JP2007047224A - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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晋 松阪
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Abstract

【課題】 発熱部材における発熱効率と自己温度制御性とが高く、小サイズの記録媒体を連続的に定着した場合や装置が突発的に駆動停止した場合等であっても過昇温が確実に抑止される電磁誘導加熱方式の定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】 磁束によって発熱する発熱層を具備する発熱部材23と、発熱部材23の表裏面を挟むように配設されるとともに交番電流が印加されて磁束を発生させるコイル部25と、を備える。そして、発熱層23は、その温度が発熱層23が有するキューリー点以下であるときの交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して3倍以上の厚さとなるように形成される。
【選択図】 図3

Description

この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置とそこに設置される定着装置とに関し、特に、電磁誘導加熱方式の定着装置及び画像形成装置に関するものである。
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、装置の立ち上げ時間を低減して省エネルギー化することを目的として、電磁誘導加熱方式の定着装置を用いたものが多く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1等において、電磁誘導加熱方式の定着装置は、支持ローラ(発熱ローラ)、定着補助ローラ(定着ローラ)、支持ローラと定着補助ローラとによって張架された定着ベルト、支持ローラに定着ベルトを介して対向する誘導加熱部、定着補助ローラに定着ベルトを介して対向する加圧ローラ、等で構成される。誘導加熱部は、幅方向(記録媒体の搬送方向に直交する方向である。)に延設されたコイル部(励磁コイル)や、コイル部に対向するコア等で構成される。
そして、定着ベルトは、誘導加熱部との対向位置で加熱される。加熱された定着ベルトは、定着補助ローラ及び加圧ローラの位置に搬送される記録媒体上のトナー像を加熱して定着する。詳しくは、コイル部に高周波の交番電流を流すことで、コイル部の周囲に磁界が形成されて、支持ローラ表面近傍に渦電流が生じる。支持ローラに渦電流が生じると、支持ローラ自身の電気抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって、支持ローラに巻装された定着ベルトが加熱される。
このような電磁誘導加熱方式の定着装置は、少ないエネルギー消費で短い立ち上げ時間にて、定着ベルトの表面温度(定着温度)を所望の温度まで昇温できるものとして知られている。
一方、特許文献2等には、電磁誘導加熱方式を用いた定着装置であって、定着ベルトを挟むようにコア部を形成する技術が開示されている。すなわち、誘導加熱部のコア部は、定着ベルトの外周面及び内周面に対向するように配設されている。この技術は、定着ベルトにおける発熱効率を向上することを目的としたものである。
また、特許文献3等には、電磁誘導加熱方式を用いた定着装置であって、誘導加熱部のコア部(磁性体コア)のキューリー点を幅方向で調整する技術が開示されている。詳しくは、幅方向両端部におけるコア部のキューリー点が、幅方向中央部のキューリー点に比べて小さくなるように形成している。この技術は、小サイズの記録媒体を通紙した場合に定着ベルトの幅方向両端部に生じる昇温を抑止することを目的としたものである。
特開2002−82549号公報 特開2000−214703号公報 特開2000−162912号公報
上述した従来の定着装置は、小サイズの記録媒体を連続的に定着した場合や、紙詰まり等により装置が突発的に駆動停止した場合に、定着ベルトの一部又は全部が過昇温することがあった。
詳しくは、次の通りである。
一般的な画像形成装置は、幅方向のサイズが異なる数種類の記録媒体に対して、画像形成ができるように構成されている。ここで、幅方向サイズの異なる記録媒体とは、JIS寸法のA列やB列における種々の定形サイズの記録媒体の他に、不定形サイズの記録媒体も含まれる。また、同一サイズ(例えば、A4サイズである。)の記録媒体であっても、長手方向を搬送方向にした場合と、短手方向(長手方向に直交する方向である。)を搬送方向にした場合とでは、幅方向サイズの異なる記録媒体を扱っていることになる。
このような幅方向サイズの異なる記録媒体を定着装置で定着する場合には、記録媒体の幅方向サイズに応じて、定着ベルトの幅方向の熱分布が変動して、温度ムラが生じてしまう場合があった。例えば、幅方向サイズの小さな記録媒体を通紙して定着する場合には、その記録媒体の幅方向サイズに対応する定着ベルトの位置(通紙領域である。)では熱が多く奪われて、その他の位置(非通紙領域である。)に比べて定着温度が低くなる。このような現象は、幅方向サイズの小さな記録媒体を連続的に通紙するような場合に、特に顕著になる。
したがって、定着ベルトの幅方向中央部の定着温度を基準として定着ベルトの幅方向全域の定着温度を制御しようとすると、定着ベルトの幅方向中央部の定着温度は所望の温度に制御できるものの、幅方向両端部の定着温度が上昇(過昇温)してしまうことになる。このように、定着ベルトの幅方向両端部の定着温度が上昇した状態で、幅方向サイズの大きな記録媒体を定着すると、温度上昇位置に対応した記録媒体上にホットオフセットが発生してしまう。さらに、幅方向両端部の定着温度が定着ベルトの耐熱温度を超えた場合には、定着ベルトに熱的破損が生じることも考えられる。
これに対して、定着ベルトの幅方向両端部の定着温度を基準として定着ベルトの幅方向全域の定着温度を制御しようとすると、定着ベルトの幅方向両端部の定着温度は所望の温度に制御できるものの、幅方向中央部の定着温度が下降してしまうことになる。このように、定着ベルトの幅方向中央部の定着温度が下降した状態で記録媒体を定着すると、温度下降位置に対応した記録媒体上にコールドオフセットが発生してしまう。
