本発明の実施形態について図を引用しながら説明する。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明での光学材料10の製造工程図である。ここでは工程の流れについてのみする。
本発明の光学材料10は、第1部材11と第2部材12と第3部材13とを組合せて形成させた光学材料の前駆体(以下、前駆体と称する)14を加熱延伸させることにより形成される。したがって、光学材料10の製造工程は、円筒状または円柱状の第1部材11を形成させる第1部材形成工程15と、円筒状の第2部材12を形成させる第2部材形成工程16と、円筒状の第3部材13を形成させる第3部材形成工程17と、第1〜第3部材11〜13を組み合わせて前駆体14を形成させる組合せ工程18と、前駆体14を延伸させて所望の径の光学材料10とする加熱延伸工程19とを有する。なお、第1〜第3部材11〜13は、いずれも重合性組成物から形成される。
第1部材形成工程15では、光学材料10の芯部となり光を伝播させる第1部材11を形成させる。本実施形態では、中空管24の中に、第1層,第2層,・・・・,第(n−1)層,第n層と、順次に各層を同心円状に積層させてn層(n≧2)の複層構造を示す第1部材11を形成させる。第1部材形成工程15の詳細は、後で説明する。なお、中空管24は、あらかじめ市販の溶融押出成形により重合性組成物を用いて作製した管状の重合体を使用すればよく、その製造方法は特に限定されるものではない。
また、第2部材形成工程16および第3部材形成工程17において、それぞれ重合性組成物を用いて円筒状の第2部材12および第3部材13を形成させる。このとき、第2部材12および第3部材13の製造方法としては、先ほどの中空管27の製造方法と同様に、市販の溶融押出成形などにより所望の重合性組成物を用いて管状の重合体を形成させればよく、特に限定はされない。
そして、組合せ工程18において、上記のように別々に作製した第1〜第3部材11〜13を組合せることにより、前駆体14を形成させる。本実施形態では、まず、第1組合せ工程25において、中空管24を取り除いたn層構造の重合体を第1部材11とし、この第1部材11を第2部材12の中に挿入する。次に、第2組合せ工程26として、第1組合せ工程25で得られた部材を第3部材の中に挿入する。このようにして、第1部材11を芯部とし、第1部材11の外周に第2部材12、さらに第2部材12の外周に第3部材13が配された複層構造を有する前駆体14を形成させることができる。なお、本実施形態では、第1組合せ工程25において、中空管24を取り除いたn層構造の重合体を第1部材11としたが、中空管24を残した状態、すなわち、中空管27の内側にn層構造の重合体が存在する部材を第1部材11としてもよい。このような第1部材11における中空管27の有無は、後で形成される光学材料10の光学特性への影響が小さいため、特に限定されない。最後に、加熱延伸工程19において、前駆体14を加熱溶融延伸させることにより所望の径の光学材料10を形成させる。なお、前駆体14の詳細は、後で説明する。
第1部材形成工程15について、詳細に説明する。図2は、第1部材形成工程15の流れを示す工程図である。上記したように、本発明では、中空管27を用いて、第1層〜第n層形成工程20〜23を順次行うことにより、中空管27の内部にn層構造を形成させる。
第1層形成工程20では、第1注入工程35において、中空管27の中に第1層30を生成させる第1の重合性組成物を注入する。そして、第1重合工程36として第1の重合性組成物を重合させて第1層30を形成させる。続けて、第2層形成工程21として、第2注入工程37として、第1層30の中空部に第2の重合性組成物を注入した後、この第2の重合性組成物を重合させる第2重合工程38を行うことにより、第1層30の内側に第2層31を形成させる。本発明では、このような層形成工程を所望の層数が得られるまで繰り返し連続して行う。第(n−1)層32を形成させる際には、第(n−1)層形成工程22として、第(n−1)の重合性組成物を注入する第(n−1)注入工程39を行ってから、第(n−1)重合工程40を行う。そして、最後に、第n層形成工程23として、第(n−1)層32の内側に、第nの重合性組成物を注入した後(第n注入工程41)、これを重合させて第n層を形成させる(第n重合工程42)。
以上により、中空管24の内側にn層が同心円状に積層されたn層構造を有する第1部材11を形成させることができる。なお、各重合工程では、中空管24を回転させることにより重合性組成物を重合させる回転重合法を用いる。回転重合法の詳細については後述する。
なお、各層形成工程20〜23において、中空管24への重合性組成物の注入量を、内側の層に向かうにしたがい次第に減らすようにすると、各層の厚みを概ね一定もしくは近似した値に調整することができる。ただし、注入量は、特に限定されるものではなく、形成したい層の厚みを考慮しながら調整すればよい。
図3に、前駆体14の径方向の断面図を示す。ただし、本発明はこの形態に限定されるものではない。本実施形態での前駆体14は、第1〜第n層30〜33の複層構造を示す第1部材11と、第1部材11の外周に配される第2部材12と、外殻部となる第3部材13とを有する。また、径の中心には空洞部45を有するとともに、第1部材11と第2部材12との間、および第2部材12と第3部材13の間にはそれぞれ隙間46が形成されている。このとき、第1〜第3部材11〜13は、外径および内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管状となっている。なお、図3では、各層の境界を示しているが、製造条件などにより境界の明確さは異なり、必ずしも確認できるものでなくてもよい。同様に、空洞部45も、製造条件などにより消失する場合があるが、その有無は本発明では限定されない。
