JP2007049987A - 宿主微生物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を、枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子のゲノム上における上流に導入してなるか、或いは微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に連結した遺伝子断片を微生物に導入してなり、かつ、胞子関連遺伝子若しくは鞭毛関連遺伝子又はこれらに相当する遺伝子の1以上をゲノムから削除又は不活化した微生物に目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入してなる組換え微生物。
【選択図】なし
Description
しかしながら、prsA遺伝子を過剰発現しており、かつ、これらの胞子形成関連遺伝子や鞭毛関連遺伝子が不活化した微生物はこれまで知られておらず、特にその様な微生物がprsA遺伝子を過剰発現している微生物に比べ、有用なタンパク質又はポリペプチドの優れた生産性を示すことは予想すらされていない。
Nature,390,249,1997 Science,277,1453,1997
(1)配列番号1で示される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価な活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。
(2)配列番号1で示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価なタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。なお、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning −A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M 塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5xデンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
(3)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価なタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。
(4)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価なタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。なお、ここで、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列には、1若しくは数個、好ましくは1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が含まれ、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
特に、本発明微生物の宿主として枯草菌を用いる場合、prsA遺伝子の本来の転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位から、spoVG遺伝子の転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位への相同組換えによる置換は、Mol.Gen.Genet.,223,268,1990記載の方法等を利用して行うことが出来る。
ここで用いる導入用DNA断片は、親微生物ゲノム上の導入部位の上流に隣接する約0.1〜3、好ましくは0.4〜3kb断片(以下、断片(1))と、下流に隣接する約0.1〜3、好ましくは0.4〜3kb断片(以下、断片(2))の間に、当該転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む断片(以下、断片(3))、prsA遺伝子断片(以下、断片(4))、及び薬剤耐性マーカー遺伝子断片(以下、断片(5))を挿入したDNA断片である。まず、1回目のPCRによって、断片(1)〜断片(5)の5断片を調製する。この際、例えば、断片(1)の下流末端に断片(3)の上流側10〜30塩基対配列、断片(4)の上流末端に断片(3)の下流側10〜30塩基対配列、断片(4)の下流末端に断片(5)の上流側10〜30塩基対配列、更に断片(2)の上流側に断片(5)の下流側10〜30塩基対配列が付加される様にデザインしたプライマーを用いる(図1)。
次いで、1回目に調製した5種類のPCR断片を鋳型とし、断片(1)の上流側プライマーと断片(2)の下流側プライマーを用いて2回目のPCRを行う。これにより、断片(1)の下流末端に付加した断片(3)の配列に於いて断片(3)とのアニールが生じ、同様に、断片(4)の上流末端に付加した断片(3)の配列に於いて断片(3)とのアニールが生じ、断片(4)の下流末端に付加した断片(5)の配列に於いて断片(5)とのアニールが生じ、断片(2)の上流側に付加した断片(5)の配列において断片(5)とのアニールが生じる。PCR増幅の結果、断片(1)〜断片(5)の5断片が、(1)(3)(4)(5)(2)の順に結合したDNA断片を得ることが出来る(図1)。
