本発明は、発光ダイオード等の発光体を光源とする照明装置およびこれを備えた撮像装置に関する。
カメラ等の撮像装置に用いられる照明装置として、複数の発光ダイオードを光源とする照明装置が多く提案されている。
このうちの1つとして、各発光ダイオード素子自体に集光機能を持たせたものがある。これは、発光ダイオードチップを反射鏡となる金属カップ内に固定し、その前面をドーム形状の透明樹脂で覆い、該透明樹脂に集光レンズの作用を持たせたものである。このような発光ダイオード素子の透明樹脂部の直径や曲率を適宜選定することにより、集光度合いを異ならせることが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
一方、光源である発光ダイオード自体には集光機能を持たせず、光源から射出した光束をその前面に配置した凸レンズによって集光させるように構成した光学系も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−21703号公報(段落0011〜0013、図1等)
特開2000−89318号公報(段落0005〜0007、図1〜3等)
照明装置やこれを搭載した撮影装置のデザインは年々多様化してきており、発光部の射出面形状についても従来にない形態が要求されている。例えば、従来の白色LEDを光源とした照明系では、白色LEDの形状に合わせて発光部を円形の凸レンズとするのが一般的であった。しかし、最近、射出面の面積を必要最小限まで小さくしたり、射出面の外形形状を円形以外の形状としたり、さらには、射出面の表面形状を凸レンズ以外の形状にしたいといった要求がある。こうした場合、射出面形状は従来と異なるものの、光学特性は従来と同様の特性を維持したいという要求が多い。したがって、デザインと性能とを両立させることが照明光学系の設計を困難にしている。
一方、従来この種の白色LEDを用いた照明光学系としては、素子自体に集光作用を持つドームタイプのLEDを用いたものが多かった。このLEDを利用した場合には、発光ダイオードチップに対して最適な光学配置がなされ、集光性の高い光学系を実現できる。しかし、配光特性はLED素子自体の選択の時点で一義的に決まってしまい、光学特性に対する選択の自由度が少ない。しかも、照明光学系の開口部は、白色LEDの形状に合わせて円形にせざるを得なかった。このため、光学特性的およびデザイン的に自由度の少ない照明光学系にならざるを得なかった。また、上述の白色LEDを用いて、光学機器に適した光学特性を得るためには、特許文献1に示す構成のように、別の光学部材が必要となる。このため、照明装置が大型化するだけでなく、高価なものになっていた。
また、集光作用を持たない面発光タイプのLEDを使用する場合には、通常は特許文献2に示す構成のように、凸レンズによって集光を行っている。この凸レンズによる集光は、レンズの焦点距離を適宜設定することによって光の照射領域を所望の領域に狭めて照射することができる。しかし、光源であるLEDと凸レンズとの間に隙間が存在し、この隙間の方向に射出された光束を有効に利用することができないため、効率面からは最適な形態ではなかった。また、凸レンズを用いた屈折のみの集光光学系では、照射面の中央領域(照射光軸近傍の領域)は明るく光を照射できるものの、周囲領域では十分な照度が得られず、必要照射領域全体で均一な明るさの照明を行うことはできなかった。さらに、発光部の開口が上下方向と左右方向とで比率が異なるような異形開口の場合には、配光特性にこの形状の影響が出てしまい、均一な配光特性を得られなかった。
そこで、本発明は、小型であり、かつ高いデザイン自由度と高い光利用効率とを併せ持ちながら所望の光学特性が得られるようにした照明装置およびこれを備えた撮像装置を提供することを目的の1つとしている。
上記の目的を達成するために、本発明の一側面である照明装置は、光源と、入射面および射出面を有する光学部材と、光源からの光束を反射して入射面に導く反射部材とを有し、該照明装置の照射光軸に直交する第1の方向と該照射光軸および該第1の方向に直交する第2の方向のうち少なくとも一方において、射出面の開口幅が入射面の開口幅よりも小さいことを特徴とする。
本発明によれば、光源からの光束のうち反射部材で反射した光束を、光学部材の射出面よりも開口幅の広い入射面から該光学部材に入射させ、開口幅の狭い射出面から射出させる。このため、光の利用効率を高くしながらも外観に現れる射出面の大きさを小さくすることができる。しかも、開口幅が広い方の入射面はその形状自由度が高いため、射出面の形状(例えば、円形以外の異形形状や凹凸形状)をデザイン重視で選択しても、略均一な配光特性等の所望の光学特性を得やすい。
さらに、本発明の照明装置は、特殊な光学部品を用いない最小限の部品で構成できるので、小型化することができる。したがって、該照明装置を用いた撮像装置の小型化およびデザイン自由度の向上に寄与することができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1から図12には、本実施例の照明ユニット(照明装置)および該照明ユニットを備えたビデオカメラ(撮像装置)の構成を示している。本実施例の照明ユニットは、以下に説明するように、例えば、LEDのような微小な面光源から射出される光束を効率良く集光させることができるものである。
図7には、本実施例の照明ユニットを備えたビデオカメラの正面図を、図8には、該ビデオカメラの外観斜視図を示している。
図7および図8において、11はビデオカメラ本体、12は撮影レンズを有するレンズ鏡筒、13は静止画撮影時に被写体に対してフラッシュ光を照射するフラッシュユニットである。14は白色LEDを光源とし、動画撮影時に定常光(フラッシュのような瞬間光より長い時間連続発光される光)を被写体に照射する本実施例の照明ユニットである。15は撮影中であることを示すタリーランプであり、例えば緑色LEDを光源とする。
本実施例のビデオカメラでは、フラッシュユニット13、照明ユニット14およびタリーランプ15が、レンズ鏡筒部12の側方において垂直方向に延びる細長い帯状部16内に上下方向に並ぶように配置されている。また、これらフラッシュユニット13、照明ユニット14およびタリーランプ15は該帯状部16の水平幅と略同一幅を有する矩形の開口部から発光するようにデザインされている。
