JP2007040821A - 化学反応チップ - Google Patents

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Abstract

【課題】孤立化学反応系を集積化したコンビナトリアルな化学反応系において、温度設定の独立性を確保した高速・高効率化学反応チップを実現する。
【解決手段】多孔質シリコン層10に囲まれた1個以上の単結晶または多結晶からなるアイランド20を有し、該温度センサー素子50とヒータ60と伴に、アイランド20上に孤立化学反応系を構築して集積化し、独立性良く温度制御を行う化学反応チップ。
【選択図】図1

Description

本発明は、生化学反応を含む化学反応チップ、化学反応検出チップ用基板およびその製造方法、化学反応を行うための装置および方法、ならびに記録媒体に関する。
核酸の塩基配列を測定する技術として、予め設計した塩基配列の1本鎖オリゴヌクレオチドプローブを塩基配列の種類毎に領域を分けて固定したポリヌクレオチド検出チップを用いて、測定対象である1本鎖ポリヌクレオチドと1本鎖オリゴヌクレオチドプローブとの相補鎖結合(ハイブリダイゼーション)の有無を検出する方法が知られている。ポリヌクレトチド検出チップの例としては、関心のある特定の変異配列に相補的なDNAを配置した診断用のポリヌクレオチド検出チップ(文献1参照)、測定対象に存在し得る全ての塩基配列に相補鎖結合するオリゴヌクレオチドプローブを準備し、測定対象の塩基配列決定を行うSBH(sequencing by hybridization)法が知られている(文献2参照)。
特開2001−235474号公報 Science Vol.270, 467-470 (1995) J. DNA Sequencing and Mapping, Vol. 1, 375-388 (1991) Breslauer K.J.,et.al.:"Predicting DNA duplexstability from the base sequence", Proc.Natl.Acad,Sci.USA83,3746-3750
アデニン(A)とチミン(T)の結合又はアデニン(A)とウラシル(U)の結合は、1塩基あたり2カ所の水素結合であるのに対して、グアニン(G)とシトシン(C)の結合は1塩基あたり3カ所の水素結合を有する。この事実により、両者の結合力には差異が生じており、G−C結合はA−T結合又はA−U結合に比べてより安定である。オリゴヌクレオチドプローブと1本鎖ポリヌクレオチドの相補鎖結合において、G−C結合をより多く含む配列は、少なく含む配列に比べて、より高い熱的安定性を有する傾向を持つ。事実、同じ塩基長で熱安定性を比較した場合、A−T結合又はA−U結合のみが存在する相補鎖結合の熱安定性は最も低く、G−C結合のみが存在する相補鎖結合の熱安定性は最も高い。相補鎖結合の熱安定性は、一般に、結合とその解離が50%ずつ生じる温度(融解温度:Tm)で示される。8量体のオリゴヌクレオチドDNAプローブを例にとると、すべてがA−T結合からなる2本鎖DNAのTmは15.2℃であるのに対して、すべてがG−C結合からなる2本鎖DNAのTmは56.2℃であり、その差は41.0℃である(%GC法 (文献3)による計算値)。
このように、オリゴヌクレオチドプローブの相補鎖結合のTm値が大きく変化する場合には、各プローブの最適なTm値の温度でハイブリダイゼーションを行う必要がある。Tmより高温の条件では、1本鎖ポリヌクレオチドはプローブと結合しにくく、十分な反応収率が得られない。一方、Tmより低温の条件では、ミスマッチ結合によるバックグラウンドのノイズが増加し、測定分解能の低下を招く。
また、ポリヌクレオチド検出チップ上に複数種類のプローブを固定した場合、ポリヌクレオチド検出チップ上の温度を一定にして、検査対象の1本鎖ポリヌクレオチド試料とのハイブリダイゼーションを行うと、プローブ毎に熱安定性が異なるため、プローブの相補鎖結合の生成量の差異が、必ずしも、ミスマッチ確率の差異を反映しない可能性が生じる場合がある。
従来の検出チップでは、検出チップ上の全てのプローブについてハイブリダイゼーションを行う温度は一定に設定し、溶媒の塩濃度の調整や検出チップに固定するプローブ密度やプローブ塩基長を種類毎に変化させる手法により、プローブの相補鎖結合生成量の差異が、ミスマッチ確率の差異を直接反映し、プローブ毎の熱安定性の差異が混入するのを防ぐ手立てとしていた。しかし、Tmの差異による影響を十分解消するには至っていない。
この問題を解決する例として、特許文献1は、複数の反応系を基板上に集積化し、各反応系を反応系毎に温度調節して、しかも同時並行して行うための装置および方法を開示する。しかし、特許文献1では、各反応系間の熱絶縁性を確保するためにシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜による薄いメンブレン基板を用いたため、メンブレンが脆弱で、使用中の破損事故が発生する確率が高かった。また、強度に限界が有るため、メンブレンを薄くすることが出来ず、メンブレンを通じた熱伝導を十分抑えられず、各反応系間の熱絶縁性能が不十分だった。このため、反応系の集積度を上げ過ぎると温度制御の独立性が十分得られず、逆に、温度制御の独立性を維持しようとすると、集積度を向上することが出来なかった。さらに、メンブレン作製に関わるコストが他の半導体プロセス工程と比べて高価となり、製品のコスト高要因となって、実用化の妨げに成っていた。
本発明は、オリゴヌクレオチドプローブとポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションをはじめとする化学反応全般の解析において、複数の反応系を基板上に集積化し、各反応系ごとに温度制御を行いながら、同時並行的に反応を進行させることが可能な、化学反応検出装置およびその方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するものとして、本発明の第1様態では多孔質シリコンと、該多孔質シリコンに埋め込まれた1個以上のアイランドとを有することを特徴とする化学反応チップとする。
本発明の第2様態では、本発明の第1様態に加えて、熱シールド領域を有することを特徴とする化学反応チップとする。
本発明の第3様態では、本発明の第1様態及び本発明の第2様態のいずれかに加えて、該アイランド表面を保護する保護層と、該保護層上に形成されたプローブ固定領域と、該プローブ固定領域上に固定されたプローブと、該アイランドを加熱するヒータ素子と、該アイランドの温度を検出する温度検出素子と、該温度検出素子と該ヒータ素子を制御してアイランドの温度を所望の温度に制御する温度制御装置と、該温度検出素子と該温度制御装置を結ぶ電気配線と、該ヒータ素子と該温度制御装置を結ぶ電気配線と、を有することを特徴とする化学反応チップとする。
本発明の第4様態では、本発明の第3様態に加えて、個々の該アイランドの温度を独立に制御することを特徴とする化学反応チップとする。
本発明の第5様態では、本発明の第1様態乃至第4様態のいずれかに加えて、該アイランド及び熱シールド領域は単結晶シリコンであることを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第6様態では、本発明の第1様態乃至第5様態のいずれかに加えて、該アイランド及び熱シールド領域は、p型に不純物ドープされた単結晶シリコンであり、かつ、該アイランド及び熱シールド領域の直下にn型に不純物ドープされた埋め込み層を有することを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第7様態では、本発明の第5様態及び本発明の第6様態のいずれかに加えて、補強基板を有することを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第8様態では、本発明の第5様態乃至第7様態のいずれかに加えて、該アイランドの一部、または、該熱シールド領域の一部のいずれかに、少なくとも一つ以上のMOSトランジスタを有することを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第9様態では、本発明の第8様態に加えて、該MOSトランジスタが該ヒータ素子への電力供給をスイッチすることを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第10様態では、本発明の第8様態及び本発明の第9様態のいずれかに加えて、該MOSトランジスタが該温度検出素子の出力信