JP2007040792A - 拭き取り性試験方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料で汚れを拭き取ったあとに残留する汚れの程度と分布状態が評価可能な、簡便、迅速かつ誤差が小さい拭き取り試験方法とそのための拭き取り性試験装置を提供する。
【解決手段】平板保持手段を備えた平板保持台、試料固定手段を備えた荷重、バランスウエイトを備えた荷重支持台、平板保持台および/または荷重支持台を移動させる駆動装置、および駆動制御装置で構成される拭き取り性試験装置により、平板上に均一に形成した汚れを拭き取り、残留する汚れを画像処理により評価する。
【選択図】図1

Description

本発明は繊維製品などの拭き取り材による汚れの拭き取り性試験方法および装置に関するものであり、詳しくは平板上に一定量付着させた汚れと、一定質量の荷重の一端面に固定した試料とを、平板と平行に摩擦させて汚れを拭き取り、残留する汚れを評価する拭き取り性試験方法およびそれに適した拭き取り試験装置に関するものである。
近年、溶融紡糸法や溶融複合紡糸法で製造されるマイクロファイバーと呼ばれる極細繊維を使用した繊維製品が、拭き取り分野で多く用いられている。マイクロファイバーは繊維の直径が小さく、さらに溶融複合紡糸法より得られる割繊糸ではシャープなエッジをもつ異型断面繊維とすることができるので、拭き取り効果が大であるといわれている。そのため例えば工業分野ではワイピングクロスやワイピングテープなどに、家庭分野では眼鏡拭きや洗顔タオルなどに使用されている。また最近はさらに繊維の直径が小さいナノファイバーの研究開発が進展しており、その表面積が非常に大となることから、吸着材料や拭き取り材料としての用途も期待されている。したがって、拭き取り性試験方法も時代の要請に応じて改良していく必要がある。
拭き取り性試験方法の一つとして、ワイピングテープやワイピングクロス用の試料を評価するための、シリコーンオイルを注射針でガラス板上に落とし、直径45mm、重さ1Kgfの円柱状荷重の一端面に固定した試料(ワイピングクロス)をガラス板上に乗せ1m/minの速度で移動し、シリコーンを拭き取り、次に乾式複写機トナーをガラス板上に振りかけ、そのトナーを圧縮空気で吹き飛ばし、ガラス板表面にセロテープを張り付けてガラス板上の残留トナーを剥ぎ取り、セロテープに付着したトナーの程度を肉眼で級判定し、さらに残存するトナーの付着状態をタテ筋の有無でも評価するという方法がある(特許文献1)。
しかしながらこの方法は、1)シリコーンオイルは粘性が大であり、ガラス板上に広げることが容易でない、2)作業工程数を減じるためにシリコーンとトナーとを予め混合させた液を調整しようとしてトナーの凝集がおこりやすい、3)トナーを圧縮空気で吹き飛ばし、残留トナーをセロテープで剥ぎ取る際に、誤差を生じやすい、4)付着トナーの程度と残留するトナーのタテ筋の有無とを肉眼判定するので、誤差を生じやすい、などの問題を生じやすいため、簡便、迅速かつ誤差が小さい拭き取り性試験方法の開発が望まれる。
また別の拭き取り性試験方法として、浴用タオル用などの試料を評価するための、エチレングリコールと水と酸性染料の混合液で人工汚れを調整し、ガラス板上に人工汚れを等間隔に4滴滴下し、この上を試料に一定加重をかけて一定速度で掃引し、ガラス板上に残った人工汚れをワイピングクロスで完全に拭き取り、ワイピングクロスの汚れの付いた部分を分光光度計を用いて人工汚れ成分中の酸性染料の最大吸収波長におけるK/Sを測定するという方法がある(特許文献2)。
この方法は肉眼判定の場合に生じやすい誤差を機器分析により小さくする点では優れている。しかしながらこの方法は、1)ガラス板上に残留する人工汚れをワイピングクロスで拭き取る工程が必要で、作業工程数が多くなるとともにワイピングクロスによる拭き取り工程での誤差も生じやすい、2)ワイピングクロスの汚れの付いた部分を評価するので、残留する人工汚れの間接的評価法となり、ガラス板上に残留する人工汚れの状態、すなわち残留する人工汚れの程度と残留する人工汚れの分布(上述のタテ筋等の有無)を直接評価することができない、3)さらに、皮脂を含む汚れについて評価するためには、油脂成分を人工汚れに添加する必要がある、などの問題を生じやすいため、残留する汚れの程度と分布分布状態が評価可能な簡便、迅速かつ誤差が小さい拭き取り試験方法の開発、望ましくは油脂成分を人工汚れに含む拭き取り試験方法の開発が望まれる。