なお、ビデオカメラの構成のうち、照明ユニットの構成を除く他の構成は公知の構成であり、ここでの詳しい説明は省略する。また、本発明の撮像装置としてのビデオカメラの構成は、図7および図8に示す構成に限定されるものではない。さらに、本実施例では、ビデオカメラを例として説明するが、本発明は、デジタルスチルカメラ、一眼レフカメラ等、各種撮像装置に用いる照明装置に適用することができる。これらのことは、後述する他の実施例でも同様である。
図1には、本実施例の照明ユニットを、光源である発光ダイオード(以下、LEDという)1の発光面1aの中心に立てた法線、言い換えれば照明ユニットにおける光束照射光軸AXLを通る垂直方向(Z方向:第2の方向)の面で切断したときの垂直断面図(XZ断面図)を示す。また、図2には、本実施例の照明ユニットを、光束照射光軸AXLを通る水平方向(Y方向:第1の方向)の面で切断したときの水平断面図(XY断面図)を示す。なお、ここにいう水平方向は、ビデオカメラの撮像系の撮像画が広い方向であり、垂直方向とは撮像画角が狭い方向である。
また、図3は、本実施例の照明ユニットの主要光学系を示す外観斜視図、図4は、本実施例の照明ユニット内に配置される光学部材の正面図である。
図1から図3において、1は光源であるLED、2はLED1から射出した光束を集光させるための光学部材である。3はLED1から射出した光束を集光させながら反射して光学部材2に導く反射部材である。4はハード基板であり、LED1と電気的に接続され、かつLED1を保持する。5はビデオカメラ本体11の外装部材である。
LED1は、図3に示すように、その略円形の発光面1aから略均一な特性を持った光束を、所定の時間の間、定常光として発することができる高輝度の白色LEDである。ここで、LED1では、その射出面の直前に形成された拡散面によって、LEDチップから射出した光束を略均一な配光特性を持つ光束に変換する。この結果、発光面1aを、発光位置に拘わらず均一な配光特性を持った微小光源の集まりとして扱うことができる。
なお、本実施例の発光ダイオードは、青色系の光を発光する発光ダイオードチップと、該青色系の光のうち一部を吸収して長波長光を発生する蛍光体が分散したモールド樹脂性の拡散面とにより構成される。発光ダイオードチップから発せられる青色系の光と蛍光体から発せられる長波長光との混色によって、白色光が発せられる。
LED1は、半田付け等によってハード基板4に電気的および機械的に接続されており、ハード基板4を介して不図示のCPUからの制御信号を受けることにより発光する。ハード基板4は、不図示の固定部材によってビデオカメラ本体11内において照明光学系として最も効率良く機能する位置に固定されている。
光学部材2は、LED1から射出して直接入射した光束を集光するとともに、反射部材3で反射した後に入射した光束を通過させる。光学部材2は、透明性の高い(減衰率が概ね0である)樹脂材料により形成されている。光学部材2は、凸レンズ面が形成された入射面2aと、平面で構成された射出面2bとを有する。さらに、図1に示すように照射光軸AXLに略平行な垂直方向の外周面(上下面)2cと、図2に示すように照射光軸AXLに対して傾斜した面で構成された水平方向の外周面(側面)2dとを有している。側面2dは、照射光軸AXLに対して、射出面2b側ほど照射光軸AXLに近づくように傾斜している。また、ここにいう略平行とは、完全に平行である場合と製造誤差の範囲で照射光軸AXLに対して傾いている場合を含む。このことは、以下の実施例でも同様である。
光学部材2の入射面2aは、図1〜図3に示すように正の屈折力を持つレンズ面である。LED1から射出し、入射面2aに入射した光束は、該入射面2aで屈折することにより集光し、射出面2bから射出する。
反射部材3は、少なくとも内側の面が反射率の高い面で構成された部材であり、素材自体に高反射率の材料を用いたり、ベース部材を成形した後、反射が必要な内側の面に高反射率の金属蒸着を施したりして作られる。
また、この反射部材3は、LED1からの射出光束のうち射出光軸(照射光軸AXL)に対して比較的大きな角度を持った成分を反射して光学部材2の入射面2aに導く。反射部材3の形状(反射面の形状)は、光源側から被写体側である照射方向(以下、前方という場合もある)に向かうにつれて、開口が徐々に広がる回転対称形状である。
また、反射部材3は、図1および図2に示すように、垂直および水平方向の断面形状が照射光軸AXLに向かって凹面となる曲面で構成されている。この形状により、反射後の光束は照射光軸に向かい、これと交差するように進む。
一方、反射部材3のうち最もLED1に近い入射開口端3aは、図3に示すように、照射光軸方向(例えば、LED側)から見たときの内外形が略円形である。また、該入射開口端3aによって囲まれる面は、照射光軸AXLに対して略直交する。ここにいう略直交するとは、完全に直交する場合と製造上又はメカ的な保持上の誤差の分だけ照射光軸AXLに直交する面に対して傾いている場合を含む。また、略円形とは、完全に円形であるか又は製造誤差の範囲で円形から外れている場合を含む。このことは、以下の実施例でも同様である。
入射開口端3aの大きさ、ここでは入射開口端3aの内径は、LED1の発光面1aの外径と略同じである。ここにいう略同一とは完全に同一である場合と製造誤差の範囲でずれている場合を含む。このことは、以下の実施例でも同様である。
そして、反射部材3の入射開口端3aによって囲まれる面(以下、入射開口面という)は、LED1の発光面1aの直前であって、照射光軸AXL上で発光面1aと向かい合うように配置されている。ここで、入射開口面、つまりは入射開口端3aの大きさが発光面1aの大きさよりも小さい場合には、発光面1aから射出された光束のすべての光束を入射開口面に入射させることができなくなる。また、入射開口端3aの大きさが、発光面1aの大きさよりも大きすぎる場合には、反射部材3が大型化してしまう。しかも、入射開口面のうち周辺部に到達する光束が減少して、該入射開口面での光量分布が不均一となり、結果的に配光むらを生じてしまう。そこで、本実施例のように、入射開口端3a(入射開口面)の大きさと発光面1aの大きさとを略等しくするのが好ましい。これについては後で補足説明する。
また、LED1の発光面1aと反射部材3は回転対称形状を有し、この結果、この両者で構成される照明光学系では、垂直方向と水平方向とで配光特性に差(異方性)はなく、全ての方向に対して略均一な配光特性が得られる。
次に、本実施例の光学部材2の形状をさらに詳しく説明する。光学部材2の射出面2b側の形状は、図3および図4に示すように水平方向よりも垂直方向に長い(縦長の)矩形であり、射出面2bは平面で構成されている。これは、図7および図8に示すように、デザイン的な要件によるものであり、細長い帯状部16に射出面2bを露出させるのに都合の良い形状である。