また、画像形成装置内の搬送経路中に紙詰まり(ジャム)が発生した場合等には、定着装置における駆動が突発的に停止される。このような場合には、誘導加熱部への通電が遮断されるまでの僅かな時間に、誘導加熱部に対向する定着ベルトの部分が瞬時に過昇温してしまう。これによって、定着ベルトや誘導加熱部のコイル部等の構成部材に熱的破損が生じることも考えられる。
一方、上述の特許文献2等の技術は、定着ベルトを挟むように配設するコア部の形状を最適化することで、定着ベルトにおける発熱効率を向上させるものである。したがって、上述の定着ベルトの過昇温を抑止する効果は期待できない。
また、上述の特許文献3等の技術は、誘導加熱部のコア部のキューリー点を幅方向で調整している。しかし、誘導加熱部によって加熱される定着部材の過昇温は、コア部に過昇温が生じる前に発生するために、上述の定着ベルトの過昇温を直接的に抑止する効果は期待できない。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、発熱部材における発熱効率と自己温度制御性とが高く、小サイズの記録媒体を連続的に定着した場合や装置が突発的に駆動停止した場合等であっても過昇温が確実に抑止される電磁誘導加熱方式の定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
本願発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、次の事項を知るに至った。
すなわち、キューリー点を有する材料(自己温度制御が可能な材料である。)にて発熱層を形成するとともに、発熱部材の表裏面を挟むようにコイル部を配設することによって、コイル部を発熱部材の片面側にのみ対向させて配設したときに比べて、発熱部材における発熱効率と自己温度制御の能力(自己温度制御性)とを高めることができる。そして、コイル部に挟まれた発熱部材における発熱層の厚さを適正化することによって、発熱部材における発熱効率及び自己温度制御性をさらに高めることができる。
この発明は以上述べた事項に基づくものであり、すなわち、この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、トナー像を記録媒体に定着する定着装置であって、磁束によって発熱する発熱層を具備する発熱部材と、前記発熱部材の表裏面を挟むように配設されるとともに、交番電流が印加されて前記磁束を発生させるコイル部と、を備え、前記発熱層は、その温度が当該発熱層が有するキューリー点以下であるときの前記交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して3倍以上の厚さとなるように形成されたものである。
また、請求項2記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項1に記載の発明において、前記発熱層は、その温度が前記キューリー点以下であるときの前記交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して17倍以下の厚さとなるように形成されたものである。
また、この発明の請求項3記載の発明にかかる定着装置は、トナー像を記録媒体に定着する定着装置であって、磁束によって発熱する発熱層を具備する発熱部材と、前記発熱部材の表裏面を挟むように配設されるとともに、交番電流が印加されて前記磁束を発生させるコイル部と、を備え、前記発熱層は、その温度が当該発熱層が有するキューリー点以下であるときの前記交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して17倍以下の厚さとなるように形成されたものである。
また、請求項4記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記発熱層は、前記交番電流の周波数が30kHzのときに前記浸透深さが0.15mm以下となる金属材料からなるものである。
また、請求項5記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記発熱層は、ニッケル、鉄、クロムの合金からなるものである。
また、請求項6記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記コイル部は、前記発熱部材の前記表裏面を1回又は複数回挟むように離間して巻回されたものである。
また、請求項7記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記発熱部材を、トナー像を溶融する定着部材を加熱する加熱部材としたものである。
また、請求項8記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項7に記載の発明において、前記定着部材は、定着ベルトであって、前記加熱部材は、定着補助ローラとともに前記定着ベルトを張架する支持ローラであって、前記コイル部は、前記定着ベルトの外周面に対向するとともに、前記支持ローラの内周面に対向するように配設され、前記定着補助ローラは、搬送される記録媒体を加圧する加圧ローラに対して前記定着ベルトを介して当接するように配設されたものである。
また、請求項9記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記発熱部材を、トナー像を溶融する定着部材としたものである。
また、請求項10記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項9に記載の発明において、前記定着部材は、定着ベルトであって、前記コイル部は、前記定着ベルトの外周面及び内周面に対向するように配設されたものである。
また、請求項11記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項10に記載の発明において、前記定着ベルトは、支持ローラと定着補助ローラとに張架され、前記定着補助ローラは、搬送される記録媒体を加圧する加圧ローラに対して前記定着ベルトを介して当接するように配設されたものである。
また、請求項12記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項11に記載の発明において、前記コイル部は、前記支持ローラを介して前記定着ベルトの内周面に対向するように配設されたものである。