号をスイッチすることを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第11様態では、本発明の第1様態乃至第4様態のいずれかに加えて、該アイランド及び該熱シールド領域は、多結晶シリコンであることを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第12様態では、本発明の第11様態に加えて、該多孔質シリコンとの境界に近い、該アイランド及び熱シールド領域の周縁部は、n型に不純物ドープされた多結晶シリコンであり、かつ、該多孔質シリコンの下地となる電極層を有することを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第13様態では、本発明の第12様態に加えて、ガラス基板上に該電極層を形成しことを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第14様態では、本発明の第12様態に加えて、BPSGまたはSOGによる埋め込み多層配線構造の上部に、該電極層を形成しことを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第15様態では、本発明の第12様態乃至第14様態のいずれかに加えて、該電極層が多結晶シリコンであることを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第16様態では、本発明の第13様態に加えて、該ガラス基板の上に多結晶シリコン薄膜またはアモルファスシリコン薄膜を用いたTFTトランジスタが少なくとも一つ存在することを特徴とする、化学反応チップとする。
本発明の第17様態では、本発明の第11様態乃至第16様態のいずれかに加えて、該アイランド上に設けた少なくとも一対のオーミックコンタクト端子を有し、該端子間の電気抵抗を測定する手段を有し、かつ、該電気抵抗を温度センサー素子とすることを特徴とする化学反応チップとする。
本発明の第18様態では、本発明の第11様態乃至第17様態のいずれかに加えて、該アイランド上に設けた少なくとも一対のオーミックコンタクト端子を有し、該端子間に通電する手段を有し、かつ、該アイランド中で発生するジュール損を熱源とする化学反応チップとする。
本発明の第1様態によれば、限られた領域内に近接して配置された複数の孤立化学反応系でありながら、温度設定の独立性を確保し、互いに異なる温度で反応を進行させることが可能となる、コンビナトリアルな化学反応系を実現することが可能と成った。
本発明の第2様態によれば各孤立化学反応系の温度設定の独立性を向上することが可能と成った。
本発明の第3様態によれば、孤立した化学反応系を各アイランドとすることにより、温度制御可能な化学反応系を実現して、化学反応チップを構築することが可能となった。
本発明の第4様態によれば、化学反応系としての各アイランドの温度設定の独立性が高い化学反応チップを実現することが出来た。
本発明の第5様態によれば、化学反応チップをシリコンの微細加工技術を用いて作製することが可能となった。
本発明の第6様態によれば、各アイランドや熱シールド領域の寸法制御性が向上した。
本発明の第7様態によれば、本化学反応チップの機械的強度が向上した。
本発明の第8様態によれば、大規模集積回路(超LSI)に用いられるMOSトランジスタ作製技術を用いて、化学反応チップを実現することが可能となった。
本発明の第9様態によれば、MOSトランジスタ作製技術を用いた、各アイランドの加熱制御が可能となった。
本発明の第10様態によれば、MOSトランジスタ作製技術を用いた、各アイランドの温度計測が可能となった。
本発明の第11様態によれば、液晶ディスプレイなどに用いられる薄膜トランジスタ(TFTトランジスタ)作製技術を用いて、化学反応チップを実現することが可能となった。
本発明の第12様態によれば、多結晶シリコンにより該アイランドを形成した化学反応チップを実現することが可能となった。
本発明の第13様態によれば、薄膜トランジスタと集積化された化学反応チップを、安価で量産化が容易な化学反応チップとして実現することが可能となった。
本発明の第14様態によれば、MOSトランジスタまたは薄膜トランジスタ、等、から成る集積回路と該孤立した化学反応系とを集積化した化学反応チップを、実現することが可能となった。
本発明の第15様態によれば、本発明の第14様態による化学反応チップを、より安価で、量産化が容易な化学反応チップとして、実現することが可能となった。
本発明の第16様態によれば、薄膜トランジスタと集積化された化学反応チップを実現することが可能となった。
本発明の第17様態によれば、多結晶シリコンにより作製した該アイランドの温度計測が可能な化学反応チップを実現できた。
本発明の第18様態によれば、多結晶シリコンにより作製した該アイランドの加熱が可能な化学反応チップを実現できた。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施例1に係わる、化学反応チップの概略構成を示した断面図である。図1に示すように、本発明による化学反応チップは、多孔質シリコン層10と、該多孔質シリコン層10に埋め込まれた1個以上のアイランド20とを有する構造を基本とする。
図2は、該アイランド20、該多孔質シリコン層10、温度センサー素子50、ヒータ60、等の配置を示した平面図である。図中のA−A‘線に対応した断面が、図1に対応する。
該アイランド20が多孔質シリコン層10に囲まれた構造は、例えば、図3に示した方法によって作製することが出来る。図3(1)に示したように、p型にドープした単結晶シリコン基板200の表面に、ホウ素などのp型不純物を高濃度ドープした領域201を形成する。領域201に金属配線などを接触させた電気配線を施した後、基板表面全体をフッ酸耐性がある樹脂などで被覆し、基板の裏面のみが露出する状態とする。この試料をフッ酸水溶液に浸し、同時にプラチナ等の対向電極をフッ酸溶液に浸して、該電気配線と該対向電極の間に通電して、電解セルを構成する。この構成では、基板200の裏面のみフッ酸水溶液に接触していることから、陽極酸化反応が裏面から進行する。より詳しく述べると、電解セルへの通電によって、高濃度ドープ領域201を通じてシリコン基板200内にホールが注入され、該シリコン基板200中を拡散・ドリフトして、基板200の裏面に到達する。陽極酸化反応は、フッ酸水溶液と接するシリコン表面に、ホールが供給された時にのみ進行し、この反応によって単結晶シリコンを多孔質シリコンに変える。図3(2)に示すように、反応の初期には、表面側の高濃度ドープ領域201から供給されたホールは裏面に均一に到達し、裏面近傍では一様に多孔質化した層(多孔質シリコン層10)が形成され始める。ところが、多孔質化が進行し、基板表面近傍まで反応が進行すると、図3(3)に示したように、表面側に形成されている高濃度ドープ領域201の付近にホール電流が集中し、その部分の反応が他の領域より速く進行するようになる。そのため、多孔質化した領域(多孔質シリコン層10)と未反応のシリコン領域の境界面が隆起し、不均一性が生じる。この不均一性は、反応の進行と伴により強調されて行き、該高濃度ドープ領域201にまで多孔質化反応が到達する時には、図3(4)に示すように、多孔質化されない領域が取り残され、多孔質化された領域(多孔質シリコン層10)に囲まれた領域として、該アイランド20が形成される。
図2から明らかなように、各アイランド20は、隣接する他のアイランドから、多孔質シリコン層10によって隔てられている。多孔質シリコン層10は、極めて小さい熱伝導率を持っている。熱伝導率の値は多孔度(porosity)によって変化し、通常、多孔度60%に対し0.2Wm-1K-1程度の熱伝導率が得られ、シリコン酸化膜の持つ熱伝導率の5分の1程度の大きさとなる。また、多孔度80%で0.03Wm-1K-1の値が得られ、シリコン酸化膜の50分の1程度の大きさとなり、この値は、常温の空気の熱伝導率に匹敵する大きさとなる。
一方、結晶または多結晶シリコンから成る該アイランド20は、多孔質シリコン層10とは対照的に、極めて大きい熱伝導率(168Wm-1K-1程度)を持つ。このため個々の該アイランド20が占める領域全体に亘って温度は均一であると考えられる。一方、これらアイランド20が、熱伝導率が低い多孔質シリコン層10によって隔てられて複数存在している状況では、隣接アイランド間の温度に差異が生じても、これらの温度の不均一が均一化することは容易ではない。なぜなら、多孔質シリコン層10を介しての熱の移動が極めて緩慢であるからである。本発明の基本構造である「多孔質シリコン層10に埋め込まれた1個以上のアイランド20」という構造の特徴を用い、該アイランドの上に該アイランドと熱的な結合が強い化学反応系を一個ずつ構築すれば、これら化学反応系間の熱の交換が抑圧され、限られた領域内に近接して配置された複数の孤立化学反応系でありながら、温度設定の独立性を確保し、互いに異なる温度で反応を進行させることが可能となる、コンビナトリアルな化学反応系を実現することが可能と成った。