さらに別の拭き取り性試験方法として、クリーナークロス用布帛などの試料を評価するための、油脂成分として牛脂を用いたものがある。これはスライドガラスの中央部の光沢度をまず測定したのち、その中央部に牛脂をすりつけて汚れを付着させ、次いでクリーナークロスを指に巻いてスライドガラス表面の汚れを拭き取ったのち再び光沢度を測定し、光沢度回復率を求める方法である(特許文献3)。
この方法は簡便、迅速で、肉眼判定の場合に生じやすい誤差を機器分析により小さくする点では優れており、また皮脂を含む汚れについて評価する場合には適当な人工汚れを用いている。しかしながらこの方法は、1)人工汚れをスライドガラス表面に均一に付着させることが困難で誤差を生じやすい、2)拭き取り工程を人間が行うので誤差を生じやすいなどの問題を生じやすい、3)ガラス板上に残留する人工汚れの状態、すなわち残留する人工汚れの程度と残留する人工汚れの分布(例えばタテ筋等の有無)を評価することができない、などの問題を生じやすいため、残留する汚れの程度と分布状態が評価可能な誤差が小さい拭き取り試験方法の開発が望まれる。
すなわち上記3件の特許文献には、人工汚れ形成工程、拭き取り工程、残留汚れ評価工程を簡便、迅速かつ誤差小さく行うために有効な拭き取り試験方法および試験装置は記載や示唆されていないため、人工汚れ形成工程、拭き取り工程、残留汚れ評価工程を簡便、迅速かつ誤差小さく行うために有効な拭き取り試験方法および試験装置の開発が望まれる。
特開平11−276398号公報など 特開2002−058614号公報 特開2002−161452号公報
本発明は、試料で汚れを拭き取ったあとに残留する汚れの程度と分布状態が評価可能な、簡便、迅速かつ誤差が小さい拭き取り試験方法とそのための拭き取り性試験装置を提供することを目的とする。
本発明は第1に、平板上に一定量付着させた汚れと、一定質量の荷重の一端面に固定した試料とを、平板と平行に摩擦させて汚れを拭き取り、残留する汚れを評価する拭き取り性試験方法において、汚れの濃度分布を画像処理により評価することを特徴とする拭き取り性試験方法である。
本発明は第2に、平板上の汚れを撮影して画像処理することにより輝度分布を求め、残留する汚れの分布状態を評価することを特徴とする上記の拭き取り性試験方法である。
本発明は第3に、画像処理により輝度分布を5〜15段階に階調変更することを特徴とする上記の拭き取り性試験方法である。
本発明は第4に、揮発性液体に微粒子を含有する人工汚れ原料を溶解および/または分散させた混合液の一定量を平板上に滴下して広げたのち揮発性液体を蒸発させ、円形で均一な汚れを平板上に形成させることを特徴とする上記の拭き取り性試験方法である。
本発明は第5に、人工汚れ原料としてカーボンブラック、牛脂硬化油、流動パラフィンを用いて汚れを形成させることを特徴とする上記の拭き取り性試験方法である。
本発明は第6に、揮発性液体としてヘキサンを用いて汚れを形成させることを特徴とする上記の拭き取り性試験方法である。
本発明は第7に、平板と平行でかつ互いに異なる2方向に摩擦させることを特徴とする上記の拭き取り性試験方法である。
本発明は第8に、平板保持手段を備えた平板保持台、試料固定手段を備えた荷重、バランスウエイトを備えた荷重支持台、平板保持台および/または荷重支持台を移動させる駆動装置、および駆動制御装置で構成されることを特徴とする拭き取り性試験装置である。
本発明は第9に、平板保持台の移動方向と荷重支持台の移動方向とが異なるように駆動装置を配置したことを特徴とする上記の拭き取り性試験装置である。
本発明は第10に、平板保持手段の複数を平板保持台に設け、試料固定手段を備えた荷重の複数を支持台に設けたことを特徴とする上記の拭き取り性試験装置である。