このような縦長の光学部材2を用いた場合でも、照明ユニットとしての光学特性が所定の配光特性、すなわち被写体側の必要照射範囲に対して略均一な配光特性を満たすようにすることが望ましい。ここにいう略均一とは、完全な均一な場合と被写体照明光として実際上均一とみなせる範囲で不均一性を有する場合を含む意味である。また、均一とは、照射光軸AXLを含む中心部とその周辺部とで光量が同等であることをいう。これらのことは以下の実施例でも同様である。
そこで、本実施例では、以下のようにして光学部材2の形状を規定し、配光特性の不均一化を防いでいる。
まず、前述したように、光学部材2の入射面2aは凸レンズ面で構成されている。ここで、垂直方向と水平方向とで配光特性に大きな変化が生じないようにするため、レンズ面はトーリック面ではなく、通常の回転対称の凸レンズとしている。そして、これを照射光軸AXL方向から見て矩形となるように、必要な大きさにカットした形状としている。
垂直方向に対応する光学部材2の長辺側の長さは、図1に示すように、反射部材3の光学部材側の開口端部(以下、射出開口端という)3bの内径とほぼ同じに設定されている。一方、水平方向に対応する光学部材2の短辺側の長さは、反射部材2が回転対称形状であるため、図2に示すように、反射部材3の射出開口端3bの内径よりも短い長さに設定されている。
このため、光学部材2の側面2dを射出面2bの側縁を基準として照射光軸AXLと略平行な面で構成した場合には、反射部材3の射出開口端3bと光学部材2との間に生じた隙間Sから光束が漏れ、該隙間を覆う外装部材5によって遮られてしまう。特に、周辺部に向かう光束が多く遮られることになり、水平方向の光束の射出角度が狭くなってしまう。
そこで、本実施例においては、この側面2dの形状を、入射面2a側が広く、射出面2bに向かうほど照射光軸AXLに近づくテーパ形状としている。そしてこれにより、水平方向において、入射面2aの開口幅が射出面2bの開口幅に比べて大きくなるように形状を設定している。これにより、入射面2aにより多くの光束が入射するようにすることができ、外装部材5によるけられ光を減少させることができる。
つまり、LED発光面1aと反射部材3を回転対称形状とする一方、光学部材2を円形ではない異形とした光学系であって、光の利用効率が高く、かつ全ての方向で略均一な配光特性を持った照明光学系を実現している。
次に、本実施例の照明ユニットの配光特性について、図5、図6および図9を用いて説明する。まず、図5および図6はそれぞれ、本実施例の照明ユニットの配光特性を説明するための垂直断面図および水平断面図であり、LED1から射出した光束の光線トレース図を示している。
図5(A)〜(H)および図6(A)〜(H)は、光学部材2からの射出光束の照射光軸AXLに対する角度を、0°から35°の範囲内で5°ずつ変化させたときの光線トレース図を示している。
ここで、図5および図6では、本実施例の照明ユニットの配光特性を評価するに当たって、光源であるLED1が発光面1aの全領域において均一輝度の光を照射する完全拡散光源であると仮定した。このようなLED1の場合、光照射側(照明ユニットの前方)の特定の位置からLED1側への平行光線の逆トレースを行い、LED1に到達した光線の本数をカウントすることで、比較的容易に配光特性を判断することができる。これを2次元的に示したものが、図5および図6である。以下の説明においては、この逆トレースの順序に従って光線の軌跡の説明を行う。なお、図5(A)〜(H)および図6(A)〜(H)には、逆トレースによってLED1の発光面1aに到達した光線のみを示している。
図5(A)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が0°の場合には、多くの光線が光学部材2の射出面2bの概ね全面を通り、該入射面2aで屈折してLED1の発光面1aに到達する。図5(A)に示す状態を光照射領域側(図5(A)の右側)から観察すると、光学部材2がレンズ口径全体(射出面2b全体)で光っていることが観察できる。ここで、図5(A)では、照射光軸AXLを含む中心部では、光学部材2の屈折作用のみで光線がLED1に導かれ、周辺部は光学部材2の屈折作用と反射部材3の反射作用で光線がLED1に導かれている。
次に、図5(B)に示すように、光照射側において照射光軸AXLに対して5°傾いた光線は、射出面2bの概ね全面を通り、入射面2aで屈折してLED1の発光面1aに到達する。すなわち、図5(A)に示す光束に対してほとんど変化がない。この場合も、光学部材2を光照射側から見たときに、射出面2bの全体が光っているように観察できる。一方、図5(B)において、図5(A)と異なる点は、反射部材3の上側の部分で反射する光線が減少し、逆に反射部材3の下側の部分で反射する光線が増加している点である。
図5(C),(D),(E),(F)に示すように、射出面2bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度を10°,15°,20°,25°とした場合でも、図5(B)に示す光線とほぼ同様の状態となる。すなわち、光照射側からの光線は射出面2bの概ね全面に入射し、射出面2bが全面で光っている状態が観察できる。また、射出面2bからの光束のうち一部の光束は、反射部材3の下側の部分で反射してLED発光面1aに到達する。
ただし、図5(A)の状態から図5(F)の状態になるにつれて、射出面2bから発光面1aに直接到達する光線が徐々に減少し、反射部材3を介して発光面1aに到達する光線が徐々に増加する。
そして、射出面2bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度が30°以上となる場合には、図5(G),(H)に示すように、射出面2bから発光面1aに到達する光線は全くなくなる。
このように、本実施例の照明ユニットの垂直断面においては、図5(F)に示す光線の傾きが25°の状態までは、射出面2bが全面で光っている状態が観察できるのに対し、図5(G),(H)に示す光線の傾きが30°以上の状態では、射出面2bが全く光らない。つまり、光線の傾きが25°から30°の間で急激に照明状態が変化する。これは、言い換えれば、LED1からの光束のうち光照射側において照射光軸AXLに対する傾きが25°となる光線までは略均一な照明に寄与し、これよりも傾きが大きくなる範囲には光線が照射されないことを意味する。したがって、垂直方向に関して極めて効率の良い照明光学系が構成されていると言える。
