JP2007048809A - 放熱シート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 放熱性に優れ、かつ機械的強度及び生産性に優れた放熱シート、並びに該放熱シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】 全輻射率0.5以上の熱輻射性を有する粒子を、ガラス転移温度が−50〜50℃であるバインダー樹脂で結着させてなる放熱シートであって、粒子/バインダー樹脂の質量比が5/95〜65/35であり、シート厚みが10〜150μmであることを特徴とする放熱シート、及び上記熱輻射性を有する粒子、上記バインダー樹脂及び溶剤からなるインキ組成物を印刷機によりコーティングし、溶剤を乾燥させて固化することによってシート化する放熱シートの製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、パソコン、携帯電話などの電子機器における、大規模集積回路(LSI)などの電子部品、プラズマディスプレーパネル(PDP)、有機EL又は無機EL、発光ダイオード(LED)、蛍光表示管(VFD)、陰極線管(CRT)などを用いた表示装置、あるいは白熱電球、蛍光灯、EL(有機または無機)、LEDなどを用いた照明器具等から発生する熱を効率よく外方に放熱するために使用される放熱シート及びその製造方法に関する。
近年、電子機器は高性能化、多機能化がめざましく、使用されるマイクロプロセッサー(MPU)、画像処理チップ、メモリーなどLSIの高性能化が進む一方で、それに伴いMPUから発生される熱によって、LSIの発熱量も増える一方であったため、熱対策が問題となっていた。
従来は、LSIの機器内適正配置によって熱対策が済む場合は適性配置によって、そうでないときはヒートシンクや小型ファンモーター等の放熱器の利用が一般的であった。しかしながら、ノート型パソコン、携帯電話機など、薄型軽量化(小型化)が特に追求されるような電子機器では、このような放熱器を用いることができない場合がある。そこで、熱放射により放熱する放熱シートが種々提案されている。
例えば、熱伝導性フィラーを含有する粘着剤層と、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる層上にアルミナ皮膜からなる熱放射層を設けた除熱用放熱シートが提案され(特許文献1、特許請求の範囲参照)、また、熱伝導性を有するアルミニウム、銅、ステンレス鋼等からなる吸熱層の表面に、二酸化珪素、酸化アルミニウム等の熱放射性膜を形成し、吸熱層の裏面に熱伝導性接着剤を形成した放熱シートが提案されている(特許文献2、特許請求の範囲参照)。
しかしながら、これらの放熱シートは、放熱層、金属層、粘着層の3層構成であり、放熱層(又は熱輻射層)を形成するのに多大な時間と労力を必要とするため、もっと簡便に製造することができ、同程度以上の放熱性を有するシートが望まれていた。
特開2005−101025号公報 特開2004−200199号公報
本発明は、かかる状況下、放熱性に優れ、かつ機械的強度及び生産性に優れた放熱シート、並びに該放熱シートの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的達成のための検討を行った結果、一定範囲のガラス転移温度(Tg)をもつ熱可塑性樹脂中に、熱輻射性の高い粒子を一定量分散させ、かつ放熱シートのシート厚さを制御することによって、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
(1)全輻射率0.5以上の熱輻射性を有する粒子を、ガラス転移温度が−50〜50℃であるバインダー樹脂で結着させてなる放熱シートであって、粒子/バインダー樹脂の質量比が5/95〜65/35であり、シート厚みが10〜150μmであることを特徴とする放熱シート、
(2)前記熱輻射性を有する粒子が、平均粒径1〜80μmのアルミナ粒子である上記(1)記載の放熱シート、
(3)前記熱輻射性を有する粒子が、平均粒径1〜80μmの酸化マグネシウム粒子である上記(1)記載の放熱シート、
