本発明は、前面の開口部を扉によって閉塞される貯蔵室を備えた冷蔵庫に関する。
冷蔵庫の前面の開口部は、内部に断熱材を有する扉によって閉塞され、また、扉の周縁部にはパッキン(ガスケット)を備えて庫内冷気の漏洩を抑えている。パッキンによって貯蔵室内は密閉されるが、このパッキン部分は断熱材によって断熱されるものではないため、パッキン部分を介して熱の侵入を許す場合があった。このとき、貯蔵室の開口周縁部に結露が生じたり、消費電力量の増加につながることになり得る。そこで、パッキン部分を介した熱侵入を防止するために、特許文献1のようにヒレ状パッキンを備えた構成が知られている。
このようなヒレ状パッキンを備えた従来の冷蔵庫について、図9及び図10を用いて説明する。図9は冷蔵庫の要部を示す斜視図である。冷蔵庫本体31には、上部に冷蔵室、中央に冷凍室32、下部に野菜室33が備えられている。冷蔵室は冷蔵室扉34によって前面開口部が閉塞されており、図には示していないが、扉側端に設けられたヒンジにより冷蔵庫本体31に対し、回動自在に枢軸されている。
冷凍室32は、引出し式の冷凍室扉35によって前面開口部が閉塞され、この冷凍室扉35の内板側に取り付けられた保持枠36を使って冷凍室容器37が保持される。また、冷凍室扉35は保持枠36が冷凍室32側に設けられたレール(図示せず)を摺動し、スムーズな引き出しを可能としている。野菜室33は野菜室扉38によって閉塞され、この野菜室扉38は冷凍室扉35と同様に引出し自在に設けられている。
図10は、ヒレ状パッキンを備えた従来の冷蔵庫の要部断面図である。冷凍室扉35を例に説明する。扉内板39の外周部には、土手部40が設けられている。冷蔵庫箱体側の仕切部41(又は内箱)は冷凍室32の外周面を構成しており、冷凍室32の開口面の周縁が冷凍室扉35に設けられた第1のパッキン42と当接している。これらの構成によって、仕切部41の開口面部分と土手部40との間は、冷凍室32内の冷気が、対流若しくは強制循環により流れる第1のパッキン42側へと流れることを抑制する狭小空間43となっている。
この狭小空間43からの熱漏洩をさらに抑制するために、ヒレ状パッキン44が設けられている。ヒレ状パッキン44は押出成形等によって作られ、硬質材の取付部45と軟質材のヒレ部46とを有している。これらの取付部45及びヒレ部46は押出材で押し出され同時に作られるものである。取付部45の形状は図に示す如くコの字状であり、先端部に爪部45aを備えている。取付部45が扉内板39の外周近くに設けられた土手部40に取り付けられ、内箱41側に延伸したヒレ部46によって熱漏洩を抑制している。
土手部40には、長手方向側に点在して設けられた突起40aが設けられており、爪部45aが突起40aに係止することでヒレ状パッキン44は冷凍室扉35に取り付けられる。
このように、軟質材よりなるヒレ部46が取付部45の側片より仕切部41の開口縁部側に延び、ヒレ部46の先端が仕切部41に当接、若しくはそれに近い形になるように取り付けられることで、土手部40と仕切部41との間にできる狭小空間43に生じる対流、若しくは冷気強制循環による冷気回り込みを阻止している。したがって、第1のパッキン42が冷却される、あるいは、冷凍室内が庫外の空気により暖められることが防止される。
すなわち、ヒレ状パッキン44によって庫外の熱が第1のパッキン42を通して冷凍室32側に入ることが防止され、これによって生ずる冷凍室32の開口近傍に生ずる結露等が抑制される。
しかしながら、上記のようなヒレ状パッキン取付構造においては、次のような課題が生じていた。まず第1に、土手部40に設けた突起40aにヒレ状パッキン44側の爪部45aを引掛けて係止させる構造としていたため、土手部40の厚みや突起40aの寸法のバラツキにより、ヒレ状パッキン44が冷蔵庫の使用時に抜け落ちる可能性があった。特に、突起40aが土手部40の長手方向に点在している場合には、ヒレ状パッキン44の引っ掛かり部分も少なく、抜け落ちやすい構成となっていた。ヒレ状パッキン44が抜け落ちると熱侵入量が大きくなってしまうことはもちろん、冷蔵庫の使用者は抜け落ちたヒレ状パッキン44をその都度取り付けなければならず、使い勝手の向上が求められる。