薬剤マーカー遺伝子としては、エリスロマイシン耐性遺伝子等を用いることが出来る。また、ここで行うPCR反応は、表1−1〜表1−3に示したプライマーセットを用い、Pyrobest DNAポリメーラーゼ(宝酒造)などの一般のPCR用酵素キット等を用いて、成書(PCR Protocols. Current Methods and Applications, Edited by B.A.White, Humana Presspp251 ,1993、Gene,77,61,1989)等に示される通常の条件に準じて行えばよい。
かくして得られた導入用DNA断片を、コンピテント法等によって細胞内に導入すると、同一性のあるゲノム上導入部位の上流及び下流の相同領域おいて、細胞内での遺伝子組換えが生じ、当該転写開始制御領域、又は転写開始制御領域とリボソーム結合部位をprsA遺伝子の上流に連結した遺伝子断片が導入された細胞を薬剤耐性マーカーによる選択によって分離することができる。薬剤耐性マーカーによる選択は、例えば、エリスロマイシンを含む寒天培地上に生育するコロニーを分離したのち、ゲノムを鋳型としたPCR法などによってゲノム上への導入が確認されるものを選択することにより行えばよい。尚、上記薬剤耐性マーカー遺伝子は、一般的に用いられる抗生物質を用いた選択に利用可能なものであれば特に限定されないが、エリスロマイシン耐性遺伝子の他には、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びブラストサイジンS耐性遺伝子等の薬剤耐性マーカー遺伝子が挙げられる。
以下の様に、prsA遺伝子の発現を強化した変異株の構築を行った(図2参照)。枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1−1に示したPVG-FWとPVG-R、及びprsA/PVG-FとprsA/Em2-Rのプライマーセットを用いてspoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む0.2kb断片(A)、及びprsA遺伝子を含む0.9kb断片(B)をPCRにより増幅した。またプラスミドpMUTIN4(Microbiology. 144, 3097 (1998))を鋳型として、表1−1に示したemf2とemr2のプライマーセットを用いてエリスロマイシン(Em)耐性遺伝子を含む1.3kb断片(C)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表1−1に示したPVG-FW2とemr2のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(A)(B)(C)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位がprsA遺伝子の上流に連結し(spoVG遺伝子の開始コドンの位置にprsA遺伝子の開始コドンが位置する様に連結)、更にその下流にEm耐性遺伝子が結合した2.4kbのDNA断片(D)を得た。続いて枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1−1に示したamyEfw2とamyE/PVG2-R、及びamyE/Em2-FとamyErv2のプライマーセットを用いてamyE遺伝子の5’側領域を含む1.0kb断片(E)、及びamyE遺伝子の3’側領域を含む1.0kb断片(F)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(E)(F)(D)3断片を混合して鋳型とし、表1−1に示したamyEfw1とamyErv1のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(E)(D)(F)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にprsA遺伝子が連結し、更にその下流にEm耐性遺伝子が結合した2.4kbのDNA断片がamyE遺伝子の中央に挿入された総塩基長4.3kbのDNA断片(G)を得た。得られた4.3kbのDNA断片(G)を用いてコンピテントセル法により枯草菌168株を形質転換し、エリスロマイシン(1μg/mL)とリンコマイシン(25μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1−1に示すamyEfw2とprsA/Em2-R、及びprsA/PVG-FとamyErv2のプライマーセットを用いたPCRを行うことによって2.4kb及び3.3kbのDNA断片の増幅を確認し、枯草菌168株ゲノム上のamyE遺伝子部位にspoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にprsA遺伝子が連結したDNA断片が挿入されたことを確認した。この様にして得られた菌株をprsA-Ka株と命名した。
実施例1にて得られたprsA-Ka株の異種タンパク質生産性評価は、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるバチルス属細菌由来のアルカリアミラーゼの生産性を指標として以下の様に行った。
バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-K38株(FERM BP-6946)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1−1に示されるK38matu-F2(ALAA)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリアミラーゼ(特開2000-184882号公報、Eur.J.Biochem.,268,2974,2001)をコードする配列番号3で示される塩基配列の1.5kbのDNA断片(H)を増幅した。またバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1−1に示されるS237ppp-F2(BamHI)とS237ppp-R2(ALAA)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域、及び分泌シグナル配列をコードする領域を含む0.6kbのDNA断片(I)を増幅した。次いで、得られた(H)(I)の2断片を混合して鋳型とし、表1−1に示されるS237ppp-F2(BamHI)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、アルカリセルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域、及び分泌シグナル配列をコードする領域の下流にアルカリアミラーゼ遺伝子が連結した2.1kbのDNA断片(J)を得た。得られた2.2kbのDNA断片(J)をシャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入し、アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を構築した。
実施例1にて得られたprsA-Ka株及び対照として枯草菌168株にアルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を、プロトプラスト形質転換法によって導入した。これによって得られた菌株を10mLのLB培地で一夜37℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.05mLを50mLの2xL−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃で5日間、振盪培養を行った。培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清のアルカリアミラーゼ活性を測定し、培養によって菌体外に分泌生産されたアルカリアミラーゼの量を求めた。この結果、表2に示した様に、宿主としてprsA-Ka株を用いた場合、対照の168株(野生型)の場合と比較して高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められた。これはprsA-Ka株にてprsA遺伝子の発現が野生株より高まり、細胞膜上のPrsAタンパク質量が増加したことにより、タンパク質の分泌効率が向上した結果によるものと推測された。
図3に基づいて、ゲノム中sigF遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換方法を説明する。尚、sigF遺伝子は枯草菌の胞子形成期に特異的に機能するシグマ因子SigFをコードする遺伝子である。
枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表1−1に示したsigF-FW及びsigF/Cm-Rのプライマーセットを用いて、ゲノム中のsigF遺伝子の上流に隣接する1.0kb断片(A)をPCRにより増幅した。また、上記ゲノムDNAを鋳型とし、sigF/Cm-F及びsigF-RVのプライマーセットを用いて、ゲノム中のsigF遺伝子の下流に隣接する1.0kb断片(B)をPCRにより増幅した。
さらに、プラスミドpC194 DNAを鋳型とし、表1−1に示したcatf及びcatrのプライマーセットを用いて、0.85kbのクロラムフェニコール(Cm)耐性遺伝子領域(C)をPCRにより調製した。
次に、図3に示すように、得られた1.0kb断片(A)、1.0kb断片(B)及びCm耐性遺伝子領域(C)の3断片を混合して鋳型として、表1−1に示したsigF-FW2及びsigF-RV2のプライマーセットを用いたSOE-PCR法によって、3断片が1.0kb断片(A)、Cm耐性遺伝子領域(C)、1.0kb断片(B)の順に含まれる2.8kbのDNA断片(D)を得た。
さらに、コンピテントセル形質転換法によって、得られたDNA断片(D)を用いて、168株の形質転換を行った。形質転換後、クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。
得られた形質転換体のゲノムDNAを抽出し、PCRによってsigF遺伝子がCm耐性遺伝子に置換していることを確認した。以上のようにして、sigF遺伝子欠失株(ΔsigF株)を構築した。また上記形質転換における168株に替えて実施例1にて構築したprsA-Ka株を用いることにより、prsA-Ka株ゲノム中のsigF遺伝子をCm耐性遺伝子にて置換した菌株(prsAKΔsigF株)を構築した。
実施例3に示したsigF遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換と同様にして、168株ゲノム中のspo0J遺伝子、spoIIR遺伝子、scoC遺伝子、ylbO遺伝子、spoIIE遺伝子或いは、sigE遺伝子のクロラムフェニコール耐性遺伝子による置換を行い、spo0J遺伝子欠失株(Δspo0J株)、spoIIR遺伝子欠失株(ΔspoIIR株)、scoC遺伝子欠失株(ΔscoC株)、ylbO遺伝子欠失株(ΔylbO株)、spoIIE遺伝子欠失株(ΔspoIIE株)、及びsigE遺伝子欠失株(ΔsigE株)を構築した。各菌株の構築には表1−1〜表1−3に示すプライマーを使用し、それぞれのプライマーとΔsigF株の構築に用いたプライマーとの対応を表3及び表4に示した。尚、spo0J遺伝子、spoIIR遺伝子、scoC遺伝子、ylbO遺伝子、spoIIE遺伝子、及びsigE遺伝子はいずれも枯草菌の胞子形成に関与することが知られているタンパク質をコードする遺伝子である。各遺伝子の機能を表5に示した。
