JP2007050672A - 液滴吐出方法および液滴吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡素な構造のノズルによって、ノズル径よりも小さい微小なインク滴を吐出させることができる液滴吐出方法および液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】 メニスカス155を圧力室52内へ引き込んでメニスカス空間160を形成する工程と、メニスカス空間160を形成するメニスカス155からノズル51の開口部に向かって液柱を生成する工程と、液柱の先端部を液滴として吐出させる工程と、を備える。メニスカス空間160は、メニスカス空間160の水平方向の最大径Dmとノズルの径Dnとが、Dn<Dm、を満たすように、生成される。
【選択図】 図10
【解決手段】 メニスカス155を圧力室52内へ引き込んでメニスカス空間160を形成する工程と、メニスカス空間160を形成するメニスカス155からノズル51の開口部に向かって液柱を生成する工程と、液柱の先端部を液滴として吐出させる工程と、を備える。メニスカス空間160は、メニスカス空間160の水平方向の最大径Dmとノズルの径Dnとが、Dn<Dm、を満たすように、生成される。
【選択図】 図10
Description
本発明は、液滴吐出方法および液滴吐出装置に関し、特に、小さな液滴を吐出させる液滴吐出方法および液滴吐出装置に関する。
近年、画像を印刷する画像形成装置としてインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)が広く普及している。インクジェット記録装置は、記録紙などの記録媒体とインクジェット式記録ヘッドとを相対的に移動させながら、インクジェット式記録ヘッドから記録媒体に向かってインク滴を吐出させることで、所望の画像をプリントする。
インクジェット記録装置によって高画質の画像をプリントするためには、所望のインク滴を記録媒体に向かって適切に吐出させることが好ましい。このような事情の下、ノズルから記録媒体に向かって所望のインク滴を吐出させる技術がいくつか提案されている。
例えば特許文献1では、インク先端部の周期的位置変化を適宜設定して、吐出されるインク滴の飛翔速度を制御するインクジェットプリンタが開示されている。また特許文献2では、インク先端部の位置および周期的位置変化速度を適宜設定して、インク滴の大きさおよび飛翔速度を制御するインクジェットプリンタが開示されている。また特許文献3では、インク室を膨張させてインク先端部をインク室の方向に引き込む第1工程と、インク室にインクを供給することによりインク先端部をノズル流路の方向に前進させる第2工程と、インク室を収縮させてノズル開口部からインク滴を吐出させる第3工程と、を制御するインクジェットプリンタが開示されている。このインクジェットプリンタは、第1工程におけるインク先端部の引き込み量や第2工程の所要時間を変化させることによりインク先端部の位置を調整して、吐出されるインク滴の大きさを制御する。
特開平11−70654号公報
特開平11−70655号公報
特開平11−70656号公報
一般的なインクジェット記録装置では、ノズル径の大きさによって、ノズルから吐出されるインク滴のサイズが大きく左右される。そのため、一般的なインクジェット記録装置では、ノズルから吐出させることができるインク滴の大きさは、ノズル径の大きさに応じて制限される。
図16(a)および図16(b)は、一般的なインクジェット記録装置のノズルからインク滴が吐出される様子を示す図である。図16(a)は、インクのメニスカス155を圧力室52内に引き込んだ状態を示し、図16(b)は、メニスカス155がノズル51を介して圧力室52から外部へ押し出された状態を示す図である。このように、一般的なインクジェット記録装置では、吐出されるインク滴の大きさはノズル51の径に大きく左右されるため、インク滴を小さくすることには限界がある。また、ノズル51の径を小さくしてインク滴を小さくする手法が考えられるが、この場合には、高度なノズル製造技術が要求され、製造コストが高くなる傾向がある。
一方、上述の特許文献3に記載のインクジェットプリンタは、インク先端部の位置を制御することによってインク滴の大きさを調整しているが、この場合には、ノズルの流路の長さを長くしてインク先端部の十分な移動範囲を確保する必要がある。しかしながら、ノズルを長くすると、より高精度なノズルの加工が要求されるとともに、インク滴の吐出後におけるノズル内へのインクの再充填を迅速かつ安定的に行うことが難しくなる。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構造のノズルによって、ノズル径よりも小さい微小なインク滴を吐出させることができる液滴吐出方法および液滴吐出装置を提供することにある。
前記目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、圧力室内の液体をノズルを介して液滴として吐出させる液滴吐出方法に関する。この液滴吐出方法は、圧力室内の液体をノズルを介して液滴として吐出させる液滴吐出方法において、前記液体のメニスカスが曲面状となるまで前記メニスカスを前記圧力室内へ引き込んで前記圧力室内に前記メニスカスによって仕切られるメニスカス空間が形成されるように、前記圧力室を膨張させるメニスカス引き込み工程であって、前記メニスカス空間の水平方向の最大径Dmと前記ノズルの流路径Dnとが、Dn<Dm、を満たすように前記圧力室を膨張させるメニスカス引き込み工程と、前記メニスカス空間を形成する前記メニスカスから前記ノズルの流路に向かって液柱が生成されるように、前記圧力室を収縮させる液柱生成工程と、前記液柱を切断して前記液滴として吐出させる液滴吐出工程と、を備える。