さらに説明するならば、突起40aは土手部40の成形の際に同時に作られるものである。そして、爪部45aはこの点在する突起に係止しているものであるから、ヒレ状パッキン44、特に取付部45、土手部40、突起40aの寸法に誤差があると、ヒレ状パッキン44が冷蔵庫使用時に土手部40より外れてしまい、この部分の寸法管理が重要になっていた。
扉内板39を製造する際には、図11に示すように、成型用の型60の上方側(図面右側)から加熱された内板材39’をかぶせ、型60の表面部に設けられた図示しない吸気孔から空気を吸い込み、型60の形状に内板材39’の形状を追従させている。内板材39’が冷却されて形状が固定された段階で、型60から内板材39’を取り外して、扉内板39が得られる。型60には土手部40、あるいは突起40aに相当する形状が施されており、土手部40と突起40aは同時に形成されるものである。
したがって、離型の際には、土手部40に設けた突起40aは、型60側の突起相当部分と引っ掛かってしまう。図11において、第1のパッキンの取付用の凹部を例にとって説明すると、図11の断面位置における型60の開口寸法T1に対し、凹部内の幅寸法T2の方が大きく、離型時には扉内板39のT2寸法部が、型60のT1寸法部に引っ掛かってしまうことになる。この事情は単純に離型する際には、土手部40の突起40aにおいても同様であり、突起40aを土手部40の長手方向に一連に設けると、離型が困難になるという課題があった。
また、図10に示したように、ヒレ状パッキン44取付用の土手部40を扉内板39に設ける関係上、冷凍室扉35の断熱壁を厚くすることが難しかった。換言すると、土手部40の高さ分だけ、冷凍室扉35の断熱壁厚は薄くなってしまっていた。例えば、図10に示すように、冷凍室扉35の断熱壁厚さTに高さdの土手部40を形成するため、この高さdの分だけ断熱壁厚が薄くなってしまい、省エネ性の向上が図りにくい構造となっていた。すなわち、土手部40を形成する関係上、断熱壁厚さはT+dとできず、土手部40の高さdを減じたTとなってしまっていたということである。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、使い勝手の向上及び省エネ性の向上を図った冷蔵庫を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、前面の開口部を引出し式の扉によって閉塞される貯蔵室と、前記扉の内板の周縁部に設けられ貯蔵室内を閉塞するための第1のパッキンと、この第1のパッキンよりも前記扉の内周側に設けられ前記貯蔵室と前記第1のパッキンとの間に位置するヒレ状パッキンとを有する冷蔵庫において、前記内板に溝部が設けられ、前記ヒレ状パッキンが前記溝部に係合して取り付けられる構成とした。
また、上記の構成のものにおいて、前記溝部は、開口寸法の小さい狭小部を有し、前記ヒレ状パッキンは、前記溝部内に挿入されて係止される係止部と前記貯蔵室の外周面と当接又は近接するヒレ部とを有し、
前記係止部の先端側には、前記狭小部よりも大きな寸法を有する広がり部が設けられ、前記係止部は前記扉よりも軟質とし、前記ヒレ状パッキンは前記係止部が弾性変形することで前記溝部に取り付けられ、前記ヒレ部は前記係止部よりも軟質とした。
また、前記狭小部を前記溝部の長手方向に一連に設けられたものとした。
また、前記内板には前記貯蔵室側に突出する突出部が設けられ、この突出部の突出面となる平面部に前記溝部を設ける構成とした。
また、前記ヒレ状パッキンは前記係止部と前記ヒレ部とを支持するとともに平面形状部を有する支持部を有し、この支持部の前記平面形状部を前記突出部の突出面となる平面部と重ねて配設することによって、前記係止部が前記溝部に係止される構成とした。