(4)前記バインダー樹脂が、ポリエステル系樹脂、及び酢酸ビニル単位の比率が40〜80モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂から選ばれる1種以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の放熱シート、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の放熱シートが保護フィルム上に貼着された保護フィルムつき放熱シート、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の放熱シートの上面及び/又は下面に粘着層を設けた粘着層つき放熱シート、及び
(7)全輻射率0.5以上の熱輻射性を有する粒子、ガラス転移温度が−50〜50℃であるバインダー樹脂及び溶剤からなるインキ組成物を印刷機によりコーティングし、溶剤を乾燥させて固化することによってシート化する放熱シートの製造方法であって、溶剤中に、相対蒸発速度190以上、沸点60〜130℃、かつ溶解度パラメータが8〜12である成分を80質量%以上含有することを特徴とする放熱シートの製造方法、
を提供するものである。
本発明の放熱シートは、熱輻射性に優れる。さらには、機械的強度、柔軟性等においても優れた放熱シートである。また、かかる放熱シートは、特定のガラス転移温度を有するバインダー樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液中に、熱輻射性を有する粒子を分散させ、これをコーティングし、乾燥することで高い生産性で製造することができる。
本発明で使用される熱輻射性を有する粒子とは、全輻射率0.5以上の熱輻射性を有する粒子をいい、さらには全輻射率0.7以上のものが好ましい。具体的には、粒径1〜80μm程度の粒子状のアルミナ(全輻射率0.923、熱伝導率36)、酸化マグネシウム(全輻射率0.933、熱伝導率60)、二酸化マンガン、三酸化クロム、酸化鉄、シリカ乃至は水晶(全輻射率0.66〜0.96、熱伝導率6〜10)、粘土、石綿(全輻射率0.96)、煉瓦(全輻射率0.59〜0.93、熱伝導率0.21)、黒鉛(全輻射率0.92〜0.96、熱伝導率98〜129)、フェライト(Mn−Fe系、Ni−Zn系等)、チタン酸アルミニウム、コージライトなどが挙げられる。主なものについては()内に代表的な全輻射率及び熱伝導率を添記した。但し、輻射率の値は、粒径、比表面積、粒子形状等により変化し、更に組成配合が各種有るものは組成配合によっても変化する。それ故添記の値はあくまでも代表値である。
尚、ここで全輻射率とは、(全輻射率)=(各物体の輻射束を全波長域で積分した値)/(完全黒体の輻射束を全波長域で積分した値)である。
放熱シートに熱輻射性に加えて、更に熱伝導性をも付与して、総合的な放熱特性を高める場合には、全輻射率に加えて、同時に熱伝導率も高い材料を選択する。このような全輻射率及び熱伝導率ともに高い材料としては、アルミナ、酸化マグネシウムが挙げられ、また、樹脂溶液中への分散性の点でもアルミナ及び酸化マグネシウムが好ましい。
本発明で好適に使用されるアルミナとしては、放熱用の一般グレードを使用することができ、特に制限されないが、シート物性への影響、機械摩耗の点から球状粒子(以下、球状アルミナということがある。)が好ましい。また、球状粒子であるとシートの平面方向に対して、高密充填されやすく、効率的に熱を放射することができる。
また、本発明の好ましい製造方法である樹脂溶液中でアルミナ粒子の均一な分散状態を得るため、及び十分な薄膜形成性を得るために、その平均粒径は、1〜80μm、さらに好ましくは1〜30μm程度のものを使用するのがよい。即ち、平均粒径1μm以上とすることで樹脂溶液中への均一分散が容易になる上、インキ組成物の粘性増加を防止してコーティング適性が向上し、均一な製膜が容易となる。一方、平均粒径80μm以下とすることで150μm以下の薄膜化が容易になり、又アルミナ粒子同士の接触面積が高くなり、高熱輻射性に加えて高熱伝導率を得ることが容易となる。更に放熱シートの機械的強度の低下も防止し得る。
本発明に使用し得る市販品としては、日本軽金属(株)製「ローソーダアルミナLS−130」、(株)マイクロン製「AX3−32」などのアルミナを挙げることができる。