このように、本実施例の照明ユニットは、LED1からの射出光束の中で、正の屈折力を有する入射面2aに直接入射して射出される屈折光と、反射部材3での反射を介して射出される反射光との割合を垂直方向で連続的に変化させながら、従来よりも広い角度範囲に対して略均一な照明が行える構成になっている。
次に、水平方向に関して説明する。前述したように、この断面では、光学部材2の側面2dは、LED側の開口が広く、射出面側に向かうにつれて開口が狭くなるテーパ形状で構成されている。まず図6(A)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が0°の場合には、多くの光線が射出面2bの概ね全面を通り、入射面2aで屈折してLED1の発光面1aに到達する。図6(A)に示す状態を光照射側(図6(A)の右側)から観察すると、光学部材2がレンズ口径全体(射出面2b全体)で光っていることが観察できる。ここで、図6(A)では、光学部材2の屈折作用のみで光線がLED1に導かれている。
次に、図6(B)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が5°の場合には、射出面2bの概ね全面を光線が通り、入射面2aで屈折してLED1の発光面1aに到達する。すなわち、図6(A)に示す光束に対してほとんど変化がない。この場合も、光学部材2を光照射側から見たときに、射出面2bの全体が光っているように観察できる。
一方、図6(B)において、図6(A)と異なる点は、反射部材3を介さずに光学部材2から直接LED1に到達する光線が減少し、反射部材3で反射する光線が現れている点である。
図6(C),(D),(E),(F)に示すように、射出面2bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度を10°,15°,20°,25°とした場合でも、図6(B)に示す光線とほぼ同様の状態となる。すなわち、光照射側からの光線は射出面2bの概ね全面に入射し、射出面2bが全面で光っている状態が観察できる。また、射出面2bからの光束のうち一部の光束は、反射部材3の下側の部分で反射してLED発光面1aに到達する。
ただし、図6(A)の状態から図6(F)の状態になるにつれて、射出面2bから発光面1aに直接到達する光線が徐々に減少し、反射部材3を介して発光面1aに到達する光線が徐々に増加する。
そして、射出面2bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度が30°以上となる場合には、図6(G),(H)に示すように、射出面2bから発光面1aに到達する光線は全くなくなる。
このように、本実施例の照明ユニットの水平断面においても、図6(F)に示す光線の傾きが25°の状態までは、射出面2bが全面で光っている状態が観察できるのに対し、図6(G),(H)に示す光線の傾きが30°以上の状態では、射出面2bが全く光らない。つまり、光線の傾きが25°から30°の間で急激に照明状態が変化する。これは、言い換えれば、LED1からの光束のうち光照射側において照射光軸AXLに対する傾きが25°となる光線までは略均一な照明に寄与し、これよりも傾きが大きくなる範囲には光線が照射されないことを意味する。したがって、水平方向に関しても極めて効率の良い照明光学系が構成されていると言える。
ここで、この水平断面では、入射面2aおよび射出面2bの開口幅は図5に示す垂直断面に比べて狭いものの、光束の照射角度範囲は図5に示す垂直断面と同等の照射光軸AXLに対して少なくとも25°まで確保されている。つまり、本実施例の照明光学系は、開口は円形ではない異形(矩形)であるが、配光特性に関しては、開口が円形である場合と同じように、垂直断面と水平断面とでほぼ等価な特性が得られる。
特に、本実施例の照明ユニットは、光学部材2の水平方向の断面に現れる側面2dを傾斜面とし、水平方向における入射面2aの開口幅を射出面2bの開口幅より大きくすることによって、反射部材3からの射出光束がけられるのを防止している。これにより、周辺部でも暗くなりにくい照明光学系を実現している。これは、水平断面に関して、側面を傾斜面としない比較例(図11)からも明らかである。
図11では、光学部材32の側面を照射光軸AXLと平行な面で構成した光学系を示している。32aは光学部材32の入射面、32bは射出面である。この場合、照射光軸AXLに対して0°から10°程度の小さい角度で射出される光束(図11(A),(B),(C))に関しては、光学部材32の側面によるけられはほとんどない。しかし、照射光軸AXLに対して15°以上の大きい角度で射出される光束(図11(D),(E),(F))は、図6と比較すると明らかにその量が減少している。そして、光照射側から見た場合、射出面32bの下側の一部が暗く翳って見えることになる。
このように、本実施例の照明ユニットは、光学部材2の側面2dを傾斜面とし、水平方向での入射面2aの開口幅を射出面2bの開口幅より大きくしている。そして、このことにより、垂直方向に比べて開口幅が狭い水平方向においても、垂直方向と同様に、従来より広い角度範囲に対する略均一な配光特性を確保している(光照射側からは全面が光って見える)。
次に、本実施例の構成とほぼ同一の条件において従来の照明ユニットを用いた場合の配光特性について図10を用いて説明し、これとの比較により本実施例の照明ユニットの優位さを説明する。
図10において、21はLED、21aはその発光面、22は光学部材、22aはその射出面を示す。図10の照明ユニットでは、光学部材22として、通常の円形両凸の集光レンズを用いている。光学部材の垂直および水平断面は同一形状である。図10(A)〜(H)は、光学部材21からの射出光束の照射光軸AXLに対する角度を、0°から35°の範囲内で5°ずつ変化させたときの光線トレース図を示している。但し、図10においても、光照射側から光源側に逆トレースした光線の軌跡を示している。また、図10には、逆トレースによってLED21の発光面21aに到達した光線のみを示している。
図10では、LED21を集光レンズ22の焦点距離よりも集光レンズ22側に近づけたデフォーカス状態を示している。
図10(A)に示す照射光軸AXLに平行な光束(傾き0°)が光学部材22を通る状態から、図10(B)に示す照射光軸AXLに対して5°傾いた光束が光学部材22を通る状態までは、集光レンズ22の射出面22aの概ね全体を光らせることができる。しかし、図10(C)〜10(F)に示すように、照射光軸Lに対する角度が5°よりも大きい光束が光学部材22を通る場合には、集光レンズ22の射出面22aのうち該光束が通る領域が徐々に減少する(翳って見える領域が増加する)。