そして、本発明では、第1部材11の外径をD1(mm)とし、第2部材12の内径をD2(mm)、外径をD2’(mm)、第3部材13の内径をD3(mm)とするとき、0.01<D2−D1<1.0であり、0.01<D3−D2’<1.0の条件を満たすように各径の値が調整される。これにより、第1〜第3部材11〜13を組合せる際に、隙間46を形成させながら組合せることができるので、外気温による膨張などの影響を受けることなく簡易に組合せることができるため作業性に優れる。また、各部材が互いに接触することなく、各部材を傷つけずに組合せることができるので、光学特性に優れた前駆体14を得ることができる。ただし、各部材の径の大きさが上記条件外の場合には、延伸後の外径非円率の悪化や、延伸後の第1〜第3部材11〜13間での剥離の発生、さらには、組合せ工程18において各部材を組合せる際に、各部材が接触することにより欠損が生じてしまうことにより光学特性の低下を招くために好ましくない。
また、加熱溶融により延伸された前駆体における第3部材13の外径をD3’とするとき、D3’は0.5〜1.0mmを満たすように調整される。このとき、第1部材11の外径D1は0.15〜0.3mmを満たすように調整することが好ましい。光学材料10の外径は、第3部材13の外径を調整することにより決定される。そのため、第3部材13の外径が上記範囲を満たすようにすると、芯部となる第1部材11の体積を小さくしても第3部材13の外径を反映させて、大口径の光学材料10を製造することができる。これにより、光学部材として取り扱い性に優れ、汎用のコネクタなどを使用可能とする任意に外径が調整された大口径の光学材料10が得られる。なお、第2部材12の径は、特に限定されるものではなく、所望の径の光学材料10が得られるように、第1部材11と第3部材13との径を考慮しながら決定すればよい。
本発明では、第3部材13を形成させる材料として、メタクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂を使用することを特徴とする。このような材料により形成された第3部材13を最外層とすると強靭性を向上させることができるので、前駆体14を加熱延伸させる際に、途中で切断することなく優れた生産性を発現させながら光学材料10を製造することができる。また、強靭性向上による機械的強度の向上のほかにも、これらの樹脂の特性である優れた透明性を付与することができるので、結果として、大口径にもかかわらず、取り扱い性および透明性に優れた光学材料10を得ることができる。なお、本発明における第1〜第3部材11〜13の組み合わせとしては、第1部材11としてアクリル系の樹脂を用いるとともに、第2部材12としてフッ化ビニリデン単位が含まれる樹脂、第3部材13としてアクリル系の樹脂を用いることが好ましい。これにより、前駆体14を延伸させた際に、各部材の密着性に優れ、光学特性や物理性能に優れる光学材料10を得ることができる。
図4に、光学材料10の径方向での断面図を示す。本発明の光学材料10は、前駆体14を加熱溶融させた状態で延伸の割合を制御しながら延伸させることにより、所望の径とされる。この加熱延伸時において、空洞部45を減圧しながら作業を行うと、気泡の発生を抑制した光学材料10を得ることができるので好ましい。また、第1部材111と第2部材112と第3部材113とは、延伸されることにより互いに密着している。そのため、前駆体14で存在していた空洞部45や隙間46は消失する。
図4(b)に、本実施形態での光学材料10の屈折率分布を示す。このとき、縦軸は屈折率の高さであり、上に行くほど高い値を示す。また、横軸は、光学材料の半径方向を示す。なお、横軸の(A)で表される領域は、図4(a)の第2部材112および第3部材113に等しく、横軸の(B)は、第1部材111に等しい。
図4(b)に示すように、本実施形態の光学材料10の屈折率は、径の中心に向かうにしたがい次第に高くなるように調整されている。このような屈折率の高低分布を発現させる方法として、本実施形態では、光学材料10を構成する各層を、同じ複数種の重合性組成物の配合から形成させるとともに、互いに異なる屈折率を示すホモポリマーを生成する重合性組成物を少なくとも2種類用いて、これらを互いに異なる配合比で共重合させることにより形成させる。このように、屈折率の異なる複数の層により複層構造を形成させると、光の伝送損失を低減させることができる。
本実施形態では、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなるようにするために、隣接する層のうち中心側の層は、屈折率を高くする重合性組成物を多く配合して形成させる。これにより、径の内側に向かうにしたがい形成される層の屈折率を高くすることができるので、結果として、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなる光学材料10を得ることができる。
このとき、形成されてなる各層間の親和性やポリマーの調整および製造におけるハンドリング性の観点から、屈折率の異なる2種類のモノマーの配合比を調整して製造することが好ましいが、最終製品の光学的および/または機械的性能向上や製造適性を考慮して、3種類以上の重合性組成物を用いてもよい。なお、その際には、層ごとに成分や配合比が変化していてもよい。このように、異なる屈折率を示すホモポリマーのモノマーを異なる配合比で共重合させることにより、各層の屈折率に差を発現させることができる。また、各層は同じ重合性組成物を用いて形成されるので、隣接する層で形成される界面での親和性を向上させることができ、界面における散乱を低減させることができる。一方、各層を異なる重合性組成物により形成させると、隣接する層で形成される界面の親和性を向上させるのが困難であり、光の散乱により伝送損失が上昇してしまうために好ましくない。
なお、本発明では、第1部材111は径の中心から外側に向かって屈折率が次第に変化する高低分布を有することを特徴とする。したがって、上記したように、径の中心から外側に向かって屈折率が次第に低くなる場合でもよいし、図5に示すように、径の中心から外側に向かって屈折率が次第に高くなる場合でもよい。図5において、図の横軸,縦軸および符号は、図4(b)と同じであるため、同じ符号を用いるとともに、説明は省略する。このような屈折率分布を光学材料10に発現させる方法としては、隣接する層のうち中心側の層を形成させる際に、屈折率を低くする重合性組成物を多く配合すればよい。これにより、径の内側に向かうにしたがい形成される層の屈折率を低くすることができるので、径の中心に向かうにしたがい屈折率が次第に低い凹レンズの機能を有する光学材料10を得ることができる。
