JP2007049364A - 音響再生装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 音響ビームの出力方向が前方から傾く場合においてもサイドローブを増加させることなくメインローブの強度が強い音響ビームを出力することができる音響再生装置を提供する。
【解決手段】 スピーカアレイ3は、各々前段の遅延器2を介して供給されるオーディオ信号を音として出力する複数の可動型音響出力部30と、これらの可動型音響出力部30を上下方向に並べた状態で回動自在に支持するフレームとにより構成されている。各可動型音響出力部30は、支持体と、この支持体に固定された複数のスピーカとを有している。制御部4は、複数の可動型音響出力部30の角度の制御および複数の遅延器2の遅延時間の制御を含む各種の制御を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、音響の指向性の制御が可能な音響再生装置に関する。
スピーカユニットを多数配列したスピーカシステムは“スピーカアレイ”と呼ばれる。スピーカアレイでは、個々のスピーカユニットに供給するオーディオ信号に与える遅延やゲインを制御することにより、スピーカの指向性を鋭くしたり、音響ビームの方向を制御することができる。指向性を強くすると、同じエネルギーをより狭い範囲に放射するため、音圧の距離減衰が小さくなり、遠くまで明瞭に音を聴かせることができ、また、不必要な方向への音響放射を抑えることができる。また、音響ビームの方向を制御することができると、スピーカを必ずしも音の聴取位置に向かせる必要がないため、スピーカの設置方法の制約が少なくなるという利点がある。なお、この種のスピーカアレイについては例えば特許文献1、2に開示されている。
特開平5−41897号公報 特開平5−103391号公報
ところで、一般的にスピーカアレイを構成する個々のスピーカは、前方方向の出力強度に比べて横方向の出力強度が低い。このため、音響ビームの出力方向のスピーカアレイの前方方向に対する傾きが大きくなると、音響ビームの主たる方向の成分であるメインローブの強度が弱くなるという問題があった。また、音響ビームの出力方向のスピーカアレイの前方方向に対する傾きが大きくなると、メインローブに対して傾いた方角に放射されるサイドローブが強度を増し、適切な音場を得るのが困難になるという問題があった。サイドローブを抑えるための方法として、スピーカアレイにおける周辺領域のスピーカに供給するオーディオ信号をレベルを抑える方法がある。しかし、この方法は、サイドローブを抑えることができるものの、メインローブの指向性を弱めてしまうという問題がある。
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、音響ビームの出力方向を変化させる場合においてもサイドローブを増加させることなくメインローブの強度の強い音響ビームを出力することができる音響再生装置を提供することを目的とする。
この発明は、共通のオーディオ信号を音として出力する向き調整が可能な複数の可動型音響出力部と、前記複数の可動型音響出力部の全てが同じ方向を向くように前記複数の可動型音響出力部の向きを制御することにより音の出力方向の制御を行う制御手段とを具備することを特徴とする音響再生装置を提供する。
かかる発明によれば、複数の可動型音響出力部を同一方向を向かせつつ、複数の可動型音響出力部の向きの制御により、音の出力方向の制御を行うので、個々の可動型音響出力部が出力するメインローブおよびサイドローブの強度を変化させることなく、音の出力方向を変化させることができる。従って、可動型音響出力部の指向性を予め最適化しておくことにより、出力方向如何に拘わらず、十分な強度のメインローブを有し、かつ、サイドローブの低く抑えられた音を出力することができる。
また、好ましい態様において、音響再生装置は、音源と前記複数の可動型音響出力部の各々との間に介挿された複数の遅延器を有し、前記制御手段は、前記複数の可動型音響出力部の向きに連動させて前記複数の遅延器の遅延時間の制御を行う。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態である音響再生装置の電気的構成を示すブロック図である。図1において、音源1は、CD再生装置、チューナなど、オーディオ信号を再生する装置であり、その種類を問わない。音源1の後段には、複数の遅延器2が接続されている。これらの遅延器2は、遅延時間の設定およびレベルの調整が可能であり、音源1から出力されるオーディオ信号を設定された遅延時間だけ遅延し、設定されたレベルに調整して出力する。スピーカアレイ3は、各々前段の遅延器2を介して供給されるオーディオ信号を音として出力する複数の可動型音響出力部30と、これらの可動型音響出力部30を上下方向に並べた状態で回動自在に支持するフレーム(図1では図示略)とにより構成されている。制御部4は、上位の装置または図示しない操作手段から与えられる指向性制御情報に従い、複数の可動型音響出力部30を連動させて各々の角度の制御を行うとともに、複数の遅延器2の遅延時間の制御を行う装置である。ここで、指向性制御情報は、スピーカアレイ3における音響ビームの出力方向を指定する情報である。