そして、図10(G)に示すように、照射光軸AXLに対する角度が30°の光束が光学部材22を通る場合には、集光レンズ22を通って発光面21aに到達する光線が無くなってしまう。
このように、通常の集光レンズ22を用いた従来の照明ユニットでは、本実施例の照明ユニットとほぼ同等な角度範囲に照明を行えるものの、以下の相違がある。すなわち、集光レンズ22を用いた従来の光学系では、照射光軸AXLに対して0°〜5°の小さい特定角度範囲では明るく均一な照明を行うことができるものの、該特定角度範囲よりも広い角度範囲では極端に暗い照明しかできなくなり、実質的な照射可能範囲が本実施例と比べてかなり狭い。
また、図10に示す照明ユニットでは、集光レンズ22の屈折力を弱めに設定したデフォーカス状態で利用する場合を示した。これに対し、図10に示した集光レンズ22よりもさらに屈折力を強めた集光レンズを用いれば、より多くの光束を必要照射範囲に照射することができるとも考えられる。しかし、必ずしもレンズの屈折力を強めた方が集光性の高い光学系になるとは限らない。
すなわち、集光レンズの屈折力を強めると、照射光軸AXLに近い角度成分の光束をある程度集光させることはできる。しかし、照射光軸に対して大きな角度成分の光束に関しては、レンズの内部で不要な全反射光束が増えるために、必ずしも効率の良い集光光学系とはならない。
これに対し、本実施例の照明光学系は、従来よりも広い角度範囲に対して明るく、かつ略均一な照明を行うことができるという、従来の照明光学系に比べてきわめて高い優位性を持つものである。
次に、LEDの発光面(有効発光部)の大きさと反射部材の入射開口部の大きさとの関係について補足説明をする。
前述した理由により、反射部材の入射開口端の大きさは、LEDの発光面の大きさと略同じとすることが望ましい。図12には、本実施例の照明ユニットと同様の構成を有するが、光源(LED)の大きさを本実施例に比べて小さくした、比較例としての照明ユニットの垂直断面を示す。この構成では、反射部材3の入射開口部3aとLED31aとの間に大きな隙間が生じている。なお、図12(A)〜(H)は、本実施例と同じ光学部材2aからの射出光束の照射光軸AXLに対する角度を、0°から35°の範囲内で5°ずつ変化させたときの光線トレース図を示している。
但し、図12においても、光照射側から光源側に逆トレースした光線の軌跡を示している。また、図12には、逆トレースによってLED31の発光面31aに到達した光線のみを示している。また、図12では、LED31を光学部材2の入射面2aの焦点距離より光学部材2に近づけたデフォーカス状態を示している。
図12(A)に示すように照射光軸AXLに平行な(傾きが0°の)光線が光学部材2を通る場合、反射部材3を介さずにLED31に到達する直接光しか存在しない。この場合、本実施例に比べて、光線の本数が少なく、中心部が暗い配光分布になることが予想される。また、図12(B)〜図12(F)に示すように、光学部材2を通る光線の角度を0°から5°ずつ増加させることによって、反射部材3による反射を介してLED31に到達する光束が増加する。しかしこの増加は、LED31の発光面31aと反射部材3の入射開口端3aとの間に隙間があるため、連続的な変化にはならず、光線の角度に応じて急激に変化する。このことは、照射範囲では配光むらとなって現れ、中心部が暗く、その回りにドーナツ状に明るい部分が形成されるような配光分布となる。したがって、撮影用の照明としては適切ではない。
このようなことから、本実施例のように、反射部材の入射開口端の大きさを、光源の有効発光部の大きさと略一致させることが望ましい。
図9には、本実施例の照明ユニットの配光特性をグラフ化して示している。図9において、グラフの緯線は、照射光軸上での光量を100%(1.0)としたときの光量の比を示しており、経線は照射光軸に対する角度を示している。また、図9においては、実線が本実施例の照明ユニットの垂直方向(図5)の配光特性を示し、破線が水平方向(図6)の配光特性を示す。
図9から明らかなように、本実施例の照明ユニットでは、照射方向にかかわらず広い角度範囲で略均一な照明を行うことができる。すなわち、照射光軸に対する角度が概ね25°までの広い範囲内での光束の光量を、照射光軸上での光量とほぼ等しくすることができる。そして、照射光軸に対する角度が30°以上となる領域では光量がほとんどなく、本実施例の照明ユニットが光の利用効率がきわめて高いものであることが分かる。
次に、本実施例における望ましい各部材の位置関係、および光学部材の射出面の垂直方向と水平方向のサイズの関係について説明する。
本実施例の照明光学系を有効に機能させるためには、光源(LED1)と光学部材2との距離、および光学部材2として必要とされる開口の大きさにそれぞれ最適な関係が存在する。
図1に示すように、LED1の発光面1a(拡散面)から光学部材2の入射面2aまでの距離をLとし、光学部材2の射出面2bにおける長辺の長さをAとした場合、以下の関係を満たすことが望ましい。
1.2≦A/L≦3.0 ・・・・(1)。
ここで、本来的には、射出面2bの長辺の長さが距離Lのほぼ倍となる関係であること(A/L≒2)が望ましい。この場合、光学系の全体形状のバランスが良く、光学特性も最も良い。しかし、この関係以外でも、(1)式を満たせば、従来の照明光学系に比べて良好な効果が得られる。
A/Lが(1)式の下限値である1.2より小さくなると、相対的に光源に対して光学部材の開口が狭過ぎることになり、光学系全体が照射光軸方向に長くなって大型化してしまう。つまり、ビデオカメラ等、小型化が求められる撮像装置の照明ユニットには適さなくなる。また、(1)式の上限値である3.0を超えると、広い角度範囲で略均一な配光特性を得ることが難しくなる。
本実施例では、A/L≒1.7の場合の構成を示している。
また、光学部材2の射出面2bにおける垂直方向と水平方向の開口幅の比は、図1および図2に示すように、光学部材2の射出面2bの長辺の長さ(開口幅)をA、短辺の長さ(開口幅)をBとした場合、以下のような範囲にあることが望ましい。
1.05≦A/B≦1.8 ・・・・(2)。
ここで、光学部材2の最大幅(長辺の長さ)Aは、反射部材3の開口形状と密接な関係があり、本実施例でも、長辺の長さAと反射部材3の射出開口端3bの内径とをほぼ一致させている。
一方、短辺側の開口幅は、これを狭めるほど照明光学系としての光学特性において不利なものとなる。このため、照明光学系として悪影響を与えない範囲で、水平方向の開口幅を垂直方向の開口幅より小さく設定できる値に限定される。