また、請求項13記載の発明にかかる定着装置は、上記請求項9に記載の発明において、前記定着部材は、搬送される記録媒体を加圧する加圧ローラに当接する定着ローラであって、前記コイル部は、前記定着ローラの外周面及び内周面に対向するように配設されたものである。
また、この発明の請求項14記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の定着装置を備えたものである。
本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置において、発熱部材の表裏面を挟むようにコイル部を配設するとともに、発熱部材における発熱層の厚さを最適化している。これにより、発熱部材における発熱効率と自己温度制御性とが高まり、小サイズの記録媒体を連続的に定着した場合や装置が突発的に駆動停止した場合等であっても過昇温が確実に抑止される定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
図1〜図6にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのレーザープリンタの装置本体、3は画像情報に基いた露光光Lを感光体ドラム18上に照射する露光部、4は装置本体1に着脱自在に設置される作像部としてのプロセスカートリッジ、7は感光体ドラム18上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する転写部、10は出力画像が載置される排紙トレイ、11、12は転写紙等の記録媒体Pが収納された給紙部、13は記録媒体Pを転写部7に搬送するレジストローラ、15は手差し給紙部、18は像担持体としての感光体ドラム、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着装置を示す。
図1を参照して、画像形成装置における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、露光部3から、画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、プロセスカートリッジ4の感光体ドラム18上に向けて発せられる。感光体ドラム18は図中の反時計方向に回転しており、所定の電子写真プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム18上に画像情報に対応したトナー像が形成される。
その後、感光体ドラム18上に形成されたトナー像は、転写部7で、レジストローラ13により搬送された記録媒体P上に転写される。
一方、転写部7に搬送される記録媒体Pは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給紙部11、12、15のうち、1つの給紙部が自動又は手動で選択される(例えば、最上段の給紙部11が選択されたものとする。)。そして、給紙部11に収納された記録媒体Pの最上方の1枚が、搬送経路Kの位置に向けて搬送される。その後、記録媒体Pは、搬送経路Kを通過してレジストローラ13の位置に達する。そして、レジストローラ13の位置に達した記録媒体Pは、感光体ドラム18上に形成されたトナー像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写部7に向けて搬送される。
そして、転写工程後の記録媒体Pは、転写部7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達した記録媒体Pは、定着ベルトと加圧ローラとの間に送入されて、定着ベルトから受ける熱と加圧ローラから受ける圧力とによってトナー像が定着される。トナー像が定着された記録媒体Pは、定着ベルトと加圧ローラとの間から送出された後に、出力画像として画像形成装置本体1から排出されて、排紙トレイ10上に載置される。
こうして、一連の画像形成プロセスが完了する。
次に、画像形成装置本体1における定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2に示すように、定着装置20は、主として、定着補助ローラ21、定着ベルト22、支持ローラ23、誘導加熱部24、加圧ローラ30、サーミスタ38、ガイド板35、分離板36等で構成される。
ここで、定着補助ローラ21は、ステンレス鋼等からなる芯金の表面に、シリコーンゴム等の弾性層を形成したものである。定着補助ローラ21の弾性層は、肉厚が3〜10mmで、アスカー硬度が10〜50度となるように形成されている。定着補助ローラ21は、不図示の駆動部によって図2の反時計方向に回転駆動される。
加熱部材(発熱部材)としての支持ローラ23は、磁性導電性材料からなる発熱層(円筒部)を備えている。支持ローラ23の円筒部は、直径が20mmであって、肉厚(層厚)Dが0.5mmになっている。ここで、この支持ローラ23(発熱層)の厚さDは、発熱層の温度がキューリー点以下であるときの浸透深さ(発熱層の体積抵抗率及び比透磁率と、コイル部25に印加される交番電流の周波数と、で定まる。)をδとしたときに、
3×δ≦D≦17×δ …式(1)
なる関係が成立するように設定されたものである。これについては、後で詳しく説明する。
支持ローラ23は、図2の反時計方向に回転する。支持ローラ23の表裏面(外周面及び内周面である。)に対向するように、コイル部25が配設されている(図3を参照できる。)。
ここで、発熱部材としての支持ローラ23の材料として、ニッケル、鉄、クロム、又は、それらの合金等の磁性導電性材料を用いることができる。本実施の形態1では、支持ローラ23の材料として、キューリー点が定着可能温度以上であって300度以下となる整磁合金を用いている。具体的には、ニッケル、鉄、クロムの合金であって、各材料の添加量と加工条件とを調整することで所望のキューリー点を得ることができる。さらに、ニッケル、鉄、クロムの合金は、比透磁率を調整して浸透深さを小さくすることができるために、熱容量を小さくすることもできる。
このように、キューリー点が定着ベルト22の定着温度近傍となる磁性導電性材料にて支持ローラ23を形成することで、支持ローラ23は電磁誘導によって過昇温されることなく加熱されることになる。