このような状況は、局所的に加熱する機構だけでは実現できず、局所的に発生した熱の流出を抑える処置を施さなければ、実現できない。これまで、局所的な熱発生は可能であったが、熱の交換を抑制する機構を実現する方法は極めて限られており、特に、集積度が高い場合には、隣接した化学反応系の温度設定の独立性を保障することは困難であった。熱的な独立性を保障する、本発明による化学反応チップの特性は、DNAチップを始めとするコンビナトリアルな化学反応系全般において必要とされる特性であった。しかしながら、微細加工が可能なシリコン材料という、汎用性の高い材料系において、有効な熱絶縁材料が存在しなかったことから、これまで、実現しにくい特性であった。
本発明による化学反応チップによれば、特許文献1に開示された従来例に比べて、隣接するアイランド間の熱的絶縁性が飛躍的に向上し、各アイランドの温度制御の独立性が大幅に向上した。すなわち、従来例では、アイランドが2μmを超える厚さを有するシリコン酸化膜メンブレイン上に形成されていたため、メンブレインを介した熱伝導のため、十分な熱絶縁性が得られず、アイランド間の距離が50μm以下に小さく成ると、隣のアイランドからの熱流入、または、隣のアイランドへの熱流出により、アイランド間の温度設定の独立性が十分得られなかった。
図1に示したように、多孔質化した基板を、ガラス基板などの補強基板11に接着して用いることもできる。これにより、多孔質化後の基板の強度を補強することができる。また、十分な多孔質層の厚さを確保すれば、該補強基板11と該アイランド20の熱絶縁性は、十分に確保できる。
また、該アイランド20上には酸化膜21、及び、シリコン窒化膜から成る保護層30が積層され、該保護層30上には、オリゴヌクレオチドプローブなどの、化学反応に関わるプローブを固定するプローブ固定領域40が形成される。
該アイランド20中には、該アイランド20の温度を検出する温度センサー素子50とヒータ60が形成される。ここでは、該温度センサー素子50は、特許文献1に開示されているpn接合の電気特性の温度依存性を用いている。なお、pn接合の変わりにプラチナなどの金属薄膜の電気抵抗の温度依存性を用いることもできる。
本実施例では、該アイランド20は、p型にドープした単結晶シリコン基板から作製されたものとする。該温度センサー素子50は、p型の単結晶シリコンから成る該アイランド20中に、n型にドープされた領域56を作製し、その周囲に形成されるpn接合を温度センサーとしている。なお、n型にドープされた該領域56の内部には、n型に高濃度ドープされた領域55を形成してn型領域へのオーミックコンタクトを実現して、温度センサー素子の一つの端子とする。これに隣接してp型の高濃度ドープされた領域57を作製してp型領域へのオーミックコンタクトを実現し、温度センサー素子のもう一つの端子とする。これらの端子間を、pn接合を順方向バイアスする極性に電流バイアスして、両端子間に発生した電圧を、該温度センサー素子50の出力信号としている。その際、センサー入出力装置51は、該出力信号を得るための電流バイアスを温度検出素子に供給する。また、該温度センサー素子50からの電圧信号は、センサー入出力装置51を介してヒータ制御装置61に入力され、ヒータ60への電力供給量を調節することにより該アイランド20の加熱を制御し、該アイランド20の温度が制御される。また、温度センサー素子50、センサー入出力装置51、ヒータ60、ヒータ制御装置61は、各アイランド20ごとに設けられているため、各アイランド20の温度を独立に制御することが出来る。本実施例では、p側の端子に800kΩの内部抵抗を有する定電流源を接続し、pn接合を10μAで定電流バイアスした。その際、n側の端子に対してp側の端子66が正と成るような、順方向バイアスを用いた。図4は、このようなバイアス条件下で観測された、両端子間の電位差の温度依存性である。測定した該電位差を図4によって温度に変換すれば、該アイランド20の温度を精度良く測定出来る。
図2において、ヒータ60を示す領域は、p型シリコン基板の表面にn型不純物をドープした領域に対応し、この領域の両端にオーミックコンタクを取って通電すれば、その電流はこのn型不純物をドープした領域に局在して流れ、その際のジュール損によって発熱する。シリコン単結晶は十分な熱伝導性を有するため、該アイランド20全体を均一に加熱することが出来る。
ところで、本発明における「化学反応に関わるプローブ」とは、特定の物質、部位、状態などを特異的に検出できる物質をいい、その例として、オリゴヌクレオチドDNA・RNAブロープ、抗体等のタンパク質ブロープなどを挙げることができる。オリゴヌクレオチドDNA・RNAブロープの場合、その塩基数は、4〜500n t(ヌクレオチド)であるとよく、好ましくは、8〜200n t(ヌクレオチド)である。オリゴヌクレオチドブロープは1本鎖でも2本鎖でもよいが、ブロープと測定対象との結合効率の点から、1本鎖であることが好ましい。
プローブは、公知の方法により、シリコン窒化膜から成る保護層30上に固定することができる。例えば、シリコン窒化膜をシラン化して、ブロープにアミノ基を設けておけば、シランカップリングでブロープを保護層30上に固定することができる。その際、リソグラフィー技術を用いて、シランカプリング剤を該プローブ固定領域40の位置と形状に一致するようにパターン化しておけば、固定するプローブを各アイランド20の直上に配置することに出来るので、ブロープとアイランドの熱的結合を最も大きく出来る。シランカップリング剤のパターンニングを行う場合には、該プローブ固定領域40は、該シランカップリング剤が固定された領域と同義となるが、スポッティング等の他の方法によってプローブを固定する領域とその位置を決める場合は、必ずしも同義ではない。
シランカップリング剤として、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(qlvcldoxyproplltrlmethoxy Sllane)を用いることができる。その際、反応条件として、常温反応30分、120℃でのベーク1時間を用いる。次に、予めアミノ基を末端に導入したオリゴヌクレオチドブロープを、所定のブロープ固定面にスポットする。乾燥を防ぐため、高湿度条件下で500℃、15分の反応を行い、シランカップリングによりブロープが該保護層30上の該プローブ固定領域40に固定される。次に、過剰のポリリジンをチップに注入し、高湿度条件下で50℃、10分の反応を進行させるとブロープと結合していない官能基にリジンを結合できる。この処理は、実際に試料とハイブリダイゼーションを行う際の非特異的吸着によるバックグラウンドの低減に有効である。特に、シランカプリング剤をパターニングしない場合は必要不可欠である。最後に、トリスEmAを用い、DNAチップ表面を洗浄して乾燥保存する。
ところで、図1に示したアイランド20の平面的な広がりと、プローブ固定領域40の平面的な広がりは、ほぼ一致させて作製される。この構造において、保護層30として用いるシリコン窒化膜の厚さは最低20nm程度とすることが可能で、アイランド20とプローブを隔てる距離は、このシリコン窒化膜の厚みと酸化膜21の厚みの和に等しくなり、100nm以下とすることは容易である。一方、特許文献1に開示された実施例では、アイランドとプローブは、2μmを超えるシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜から形成されるメンブレインによって隔てられており、メンブレンイン強度を確保する必要から、この厚みを薄くすることは不可能である。その結果、アイランドとプローブの熱的結合が、本発明による実施例に比べて著しく弱い。保護層の厚みを薄くすることに成功した本発明により、プローブにおける相補鎖結合反応の温度制御性が著しく向上した。
ブロープの種類は、特に限定されず、1種類でもよいし、複数種でもよい。例えば、1枚の基板に複数種のブロープを固定したチップを用いれば、1つのサンプルで複数個の検出対象物を同時に検出することができる。また、1枚の基板に1種類のブロープを多数固定したチップを用いれば、複数のサンプルにおける1個の検出対象物を同時に検出することができる。