A/Bが(2)式の下限値および上限値を超えると、水平方向の開口幅を垂直方向の開口幅より小さいという前提が崩れたり、水平方向の開口幅が狭すぎて照明光学系として悪影響が生じたりして、好ましくない。
本実施例では、A/B≒1.5の場合の構成を示している。
図13から図18には、本発明の実施例2である照明ユニット(照明装置)の構成を示している。本実施例の照明ユニットは、以下に説明するように、例えば、LEDのような微小な面光源から射出される光束を効率良く集光させることができるものである。
図15には、本実施例の照明ユニットを分解して示している。図15において、55はビデオカメラ本体の外装部材である。本実施例のビデオカメラでは、実施例1にて図7および図8に示したビデオカメラと同様に、フラッシュユニット、照明ユニットおよびタリーランプが、レンズ鏡筒部の側方において垂直方向に延びる細長い凹溝状部内に上下方向に並ぶように配置されている。これ以外のビデオカメラの構成は、実施例1にて説明したビデオカメラの構成と同様である。
図13には、本実施例の照明ユニットを、光源であるLED51の発光面51aの中心に立てた法線、言い換えれば照明ユニットにおける光束照射光軸AXLを通る垂直方向(Z方向:第2の方向)の面で切断したときの垂直断面図(XZ断面図)を示す。また、図14には、本実施例の照明ユニットを、光束照射光軸AXLを通る水平方向(Y方向:第1の方向)の面で切断したときの水平断面図(XY断面図)を示す。さらに図16は、本実施例の照明ユニット内に配置される光学部材の正面図である。
図13から図15において、51は光源であるLED、52はLED51から射出した光束を集光させるための光学部材である。53はLED51から射出した光束を集光させながら反射して光学部材52に導く反射部材である。54はハード基板であり、LED51と電気的に接続され、かつLED51を保持する。
LED51は、その略円形の発光面51aから略均一な特性を持った光束を、所定の時間の間、定常光として発することができる高輝度の白色LEDである。ここで、LED51では、その射出面の直前に形成された拡散面によって、LEDチップから射出した光束を略均一な配光特性を持つ光束に変換する。この結果、発光面51aを、発光位置に拘わらず均一な配光特性を持った微小光源の集まりとして扱うことができる。
LED51は、半田付け等によってハード基板54に電気的および機械的に接続されており、ハード基板54を介して不図示のCPUからの制御信号を受けることにより発光する。ハード基板54は、不図示の固定部材によってビデオカメラ本体内において照明光学系として最も効率良く機能する位置に固定されている。
光学部材52は、LED51から発せられた光束のうち入射面52aに直接入射した光束を屈折作用によって集光するとともに、それ以外の反射部材53で反射した光束を通過させるための光学部材である。該光学部材52は、透明性の高い(減衰率が概ね0である)樹脂材料で形成されている。
光学部材52は、入射面52a、射出面52b、上下面52cおよび側面52dを有する。入射面52aは、垂直方向と水平方向とで屈折力が異なり、強い正の屈折力を持つトーリックレンズ面である。また、射出面52bは、ビデオカメラの外観に露出する面であって、負の屈折力を持ち、垂直方向に母線が延びるシリンドリカルレンズ面である。
本実施例では、ビデオカメラの外観に露出する光学部材52の射出面52bの形状を実施例1よりもさらにユーザーに意識させないよう、よりデザインを優先して形状を決定した場合について説明する。具体的には、射出面52bの形状を、正面(光照射側)から見て垂直方向を長軸方向とする略楕円形状とし、さらに水平断面において光照射側に向かって凹面のシリンドリカルレンズ形状としている。
上下面52cは、照射光軸AXLに対して、LED51側ほど照射光軸AXLに近づくように傾斜した傾斜面である。さらに、側面52dは、照射光軸AXLに対して、射出面52b側ほど照射光軸AXLに近づくように傾斜した傾斜面である。
LED51から射出し、入射面52aに入射した光束は、該入射面52aで屈折することにより集光し、射出面52bから射出する。
反射部材53は、少なくとも内側の面が反射率の高い面で構成された部材であり、素材自体に高反射率の材料を用いたり、ベース部材を成形した後、反射が必要な内側の面に高反射率の金属蒸着を施したりして作られる。
また、この反射部材53は、LED51からの射出光束のうち射出光軸(照射光軸AXL)に対して比較的大きな角度を持った成分を反射して光学部材52の入射面52aに導く。反射部材53の形状(反射面の形状)は、光源側から被写体側である照射方向(以下、前方という場合もある)に向かうにつれて、開口が徐々に広がる回転対称形状である。
また、反射部材53は、図13および図14に示すように、垂直および水平方向の断面形状が照射光軸AXLに向かって凹面となる曲面で構成されている。この形状により、反射後の光束は照射光軸に向かい、これと交差するように進む。
一方、反射部材53のうち最もLED51に近い入射開口端53aは、図15に示すように、照射光軸方向(例えば、LED側)から見たときの内外形が略円形である。また、該入射開口端53aによって囲まれる面は、照射光軸AXLに対して略直交する。
入射開口端53aの大きさ、ここでは入射開口端53aの内径は、LED51の発光面51aの外径と略同じである。その理由は、実施例1と同様である。
そして、反射部材53の入射開口端53aによって囲まれる面(入射開口面)は、LED51の発光面51aの直前であって、照射光軸AXL上で発光面51aと向かい合うように配置されている。
また、LED51の発光面51aと反射部材53は回転対称形状を有し、この結果、この両者で構成される照明光学系では、垂直方向と水平方向とで配光特性に差(異方性)はなく、全ての方向に対して略均一な配光特性が得られる。
削除光学部材52の射出面52bは、正面視において図16に示すように、縦長の楕円形状である。但し、射出面52bには、前述したように垂直方向を母線方向とする凹シリンドリカルレンズ面が形成されている。これは、前述したようにデザイン的な要件によるもので、ビデオカメラにおける細長い溝状の部分に照明ユニットを配置するのに都合の良い形状である。このような縦長の射出面52bを採用しても、所望の光学特性(配光特性)が得られるのが望ましい。
そこで、本実施例では、以下のようにこの光学部材52の形状を規定し、配光特性の不均一化を防いでいる。