なお、本実施の形態1では、支持ローラ23を発熱層のみの構成としたが、支持ローラ23の発熱層上に補強層、弾性層、断熱層等を設けることもできる。
以下、定着ベルト22について詳述する。
図2を参照して、発熱部材としての定着ベルト22(定着部材)は、支持ローラ23と定着補助ローラ21とに張架・支持されている。
定着ベルト22は、基材(内周面側に配設される。)上に、弾性層、離型層が順次形成された、多層構造のエンドレスベルトである。基材は、絶縁性の耐熱樹脂材料からなり、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS、フッ素樹脂等を用いることができる。基材の層厚は、熱容量及び強度の点から、30〜200μmに形成されている。
定着ベルト22の弾性層は、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等からなり、層厚が50〜500μmでアスカー硬度が5〜50度となるように形成されている。これにより、出力画像において、光沢ムラのない均一な画質を得ることができる。
定着ベルト22の離型層は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂、これらの樹脂の混合物、又は、これらの樹脂を耐熱性樹脂に分散させたものである。離型層の層厚は、5〜50μm(好ましくは、10〜30μmである。)に形成されている。これにより、定着ベルト22上のトナー離型性が担保されるとともに、定着ベルト22の柔軟性が確保される。
なお、定着ベルト22の各層の間に、プライマ層等を設けることもできる。
図2及び図3を参照して、誘導加熱部24は、ループ状に形成されたコイル部25で構成される。
ここで、コイル部25は、定着ベルト22及び支持ローラ23の表裏面(内周面及び外周面である。)を挟むように配設された励磁コイルである。定着ベルト22及び支持ローラ23の一部は、ループ状のコイル部25のループ内に挟入されている。
詳しくは、図3に示すように、コイル部は、定着ベルト22及び支持ローラ23(発熱部材)の表裏面を1回挟むように離間して巻回されている。また、コイル部25は、定着ベルト22及び支持ローラ23の幅方向に平行に延設されている。コイル部25の幅方向の一端は内周面側と外周面側とを結ぶ折返し部になっていて、他端には高周波電源部40が接続されている。
ここで、高周波電源部40は、周波数が10k〜1MHz(好ましくは、10k〜300kHzである。)の範囲の交番電流をコイル部25に印加することになる。しかし、高周波電源部40から印加される交番電流の周波数が高くなるほど、支持ローラ23の発熱効率は大きくなるが、高周波電源部40が大型化、高コスト化してしまう。その点を考慮して、本実施の形態1では、高周波電源部40における使用周波数帯を20k〜40kHzの範囲として、主として周波数が30kHzの交番電流をコイル部25に印加している。
なお、本実施の形態1では、コイル部25を1本のループ状の励磁コイルとしたが、複数本のループ状のコイル部とすることもできる。すなわち、コイル部を、定着ベルト22及び支持ローラ23(発熱部材)の表裏面を複数回挟むように離間して巻回させることもできる。
図2を参照して、加圧ローラ30は、アルミニウム、銅等からなる円筒部材上にフッ素ゴム、シリコーンゴム等の弾性層が形成されたものである。加圧ローラ30の弾性層は、肉厚が1〜5mmで、アスカー硬度が20〜50度となるように形成されている。加圧ローラ30は、定着ベルト22を介して定着補助ローラ21に圧接している。そして、定着ベルト22と加圧ローラ30との当接部(定着ニップ部である。)に、記録媒体Pが搬送される。
定着ベルト22と加圧ローラ30との当接部の入口側には、記録媒体Pの搬送を案内するガイド板35が配設されている。
定着ベルト22と加圧ローラ30との当接部の出口側には、記録媒体Pの搬送を案内するとともに記録媒体Pが定着ベルト22から分離するのを促進する分離板36が配設されている。
定着ベルト22の外周面上であって定着ニップ部の上流側には、熱応答性の高い感温素子としてのサーミスタ38が当接されている。そして、サーミスタ38によって、定着ベルト22上の表面温度(定着温度)が検知されて、誘導加熱部24の出力が調整される。
このように構成された定着装置20は、次のように動作する。
定着補助ローラ21の回転駆動によって、定着ベルト22は図2中の矢印方向に周回するとともに、支持ローラ23も反時計方向に回転して、加圧ローラ30も矢印方向に回転する。定着ベルト22は、支持ローラ23によって加熱される。
詳しくは、高周波電源部40からコイル部25に上述した周波数の高周波交番電流を流すことで、コイル部25のループ内に磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このように交番磁界が形成されることで、支持ローラ23の温度がキューリー点以下である場合に、支持ローラ23の表裏面にそれぞれ渦電流が生じて、支持ローラ23の電気抵抗によってジュール熱が発生して、支持ローラ23が加熱される。そして、定着ベルト22は、発熱した支持ローラ23から受熱して加熱される。
その後、加熱された定着ベルト22表面は、サーミスタ38の位置を通過して、加圧ローラ30との当接部に達する。そして、搬送される記録媒体P上のトナー像Tを加熱して溶融する。
詳しくは、先に説明した作像プロセスを経てトナー像Tを担持した記録媒体Pが、ガイド板35に案内されながら定着ベルト22と加圧ローラ30との間に送入される(矢印Yの搬送方向の移動である。)。そして、定着ベルト22から受ける熱と加圧ローラ30から受ける圧力とによってトナー像Tが記録媒体Pに定着されて、記録媒体Pは定着ベルト22と加圧ローラ30との間から送出される。
加圧ローラ30の位置を通過した定着ベルト22表面は、その後に再びコイル部25との対向位置に達する。このような一連の動作が連続的に繰り返されて、画像形成プロセスにおける定着工程が完了する。
このような定着工程において、支持ローラ23の温度が自身のキューリー点を超えた場合には、支持ローラ23の発熱が制限されることになる。
すなわち、誘導加熱部24によって誘導加熱された支持ローラ23の温度がキューリー点を超えた場合には、支持ローラ23が磁性を失うことにより、支持ローラ23の発熱が制限される。これにより、支持ローラ23におけるジュール熱の発生量が低下して、過昇温が抑止される。