当該発明によれば、圧力室内にメニスカスが引き込まれた際にメニスカス空間の水平方向の最大径Dmがノズルの流路径Dnよりも大きいので、圧力室を収縮させることにより生成される液柱をメニスカスの一部分のみによって形成することが可能となる。これにより、ノズルの形状や大きさにかかわらず、ノズルの流路径よりも小さな径を持つ液柱を比較的簡単に生成することが可能となり、その液柱の一部または全部を微小な液滴として吐出させることができる。なお、ここでいう「曲面状」には、様々な曲面が含まれ、略球面状、曲率半径が一定ではない曲面、等も含まれる。また、「水平方向」とは、例えばノズル面が延在する方向と水平な方向を指す。
また、請求項2に記載の本発明は、ノズルが設けられた圧力室と、前記圧力室を膨張および収縮させる圧力室変動手段と、前記圧力室変動手段を制御する制御手段と、を備える液滴吐出装置に関する。この液滴吐出装置では、前記制御手段が、前記圧力室内の液体のメニスカスが曲面状となるまで前記メニスカスを前記圧力室内へ引き込んで前記メニスカスによって仕切られるメニスカス空間が前記圧力室内に形成されるように、前記圧力室を膨張させるメニスカス引き込み部であって、前記メニスカス空間の水平方向の最大径Dmと前記ノズルの流路径Dnとが、Dn<Dm、を満たすように前記圧力室を膨張させるメニスカス引き込み部と、前記メニスカス空間を形成する前記メニスカスから前記ノズルの流路に向かって液柱が生成されるように、前記圧力室を収縮させる液柱生成部と、前記液柱を切断して液滴として吐出させる液滴吐出部と、を有する駆動波形を生成する。
当該液滴吐出装置によれば、制御手段によって生成された駆動波形に基づいて圧力室変動手段が駆動され、メニスカスの一部分のみによって液柱を形成することができる。これにより、その液柱の一部または全部を微小な液滴として吐出することが可能となる。
また、請求項3に記載されているように、前記ノズルの流路は、前記圧力室側から外側に向かって断面積が大きくなる逆テーパー状であってもよい。この場合、メニスカスを圧力室内に引き込んだ際にメニスカスが過剰に引き込まれることを抑制することができ、圧力室内への気泡の混入を低減させることができる。
本発明によれば、ノズルの流路径よりも小さな径を持つ液柱をメニスカスの一部分のみによって生成することが可能なので、簡素な構造のノズルを用いる場合であっても、その液柱の先端部を微小な液滴として吐出させることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態では、インクジェット式記録装置に本発明を応用した例について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。インクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備える。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。インクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備える。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットにより用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1に示すように裁断用の第1のカッター28が設けられ、ロール紙は第1のカッター28によって所望のサイズにカットされる。第1のカッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されている。固定刃28Aは印字裏面側に設けられ、丸刃28Bは搬送路を挟んで印字面側に配置される。なお、カット紙を使用する場合には、第1のカッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出が実現されるように、インク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30によって記録紙16に熱が与えられる。このとき、印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22に送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面に対向する部分及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有し、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。図1に示すように、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において、印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられている。この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって、ベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へ搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成を詳細には図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、給水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度およびローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラーが接触するので画像が滲み易い。