入射面52aは、図13および図14に示すように、水平方向の正の屈折力が垂直方向の正の屈折力よりも強いトーリックレンズ面である。本実施例では、光学部材52の射出面52bをデザイン上、水平断面において凹面形状を有するシリンドリカルレンズとしており、水平方向にのみ負の屈折力を有する形状としている(垂直方向には屈折力を持たない)。このため、この負の屈折力をキャンセルするため、入射面52aを、水平方向の正の屈折力が垂直方向の正の屈折力よりも強いトーリックレンズ面としている。
すなわち、射出面52bにて作用する水平方向の負の屈折力をキャンセルできる正の屈折力を、入射面52aの水平方向に与えることにより、光学部材52全体としての水平方向と垂直方向に同等の集光作用を与えている。言い換えれば、入射面52aの屈折力と射出面52bの屈折力の合成屈折力が、方向によらずほぼ一定になるように光学部材52を構成している。また、光学部材52において、照射光軸AXLを含む水平断面と垂直断面以外の断面の形状は、該垂直断面形状と水平断面形状とを連続的に結ぶ滑らかな曲面で構成されている。本来、上下面52cと側面52dとは連続した1つの曲面で構成されているが、ここでは、説明の都合上、上下面52cと側面52dとに分けて説明する。
次に、光学部材52の側面52dの形状について説明する。まず、図14の水平断面に示すように、光学部材52の入射面52aは、回転対称形状である反射部材53の射出開口端53bとほぼ一致する位置まで延びている。一方、射出面52bは、水平方向の開口幅が入射面52aの開口幅よりも小さく設定されている。そして、側面52dは、このように水平方向の開口幅が広い入射面52aから、同方向における開口幅が入射面52aよりも狭い射出面52bに向かって急激に開口が狭まるような傾斜面で構成されている。このように構成することによって、LED51から直接入射面52aに入射して屈折した光束と、反射部材53で反射して入射面52aに入射した光束とを、切れ間なく効率良く射出面52bに導くことができる。
一方、図13に示すように、入射面52aは、垂直断面に関しては全体の配光特性を略均一化させるため、弱い屈折力を有する。このため、垂直断面における入射面52aは、回転対称形状の反射部材53の入射開口端53aと射出開口端53bとの間(但し、射出開口端53bに近い部分)までしか延ばすことができない。一方、射出面52bの開口幅は、極力広い方が光学特性上有利である。このため、光学部材52の上下面52cを、入射面52aから射出面52bに向かって徐々に開口が広がる傾斜面で構成している。そして、この上下面52cによって、反射部材53で反射させることができない光束を全反射させる。すなわち、本実施例では、光学部材52の上下面52cを集光光学系の一部として利用している。この構成を採ることによって、図13に示す垂直方向の開口幅を極力広げた構成が可能となる。
以上のことにより、光学部材52は、図16に示すように、その射出面52bは水平方向の開口幅が垂直方向の開口幅より小さい略楕円形状で、その入射面52aは水平方向の開口幅が垂直方向の開口幅よりも大きい略楕円形状を有する。そして、該入射面52aと射出面52bとをつなぐ外周面は、射出面52bに近づくにつれて開口が広くなる上下面と射出面52bに近づくにつれて開口が狭くなる側面52dとを滑らかにつないだ曲面によって構成されている。
次に、本実施例の照明ユニットの配光特性について、図17および図18を用いて説明する。図17および図18はそれぞれ、本実施例の照明ユニットの配光特性を説明するための垂直断面図および水平断面図であり、LED51から射出した光束の光線トレース図を示している。
図17(A)〜(H)および図17(A)〜(H)は、光学部材52からの射出光束の照射光軸AXLに対する角度を、0°から35°の範囲内で5°ずつ変化させたときの光線トレース図を示している。
ここで、図17および図18では、本実施例の照明ユニットの配光特性を評価するに当たって、光源であるLED51が発光面51aの全領域において均一輝度の光を照射する完全拡散光源であると仮定した。このようなLED51の場合、光照射側(照明ユニットの前方)の特定の位置からLED51側への平行光線の逆トレースを行い、LED51に到達した光線の本数をカウントすることで、比較的容易に配光特性を判断することができる。これを2次元的に示したものが、図17および図18である。以下の説明においては、この逆トレースの順序に従って光線の軌跡の説明を行う。なお、図17(A)〜(H)および図18(A)〜(H)には、逆トレースによってLED51の発光面51aに到達した光線のみを示している。
図17(A)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が0°の場合には、多くの光線が光学部材52の射出面52bの概ね全面を通り、該入射面52aで屈折してLED51の発光面51aに到達する。図17(A)に示す状態を光照射領域側(図17(A)の右側)から観察すると、光学部材52がレンズ口径全体(射出面52b全体)で光っていることが観察できる。ここで、図17(A)では、照射光軸AXLを含む中心部では、光学部材52の屈折作用のみで光線がLED1に導かれ、周辺部は光学部材52の屈折作用と側面部52cによる全反射作用と反射部材53の反射作用で光線がLED51に導かれている。
次に、図17(B)に示すように、光照射側において照射光軸AXLに対して5°傾いた光線は、射出面52bの概ね全面を通り、入射面52aで屈折してLED51の発光面51aに到達する。すなわち、図17(A)に示す光束に対してほとんど変化がない。この場合も、光学部材52を光照射側から見たときに、射出面52bの全体が光っているように観察できる。一方、図17(B)において、図17(A)と異なる点は、光学部材52の上側の側面52cと反射部材53の上側の面で反射する成分が減少し、その逆に光学部材52の下側の側面52cと反射部材53の下側の面で反射する成分が増加している点である。
図17(C),(D),(E)に示すように、射出面52bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度を10°,15°,20°とした場合でも、図17(B)に示す光線とほぼ同様の状態となる。すなわち、光照射側からの光線は射出面52bの概ね全面に入射し、射出面52bが全面で光っている状態が観察できる。また、射出面52bからの光束のうち一部の光束は、光学部材52の下側の側面52cで全反射するか、もしくは反射部材53の下側の面で反射して発光面51aに到達する。