このような自己温度制御能力(自己温度制御性)は、本実施の形態1のように発熱部材23に対してコイル部25をループ状に配設した場合、発熱部材23の片側(例えば、外周面側である。)にのみにコイル部25が対向するように配設した場合に比べて、特に高くなる。
以下、自己温度制御能力について詳述する。
図4は支持ローラ23とコイル部25とを示す断面図であって、図5及び図6は、支持ローラ23とコイル部25とを幅方向にみた断面図である。各図中の破線矢印は、コイル部25に交番電流が流れたときに発生する磁力線を示している。
図4に示すように、コイル部25は支持ローラ23の表裏面を挟むように配設されている。これにより、図5に示すように、支持ローラ23外周面に対向するコイル部25と支持ローラ23内周面に対向するコイル部25とには、互いに逆向きのコイル電流Hが常に流れることになる。したがって、支持ローラ23を挟む双方のコイル部25によって発生される磁力線B1、B2も互いに逆の方向に回転する。そして、発熱部材としての支持ローラ23の表面と裏面とには、逆向きの渦電流A1、A2が流れて、表裏面の双方でジュール損による発熱が生じることになる。
ここで、交番電流によって生じる交番磁束が発熱層(金属)に誘導する渦電流は、発熱層の表面に近くなるほど大きくなって、表面から離れるにつれて指数関数的に小さくなる。発熱層が磁性体である場合には、誘導される渦電流はさらに発熱層表面に集中する。
また、渦電流が表面における電流密度の0.368倍に減少した位置における表面からの深さを電流の浸透深さδと呼ぶ。なお、浸透深さδは次式で求まる。
δ=503・〔ρ/(μf)〕1/2 …式(2)
上式(2)において、ρは発熱層の体積抵抗率(Ω・m)であり、μは発熱層の比透磁率であり、fは発熱層を励磁する交番電流の周波数(Hz)である。
浸透深さより発熱層表面から遠い位置に流れる渦電流は、発熱層表面近傍のものと比較して、非常に小さく誘導加熱にほとんど影響を与えない。発熱層の厚さが浸透深さ以上であれば、発熱層表面から進入した磁束は発熱層中でエネルギーを消失して、発熱層をほとんど透過することができなくなる。
本実施の形態1では、支持ローラ23(発熱層)の材料として整磁合金を用いている。この整磁合金の浸透深さは、整磁合金の温度がキュリー点以下であって交番電流の周波数が30kHzのとき、式(2)より約0.06mmとなる。なお、整磁合金の比透磁率は、常温の初透磁率を真空の透磁率で割ることにより算出した。
本実施の形態1では、支持ローラ23(発熱層)の厚さを0.5mmに設定している。そのため、交番電流の周波数が30kHzであって、整磁合金の温度がキュリー点以下であれば、図5に示すように、支持ローラ23の表面と裏面とに流れる渦電流はそれぞれ発熱層表面から0.06mm程度の位置に集中して、互いの渦電流が干渉することなく支持ローラ23は誘導加熱されることになる。
これに対して、整磁合金の温度がキュリー点以上(比透磁率が1となる。)であって交番電流の周波数が30kHzのとき、整磁合金の浸透深さは、式(2)より約2mmとなる。このとき、図6に示すように、支持ローラ23外周面に対向するコイル部25と支持ローラ23内周面に対向するコイル部25とによって発生する交番磁束は、厚さ0.5mmの整磁合金(発熱層)を貫いて干渉してしまう。そのため、整磁合金に流れる渦電流A1、A2は相殺されて、支持ローラ23の発熱量が著しく低下してしまう。
このように、支持ローラ23(発熱部材)の表裏面を挟むようにコイル部25を配設することで、非常に高い自己温度制御能力と発熱効率とを得ることができる。
その際、コイル部25によって表裏面を挟まれるように配設される発熱層(支持ローラ23)の厚さが、式(1)の関係を満足することで、上述の効果が確実なものになる。
具体的に、発熱層の厚さを薄くしていくと、コイル部25に等しい電圧をかけたとき、発熱層の温度がキュリー点以下であるときの発熱層の発熱量が低下していく。この発熱量低下は発熱層の厚さが所定値よりも薄くなったところで急激に大きくなって、支持ローラ23の発熱効率が低下する。本願発明者は、研究を重ねた結果、発熱層の温度がキューリー点以下であるときの交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して3倍以上の厚さ(D≧3×δ)となるように、発熱層を形成することで、支持ローラ23における良好な発熱効率と自己温度制御性とを維持できることを知得した。
さらに、発熱層の厚さを厚くしていくと、発熱層の温度がキュリー点よりも高くなったときの発熱量が大きくなるために、発熱層の温度がキュリー点以下のときの発熱量に対する発熱量の低下率が低くなって、発熱層の自己温度制御性が低下してしまう。本願発明者は、研究を重ねた結果、発熱層の温度がキューリー点以下であるときの交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して17倍以下の厚さ(D≦17×δ)となるように、発熱層を形成することで、支持ローラ23における高い自己温度制御性を維持できることを知得した。
このような効果を示す実験例については、後で図9〜図13にて説明する。
以上説明したように、本実施の形態1では、電磁誘導加熱方式の定着装置20において、発熱部材としての支持ローラ23の表裏面を挟むようにコイル部25を配設するとともに、発熱部材としての支持ローラ23における発熱層の厚さ(支持ローラ23自体の厚さである。)を最適化している。これにより、支持ローラ23における発熱効率と自己温度制御性とが高まり、小サイズの記録媒体を連続的に定着した場合や装置が突発的に駆動停止した場合等であっても、支持ローラ23(又は定着ベルト22)の過昇温を確実に抑止することができる。
なお、本実施の形態1では、発熱層を有する支持ローラ23を発熱部材として用いた。これに対して、定着ベルト22に発熱層を設けて、支持ローラの代わりに定着ベルトを発熱部材として用いることもできる。また、定着ベルト22と支持ローラ23とを発熱部材として用いることもできる。その場合も、発熱部材として用いる部材に本実施の形態1と同様の発熱層を適正な厚さで設けるとともに、発熱部材をループ状のコイル部25に挟入することで、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態2.