実施例3及び4にて構築した菌株のアルカリアミラーゼ分泌生産性評価を、実施例2と同様に行った。対照として枯草菌168株及び実施例1にて構築したprsA-Ka株についても評価を行った。図4に示した様に、ΔylbO株では168株より低い分泌生産を示したのに対し、prsAKΔylbO株ではprsA-Ka株より更に高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められた。またprsAKΔsigF株、prsAKΔspo0J株、prsAKΔspoIIR株、prsAKΔscoC株、prsAKΔspoIIE株、及びprsAKΔsigE株においてもprsA-Ka株より高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められ、それぞれの株のprsA-Ka株に対する生産量の増加(図4の斜線部分に相当)は、ΔsigF株、Δspo0J株、ΔspoIIR株、ΔscoC株、ΔspoIIE株、或いはΔsigE株各々で示された枯草菌168株に対する生産量増加(図4の黒塗りで示す部分に相当)より顕著であった。即ち、prsAKΔsigF株、prsAKΔspo0J株、prsAKΔspoIIR株、prsAKΔscoC株、prsAKΔylbO株、prsAKΔspoIIE株、及びprsAKΔsigE株では、prsA遺伝子発現強化と各々の遺伝子欠失との組合せがアルカリアミラーゼ分泌生産量向上に対し、相乗的に作用したものと考えられた。
枯草菌168株ゲノム上で連続して存在するflgB遺伝子〜cheD遺伝子の29遺伝子(flgB遺伝子、flgC遺伝子、fliE遺伝子、fliF遺伝子、fliG遺伝子、fliH遺伝子、fliI遺伝子、fliJ遺伝子、ylxF遺伝子、fliK遺伝子、ylxG遺伝子、flgE遺伝子、fliL遺伝子、fliM遺伝子、fliY遺伝子、cheY遺伝子、fliZ遺伝子、fliP遺伝子、fliQ遺伝子、fliR遺伝子、flhB遺伝子、flhA遺伝子、flhF遺伝子、ylxH遺伝子、cheB遺伝子、cheA遺伝子、cheW遺伝子、cheC遺伝子、cheD遺伝子)を、実施例3に示したsigF遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換と同様にして、クロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換してΔflaA(29)株を構築した。使用したプライマーを表1−1〜表1−3に示し、それぞれのプライマーとΔsigF株の構築に用いたプライマーとの対応を表6に示した。また実施例1にて構築したprsA-Ka株のゲノム上の上記29遺伝子を同様にクロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換することにより、prsAKΔflaA(29)株を構築した。尚、flgB遺伝子〜cheD遺伝子の29遺伝子はいずれも枯草菌の運動性・走化性に関与することが知られているタンパク質をコードする遺伝子である。各遺伝子の機能を表7に示した。
実施例6にて構築した菌株のアルカリアミラーゼ分泌生産性評価を、実施例2と同様に行った。対照として枯草菌168株及び実施例1にて構築したprsA-Ka株についても評価を行った。表8に示した様に、ΔflaA株(29)では168株より低い分泌生産を示したのに対し、prsAKΔflaA(29)株ではprsA-Ka株より更に高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められた。即ち、prsAKΔflaA(29)株では、prsA遺伝子発現強化とflgB遺伝子〜cheD遺伝子領域欠失との組合せがアルカリアミラーゼ分泌生産量向上に対し、相乗的に作用したものと考えられた。
実施例3に示したsigF遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換と同様にして、168株ゲノム中のfliG遺伝子、flhA遺伝子、flgM遺伝子、motA遺伝子、或いはsigD遺伝子のクロラムフェニコール耐性遺伝子による置換を行い、fliG遺伝子欠失株(ΔfliG株)、flhA遺伝子欠失株(ΔflhA株)、flgM遺伝子欠失株(ΔflgM株)、motA遺伝子欠失株(ΔmotA株)、及びsigD遺伝子欠失株(ΔsigD株)を構築した。各菌株の構築には表1−1〜表1−3に示すプライマーを使用し、それぞれのプライマーとΔsigF株の構築に用いたプライマーとの対応を表9及び表10に示した。尚、fliG遺伝子、flhA遺伝子、flgM遺伝子、motA遺伝子、及びsigD遺伝子はいずれも枯草菌の運動性・走化性に関与することが知られているタンパク質をコードする遺伝子である。各遺伝子の機能を表7に示した。
実施例8にて構築した菌株のアルカリアミラーゼ分泌生産性評価を、実施例2と同様に行った。対照として枯草菌168株及び実施例1にて構築したprsA-Ka株についても評価を行った。図5に示した様に、ΔflhA株とΔsigD株では168株と同等、若しくはより低い分泌生産を示したのに対し、prsAKΔflhA株とprsAKΔsigD株ではprsA-Ka株より更に高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められた。またprsAKΔfliG株、prsAKΔflgM株、及びprsAKΔmotA株においてもprsA-Ka株より高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められ、それぞれの株のprsA-Ka株に対する生産量の増加(図5の斜線部分に相当)は、ΔfliG株、ΔflgM株、或いはΔmotA株各々で示された枯草菌168株に対する生産量増加(図5の黒塗りで示す部分に相当)より顕著であった。即ち、prsAKΔfliG株、prsAKΔflhA株、prsAKΔflgM株、prsAKΔmotA株、及びprsAKΔsigD株では、prsA遺伝子発現強化と各々の遺伝子欠失との組合せがアルカリアミラーゼ分泌生産量向上に対し、相乗的に作用したものと考えられた。またfliG遺伝子とflhA遺伝子は実施例6及び7記載のflgB遺伝子〜cheD遺伝子領域内に存在する遺伝子であり、prsAKΔfliG株やprsAKΔflhA株にて認められた相乗的な効果は、prsA-Ka株よりflgB遺伝子〜cheD遺伝子領域内の他の遺伝子を単独で欠失させた場合にも同様に得られる効果であると推測された。