図5は、実施例2における化学反応チップの、アイランド20の平面配置を示した図である。図6は、図5におけるX−X‘線に対応した断面構造を示した図である。また、図7は、図5におけるY−Y‘線に対応した断面構造を示した図である。図中の番号のうち、実施例1に用いられている番号と同じものは、本実施例2においても、実施例1と同じ意味を持っている。実施例1において、アイランド20間は多孔質シリコン層10で隔てられていたが、本実施例2では、アイランド20間に熱シールド領域70を設けている。熱シールド領域70は、アイランド20と同様、多孔質化されずに残ったp型の単結晶の領域である。
該熱シールド領域70は、チップ全体に亘って連続したメッシュ状の領域を形成し、その領域は、チップの端部にまで伸展している。さらに、該熱シールド領域70は多孔質化していないシリコンの領域であるため、高い熱伝導性を有する領域であるから、チップの端部をペルチェ素子により冷却すれば、熱シールド領域70の熱伝導を通じてチップ全体を均一性良く冷却することが出来る。
特許文献1に開示された従来例では、KOHを用いたウェットエッチングにより本実施例と同様な機能を有するメッシュ構造が作製されているが、アイランドと同様、形状が結晶方位で定まるファセットを生じることから、メッシュ構造の寸法に制限が生じている。本発明では、実施例1の場合よりも、よりアイランドに近接した単結晶領域を形成するため、寸法制御性がより優れている図8に示す方法により、該熱シールド領域70、及び、該アイランド20を形成した。
p型にドープされた単結晶シリコン基板200の表面に、n型ドープされた領域から成るストップ領域25を形成する。ストップ領域領域25は、アイランドを形成する直下の位置に配置する。その上に、p型ドープされたp領域205を再成長し、その最表面に、p型に高濃度ドープされた領域、高濃度ドープ領域201、を形成し、ホール注入端子とする。こうして作製された基板の構造を図8(1)に示す。該高濃度ドープ領域201は、ストップ領域25の直上ではない領域に形成されていることに注意する。
上述のように準備した基板を、図3に示した方法と同様な方法によって、裏面から陽極酸化する。すなわち、表面側の、高濃度ドープ領域201を通じてホールを注入し、該シリコン基板200の裏面のみで陽極酸化反応が進行する構成を用いる。陽極酸化反応は、フッ酸水溶液と接するシリコン表面に、ホールが供給された時にのみ進行し、この反応によって単結晶シリコンを多孔質シリコンに変える。図8(2)に示すように、反応の初期には、表面側の高濃度ドープ領域201から供給されたホールは、ストップ領域25の間隙を抜けて流れ、裏面に均一に到達し、裏面近傍では一様に多孔質化した層(多孔質シリコン層10)が形成され始める。ところが、多孔質化が進行し、ストップ領域25近傍まで反応が進行すると、図8(3)に示したように、ストップ領域25が存在しない領域にホール電流が集中し、多孔質化反応が局在化し始める。なぜなら、p型基板中に形成されたn型のストップ領域25の周囲には、pn接合が形成されており、pn接合の形成による空乏化のためにホールが供給されず、ストップ領域25とその近傍にはホール電流が流れないからである。さらに反応が進行すると、表面側に形成されている高濃度ドープ領域201の存在により、ホール電流は集中し続け、多孔質化反応の局在性を維持したまま、高濃度ドープ領域201にまで到達しする。その結果、図8(4)に示すように、該ストップ領域25の直上に、多孔質化されない領域が生じ、多孔質化された領域(多孔質シリコン層10)に囲まれた領域として、該アイランド20が形成される。なお、図6、図7において、該熱シールド領域70及び該アイランド20の中には、ストップ領域25と、同様な役割を果すストップ領域75の断面構造が示されている。
本実施例においては、ストップ領域25の存在を除いて、アイランド20内の構造は、実施例1の場合と等しい。本実施例2において、X−X‘断面を示す図6には、温度センサー素子50の一部を成す、n型にドープされた領域56及び該領域56の内部に形成されたn型に高濃度ドープされた領域55の断面が示されている。また、ヒータ60の断面も描かれている。さらに、実施例1と同様な方法によって、プローブ固定領域40が形成され、用途に応じたプローブが固定される。
さらに、本実施例では、該熱シールド領域70を、温度制御装置の一部を設置する場所としても活用している。すなわち、該熱シールド領域70中及びその表面に、MOSトランジスタ回路が組み込まれ、これによって温度センサー素子50、該ヒータ60、へのバイアス、電力供給などが制御される。図6において、該熱シールド領域70は、p型の高抵抗領域とし、この表面にShallow Trench Isolation 等と呼ばれる素子分離のための酸化領域700を形成し、ドレイン510、ソース520、ゲート530、等、から形成されるMOSトランジスタ500と、ドレイン610、ソース620、ゲート630、から形成されるMOSトランジスタ600、等から成るMOSトランジスタ600を作製する。図6において、これらのMOSトランジスタを点線枠で囲ってある。該熱シールド領域70中の表面に、これらのMOSトランジスタの構成部分を不純物拡散、等、によって作製し、CMPなどの平坦化技術を用い、ゲートなどを埋め込む層間絶縁層300を形成する。さらに、コンタクトホールを形成してタングステンコンタクトプラグを形成し、ソース、ドレイン、等のMOSトランジスタの各部に電気的コンタクトを形成するとともに、層間絶縁層300上に、ゲート530にコンタクトして紙面に垂直に伸びる配線531、及び、ゲート630にコンタクトして紙面に垂直に伸びる配線631、が形成される。同時に、ドレイン510、ドレイン610にコンタクする配線511、配線611、等も形成される。なお、ソース520とソース620はメタルで接続され、コンタクを介して、層間絶縁層320上の配線410に接続されている。なお、この配線410は、A−A‘断面とは異なる面内で、グランドプレーン400に接続される。
層間絶縁層300上の各配線が形成された後、これらを埋め込んで平坦化される層間絶縁層310が形成され、該層間絶縁層310上には配線512、配線612、等が形成される。配線512は、ビアプラグを介して配線511に接続されるとともに、隣接するアイランド20上の、温度センサー素子を形成する、高濃度ドープされたn型領域、領域55、に接続される。MOSトランジスタ素子500は、温度センサー素子へのバイアス回路のスイッチング素子として動作することとなる。一方、ビアプラグを介してMOSトランジスタ600のドレイン610に接続された配線612は、ヒータ素子60の一方の端子に接続され、これにより、ヒータ素子60への電力供給のスイッチング素子として使用される。
こらの配線512、及び、配線612は、層間絶縁層320によって埋め込まれ、平坦化を行った後に、グランドプレーン400を形成する。さらに、グランドプレーン400は、絶縁層330によって埋め込まれ、その上部には、シリコン窒化膜から形成される保護層30が形成される。これによって、該熱シールド領域70上に形成した電子回路や配線、等は、試料溶液への暴露から遮蔽され、保護される。また、該保護層30は、該アイランド20表面にも連続した保護層として形成され、該アイランド20の直上には、プローブ固定層40、などが形成される。
図7は、図5におけるY−Y‘線に対応した断面構造を示した図である。この断面では、アイランド20内のヒータ素子60の異なる領域の断面が示されており、また、温度センサー素子50は、この断面に含まれていないことが分かる。また、該熱シールド領域70の断面内には、MOSトランジスタ600の断面のみが示されている。その理由は、より大きい電流をスイッチすることが必要なヒータ素子60を制御するMOSトランジスタ600のゲート幅は、より小さい電流をスイッチする温度センサー素子50の制御に用いるMOSトランジスタ500のゲート幅より、長いからである。なお、図7は、トランジスタ600のドレインは、プラグ、配線611を介して配線612に接続されており、Y−Y’断面内において、ヒータ素子60の一方の端にオーミックコンタクトを介して接続されていることを表現している。