また、前記内板には前記貯蔵室側に突出する突出部が設けられ、この突出部の側面となる立上り面に前記溝部を設ける構成とした。
また、前記内板は樹脂材料で構成されるとともに、前記第1のパッキンが前記内板の周縁部に設けられる凹部に取り付けられる構成とした。
また、前記溝部を前記内板と別部材で構成されるものとした。
本発明によれば、使い勝手の向上及び省エネ性の向上を図った冷蔵庫を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は冷蔵庫の要部断面図であり、図2は冷凍室扉を冷凍室側より見た正面図である。本実施例の冷蔵庫は、冷蔵庫本体1に、貯蔵室として、上から冷蔵室2、冷凍室3、野菜室4が配置されている。これらの各室2、3、4の前面開口部は、それぞれ冷蔵室扉5、冷凍室扉6、野菜室扉7によって閉塞される。
冷蔵室扉5は、図には示していないが、ヒンジ等を伴って回動自在に取り付けられ、冷凍室扉6及び野菜室扉7は引出し式の扉として容器とともに引き出される構成となっている。詳述すると、冷凍室扉6には容器8が取付枠9によって取り付けられており、冷凍室扉6が引き出されると、取付枠9側に設けられたローラ(図示せず)が、冷凍室3側に設けられたレール(図示せず)を摺動し、容器8とともに引き出される構成としている。
冷凍室3の背部には冷却室10があり、冷却室10内に冷却器11が設置されている。冷却器11は、図には示していないが、圧縮機、凝縮器、キャピラリーチューブ等を伴って冷凍サイクルを構成している。冷却器11を通過する空気と熱交換することによって冷凍室3内は冷却される。冷却器11と熱交換した冷気は、送風機12によって冷凍室3等に供給され、強制的に冷気を循環させる構造となっている。
冷凍室3の後面には冷却室10の冷気が吹き出される冷気吹出口14が設けられている。したがって、冷却器11と熱交換した空気が送風機12によって冷気吹出口14を介して冷凍室3へと導かれて容器8内を冷却する。冷凍室3内を回った後は、冷気吸込口15により冷却室10へと戻り、冷却器11で再度冷却された冷気が再び冷凍室3へと供給される。なお、冷気吸込口15は冷凍室3の後面に設けられているが、冷気吹出口14より下側に配置されるものであれば必ずしもこの位置である必要はないが、冷気吹出口14を冷却器11よりも上方とし、冷気吸込口15を冷却器11よりも下方とすることが冷気循環経路上有利である。なお、冷却運転時に冷却器11に付着した霜は、冷却器11の下方に配設された除霜用ヒータ13によって除去される。
冷凍室扉6の周縁には第1のパッキン16が取り付けられている。この第1のパッキン16は冷凍室扉6と冷凍室3の開口前縁1aとの間を密封、シールし、冷凍室3を閉塞している。冷凍室扉6は扉内板6aと扉外板とを備えて構成されており、扉内板6aと扉外板との間には断熱材を有し、冷凍室3内を断熱空間としている。扉内板6aは冷凍室3側に突出して断熱壁厚を大きくしており、この突出部分の寸法分だけ断熱性を高めた構造としている。
扉内板6aの突出部分の外周位置にはヒレ状パッキン17が取り付けられる。ヒレ状パッキン17は、扉内板6aと冷凍室3の開口前縁1aとが作る狭小空間18に冷凍室3内を循環する冷気が回り込むこと、あるいは、送風機12の停止時には、冷凍室3内の冷気が第1のパッキン16側に流れること、を防止している。
ヒレ状パッキン17は、図2に示すように、扉内板6aの外周縁であって扉内板6aから冷凍室3側へと突出する平面部6cに設けられている。すなわち、ヒレ状パッキン17は、第1のパッキン16よりも冷凍室扉6の内周側に設けられており、冷凍室3と第1のパッキン16との間に位置するように取り付けられる。
図3は冷凍室の開口前縁部の近傍を表す断面図であり、ヒレ状パッキン17の形状及び扉内板6aへの取付構造を示す図である。冷凍室扉6が閉じられた状態では、冷凍室の前縁部1aに第1のパッキン16が当接して冷凍室3が密閉される。ヒレ状パッキン17は狭小空間18における冷気の回り込みを防止するものであり、第1のパッキン16部分からの熱侵入(冷気漏洩)を抑制するものである。