次に、本発明で好適に使用される酸化マグネシウムとしては、放熱用途の一般的なものであれば特に制限されない。本発明の好ましい製造方法であるインキ組成物中で酸化マグネシウム粒子の均一な分散状態を得るため、及び十分な薄膜形成性を得るために、その平均粒径は、1〜80μm、さらに好ましくは1〜30μm程度のものを使用するのがよい。上述のアルミナ粒子と同様に、平均粒径1μm以上とすることで樹脂溶液中への均一分散が容易になる上、インキ組成物の粘性増加を防止してコーティング適性が向上し、均一な製膜が容易となる。また、平均粒径80μm以下とすることで150μm以下の薄膜化が容易になり、又酸化マグネシウム粒子同士の接触面積が高くなり、高熱輻射性に加えて高熱伝導率を得ることが容易となる。更に放熱シートの機械的強度の低下も防止し得る。
なお、酸化マグネシウム粒子は、例えば、協和化学工業(株)製「パイロキスマ5301」などが好ましく使用できるが、「パイロキスマ5301K」など耐水処理を施した耐水クレードのものであることが特に好ましい。
本発明で使用されるバインダー樹脂は、ガラス転移温度(以下、Tgという。)が−50〜50℃であることを要し、特に、Tgが−30〜10℃であることが好ましい。Tgがこの範囲であることで、熱輻射性を有する粒子の含有量が高くても、すなわちバインダー樹脂量が低くても、放熱シートの薄膜での造膜性、柔軟性、および実用的な機械強度等が確保できる。
本発明で使用されるバインダー樹脂としては、上記のTg範囲を充足するものであれば特に限定されない。特に、電気絶縁性にすぐれた放熱シートとする場合には、樹脂となったときの物性として、体積固有抵抗値が1×1012Ω以上であることが好ましく、1×1014Ω以上であることがさらに好ましい。
そのようなバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、各種合成ゴムなどであってもよいが、溶剤への易溶解性、溶剤に溶解したインキ組成物のコーティング適性(粘度等)の他、シートの機械的強度、耐候性、耐熱性などの点から、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が特に好適である。
ポリエステル系樹脂としては、上記のTg範囲を充足するほか、シートの柔軟性、及び、本発明の放熱シートを製造するための溶剤への易溶解性の観点から、非晶質のポリエステル系樹脂が好ましく、また、耐侯性の点から飽和ポリエステルが好ましい。
かかる飽和ポリエステルとしては、コハク酸、アジピン酸などの飽和二塩基酸とエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールなどの飽和二価アルコールのポリエステルなどが挙げられる。該飽和ポリエステルの数平均分子量は、5000〜50000の範囲であることが好ましい。
なお、ダイオキシン発生防止、低分子シロキサンによる接点不良防止の観点から、ハロゲンフリー、シロキサンフリーであるポリエステル系樹脂であることが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、上記のTg範囲を充足するものを用いることが好ましい。ただし、放熱シートの柔軟性および耐熱性の観点から、酢酸ビニル単位の比率が40〜80モル%であるEVM(ISO1692(1995))とよばれるエラストマーの範囲のものが特に好ましい。該エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の数平均分子量は、50000〜500000の範囲であることが好ましい。このEVMエラストマーは耐熱性が高いため、これを使用すると放熱シートの熱安定性が特に優れるという利点がある。
なお、ポリエステル系樹脂同様、ダイオキシン発生防止、低分子シロキサンによる接点不良防止の観点から、ハロゲンフリー、シロキサンフリーであることが好ましい。