図7にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図7は、実施の形態2における画像形成装置の要部を示す断面図である。本実施の形態2の画像形成装置は、タンデム型のカラー画像形成装置である点と、発熱部材及び定着部材として定着ローラ31を用いている点とが、前記実施の形態1のものとは相違する。
本実施の形態2における画像形成装置は、タンデム型のカラー画像形成装置である。図7に示すように、作像部には、複数の感光体ドラム18BK、18Y、18M、18Cが転写ベルト8上に並設されている。図示は省略するが、複数の感光体ドラム18BK、18Y、18M、18Cの外周には、帯電部、露光部、現像部、クリーニング部、除電部が配設されている(図1のプロセスカートリッジ4を参照できる。)。そして、各感光体ドラム18BK、18Y、18M、18C上で、各色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像が形成される。
転写部7は、記録媒体Pを搬送する転写ベルト8、各感光体ドラム18BK、18Y、18M、18Cに対して転写ベルト8を介して対向するバイアスローラ9、転写ベルト8表面を清掃するクリーニングローラ14、等で構成される。
転写ベルト8は、矢印方向から搬送される記録媒体Pを、各感光体ドラム18Y、18M、18C、18BKとの対向位置に順次搬送する。このとき、バイアスローラ9に印加される転写バイアスによって、記録媒体P上に各色のトナー像が重ねて転写される。こうして、記録媒体P上にフルカラーのトナー像が形成される。その後、フルカラーのトナー像が形成された記録媒体Pは、転写ベルト8から分離されて、定着装置20に向けて搬送されることになる。
一方、本実施の形態2の定着装置20は、主として、発熱部材としての定着ローラ31(定着部材)、加圧ローラ30、誘導加熱部24等で構成される。
定着ローラ31は、磁性導電性材料からなる発熱層31a、シリコーンゴム等からなる弾性層、フッ素化合物等からなる離型層、等で構成される。定着ローラ31の発熱層31aは、前記実施の形態1と同様に、キューリー点が定着可能温度以上であって300℃以下となる整磁合金によって形成されるとともに、その厚さが上式(1)の関係を満足するように形成されている。定着ローラ31は、加圧ローラ30の加圧力に抗するだけの機械的強度をもつ。
また、誘導加熱部24は、前記実施の形態1と同様に、ループ状に形成されたコイル部25で構成される。すなわち、コイル部25は、定着ローラ31の表裏面(内周面及び外周面である。)を挟むように配設されている。
そして、コイル部25に所望の周波数の交番電流が供給されることで、コイル部25のループ内に磁力線が形成されて、電磁誘導により定着ローラ31の発熱層31aが加熱される。そして、発熱層31aの発熱によって、定着ローラ31全体が加熱される。このようにして、加熱された定着ローラ31は、矢印方向から搬送される記録媒体P上のトナー像を加熱・溶融して記録媒体Pに定着する。
本実施の形態2においても、定着ローラ31の発熱層31aの温度がキューリー点を超えた場合には、前記実施の形態1と同様に、発熱層31aの発熱が効率よく制限されることになる。
以上説明したように、本実施の形態2では、電磁誘導加熱方式の定着装置20において、発熱部材としての定着ローラ31における発熱層31aの表裏面を挟むようにコイル部25を配設するとともに、定着ローラ31における発熱層31aの厚さを最適化している。これにより、発熱層31aにおける発熱効率と自己温度制御性とが高まり、小サイズの記録媒体を連続的に定着した場合や装置が突発的に駆動停止した場合等であっても、発熱層31a(又は定着ローラ31)の過昇温を確実に抑止することができる。
なお、本実施の形態2では、誘導加熱部24に対向する定着部材として定着ローラ31を用いたが、誘導加熱部24に対向する定着部材として円筒状の定着ベルト(定着フィルム)を用いることもできる。この場合、定着ベルトを円筒状に保持する保持部材を、定着ベルトの内周面の一部に当接させることになる。さらに、定着ベルトと加圧ローラ30との適正な定着ニップを形成するために、定着ベルトの内周面であって加圧ローラ30に対向する位置に加圧部材を当接させることになる。このような定着装置20に対しても、発熱部材としての定着ベルトにおける発熱層の表裏面を挟むようにコイル部25を配設するとともに、定着ベルトにおける発熱層の厚さを最適化することで、本実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
実施の形態3.
図8にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図8は実施の形態3における定着装置を示す断面図であって、前記実施の形態1の図2に相当する図である。本実施の形態3の定着装置は、誘導加熱部24の位置が、前記実施の形態1のものとは相違する。
本実施の形態3における定着装置20は、主として、定着部材としての定着ベルト22、発熱部材としての発熱板28、誘導加熱部24、支持ローラ23、加圧ローラ30等で構成される。
発熱板28は、前記実施の形態1における支持ローラ23と同様に、キューリー点が定着可能温度以上であって300℃以下となる整磁合金によって形成されるとともに、その厚さが上式(1)の関係を満足するように形成されている。発熱板28は、定着ベルト22の内周面に、所定の圧力で当接している。
図8に示すように、本実施の形態3の誘導加熱部24は、支持ローラ23から定着補助ローラ21に至る定着ベルト22及び発熱板28の外周面及び内周面に対向する位置に配設されたループ状のコイル部25である。すなわち、コイル部25は、定着ベルト22及び発熱板28を挟さむように配設されている。
このように構成された定着装置20において、ループ状のコイル部25に所望の周波数の交番電流が供給されることで、定着ベルト22及び発熱板28を挟むコイル部25の間に磁力線が形成されて、電磁誘導により発熱板28が誘導加熱される。そして、発熱板28の発熱によって、定着ベルト22が加熱される。
本実施の形態3においても、発熱板28(発熱層)の温度がキューリー点を超えた場合には、前記実施の形態1と同様に、発熱板28の発熱が効率よく制限されることになる。
以上説明したように、本実施の形態3では、電磁誘導加熱方式の定着装置20において、発熱部材としての発熱板28の表裏面を挟むようにコイル部25を配設するとともに、発熱部材としての発熱板28における発熱層の厚さ(発熱板28自体の厚さである。)を最適化している。これにより、発熱板28における発熱効率と自己温度制御性とが高まり、小サイズの記録媒体を連続的に定着した場合や装置が突発的に駆動停止した場合等であっても、発熱板28(又は定着ベルト22)の過昇温を確実に抑止することができる。
実験例.