図9は、アイランド20の配置と、各配線の配置とを、平面図として模式的に示したものである。図9では、各アイランド20から出ている配線のうち、縦に隣接するアイランドからの配線を接続する「縦に接続する配線群」と、横に隣接するアイランドからの配線を接続する「横に接続する配線群」、とが存在することが示されている。図7において、紙面に垂直に伸びる配線531、631、は、図9の平面図内における、「縦に接続する配線群(MOSトランジスタのゲート端子を縦に接続している)」に対応している。一方、各アイランド20上で、温度センサー素子50のp型高濃度ドープ領域57へ接続する端子、及び、ヒータ素子60のMOSトランジスタ600の端子に接続されなかった残りの端子、が、図9の平面図内における、「横に接続する配線群」によって横に接続されている。なお、図から明らかなように、これらの配線は熱シールド領域70上に形成される。
各アイランド上の素子への外部回路との接続を示したものが図10である。図中、点線の四角形で囲んだ領域が、各々、一つのアイランドを表している。温度センサー素子50をダイオード記号で表現し、ヒータ素子60を抵抗の記号で表現してある。この図では、4つのアイランドの接続状況のみを示しているが、より多くのアイランドがアレイ状に接続されている場合でも、以下の説明は当てはまる。図10を用いて、4個のアイランドのうち、左下のアイランドの温度測定動作を説明する。まず、制御装置900より、データバス910を通じて、列デコーダ911に対し、左端のアイランド列を選択する列選択信号が送られる。これにより、スイッチ913がオンされ、左端の列のアイランド上に有るMOSトランジスタ500のゲートに接続された配線が、バイアス電圧を供給する電圧源912に接続され、左端のアイランド列が選択される。一方、制御装置900より、データバス920を通じて、行デコーダ921に対し、下端の行を選択する行選択信号が送られる。これにより、スイッチ923がオンされ、下端の行のアイランド上に有る各温度センサー素子50とこれらをバイアスする電流源926が接続され、下端のアイランド行が選択される。この状況では、左下の温度センサー素子50のみが通電され、他のアイランド上の温度センサー素子には通電されないため、温度測定端子924上には、左下の温度センサー素子のセンサー出力(pn接合の両端の電位差にほぼ等しい)が現れる。このセンサー出力はデータバス920を通じて制御装置900に送られる。制御装置900は、このセンサー出力を温度に変換し、設定温度との誤差を算出する。この誤差を修正するため、温度制御装置900は、アイランド上のヒータ素子60への電力供給を制御する。
上記電力供給の制御は、以下のように行われる。すなわち、データバス910を通じて列デコーダ911に対し、左端のアイランド列を選択する列選択信号が送られる。これにより、スイッチ914がオンされ、左端の列のアイランド上に有るMOSトランジスタ600のゲートに接続された配線が、バイアス電圧を供給する電圧源912に接続され、左端のアイランド列が選択される。一方、制御装置900より、データバス920を通じて、行デコーダ921に対し、下端の行を選択する行選択信号が送られる。これにより、スイッチ925がオンされ、下端の行のアイランド上に有る各ヒータ素子60とこれをバイアスする電圧源922が接続され、下端のアイランド列が選択されることになる。この状況では、左下のヒータ素子60のみが通電されるため、バイアス電圧源922からの出力を調節することにより、ヒータ素子60でのジュール損を制御できる。例えば、バイアス電圧源922からの出力電圧を繰り返しパルス電圧として、その振幅と、繰り返し周波数、パルスデューティ、等の出力電圧をパラメータとして、ヒータ素子60への電力供給を制御することも出来る。
上記の温度制御手続きを記述したプログラム、各アイランドの設定温度、及び、温度センサー素子の更正曲線、等は、ストレージ装置930上の磁気ディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録されているものとし、本デバイスが動作する際、制御装置900を構成するコンピュータ上のメモリに読み込まれ、該プログラムが実行される。また、上記プログラム中の、動作中の各アイランドの温度、等は、制御装置900に接続されたストレージ装置930に転送されて、磁気ディスクや光磁気ディスク、等の記録媒体などに記録される。
次に、共通な塩基長(8塩基長)を有し、かつ、互いに塩基配列の異なる4種類のプローブを固定して作製した、本実施例による化学反応検出チップ(以下DNAチップと呼ぶ)を用い、17塩基長を有する一種類のDNA断片(以下、サンプルDNAと呼ぶ)を相補鎖結合させる場合の融解温度Tmを、各プローブごとに決定した例について述べる。
次の塩基配列を持ったサンプルDNA
TGACCGGCAGCAAAATG (配列番号1)
を配列番号1とし、以下の4種類の8塩基長のDNA断片、
CCGTCGTT (配列番号2)
GCCGTCGT (配列番号3)
GGCCGTCG (配列番号4)
TGGCCGTC (配列番号5)
をプローブとし、各々プローブ1〜4とする。ブロープ1(配列番号2)は、サンプル上の6番目から13番目の塩基に相補的な配列となっている。同様に、プローブ2(配列番号3)は5番目から12番目に、ブロープ3(配列番号4)は4番目から11番目に、ブロープ4(配列番号5)は3番目から10番目に、それぞれ相補的な配列となっている。なお、プローブ1〜4の塩基配列に現れるチミン(T)の数を数えてみると、
プローブ1は3個、
プローブ2は2個、
プローブ3は1個、
プローブ4は2個、
となることが分かる。アデニン(A)とチミン(T)の結合の安定性は、グアニン(G)とシトシン(C)の結合の安定性に比べて低いことから、チミン(T)の数が大きいほど、相補鎖結合の強さは減少し、融解温度が低く成ると予想できる。
図11は、4行9列(=36個)のプローブ固定領域40を形成し、ブロープ1〜4を、これらのプローブ固定領域40上に、どのように固定するかを示した図である。ここでは、本DNAチップを上面から観察し、各行の番号(1〜4)と列の名前(a〜i)を示してある。1行目の全てのプローブ固定領域は、プローブ1のみを固定する。同様に、2行目の全てのプローブ固定領域は、プローブ2のみを固定し、3行目の全てのプローブ固定領域はプローブ3のみを固定し、4行目の全てのプローブ固定領域はプローブ4のみを固定する。
このDNAチップに、予め蛍光標識されたサンプルDNAを含んだ溶液を注入し、ハイブリダイゼーションを行う。その際、以下のような温度設定プログラムにしたがい、反応を進行させる。すなわち、最初室温にある各プローブ固定領域全てを、対応する各アイランドの温度制御によって、90℃に上昇させる。続いて、各列ごとに、設定温度にまで冷却する。図4の各列の下部に示した数値は、各列に設定される温度である。図11において、a列の設定温度は10℃であり、隣のb列の設定温度は、a列より5℃高い15℃である。図に示したように、一列右にずれる度に5℃づつ設定温度を高くしており、最終列のi列では、設定温度は50℃とする。a列の温度が5℃の設定温度に到達した後、十分な反応時間だけ経過したら、DNAチップを洗浄溶液で洗浄し、ハイブリダイゼーションしていないサンプルDNA等を排除する。ハイブリダイゼーションの評価は、レーザー蛍光共焦点顕微鏡を用いてチップ面上を走査し、各プローブ固定領域内の、サンプルDNAに付与された蛍光標識から発せられる蛍光を観測して行う。
図12は、ハイブリダイゼーション後の、各プローブ固定領域の蛍光強度と設定温度との関係を示したものである。蛍光強度は、ハイブリダイゼーション温度が10℃の場合の発光量を1として規格化した。図12から明らかなように、設定温度の上昇とともに、ハイブリダイゼーション量が減少していることがわかる。このプロットを内挿し、縦軸値の0.5における温度を読み取って、融解温度Tmを求めることが出来る。この図から、ブロープ1〜4とサンプルDNAの相補鎖結合における融解温度Tmは、各々25.0℃、36.5℃、41.4℃、35.0℃であることが分かる。図13は、特許文献1に開示された方法により、同様な測定を行った結果である。図12と図13を比較すると、縦軸値の0.5の水平線を横切る角度が、本実施例においてはより急峻になっており、融解温度測定の精度が向上していることが分かる。
次に、上述のようなDNAチップを用いて、1塩基ミスマッチを検出する方法を述べる。
上述のサンプルDNAにおける8番面の塩基であるシトシン(C)が、アデニン(A)に変わった多型サンプルAと、チミン(T)に変わった多型サンプルBを用いる:
TGACCGGAAGCAAAATG (配列番号6)
TGACCGGTAGCAAAATG (配列番号7)
ここでは、ミスマッチが無い元のサンプルDNAを、正常サンプルと呼ぶ。これら正常サンプルと一塩基多型のサンプルに対し、上述と同じDNAチップを用い、同様なハイブリダイゼーションの設定温度依存性を評価する。なお、議論を単純化するため、プローブ1のみの結果について議論する。