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを、記録紙16の搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、図2に示されているように、インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより、記録紙16上にカラー画像が形成されうる。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べ、高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここでいう主走査方向及び副走査方向は、次のような意味で用いられている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン又は1個の帯状の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン又は1個の帯状ライン(帯状領域の長手方向)が示す方向を、主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動させることによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを、副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。本実施形態では、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンダなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
インク貯蔵/装填部14は、図1に示されているように、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通する。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を通知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を有するとともに、色間の誤装填を防止する機構を有する。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサー(ラインセンサー等)を含み、当該イメージセンサーによって読み取られた打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサーによって構成されている。このラインセンサーは、赤(R)の色フィルターが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサー列と、緑(G)の色フィルターが設けられたGセンサー列と、青(B)の色フィルターが設けられたBセンサー列と、からなる色分解ラインCCDセンサーによって構成されている。なお、ラインセンサーに代えて、受光素子が二次元に配列されて成るエリアセンサーを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出されることが好ましい。このインクジェット記録装置10には、本画像のプリント物とテスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合には、第2のカッター48によってテスト印字の部分を切り離す。第2のカッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部とを切断するためのものである。第2のカッター48の構造は、前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダ別に画像を集積するソータが設けられている。
図3はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。なお、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造はほぼ共通する。以下、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを代表して表す場合には、符号50を付す。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1に示されたインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクが補充される方式と、タンクごと交換されるカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を代える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図3のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価なものである。
図3に示されているように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図3には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体的にサブタンクが設けられる構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
キャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50の下方のメンテナンス位置に移動させられる。