本発明により、試料で汚れを拭き取る場合に、残留する汚れの程度と分布状態が評価可能な簡便、迅速かつ誤差が小さい拭き取り試験方法とそのための拭き取り性試験装置を提供することができる。
本発明において試験の対象とする試料としては、織物や編物や不織布などの布状物、シート、テープ、紙などが挙げられるが、黒板拭きや自動車のワイパーなども試料と対象とすることができる。
平板としては、主にガラス板を使用することが簡便であるが、ホワイトボードなどに使用される合成樹脂の平板もしくは厚手のフィルムを使用することもでき、さらには、必要に応じて自動車の外装鋼板の塗装物や、光触媒加工した建材や、建物の床材なども使用することができる。
人工汚れ原料としては、それぞれの拭き取り材の拭き取り対象を考慮して適宜の汚れ原料を使用できるが、典型例として、ローム土などのJIS粉塵、食塩などの塩類、染料、顔料などの微粒子を水、油などの液体に均一に分散または溶解させた混合物を挙げることができる。この場合、微粒子が凝集しない混合物であることが望ましい。
眼鏡拭きなど皮脂汚れが関わる分野の試験では、油脂も併用することが望ましい。油脂も併用した人工汚れとしては、JIS K 3362記載の人工汚垢が公知である。これは牛脂:大豆油=1:1の油脂20g、モノオレイン0.25g、オイルレッド0.1g、およびクロロホルム60mlの比率で混合したもので、この人工汚れを使用してもよいが、本発明者の研究によれば、これを風乾すると半ゲル状に固化するが非常に柔らかく取扱いに注意を要するほか、拭き取り後の色の濃淡が明瞭でないという欠点も有する。
拭き取り後の色の濃淡を明瞭にするためには、染顔料を併用することが望ましく、特にカーボンブラックを用いることが望ましい。さらに取扱いも容易にするためには、カーボンブラック15〜20重量%と牛脂硬化油20〜25重量%と流動パラフィン60〜65重量%を用い、ペースト状のこれらの混合物を人工汚れとして予め調整しておくのが簡便である。
カーボンブラックとしては平均粒径13〜90μmの範囲で各種の粒径のものが市販されているが、平均粒径19〜30μmのものが望ましく、さらに粒径分布が狭くかつ粒径約20μmのものがより望ましい。牛脂硬化油は鹸化価約195のものが望ましく、市販品を入手することができる。流動パラフィンは密度0.8〜0.9g/mlのものが望ましく、市販品を入手することができる。なおこれらの混合物は、財団法人日本化学繊維検査協会から入手することができる。
精度良い拭き取り性試験を行うためには汚れを平板に均一かつほぼ一定面積に広げて塗布する必要がある。しかしながらこの人工汚れは上記のようにペースト状であり、人工汚れを平板に均一かつほぼ一定面積に広げて塗布することは容易でない。本発明者はこの困難を克服するために鋭意研究した結果、この人工汚れをヘキサン等の揮発性液体に10〜20重量%、好ましくは13〜17重量%、より好ましくは15重量%程度溶解および/または分散させた混合液を0.02〜0.10ml、好ましくは0.04〜0.06ml、より好ましくは0.05ml程度の一定量を平板上に滴下して自然に広げたのち、揮発性液体を蒸発させることにより、この人工汚れを平板に均一かつほぼ一定面積に広げて塗布することができることを見いだした。人工汚れをヘキサンなどの揮発性液体に10重量%未満の濃度で溶解および/または分散させた混合液を用いた場合は、平板上に形成した人工汚れが凝集して均一化が困難で、拭き取り誤差を生じるので好ましくない。また20重量%より大の濃度で溶解および/または分散させた混合液を用いた場合は、平板上に人工汚れが広がらずに厚くかつその面積が小となるとともに、平板上に形成される人工汚れの面積の変動が大となり、拭き取り誤差を生じるので好ましくない。滴下量を0.02ml未満とすると、平板上に人工汚れが広がらず、拭き取り誤差を生じるので好ましくない。また滴下量を0.1ml以上にしてもよいが、滴下量を0.1mlより多くすると、平板上に形成される人工汚れが不均一になる傾向があるとともに、平板上に形成される人工汚れの面積がより大となり、拭き取り試験装置の大型化が必要になる。
揮発性液体としては、ヘキサンなどの低級炭化水素、エーテル、クロロホルム、石油ベンジン等を適宜使用できるが、溶解性、分散性、安全性すべてを勘案すると、低級炭化水素のうちのヘキサンを用いることが好ましい。
