JP2007044041A - Scrapperタンパク質を利用した医薬候補物質のスクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規な医薬のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質、及びScrapperタンパク質を含むスクリーニング系に被検物質を添加し、Scrapperタンパク質によるユビキチン化標的タンパク質のユビキチン化の程度又はユビキチン化標的タンパク質のプロテアソームによる分解の程度を測定することによって、ユビキチン化の程度を変化させる化合物を得る。
【選択図】図6

Description

本発明は、ユビキチン−プロテアソーム経路の基質特異性を利用した、神経変性疾患、統合失調症などの疾患に対する医薬候補物質のスクリーニング方法に関する。
ユビキチンは、76アミノ酸からなる酵母からヒトに至るまで高度に保存されているタンパク質である。ユビキチンは、E1(ユビキチン活性化酵素)、E2(ユビキチン結合酵素)、E3(ユビキチンリガーゼ)の3種の酵素群の協調的反応により標的タンパク質に付加される。ユビキチン化されたタンパク質は、タンパク質分解酵素である26Sプロテアソームにより認識され分解される。
このうち、E3(ユビキチンリガーゼ)が、ユビキチン化される標的タンパク質の特異性に最も関与すると考えられている。最近、酵母などの研究を通じて、SCFと称される複合体から構成される新しいタイプのユビキチンリガーゼが見出された。このSCF複合体タイプのユビキチンリガーゼ(ユビキチンリガーゼSCF複合体)は、3量体、すなわち、Skp1と称されるサブユニットタンパク質、Cullin1と称されるサブユニットタンパク質、Roc1と称されるサブユニットタンパク質、及びF-boxと称されるサブユニットタンパク質から構成される複合酵素であり、各サブユニットタンパクの頭文字をとってSCFと名づけられている。このうち、Skp1タンパク質及びCul1タンパク質はどのような基質に対してもほぼ共通であるのに対し、F-boxタンパク質は、基質によって異なるタンパク質が働き、ユビキチンリガーゼの基質特異性はF-boxタンパク質によって決定されると考えられている。本明細書では、標的タンパク質がユビキチン化され、ユビキチン化された標的タンパク質がプロテアソームにより分解を受ける細胞内の経路を、「ユビキチン-プロテアソーム経路」と称することがある。また、ユビキチンープロテアソーム経路に関連する因子と標的タンパク質を試験管内で反応させて、標的タンパク質をユビキチン化しプロテアソームにより分解させる系を、「ユビキチン−プロテアソーム系」と称することがある。
ユビキチン-プロテアソーム経路の重要な機能の1つは、生体内で生じた異常蛋白質の除去、及び転写因子やシグナル伝達因子等の分解による量的調節等であり、この経路の異常は細胞機能の異常、さらには疾患にもつながることが報告されている。例えば、ユビキチン-プロテアソーム経路の異常と発癌や神経変性疾患との関連が示唆されている(非特許文献1又は2)。
このことから、ユビキチン-プロテアソーム経路を基質特異的に制御し、特定の基質の分解を抑制又は促進することができれば、疾患の治療などに有効であると考えられる。その場合、ユビキチン-プロテアソーム経路の基質特異的制御という観点からは、E3(ユビキチンリガーゼ)、特にその中のF-boxタンパク質の基質選択性を利用することが考えられる。しかしながら、高等生物におけるユビキチンリガーゼの種類や基質特異性に関してはまだ十分には解明されておらず、疾患に関与するタンパク質基質の分解に関与するF-boxタンパク質についても、ほとんど知られていなかった。
「ユビキチンと神経変性疾患」,「実験医学」,2000年,第18巻,p.1478−1482 「ユビキチン病の分子機構」,「蛋白質・核酸・酵素」,1999年,第44巻,p.776
本発明は、ユビキチン-プロテアソーム経路の基質特異性を利用した新規な医薬のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本研究者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、神経細胞において重要な役割を果たすKIFやニューロフィラメントなどの基質の、ユビキチン-プロテアソーム経路による選択的分解に関与するE3複合体のF-boxタンパク質として、Scrapperタンパク質を同定した。Scrapperタンパク質を介してこれらの基質の分解を制御することができれば、統合失調症や神経変性疾患などの疾患の治療に有効であるとの考えに基いて研究を重ね、Scrapperタンパク質とこれらの基質を用いた医薬候補物質の新規スクリーニング系を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、以下のとおりである。
(1)細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質、並びにScrapperタンパク質を含むスクリーニング系に被検物質を添加し、前記ユビキチン化標的タンパク質のユビキチン化の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
(2)前記スクリーニング系が、前記ユビキチン化標的タンパク質及びScrapperタンパク質を共発現する細胞又は該細胞の抽出液である、(1)のスクリーニング方法。
(3)前記スクリーニング系が、前記ユビキチン化標的タンパク質及びScrapperタンパク質を含むインビトロ系である、(1)のスクリーニング方法。
(4)前記スクリーニング系が、Scrapperタンパク質を発現する非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料である、(1)のスクリーニング方法。
(5)細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質、並びにScrapperタンパク質を共発現する細胞又は該細胞の抽出液に被検物質を添加し、前記ユビキチン化標的タンパク質のプロテアソームによる分解の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
(6)Scrapperタンパク質を発現する非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料に被検物質を添加し、該動物又は生体試料中の細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質のプロテアソームによる分解の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
(7)細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質、並びにScrapperタンパク質を含むスクリーニング系に被検物質を添加し、Scrapperタンパク質と前記ユビキチン化標的タンパク質との相互作用の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
(8)前記ユビキチン化標的タンパク質がKIFである、(1)〜(7)のいずれかのスクリーニング方法。
(9)前記ユビキチン化標的タンパク質がニューロフィラメントである、(1)〜(7)のいずれかのスクリーニング方法。
(10)前記ユビキチン化標的タンパク質がミオシンである、(1)〜(7)のいずれかのスクリーニング方法。
(11)前記ユビキチン化標的タンパク質がRIMである、(1)〜(7)のいずれかのスクリーニング方法。
(12)医薬候補物質が神経変性疾患、又は統合失調症の治療又は予防薬の候補物質である、(1)〜(11)のいずれかのスクリーニング方法。
(13)Scrapper遺伝子を発現させた神経細胞に被検物質を添加し、Scrapper遺伝子の発現量又は神経伝達物質の放出を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
(14)Scrapper遺伝子を発現する非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料に被検物質を添加し、Scrapper遺伝子の発現量又は神経伝達物質の放出を測定することを特
徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
本発明の方法によれば、統合失調症や神経変性疾患などの疾患の治療や予防に有用な医薬候補物質を効率的にスクリーニングすることが出来る。
本発明のスクリーニング方法は、細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質と、Scrapperタンパク質とを含むスクリーニング系に被検物質を添加し、該スクリーニング系において、該ユビキチン化標的タンパク質のユビキチン化の程度、該ユビキチン化標的タンパク質のプロテアソームによる分解の程度、又は該ユビキチン化標的タンパク質とScrapperタンパク質との相互作用の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法である。
ここでScrapperタンパク質とは、ユビキチンリガーゼE3のSCF複合体に含まれるF-boxタンパク質であり、上記ユビキチン化標的タンパク質と結合し、それらをユビキチン化するタンパク質を意味し、FB1タンパク質とも呼ばれている。Scrapperタンパク質として、具体的には、配列番号2(ヒト)又は4(マウス)のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。なお、本発明において用いることができるScrapperタンパク質は、上記ユビキチン化標的タンパク質と結合し、それらをユビキチン化することができるものである限り、他の生物由来のタンパク質でもよいし、上記アミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。なお、ここで数個とは、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個、さらに好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。
また、Scrapperタンパク質は必ずしも全長タンパク質を用いる必要はなく、上記性質を有する限り、その部分フラグメントを用いてもよい。
また、前記Scrapperタンパク質の量を確認するために、例えばタグタンパク質を付加してもよい。タグタンパク質としては、例えばFLAGタグ、Mycタグ、GFPタグ、EGFPタグ、YFPタグ等が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法において用いられる、Scrapperタンパク質の標的タンパク質は、細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれる。