ヒレ状パッキン17は支持部17a、係止部17b、軟質材のヒレ部17cを備えた構成としている。ヒレ部17cが狭小空間18における冷気の回り込みを防止する部分であり、扉内板6aに取り付けられた状態においては、ヒレ部17cは支持部17aから、冷凍室3の下面を形成する仕切部へと延伸している。
すなわち、ヒレ部17cは冷凍室3内の冷気が狭小空間18を通り、第1のパッキン16側に行くのを防止するために、ヒレ部17cの先端が、冷凍室開口前縁1aから狭小空間18を挟んだ冷凍室3の下面部分(又は側面部分)に当接、若しくは接近し、狭小空間18を通しての熱の出入りを遮断する。この構成によって、冷凍室3側から第1のパッキン16側へ、または、第1のパッキン16側から冷凍室3側へと冷気が漏洩するのを抑制することができる。ヒレ部17cは、例えば2条のヒレを仕切部と当接させ、狭小空間18内に空気断熱層を形成する空間が形成されるものとし、冷気漏洩の抑制効果を高めている。
扉内板6aの冷凍室3側への突出部の面にはヒレ状パッキン17の取付用の溝19が設けられている。この溝19は扉内板6aから断熱材側に窪ませて形成されている。したがって、溝19の開口部が扉内板6aの平面部6cとほぼ同一面上にあり、冷凍室扉6aの断熱壁厚は充分に確保される。
溝19は、溝の奥底部よりも開口寸法の小さい狭小部19bを有している。溝19と係止部17bとの係合関係は、溝19側に設けられた狭小部19bに係止部17bの広がり部(図5に符号17dとして図示)に係止することによって係合し、ヒレ状パッキン17が扉内板6に取り付けられる。
上記のヒレ状パッキン17を取り付ける扉内板6aの形成工程の一例について、図4を用いて説明する。図4に示すように、加熱された内板材6a’を成型用の型50に上方側(図面の右側)からかぶせて、型50の表面部に設けられた図示しない吸気孔から空気を吸い込むことで、型50の形状に内板材6a’の形状を追従させる。
その後、内板材6a’が冷却され、扉内板の形状が固定された段階で、型50から内板材6a’を取り外して、扉内板6aが得られる。型50には溝19に相当する形状が施されており、狭小部19bは溝19と同時に形成されるものである。なお、本実施例では、第1のパッキン16の取付用凹部も扉内板6aに設けているため、この取付用凹部も同時に形成される。なお、この第1のパッキン16の取付用凹部も引掛け構造によって取り付けられる点では、ヒレ状パッキン17と共通している。
離型の際には、そのまま離型しようとしても溝19の狭小部19bや第1のパッキン16の取付用凹部の開口部が引っ掛かってしまう。しかしながら、本実施例では、第1のパッキン16の取付用凹部及びヒレ状パッキン17の取付用の溝19の両者を、ともに凹み形状としていることから、凹み内の空間部分が、離型の際に扉内板6aの変形のための空間となる。したがって、矢印A及び矢印Bのように扉内板6aを変形させることによって離型も容易に行うことができる。このため、扉内板6aには樹脂材料のような可撓性を有する材料を用いることが望ましい。
扉内板6aに第1のパッキン16の取付用凹部及びヒレ状パッキン17の取付用の溝19を設け、これらをいずれも凹み形状としたことによって、離型が容易となるため、狭小部19bを溝19の長手方向に点在させる必要はなく、長手方向に一連の狭小部を設けることが可能となる。したがって、従来のように使用時にヒレ状パッキン17が外れることを抑止することができる。
すなわち、扉内板6aには、冷凍室3側に突出する平面部6c等が設けられているが、このような凸形状部分には離型の際に引っ掛かる部分を設けないようにすることによって、製造効率の向上をも併せて図ることが可能な構成となっている。
このように本実施例では、溝19は、扉内板6aの真空成形(あるいは射出成形)時に、扉内板6aと一緒に作られるものとしており、溝19、狭小部19bが連続して形成可能であるため、ヒレ状パッキン17の係止部17bとは連続して係止関係を構成することができる。このことにより、たとえ部分的に寸法のバラツキが構成部品にあったとしても、ヒレ状パッキン17が溝19より抜け出してしまうことはない。