なお人工汚れの原料として前述のJIS記載の人工汚垢組成を用い、上記と同様の操作を行っても、平板上に形成した人工汚れが凝集するので好ましくない。
以上のようにして汚れを平板に均一かつほぼ一定面積に広げて塗布したら、ついでこの汚れを再現性良く拭き取る工程に移る。そのためには以後に述べる装置を用いるのがよいので、以下に図面を参照しながら本発明の装置について説明する。
図1は本発明の拭き取り試験装置の一例の正面の概念図、図2はその平面の概念図であるが、加重手段は1セットのみを示した。図3は図2のA−A断面の概念図である。
平板1は平板保持手段2で平板保持台3に固定する。図では平板1を4枚固定できる装置を例示した。平板としてはスライドグラスを用いるのが簡便であるが、拭き取り性試験の精度を高めるためには、より大面積のガラス板、例えば長さ9cm、幅5cmのガラス板を用いることが望ましい。
平板保持台3はその下部4を、駆動制御装置(図示せず)により制御されたモーター5により駆動されるギヤーシャフト6と嵌合させることにより、図1、図2の左右方向に移動可能とする。平板保持台3には位置検知用具7を設け、位置検知センサ8によりモーターの回転方向を変えることにより平板保持台3の左右の連続移動を可能とする。平板保持台3の移動は通常、左方向または右方向に1回移動させるだけで十分であるが、誤差を小とするためには、移動開始位置、移動方向、移動終了位置は定めておく必要がある。平板保持台3にはさらに別の位置検知用具9および位置検知センサ10を設け、左右移動回数を必要に応じて計数する。
平板保持台3は台座16上に設けたレール17に嵌合して摺動可能とする。
図4は平板1上の人工汚れと摩擦させて汚れを拭き取る試料11を試料固定手段12により取り付ける荷重13を例示する。荷重13の下方の一端面に試料11を固定する。図示した荷重は、加重の変更が容易でかつ平板と試料とをより平行に摩擦するための平行度調整手段14を備えたものを例示した。荷重13の下方には、必要に応じて樹脂やゴム製の摩擦子15を設けてもよい。
台座16にはそれに固定したフレーム18を設け、そのフレーム18の上方に、フレームと摺動可能な荷重支持台19を設ける。荷重支持台19には例えば支点20を設け、加重13とバランスウエィト21とを連結するアーム22を支持する。荷重13とバランスウエィト21とにより、拭き取り圧力を調整する。拭き取り圧力は適宜設定して良いが、5〜20g/cm2が好ましい。
加重支持台19には例えばクランクシャフト23を連結し、このクランクシャフト23を介して例えば駆動制御装置(図示せず)により制御されたモーター24により回転する偏芯カム24などによる駆動手段により、加重支持台19の前後方向の移動を可能とする。
一方向の拭き取り試験のためには、平板保持台3または荷重支持台19のいずれかを移動させればよい。また平板保持台3と荷重支持台19とを同時にかつ互いに異なる方向に移動させることにより、たとえばジグザグ形の拭き取り動作を実現することができる。平板保持台3の移動速度は任意に設定できるが、5〜20cm/分、好ましくは10cm/分とする。また荷重支持台19を駆動する偏芯カムの回転数も任意に設定できるが、1〜20rpm、好ましくは8rpm程度とする。例えば平板保持台3の移動速度を10cm/分、偏芯カム24の回転数を8.33rpmとすることにより、平板保持台3の一方向への1回の移動の間に、荷重支持台19を5往復させることができる。
荷重支持台19の往復回数は、平板1の表面積、平板保持台3の移動速度、加重13の下端の表面積により適宜設定して良いが、例えば平板1として長さ9cm、幅5cmのガラス板を用い、平板保持台3の移動速度を10cm/分とし、加重13の下端の直径が3cmの場合、平板保持台3の一方向への1回の移動の間に、荷重支持台19の往復回数は4〜6回とすることが好ましく、5回とすることがより好ましい。このようにすることにより、荷重の中心は平板の長さ方向に6cm、幅方向に2cm移動し、荷重の下端面は平板1のほぼ全表面を摩擦し、平板1上の汚れを均一に拭き取ることができる。