図14は、ハイブリダイゼーションの評価結果である。1塩基多型に対しては、本来、ハイブリダイゼーションが生じないことが理想的であるが、実験結果は1塩基多型に対して、ある程度のハイブリダイゼーションが生じることを示している。しかしながら、これら1塩基多型のサンプルにおいては、一箇所だけミスマッチが有るために、正常サンプルに比べて相補鎖結合の安定性が低く、縦軸値の0.5の水平線を横切る温度、すなわち融解温度Tmが低くなっていることが分かる。図15に示した例では、設定温度38.0℃では、1塩基多型に対するハイブリダイゼーションが抑制されて殆ど観測されず、一方、正常サンプルの方は90%程度の高い効率でハイブリダイゼーション出来る条件であることが分かる。この事実から、ハイブリダイゼーション時の設定温度を変えると、正常サンプルから発せられる蛍光強度と1塩基多型のサンプルから発せされる蛍光強度の割合が温度によって変化し、正常サンプルに混入する一塩基多型の割合を評価することが可能と成る。
図15は、特許文献1に開示された方法により、同様な測定を行った結果である。図15に示された測定結果では、縦軸値の0.5の水平線を横切る角度が浅く成っており、本実施例による図14の結果に比べ融解温度測定の精度が劣化していることが分かる。このため、仮に設定温度を38.0℃としても、多型サンプルAにおけるハイブリダイゼーションが無視できない効率(20%以上)で生成されており、一方、正常サンプルのハイブリダイゼーションの効率が75%以下に落ちていることが分かる。これらの違いは、温度設定の精度の違いによるものと考えられ、正常サンプルに混入する一塩基多型の割合を評価する場合に、大きな障害と成る。
図16は、実施例3における化学反応チップの、アイランド20の平面配置を示した図である。図17は、図16におけるZ−Z‘線に対応した断面構造、及び、W−W‘線に対応した断面構造を示した図である。図中の番号のうち、実施例1及び実施例2に用いられている番号と同じものは、本実施例3においても、同じ意味を持っている。
本実施例におけるアイランド20は、図18に示す方法によって作製された。図18(1)に示すように、ガラス基板などの単結晶ではない基板15上に、p型に高濃度ドープされた多結晶シリコンからなる、電極層450を形成しする。該電極層450を下地として、その上にp型にドープされた多結晶シリコン層250を積層し、さらに、アイランドを形成する領域にn型の不純物ドープを施し、n型ドープ領域210を作る。
多結晶シリコン層250及びn型ドープ領域210の表面がフッ酸水溶液に浸されるセル構造を用い、陽極酸化する。その際、該電極層450に電気的コンタクトを設け、該電極層450を通じてホールを注入し、陽極酸化反応に伴う多孔質シリコン化反応が、多結晶シリコン層250及びn型ドープ領域210の表面から始まるようにする。フッ酸水溶液中の対向電極と該電極層450の間のバイアス条件を適当に選ぶと、該電極層450から注入されたホールは、p型にドープされた多結晶シリコン層250とフッ酸水溶液との界面に到達し多孔質シリコン化する反応を起こす。しかし、n型ドープ領域210には到達せず、この領域とフッ酸水溶液との界面にはホールの供給が行われないため、該多孔質シリコン化反応が起こらない。したがって、多結晶シリコン層250のみで多孔質化反応が進行し、n型ドープ領域210は多結晶シリコンの状態のまま取り残される。そのため、図18(2)に示すように、多孔質シリコン化反応は、n型ドープ領域210の背後に回りこんで進行して行く。さらに反応が進行して多孔質化された領域と未反応の領域の界面が深化すると、図18(3)に示すように、表面の不純物ドープの不均一性が影響しなくなり、均一な反応界面となって該電極層450に到達する。その結果、該n型ドープ領域210は完全に多孔質シリコン層10に囲まれて、アイランドを形成する。
上記のような方法によって、図16に示すように、アイランド領域20及び熱シールド領域70を形成し、これらの間を、多孔質シリコン層10によって熱的に絶縁した構造を作製する。多結晶によるアイランドを用いる本実施例の場合には、アイランド中に実施例2と同様なpn接合を作製することは困難であるため、アイランド中のヒータ素子作製、及び、温度センサー素子、の機能を、アイランド自体に通電することによって充足させる。すなわち、図16に示すように、高濃度ドープによって形成された端子58及び端子59間をバイアスすると、n型にドープされたアイランドは抵抗素子65となり、アイランド内に電子電流が流れ、これによってジュール損を発生させてアイランドを加熱することができる。抵抗素子65の特性は、アイランド20を構成する多結晶シリコンのグレインサイズ、厚み、及び、不純物ドープ濃度によって大きく変化する。特に、その温度特性は、不純物ドープ濃度に対して敏感に変化する。図19は、該抵抗素子65の温度特性を、異なる不純物ドープ濃度に対して測定した結果である。図では、温度変化を160℃における比抵抗に対する比で表わしている。図19から明らかなように、不純物ドープ濃度が5x1018cm-3以下の場合には、十分な温度係数を有していることが明らかであり、実施例2と同様、該抵抗素子65を電流バイアスして、該端子間に発生する電位差を計測し、図19のデータによって温度に変換すれば、精度良くアイランドの温度を計測出来る。
図17には、該アイランド20と熱シールド領域70、等の断面構造が示されている。アイランド上の該オーミックコンタクト端子58及び端子59示は、各々Z−Z‘線に対応した断面構造、及び、W−W‘線に対応した断面構造、として描かれている。また、保護層30によって覆われたアイランド領域上には、実施例1と同様な方法によって、プローブ固定領域40が形成され、用途に応じたプローブが固定される。また、基板と各アイランドとの熱的絶縁性を十分確保するため、多孔質シリコン層10の厚みは、少なくとも1μm程度以上の値に形成される。なお、本実施例では、電極層450は、ガラス基板などの単結晶ではない基板15上に作製されている。
図17には、該熱シールド領域70の断面構造も示され、実施例2と同様、温度制御装置の一部を構成する状況が示されている。本実施例よる該熱シールド領域70は、多結晶シリコンで構成されているため、実施例2のようなMOSトランジスタを作製することは困難である。そのため、本実施例では、これらスイッチング素子の代用として、多結晶シリコンによるTFTトランジスタ550及びTFTトランジスタ650を用いている。
TFTトランジスタ550は、ドレイン560、ソース570、ゲート580、等により構成されている。該ドレイン560は、コンタクトプラグを通して配線561に接続され、さらに、配線585に接続されている。一方、TFTトランジスタ650は、、ドレイン660、ソース670、ゲート680、等により構成される。該ドレイン660は、コンタクトプラグを通して配線661に接続され、さらに、TFTトランジスタ550のドレイン560が接続されている、配線585に接続されている。また、該ゲート580、ゲート680は、コンタクトプラグを介して、各々、紙面に垂直に伸展する配線581、配線681に接続される。両TFTトランジスタのドレインが接続された配線585は、Z−Z‘線に対応した断面に有るアイランド上のオーミックコンタクト端子58に接続される。なお、W−W‘線に対応した断面に有るアイランド上の端子59は、該アイランド20の左側に描かれた熱シールド領域70上に形成されているグランドプレイン400に接続されている。該グランドプレイン400は、該アイランド20の右側に描かれているグランドプレイン400と接続されている。なお、これらの配線は、実施例2と同様な方法によって作製される。
図20は、本実施例におけるアイランド20の配置と、各配線の配置とを、平面図として模式的に示したものである。実施例2と同様、各アイランド20から出ている配線のうち、縦に隣接するアイランドからの配線を接続する「縦に接続する配線群」と、横に隣接するアイランドからの配線を接続する「横に接続する配線群」、とが存在することが示されている。例えば、図17における紙面に垂直に伸びる配線581、681、は、図20の平面図内における、「縦に接続する配線群(TFTトランジスタのゲート端子を縦に接続している)」に対応している。一方、各TFTトランジスタの一方の端子は、アイランド上の抵抗素子65の端子58に接続され、他方の端子は、各々、「横に接続する配線群」に、独立に接続されている。また、図20からも明らかなように、これらの縦と横の配線は、熱シールド領域70上に形成される。なお、抵抗素子65の他方の端子59は、熱シールド領域70内に連続して形成されるグランドプレイン400に接続されている。