また、扉内板6aとヒレ状パッキン17の係止位置が溝19の内部に位置することによって、係止を外すような衝撃が直接加わることを防止している。さらには、溝19の開口部が扉内板6aの平面部6cとほぼ同一面上とし、支持部17aが平面部6cに重なるような平面形状としたことによって、扉内板6aと容器8との間に収納物等が入り込み、扉内板6aの平面部6cに沿って落下したとしても、土手部等の凸形状ではないために、落下物が衝突することはなく、これによってヒレ状パッキン17が外れることはない。
さらには、容器8と扉内板6aとの間から、土手部のような凸形状部を省くことができるため、容器8と扉内板6aとの間を流れる冷気の障害となることがなく、冷気循環がスムーズになり、また、この部分を流れる冷気が第1のパッキン16を介して漏洩することも抑制できるため、相乗的に省エネ性の向上が図れる。
次にヒレ状パッキン17について図5を用いて説明する。図5は本実施例のヒレ状パッキン17の斜視図である。このヒレ状パッキン17は押出成形によって作られる。ヒレ部17cは軟質であり、支持部17aと係止部17bはヒレ部17cよりも硬質となるように押出成形で同時に作られるものである。ヒレ部17cは、先端部の厚さを薄くし、冷凍室の内箱部分と当接しても容易に変形し、寸法的なバラツキがあっても扉の開閉に影響を与えることはない。
支持部17aは平面形状部を有し、この平面形状部が扉内板6aの平面部6cと重なるように配置される。この支持部17aから係止部17bが延伸して、係止部17bの先端部に広がり部17dを備え、溝19の狭小部19bと係止する構造となっている。すなわち、係止部17bはヒレ部17cよりも硬質としているが、扉内板6aに取り付ける際においては、狭小部19bの開口寸法にまで広がり部17dの寸法が小さくなる程度に撓むことが必要である。したがって、取付性を考慮すると、係止部17bは、扉外板と扉内板6aとの間に断熱材が充填された状態における扉内板よりも軟質とすることが望ましい。
図6(a)は本実施例のヒレ状パッキン17が取り付けられた状態を示す図であり、冷凍室扉6を冷凍室3側より見た正面図である。このように、冷凍室扉6の内側面にヒレ状パッキン17をコの字状に配設することによって、冷凍室3の開口周縁部からの熱侵入(冷気漏洩)を抑制することができる。冷凍室扉6の下側は特に冷気が逃げやすいため、下辺部を連続的に配設し、側辺部については、容器8の取付枠9の取付位置との関係を考慮し、図2のように側辺部の下側にのみ配設するようにしてもよい。
いずれの場合においても、側辺部に取り付けられるヒレ状パッキンと下辺部に取り付けられるヒレ状パッキンとの間に隙間があると、その部分から冷気が逃げやすい。そこで、本実施例では、ヒレ状パッキン17を押出成形によって一連に形成している。この一連に形成されたヒレ状パッキンに対して45度のVカット溝20bを入れ、図6(b)に示すようにこの部分で折り曲げて、コの字状とし、冷凍室扉6の両側面の下方からの冷気の漏洩を抑制している。
図7は、上記の実施例と異なる実施例を示したものであり、冷凍室の開口前縁部の近傍を表す断面図である。上記の実施例との相違は、ヒレ状パッキン取付用の溝として、扉内板6aとは別部材の溝部材20を備えた点にあり、他の部分は特に説明した部分を除いて上記の実施例と同一である。なお、上記の実施例と同一部材に関しては、同一符号を付して説明を省略する。
この実施例では、扉内板6aとは別に作った押出枠からなる溝部材20でヒレ状パッキン取付用溝20aを準備している。溝部材20は扉内板6aの冷凍室側への突出面に設けられている。
図7において、押出枠で作られた取付用の溝部材20は樹脂成形品であり、例えば一本の帯状枠に45度のVカット溝を入れ、口の字状またはコの字状に折り曲げられ、扉内板6aが作る段部6bに巻き付けられている。