以上のようにして平板上の汚れを再現性良く拭き取ったら、平板上に残留する汚れの程度と分布状態を定量的に評価する工程に移る。
従来、平板上に残留する汚れを機器分析的に評価する際には、分光光度計(FT−IRを含む)、光沢度計などが用いられてきた。しかしながらこれら分析機器では測定可能な対象面積が小さく拭き取り面全面の評価が困難である。また残留する汚れは濃度勾配を有する帯状であったり、筋状であったりすることが多いが、これら分析機器では汚れを平均化して測定してしまうという欠点がある。したがって、汚れを撮影したのち画像処理を行うことにより評価すること好ましい。
汚れを撮影するためには、一般のカメラを用いることができる。しかしながらカメラで残留する汚れを再現性良く撮影するには、照明の方法、露光、撮影距離(カメラと汚れとの間の距離)などを常に一定にしなければならず、専門的な知識や技能を必要とする。この困難を克服するためには、スキャナで汚れの画像を取り込む方法が望ましい。スキャナで汚れの画像を取り込むことにより、基準スケールがなくても、取り込み時の解像度から、汚れの面積の算出が可能となる。スキャナにより取り込む際の解像度は、300dpiで、8bitのグレースケールとすることが好ましい。
しかしながら市販のスキャナは基本的には紙の原稿を画像として取り込むようになっているので、液体の汚れを画像として取り込むのには適していない。したがって汚れは固体あるいはペースト状であることが必要であり、拭き取り性試験に必要な条件全てを勘案すると、前述したペースト状の人工汚れを用いることが好適である。
スキャナにより取り込んだ画像は次に、輝度信号が0〜255になるように再マッピングし、グラデーションマップ画像を作成する。グラデーションマップ画像の例を図5に示す。これは輝度信号の連続分布画像であり、このままでは定量化困難であったり、目視感覚との比較が困難である。そこでこのグラデーションマップ画像は次に、更に画像処理により輝度分布を5〜15段階に階調変更(ポスタリゼーション)することが望ましい。階調変更が4段階以下あるいは20段階以上であると、目視感覚との比較が困難となる。通常は、輝度分布を10段階に階調変更することがより望ましい。画像処理ソフトとしては、Photoshop Elements(Adobe)などが市販されている。階調変更画像の例を図6に示す。
このように階調変更した画像は次いで、画像処理ソフトにより、各段階の面積として計算する。なおこの際、画像の白黒を反転させて解析すると、解析結果と目視感覚との比較が感覚的に容易になる。画像処理ソフトとしては、WinROOF(三谷商事)などが市販されている。
以上に述べた本発明の構成とすることにより、汚れを平板に均一かつほぼ一定面積に広げて塗布することができ、この汚れを再現性良く拭き取ることができ、また目視感覚とよく対応させて、汚れの程度と分布状態が評価可能な、簡便、迅速かつ誤差が小さい拭き取り試験をおこなうことができる。
本発明の装置は拭き取り後の残留する汚れを上記の画像処理によって評価するのに好適に用いられるが、勿論、他の適宜の評価、たとえば肉眼による評価、分光光度計による評価、定量分析による評価などで評価する際にも有効に用いられる。
以下に実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
調整汚れの画像処理結果と目視判定との関係
カーボンブラック16.7重量%、牛脂極度硬化油20.8%、流動パラフィン62.5重量%からなる人工汚れを用いて、汚れの程度を各種変えた調整汚れを作成した。この調整汚れの画像を市販のスキャナ(EPSON社製 GT−F500型)を用いて解像度300dpi、8bitグレースケールで取り込み、画像処理ソフトPhotoshop Elements(Adobe社)により輝度信号が0〜255になるように再マッピングし、10段階の階層変調(ポスタリゼーション)を行ない、WinROOF (三谷商事)でそれを解析し、白黒反転した。階層変調したのちの濃度段階と目視による汚れの判定結果との対応は表1のとおり、良い対応関係にあることが明らかになった。これにより、判定を目視によらずかつ目視に対応した再現性ある簡便、迅速かつ誤差が小さい評価を行うことができる。