Scrapperタンパク質の標的タンパク質となる細胞骨格タンパク質は、具体的にはモータータンパク質及び中間径フィラメントに分類される。モータータンパク質は、小胞の輸送などに関与する一連のタンパク質を意味するが、例えば、ミオシン、キネシン、ダイニンが挙げられ、この中ではキネシン又はミオシンが好ましい。キネシンには、キネシンスーパーファミリー(KIF)として多くのタンパク質が含まれるが、その中ではKIF1A、KIF1B、KIF5が特に好ましい。ここで、タンパク質名や遺伝子名におけるアルファベットは、アイソフォームを意味する。例えば、ヒトKIF1遺伝子は、KIF1A, Ba, Bbのアイソフォームを転写・発現する。アルファベットを記載しないものについては、アイソフォームが存在する場合、それらの集合を意味することがある。
以下、KIF1A、1B(a,b)、2、5Aについて、遺伝子の塩基配列及びタンパク質のアミノ酸配列を、GenBankのAccession番号で示す。ただし、これらのKIFは下記アミノ酸配列のタンパク質に限定されず、Scrapperタンパク質によってユビキチン化されるものである限り、他の生物由来のものや、これらの配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。また、部分フラグメントを用いてもよい。また、これらのタンパク質又は部分フラグメントに前記のタグタンパク質を付加したものでもよい。
塩基配列 アミノ酸配列
ヒト KIF1A NM#004321 NP#004312
ヒト KIF1Ba NM#183416 NP#904325
ヒト KIF1Bb NM#015074 NP#055889
マウス KIF1A NM#008440 NP#032466
マウス KIF1B NM#207682 NP#997565
マウス KIF2 NM#008442 NP#032468
ヒト KIF5A NM#004984 NP#004975
マウス KIF5A NM#008447 NP#032473
なお、ヒトKIF5Aについては、配列番号5(塩基配列)、6(アミノ酸配列)として、マウスKIF1Bについては、配列番号14(塩基配列)、15(アミノ酸配列)として、マウスKIF5Aについては、配列番号16(塩基配列)、17(アミノ酸配列)として配列表にも記載した。
ミオシンの中ではミオシンIIB及びミオシンVaが特に好ましい。
以下、ミオシンIIB 、IIA及びミオシンVaについて、遺伝子の塩基配列及びタンパク質のアミノ酸配列を、GenBankのAccession番号で示す。ただし、これらのミオシンは下記アミノ酸配列のタンパク質に限定されず、Scrapperタンパク質によってユビキチン化されるものである限り、他の生物由来のものや、これらの配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。また、部分フラグメントを用いてもよい。また、これらのタンパク質又は部分フラグメントに前記のタグタンパク質を付加したものでもよい。
塩基配列 アミノ酸配列
ヒト Myh10(Myosin IIB) NM#005964 NP#005955
ヒト Myh9(Myosin IIA) NM#002473 NP#002464
マウス Myosin Va NM#010864 NP#034994
なお、マウスミオシンVaについては、配列番号9(塩基配列)、10(アミノ酸配列)として配列表にも記載した。
中間径フィラメントとしては、ニューロフィラメント(Neurofilament;NF)、ケラチン、デスミン、グリア線維酸性蛋白質(GFAP)、ラミン、及びネスチンなどが挙げられるが、この中ではニューロフィラメントが好ましい。
ニューロフィラメントは、ニューロフィラメントH,M,Lの三量体からなり、以下、ニューロフィラメントH、M、Lについて、遺伝子の塩基配列及びタンパク質のアミノ酸配列を、GenBankのAccession番号で示す。ただし、これらのニューロフィラメントは下記アミノ酸配列のタンパク質に限定されず、Scrapperタンパク質によってユビキチン化されるものである限り、他の生物由来のものや、これらの配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。また、部分フラグメントを用いてもよい。また、これらのタンパク質又は部分フラグメントに前記のタグタンパク質を付加したものでもよい。
塩基配列 アミノ酸配列
ヒト NF-H NM#021076 NP#066554
ヒト NF-M NM#005382 NP#005373
ヒト NF-L NM#006158 NP#006149
なお、ヒトNF-Mについては、配列番号7(塩基配列)、8(アミノ酸配列)として配列表にも記載した。
KIF1Bは神経系に多く発現しており、モータータンパク質であると同時にシナプス関連タンパク質である。他にも、例えば、シナプス小胞のタンパク質であるRIM1、シナプトタグミン、Munc-13、シナプス膜タンパク質であるSNAP-25などのシナプス関連タンパク質がScrapperの標的分子である可能性が考えられる(R. S. Zucker, W. G. Regehr, Annu Rev
Physiol 64, 355-405 (2002)およびT. C. Sudhof, Annu Rev Neurosci 27, 509-47 (200
4))。
RIM1はアクティブ・ゾーンに豊富に存在するタンパク質で、アメリカのSudhof博士らによって1997年に発見された(Y. Wang, M. Okamoto, F. Schmitz, K. Hofmann, T. C.
Sudhof, Nature 388, 593-8 (Aug 7, 1997))。現在、いくつか見つかっているアクティブ・ゾーンタンパク質の中で、最も解析が進んでいるタンパク質である。RIM1の遺伝子を破壊したマウスの研究から、RIM1が学習や記憶の形成、また恐怖などの情動の発現において重要な働きをしていることが明らかになっている。
以下、RIM1について、遺伝子の塩基配列及びタンパク質のアミノ酸配列をGenBankのAccession番号で示す。ただし、これらのRIM1は下記アミノ酸配列のタンパク質に限定されず、Scrapperタンパク質によってユビキチン化されるものである限り、他の生物由来のものや、これらの配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。また、部分フラグメントを用いてもよい。また、これらのタンパク質又は部分フラグメントに前記のタグタンパク質を付加したものでもよい。

塩基配列 アミノ酸配列
ヒト RIM1 NM#014989 NP#055804
マウス RIM1 NM#001012625 NP#898839
なお、ヒトRIM1については、配列番号18(塩基配列)、19(アミノ酸配列)として配列表にも記載した。
KIFなどのモータータンパク質はシナプス小胞の輸送に関与していることが知られている(Curr Opin Neurobiol. 2004 Oct;14(5):564-73)。したがって、その分解を抑制することによりシナプス小胞の輸送活性が高まり、シナプス小胞内に含まれるグルタミン酸の放出が促進されると考えられる。
実際に、後述の実施例に示されるように、Scrapper遺伝子のノックアウトマウスでKIFの発現が上昇しており、シナプス小胞からのグルタミン酸の放出量も亢進している。これらのことから、Scrapperタンパク質とKIFなどのモータータンパク質を用いてスクリーニングを行うことにより統合失調症の治療や予防に有効な医薬が得られると考えられる。
また、KIF1bは脊髄のニューロン変性疾患であるCharcot-Marie-Tooth(CMT)の原因遺伝子であり、CMTの家系では遺伝子変異によりKIF1bが減少していることが報告されている(Cell, 105, 587-597, 2001)。したがって、Scrapperを介してKIF1bの分解を抑制することにより、CMTの治療薬が得られると考えられる。
一方、ニューロフィラメントなどの中間径フィラメントは筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患の治療のターゲットとして利用できる。すなわち、ALS患者では脳幹部に変性したニューロフィラメントが蓄積することが知られている(Annu Rev Neurosci.2004;27:723-49)。したがって、変性したニューロフィラメントを、Scrapperタンパク質を介したユビキチン化を促進させて分解することによって、ALSなどの神経変性疾患を治療することができると考えられる。
先に挙げたCMTやALS以外に、神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病などの遺伝性疾患であるポリグルタミン病などがある。これらは、それぞれ特有の症状(痴呆・運動失調・ふるえ・筋力低下など)を示す。また、神経変性疾患の共通の病態として異常な構造を持つタンパク質凝集体である封入体が神経細胞に蓄積することが突きとめられている。
細胞内で合成されたタンパク質はさまざまな酵素や身体を構成する成分となるが、個々の機能を果たすことのできるのは正しい立体構造をもつものだけである。設計図通り作られても約3分の1程度のタンパク質は正しい構造を持てずに作られてすぐに壊されており、この異常タンパク質を見分けて壊す役割を、ユビキチン−プロテアソーム経路の一群の細胞内のタンパク質が担っている。
最近、神経変性疾患で見られる多くの封入体には、ユビキチン−プロテアソーム経路のタンパク質が含まれていることがわかってきた。このことから、神経変性疾患の起こる原因のひとつは異常タンパク質を見分けて壊す働きが減衰しているためと考えられる。ユビキチン−プロテアソーム経路のタンパク質であるScrapperの働きを制御することにより、異常タンパク質がきちんと管理されて封入体が形成されない状態が保たれ、神経変性疾患の予防、治療に繋がると考えられる。
本発明のスクリーニング方法として具体的には、インビトロのユビキチン化測定系、細胞内でのユビキチン化測定系、細胞内での分解測定系、動物を用いた測定系、インビトロの相互作用系などによって、化合物を評価する方法が挙げられる。ただし、Scrapperタンパク質とユビキチン化標的タンパク質を用いるものである限りこれらの測定系には限定されない。
以下、測定系を具体的に挙げて説明する。
(I)in vitroのユビキチン化測定系
(I)-1 ユビキチンリガーゼ(Scrapper-Skp1-Cullin 1-Roc1の複合体)とターゲットタンパク質(KIFなど)を、ユビキチン存在下、ATP、E1、E2を加えて、インキュベート(例えば、37℃、30分)し、ターゲット分子のユビキチン化を観察する。その中に、被検物質を加えた場合と加えない場合について、ユビキチン化の程度を比較検討する。ユビキチン化の程度の検討方法としては、例えば、電気泳動を行い、ターゲット分子がユビキチン化により分子量の変化を起こしているかどうかを観察する方法が挙げられる。また、タンパク質の量が少ない場合には、分子量の変化をターゲット分子やユビキチンに対する抗体で検出する(ウエスタン解析する)ことも可能である。