本実施例における、各アイランドと外部回路との接続を示したものが図21である。実施例1におけるMOSトランジスタ600とヒータ素子60の組み合わせは、本実施例においては、TFTトランジスタ650と抵抗素子65によるヒータ素子の組み合わせと同等な動作を行うことは自明である。また、実施例2における、温度計測を電流バイアス下のpn接合ダイオードの両端の電圧変化で測定する方法は、本実施例3では、電流バイアス下の多結晶シリコン薄膜による抵抗素子の両端の電圧変化で測定する方法に置き換わっているだけで、両者の外部回路は、電流バイアス回路と電圧検出回路を用いる点で、全く同等なものである。これらの同等性から、本実施例3による化学反応チップは、実施例2と全く同等な動作を実現することが分かる。
本実施例による化学反応チップを用いて、実施例2と同様なDNAのハイブリダイゼーションを伴う実験を行ったところ、実施例2と同等な結果が得られ、特許文献1に対し、解析精度の改善が見られた。
一方、本実施例では、薄い多結晶シリコンをガラス基板上に堆積する方法を用いているため、多孔質シリコン化するシリコン層の厚みは10μm程度で良い。この多孔質化を必要とするシリコン層の厚みは、単結晶シリコン基板(〜数百μm程度)を裏面から殆ど全て多孔質化することが必要と成る実施例1に比べ、遥かに薄い。このため、多孔質化反応のためのフッ酸の消費量が大幅に軽減されると同時に、作製時間も短縮され、より安価な装置が提供できるというメリットがある。
図22は、実施例4における化学反応チップの、アイランド20の平面配置を示した図である。図23は、図22におけるZ−Z‘線に対応した断面構造を、図24は、図22におけるW−W‘線に対応した断面構造を示した図である。図中の番号のうち、実施例1乃至実施例3に用いられている番号と同じものは、本実施例4においても、同じ機能や役割を持っている。
図22から明らかなように、実施例2または実施例3とは異なり、本実施例では、スイッチングに用いるトランジスタを熱シールド領域70上に作製せず、各アイランド20の直下に作製している。その結果、熱シールド領域70を極端に小さくすることができ、結果として、アイランド20の集積度を上げることができる。
図23に示したように、単結晶シリコン基板80上に、本実施例のデバイスが形成される。該基板80は高抵抗基板であり、ここではp型の基板を使っている。この基板上にShallow Trench Isolation 等と呼ばれる素子分離のための酸化領域700を形成し、ドレイン510、ソース520、ゲート530、から形成されるMOSトランジスタ500と、ドレイン610、ソース620、ゲート630、から形成されるMOSトランジスタ600と、を作製する。これらのMOSトランジスタは、実施例2における単結晶の熱シールド領域70上に作製されたMOSトランジスタと同等なものである。
次に、CMPなどの平坦化技術を用い、ゲートなどを埋め込む層間絶縁層300を形成した後、コンタクトホールを形成してタングステンコンタクトプラグを形成する。層間絶縁層300上には、ゲート530にコンタクトして紙面に垂直に伸びる配線531、及び、ゲート630にコンタクトして紙面に垂直に伸びる配線631、が形成される。同時に、ドレイン510、ドレイン610にコンタクする配線511、配線611、等も形成される。なお、ソース520とソース620はメタルで接続され、コンタクを介して、層間絶縁層300上の配線410に接続されている。なお、この配線410は、Z−Z‘断面とは異なる面内で、グランドプレーン455に接続される。
層間絶縁層300上の各配線が形成された後、平坦化された層間絶縁層310が形成され各配線を埋め込む。層間絶縁層310上には配線512が形成され、配線511と配線611をビアプラグを介して接続する。さらに、これらの配線は平坦化された層間絶縁層320によって埋め込まれ、層間絶縁層320上には、n型の高濃度ドープされた多結晶シリコン層からなる、グランドプレーン455が形成される。グランドプレーン455は、グランドプレーンとして使用されるが、同時に、多孔質シリコン層10を形成する際に、陽極酸化用の電極としても用いられる。この意味で、グランドプレーン455は、実施例3における電極層450としての役割を担っている。また、グランドプレーン455は、BPSGやSOGなどの塗布ガラス層等からなる相関絶縁層320の上に形成されることから、一種の非結晶基板上に作製されるものと考えられ、この点でも、実施例3と同様である。
多孔質シリコン層10を可能な限り均一に形成するためには、このグランドプレーン455を出来るだけ途切れることなく、大きい面積で形成するとよい。この目的のために、グランドプレーン455の下層から来る配線は、出来るだけ小さい貫通孔を通して配線すると良い。図では、配線512から伸びるプラグ515が、該グランドプレーン455に設けた貫通孔を通して、アイランド20へ達している。アイランド20は、該グランドプレーン455を形成した後、p型の多結晶シリコン層を形成し、グランドプレーン455を実施例2における電極層450(図17参照)として用いることにより、図18に示した方法を適用して形成される。n型にドープされた多結晶シリコンから形成されるアイランド20上には、n型に高濃度ドープされたオーミックコンタクト領域58が形成され、ドライエッチング技術による深穴を形成してプラグ515を作製し、アイランド20上のオーミックコンタクト領域58と配線512を接続し、結果として、MOSトランジスタ500及び600の両ドレイン510、及び、610を、アイランド20上の温度センサー兼ヒータ素子へ接続する。すなわち、本実施例においても、実施例3と同様に、多結晶シリコンによるアイランドを電気抵抗素子と考え、この素子のジュール損を利用してアイランドの加熱をはかり、同時にその温度特性を利用して、アイランドの温度を測定しようとするものである。
図24は、図22におけるW−W‘線に対応した断面構造を表す。この断面上には、アイランド上のオーミックコンタクト端子59が描かれており、図23におけるビアプラグ515と同様、多孔質シリコン層10を貫く深穴に沿ったビアプラグ555によって、該端子59と、グランドプレイン455が接続されている。なお、実施例2と同様、ヒータ素子をスイッチングするMOSトランジスタ600は、温度センサーとしてアイランド20への通電をスイッチングするMOSトランジスタ500よりもゲート長が長いことを前提として、この断面が描かれているため、図24中には、MOSトランジスタ500のソース及びドレインなどが描かれていない。
本実施例によるデバイスの、外部回路への接続方法は、図21に示した、実施例3のものと同等なものが使用できる。ただし、図21中に示したトランジスタ550、650などは、TFTトランジスタを意味しているが、本実施例では、これらをMOSトランジスタ500及び600で置き換えて考えるものとする。
図22において、アイランド20の平面形状は正方形に近いのものとしているが、形状に関する制限は無く、アイランドの密度に応じて三角形、六角形などの細密充填配置とすることも出来る。形状を正方形とした時、アイランド20の一辺の長さは、1μm以下とすることも可能である。特許文献1に開示された従来例では、KOHを用いたウェットエッチングにより形成したシリコン製のアイランドが例示されており、アイランド形状が結晶方位で定まるファセットを生じることから、アイランド形状に一定の制限が有った。特に、エッチング前の基板の厚みと、アイランドサイズを独立に定めることが出来ず、アイランドサイズを一定のサイズ以下に作製することが困難で、アイランドサイズは10μm以上とされていた。本発明により、アイランドサイズを10分の1以下にすることが可能となった為、大幅な集積度向上を実現できた。
本実施例において、温度検出素子及びヒータ素子を外部回路に接続する配線群が、アイランド直下に形成されている。この構造は、アイランドの集積度が高くなるに連れて重要になる。何故なら、配線を施すアイランド間のスペースが少なくなること、また、配線によってアイランド間の熱的絶縁が劣化すること、等を防ぐことが出来るからである。一方、特許文献1に開示された実施例では、アイランド間に配線が施されているため、本発明が可能にした集積度に到達することは出来ない。
本発明によって作製された化学反応チップは、実施例2及び3と同等なDNA解析の精度を持ちながら、さらに集積度が向上し、従来に無い、より大規模な解析が可能と成った。