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆う。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示しないブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に摺動可能である。ノズル面50Aにインク滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面50Aで摺動させることによりノズル面50A上のインク滴等が拭き取られ、ノズル面50Aが清浄化される。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインクに気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、印字ヘッド50内の気泡が混入したインクを吸引ポンプ67によって吸引することにより除去し、吸引除去したインクを回収タンク68に送液する。この粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出す吸引動作は、インクがヘッドに装填される初期動作時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われる。
印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータが動作してもノズルからインクが吐出されなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータの動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、アクチュエータを動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクをインク受けに向かって吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーの摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するために、ワイパーによってノズル面50Aの汚れが清掃された後に予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、印字ヘッド50のノズルや圧力室に気泡が混入したり、ノズル内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズルや圧力室のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、アクチュエータを動作させてもノズルからインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて印字ヘッド50内の気泡が混入したインクや増粘インクを吸引ポンプ67で吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、印字ヘッド50の圧力室内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合は、なるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図3で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能しうる。
また、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とすることが好ましい。
次に、印字ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)の構造について説明する。
図4(a)は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図4(b)は図4(a)の一部を拡大した図である。印字ヘッド50は、二次元マトリクス状であって千鳥状に配置された複数の圧力室ユニット53を有する。圧力室ユニット53は、インク滴の吐出口を形成するノズル51と、ノズル51に連通する圧力室52と、インク供給口54と、を有する。
図4(a)には長手方向(図4の横方向)に延びるノズル列を6列有する印字ヘッド50が例示されているが、印字ヘッド50は更に多数のノズル列を有することも可能である。各ノズル列を構成するノズル51は、一定のピッチPで配列されている。隣接するノズル列は、いわゆる千鳥状に配列されており、図4(a)に示す例では1/6ピッチずれて配列されている。これにより、印字ヘッド50の長手方向(記録紙16の搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)はP/6となる。
図5は、図4(a)および図4(b)に示すV−V線に沿った圧力室ユニット53の断面を示す断面図である。圧力室ユニット53を含む印字ヘッド50は、複数のプレート部材が積層した構造を有し、ノズル51が形成されたノズルプレート58、流路プレート56、振動板70、振動板70の全面を覆うように形成された共通電極72(下部電極)、圧電体74(圧電材料)、および個別電極76(上部電極)が順次、積層状に積み重なって形成されている。なお、図5では、各プレート部材の積層方向が矢印Aで表され、各プレート部材が延在する矢印Aと垂直な方向が矢印Bで表されている。
流路プレート56には、共通液室55と、ノズル51に対応するようにして設けられた圧力室52と、共通液室55および圧力室52を連通するインク供給口54と、が形成されている。共通液室55は、インク供給源となるインクタンク60(図3参照)に接続しており、インクタンク60から供給されるインクが貯留される。圧力室52の上壁は振動板70によって構成されており、この振動板70の撓みに応じて圧力室52は膨張あるいは収縮する。圧力室52内のインクは、そのような圧力室52の膨張あるいは収縮に応じて加減圧されるようになっている。インク供給口54は、圧力室52と共通液室55との間のインク流路であり、このインク供給口54では矢印A方向にインクが流れる。