なお、この系に加えるScrapper、Skp1、Cullin 1、Roc1、ターゲットタンパク質、E1、E2は遺伝子組み換えなどによって調製したタンパク質を用いることができる。遺伝子組み換えとしては、例えば、下記の遺伝子の全長又は一部の塩基配列を有するDNAを大腸菌や哺乳動物細胞などの宿主細胞内で発現可能なベクターに組み込んで、宿主細胞に導入し、発現したタンパク質を精製することによって得ることができる。ユビキチンは市販のものを用いてもよいし、遺伝子組み換えによって調製して用いてもよい。以下、この系に加えるタンパク質について、遺伝子の塩基配列及びタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号又はGenBankのAccession番号で示す。
塩基配列 アミノ酸配列
ヒト Scrapper 配列番号1 配列番号2
マウス Scrapper 配列番号3 配列番号4
ヒト Skp1 NM#170679 NP#733779
ヒト Cullin 1 NM#003592 NP#003583
ヒト Roc1 NM#005406 NP#005397
ヒト E1 NM#003334 NP#003325
ヒト E2 U39318 AAA91461
ユビキチン NM#021009 NP#066289
NEDD8 NM#006156 NP#006147
APPBP1 NM#003905 NP#003896
Uba3 NM#003968 NP#003959
UbcH12 NM#003969 NP#003960
(I)-2 上記の方法でターゲット分子がユビキチン化された場合に、プロテアソームを加えることで、さらにターゲット分子が減少するか(分解されるか)どうかを検討することが好ましい。検討方法としては、電気泳動を行い、ターゲットタンパクの量の変化を観察する方法が挙げられる。その際、タンパク質の量が少ない場合には、ターゲットタンパクの量の変化をターゲット分子に対する抗体で検出する(ウエスタン解析する)ことも可
能である。又は、RIや蛍光標識したターゲットタンパク質を用いて検出することも可能である。
プロテアソームとしては、例えば、精製されたプロテアソーム(MBL社製、#BB-E-350)のようにして調製したものを用いることができる。
(II)in vivoの分解測定系
(II)-1 Scrapperタンパク質とKIFなどのユビキチン化標的タンパク質を共発現する培養細胞に直接被検物質を加える、又は該細胞のライゼートに被検物質を加えて、ターゲットタンパクの量の変化を、被検物質を加えないものと比較検討する。この場合は、細胞がプロテアソームも含めて全てのコンポーネントを含有していると考えられるため、被検物質の標的タンパク質の分解への影響を評価することができる。解析は(I)-2と同様にして行うことができる。
ここで、用いる細胞はScrapper遺伝子を発現した細胞であればいかなる細胞でもよいが、Scrapper遺伝子を過剰発現した細胞が好ましい。Scrapper遺伝子を過剰発現させる場合、例えば、哺乳動物細胞で発現可能なベクターにScrapper遺伝子を組み込んで、哺乳動物細胞に遺伝子導入することができる。
(II)-2 (II)-1の方法において、さらにプロテアソーム阻害剤(例:MG132)を加え、プロテアソームをブロックした時の、ユビキチン化の程度を検出することもできる。解析方法は上記と同様の方法に加え、ユビキチンの抗体(ウエスタン解析)、標識したユビキチン(ELISA)を用いることが可能である。
(III)動物を用いた測定系
Scrapper遺伝子を発現する非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料を用い、被検物質を与えた場合と、被検物質を与えない場合とで、比較したい組織(神経組織など)を抽出して、ターゲットタンパクの量の変化を検討する。Scrapper遺伝子を過剰発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料を用いるのが好ましい。解析は(I)-2と同様にして行うことができる。生体試料としては、各種臓器、組織、細胞や、それらの抽出液、組織標本、培養細胞、血液や尿等の体液等が挙げられる。本発明の非ヒト動物は、例えば、脳神経系疾患等のモデルとして好適に用いることができるので、このような疾患の解析には、脳スライス標本、脳神経細胞等が特に好ましく用いられる。
なお、Scrapper遺伝子を過剰発現するトランスジェニック動物は実施例に記載したような方法によって作製することができる。
(IV)相互作用測定系
本発明のスクリーニング方法は、インビトロでScrapperタンパク質と標的タンパク質との相互作用を測定し、両者の相互作用を阻害または活性化する化合物を選択する方法であってもよい。インビトロでの相互作用測定系としては、Scrapperタンパク質と標的タンパク質を用いたプルダウンアッセイや表面プラズモン共鳴現象を利用した検出法などが挙げられる。プルダウンアッセイを行う場合は、Scrapperタンパク質と標的タンパク質とをインビトロでインキュベートし、一方のタンパク質に対する抗体、又はこのタンパク質が融合タンパク質の場合、融合するペプチドタグに対する抗体やアフィニティカラム等で複合体を回収したのち、該タンパク質に結合する他方のタンパク質を検出することにより、両タンパク質の相互作用を評価することができる。この系に被検物質を添加し、相互作用に影響を与える物質を選択することによってスクリーニングを行うことができる。この系では大腸菌や哺乳動物細胞において発現、精製したScrapperタンパク質や基質タンパク質を用いることができる。いずれかを放射性物質などで標識して用いてもよい。表面プラズモン共鳴現象を利用したインビトロの系は、例えば、BIAcore(登録商標)等のバイオセンサーを用いることによりを行うことができる。さらに、その他のスクリーニング系
として、蛍光によって検出する系を用いることもできる(Fluorescence Resonance Energy Transfer(FRET))。
また、細胞系でScrapperタンパク質と標的タンパク質との相互作用を測定することもできる。例えば、免疫沈降や2−ハイブリッド法などによって細胞系での相互作用を評価することができる。すなわち、Scrapperタンパク質と標的タンパク質とを発現する細胞を培養し、細胞を回収後、一方のタンパク質に対する抗体等で複合体を回収したのち、他方のタンパク質を、そのタンパク質に対する抗体等を用いて検出することにより、両者のタンパク質の相互作用を検出でき、また、該相互作用に与える被検物質の影響を評価することができる。また、2−ハイブリッド法は、例えば、「MATCHMARKER Two-Hybrid System」,「Mammalian MATCHMAKER Two-Hybrid Assay Kit」,「MATCHMAKER One-Hybrid
System」(いずれもクロンテック社製)、「HybriZAP Two-Hybrid Vector System」(ストラタジーン社製)などを使用して行うことができる。
また、ユビキチン化標的タンパク質はScrapperが存在するとプロテアソームによって分解を受けて、ユビキチン化標的タンパク質とScrapperとの相互作用が検出できなくなるが、後述の実施例5および14に示されるように、このプロテアソームによる分解を阻害する化合物が存在すると両者の相互作用が検出できるようになる。したがって、この系で両者の相互作用(複合体形成)を促進する化合物をスクリーニングすることもできる。
(V)Scrapper遺伝子の発現量や神経伝達物質の放出量を指標にする系
後述の実施例に示すように、Scrapper遺伝子を破壊して作製したノックアウトマウス(以下、これを「Scrapper遺伝子ノックアウトマウス」又は「Scrapperノックアウトマウス」と称することがある。また、ノックアウトを「KO」と称することがある)の神経細胞においてグルタミン酸の放出が亢進していることがわかった。逆に、後述の実施例に示すように、Scrapper遺伝子を過剰発現させた神経細胞において、グルタミン酸の放出が低下していることがわかった。このことから、Scrapper遺伝子は神経伝達物質の放出機構に関与していると考えられる。神経伝達物質にはアセチルコリンやアミノ酸、アミン、ペプチドなどが含まれるが、アミノ酸が好ましい。アミノ酸にはグルタミン酸、グリシン、GABAなどが含まれるが、グルタミン酸が好ましい。よって、Scrapper遺伝子の発現量を変化させる化合物は、統合失調症などの治療薬の候補物質となりうると考えられる。したがって、本発明のスクリーニング方法は、Scrapper遺伝子を発現する細胞に化合物を添加し、Scrapper遺伝子の発現量を変化させる化合物を選択する方法や、Scrapper遺伝子のプロモーターにレポーター遺伝子を連結させた遺伝子構築物を導入した細胞に化合物を添加し、レポーター遺伝子の発現を変化させる化合物を選択する方法、Scrapper遺伝子を発現する神経細胞、非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料に化合物を添加し、神経伝達物質の量を定量的に測定して化合物を選択する方法などであってもよい。
上記のようなスクリーニング系の1又は複数の系により、統合失調症治療薬、神経変性疾患治療薬などの中枢性疾患の治療薬など、医薬の候補化合物を得ることができる。
なお、スクリーニングに用いる被検物質の種類は特に制限されないが、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、ポリマー、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液等が挙げられ、これらの物質は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。また、複数の種類の化合物を含む化合物ライブラリーの状態で添加してもよい。被検物質の添加量については、投与対象、投与方法、被検物質の性質等に合わせて適宜選択することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下のものには限定されない。また、実施例においてはScrapperはマウスScrapperを使用した。
実施例で用いたScrapperタンパク質に対する抗体、及びその他の抗体について記載する
。Scrapperタンパク質に対する抗体を以下の手順で得た。Scrapperの321-380番目のアミノ酸をGST融合蛋白質として大腸菌に発現させ、精製したものを抗原として、常法によりウサギに免疫を行い、ウサギポリクローナル抗体を作製した。さらに、該抗体をアフィニティー精製したものを実験に使用した。以下、用いた市販抗体とその抗体をウェスタンブロッティングに用いた時の希釈倍率を記載する。
抗KIF1A抗体 (マウスモノクローナル抗体:BD社製) 1:1000