このような押出枠からなる溝部材20と扉内板6aとの固着には、2面テープ、接着剤、ネジ、ブッシュ等が用いられる。または、扉内板6aにウレタンフォーム等の断熱材連通孔を設けて、ウレタンフォームの接着力を利用してもよい。
溝部材20を扉内板6aに取り付けることにより扉内板6aの成形が容易化できるだけではなく、ヒレ状パッキン17の係止部17bとの係止に関し、係止部17bの全長にわたって係止関係を構成することができる。
すなわち、扉内板6aの成形と同時にヒレ状パッキン17の取付用溝を作ろうとすると、図4にも示したように、狭小部19bが位置するため、型50の構造が複雑となってしまう。そして、離型の際には、狭小部19bが型50と係止関係を構成してしまい、離型が難しくなる。このとき、離型に際して、扉内板材の変形に頼り、いわゆる無理抜き法によって離型を行うと、塑性変形が生じてしまう場合がある。この場合、樹脂の変形に頼って型を無理に抜くために、アンダーカットとなる部分の狭小部19bの引っ掛け寸法が小さくなってしまう。このため、これらのバラツキを含めた寸法管理を厳重に行う必要があり、生産性の面では不利となっていた。
先の実施例では、ヒレ状パッキン17の取付構造を、溝19という凹形状によって構成している。この場合は、可撓性を有する樹脂材料の弾性変形が利用できるため、離型の際の不都合が回避されている。しかし、製造上の歩留まりのさらなる改善、あるいは、狭小部19bの寸法管理の徹底による使い勝手向上を図ることを目的として、この実施例では、別部品の溝部材20を用いてヒレ状パッキンの取付用溝20aを構成した。このように溝部材20を用いることによって、必要寸法の係止関係が、バラツキを考慮しても十分とることができる。
これにより、使用中にヒレ状パッキン17が脱落することを、ほぼ全く無くすことができる。また、この実施例では、扉内板の外周4辺にヒレ状パッキン17を取り付けられる構造が容易に実現できるので、狭小空間からの熱漏洩阻止を一段と向上することが可能である。
また、この実施例も冷凍室扉6の断熱壁厚確保を阻害しないため、従来の構成に比較して、十分な断熱壁厚が確保でき、省エネ性の向上も図れる。
図8は上記の実施例とさらに異なる例を示したものであり、冷凍室の開口前縁部の近傍を表す断面図である。上記の実施例との違いはヒレ状パッキン取付用の溝を、扉内板6aの冷凍室側への突出面の立上り面に設けた点である。他の部分は特に説明した部分を除いて上記の実施例と同一である。上記の実施例と同一部材に関しては、同一符号を付して説明を省略する。
扉内板6aの突出面の立上り面にはヒレ状パッキン17の取付用の溝21が設けられている。このように、冷凍室側への突出面側部(突出面の外周縁部)に溝21を設けることで、ヒレ部17cが当接する冷凍室3の壁面と対向する位置にヒレ状パッキン17が位置することにより、上記の実施例と比較して支持部17aを大きくすることなく、小さなヒレ状パッキンを用いることができる。
特に、冷凍室3の側面に位置するヒレ状パッキン(つまり、扉内板6aの両側辺部に取り付けられるヒレ状パッキン)の場合は、ヒレ状パッキン17を取り付ける際に、取付枠9の取付位置との関係を考慮する必要がないため、構成上有利といえる。また、この実施例においても、上記の実施例と同様に断熱壁厚T+αを確保することができるように溝21が形成されている。なお、図8は、冷凍室3の側面に位置するヒレ状パッキンを示したもので、冷蔵庫の横断面における要部を示す図であるが、冷凍室3の下面側であっても同様に構成することができることはいうまでもない。
この位置に溝21を形成することは、型の構造上は不利となるが、連続したアンダーカットとなる狭小部19bを扉内板と一体に形成することができる。したがって、ヒレ状パッキン17を溝21と連続して係止させることができる。
以上、本発明の各実施例によれば、冷凍サイクルが運転され、冷凍室3の冷却時、送風機12によって冷凍室3に供給される冷気が、狭小空間18に回り込もうとしても、冷気はヒレ状パッキン17により遮断、若しくは狭小空間18の間口が狭められていることにより、第1のパッキン16位置には到達若しくは近接しない構成とすることができる。