本発明で得られる光学材料10は、ポリマーで形成されているため、優れた透明性を示す。また、屈折率の異なる複数の層により構成された複層構造により高屈折率化を図ることができるので、ロッドレンズなどをはじめとする光学レンズとして好適に利用することができる。くわえて、界面での整合性を向上させることにより、優れた伝送帯域を発現させることができるため、光ファイバとして利用することができ、特に、屈折率分布型POFとして好適に利用することができる。なお、第1〜第n層130〜133の屈折率の変化は、段階的であってもよいし、連続的であってもよい。
なお、各層に屈折率の高低分布を付与させる方法としては、上記の他に、各層130〜133を形成させる重合性組成物に屈折率調整剤を添加し、さらに、各層130〜133での屈折率調整剤の添加量を互いに異なるように調製することにより、所望の屈折率分布を付与することもできる。この場合には、径の内側にしたがい屈折率調整剤の添加量を高くすることで、外側から径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率を高くすることができる。屈折率調整剤の詳細に関しては、後で説明する。
本発明の光学材料およびその作り方を利用して製造することができる一例として、POFを製造する例を挙げる。
図6は、POFの製造工程の流れを示す製造工程図である。POF50は、第1部材51と第2部材52と第3部材53とを組合せることにより得られるプリフォーム54を加熱延伸させることにより得られる。したがって、POF50の製造工程は、第1部材51を形成させる第1部材形成工程61と、円筒状の第2部材52を形成させる第2部材形成工程62と、円筒状の第3部材53を形成させる第3部材形成工程63と、第1〜第3部材51〜53を組合せてプリフォーム54とする組合せ工程64と、プリフォーム54を加熱延伸させてPOF50とする加熱延伸工程65とを有する。
第1部材形成工程61では、パイプ55の内側に各層を形成させる重合性組成物を注入し、重合させる工程を繰り返し行うことにより第1〜第n層が順次同心円状に積層された複層構造を形成させる。第1部材形成工程61の詳細は、図2に示す方法と同様であるため、説明は省略する。なお、本実施形態では、パイプ55の内側に同心円状のn層構造を形成させた後、パイプ55を取り除いたn層構造を第1部材51として用いる。ただし、パイプ55は取り除かなくとも、パイプ55の内側にn層構造が形成された部材を第1部材51とし、これを第2部材52の中に挿入してもよい。また、第1部材形成工程61においては、パイプ55への各重合性組成物の注入量を、内側の層に向かうにしたがい次第に減らしながら各層を形成させて、各層の厚みが略同等であるように調整する。
第2部材形成工程62および第3部材形成工程63において、第2部材52と第3部材53とをそれぞれ形成させる。なお、第2部材52および第3部材53は、市販の溶融押出成形により所望の重合性組成物を用いて、それぞれ円筒状の重合体を形成させればよく、その製造方法は特に限定はされない。
そして、組合せ工程64において、第1〜第3部材51〜53を組合せてプリフォーム54を形成させる。このプリフォーム54は、図1における前駆体14に等しい。組合せ工程64では、まず、第1組合せ工程66として、第2部材52の中空部に第1部材51を挿入する。次いで、第2組合せ工程67として、第1組合せ工程65で形成させた部材を第3部材53の中に挿入してプリフォーム54とする。
続いて、加熱延伸工程65において、プリフォーム54を加熱溶融しながら延伸させることにより所望の径のPOF50が形成される。なお、円柱状のプリフォーム54は、加熱された状態で長手方向に延伸されてPOF50とされるが、プリフォーム54は、POF50とされなくとも、この状態のままで光伝送体としての機能を発現する。
また、POF50の外周を被覆工程68において被覆材により被覆すると、プラスチック光ファイバコード69を得ることができる。被覆工程68では、一次被覆を実施した後に二次被覆を実施する方法が一般的である。ただし、被覆層の数については1層または2層に限定されるものではない。被覆工程68を経たPOF50は、プラスチック光ファイバ心線またはプラスチック光ファイバコード69(ともに、Plastic Optical Code)と称される。
そして、組立工程70において、このプラスチック光ファイバコード69を束ねることによりプラスチック光ファイバケーブル71(Plastic Optical Cable)とする。本発明においては、このファイバコードが1本のままであって必要に応じてさらに被覆を施されたものをシングルファイバケーブルと称する。また、ファイバコードがテンションメンバなどとともに複数本組合されてさらなる被覆材が被されたものをマルチファイバケーブルと称する。なお、プラスチック光ファイバケーブル71は、これらのシングルファイバケーブルとマルチファイバケーブルとの両方を含む。
次に、本発明により得られるプリフォーム54について説明する。図7は、本発明により製造されたプリフォーム54の一例の断面図である。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
図7に、本実施形態での一例のプリフォーム54の断面図を示す。プリフォーム54は、第3部材53を外殻部とし、その内側に第2部材52を配し、さらにその内側に第1〜第n層75〜78なるn層構造の第1部材51を配する。なお、図7では、径の中央に空洞部145が形成されている形態を示しているが、この空洞部145の有無、ならびに断面円形の径とプリフォーム54の外径との比率とは、図7に示す様態に限定されるものではなく製造条件に応じて変動する。例えば、製造条件によっては空洞部145が消失している場合があるが、特性上影響はないため、本発明は特に限定されない。また、図7では、説明の便宜上、第1部材51を構成する第1〜第n層75〜78の各層間の境界を示しているが、製造条件などにより境界の明確さは異なり、必ずしも確認できるものでなくてもよい。例えば、第1層75と第2層76とを形成する重合性組成物同士が接触することにより、互いにしみ込むなどして界面が認められない場合がある