抗Kinesin heavy chain(KIF5)抗体(マウスモノクローナル抗体:Chemicon社製) 1:1000
抗Glutamate抗体 (ウサギポリクローナル抗体:Sigma社製) 1:2000
抗Phosphatysil CREB抗体 (ウサギポリクローナル抗体:Cell Signaling社製) 1:1000
抗CREB抗体 (ウサギポリクローナル抗体:Cell Signaling社製) 1:1000
抗Actin抗体 (ウサギポリクローナル抗体:Sigma社製) 1:200
抗MyosinIIA抗体 (ウサギポリクローナル抗体:Sigma社製) 1:1000
抗MyosinIIB抗体 (ウサギポリクローナル抗体:Sigma社製) 1:200
抗MyosinVa抗体 (ウサギポリクローナル抗体:Sigma社製) 1:1000
抗PSD-95抗体 (マウスモノクローナル抗体:UBI社製) 1:50000
抗Skp1抗体(マウスモノクローナル抗体:Zymed社製) 1:1000
抗Cullin1抗体(マウスモノクローナル抗体:UBI社製) 1:2000
抗FLAG抗体 (マウスモノクローナル抗体:Sigma社製) 1:1000
抗GFP抗体 (マウスモノクローナル抗体:BD社製、MBL社製) 1:1000
抗Ubiquitin抗体 (マウスモノクローナル抗体:MBL社製) 1:200
抗KIF2抗体(マウスモノクローナル抗体:BD社製) 1:250
抗KIF1B抗体(ヤギポリクローナル抗体:サンタクルーズ社製) 1:1000
抗MAP2抗体(マウスモノクローナル抗体:Sigma社製) 1:1000
抗Dynein抗体 (マウスモノクローナル抗体:Chemicon社製) 1:1000
抗Neurofilament-H抗体 (マウスモノクローナル抗体:Sigma社製) 1:1000
抗Neurofilament-M抗体 (マウスモノクローナル抗体:Sigma社製) 1:1000
抗Neurofilament-L抗体 (マウスモノクローナル抗体:Sigma社製) 1:1000
抗RIM1抗体 (マウスモノクローナル抗体:BD社製) 1:1000
実施例1:Scrapper遺伝子ノックアウト(KO)マウスの作製
DNA操作等に関する一般的な技術については、特に記載のない限り、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition(Sambrook and Russell,Cold Spring Harbor Laboratory(2001))等に記載の公知の手法に従って行った。
(1)ゲノムライブラリーからのScrapperのゲノムDNAのスクリーニング
Scrapper遺伝子のKOマウス作製用のtargeting vector を作るためのゲノムDNAを得るために、Scrapper cDNA(配列番号3)を用いて32P標識のプローブを作り、129/Sv FixII-phage genomic library (Stratagene社製)からスクリーニングを行った。具体的には、[α-32P]dCTP(Amersham, Redivue, 50μCi, 3000Ci/mmole)とラベリングキット(Promega社製, Prime-α-Gene Labeling System) を用いて調製し、スピンカラム(Amershan PharmaciaBiothech社製, MicroSpin Colum SP300HR)を用いて未反応の試薬を除去した。RIの取り込みはチェレンコフ法で測定し評価した。
プロトコルによる反応液の組成
Labeling 5x Buffer 10ml
unlabeled dNTP(A,G,T) 2ml 20mM each
template 25ng 500ng/ml
Nuclease Free BSA 2ml 400mg/ml
[α-32P]dCTP, 50μCi, 3000Ci/mmole 5ml 333nM
Klenow Fragment 5units 100U/ml
Total volume 50ml
室温で1時間おき、95℃2分で反応を止める。
テンプレートとしてScrapper cDNAをpCR2.1-TOPO vector (K4500-01, Invitrogen社製)にサブクローニングしたものからNsiI/EcoRI消化して得られるフラグメントのうち、約300 bp(5'-側)のフラグメント(第1エクソンから第5エクソンの途中までを含む)を使用して、スクリーニングを行い、ScrapperのゲノムDNAを得た。
(2)Scrapper遺伝子のマッピング
第2エクソンを含むScrapperゲノムクローン、clone1と、第4エクソンから第7エクソンまでを含むクローン、clone3について制限酵素マッピング、シーケンスを行い、Scrapperゲノムの配列を解析した。
(3)ターゲティングベクターの構築
ターゲティングベクターは、Scrapper遺伝子の第3エクソンを欠損するようし、結果としてScrapper遺伝子のF-box領域を欠損するように設計した。
5'側隣接相同領域として7.4 kbのSpeI-NotI fragment、3'側隣接相同領域として5.8 kbのSalI-NdeI fragmentを用い、2つの隣接相同領域に挟まれた第3エクソンを含む3.2 kpの領域をneoカセット(ネオマイシン耐性遺伝子)に置き換え、ターゲティングベクターの構築を行った。さらに後のスクリーニングでネガティブセレクションを行うため、3'側隣接相同領域の3'末端にDT-A(ジフテリア毒素-A)遺伝子を付加した。ターゲティングベクターの構築について図1に示した。
(4)ES細胞へのターゲッティングベクターの導入
(3)で得られたターゲッティングベクターをES細胞に導入し、G418薬剤耐性により目的のESクローンを選択した。これらの手順は生殖工学で使用されている方法で行った。
(5)サザン解析、PCRスクリーニング
(4)で陽性となったESクローンから、目的に合った相同組み換えが起こったクローンをサザンブロット法とPCR法により選択した。相同組み換えの確認は、Left armについてはKpnI/HindIII消化後、KpnI−SpeIをプローブにし、Right armについてはNcoI消化後、NdeI−NcoIをプローブに用いたサザンブロット法により行った。組み換えが起こったものについては、それぞれ、10.5kb→9.4kb、9.7kb→8.6kbというシグナルの変化があった。
PCRによる確認には、次の3つのプライマーを使用した。
SCR-KO-3';5'- CCTCAATGTCCCTCTGGAAATC-3' (配列番号11)
SCR-KO-5';5'- CGGAGACTGAGGACATTTTTGG-3 (配列番号12)
SCR-KO-Neo;5'- TGCATCTGCGTGTTCGAATTCG-3' (配列番号13)
(6)ブラストシストインジェクション、キメラマウスの作製
ヘテロ接合型のES細胞をC57BL/6J系統マウスのブラストシストにインジェクションし、キメラマウスを作製した。
(7)キメラマウスの飼育と交配
(6)で得られたキメラマウスのオスをC57BL/6J系統マウスのメスと交配し、産仔を得た。
(8)ジャームライントランスミッションの確認(サザン、PCR)
(5)と同様に、サザンブロット法及びPCR法によりジャームライントランスミッションを確認した。
(9)ヘテロマウスの交配によるホモマウスの取得
(8)でヘテロ接合型と判定した個体のオスとメスを交配し、(5)と同様にPCR法に
よりゲノタイプを判定しホモ接合型のマウスを得た(図1左下図)。また、抗体を用いたウエスタンブロッティングによってScrapperタンパク質の消失を確認した(図1右下図)。以上の操作よりScrapper遺伝子を欠損するマウスが得られた。
実施例2:Scrapper遺伝子トランスジェニックマウスの作製
Scrapperタンパク質の1-438番目のアミノ酸をコードするScrapper cDNA(配列番号3)をpEGFPC2ベクター(BDクロンテック社製)にサブクローニングし、更に前後にAscI制限酵素配列とFseI制限酵素配列を付加したEGFP-ScrapperフラグメントをPCR法により増幅した。別に、MM403(Mayfordら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1996 Nov 12;93(23):13250-5)ベクターを改変しNotIサイトにAscI-FseI制限酵素配列を挿入した。AscI-FseI制限酵素配列を用いてMM403を改変したベクターにEGFP-Scrapperフラグメントを連結した。得られたベクターをSfiIで切断し、低融点アガロースゲルを用いた電気泳動を行い、約11kbのトランスジーンのフラグメントを含むアガロースゲルを切り出した。切り出したアガロースをGelase (EPICENTRE社製、G09050)により消化し、CamKIIプロモーター−EGFPタグ−Scrapper−SV40 polyAのトランスジーンを分離精製した。精製されたトランスジーンをC57BL6Jマウス胚に導入し、Scrapper遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウス(以下、これを「Scrapper遺伝子トランスジェニックマウス」又は「Scrapperトランスジェニックマウス」と称することがある。またトランスジェニックを「Tg」と称することがある)を得た。図2にサザンブロッティング及びウエスタンブロッティングの結果を示した。
実施例3:ターゲット分子KIF5, KIF1A, KIF1Bの同定(KO及びTgマウスタンパク質の2次元電気泳動及びウェスタンブロット)