Figure 2007040792
人工汚れ原料の濃度
カーボンブラック16.7重量%、牛脂極度硬化油20.8%、流動パラフィン62.5重量%からなる人工汚れ原料を、ヘキサンに6水準の重量%濃度(2.5、5、7.5、10、15、20各重量%)で溶解、分散、混合し、溶解分散混合液をガラス板(長さ9cm、幅5cm)の上に、マイクロピペットを用いて0.05ml滴下した。その後ヘキサンを蒸発させて、ガラス板状に形成させた人工汚れを観察した。その結果、カーボンブラックの分離凝集がなくなるのは7.5重量%以上の溶解分散混合液で、円形に近いスポットが形成されるのは10重量%以上の溶解分散混合液であることが判明した。
さらに10、15、20各重量%溶解分散混合液を0.05ml滴下する実験を各20回行ない、広がった汚れの面積を測定したところ、10重量%溶解分散混合液の場合は汚れの面積は一番大となるがその変動も大となり、20重量%溶解分散混合液の場合は汚れの面積の変動は一番小となるが面積も小となってしまうことが判明した。これらの事実から、人工汚れ原料をヘキサンに15重量%溶解、分散、混合させた液を用いるのが好ましいことが判明した。この場合、汚れの面積は、約1cm2となる。これにより、再現性ある簡便、迅速かつ誤差が小さい汚れを、ガラス板上に形成させることができる。
拭き取り性試験装置の概要
図1〜3に示したと同様の、4組の試料の試験が可能な装置を製作した。ガラス板の長さは9cm、幅は5cmであり、荷重の下部の直径は3cmとした。この荷重には側面の円周上に溝を設けており、この溝と勘合する例えば輪ゴムの試料固定手段とにより、荷重の下端面に取り付けた試料を荷重に固定した。
荷重とバランスウエイトとを連結するアームには水準器を取り付け、これを用いることで最初にバランスをとり、そのご荷重の上部に重りを付加することにより10および20g/cm2の摩擦圧力を可能とした。平板保持台はギヤーシャフトを介してモーターで駆動し、移動速度10cm/分、移動距離6cmが可能になるようにした。荷重支持台はクランクシャフトを介して、ギヤードモーターに直結した8.3rpmの偏芯カム機構により、上記平板保持台の移動方向に直角方向に2cmかつ5往復移動可能とした。
このような構成とすることによって、荷重下端に取り付けた試料と、ガラス板上に形成した汚れとを摩擦させ、再現性ある簡便、迅速かつ誤差が小さい拭き取り動作を実現することができる。
拭き取り試験(ジグザグ方式)
実施例1に示した人工汚れ原料をヘキサンに15重量%溶解、分散、混合させた液0.05mlをマイクロピペットで実施例3のガラス板上に滴下し、実施例2に示した面積約1cm2の汚れを形成させた。
次いで拭き取り用の試料としてマイクロファイバー製の布帛(市販の眼鏡拭き)とタオル、および綿製の布帛とタオルを用い、加重10および20g/cm2で、実施例3に示した装置条件で拭き取り試験を実施した。
ガラス板上に残留する汚れをスキャナ(EPSON社製 GT−F500型)を用いて解像度300dpi、8bitグレースケールで取り込み、画像処理ソフトPhotoshop Elements(Adobe社)により輝度信号が0〜255になるように再マッピングし、10段階の階層変調(ポスタリゼーション)を行い、WinROOF (三谷商事)でそれを解析し、白黒反転した。
結果の一例を表2に示す。
Figure 2007040792
得られた結果を分散分析したところ、マイクロファイバーと綿との繊維素材要因は1%の危険率で有意であり、また布帛とタオルとの形状要因も1%の危険率で有意であった。すなわち本発明方法および装置により、試料の繊維素材要因と形状要因の効果を誤差少なく評価できることが判った。なお、荷重要因は、有意でなかった。
拭き取り試験(直線方式)
荷重支持台を移動させずに、試料保持台のみを移動させて直線的に拭き取り操作を行った以外は、実施例4と同じ試験を行った。結果の一例を表3に示す。
Figure 2007040792