本発明の放熱シートは、上記熱輻射性を有する粒子/上記バインダー樹脂(以下、PV比ということがある。)の質量比が5/95〜65/35であることを要する。PV比が5/95未満であると熱輻射性を有する粒子(フィラー)の十分な添加効果が得られず、一方、65/35を超えるとシートの強度、柔軟性、及び粘着性が低下し、製品としての取り扱い時の利便性が低下する。特にシートの強度、柔軟性、及び粘着性を重視する場合は、PV比は20/80〜50/50が好ましい。但し、後述する様に、特に放熱シートに高熱輻射性に加えて、高熱伝導性をも付与する場合は、PV比は上記範囲の中でも比較的高い領域、50/50〜65/35に設定する。
なお、本発明における放熱シートの熱輻射性は、輻射される赤外線がバインダーである樹脂に吸収される等の影響を受けないと考えられるため、熱輻射性を有する粒子を放熱シートの平面内に射影した場合に、該射影が平面内において最密充填されているほど放射効率は高くなると考えられる。従って、本発明の効果を奏するPV比の範囲については、体積比で表現することが理論的には妥当であると考えられるが、本発明における放熱シートの厚み、用いられる熱輻射性を有する粒子の粒子径等の範囲においては、質量比によって本発明を特定できるものであり、実施例等で実証されている。
本発明の放熱シートの厚みは、10〜150μmの範囲である。シート厚みが150μmより厚いと、乾燥条件の問題からコーティングによる作成が困難となる。また、シート厚み方向の熱抵抗が大きく、シート上部に存在する熱輻射性を有する粒子までの熱伝導が遅くなり、結果として放熱性が不十分になる場合がある。一方、放熱シートの厚みが10μmより薄いと製膜が難しくなると同時に、実用的な機械強度のシートとならない。
以上の点から、放熱シートの厚みは、30〜120μmの範囲がより好ましい。
かかる本発明の放熱シートは、バインダー樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に熱輻射性を有する粒子を均一に分散したインキ組成物をコーティングし、溶剤を乾燥して固化せしめることにより、高い熱輻射性を有し、かつシート厚みの薄い放熱シートを容易に得ることができる。すなわち、本発明は、溶剤を使用することにより、熱輻射性を有する粒子とバインダー樹脂混合物の流動性を高め、薄膜コーティング適性を付与したものである。且つ該組成物をコーティングし、製膜した後、含有する溶剤を乾燥除去することにより、固化した放熱シートの膜厚は、溶剤分だけ減少し、更なる薄膜化がなされる。
本発明の放熱シートの製造に用いられる溶剤は、溶剤中に、相対蒸発速度190以上、沸点60〜130℃以下、かつ、溶解度パラメータ(SP値)が8〜12である成分を80質量%以上含有することが好ましい。これらの条件を満足する溶剤を用いることにより、本発明の放熱シートを効率的に生産することができる。特に、SP値がこの範囲であるとバインダー樹脂をよく溶解し、かつ熱輻射性を有する粒子の分散性もよい。
ここで、相対蒸発速度とは、酢酸−n−ブチルの蒸発速度を100としたときの相対的な蒸発速度をいい、好ましくは190〜600の範囲である。また、沸点は常圧での沸点であり、SP値としては、さらに8.5〜11の範囲であることが好ましい。
かかる溶剤としては、上記条件を満足するものであれば特に制限されず、芳香族炭化水素、ケトン、エステルなどの溶剤を用いることができる。より具体的には、トルエン(相対蒸発速度:196、沸点:110.8℃、SP値:8.9)、メチルエチルケトン(相対蒸発速度:465、沸点:79.6℃、SP値:9.3)、酢酸エチル(相対蒸発速度:525、沸点:76.8℃、SP値:9.1)などが、コーティング後の乾燥性、インキ組成物の流動性などの点から好ましく用いられる。これら溶剤は、1種単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。
さらに、本発明の放熱シートを製造するためのインキ組成物としては、バインダー樹脂の溶液状態を損なわない範囲において、インキ組成物の流動性や乾燥速度の調節等の目的で、必要に応じ、20質量%を限度として、上記物性の範囲外である、希釈溶剤、遅乾溶剤等を適宜の量、添加することができる。
本発明の放熱シートを製造するためのインキ組成物は、ガラス転移温度−50〜50℃であるバインダー樹脂100質量部を、溶剤25〜1150質量部に溶解した樹脂溶液に、熱輻射性を有する粒子5〜186質量部を、ディゾルバーなどを用いて、均一かつ微細に分散混合させたものである。