実施例1、実施例2で得られたScrapper KOマウス及びTgマウスを用い、2次元電気泳動及びウェスタンブロットでタンパク質の量的変化を解析することにより、Scrapperのターゲット分子の同定を行った。マウスを頚椎脱臼後、脳を取り出し、秤量した。取り出した脳を脳重量の20倍容量の抽出バッファー(7M urea, 2M thiourea, 2%CHAPS, 40mM DTT, 2% IPG buffer pH3-10, Complete EDTA(-)(ロシュ社製))と共にポリトロンホモジナイザーで3000回転、10回ストローク後、冷却小型遠心機で15000rpm、20分、4℃で遠心分離した。得られた上清を回収し、Bradford法(Bio-Rad Protein Assay Dye Regent Concentrate、Bio-Rad社製)によりタンパク定量を行った。定量したタンパク質濃度をもとに、0.5μg/μl又は0.05μg/μlとなるようにSDS化タンパク質サンプルを調製した。SDS化はLaemmliらの方法により行った。Laemmliらの方法により8%ポリアクリルアミドゲルを用いて各レーンに10μlずつサンプルをアプライした後SDS-PAGEを行い、さらにゲル中のタンパク質をPVDF膜(ミリポア社製)に転写した。転写は、TrnovskyらのBiotechniques 13(5), 800-804 (1992)に従って行った。次に、該PVDF膜をウェスタンブロッティングに供した。5%スキムミルク(和光社製)を溶かしたTBST(50 mMトリス(pH 7.5)、150mM NaCl、0.05% Tween20)中に一時間浸してブロッキングした後、1次抗体として抗KIF1A抗体(BD transduction社製)、抗KIF1B抗体(サンタクルーズ社製)、抗KIF5A抗体(ケミコン社製)の存在下にそれぞれ1μg/mlの濃度で4℃下1晩インキュベートし、反応させた。反応後の膜を、TBSTで洗浄後、ペルオキシダーゼの結合した抗マウスあるいは抗ヤギ抗体(Jackson社製)を5000倍希釈した溶液中で、室温下、30分間反応させた。再び膜をTBSTで洗浄した後、ペルオキシダーゼの発光基質(Western blotting detection regents:アマシャム社製)を加えて化学発光反応を行い、フィルム(Hyperfilm、アマシャム社製)に感光させることにより検出した。この操作により、Scrapper Tgマウス、KOマウスにおけるKIF1A、KIF1B、KIF5タンパク質の量を検出し、正常マウスとその量の比較を行った。その結果を図3に示した。ウェスタンブロッティングの結果を図3の上部に、バンドの濃さを数値化したものを図3の下部に示した。KOマウスではKIF分子が正常マウスよりも増加し、Tgマウスでは減少していることが検出された。KOマウスではScrapperの欠損によりKIF分子が正常マウスよりも増加し、TgマウスではScrapperの過剰発現によりKIF分子がより多く分解されるために減少していると考えられる。すな
わち、ScrapperがKIF分子を分解する機能を有しており、KIF1A、KIF1B、KIF5がScrapperのターゲット分子であることが示された。
実施例4:ScrapperとKIF5、KIF1A、KIF1B、RIM1の相互作用解析(マウス脳からの免疫沈降)
ScrapperとKIFまたはRIM1の相互作用を調べるために、マウス(C57BL/6J又はICR)の脳抽出物に対して前述のScrapper抗体を用いて免疫沈降を行った。3匹のマウスを頚椎脱臼後、脳を取り出し、10mlのbufferA(50mM Tris pH8.0、100mM NaCl、1% TritonX-100, 10μg/ml leupeptin,10μg/ml PMSF)でホモジナイズし、4℃下、10万x gで30分間遠心分離を行い、マウス脳抽出液を得た。該液を2等分し、それぞれを抗Scrapper抗体10μlと予めインキュベートしておいたproteinAセファロース(アマシャム社製)10μl、ネガティブコントロールとしてScrapperで免疫する前のウサギから得た血清と予めインキュベートしておいたproteinAセファロース(アマシャム社製)10μlと混合し、4℃下、一晩インキュベートした。インキュベート後のproteinAセファロースを1mlのbufferAで4回洗浄後、50μlのbufferAと50μlの2 x Laemmli bufferを加え、98℃で3分間加熱してSDS化を行った。実施例3と同様にSDS-PAGEを行った。ただし、サンプルの容量は1レーンにつき10μlとした。実施例3と同様にウェスタンブロッティングを行い、マウス脳におけるScrapperとKIF5、KIF1A、KIF1B、RIM1の結合を検出した。図4に示すように、KIF5、KIF1A、KIF1B、RIM1はScrapperと共沈澱しており、KIF5、KIF1A、KIF1B、RIM1がScrapperと結合することが示された。これに対して、1次抗体として抗KIF2抗体(BD社製)、抗Dynein-M抗体(Chemicon社製)を用いてウェスタンブロッティングを行ったところ、KIF2、Dynein-MはScrapperと共沈澱しておらず、KIF1A、KIF1B、RIM1とScrapperの結合が特異的であることが明確である。
実施例5:ScrapperとKIF1Bの相互作用解析(293細胞からの免疫沈降)
FLAGタグを付加したScrappercDNA(配列番号3)と、GFPタグを付加したKIF1B(マウス)cDNA(配列番号14)をそれぞれpCMV-Tag4 (Stratagene社製)とpBOSS (Nucleic Acids
Research, Vol. 18, No. 17, 5322, 1990) に組み込み、哺乳類細胞発現ベクターとして用いた。ScrapperとKIF1B、あるいはネガティブコントロールとしてKIF1BのみをLipofectamine2000(Invitrogen社製)を用いて293細胞に発現させ、1日後、ユビキチン−プロテアソーム系での分解を阻害するために、MG132(ペプチド研究所社製)を10μMの濃度で24時間作用させた後に細胞を回収し、以下の実験に用いた。6 cmディッシュ1枚分の細胞につき300μlのbufferA(50mM Tris pH8.0、100mM NaCl、1% TritonX-100,10μg/ml leupeptin, 10μg/ml PMSF)を加えて超音波破砕を行い、4℃下、10万x gで15分間遠心分離を行い、細胞抽出液を得た。該液を抗GFP抗体1μgと予めインキュベートしておいたproteinAセファロース(アマシャム社製)10μlと混合し、4℃下、4時間インキュベートした。インキュベート後のproteinAセファロースを500μlのbufferAで4回洗浄後、15μlのbufferAと15μlの2 x Laemmli bufferを加え、98℃で3分間加熱してSDS化を行った。実施例3と同様にSDS-PAGEを行った。ただし、サンプルの容量は1レーンにつき10μlとした。さらに、実施例3と同様に、ただし1次抗体に抗FLAG抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、ScrapperとKIF1Bの結合を検出した。結果は図5に示すように、MG132を作用させたときのみKIF1BはScrapperと共沈澱しており、ScrapperとKIF1Bが結合することが示された。一方、MG132非存在下では共沈は見られなかったが、これはKIF1BがScrapperと相互作用してユビキチン化された後、プロテアソームによって分解を受けたと考えられる。
なお、この実施例と同様の手順に従い、Scrapperとユビキチン化標的タンパク質を含むスクリーニング系に被検物質を添加し、Scrapperタンパク質とユビキチン化標的タンパク質との相互作用の程度を測定し、MG132のように両者の複合体形成を促進する物質や複合体形成を阻害する物質を選択すれば、医薬候補物質のスクリーニングが可能であると考えられた。
実施例6:KIF5, KIF1Bのユビキチン化解析
KIF5の発現ベクターとして、YFPタグを付加したKIF5A(マウス)cDNA(配列番号16)をpYFPC(BDクロンテック)に組み込み、哺乳類細胞発現ベクターとして用いた。その他は実施例5と同様にして、ScrapperとKIF5、ScrapperとKIF1B、KIF5又はKIF1B単独(ネガティブコントロール)を、それぞれ293細胞で蛋白質発現させ、ユビキチン化の検出を行った。ウェスタンブロッティングの1次抗体として抗GFP抗体を用い、KIF5、KIF1Bのユビキチン化を検出した。結果は図6に示したようにMG132存在下ではMG132非存在下と比較してKIF分子の量が増加し、さらにScrapper存在下では、MG132存在下、非存在下いずれでもScrapper非存在下の時と比較してKIF分子の量が減少した。すなわち、KIF分子の分解がユビキチン−プロテアソーム系で起こり、それがScrapperにより促進されることが明らかとなった。
なお、この実施例と同様の手順に従い、Scrapperとユビキチン化標的タンパク質を共発現する細胞又は該細胞の抽出液に被検物質を添加し、ユビキチン化標的タンパク質のプロテアソームによる分解の程度を測定し、MG132のように分解を減少させる物質や分解を促進する物質を選択すれば、医薬候補物質のスクリーニングが可能であると考えられた。
また、実施例4と同様にして、Scrapper抗体を用いてマウス脳よりKIF1、RIM1をScrapperと共沈降させた後、ユビキチン化の検出を行った。
Uba1 (E1), GST-UbcH5 (E2), His6-ubiquitin, APP-BP1/Uba3, GST-UbcH12 および NEDD8 はMBL社より購入した。E1、E2、His6-ubiquitin、NEDD8 system (APPBP1/Uba3、UbcH12 、NEDD8の混合物)をScrapper抗体の免疫沈降物と混合し、T. Kawakami et al., Embo
J 20, 4003-12 (Aug 1, 2001).の方法に倣って、37℃で3時間ユビキチン化反応を行った。反応後、SDSバッファーを加えて反応を停止し、ウェスタンブロッティングによりユビキチン化の検出を行った。ウェスタンブロッティングの1次抗体として抗KIF1Aあるいは抗RIM1抗体を用い、KIF1、RIM1のユビキチン化によるバンドシフトを検出した。図17に示したように、Scrapperと共沈降後のKIF1あるいはRIM1がユビキチン化の基質となり、もとの分子量よりも大きい分子量の位置にユビキチン化されたKIF1あるいはRIM1のバンドがスメア状に検出された。すなわち、Scrapperと共沈降したKIFとRIM分子がScrapper複合体によりユビキチン化されることが明らかとなった。免疫前血清(PIS)を用いたものでは沈降しておらず、ScrapperによるKIF1、RIM1のユビキチン化が特異的であることが明確である。
実施例7:KIF5, KIF1の局在解析
実施例1で述べたScrapper KOマウスを用い、Scrapper分子の有無によるKIF5、KIF1の局在の変化を解析した。3日齢Scrapper KOマウス、コントロールとしてKOマウスと同腹の野生型マウスの海馬を用いて、海馬神経初代神経細胞の培養を行い、12日後に4 %パラホルムアルデヒドを含むPBS溶液で15分間、室温下で細胞を固定した。固定した細胞を0.25 % TritonX-100を含むPBS溶液で5分間、室温下で処理した後、3 % BSAを溶解したPBS溶液で30分間インキュベートすることにより、ブロッキングした。1次抗体としてKIF5、KIF1Aの抗体を3 % BSAを溶解したPBS溶液で100倍希釈したものを用い、細胞と4℃下で一晩反応させた。1次抗体をPBSで洗浄後、2次抗体としてAlexa488 conjugated GoatIgG anti-mouse IgG(Molecular probes)を3 % BSAを溶解したPBS溶液で200倍希釈したものを用い、室温下で30分間反応させた。さらにこの細胞をPBSで洗浄し、包埋後、共焦点レーザー顕微鏡 (LSM PASCAL, Zeiss社製)で観察した。結果を図7に示した。Scrapper KOマウスより得られた海馬初代培養神経細胞においては、KIF5、KIF1の染色が増強していることが観察された。