圧電体74および個別電極76は、圧力室52に対応する位置に設けられている。そして、圧電体74と、圧電体74の両サイドに配置された個別電極76および共通電極72と、によって圧電素子78が構成されている。この圧電素子78が振動板70を撓ませて圧力室52内に充填されたインクを加圧することにより、圧力室52内のインクがノズル51を介して外部に吐出される。
なお、本実施形態のノズル51は、一定の直径Dnの流路を有する。また、流路プレート56とは反対側に位置するノズルプレート58のノズル面50Aは、インク吐出面を形成し、記録紙16と対向するように配置される。
図6は、インクジェット記録装置10のシステム制御ユニット100およびその周辺のハード構成の一例を示すブロック図である。システム制御ユニット100は、通信インターフェース110、システムコントローラ112、画像メモリ114、モータドライバ116、ヒータドライバ118、プリント制御部120、画像バッファメモリ122、ヘッドドライバ124、等を含み、印字を制御する制御部として働く。
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース110にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分に、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース110を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、画像メモリ114に一旦記憶される。
画像メモリ114は、通信インターフェース110を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ112を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ114は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体が用いられてもよい。
システムコントローラ112は、通信インターフェース110、画像メモリ114、モータドライバ116、ヒータドライバ118等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ112は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成されており、ホストコンピュータ86との間の通信制御や画像メモリ114に対する読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ116は、システムコントローラ112からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ118は、システムコントローラ112からの指示に従って後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部120は、システムコントローラ112の制御に従い、画像メモリ114内の画像データから印字制御用の信号を生成する各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ124に供給する制御部である。プリント制御部120において所要の信号処理が行われ、印字制御信号に基づきヘッドドライバ124を介して印字ヘッド50のインク滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部120には画像バッファメモリ122が設けられており、プリント制御部120における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ122に一時的に格納される。なお、図4では画像バッファメモリ122がプリント制御部120に付随する態様で示されているが、画像バッファメモリ122を画像メモリ114と兼用することも可能である。また、プリント制御部120とシステムコントローラ112とを統合して1つのプロセッサにする態様も可能である。
ヘッドドライバ124はプリント制御部120から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50のアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ124は、ヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1を用いて説明したように、ラインセンサー(不図示)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部120に提供する。
プリント制御部120は、必要に応じて、印字検出部24から得られる情報に基づき印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
図7は、システム制御ユニット100の機能構成を示すブロック図であり、特に微小なインク滴を印字ヘッド50から吐出させる際に圧電素子78に対して印加する電圧の制御に関する。
システム制御ユニット100は、印字データ供給部130と、電圧算出部140と、電圧印加部150と、を含む。印字データ供給部130は、外部からシステム制御ユニット100に送られくる印字データを、電圧算出部140に供給する。電圧算出部140は、印字データ供給部130によって供給される印字データに基づいて、圧電素子78に印加する電圧を算出する。電圧印加部150は、電圧算出部140が算出した電圧に基づいて、圧電素子78に電圧を印加する。したがって、少なくとも電圧算出部140および電圧印加部150が、本発明の制御部に対応する。
電圧算出部140は、引き込み電圧算出部142と、液柱生成電圧算出部144と、液滴吐出電圧算出部146とを含み、ノズル51の径よりも小さい微小なインク滴を吐出させる際に圧電素子78に対して印加する印加電圧を算出する。