また、冷蔵庫外の室内温度が第1のパッキン16を通して、狭小空間18側に入ろうとしても、ヒレ状パッキン17によって阻止され、冷凍室3側にまで侵入することを抑止することができる。したがって、断熱効果が向上する。
また、ヒレ部17cを保持する支持部17aの係止部17bを、扉内板6a側に設けたヒレ状パッキン取付用の溝19、20、21に係止部17bの有する弾性を利用して挿入係止させることができる。また、溝19、20、21を扉内板6aの冷凍室3側への突出面に形成するように構成したので、扉内板6aに取り付けられていたヒレ状パッキン17が冷蔵庫使用時、扉内板6aより抜け落ちることがない。特に、支持部17aを突出面の平面部6cに重ねるように取り付ける構成としているため、収納物の落下等による衝撃を受けにくい構造とすることができる。
また、ヒレ状パッキン17の取付けのために、凸形状(土手部)を作る必要がないので、断熱壁厚を十分に確保できるだけではなく、冷気の流れの阻害になることもなく、省エネ化が図れる。
また、扉内板6a側に形成されるヒレ状パッキン取付用の溝19、21を扉内板6aと一体に形成したものにおいては、特別な別部品を用いることなく、ヒレ状パッキン17を取り付けることができ、生産性の向上に寄与している。または、扉内板6a側に設けられるヒレ状パッキン取付用の溝を押出枠として、扉内板6aとは別体に形成した溝部材20を用いれば、複雑な溝形状を作ることができ、ヒレ状パッキン17の取付を確実なものとでき、冷蔵庫の使用時に抜け落ちることのない構造が実現できる。
また、扉内板6a側に形成される溝21を扉内板6aの冷凍室3側への突出面の側部に設けると、ヒレ状パッキン17の支持部17aを小さくすることができる。加えて、冷凍室扉6の開閉時にヒレ部17cと冷凍室3の外周面との間の接触の方向とヒレ状パッキン17の着脱方向とが異なる構造となる。このとき、溝21の狭小部19bが溝奥側の拡大部21aよりも寸法が小さいため、一般の使用態様においては、係止部17bが溝21から脱落する方向に力が付与されることはなく、係止部17bが溝21から抜け出ることをさらに抑止することができる。
また、係止部17bを、先端に広がり部17dを有する脚形状とするとともに、その脚は溝が持つ狭小部19bに広がり部17dが係止し、ヒレ状パッキン17が連続して作られた溝に取り付けられて固定されため、ヒレ状パッキン17の取付けは、支持部17aを溝に押し付けるだけでよく、組み込まれたヒレ状パッキン17は全長にわたって係止部17bが取付用溝に係止していることにより、冷蔵庫の使用時にヒレ状パッキン17が抜けることがなく、使い勝手の向上が図れる。
したがって、使い勝手と省エネ性の向上に寄与する構造を有する冷蔵庫を提供することができる。
なお、上記の各実施例では、外気との温度差の大きい冷凍室3について説明したが、引出し式の扉を有する野菜室4でも同様な構成を採用することで、使い勝手と省エネ性の向上に寄与する構造とすることができる。
冷蔵庫の要部断面図。
冷凍室扉を冷凍室側より見た正面図。
冷凍室の開口前縁部の近傍を表す断面図。
扉内板の形成工程の一例を示す図。
ヒレ状パッキンの斜視図。
ヒレ状パッキンが取り付けられた状態を示す図。
他の実施例における冷凍室の開口前縁部の近傍を表す断面図。
さらに他の実施例における冷凍室の開口前縁部の近傍を表す断面図。
冷蔵庫の要部を示す斜視図。
従来のヒレ状パッキンを備えた冷蔵庫の要部断面図。
従来の扉内板の形成工程の一例を示す図。
符号の説明
1…冷蔵庫本体、1a…前縁部、3…冷凍室、6…冷凍室扉、6a…扉内板、6b…段部、6c…平面部、8…容器、9…取付枠、16…第1のパッキン、17…ヒレ状パッキン、17a…支持部、17b…係止部、17c…ヒレ部、17d…広がり部、18…狭小空間、19…溝、19b…狭小部、20…溝部材、20a…溝、21…溝。