本発明での、第1〜第3部材51〜53における外径および内径は、所定の条件を満たすように調整されており、隙間146が形成される。これにより、各部材の組合せ作業を容易に行うことができるとともに、各部材を傷つけることなく組合せることができるため、このようなプリフォーム54から得られるPOF50は、光の発散などが防止されて低伝送損失であるなど優れた光学特性を発現する。
なお、プリフォーム54を加熱延伸させてPOF50とする前に、プリフォーム54を加熱延伸させて所望の径にした後に、平板状などに切断すると空洞部145を消去することができ、結果として、図4(b)または図5のように径の中心から外側に向かって特定の屈折率の高低分布を有するGRINレンズを製造することができる。
次に、プリフォーム54を溶融延伸して得られるPOF50について説明する。図8に、POF50の断面図を示す。POF50は、第1〜第n層175〜178のn層構造を有する第1部材151と、その外周に配される第2部材152と、さらにその外周に配される第3部材153とを有する。また、POF50は、プリフォーム54(図7参照)を加熱溶融して長手方向に延伸させることにより作製されるため、細径となるとともに、第1〜第3部材151〜153は密着される。そのため、空洞部145および隙間146は消失する。なお、加熱延伸時において、プリフォーム54の空洞部145(図7参照)を減圧しながら加熱延伸させると、気泡の発生を抑制しながらプリフォーム54を延伸させてPOF50を得ることができるので好ましい。
POF50の外径は、加熱延伸工程65でのプリフォーム54の延伸の程度により決定され、加熱延伸後の第3部材153の外径に等しい。このとき、第3部材153の外径は、所定の範囲を満たすように調整される。このように第3部材153の外径を調整することにより、POF50を大口径とすることができる。このようなPOF50は、第1部材151の体積を調整することなく、第3部材153により口径を自由に調整することができるので、光伝送能力を低下させることなく低コスト化を実現することができるなどのメリットがある。
また、第1部材151を構成する各層175〜178は屈折率が互いに異なるように形成されている。本実施形態のPOF50は、図4(b)に示すような、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなっている。このようなPOF50を製造するためには、所望のPOF50の屈折率分布と同等の分布を有するプリフォーム54を製造すればよい。すなわち、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなるプリフォーム54を作製する。このとき、屈折率の大きさの変化は、段階的であっても連続的であってもよく、特に限定はされない。なお、図7に示すプリフォーム54の屈折率の高低分布は、POF50とほぼ同じ値を示す。
第1部材151において所望の屈折率の高低分布を発現させるため、プリフォーム54を形成させる際には、異なる屈折率を示す重合性組成物を少なくとも2種類用いて、各層75〜78で互いに異なる配合比となるように共重合させることが好ましい。本実施形態では、異なる屈折率を示す重合性組成物として、重合体の屈折率が1.41である重水素置換した2,2,2トリフルオロエチルメタクリレート(3FMd7)と、重合体の屈折率が1.49である重水素置換したペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPMAd5)とをそれぞれ用いて、異なる配合比となるように調整する。また、本実施形態のように、各層を形成させる際に、水素原子が一部重水素原子とされた3FMd7とPFPMAd5とを使用すると、伝送損失を低下させることができるので好ましい。
なお、第2部材52および第3部材53は、第1部材51の屈折率よりも低い重合性組成物により形成させてもよいし、モノマーにより形成させてもよい。また、第1層75の屈折率と略同等となるように形成してもよい。本実施形態では、第2部材52と第3部材53との屈折率は略同等となるように調整したが、径方向に対して所望の屈折率の高低分布が得られるように調整すればよく、特に限定はされない。すなわち、本実施形態のように径の中心から外側に向かって次第に屈折率が低くなるように調整する場合には、第3部材53よりも第2部材52の屈折率が高くなるように調整すればよい。このとき、屈折率を調整する際には、上記のように配合する材料により調整してもよいし、屈折率調整剤を添加してもよい。屈折率調整剤に関しては、後で説明する。
なお、本実施形態では、第3部材53を形成させる材料として、メタクリル樹脂(PMMA)を使用している。このように、メタクリル樹脂から形成させた第3部材53を最外層とすると、優れた強靭性を付与することができるために、生産性や取り扱い性を向上させることができるとともに、曲げなどの変形などによる伝送損失の低下を防止することができる。また、PMMAの特性でもある優れた透明性を発現させることができるなどの効果も得ることができる。
第1部材51を形成する材料について説明する。各層75〜78を形成する重合性組成物は、光散乱が生じないように非晶質のポリマーとし、互いに密着性に優れることが好ましい。より好ましくは、機械的特性や耐湿熱性に優れているポリマーとすることである。
第1層用モノマーは、ポリマーの中でも屈折率が低いものであることが好ましい。また、第1層〜第n層用モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、主鎖環状含フッ素ポリマー形成モノマー類(e)、非晶質フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標)AF)、AVA樹脂、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)ポリカーボネート類の原料であるビスフェノールAなどを重合性組成物として用いて重合させたものとすることができる。なお、各層用モノマーを選択する際には、少なくとも一方の屈折率や親和性などの関係を考慮することが好ましい。