枯草菌168株ゲノム上のcomA遺伝子を、実施例3に示したsigF遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換と同様にして、クロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換してΔcomA株を構築した。使用したプライマーを表1−1〜表1−3に示し、それぞれのプライマーとΔsigF株の構築に用いたプライマーとの対応を表11に示した。また実施例1にて構築したprsA-Ka株のゲノム上のcomA遺伝子を同様にクロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換することにより、prsAKΔcomA株を構築した。尚、comA遺伝子は枯草菌のDNA受容能(コンピテンス)に関与することが知られているタンパク質をコードする遺伝子である。comA遺伝子の遺伝子番号及び機能を表12に示した。
比較例1にて構築した菌株のアルカリアミラーゼ分泌生産性評価を、実施例2と同様に行った。対照として枯草菌168株及び実施例1にて構築したprsA-Ka株についても評価を行った。表13に示した様に、prsA-Ka株に対してcomA遺伝子欠失を行うことによるアルカリアミラーゼの分泌生産向上は認められなかった。即ち、prsA遺伝子発現強化とcomA遺伝子欠失(コンピテンス欠損)との組合せによる相乗効果は認められず、むしろコンピテンス欠損はprsA遺伝子発現強化の効果を損なうことが示された。
バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来のprsA遺伝子(配列番号113)は、枯草菌prsA遺伝子に相当する遺伝子である。実施例1の方法と同様の方法にて、バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子の発現を強化した変異株の構築を行った。すなわち、バチルス セレウス(Bacillus cereus)から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表14に示したBce/PVG-FとBce/catf-Rのプライマーセットを用いてバチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子を含む0.9kb断片(A)をPCRにより増幅した。また上記比較例にて構築したprsA-Kc株より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表1に示したamyEfw2とPVG-R、及びcatfとamyErv2のプライマーセットを用いて、amyE遺伝子の5’側領域の下流にspoVG遺伝子転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む領域が連結した1.2kb断片(B)、及びクロラムフェニコール耐性遺伝子の下流にamyE遺伝子の3’側領域が連結した1.9kb断片(C)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表1に示したamyEfw1とamyErv1のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(B)(A)(C)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にバチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子が連結し、更にその下流にクロラムフェニコール耐性遺伝子が結合した遺伝子断片がamyE遺伝子の中央に挿入された総塩基長3.8kbのDNA断片(D)を得た。得られた3.8kbDNA断片(D)を用いて枯草菌168株を形質転換し、prsAbc-K株を構築した。
次いで、実施例4及び実施例6と同様の方法にて、prsAbc-K株のゲノム上よりspoIIE遺伝子、sigE遺伝子、flgB遺伝子〜cheD遺伝子の29遺伝子、及びfliG遺伝子をクロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換したprsAbcKΔspoIIE株、prsAbcKΔsigE株、prsAbcKΔflaA(29)株、及びprsAbcKΔfliG株を構築した。
構築した上記prsAbc-K株、prsAbcKΔspoIIE株、prsAbcKΔsigE株、prsAbcKΔflaA(29)株、及びprsAbcKΔfliG株について、実施例2と同様の方法によりアルカリアミラーゼ分泌生産評価を行った。対照として枯草菌168株、ΔspoIIE株、ΔsigE株、ΔflaA(29)株、及びΔfliG株についても評価を行った。その結果、図6に示すようにprsAbc-K株にて168株を大きく上回る分泌生産が認められたが、prsAbc-K株より各遺伝子を欠失した菌株においてはより顕著な生産性向上が認められ、実施例5、実施例7、及び実施例9で見られたのと同様、バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来のprsA遺伝子発現強化と各遺伝子欠失との組み合わせがアルカリアミラーゼ分泌生産量向上に対し、相乗的に作用したものと考えられた。すなわち、枯草菌prsA遺伝子に相当する遺伝子を用いれば、枯草菌prsA遺伝子を用いた場合と同様の有効性が得られることが確認された。