図2は、スピーカアレイ3の正面図、図3は図2における1個の可動型音響出力部30のIa−Ia’線断面図である。各可動型音響出力部30は、概ねストライプ形状をなし、かつ、幅方向両端から中央にかけて放物線を描いて凹んだ形状の支持体(以下、ブレードという)31と、このブレード31の凹んだ内面にマトリックス状に配列された複数のスピーカ32とを有している。複数のスピーカ32の前段には、遅延器35を設けることができる。これらの遅延器35は、複数のスピーカ32から放射される音が波面を揃えて可動型音響出力部30の正面方向に伝播し、正面方向に強い指向性を有する平行音響ビームが形成されるように、各スピーカ32に供給するオーディオ信号の遅延調整を行う役割を担っている。なお、各スピーカ32から放射される音が波面を揃えて正面方向に伝播するように、ブレード31の凹形状自体を適切な形状にすることで、遅延器35を省略することもできる。ブレード31の長手方向両端部からは回転軸33Lおよび33Rが突出している。フレーム39は、各可動型音響出力部30のブレード31の回転軸33Lおよび33Rを左右両側において回動自在に支持する。フレーム39の内部には、各ブレードの回転軸33Lまたは33Rの少なくとも一方を回転駆動するステップモータ等の回転駆動手段が設けられている(図示略)。上述した制御部4は、上述した指向性制御情報に従って、この回転駆動手段を動作させ、各可動型音響出力部30の全ての正面方向が指向性制御情報により指示された同一方向を向くように、各可動型音響出力部30の角度の制御を行うものである。なお、各ブレード31を回転駆動手段により駆動する代わりに、回転駆動手段は直接的には1つのブレード31のみを駆動するようにし、他のブレード31がこの回転駆動手段によって駆動される1つのブレード31に連動して回転するように、各ブレード31の支持機構を構成してもよい。
図4は本実施形態の動作を示す図である。周知のスピーカアレイでは、スピーカアレイを構成する個々のスピーカに与えるオーディオ信号の遅延時間および振幅を制御することによりスピーカアレイから出力する音響ビームの出力方向の制御が行われる。これに対して、本実施形態では、音響ビームの出力方向の制御は、各スピーカ32に与えるオーディオ信号の遅延時間や振幅(レベル)の調整ではなく、複数の可動型音響出力部30の角度および遅延器2の制御により行われる。すなわち、本実施形態において、各可動型音響出力部30は、音響ビームの出力方向の如何に拘わらず、常にその前方方向に平行音響ビームを出力するものであり、音響ビームの出力方向の制御は、各可動型音響出力部30の回転軸33Lおよび33R廻りの回転角度の制御により行われる。図4(a)および(b)には、この回転角度の制御による音響ビームの出力方向の制御の様子が示されている。ここで、図4(a)は各可動型音響出力部30の回転角度θが0度の状態を示している。この状態では、各可動型音響出力部30が形成する平行音響ビームはスピーカアレイ3の前方に向かって進む。図4(b)では、全ての可動型音響出力部30が同一方向にθ(>0度)だけ回転されている。この場合、各可動型音響出力部30から出力される平行音響ビームは、水平面に対して角度θをなす方向に伝播する。
各可動型音響出力部30が水平面から角度θだけ傾いた方向に平行音響ビームの出力を行う場合、各可動型音響出力部30から出力される平行音響ビーム間には行路差が生じる。例えば、上下方向に並んだ2個の可動型音響出力部30のピッチをLとすると、最も下にある可動型音響出力部30から出力される音響ビームとその上にある可動型音響出力部30から出力される音響ビームとの間にはΔd=L・sinθなる行路差がある。従って、これら2個の可動型音響出力部30から出力された2本の平行音響ビームが波面を揃えて伝播し、その延長線上の聴取位置に同位相で到達するためには、下から2段目の可動型音響出力部30は、最下段の可動型音響出力部30よりもΔt=L・sinθ/v(ただし、vは音速である。)だけ先行して音響ビームの出力を行わなければならない。他の隣接した2つの可動型音響出力部30間の関係も同様である。