上記の(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレートなどが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられ、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテートなど、(e)主鎖環状含フッ素ポリマー形成モノマー類としては、モノマーとして環状構造を有するまたもしくは環化重合することによって非晶質の主鎖に環状構造を有する含フッ素重合体を形成するポリマーを形成するものであり、サイトップ(登録商標)として知られるポリパーフルオロブタニルビニルエーテルや特開平8−334634などに例示される主鎖に脂肪環もしくは複素環を有するようなポリマーを形成するモノマー、および特願2004−186199号に例示されるものなどが挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではなく、重合性組成物の単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率が、光伝送体に成形されたときに所定の屈折率分布を成形体の中で有するように、種類や組成比を決定することが好ましい。
また、第1層用モノマーとしては、上記の各種化合物の他に以下のものが挙げられる。例えば、メチルメタクリレート(MMA)とトリフルオロエチルメタクリレート(3FM)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体がある。また、MMAと,tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体がある。さらには、ポリカーボネート(PC)、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)を用いることもできる。また、フッ素樹脂の共重合体(例えば、PVDF系共重合体)やテトラフルオロエチレンパーフルオロ(アルキルビニルエーテル(PFA))ランダム共重合体、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体などを用いることもできる。
また、POF50を近赤外光用途に用いるためには、ポリマーを構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報や特開2003−192708号公報などに記載されているような、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換したポリマーを用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。このようなポリマーとしては、例えば、重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを例示することができる。なお、原料となる化合物は、重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に除去されることが望ましい。
本発明においては、重合性組成物を重合させてコポリマーとする際において、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものが各種ある。例えばラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、これらに限定されるものではない。また、2種類以上を併用してもよい。
コポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには、連鎖移動剤を使うことができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなど)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオールなど)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
その他にも、各層75〜78の一部に、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、各層75〜78もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。
また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として用いることができる。これらの添加剤も、前記原料となる各種重合性組成物に添加した後、重合することによって、各層75〜78、もしくはそれらの一部に含有させることができる。
所望の屈折率分布を付与する方法として、各層を形成させる主成分に屈折率調整剤を添加する場合には、屈折率調整剤として、非重合性の化合物を用いることが好ましい。第1部材11を形成させる際に屈折率調整剤を添加する場合には、各層75〜78を形成する主成分に対してその添加率が0.01〜25重量%とすることが好ましい。より好ましくは、添加率が1〜20重量%である。これにより、断面円形の径方向における屈折率分布係数を上記のような好ましい範囲により制御しやすくなる。
屈折率調整剤としては高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与せず、溶融状態のポリマー中で所定の拡散速度を有する低分子化合物を用いることが好ましい。なお、屈折率調整剤は、モノマーに限定されず、オリゴマー(ダイマー,トリマーなどを含む)であってもよい。
また、屈折率調整剤としては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN),硫化ジフェニル(DPS),リン酸トリフェニル(TPP),フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP),フタル酸ジフェニル(DPP),ジフェニル(DP),ジフェニルメタン(DPM),リン酸トリクレジル(TCP),ジフェニルスルホキシド(DPSO)などの非重合性低分子化合物を用いてもよく、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOを使用することが好ましい。このような屈折率調整剤を、第1部材51や第2部材52あるいは第3部材53を形成させるホモポリマーに添加し、さらに、屈折率調整剤の濃度分布を調整することにより各部材の屈折率を所望の値に制御する。