Claims (12)
- 微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を、枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子のゲノム上における上流に導入してなるか、或いは微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に連結した遺伝子断片を微生物に導入してなり、かつ、胞子関連遺伝子若しくは鞭毛関連遺伝子又はこれらに相当する遺伝子の1以上をゲノムから削除又は不活化した微生物に目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入してなる組換え微生物。
- 微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に連結した遺伝子断片を、微生物のゲノム上に導入してなるものである請求項1記載の組換え微生物。
- 枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に導入する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位が、枯草菌spoVG遺伝子又はspoVG遺伝子に相当する遺伝子の上流に位置する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位である請求項1又は2記載の組換え微生物。
- 胞子関連遺伝子がsigF遺伝子、spo0J遺伝子、spoIIR遺伝子、scoC遺伝子、ylbO遺伝子、spoIIE遺伝子及びsigE遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子であり、鞭毛関連遺伝子が、flgB遺伝子、flgC遺伝子、fliE遺伝子、fliF遺伝子、fliG遺伝子、fliH遺伝子、fliI遺伝子、fliJ遺伝子、ylxF遺伝子、fliK遺伝子、ylxG遺伝子、flgE遺伝子、fliL遺伝子、fliM遺伝子、fliY遺伝子、cheY遺伝子、fliZ遺伝子、fliP遺伝子、fliQ遺伝子、fliR遺伝子、flhB遺伝子、flhA遺伝子、flhF遺伝子、ylxH遺伝子、cheB遺伝子、cheA遺伝子、cheW遺伝子、cheC遺伝子、cheD遺伝子、flgM遺伝子、motA遺伝子及びsigD遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子である請求項1〜3のいずれか1項記載の組換え微生物。
- 微生物がバチルス属細菌である請求項1〜4のいずれか1項記載の組換え微生物。
- 微生物が枯草菌である請求項5記載の組換え微生物。
- 目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の上流に転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域から選ばれる1以上の領域を結合した請求項1〜6のいずれか1項記載の組換え微生物。
- 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域を結合したものである請求項7記載の組換え微生物。
- 分泌シグナル領域がバチルス属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1kb領域由来のものである請求項7又は8記載の組換え微生物。
- 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が、配列番号5で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜659の塩基配列、配列番号7で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜696の塩基配列又は当該塩基配列のいずれかと70%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片、又は当該塩基配列の一部を欠失、置換、若しくは付加した塩基配列からなるDNA断片である請求項8記載の組換え微生物。
- 目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子が以下の(1)から(3)のいずれかに記載の塩基配列からなる遺伝子である請求項1〜10いずれか1項記載の組換え微生物。
(1)配列番号4で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(2)配列番号4で示されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有し、且つアミラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(3)配列番号4で示されるアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換あるいは付加され、且つアミラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。 - 請求項1〜11のいずれか1項記載の組換え微生物を用いるタンパク質又はポリペプチドの製造方法。
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