引き込み電圧算出部142は、圧力室52内のインクのメニスカスが略球面状となるまでメニスカスを圧力室52内へ引き込んで、当該メニスカスによって仕切られるメニスカス空間160(後述する図10参照)が圧力室52内に形成されるように、圧力室52を膨張させる印加電圧V1およびメニスカス引き込み時間t1を算出する。このとき、引き込み電圧算出部142は、メニスカス空間160の水平方向の最大径Dmとノズル51の流路径Dnとが「Dn<Dm」を満たすように、圧力室52を膨張させる印加電圧V1およびメニスカス引き込み時間t1を算出する。液柱生成電圧算出部144は、メニスカス空間160を形成するメニスカスからノズル51の流路に向かって液柱165(後述する図10参照)が生成されるように、圧力室52を収縮させる印加電圧V2および液柱生成時間t2を算出する。液滴吐出電圧算出部146は、その液柱165の先端部を切断して当該先端部がインク滴として吐出されるような液柱吐出時間t3を算出する。
なお、本実施形態において、図7に示す機能ブロックの各々は、図6に示すシステム制御ユニット100のハード構成が単独であるいは協働することによって、実現される。例えば、図7に示す印字データ供給部130は図6に示す通信インターフェース110によって実現され、図7に示す電圧印加部150は図6に示すヘッドドライバ124によって実現される。また、図7に示す電圧算出部140は、図6に示すシステムコントローラ112、画像メモリ114、プリント制御部120、および画像バッファメモリ122の協働によって実現される。また、引き込み電圧算出部142、液柱生成電圧算出部144、および液滴吐出電圧算出部146は、単一または複数の集積回路等の電気回路によって実現可能である。
図8は、電圧算出部140において算出される印加電圧の波形(電圧駆動波形)の一例を示す図である。
本例では、圧電素子78に印加される電圧が標準電圧の場合に圧力室52が標準状態となり、圧電素子78に印加される電圧が標準電圧よりも低い場合に圧力室52が標準状態よりも膨張し、圧電素子78に印加される電圧が標準電圧よりも高い場合に圧力室52が標準状態よりも収縮する。
そのため、引き込み電圧算出部142は、圧力室52を膨張させてインクのメニスカスを圧力室52内に引き込むために、圧電素子78に印加する電圧を標準電圧から徐々に降下させるような波形の電圧を算出する(図8の「メニスカス引き込み工程」部参照)。また、液柱生成電圧算出部144は、圧力室52を収縮させて圧力室52内のメニスカスからノズル51の流路に向かって液柱を生成するために、圧電素子78に印加する電圧を徐々に上昇させて標準電圧よりも大きな電圧にするような波形の電圧を算出する(図8の「液柱生成工程」部参照)。また、液滴吐出電圧算出部146は、圧力室52を元の状態に回復させて液柱の先端部を切断するために、圧電素子78に印加する電圧を徐々に降下させて再び標準電圧に戻すような波形の電圧を算出する(図8の「液柱生成工程」部参照)。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、圧電素子78に印加する電圧がシステム制御ユニット100の電圧算出部140において算出され(図8参照)、算出されたそのような電圧が電圧印加部150によって圧電素子78に印加される。これにより、振動板70が圧電素子78によって撓まされ、振動板70の撓みに応じて圧力室52が膨張あるいは収縮し、圧力室52内のインクに加えられる圧力が変化する。このような圧力室52内のインクの圧力変化に応じて、ノズル51の径よりも小さい微小なインク滴が、記録紙16に向かって吐出される。以下、図8、図9、および図10(a)〜(e)を参照して、微小なインク滴を吐出させる場合の圧力室52内のインクの挙動について説明する。
図9は、微小なインク滴を吐出させる工程を示すフローチャートである。また、図10(a)〜(e)は、微小なインク滴を吐出させる際のノズル51の近傍におけるインクの挙動を示す図である。なお、図10(a)〜(e)の各々は、図8に示されている(a)〜(e)の各々に対応している。
微小なインク滴をノズル51から吐出させる場合、まず、圧電素子78に印加する電圧を標準電圧から降下させて(図8の「メニスカス引き込み工程」参照)、振動板70を撓ませることにより、圧力室52を標準サイズから拡大サイズに膨張させる(図9のS1(メニスカス引き込み工程))。このとき、標準サイズの圧力室52内のインクのメニスカス155(図10(a)参照)は、メニスカス155が略球面状となるまで圧力室52内に引き込まれる。そして、拡大サイズの圧力室52内には、メニスカス155によって仕切られるメニスカス空間160が形成される(図10(b)参照)。このメニスカス空間160は、水平方向の最大径Dmがノズル51の流路径Dnよりも大きくなるように(Dn<Dm)形成される。このメニスカス空間160の水平方向の最大径Dmは、ノズル51の流路径Dnよりも大きければよく、例えばノズル51の流路径Dnの1.1〜1.2倍程度の大きさを有していればよい。なお、ここでいう「水平方向」とは、例えば液滴吐出方向と略垂直を成す方向(図5の矢印B方向参照)を指す。
そして、圧電素子78に印加する電圧を標準電圧よりも低い電圧で所定時間維持し、メニスカス空間160を形成するメニスカス155を安定させる(図10(c)参照)。そして、圧電素子78に印加する電圧を標準電圧よりも高い電圧に上昇させて(図8の「液柱生成工程」参照)、振動板70を撓ませることにより、圧力室52を拡大サイズから縮小サイズに収縮させる(S2(液柱生成工程))。これにより、メニスカス155近傍のインクが加圧され、メニスカス空間160を形成するメニスカス155からノズル51の流路に向かって当該流路よりも細い液柱165が生成される(図10(d)参照)。このとき、メニスカス155が曲面状に形成されているので、その表面張力のために、メニスカス155の全面が平行に押し出されるのではなく、メニスカス155の中央部に比較的大きな圧力が集中的に作用する。そのため、メニスカス155の中央部のみが押し出され、ノズル51の流路よりも十分に小さな径を持つ液柱165が生成されることとなる。