配列番号1,6及び7は、17塩基長の合成DNA断片のヌクレオチド配列である。配列番号2〜5は、8塩基長のプローブのヌクレオチド配列である。
実施例1に係わる化学反応チップの構成を示した断面図である。 実施例1に係わる、アイランド20、該多孔質シリコン層10、温度センサー素子50、ヒータ60、等の配置を示した平面図である。 実施例1に係わる、アイランド20の作製方法を示した断面図である。 温度センサー素子の電流バイアス時における両端子間の電位差の温度依存性である。 実施例2に係わる化学反応チップのアイランド20の平面配置を示した図である。 実施例2に係わる化学反応チップの断面構造を示した図である。 実施例2に係わる化学反応チップの、図6とは異なる断面の、断面構造を示した図である。 実施例2に係わるアイランド20の作製方法を示した断面図である。 実施例2に係わるアイランド20の配置と、各配線の配置とを、平面図として示した図である。 実施例2に係わる各アイランド上の素子への外部回路との接続を示した図である。 実施例2に係わる4行9列(=36個)のプローブ固定領域40への、4種類のブロープの割付を示した図である 実施例2に係わる、融解温度測定のためのハイブリダイゼーションの測定結果である。 特許文献1に開示された方法による、融解温度測定のためのハイブリダイゼーションの測定結果である。 実施例2に係わる、一塩基多型のための、ハイブリダイゼーションの測定結果である。 特許文献1に開示された方法による一塩基多型のための測定結果である。 実施例3に係わる化学反応チップの、アイランド20の平面配置を示した図である。 実施例3に係わる化学反応チップの断面構造を示した図である。 実施例3に係わるアイランド20の作製方法を示した断面図である。 実施例3に係わる該抵抗素子65の温度特性の、異なる不純物ドープ濃度に対する測定結果である。 実施例3に係わる化学反応チップのアイランド20の配置と各配線の配置とを示す、平面模式図である。 実施例3に係わる各アイランド上の素子への外部回路との接続を示した図である。 実施例4における化学反応チップの、アイランド20の平面配置を示した図である。 実施例4における化学反応チップの断面構造を示した図である。 実施例4における化学反応チップの、図23とは異なる断面の、断面構造を示した図である。
符号の説明
10 多孔質シリコン層
11 補強基板
15 基板
20 アイランド
21 酸化膜
25 ストップ領域
30 保護層
40 プローブ固定領域
50 温度センサー素子
51 センサー入出力装置
55 n型に高濃度ドープされた領域
56 n型にドープされた領域
57 p型高濃度ドープ領域
58 端子
59 端子
60 ヒータ
61 ヒータ制御装置
65 抵抗素子
70 熱シールド領域
80 単結晶シリコン基板
200 単結晶シリコン基板
201 p型高濃度ドープ領域
205 p型ドープ領域
210 n型ドープ領域
250 多結晶シリコン層
300 層間絶縁層
310 層間絶縁層
320 層間絶縁層
330 絶縁層
400 グランドプレーン
410 配線
450 電極層
455 グランドプレーン
500 MOSトランジスタ
510 ドレイン
511 配線
512 配線
520 ソース
530 ゲート
531 配線
550 TFTトランジスタ
555 ビアプラグ
560 ドレイン
561 配線
570 ソース
580 ゲート
581 配線
585 配線
585 配線
600 MOSトランジスタ
610 ドレイン
611 配線
612 配線
620 ソース
630 ゲート
631 配線
650 TFTトランジスタ
660 ドレイン
661 配線
670 ソース
680 ゲート
681 配線
700 酸化領域
900 制御装置
910 データバス
911 列デコーダ
912 電圧源
913 スイッチ
914 スイッチ
920 データバス
921 行デコーダ
922 電圧源
923 スイッチ
924 温度測定端子
925 スイッチ
926 電流源
930 ストレージ装置


Claims (18)

  1. 多孔質シリコンと、
    該多孔質シリコンに埋め込まれた1個以上のアイランドとを有することを特徴とする化学反応チップ。
  2. 該アイランドに隣接して、熱シールド領域を配置することを特徴とする、請求項1に記載の化学反応チップ。
  3. 該アイランド表面を保護する保護層と、
    該保護層上に形成されたプローブ固定領域と、
    該プローブ固定領域上に固定されたプローブと、
    該アイランドを加熱するヒータ素子と、
    該アイランドの温度を検出する温度検出素子と、
    該温度検出素子と該ヒータ素子を制御してアイランドの温度を所望の温度に制御する温度制御装置と、
    該温度検出素子と該温度制御装置を結ぶ電気配線と、
    該ヒータ素子と該温度制御装置を結ぶ電気配線と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の化学反応チップ。
  4. 個々の該アイランドの温度を独立に制御することを特徴とする、請求項3に記載の化学反応チップ。
  5. 該アイランド及び熱シールド領域は、単結晶シリコンであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の化学反応チップ。
  6. 該アイランド及び熱シールド領域は、p型に不純物ドープされた単結晶シリコンであり、かつ、該アイランド及び熱シールド領域の直下にn型に不純物ドープされた埋め込み層を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の化学反応チップ。
  7. 該多孔質シリコン層が、補強基板の上に形成されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の化学反応チップ。
  8. 該アイランドの一部、または、該熱シールド領域の一部のいずれかに、少なくとも一つ以上のMOSトランジスタを有することを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載の化学反応チップ。
  9. 該MOSトランジスタが該ヒータ素子への電力供給をスイッチすることを特徴とする、請求項8に記載の化学反応チップ。
  10. 該MOSトランジスタが該温度検出素子の出力信号をスイッチすることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の化学反応チップ。
  11. 該アイランド及び該熱シールド領域は、多結晶シリコンであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の化学反応チップ。
  12. 該多孔質シリコンとの境界に近い、該アイランド及び熱シールド領域の周縁部は、n型に不純物ドープされた多結晶シリコンであり、かつ、該多孔質シリコンの下地となる電極層を有することを特徴とする、請求項11に記載の化学反応チップ。
  13. ガラス基板上に該電極層を有することを特徴とする、請求項12に記載の化学反応チップ。
  14. BPSGまたはSOGによる埋め込み多層配線構造の上部に、該電極層を有することを特徴とする、請求項12に記載の化学反応チップ。
  15. 該電極層が多結晶シリコンであることを特徴とする、請求項12乃至14のいずれかに記載の化学反応チップ。
  16. 該ガラス基板の上に多結晶シリコン薄膜またはアモルファスシリコン薄膜を用いたTFTトランジスタが少なくとも一つ存在することを特徴とする、請求項13に記載の化学反応チップ。
  17. 該アイランド上に設けた少なくとも一対のオーミックコンタクト端子を有し、該端子間の電気抵抗を測定する手段を有し、かつ、該電気抵抗を温度センサー素子とすることを特徴とする、請求項11乃至16のいずれかに記載の化学反応チップ。
  18. 該アイランド上に設けた少なくとも一対のオーミックコンタクト端子を有し、該端子間に通電する手段を有し、かつ、該アイランド中で発生するジュール損を熱源とする請求項11乃至17のいずれかに記載の化学反応チップ。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010104385A (ja) * 2007-02-27 2010-05-13 Sony Corp 核酸増幅装置
US9475051B2 (en) 2007-02-27 2016-10-25 Sony Corporation Nucleic acid amplifier

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