実施例8:Scrapper KOによるシナプス小胞からのGlutamateのリリース量の変化の解析
Scrapper KOマウスより得られた海馬初代培養神経細胞からminiature postsynaptic cu
rrent (mEPSC) を記録した(Annu Rev Physiol. 1984;46:455-72)。mEPSC記録のために使ったメディウムは 168 mM NaCl, 2.4 mM KCl, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 10 mM glucose, 10 mM HEPES, and 0.5 μM TTX (pH 7.3).である。電極は (4〜8 MΩ) whole-cell pipette 溶液(120 mM K-acetate, 20 mM KCl, 0.1 mM CaCl2, 5 mM MgCl2, 0.2 mM EGTA, 5mM ATP, and 10 mM HEPES (pH 7.3))で充填した。 アンプは an EPC-7 amplifier (HEKA, Germany) と a Digidata 1200 acquisition board (Axon Instruments)を使用した。 Membrane potential は -70 mVに固定し、シグナルは 10 kHz 0.5 mV/pA for 40 sec でフィルターし記録した。250 pA以上の漏れのある細胞は除外した。Membrane resistance (Rm), series resistance (Rs), and membrane capacitance (Cm) をモニターした。 Rm >100 MΩ 及び Rs <20 MΩ のものだけを解析した(Mean Rm, Rs, とCm (P > 0.05) を比較した)。 CNQX (50 μM、Tocris社製), つまりAMPA receptor (グルタミン酸受容体のサブタイプの1つ;AMPAはα-amino-3-hydroxyl-5-methyl-4-isoxazole propionate) antagonist,を用いて、記録している反応がAMPA受容体成分であることを示した。記録は 40 秒間行った。 mEPSCsは background noise level x 3を足きりに記録した。同じグループの記録を平均し、Student's t test(井川俊彦著、「Excelによる統計クイックリファレンス」、共立出版、2003年5月)によって統計判定した。結果を図8に示した。それによると、Scrapper KOマウスより得られた海馬初代培養神経細胞において、シナプス小胞からのグルタミン酸の放出が増加することがわかった。なお、グルタミン酸の放出はScrapper KOマウスの海馬スライスで増加することも判明した。
実施例9:Scrapper活性増強/ブロックによるシナプス小胞からのGlutamateのリリース量の変化の解析
ラットE18海馬の初代培養細胞にGFPタグを付したScrapperもしくはScrapper変異体又はGFPタグを付したScrapperの各種領域(LRR領域、CAXX領域)を発現させ、mEPSCを記録した。発現は、培養9日目に細胞へのトランスフェクションすることにより行い、図9に示すScrapperの領域をコードするcDNAを組み込んだプラスミドDNAをLipofectamine2000 (Invitrogen社製)試薬を用いて導入した。mEPSC記録のために使ったメディウムは 168 mM NaCl, 2.4 mM KCl, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 10 mM glucose, 10 mM HEPES, and 0.5 μM TTX (pH 7.3)である。電極は (4〜8 MΩ) whole-cell pipette 溶液(120 mM K-acetate,20 mM KCl, 0.1 mM CaCl2, 5 mM MgCl2, 0.2 mM EGTA, 5mM ATP, and 10 mM HEPES (pH 7.3))で充填した。 アンプは an EPC-7 amplifier (HEKA社製, Germany) と a Digidata1200 acquisition board (Axon Instruments社製)を使用した。 Membrane potential は-70 mVに固定し、シグナルは 10 kHz 0.5 mV/pA for 40 sec でフィルターし記録した。250
pA以上の漏れのある細胞は除外した。Membrane resistance (Rm), series resistance (Rs), and membrane capacitance (Cm) をモニターした。 Rm >100 MΩ 及び Rs <20
MΩ のものだけを解析した(Mean Rm, Rs, と Cm (P > 0.05) を比較した)。CNQX (50 μM、Tocris社製), つまりAMPA receptor antagonist,を用いて、記録している反応がAMPA受容体成分であることを示した。記録は 40 秒間行った。 mEPSCsは background noise level x 3を足きりに記録した。同じグループの記録を平均し、Student's t testによって統計判定した。P < 0.05 をもって有意とした。すくなくとも2回の独立した培養で、2つ以上の独立したGFPを発現している細胞からの記録でこれらの測定は行われた。EGFP-SCはEGFPに全長Scrapperタンパク質を結合させたもの、EGFP-C435AはEGFPに435位のシステインをアラニンに置換した全長Scrapperタンパク質を結合させたもの、EGFP-LRRはEGFPにScrapperタンパク質の321〜380位の部分配列を結合させたもの、EGFP-CAAXはEGFPにScrapperタンパク質の379〜438位の部分配列を結合させたもの、をそれぞれ発現するプラスミドである。図9より、野生型Scrapper遺伝子を過剰発現させるとグルタミン酸の放出が低下することがわかった。EGFP-C435Aでも同様の傾向が見られたが、EGFP-LRRでは反対にグルタミン酸の放出が増加した。これはLRRがドミナントネガティブに作用し、内因性のScrapperの働きを阻害したものと考えられる。
野生型Scrapperタンパク質はグルタミン酸の放出を低下させ、それはLRR領域での標的
分子との結合を介していることが示唆される。
実施例10:ターゲット分子Neurofilamentの同定(Tgマウスタンパク質の2次元電気泳動)
実施例2で得られたScrapper Tgマウスを使用し、2次元電気泳動でタンパク質の量的変化を解析することにより、Scrapperのターゲット分子の同定を行った。マウスを頚椎脱臼後、脳を取り出し、秤量した。取り出した脳を脳重量の20倍容量の抽出バッファー(7M urea, 2M thiourea, 2%CHAPS, 40mM DTT, 2% IPG buffer pH3-10, Complete EDTA(-)(ロシュ社製))と共にポリトロンホモジナイザーで3000回転、10回ストローク後、冷却小型遠心機で15000rpm、20分、4℃で遠心分離した。得られた上清を回収し、うち100μlを2次元電気泳動に供した。1次元目の泳動はpH3〜10の当電点電気泳動、2次元目は12%ポリアクリルアミド電気泳動を行い、泳動後のゲルをCBBで染色し、Tgマウスと野生型マウスでその泳動パタンを比較することにより、変動している蛋白質を検出した。変化のあったスポットについてゲル中から蛋白質を回収し、MS解析あるいはペプチドシーケンスを行って蛋白質の配列を決定し、変化のある蛋白質を同定した。その結果、TgマウスでNeurofilament-M、及び-Lが減少していることが分かった(図10)。
実施例11:ターゲット分子Neurofilamentの同定(Tg及びKOマウスタンパク質のウェスタンブロット)
実施例1、実施例2で得られたTgマウス及びKOマウスを用い、ウェスタンブロットでタンパク質の量的変化を解析することにより、ターゲット分子の同定を行った。マウスを頚椎脱臼後、脳を取り出し、秤量した。取り出した脳を脳重量の20倍容量の抽出バッファー(7M urea, 2M thiourea, 2%CHAPS, 40mM DTT, 2% IPG buffer pH3-10, Complete EDTA(-)(ロシュ社製))と共にポリトロンホモジナイザーで3000回転、10回ストローク後、冷却小型遠心機で15000rpm、20分、4℃で遠心分離した。得られた上清を回収し、Bradford法(Bio-Rad Protein Assay Dye Regent Concentrate、Bio-Rad社製)によりタンパク定量を行った。定量したタンパク質濃度をもとに、0.5μg/μl又は0.05μg/μlとなるようにSDS化サンプルを調製した。SDS化はLaemmliらの方法により行った。Laemmliらの方法により8%ポリアクリルアミドゲルを用いて各レーンに10μlずつサンプルをアプライした後SDS-PAGEを行い、さらにゲル中のタンパク質をPVDF膜(ミリポア社製)に転写した。転写は、TrnovskyらのBiotechniques 13(5), 800-804 (1992)に従って行った。次に、該PVDF膜をウェスタンブロッティングに供した。5%スキムミルク(和光社製)を溶かしたTBST(50mMトリス(pH 7.5)、150mM NaCl、0.05% Tween20)中に一時間浸してブロッキングした後、1次抗体として抗NF-H抗体(Sigma社製)、抗NF-M抗体(Sigma社製)、抗NF-L抗体(Sigma社製)の存在下にそれぞれ1μg/mlの濃度で4℃下1晩インキュベートし、反応させた。反応後の膜を、TBSTで洗浄後、ペルオキシダーゼの結合した抗マウスあるいは抗ヤギ抗体(Jackson社製)を5000倍希釈した溶液中で、室温下、30分間反応させた。再び膜をTBSTで洗浄した後、ペルオキシダーゼの発光基質(Western blotting detection regents:アマシャム社製)を加えて化学発光反応を行い、フィルム(Hyperfilm、アマシャム社製)に感光させることにより検出した。この操作により、Scrapper Tgマウス及びKOマウスにおけるNF-M、NF-H、NF-Lタンパク質の量を検出し、正常マウスとその量の比較を行った。その結果を図11に示した。ウェスタンブロッティングの結果を図11の上部に、バンドの濃さを数値化したものを図11の下部に示した。KOマウスではNeurofilament分子が正常マウスよりも増加し、Tgマウスでは減少していることが検出された。TgマウスではScrapperの過剰発現によりNeurofilament分子がより多く壊されるために減少していると考えられる。すなわち、ScrapperがNeurofilament分子を分解する機能を有しており、NeurofilamentがScrapperのターゲット分子であることが示された。