そして、圧電素子78に印加する電圧を標準電圧よりも高い電圧で所定時間維持した後、圧電素子78に印加する電圧を標準電圧まで降下させて(図8の「液滴吐出工程」参照)、振動板70の撓みを戻し、圧力室52を縮小サイズから標準サイズに回復させる(S3(液滴吐出工程))。これにより、液柱165の先端部は、切断され、ノズル51の流路径Dnよりも小さい微小なインク滴170として吐出される(図10(e)参照)。このようにして吐出された微小なインク滴170は、記録紙16上の所望の位置に着弾して、画像のドットを形成する。
なお、解析の結果、図10(a)〜(e)に示すインクの挙動(特に図10(c)および図10(d)に示すインクの挙動)を実現するためには、例えば、吐出方向に関するノズル51の長さlnを30μm、ノズル51の流路径Dnを20μm、ノズル51の背後における圧力室52の水平方向に関する径Dcを100μm(図5参照)、およびインクの粘度を20cpとした場合、圧力室52内のインク(特に、メニスカス空間160を形成するメニスカス155近傍のインク)に対して1×107Pa(パスカル)程度の圧力を与える必要がある。これに関して、図11に示す本実施形態のインクジェット記録装置10の等価回路を用いて検証した。
図11は、本実施形態のインクジェット記録装置10の等価回路であり、圧力室52、圧電素子78、ノズル51、および供給系(インク供給口54、共通液室55、インクタンク60、等)に関する等価回路が示されている。圧力室52に対応する等価回路は、「コンデンサCc」によって表されている。また、圧電素子78に対応する等価回路は、「コンデンサCp、コイルLp、および抵抗Rp」が直列に接続した回路によって表されている。また、ノズル51に対応する等価回路は「コイルLn、抵抗Rn、およびコンデンサCn」が直列に接続した回路によって表されている。また、供給系に対応する等価回路は、「抵抗RsおよびコイルLs」が直列に接続した回路によって表されている。
図11に示されている等価回路では、圧電素子78に対応する等価回路に対して電源Pが直列に接続されている。また、ノズル51に対応する等価回路、圧力室52に対応する等価回路、および供給系に対応する等価回路が並列に接続されており、この並列に接続された等価回路の各々は、圧電素子78に対応する等価回路に対して直列に接続されている。また、電源P、ノズル51に対応する等価回路、圧力室52に対応する等価回路、および供給系に対応する等価回路の各々の一方の端部は、接地されている。
図12は、図11に示す等価回路を用いた場合の、圧電素子78による入力圧力Vinと圧力室52内のインク圧Vcの圧力特性を示すグラフであり、特に「吐出方向に関するノズル51の長さlnを30μm、ノズル51の流路径Dnを20μm、ノズル51の背後における圧力室52の水平方向に関する径Dcを100μm、インクの粘度を20cp」に設定した場合の圧力特性を示す図である。ここでいう「圧電素子78による入力圧力Vin」は、圧電素子78が発生させる圧力を意味し、本実施形態では圧電素子78が振動板70に及ぼす圧力とほぼ等しい。また、「圧力室52内のインク圧Vc」は、圧力室52内のインクに作用する圧力を意味し、圧電素子78によって撓まされる振動板70の状態に応じて変動する。また、圧電素子78による入力圧力Vinおよび圧力室52内のインク圧Vcは、パスカル(Pa)に換算された値が図12に表されている。
図12に示されている圧力特性によれば、図10(a)〜(e)のインクの挙動を実現するために必要とされる1×107Pa以上の圧力を圧力室52内のインクに対して加えることが十分に可能であることが分かる。したがって、上述の本実施形態のインクジェット記録装置10によれば、ノズル51の径よりも十分に小さな径を持つ液柱およびインク滴を生成可能である。
なお、図10(e)に示す例では、液柱165の先端部がノズル51の外側(外部)で切断される例が示されているが、これに限定されるものではない。例えば、図13に示すように液柱165の先端部がノズル51の内側の圧力室52内で切断されるものであってもよいし、液柱165の先端部がノズル51の流路において切断されるものであってもよい。液柱165の先端部を切断するタイミングは、圧電素子78に印加する電圧の大きさや電圧波形等に応じて、調整可能である。
以上説明したように本実施形態によれば、メニスカス155の一部分のみによって液柱165が生成され、液柱165の径をノズル51の径よりも十分に小さく形成することができるので、液柱165の先端部を微小なインク滴として吐出させることができる。これにより、本実施形態のインクジェット記録装置10では、メニスカス全体によって液柱を生成していた従来のインクジェット記録装置(図16(a)および図16(b)参照)と比べ、インク滴の大きさに対するノズル51の影響が小さくなる。したがって、本実施形態のインクジェット記録装置10によれば、ノズル51の流路を長くしたりノズル51の開口径を小さくすることなく、印字ヘッド50から記録紙16に向かって十分に小さい微小なインク滴を吐出させることができる。
例えば、図16(a)および図16(b)に示されている従来のインクジェット記録装置は、通常、2〜4pl(ピコリットル)程度のインク滴しか吐出させることができない。しかしながら、上述の本実施形態のインクジェット記録装置10は、0.5〜1pl程度の微小なインク滴を吐出させることができ、より小さな画像ドットを形成することが可能である。なお、インク滴の大きさの調整は、圧電素子78に印加する電圧の大きさや電圧波形等に応じて、調整可能である。
(第2の実施形態)