該組成物のコーティング適性は、インキ組成物の各成分の種類、量に左右されるが、なかでも、溶剤の種類、量、熱輻射性を有する粒子の形状・粒径、量等により大きく影響を受ける。
本発明に好適に使用されるコーティング法により、本発明の10〜150μmという薄いシート厚みの放熱シートを容易に得るためには、最適な溶剤配合量(インキ組成物の流動性、乾燥時の厚み収縮との関係を評価するために、組成物全体に対する溶剤の比率で表示する)としては該組成物中の溶剤量で20〜80質量%、熱輻射性を有する粒子の粒径としては1〜80μm程度、そして、熱輻射性を有する粒子を分散したインキ組成物の粘度としては、25℃において、50〜10000mPa・s(B型粘度計(60回転))程度が好適である。
なお、本発明の放熱シートには、放熱特性(熱輻射性、熱伝導性)に大きな悪影響を与えない程度であれば、金属水和物などの難燃剤、着色剤、イソシアネートなどの硬化剤、分散剤、マイクロシリカなどを適宜、適量選択して配合しても差し支えない。
本発明の放熱シートを製造するための組成物である熱輻射性を有する粒子を分散したインキ組成物は、コンマコーター、ダイヘッドコーター、グラビア印刷機などの通常のコーティング機等で、樹脂フィルムや離型層付き樹脂フィルムの離型性フィルム等の上にコーティングされ、遠赤外線輻射ヒーター、温風吹付けなどによって乾燥されることにより、シート化される。
該樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等が用いられる。また、上記離型層としては、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等が用いられる。
製膜された放熱シートは熱輻射による放熱を主に設計されているが、同時に熱伝導による放熱が行われてもよい。これにより、熱輻射による放熱に加えて熱伝導による放熱も加わり総合的な放熱性能が良好となる。又、放熱シートの厚み方向に於いて、発熱体から放熱シート表面(外界に向けて輻射が行われる面)に向かって、迅速且つ効率的に熱が伝達される。此の為、より輻射による放熱性能が高まる。且つ、放熱シートの(表裏面に平行な)平面内に於いて発熱体の発熱量が局部的に集中する場合でも、熱を平面内に均一に拡散させる結果、局部的な温度上昇、或いは局部的に放熱量が飽和することによる輻射放熱効率の低下を防止し得る。
また、放熱シートに高熱輻射性に加えて高熱伝導性をも付与するためには、具体的には、全輻射率0.5以上の熱輻射性を有する粒子を選択する際、同時に高熱伝導性を有する粒子を選択する。より具体的には、熱伝導率1W/mKよりも大きい粒子、より好ましくは熱伝導率10W/mKよりも大きい粒子である。例えば、アルミナ、酸化マグネシウム等を選択し、且つPV比もできるだけ高く配合することが好ましい。この点から、PV比としては50/50以上が好ましい。但し、シート強度、シートの柔軟性、粘着性等を確保するため、上限は65/35以下に抑えることが好ましい。
このように得られた放熱シートは、離型性フィルムから剥がし、あるいは、離型性フィルムを保護フィルムとした状態で、放熱シートとしての使用に供するための製品の形、すなわち保護フィルム付き放熱シートとすることができる。
また、本発明の放熱シートは、粘着性層を放熱シートの上面または下面にさらに設けた構成、すなわち粘着層付き放熱シートとしてもよく、これにより、製品使用時の利便性が高まる。
本発明の放熱シートは、LSIなどの電子部品、PDPなどの表示装置等の発熱体の裏面、側面等に、組立て、発光、画像表示等の支障にならない位置に貼付する。これにより、本発明の放熱シートは、使用形態に応じた放熱機構を発現する。特に、ヒートシンク、水冷もしくは空冷の冷却器など熱排出システムを用いることができない場合に、本発明の放熱シートは、高い熱輻射性により効果的に外部へ熱を放出する。すなわち、発熱体から該放熱シートの厚み方向及び面内方向に熱伝導にて伝達した熱を、専ら該放熱シート表面もしくは内部からの熱輻射及び周囲雰囲気への熱伝導によって外部へ放出する。