そこで、本実施形態における制御部4は、例えば図4(b)に示す構成においては、平行音響ビームの行路長が最も長くなる可動型音響出力部30(図4(b)の例では最も上に図示された)の前段の遅延器2の遅延時間を最小値tdminとし、その隣の可動型音響出力部30の前段の遅延器2の遅延時間はtdmin+Δtとし、さらにその隣の可動型音響出力部30の前段の遅延器2の遅延時間はtdmin+2Δtとし、という具合に隣接する2つの可動型音響出力部30の前段の各遅延器2間にΔtずつ遅延時間の差をもたせる。このような遅延時間の制御により、各可動型音響出力部30から出力される平行音響ビームは波面を揃えて伝播し、聴取位置に同位相で到着する。以上、図4(b)に示すように、各可動型音響出力部30を下方に角度θだけ傾ける場合を例に説明したが、各可動型音響出力部30を上方に角度θだけ傾ける場合の動作も同様である。
本実施形態によれば、以上のように、各可動型音響出力部30には、常に各々の前方方向に音響ビームの出力を行わせ、制御部4は、これらの可動型音響出力部30の角度θの制御により、音響ビームの出力方向の制御を行う。従って、出力方向の如何に拘わらず、常に一定の強度のメインローブを持った音響ビームを出力することができ、また、サイドローブの強度を低く抑えることができる。また、本実施形態において可動型音響出力部30では、複数のスピーカ32が凹面状に配列されており、これらのスピーカ32の指向性軸(すなわち、各スピーカ32のメインローブの出力方向を向いた軸)は、可動型音響出力部30の正面の位置において交差する。このため、可動音響出力部30の正面方向の指向性を強くすること、すなわち、可動音響出力部30のメインローブを強くし、かつ、サイドローブを弱くすることができる。また、本実施形態では、このような正面方向の指向性が強い可動型音響出力部30を複数使用し、これらの全ての正面方向が指向性制御情報により指定された同一方向を向くように各可動型音響出力部30の向きの制御を行う。従って、本実施形態によれば、如何なる向きの音を出力する場合においても、常にその出力方向を向いたメインローブの強度を最大とし、サイドローブを弱くすることができる。
<第2実施形態>
次にこの発明の第2実施形態である音響再生装置について説明する。本実施形態における音響再生装置は、上記第1実施形態におけるスピーカアレイ3を図5に示すスピーカアレイ5に置き換えたものである。図5に示すように、スピーカアレイ5は、フレーム6に対し、複数の可動型音響出力部50をマトリックス状に配列してなるものである。図6は、1個の可動型音響出力部50をスピーカアレイ5の前方から見た正面図、図7は図6のIb−Ib’線断面図である。これらの図に示すように、各可動型音響出力部50は、フレーム6に設けられた円形の孔に収容されている。各可動型音響出力部50は、放物面状の内面を有する椀状部材である支持体51を有しており、この支持体51の内面には複数のスピーカ52が同心円状に配列されて固定されている。この複数のスピーカ52の前段には、上記第1実施形態と同様な遅延調整のための遅延器58が設けられている。支持体51は、その左右の回転軸54aおよび54bを介してリング53に支持されており、このリング53は、その上下の回転軸55aおよび55bを介してフレーム6に支持されている。リング53には、回転軸54aおよび54b廻りに支持体51を回転駆動する第1の回転駆動手段が内蔵されており、フレーム6には、回転軸55aおよび55b廻りにリング53を回転駆動する第2の回転駆動手段が内蔵されている。
上記第1実施形態と同様、本実施形態における可動型音響出力部50も、共通のオーディオ信号が各スピーカ52に与えられた場合に前方方向に平行音響ビームを出力するように支持体51の内面形状が定められている。制御部4(図1参照)は、上述したリング53内の第1の回転駆動手段およびフレーム6内の第2の回転駆動手段により、各可動型音響出力部50の正面方向が指向性制御情報により指定された同一方向を向くように、各可動型音響出力部50の水平方向の角度および垂直方向の角度を制御し、スピーカアレイ5における音響ビームの出力方向の制御を行う。その際、上記第1実施形態と同様な方法により、各可動型音響出力部50の前段の遅延器2(図1参照)の遅延時間の制御を行う。