本実施形態は、上述の第1の実施形態と略同一であり、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態は、上述の第1の実施形態と略同一であり、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図14は、第2の実施形態におけるノズル51を示す図である。本実施形態のノズル51の流路は、圧力室52側から外側に向かって断面積が徐々に大きくなる逆テーパー状となっている。本実施形態のノズル51は、流路のテーパーの角度が略45度を成すように加工されている。
他の構成は、上述の第1の実施形態と略同一である。
本実施形態のようにノズル51の流路の形状を逆テーパー状にすることで、メニスカス155を圧力室52内に引き込んでメニスカス空間160を形成する際に(図10(b)参照)メニスカス155が過剰に引き込まれることを抑制することができる。これにより、圧力室52内のインクに気泡が混入および残存してしまうことを効果的に防ぐことができる。
なお、本実施形態のようにノズル51の径が一定ではない場合には、ノズル51の最小流路径Dnminがメニスカス空間160の最大径Dmよりも小さくなるように(Dnmin<Dm)、上述のメニスカス引き込み工程が行われる。
本発明は、上述の実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形が加えられることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
例えば、図5に示す印字ヘッド50の代わりに、図15に示す印字ヘッド50を用いることも可能である。すなわち、ノズル51、共通液室55、およびインク供給口54の各々が振動板70の直下に設けられてもよい。図5に示す印字ヘッド50では、圧力室52と共通液室55との間においてインクが流れる方向が鉛直方向(図中の矢印A方向)となっているが、図15に示す印字ヘッド50では、圧力室52と共通液室55との間においてインクが流れる方向が水平方向(図中の矢印B方向)となっている。
また、圧電素子78に印加する電圧(図8参照)は、ノズル51の長さln、ノズル51の流路径Dn、ノズル51の背後における圧力室52の水平方向に関する径Dc、あるいはインクの粘度、等の条件に応じて、適宜変更されうる。
また、ノズル51の流路は、一定の径を持つもの(第1の実施形態)や、逆テーパー状の径を持つもの(第2の実施形態)に限定されるものではなく、例えば、圧力室52側から外側に向かって断面積が徐々に小さくなるテーパー状であってもよい。また、流路のテーパーの角度は、略45度に限定されるものではなく、インクの粘度、印字ヘッド50のサイズや形状、等の条件に応じて調整可能である。
また、本発明の液滴吐出方法および液滴吐出装置は、図1に示すインクジェット式記録ヘッドに限定されるものではなく、インク以外の液体を吐出させる装置類に対しても適用することが可能である。
10…インクジェット記録装置、 50…印字ヘッド、 50A…ノズル面、 51…ノズル、 52…圧力室、 53…圧力室ユニット、 54…インク供給口、 55…共通液室、 56…流路プレート、 58…ノズルプレート、 60…インクタンク、70…振動板、 72…共通電極、 74…圧電体、 76…個別電極、 78…圧電素子、 100…システム制御ユニット、 112…システムコントローラ、 114…画像メモリ、 120…プリント制御部、 122…画像バッファメモリ、 124…ヘッドドライバ、 130…印字データ供給部、 140…電圧算出部、 142…引き込み電圧算出部、 144…液柱生成電圧算出部、 146…液滴吐出電圧算出部、 150…電圧印加部、 155…メニスカス、 160…メニスカス空間、 165…液柱、 170…インク滴
Claims (3)
- 圧力室内の液体をノズルを介して液滴として吐出させる液滴吐出方法において、
前記液体のメニスカスが曲面状となるまで前記メニスカスを前記圧力室内へ引き込んで前記圧力室内に前記メニスカスによって仕切られるメニスカス空間が形成されるように、前記圧力室を膨張させるメニスカス引き込み工程であって、前記メニスカス空間の水平方向の最大径Dmと前記ノズルの流路径Dnとが、Dn<Dm、を満たすように前記圧力室を膨張させるメニスカス引き込み工程と、
前記メニスカス空間を形成する前記メニスカスから前記ノズルの流路に向かって液柱が生成されるように、前記圧力室を収縮させる液柱生成工程と、
前記液柱を切断して前記液滴として吐出させる液滴吐出工程と、を備えることを特徴とする液滴吐出方法。 - ノズルが設けられた圧力室と、
前記圧力室を膨張および収縮させる圧力室変動手段と、
前記圧力室変動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記圧力室内の液体のメニスカスが曲面状となるまで前記メニスカスを前記圧力室内へ引き込んで前記メニスカスによって仕切られるメニスカス空間が前記圧力室内に形成されるように、前記圧力室を膨張させるメニスカス引き込み部であって、前記メニスカス空間の水平方向の最大径Dmと前記ノズルの流路径Dnとが、Dn<Dm、を満たすように前記圧力室を膨張させるメニスカス引き込み部と、前記メニスカス空間を形成する前記メニスカスから前記ノズルの流路に向かって液柱が生成されるように、前記圧力室を収縮させる液柱生成部と、前記液柱を切断して液滴として吐出させる液滴吐出部と、を有する駆動波形を生成することを特徴とする液滴吐出装置 - 前記ノズルの流路は、前記圧力室側から外側に向かって断面積が大きくなる逆テーパー状であることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置。
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-
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