なお、本発明に於いて、高熱輻射性に加えて更に高熱伝導性をも利用した構成とした場合には、ヒートシンク等の熱排出システムと組み合わせて使用することもできる。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(放熱性の評価方法)
放熱性の評価は以下の測定により行った。各実施例及び比較例で得られた放熱シートを直径83mm、高さ100mmの金属缶(表面が鏡面であるステンレス鋼)の側面全面に貼り付け、缶中に加温した水を入れて、缶の温度が89℃になるように調整した。この缶を、25℃に調整した縦290mm、横380mm、高さ360mmの密閉した段ボール紙でできた箱内に置き、30分、60分及び90分経過後の水温の変化を測定した。また、放熱シートを貼り付けずに同様の実験を行って、30分、60分及び90分経過後の水温の変化を測定し(参考例1として第1表に表示)、これを基準値として温度の低下率を併せて表示した。
(機械的強度)
機械的強度は、引張破壊伸び(JIS K 7113に準拠)、引張強さ(JIS K 7113に準拠)、離型フィルムからの剥離時のシート形状の保持性により評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;引張破壊伸び 50%以上、引張強さ 0.3N/10mm以上
離型フィルムから形状を維持しての剥離が可能
×;引張破壊伸び 50%未満、引張強さ 0.3N/10mm未満
離型フィルムから形状を維持しての剥離が不可
実施例1
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂(非晶質飽和共重合ポリエステル;東洋紡績(株)製、商品名:「バイロン300」、Tg:6℃、数平均分子量23000、比重1.20、体積固有抵抗値1.3×1015Ω、以下「ポリエステル樹脂A」という。)28質量%、熱輻射性を有する粒子(熱輻射フィラー)としてアルミナ粒子((株)マイクロン製、商品名:「AX3−32」、平均粒径:3μm)7質量%、溶剤としてメチルエチルケトン/トルエン混合溶剤(混合比20:80)65質量%からなるインキ組成物を得た。
次いで、コンマコーター(井上金属(株)製)により、該インキ組成物を、離型剤塗布PETフィルムの離型剤層上にコーティングし、熱風乾燥して、含有する溶剤を乾燥除去することで放熱シートを得た。コーティング速度を3m/minとし、乾燥温度を50〜120℃とした乾燥ゾーン4ユニット(ユニット長さ:2m×4、乾燥温度 第1ユニット:50℃、第2ユニット:80℃、第3ユニット:100℃、第4ユニット:120℃)を通過させて、シート厚60μmの放熱シートを得た。得られた放熱シートの放熱性及び機械的強度を第1表に示す。
実施例2〜4
実施例1と同様の操作で第1表に記載の各組成のインキ組成物を得、実施例1と同様の操作で放熱シートを得た。得られた放熱シートの放熱性及び機械的強度を第1表に示す。
実施例5
実施例1と同様にして放熱シートを得た。該放熱シートを離型剤層から剥がし、これに両面テープ(日東電工(株)製、両面粘着テープNo.510)を貼り合わせ、粘着層付き放熱シートを得た。該粘着層付き放熱シートについて放熱性を評価した。結果を第1表に示す。
比較例1
本発明の放熱シートの代わりに、厚さ60μmのアルミニウムを貼り、上記方法にて放熱性を評価した。結果を第1表に記す。
Figure 2007048809
*1 ポリエステル樹脂A;非晶質飽和共重合ポリエステル;東洋紡績(株)製、商品名:「バイロン300」、Tg:6℃、数平均分子量23000、比重1.20、体積固有抵抗値1.3×1015Ω
*2 EVM;ISO1692(1995)、酢酸ビニル単位の比率が40〜80モル%
比較例2
実施例1において、ポリエステル樹脂Aを7質量%、アルミナ粒子を28質量%としたこと以外は実施例1と同様にして、放熱シートの作製を試みた。しかしながら、粘着性のあるシートを得ることはできなかった。
比較例3
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂B(非晶質飽和共重合ポリエステル;東洋紡績(株)製、商品名:「バイロン200」、Tg:67℃、数平均分子量17000、比重1.26、体積固有抵抗値7.2×1016Ω)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、放熱シートの作製を試みた。しかしながら、実用的な機械的強度をもつシートを得ることはできなかった。