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様な効果が得られる。また、上記第1実施形態では、音響ビームの垂直方向の角度の制御しかすることができなかったが、本実施形態は、音響ビームの垂直方向の角度と水平方向の角度の両方を制御することができる利点がある。
<他の実施形態>
本発明には以上挙げた実施形態の他、例えば次のような実施形態も考えられる。
(1)上記第1実施形態では、一例として音響ビームの垂直方向の角度を制御するようにしたが、全く同じ構成で、音響ビームの水平方向の角度を制御するようにしてもよい。
(2)上記各実施形態では、各可動型音響出力部に複数のスピーカを設けたが、指向性の鋭い1個のスピーカを設けてもよい。例えば、平板を前後方向に振動させることにより音を出力する平面スピーカなどを各可動型音響出力部に設けてもよい。この種の平面スピーカは、スピーカ前方方向の出力強度が大きい指向性を有しているため、これを可動型音響出力部に設けることにより上記各実施形態と同様な効果が得られる。さらに、ホーン型スピーカなどを各可動型音響出力部に設けてもよい。この種のホーン型スピーカはホーンにより前方方向に強い指向性を有しているため、これを可動型音響出力部に設けることにより上記各実施形態を同様な効果が得られる。
この発明の第1実施形態である音響再生装置の構成を示すブロック図である。 同実施形態におけるスピーカアレイの構成を示す正面図である。 図2のIa−Ia’線断面図である。 同実施形態の動作を示す図である。 この発明の第2実施形態である音響再生装置におけるスピーカアレイの構成を示す正面図である。 同実施形態における可動型音響出力部の構成を示す正面図である。 図6のIb−Ib’線断面図である。
符号の説明
1…音源、2…遅延器、3,5…スピーカアレイ、4…制御部、30,50…可動型音響出力部、31,51…支持体、32,52…スピーカ。

Claims (5)

  1. 共通のオーディオ信号を音として出力する向き調整が可能な複数の可動型音響出力部と、
    前記複数の可動型音響出力部の全てが同じ方向を向くように前記複数の可動型音響出力部の向きを制御することにより音の出力方向の制御を行う制御手段と
    を具備することを特徴とする音響再生装置。
  2. 前記複数の可動型音響出力部の各々は、
    向き調整が可能な支持体と、
    凹面状に配列されて前記支持体に固定され、前記オーディオ信号を音として出力する複数のスピーカとを各々有することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
  3. 前記複数の可動型音響出力部の各支持体は、幅方向両端から中央にかけて凹んだ凹面部を有するストライプ状部材であり、
    前記複数のスピーカは、前記凹面部にマトリックス状に配列され、
    前記音響再生装置は、
    前記複数の可動型音響出力部の各支持体を各々の長手方向両端において回動自在に支持するフレームと、
    前記制御手段による制御の下、前記各支持体を回転駆動する回転駆動手段と
    をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載の音響再生装置。
  4. 前記複数の可動型出力部の各支持体は、凹面状の内面を有する椀状部材であり、
    前記複数のスピーカは、前記椀状部材の内面に同心円状に配列されており、
    前記音響再生装置は、
    前記可動型音響出力部の各支持体を各々の内側に収容し、第1の回転軸廻りに回動自在に各々支持する複数のリングと、
    複数の孔を有し、前記複数のリングを前記複数の孔の各々の内側に収容し、前記第1の回転軸と交差する方向の第2の回転軸廻りに回動自在に各々支持するフレームと、
    前記制御手段による制御の下、前記可動型音響出力部の各支持体を前記第1の回転軸廻りに回転駆動する第1の回転駆動手段と、
    前記制御手段による制御の下、前記複数のリングを前記第2の回転軸廻りに回転駆動する第2の回転駆動手段と
    をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載の音響再生装置。
  5. 音源と前記複数の可動型音響出力部の各々との間に介挿された複数の遅延器を有し、
    前記制御手段は、前記複数の可動型音響出力部の向きに連動させて前記複数の遅延器の遅延時間の制御を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の音響再生装置。
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