前述した重合開始剤や連鎖移動剤や屈折率調整剤の各添加量は、使用する第1〜第n層用モノマーである重合性組成物の種類などに応じて、好ましい範囲を適宜決定することができる。本実施形態においては、重合開始剤は、第1〜第n層75〜78の重合性組成物に対して、0.005〜0.050質量%となるように添加しているが、この添加率を0.010〜0.020質量%とすることがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、第1層〜第n層の重合性組成物に対して、0.10〜0.40質量%となるように添加しているが、この添加率を0.15〜0.30質量%とすることがより好ましい。
また、本実施形態においては、断面円形の径の外側から中心に向けて屈折率が連続的に高くなるように、各層75〜78の生成方法として、後述のような回転ゲル重合法を適用している。また、第1〜第n層用モノマーは、3FMd7とPFPMAd5とをそれぞれ用いている。
プリフォーム54の製造方法について説明する。ただし、本実施形態は、本発明の一様態としての例示であり、限定されるものではない。図9に、プリフォーム54を作製する際に使用する重合容器の断面図を示す。重合容器80は、円筒管状の容器本体80aとこの容器本体80aの両端をそれぞれ塞ぐ蓋80bとを有し、本実施形態においてはSUS製とされる。また、重合容器80は、その内径が中に収容されるパイプ55の外径よりもわずかに大きいものであり、重合容器80の回転に伴ってパイプ55が回転することができるようにされている。
まず、この重合容器80に、あらかじめ、市販の溶融押出成形により成型したパイプ55を収容する。次に、栓81でパイプ55の片端部を塞ぐ。この栓81は第1〜第n層用モノマーに溶解しない素材からなり、可塑剤などを溶出させるような化合物も含まないものとする。このような素材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
片端部を栓81で塞いだ後、第1層75を形成させる第1層用モノマー75aをパイプ55の中に注入する。そして、他方の端部を栓81で塞いでから、重合容器80を回転させることにより第1層用モノマー75aを重合させて第1層75を形成させる。なお、パイプ55が重合容器80の回転に応じることができるように、重合容器80の内面などにパイプ55を支持する支持部材を設けてもよい。
上記のように重合容器80を回転させる際には、回転重合装置を利用する。図10に、回転重合装置91の概略図を示す。回転重合装置91は、装置本体92の中に設けられた複数の回転部材93と駆動部96と装置本体92内の温度を検知してその検知結果に応じて内部温度を制御するための温度コントローラ97とを有している。
回転部材93は、円柱形状であり、2本の周面で少なくともひとつの重合容器80を支持することができるように、長手方向が互いに概ね平行かつ略水平となっている。各回転部材93は、その一端が装置本体92の側面に回動自在に取り付けられており、駆動部96によりそれぞれ独立した条件で回転駆動される。なお、駆動部96には、駆動部96の駆動を制御するためにコントローラ(図示しない)が備えられている。
図11に、重合容器の回転方法についての説明図を示す。重合反応時においては、隣り合う回転部材93の周面により形成される谷部に重合容器80がセットされた後、回転部材93の回転に応じて重合容器80は回転させられる。図11では、回転部材93の回転軸を符号93aで示している。このように、回転重合装置91に重合容器80をセットさせて回転させることにより、第1層用モノマー75aを重合させることができる。なお、本実施形態では、重合容器80の回転をサーフェスドライブ式としているが、重合容器80の回転方式は、特に限定されるものではない。
また、本実施形態では、図11に示すように、重合容器80の両端の蓋80bに磁石80cを備えるとともに、隣り合う2本の回転部材93の間の下方に磁石95を備えている。これにより、回転時において重合容器80が回転部材93から浮くことを防止することができる。ただし、重合容器80の回転部材93からの浮きを防止する方法としては、本形態に限定されるものではない。例えば、回転部材93と同様な回転手段を、セットされた重合容器80の上部に接するように設けて、同様に回転させることにより重合容器80の浮きを防止する方法や重合容器80の上方に押さえ手段を設けて、重合容器80に所定の荷重をかけることにより浮きを防止する方法などが挙げられる。なお、本発明は浮き防止方法に依存するものではなく、いずれの方法も適用することができる。
また、回転重合の前に、パイプ55を立てた状態で第1層75を予備重合させてもよい。予備重合を行う際には、必要に応じて所定の回転機構によりパイプ55の円管軸を回転中心として回転させる。このようにパイプ55の長手方向を概ね水平に保ちながら回転させると、パイプ55の内面全体に第1層75が生成しやすくなるため好ましい。なお、本発明では、第1層75の重合時において、パイプ55の長手方向を水平とすることが、パイプ55の内面全体に第1層75を形成する上でもっとも好ましい。ただし、略水平であればよく、回転軸の許容される角度は水平に対して概ね5°以内である。
なお、第1〜第n層用モノマーを濾過や蒸留などを行うことにより、重合禁止剤や水分および不純物などをあらかじめ除去してから用いることが好ましい。なお、モノマーや重合開始剤を混合した後に、この混合物を超音波処理して溶存気体や揮発成分を除去することが好ましい。さらに、必要に応じて、第1層形成工程の前後において、公知の減圧装置によりパイプ55や第1層用モノマー75aを減圧処理してもよい。
以上のようにして第1層75が形成されたパイプ55を、回転重合装置91から取り出した後、本実施形態では、所定温度に設定された恒温槽などの加熱手段により所定時間の加熱処理をしている。