図9〜図13にて、上記各実施の形態で述べた効果を確認するための実験例について説明する。
実験は、前記実施の形態1における定着装置20を用いて、支持ローラ23の厚さ(発熱層の厚さである。)を変更して、支持ローラ23の発熱量を計測したものである。
まず、支持ローラの厚さ(発熱層の厚さである。)が発熱効率に与える影響についての実験例を説明する。
図9及び図10は、周波数が30kHzの交番電流を一定電圧でコイル部25に印加したときの、支持ローラにおける厚さと発熱効率との関係を示すグラフである。図9は支持ローラ23の温度がキューリー点以下であるときのものであって、図10は支持ローラ23の温度がキューリー点以上であるときのものである。図9において、横軸は支持ローラ23の厚さを示し、縦軸は支持ローラ厚さが0.06mmのときの発熱量Q1を基準とした発熱量の増減率((Q−Q1)/Q1)を示す。図10において、横軸は支持ローラ23の厚さを示し、縦軸は支持ローラ厚さが0.06mmのときの発熱量Q2を基準とした発熱量の増減率((Q−Q2)/Q2)を示す。
図9から、支持ローラ23の温度がキュリー点以下であるときに、支持ローラ厚さが0.3mmよりも薄くなると、支持ローラ23の発熱効率が大きく低下することがわかる。また、図10から、支持ローラ23の温度がキュリー点以上であるときに、支持ローラ厚さが薄くなるに連れて、支持ローラの発熱効率が徐々に低下することがわかる。
本実験における定着装置の構成においては、支持ローラの温度がキュリー点以下であるときの発熱効率が重要となる。すなわち、周波数が30kHzの交番電流を用いて支持ローラを誘導加熱する場合、支持ローラの厚さは0.3mm以上にすることが好ましいことがわかる。
図11は、図9における横軸を支持ローラ厚さ/浸透深さ(D/δ)に置換したものである。すなわち、図11は、支持ローラの温度がキューリー点以下であるときの、支持ローラ厚さ/浸透深さと発熱効率との関係を示すグラフである。さらに、図11では、周波数が30kHzの交番電流を用いたときの実験結果(グラフS1である。)に加えて、周波数が70kHzの交番電流を用いたときの実験結果(グラフS2である。)を示している。
図11から、交番電流の周波数に関わらず、支持ローラ厚さが浸透深さの3倍より小さくなったとき(D<3×δ)、支持ローラの発熱効率が低下してしまうことがわかる。なお、支持ローラ厚さが浸透深さの3倍以上である場合と同等の発熱量を得るために、コイル部25に一層高い電圧をかける方策も考えられるが、その場合には交番電流を発生させる高周波電源部が大型化してコストが高くなってしまう。
これらのことから、発熱層の温度がキューリー点以下であるときの交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して3倍以上の厚さ(D≧3×δ)となるように、発熱層を形成することで、効率の良い誘導加熱定着をおこなうことができることがわかる。
次に、支持ローラの厚さ(発熱層の厚さである。)が自己温度制御能力に与える影響についての実験例を説明する。
図12は、支持ローラの温度がキューリー点以下からキューリー点以上に変化したときの、支持ローラの発熱量の変化率(発熱低下率)を示したものである。図12において、横軸は支持ローラ厚さを示し、縦軸は発熱低下率を示す。ここで、発熱低下率Mは、支持ローラの温度がキューリー点以下であるときの発熱量をQ1として、支持ローラの温度がキューリー点以上であるときの発熱量をQ2としたときに、
(Q2−Q1)/Q1 …式(3)
で求まる。したがって、発熱低下率の負(−)の値が大きいほど自己温度制御能力が大きいことになる。
図12から、支持ローラ厚さが薄くなるほど、支持ローラの自己温度制御能力が高くなることがわかる。これは、先に図6で説明したように、発熱層の温度がキュリー点以上になったとき、発熱層に流れる渦電流A1、A2が相殺されることによるものである。すなわち、支持ローラ厚さが薄くなるにつれて、渦電流A1、A2の相殺の度合いが大きくなって、自己温度制御能力が高くなる。
したがって、発熱層の厚さを厚くしすぎると、自己温度制御能力が低下して、小サイズの記録媒体を連続的に定着した場合や装置が突発的に駆動停止した場合等に、支持ローラの過昇温を抑止できなくなってしまう。
そこで、支持ローラの厚さを変更して、定着ベルト表面が定着可能な温度に達すまでに要した立ち上げ時間と、小サイズの記録媒体を連続的に定着した後に大サイズの記録媒体を定着したときのホットオフセットの発生度と、を実験により確認した。図13は、その実験結果を示すものである。図13中の「ホットオフセット発生度」における、「○」はホットオフセットの発生がない状態を示し、「△」は許容できる程度の微細なホットオフセットの発生がある状態を示し、「×」は許容できない程度のホットオフセットの発生がある状態を示す。なお、コイル部に印加する交番電流の周波数は30kHzとした。また、支持ローラの温度がキュリー点以下であるときの支持ローラの発熱量が等しくなるように、電圧を調整して実験をおこなった。
図13から、支持ローラ厚さが1.0mm以下であれば、自己温度制御性が確保されて過昇温が抑止され、ホットオフセットの発生も軽減できることがわかる。
本実験における定着装置の構成においては、周波数が30kHzの交番電流を用いて支持ローラを誘導加熱する場合、支持ローラの厚さは1.0mm以下にすることが好ましいことがわかる。
これを、交番電流の周波数の依存性をなくすため、支持ローラの温度がキューリー点以下であるときの支持ローラ厚さ/浸透深さとの関係で表すと、支持ローラ厚さが浸透深さの17倍以下なったとき(D≦17×δ)、支持ローラの自己温度制御性が高まることがわかる。
ここで、図13から支持ローラ厚さが小さくなるに連れて定着装置の立ち上げ時間が短くなるのがわかる。これは、支持ローラ厚さが小さくなることによって、支持ローラの熱容量も小さくなるからである。
なお、日本国では省エネ法に基づき、複写機等の画像形成装置の立ち上げ時間が30秒以下であれば、使用者がプリントをおこなわない待機時に、定着部材の温度を使用可能温度よりやや低い予熱温度に保つ必要がないとされている。
前記各実施の形態では、発熱層の厚さを0.5mmに設定しているために、立ち上げ時間を30秒以下とすることができて、上述の予熱温度の設定が不要になる。したがって、装置の省エネルギー化がさらに達成されることになる。
また、浸透深さが小さければ小さいほど、発熱層の厚さを薄くすることができるため、立ち上げ時間も小さくできることができる。具体的に、交番電流の周波数が30kHzのときに浸透深さが0.15mm以下となる金属材料を用いて発熱層を形成することで、発熱部材の発熱効率と自己温度制御性とが充分に担保されて、立ち上げ時間が短くて省エネルギー化も充分に達成することができる。
