との長手方向の長さが所定の条件を満たすように作製した後、各部材を組立てると、芯材の体積が小さくても大口径のPOFを、優れた生産性および取り扱い性を発現させながら製造することができることが分かった。
本発明での光学材料の製造工程図である。 内芯部形成工程の流れを示す工程図である。 本発明の前駆体の径方向での断面図である。 図3に示す前駆体の長手方向での断面図である。 本発明の光学材料の径方向での断面図である。 本発明での光学材料の一例の屈折率分布である。 図6とは異なる本発明での光学材料の一例の屈折率分布である。 POFの製造工程の流れを示す製造工程図である。 本発明により製造されるプリフォームの一例の断面図である。 図9のプリフォームより得られるPOFの断面図である。 重合容器の断面図である。 回転重合装置の概略図である。 重合容器の回転方法についての説明図である。 第1層を形成させた後の重合容器の断面図である。
符号の説明
10 光学材料
11,41 芯材
12,42 外径調整材
13 前駆体
17,47 組立工程
18,48 加熱延伸工程
20 内芯部
21 外芯部
40 プラスチック光ファイバ素線(POF)
43 プリフォーム

Claims (7)

  1. 光を伝播する芯材と前記芯材の外周に配される外径調整材とからなるプラスチック光学材料の製造方法において、
    円筒状または円柱状の前記芯材を、円筒状の前記外径調整材の中に挿入してプラスチック光学材料の前駆体を形成する組立工程と、
    前記前駆体を加熱させて、前記芯材と前記外径調整材とを同時に延伸する延伸工程とを有し、
    前記組立工程における前記芯材の長手方向の長さをL1(mm)とし、前記外径調整材の長手方向の長さをL2(mm)とするとき、L2>L1であることを特徴とするプラスチック光学材料の製造方法。
  2. 前記芯材は、円筒状または円柱状の内芯部と前記内芯部の外周に配される円筒状の外芯部とからなることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光学材料の製造方法。
  3. 前記芯材は、径の中心に向かうにしたがい屈折率の高さが連続的に変化する高低分布を有することを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光学材料の製造方法。
  4. 前記芯材の外径をD1(mm)とし、前記外径調整材の内径をD2(mm)とするとき、0.01<D2−D1<1.0の条件を満たすことを特徴とする請求項1ないし3いずれかひとつ記載のプラスチック光学材料の製造方法。
  5. 前記芯材と前記外径調整材とは、樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつ記載のプラスチック光学材料の製造方法。
  6. 前記芯材の長手方向の長さL1と前記外径調整材の長手方向の長さL2とが、0<L2−L1≦200であることを特徴とする請求項1ないし5いずれかひとつ記載のプラスチック光学材料の製造方法。
  7. 前記芯材における前記内芯部は、径の外側から中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなることを特徴とする請求項1ないし6いずれかひとつ記載のプラスチック光学材料の製造方法。
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