次に、第2〜第n層76〜78を形成させる。図12に、第2〜第n層76〜78の生成開始時における重合容器80の断面図を示す。この重合容器80は、第1層75を生成させた際に用いたものと同じであるため同一の符号を用いる。まず、第2層用モノマー76aを第1層75の中空部に注入する。そして、栓81により注入口を塞ぎ、第1層75が形成されたパイプ55の長手方向を略水平状態とし、パイプ55の断面円形の中心が回転軸となるように回転させながら反応を開始する。このように回転させながら重合を進めることにより第2層76を形成させる。第2〜第n層用モノマーを重合させる際には、第1層75を作製する際に使用した回転重合装置91(図10参照)を用いる。なお、必要に応じては、第2層用モノマー76aをはじめとする第2〜第n層用モノマーを注入する前後において、公知の減圧装置によりパイプ55や注入物を減圧処理してもよい。
このとき、第2層用モノマー76aが重合を開始すると、第1層75の内壁が第2層用モノマー76aにより膨潤し、重合初期段階において膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっているため、重合速度が加速(ゲル効果と称する)する。このような現象から、本発明では、あらかじめ作製された管状部材を回転させながら、この管状部材と注入された重合性組成物との反応により膨潤層を形成させて重合性組成物を重合させる反応方法を回転ゲル重合法と称する。なお、この重合反応は、本実施形態のように、管状部材の長手方向が水平とされることがより好ましい。
なお、各重合反応の反応速度は、適宜調整されることが好ましい。例えば、各重合性組成物の反応度合いを表す転化率が、1時間あたり5〜90%となるように反応速度を調整することが好ましい。より好ましくは、1時間あたりの転化率が10〜85%となるように調整することであり、さらに好ましくは20〜80%である。この反応速度の制御は、重合開始剤の種類や重合温度の調整などにより制御することができる。なお、重合性組成物の転化率の求め方は周知の方法を用いればよく特に限定はされない。例えば、ガスクロマトグラフィによる残留モノマーの定量分析と目視評価とを実施して両者の関係をあらかじめ求めておき、この関係をもとに目視観察にて評価すればよい。なお、上記のような回転ゲル重合法においては、その反応温度を用いる重合性組成物の沸点以下とすることが好ましい。また、回転速度を適宜調整することにより、各層75〜78の転化率などを制御する。
以上の方法により、所定の材料により生成された第1〜第n層75〜78の複層構造をパイプ55の内側に形成させる。そして、パイプ55を取り除いたn層構造を第1部材51として使用する。また、あらかじめ市販の溶融押出成形により円筒状の第2部材52と第3部材53とを作製する。続いて、これらの各部材51〜53を組合せることによりプリフォーム54を作製する。組合せ工程64では、第1組合せ工程66として第1部材51を第2部材52の中に挿入する。続けて、第1組合せ工程66で作製した部材を第3部材53に挿入してプリフォーム54とする。なお、第1部材51におけるパイプ55の有無は、光学特性に影響を及ぼすものではないため、特に限定はされない。
そして、加熱延伸工程65において、プリフォーム54を加熱しながら溶融延伸させることにより所望の直径(例えば、200〜1000μm)を有するPOF50を得ることができる。なお、プリフォーム54の延伸方法は、特開平07−234322号公報などに記載される各種延伸方法を適用することができる。
POF50は、曲げ、耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として、通常、その表面に1層以上の保護層を被覆して使用される。
なお、本発明により得られるPOF50は、被覆工程68として第1の被覆工程を経て光ファイバコード69となり、組立工程70において1本の心線または複数本の心線を束ねた形態で第2の被覆工程により被覆をされてプラスチック光ファイバケーブル71となる。ただし、光ケーブルの中でもシングルファイバケーブルとする場合には、第2の被覆工程を経ることなく、第1被覆工程における被覆層を外表としたままで光ケーブルとして用いることもある。光ケーブルとされるときの被覆の形態としては、一本の前記心線と被覆材との界面、あるいは複数本束ねた状態の光ファイバ心線の外周と被覆材との界面が、すべて接するように被覆されている密着型の被覆と、被覆材と光ファイバ心線との界面に空隙を有するルース型被覆とがある。ルース型被覆では、たとえばコネクタとの接続部において被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
しかし、被覆材と光ファイバ心線とが密着していないので、光ケーブルにかかる応力や熱などのダメージの多くを、被覆層により緩和させることができるという利点を有する。そのため、ルース型の被覆は、使用目的によっては好ましく用いることができる。ルース型被覆の場合のコネクタ接続部からの水分の伝播については、光ファイバ心線と被覆材との界面の空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することにより、防止することができる。さらに、これらの半固体や粉粒体に対して耐熱や機械的機能の向上などの他の異なる機能を付与させることにより、多機能な被覆層を形成した光ファイバケーブルを製造することができる。また、ルース型の被覆とするには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置による減圧度を加減することにより、前記空隙を有する層を形成することができる。この空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層とを加圧/減圧することにより調整することができる。なお、第1、第2の被覆工程で設けられる被覆材には、難燃剤や紫外線吸収剤,酸化防止剤,昇光剤,滑材などを光伝送特性に影響を及ぼさない条件範囲で添加してもよい。