実施例12:ScrapperとNeurofilamentの相互作用解析(マウス脳からの免疫沈降)
ScrapperとNeurofilamentの相互作用を調べるために、マウス(C57BL/6J又はICR)の脳からScrapper抗体を用いて免疫沈降を行った。3匹のマウスを頚椎脱臼後、脳を取り出し、10mlのbuffferA(50mM Tris pH8.0、100mM NaCl、1% TritonX−100, 10μg/ml leupeptin, 10μg/ml PMSF)でホモジナイズし、4℃下、10万x gで30分間遠心分離を行い、マウス脳抽出液を得た。該液を2等分し、それぞれを抗Scrapper抗体10
μlと予めインキュベートしておいたproteinAセファロース(アマシャム)10μl、ネガティブコントロールとして抗Scrapper抗体の免疫前血清と予めインキュベートしておいたproteinAセファロース(アマシャム)10μlと混合し、4℃下、一晩インキュベートした。インキュベート後のproteinAセファロースを1mlのbufferAで4回洗浄後、50μlのbufferAと50μlの2 x Laemmli bufferを加え、98℃で3分間加熱してSDS化を行った。実施例4と同様にSDS-PAGEを行った。ただし、サンプルの容量は1レーンにつき10μlとした。さらに、実施例3に準じ、抗Neurofilament-H抗体、抗Neurofilament-M抗体及び抗Neurofilament-L抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、マウス脳におけるScrapperとNeurofilament-H、Neurofilament-Mの結合を検出した。結果は図12に示すように、Neurofilament-H、Neurofilament-MはScrapperと共沈澱しており、Neurofilament-H、Neurofilament-MがScrapperと結合することが示された。Neurofilament-Lとの結合はウェスタンブロッティングでは確認できなかったが、これはNeurofilament-Lとの結合が直接ではない、あるいは結合が弱いため、結合していたとしてもこの実験系での検出感度を下回っていたためと考えられる。
実施例13:ターゲット分子Myosinの同定(KO及びTgマウスタンパク質の2次元電気泳動及びウェスタンブロット)
実施例1、実施例2で得られたScrapper KOマウス及びTgマウスを用い、2次元電気泳動及びウェスタンブロットでタンパク質の量的変化を解析することにより、ターゲット分子の同定を行った。
マウスを頚椎脱臼後、脳を取り出し、秤量した。取り出した脳を脳重量の20倍容量の抽出バッファー(7M urea, 2M thiourea, 2%CHAPS, 40mM DTT, 2% IPG buffer pH3-10, Complete EDTA(-)(ロシュ社製))と共にポリトロンホモジナイザーで3000回転、10回ストローク後、冷却小型遠心機で15000rpm、20分、4℃で遠心分離した。得られた上清を回収し、Bradford法(Bio-Rad Protein Assay Dye Regent Concentrate、Bio-Rad社製)によりタンパク定量を行った。定量したタンパク質濃度をもとに、0.5μg/μl又は0.05μg/μlとなるようにSDS化サンプルを調製した。SDS化はLaemmliらの方法により行った。Laemmliらの方法により8%ポリアクリルアミドゲルを用いて各レーンに10μlずつサンプルをアプライした後SDS-PAGEを行い、さらにゲル中のタンパク質をPVDF膜(ミリポア社製)に転写した。転写は、TrnovskyらのBiotechniques 13(5), 800-804 (1992)に従って行った。次に、該PVDF膜をウェスタンブロッティングに供した。5%スキムミルク(和光社製)を溶かしたTBST(50mMトリス(pH 7.5)、150mM NaCl、0.05% Tween20)中に一時間浸してブロッキングした後、1次抗体として抗MyosinIIB抗体(Sigma社製)の存在下にそれぞれ1μg/mlの濃度で4℃下1晩インキュベートし、反応させた。反応後の膜を、TBSTで洗浄後、ペルオキシダーゼの結合した抗マウスあるいは抗ヤギ抗体(Jackson社製)を5000倍希釈した溶液中で、室温下、30分間反応させた。再び膜をTBSTで洗浄した後、ペルオキシダーゼの発光基質(Western blotting detection regents:アマシャム社製)を加えて化学発光反応を行い、フィルム(Hyperfilm、アマシャム社製)に感光させることにより検出した。この操作により、Scrapper変異マウスにおけるMyosinIIBタンパク質の量を検出し、正常マウスとその量の比較を行った。その結果を図13に示した。ウェスタンブロッティングの結果を図13の上部に、バンドの濃さを数値化したものを図13の下部に示した。KOマウスではMyosinIIB分子が正常マウスよりも増加し、Tgマウスでは減少していることが検出された。KOマウスではScrapperの欠乏によりMyosin分子が正常マウスよりも増加し、TgマウスではScrapperの過剰発現によりMyosin分子がより多く壊されるために減少していると考えられ
る。すなわち、ScrapperがMyosin分子を分解する機能を有しており、MyosinIIBがScrapperのターゲット分子であることが示された。
実施例14:ScrapperとMyosinの相互作用解析(マウス脳からの免疫沈降)
ScrapperとMyosinの相互作用を調べるために、マウス(C57BL/6J又はICR)の脳からScrapper抗体を用いて免疫沈降を行った。3匹のマウスを頚椎脱臼後、脳を取り出し、10mlのbuffferA(50mM Tris pH8.0、100mM NaCl、1% TritonX-100, 10μg/ml leupeptin, 10μg/ml PMSF)でホモジナイズし、4℃下、10万x gで30分間遠心分離を行い、マウス脳抽出液を得た。該液を2等分し、それぞれを抗Scrapper抗体10μlと予めインキュベートしておいたproteinAセファロース(アマシャム社製)10μl、ネガティブコントロールとして抗Scrapper抗体の免疫前血清と予めインキュベートしておいたproteinAセファロース(アマシャム社製)10μlと混合し、4℃下、一晩インキュベートした。インキュベート後のproteinAセファロースを1mlのbufferAで4回洗浄後、50μlのbufferAと50μlの2 x Laemmli bufferを加え、98℃で3分間加熱してSDS化を行った。実施例3と同様にSDS-PAGEを行った。ただし、サンプルの容量は1レーンにつき10μlとした。さらに、実施例3と同様にウェスタンブロッティングを行い、マウス脳におけるScrapperとMyosinIIB、MyosinVaの結合を検出した。結果は図14に示すように、MyosinIIB、MyosinVaはScrapperと共沈澱しており、MyosinIIB、MyosinVaがScrapperと結合することが示された。これに対してMyosinIIAは共沈澱しておらず、MyosinIIB、MyosinVaとScrapperの結合が特異的であることが明確である。
また、FLAG-Scrapper融合タンパク質を発現させた293T細胞を用いて、ScrapperによるMyosinIIBのユビキチン化、それに伴うプロテアソームによる分解を調べた(図15)。抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を行い、抗MyosinIIB抗体でウエスタンブロッティングを行った結果、プロテアソーム阻害剤MG132を加えた場合においてScrapperとMyosinIIBの共沈が見られた。一方、プロテアソーム阻害剤MG132非存在下では共沈は見られなかったが、これはMyosinIIBはScrapperと相互作用してユビキチン化された後、プロテアソームによって分解を受けたと考えられる。
なお、この実施例と同様の手順に従い、Scrapperとユビキチン化標的タンパク質を含むスクリーニング系に被検物質を添加し、Scrapperタンパク質とユビキチン化標的タンパク質との相互作用の程度を測定し、MG132のように両者の複合体形成を促進する物質や複合体形成を阻害する物質を選択すれば、医薬候補物質のスクリーニングが可能であると考えられた。
実施例15:Scrapper 転写誘導解析
フォルスコリン刺激による海馬初代培養細胞におけるScrapper mRNA発現の誘導フォルスコリン刺激はSala et al. J Neurosci. 2000 May 15;20(10):3529-36.に記載の方法に従って行った。具体的には、まず、マウス海馬初代培養細胞を50 μM のフォルスコリンで処理した。 内因性のシナプス活性を抑えるためにフォルスコリン刺激の12時間前に1 μMのテトロドトキシンを添加した。フォルスコリンを培地に添加し、5 % CO2 インキュベーター内で維持した。0,1,3,6,12時間後、Total RNA をSepasol reagent (Nacalaitrsque社製)を用いて単離した。1 μg のtotal RNA から、ReverTra Ace(TOYOBO社製) を用いてcDNAを合成し、PCRの鋳型とし用いた。2100Bioanalyzer (Agilent社製) を用いてScrapper mRNAを定量した。
結果を図16に示した。それによれば、Scrapperの発現はフォルスコリン刺激によって誘導されることがわかった。
実施例16:MG132(プロテアソーム阻害剤)によるシナプス小胞からのGlutamateのリリース量の変化の解析
Wistarラットより得られた海馬初代培養神経細胞に50μMのMG132を加え1時間インキュ
ベートした後に、miniature postsynaptic current (mEPSC) を記録した(Annu Rev Physiol. 1984;46:455-72)。コントロールとしてMG132を加えない場合も測定した。mEPSC記録のために使ったメディウムは 168 mM NaCl, 2.4 mM KCl, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 10
mM glucose, 10 mM HEPES, and 0.5 μM TTX (pH 7.3).である。電極は (4〜8 MΩ) whole-cell pipette 溶液(120 mM K-acetate, 20 mM KCl, 0.1 mM CaCl2, 5 mM MgCl2, 0.2