直線的拭き取り方式の場合は、タオル形状ではすじ状の汚れが残留し、手で直線的に拭き取る操作を再現できた。この場合、残留するすじ状の汚れの寄与が大きく、上記試験結果を分散分析しても、マイクロファイバーと綿との繊維素材要因、および布帛とタオルとの形状要因はともに有意ではなかった。したがって、拭き取り性に及ぼす繊維素材要因と形状要因とを明確にするためには、実施例4に示したジグザグ拭き取り方式がより望ましいことが判った。なお、荷重要因も、有意ではなかったが、その寄与率は実施例4に比べて増大した。
本発明に係わる拭き取り試験装置の一構成例を示す正面の概念図である。 本発明に係わる拭き取り試験装置の一構成例を示す平面の概念図である。 本発明に係わる拭き取り試験装置の一構成例を示す図2のA−A断面の概念図である。 本発明に係わる拭き取り試験装置に用いる荷重の一構成例を示す概念図である。 本発明に係わるスキャナにより取り込んだ画像を再マッピングして作成した、グラデーションマップ画像のヒストグラムの一例である。 グラデーションマップ画像をさらに階調変更(ポスタリゼーション)した画像のヒストグラムの一例である。
符号の説明
1: 平板
2: 平板保持手段
3: 平板保持台
4: 平板保持台下部
5: モーター
6: ギヤーシャフト
7: 位置検知用具
8: 位置検知センサ
9: 位置検知用具
10: 位置検知センサ
11: 試料
12: 試料固定手段
13: 荷重
14: 平行度調整手段
15: 摩擦子
16: 台座
17: レール
18: フレーム
19: 荷重支持具
20: 支点
21: バランスウエイト
22: アーム
23: クランクシャフト
24: モーター
25: 偏心カム
26: 荷重支持台レール
27: 高さ調整機構
28: 荷重変更ウェイト

Claims (10)

  1. 平板上に一定量付着させた汚れと、一定質量の荷重の一端面に固定した試料とを、平板と平行に摩擦させて汚れを拭き取り、残留する汚れを評価する拭き取り性試験方法において、汚れの濃度分布を画像処理により評価することを特徴とする拭き取り性試験方法。
  2. 平板上の汚れを撮影して画像処理することにより輝度分布を求め、残留する汚れの分布状態を評価することを特徴とする請求項1記載の拭き取り性試験方法。
  3. 画像処理により輝度分布を5〜15段階に階調変更することを特徴とする請求項1または2記載の拭き取り性試験方法。
  4. 平板上の汚れの形成を、揮発性液体に微粒子を含有する人工汚れ原料を溶解および/または分散させた混合液の一定量を平板上に滴下して広げたのち揮発性液体を蒸発させることによって行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の拭き取り性試験方法。
  5. 平板上の汚れの形成を、人工汚れ原料としてカーボンブラック、牛脂硬化油および流動パラフィンを用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の拭き取り性試験方法。
  6. 平板上の汚れの形成を、揮発性液体としてヘキサンを用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の拭き取り性試験方法。
  7. 平板上の汚れの拭き取りを、平板と平行でかつ互いに異なる2方向に摩擦させて行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の拭き取り性試験方法。
  8. 平板保持手段を備えた平板保持台、試料固定手段を備えた荷重、バランスウエィトを備えた荷重支持台、平板保持台および/または荷重支持台を移動させる駆動装置、および駆動制御装置で構成されることを特徴とする拭き取り性試験装置。
  9. 平板保持台の移動方向と荷重支持台の移動方向とが異なるように駆動装置を配置したことを特徴とする請求項8記載の拭き取り性試験装置。
  10. 平板保持手段の複数を平板保持台に設け、試料固定手段を備えた荷重の複数を支持台に設けたことを特徴とする請求項8または9記載の拭き取り性試験装置。
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