この難燃剤としては、臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤、リン含有のものがあるが、燃焼時における毒性ガス低減などの安全性の観点では、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が主流となりつつある。ただし、このような金属水酸化物は、その内部に水分を結晶水として有している。この水分は、これら金属水酸化物の製法過程における付着水に起因するものであり完全除去は不可能とされる。したがって、金属水酸化物による難燃性付与は、POF50に接する被覆層には含有させず、ケーブルとしての外表となる被覆層に対してのみ行うことが望ましい。
また、プラスチック光ファイバケーブル71に複数の機能を付与させるために、さらに、適宜機能性層となる被覆層を積層させてもよい。難燃化層以外の機能層としては、例えば、POF50の吸湿を抑制するためのバリア層や、POF50に含有された水分を除去するための吸湿材料層などが挙げられる。なお、この吸湿材料層の付与方法としては、例えば、吸湿テープや吸湿ジェルを所定の被覆層内や被覆層間に設ける方法がある。
さらに、その他の機能性層としては、可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や外部からの応力を緩衝するための緩衝材として機能する発泡材料層、剛性を向上させるための強化層などが挙げられる。また、プラスチック光ファイバケーブル71の構造材(被覆材)としては、樹脂以外にも、例えば、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線などの線材を熱可塑性樹脂に含有させたものが挙げられる。このような材料を用いると、プラスチック光ファイバケーブル71の力学的強度を補強することができるために好ましい。
なお、抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維が挙げられる。そして、金属線としては、ステンレス線,亜鉛合金線,銅線などが挙げられる。ただし、本発明に適用することができる抗張力繊維および金属線は、これらに限定されるものではない。また、その他にも、プラスチック光ファイバケーブル71を保護するための金属管の外装や架空用の支持線、配線時の作業性を向上させるための機構などをプラスチック光ファイバケーブル71の外周部に組み込むこともできる。
プラスチック光ファイバケーブル71の形状は使用形態によって、プラスチック光ファイバコード69を同心円上にまとめた集合型のものや一列に並べたテープ型のもの、さらに、それらを押え巻やラップシースなどでまとめたものなどが挙げられる。なお、これらの使用形態は、用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明のプリフォーム54から得られたプラスチック光ファイバケーブル71は、従来品と比べて軸ずれに対する許容度が高いために、突き合せにより接合しても用いることができる。ただし、より好ましくは、光ケーブルの端部に接続用光コネクタを備えて、互いの接続部を確実に固定することである。また、コネクタは、一般に知られているPN型,SMA型,SMI型などの市販の各種コネクタを利用することが可能である。そのため、本発明のプラスチック光ファイバケーブル71は、種々の発光素子や受光素子や光スイッチ,光アイソレータ,光集積回路,光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置などが組み合わされて好適に用いられる。この際、必要に応じて他の光ファイバなどと組合せてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用することができる。例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。
また、前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線,車両や船舶などの内部配線,光端末とデジタル機器,デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LANなどをはじめとする高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号公報に記載の導波路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号などの各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号などの各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号などの公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号などの各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号などに記載の光信号処理装置;特開2001−86537号などに記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号などに記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号などの各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用したより高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも、照明(導光)やエネルギー伝送,イルミネーション、レンズ、センサ分野にも用いることができる。なお、レンズとしては、例えば、径の中心から外側に向かって次第に屈折率が低くなる凸レンズや、逆に、径の中心から外側に向かって次第に屈折率が高くなる凹レンズにも本発明を適用させることができる。
以下、本発明に関する実施例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。また、プリフォーム54の製造方法などに関しては実施例1において詳細に説明するものとし、実施例2では、実施例1と同じ場合、説明を省略する。なお、実施例2は実施例1に対する比較例である。