以上説明したように、発熱部材における発熱層の厚さDを、発熱層の温度がキューリー点以下であるときの浸透深さδに対して、3×δ≦D≦17×δなる関係が成立するように構成することで、発熱部材の発熱効率と自己温度制御性とが確実に向上することを実験的にも確認できた。
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、上記各実施の形態の中で示唆した以外にも、上記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。 図1の画像形成装置における定着装置を示す断面図である。 図2の定着装置におけるコイル部の近傍を示す斜視図である。 支持ローラに作用する磁力線を示す概略図である。 温度がキューリー点以下であるときに支持ローラに生じる渦電流の状態を示す概略図である。 温度がキューリー点以上であるときに支持ローラに生じる渦電流の状態を示す概略図である。 この発明の実施の形態2における画像形成装置の要部を示す構成図である。 この発明の実施の形態3における定着装置を示す断面図である。 温度がキューリー点以下であるときの、支持ローラの厚さと発熱効率との関係を示すグラフである。 温度がキューリー点以上であるときの、支持ローラの厚さと発熱効率との関係を示すグラフである。 温度がキューリー点以下であるときの、支持ローラ厚さ/浸透深さと発熱効率との関係を示すグラフである。 支持ローラ厚さと発熱低下率との関係を示すグラフである。 支持ローラ厚さと立ち上げ時間及びオフセット発生度との関係を示す表図である。
符号の説明
1 画像形成装置本体(装置本体)、 3 露光部、
4 プロセスカートリッジ(作像部)、 7 転写部、
8 転写ベルト、 9 バイアスローラ、
18、18BK、18Y、18M、18C 感光体ドラム、
20 定着装置、 21 定着補助ローラ、
22 定着ベルト(定着部材)、
23 支持ローラ(発熱部材、加熱部材)、 24 誘導加熱部、
25 コイル部、 28 発熱板(発熱部材、加熱部材)、 30 加圧ローラ、
31 定着ローラ(発熱部材、定着部材)、 31a 発熱層、
40 高周波電源部。

Claims (14)

  1. トナー像を記録媒体に定着する定着装置であって、
    磁束によって発熱する発熱層を具備する発熱部材と、
    前記発熱部材の表裏面を挟むように配設されるとともに、交番電流が印加されて前記磁束を発生させるコイル部と、を備え、
    前記発熱層は、その温度が当該発熱層が有するキューリー点以下であるときの前記交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して3倍以上の厚さとなるように形成されたことを特徴とする定着装置。
  2. 前記発熱層は、その温度が前記キューリー点以下であるときの前記交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して17倍以下の厚さとなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. トナー像を記録媒体に定着する定着装置であって、
    磁束によって発熱する発熱層を具備する発熱部材と、
    前記発熱部材の表裏面を挟むように配設されるとともに、交番電流が印加されて前記磁束を発生させるコイル部と、を備え、
    前記発熱層は、その温度が当該発熱層が有するキューリー点以下であるときの前記交番電流の周波数に対応した浸透深さに対して17倍以下の厚さとなるように形成されたことを特徴とする定着装置。
  4. 前記発熱層は、前記交番電流の周波数が30kHzのときに前記浸透深さが0.15mm以下となる金属材料からなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
  5. 前記発熱層は、ニッケル、鉄、クロムの合金からなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
  6. 前記コイル部は、前記発熱部材の前記表裏面を1回又は複数回挟むように離間して巻回されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置。
  7. 前記発熱部材は、トナー像を溶融する定着部材を加熱する加熱部材であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。
  8. 前記定着部材は、定着ベルトであって、
    前記加熱部材は、定着補助ローラとともに前記定着ベルトを張架する支持ローラであって、
    前記コイル部は、前記定着ベルトの外周面に対向するとともに、前記支持ローラの内周面に対向するように配設され、
    前記定着補助ローラは、搬送される記録媒体を加圧する加圧ローラに対して前記定着ベルトを介して当接するように配設されたことを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
  9. 前記発熱部材は、トナー像を溶融する定着部材であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。
  10. 前記定着部材は、定着ベルトであって、
    前記コイル部は、前記定着ベルトの外周面及び内周面に対向するように配設されたことを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
  11. 前記定着ベルトは、支持ローラと定着補助ローラとに張架され、
    前記定着補助ローラは、搬送される記録媒体を加圧する加圧ローラに対して前記定着ベルトを介して当接するように配設されたことを特徴とする請求項10に記載の定着装置。
  12. 前記コイル部は、前記支持ローラを介して前記定着ベルトの内周面に対向するように配設されたことを特徴とする請求項11に記載の定着装置。
  13. 前記定着部材は、搬送される記録媒体を加圧する加圧ローラに当接する定着ローラであって、
    前記コイル部は、前記定着ローラの外周面及び内周面に対向するように配設されたことを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
  14. 請求項1〜請求項13のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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