mM EGTA, 5mM ATP, and 10 mM HEPES (pH 7.3))で充填した。 アンプは an EPC-7 amplifier (HEKA, Germany) と a Digidata 1200 acquisition board (Axon Instruments)を使用した。 Membrane potential は -60 mVに固定し、シグナルは 10 kHz 0.5 mV/pA for 40 sec でフィルターし記録した。250 pA以上の漏れのある細胞は除外した。Membrane resistance (Rm), series resistance (Rs), and membrane capacitance (Cm) をモニターした。 Rm >100 MΩ 及び Rs <20 MΩ のものだけを解析した(Mean Rm, Rs, とCm (P > 0.05) を比較した)。 CNQX (50 μM、Tocris社製), つまりAMPA receptor (グルタミン酸受容体のサブタイプの1つ;AMPAはα-amino-3-hydroxyl-5-methyl-4-isoxazole propionate) antagonist,を用いて、記録している反応がAMPA受容体成分であることを示した。記録は 40 秒間行った。 mEPSCsは background noise level x 3を足きりに記録した。同じグループの記録を平均し、Student's t test(井川俊彦著、「Excelによる統計クイックリファレンス」、共立出版、2003年5月)によって統計判定した。
結果を図18に示した。それによると、ラットより得られた海馬初代培養神経細胞において、MG132の添加によりシナプス小胞からのグルタミン酸の放出が増加することがわかった。なお、CaCl2の非存在下ではMG132を加えてもグルタミン酸の放出は増加しなかった。
マウスより得られた海馬初代培養神経細胞においても同様に、MG132がグルタミン酸の放出を促進するという結果が得られた。
これらの結果より、Scrapper遺伝子を発現する非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料に被検物質を添加し、神経伝達物質の放出を測定し、MG132のように神経伝達物質の放出を促進する物質や神経伝達物質の放出を阻害する物質を選択すれば、医薬候補物質のスクリーニングが可能であることがわかる。
Scrapper遺伝子ノックアウトマウスの作製の手順を示す図(一部写真)。上がターゲティングベクターを示し、左下がRT-PCR、右下がウエスタンブロッティングの結果を示す。 Scrapper遺伝子トランスジェニックマウスの作製の手順を示す図(一部写真)。上がトランスジーンを示し、左下がRT-PCR、右下がウエスタンブロッティングの結果を示す。 Scrapper遺伝子ノックアウトマウス、トランスジェニックマウスにおける、KIFの発現を示す図(一部写真)。上はウエスタンブロッティングの結果、下は発現量を数値化したグラフ図。 ScrapperとKIFまたはRIM1の相互作用を示す図(写真)。Inputは抗体未処理サンプル、PISIPは免疫前血清を用いた免疫沈降物、SC IPはScrapper抗体を用いた免疫沈降物を示す。各KIF抗体、RIM1抗体又はDynein抗体でウエスタンブロッティングを行った。 ScrapperとKIFの相互作用を示す図〜その2(写真)。GFP抗体で免疫沈降し、FLAG抗体でウエスタンブロッティングを行った。 ScrapperによるKIFの分解を示す図(写真)。GFP抗体で免疫沈降し、GFP抗体でウエスタンブロッティングを行った。 Scrapperのノックアウトマウス(-/-)海馬初代培養細胞におけるKIFの局在を示す図(写真)。(+/+)は野生型マウス海馬初代培養細胞の結果を示す。 Scrapperのノックアウトマウス(-/-)海馬初代培養細胞におけるシナプス小胞からのグルタミン酸の放出を示す図。(+/+)は野生型マウス海馬初代培養細胞の結果を示す。 海馬初代培養細胞に各Scrapper遺伝子を発現させたときのシナプス小胞からのグルタミン酸の放出を示す図(一部写真)。Aは各Scrapper遺伝子コンストラクトの構造を示す。Bは各Scrapper遺伝子産物の細胞内局在を示す。MAP2は抗MAP2抗体を用いて染色した結果を示し、MergeはGFPの蛍光像とMAP2の染色結果を重ね合わせた結果を示し、矢印は軸索を示している。MAP2は樹上突起のマーカーであるので、野生型Scrapperタンパク質が軸索に局在することを示している。Cは各Scrapper遺伝子産物を神経細胞に発現させたときのmEPSCの記録(トレース)を示す。DはmEPSCの頻度と振幅のグラフ図である。 野生型マウス及びScrapper遺伝子トランスジェニックマウスにおける脳タンパク質の2次元電気泳動による比較を示す図(写真)。 Scrapper遺伝子トランスジェニックマウスにおける、各ニューロフィラメントの発現を示す図(一部写真)。上はウエスタンブロッティングの結果、下は発現量を数値化したグラフ図。 Scrapperと各ニューロフィラメントの相互作用を示す図(写真)。Inputは抗体未処理サンプル、PISIPは免疫前血清を用いた免疫沈降物、SC IPはScrapper抗体を用いた免疫沈降物を示す。各ニューロフィラメント抗体でウエスタンブロッティングを行った。 Scrapper遺伝子ノックアウトマウス、トランスジェニックマウスにおける、ミオシンの発現を示す図(一部写真)。上はウエスタンブロッティングの結果、下は発現量を数値化したグラフ図。 Scrapperと各ミオシンの相互作用を示す図(写真)。Inputは抗体未処理サンプル、PISIPは免疫前血清を用いた免疫沈降物、SC IPはScrapper抗体を用いた免疫沈降物を示す。各ミオシン抗体でウエスタンブロッティングを行った。 ScrapperによるミオシンIIBのユビキチン化を示す図(写真)。 フォルスコリン刺激による、Scrapperの発現誘導を示す図(一部写真)。左がRT-PCR産物の電気泳動の結果を示す図、右が発現量を数値化したグラフ図である。SCはScrapper遺伝子を、G6PDHはグルコース-6-リン酸脱水素酵素遺伝子を、P−CREBはリン酸化cAMP response element (CRE)-binding protein (CREB)を、CREBはcAMP response element (CRE)-binding proteinを示す。フォルスコリンによりCREBのリン酸化が起こることが知られており、リン酸化CREBがフォルスコリン刺激後に増加していることから、フォルスコリン刺激が適切に行われたことが分かる。またこのとき、Scrapper遺伝子の転写が誘導され、mRNAが増加していることがRT-PCRの結果より明らかである。 ScrapperによるKIF1, RIM1のユビキチン化を示す図。Inputは抗体未処理サンプル、PISは免疫前血清を用いた免疫沈降物、SCRはScrapper抗体を用いた免疫沈降物を示す。IP+UbiはE1、E2、His6-ubiquitin、NEDD8 systemのユビキチン化酵素複合体を添加した場合を示す。 MG132(プロテアソーム阻害剤)によるシナプス小胞からのGlutamateのリリース解析を示す図。

Claims (14)

  1. 細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質、並びにScrapperタンパク質を含むスクリーニング系に被検物質を添加し、前記ユビキチン化標的タンパク質のユビキチン化の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
  2. 前記スクリーニング系が、前記ユビキチン化標的タンパク質及びScrapperタンパク質を共発現する細胞又は該細胞の抽出液である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
  3. 前記スクリーニング系が、前記ユビキチン化標的タンパク質及びScrapperタンパク質を含むインビトロ系である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
  4. 前記スクリーニング系が、Scrapperタンパク質を発現する非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
  5. 細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質、並びにScrapperタンパク質を共発現する細胞又は該細胞の抽出液に被検物質を添加し、前記ユビキチン化標的タンパク質のプロテアソームによる分解の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
  6. Scrapperタンパク質を発現する非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料に被検物質を添加し、該動物又は生体試料中の細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質のプロテアソームによる分解の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
  7. 細胞骨格タンパク質及びシナプス関連タンパク質から選ばれるユビキチン化標的タンパク質、並びにScrapperタンパク質を含むスクリーニング系に被検物質を添加し、Scrapperタンパク質と前記ユビキチン化標的タンパク質との相互作用の程度を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
  8. 前記ユビキチン化標的タンパク質がKIFである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  9. 前記ユビキチン化標的タンパク質がニューロフィラメントである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  10. 前記ユビキチン化標的タンパク質がミオシンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  11. 前記ユビキチン化標的タンパク質がRIMである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  12. 医薬候補物質が神経変性疾患又は統合失調症の治療又は予防薬の候補物質である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  13. Scrapper遺伝子を発現させた神経細胞に被検物質を添加し、Scrapper遺伝子の発現量又は神経伝達物質の放出を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
  14. Scrapper遺伝子を発現する非ヒト哺乳動物又は該動物から得られる生体試料に被検物質を
    添加し、Scrapper遺伝子の発現量又は神経伝達物質の放出を測定することを特徴とする、医薬候補物質のスクリーニング方法。
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