比較例4
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂C(ウレタン変性ポリエステル;東洋紡績(株)製、Tg:−54℃)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、放熱シートの作製を試みた。しかしながら、実用的な機械的強度をもつシートを得ることはできなかった。
第1表に示すとおり、本発明の放熱シートは放熱性が高く、放熱シートを貼付しない場合や、アルミニウム箔を貼付した場合に比較して、30分後で7.5〜8.4%の温度低下、60分後で11.5〜13.6%の温度低下、さらに90分後では14.7〜16.6%もの温度低下が見られ、無風の環境下において優れた放熱性を有することがわかる。
実施例6〜10及び比較例5〜7
第2表に記載するPV比となるように、実施例1と同様にして得たインキ組成物を、実施例1に記載の方法と同様にして、厚さ60μmのアルミニウム箔上にコーティングした。塗布面の裏側に両面テープ(日東電工(株)製、両面粘着テープNo.510)を貼り合わせ、粘着層付き放熱シートを得た。該粘着層付き放熱シートについて放熱性を評価した。結果を第2表に示す。また、各実施例及び比較例について、90分経過後の水温を図1に示す。
Figure 2007048809
第2表及び図1から、放熱シート中の熱輻射性を有する粒子(アルミナ粒子)の量が、PV比で5/95以上であると高い放熱性が得られ、20/80までは、熱輻射性を有する粒子(アルミナ粒子)の添加量に比例して放熱性が向上する。PV比20/80を超えると放熱性については、定常状態になることがわかる。
本発明によれば、熱輻射性に優れ、また機械的強度、柔軟性等においても優れた放熱シートが得られる。また、本発明の方法によれば、かかる放熱シートは、特定のガラス転移温度を有するバインダー樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液中に、熱輻射性を有する粒子を分散させ、これをコーティングし、乾燥することで高い生産性で製造することができる
本発明の放熱シートの放熱特性を示す図である。

Claims (7)

  1. 全輻射率0.5以上の熱輻射性を有する粒子を、ガラス転移温度が−50〜50℃であるバインダー樹脂で結着させてなる放熱シートであって、粒子/バインダー樹脂の質量比が5/95〜65/35であり、シート厚みが10〜150μmであることを特徴とする放熱シート。
  2. 前記熱輻射性を有する粒子が、平均粒径1〜80μmのアルミナ粒子である請求項1記載の放熱シート。
  3. 前記熱輻射性を有する粒子が、平均粒径1〜80μmの酸化マグネシウム粒子である請求項1記載の放熱シート。
  4. 前記バインダー樹脂が、ポリエステル系樹脂、及び酢酸ビニル単位の比率が40〜80モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の放熱シート。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の放熱シートが保護フィルム上に貼着された保護フィルムつき放熱シート。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の放熱シートの上面及び/又は下面に粘着層を設けた粘着層つき放熱シート。
  7. 全輻射率0.5以上の熱輻射性を有する粒子、ガラス転移温度が−50〜50℃であるバインダー樹脂及び溶剤からなるインキ組成物を印刷機によりコーティングし、溶剤を乾燥させて固化することによってシート化する放熱シートの製造方法であって、溶剤中に、相対蒸発速度190以上、沸点60〜130℃、かつ溶解度パラメータが8〜12である成分を80質量%以上含有することを特徴とする放熱シートの製造方法。

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