ただし、図17(A)〜図17(E)に示すように、射出面52bを通る光照射側からの光線の照射光軸Lに対する傾き角度が0°から増加するのに伴い、LED発光面51aに直接到達する光線が徐々に減少する。逆に言えば、反射部材53を介して発光面51aに到達する成分が徐々に増加する。
さらに、図17(F)〜図17(H)に示すように、射出面52bを通る光照射側からの光線の照射光軸Lに対する傾き角度を25°,30°および35°とした場合には、光照射側からの光線は射出面52bの一部だけから入射する。そして、光線の傾き角度が増加するに従って、射出面52bのうち光線が通る領域(光照射側から光って見える領域)と反射部材53で反射して発光面51aに到達する光線とが徐々に減少していく。また、これらの傾き角度では、光学部材52の下側の側面52cで全反射する光線がなくなり、さらに傾き角度が35°の場合には、反射部材53で反射して発光面51aに到達する光線がなくなる。
したがって、図17(F)の状態から、光線の傾き角度が増加するのに伴い、射出面52bから発光面51aに直接到達する光線も、反射部材53を介して発光面51aに到達する光線もそれぞれ徐々に減少していることがわかる。
このように、本実施例の照明ユニットの垂直断面においては、図17(E)に示す光線の傾きが20°の状態までは、射出面2bが全面で光っている状態が観察できるのに対し、図17(F)〜図17(H)に示す光線の傾きが25°以上の状態では、射出面52bが部分的に光る状態となり、その部分も徐々に減少する。これは、言い換えれば、LED51からの光束のうち光照射側において照射光軸AXLに対する傾きが20°となる広い角度範囲に射出する光線によって略均一な照明を行うことができ、それより約15°までの外側領域においても徐々に暗くなっていくが、有効な照明が行われることがわかる。
このように、本実施例の照明ユニットでは、正の屈折力を有する入射面52aで屈折した光束と、反射部材53で反射した光束と、さらに側面52cで全反射した光束との割合を垂直方向で連続的に変化させながら、従来よりも広い角度範囲において射出面52bの全面で光る領域が確保された構成になっている。
次に、水平方向に関して説明する。前述したように、この断面では、光学部材52の側面52dは、LED側の開口が広く、射出面側に向かうにつれて開口が狭くなるテーパ形状で構成されている。
まず図18(A)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が0°の場合には、多くの光線が射出面52bの概ね全面を通り、入射面52aで屈折してLED51の発光面51aに到達する。図18(A)に示す状態を光照射側(図18(A)の右側)から観察すると、光学部材52がレンズ口径全体(射出面52b全体)で光っていることが観察できる。ここで、図18(A)では、光学部材52の屈折作用のみで光線がLED51に導かれている。
次に、図18(B)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が5°の場合には、射出面52bの概ね全面を光線が通り、入射面52aで屈折してLED51の発光面51aに到達する。すなわち、図18(A)に示す光束に対してほとんど変化がない。この場合も、光学部材52を光照射側から見たときに、射出面52bの全体が光っているように観察できる。
一方、図18(B)において、図18(A)と異なる点は、反射部材3を介さずに光学部材52から直接LED51に到達する光線が減少し、反射部材53で反射する光線が現れている点である。
図18(C),(D),(E),(F),(G)に示すように、射出面52bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度を10°,15°,20°,25°,30°とした場合でも、図18(B)に示す光線とほぼ同様の状態となる。すなわち、光照射側からの光線は射出面52bの概ね全面に入射し、射出面52bが全面で光っている状態が観察できる。また、射出面52bからの光束のうち一部の光束は、反射部材53の下側の部分で反射してLED発光面51aに到達する。
ただし、図18(A)の状態から図18(G)の状態になるにつれて、射出面52bから発光面51aに直接到達する光線(直接光線)が徐々に減少し、反射部材53を介して発光面51aに到達する光線(反射光線)が徐々に増加する。
そして、射出面52bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度が35°以上となる場合には、図18(H)に示すように、射出面52bから発光面51aに到達する光線は、直接光線および反射光線とも減少する。
このように、本実施例の照明ユニットの水平断面においても、図18(G)に示す光線の傾きが35°の状態までは、射出面52bが全面で光っている状態が観察できるのに対し、図18(H)に示す光線の傾きが35°以上の状態では、射出面2bのうち光る領域が減少する。これは、言い換えれば、LED51からの光束のうち光照射側において照射光軸AXLに対する傾きが30°となる光線までは略均一な照明に寄与し、これよりも傾きが大きくなる範囲では徐々に暗くなっていく照明を行うことを意味する。したがって、照射光軸AXLに対して少なくとも30°の広い範囲で、略均一な配光特性が得られる。
ここで、この水平断面では、射出面52bの開口幅は図17に示す垂直断面に比べて狭いものの、光束の照射角度範囲は図17に示す垂直断面と同等の照射光軸AXLに対して少なくとも30°まで確保されている。つまり、本実施例の照明光学系は、開口は円形ではない異形(矩形)であるが、配光特性に関しては、開口が円形である場合と同じように、垂直断面と水平断面とでほぼ等価な特性が得られる。
特に、本実施例の照明ユニットは、光学部材52の水平断面に現れる側面52dを、入射面52aから射出面52dに向かって急激に開口幅が狭まる傾斜面とし、水平方向における入射面52aの開口幅を射出面52bの開口幅より大きくしている。そしてこれにより、反射部材53からの射出光束がけられるのを防止し、周辺部でも暗くなりにくい照明光学系を実現している。一方、光学部材52の垂直断面に現れる上下面52cを、射出面52bに向かって徐々に開口が広がる全反射面として形成し、実質的に光学部材52の開口面積を広げるようにして照明光学系の効率を改善している。これにより、略楕円形状の異形の開口に対しても有利な照明光学系を実現している。
このように、本実施例の照明ユニットは、光照射側での射出光束の照射光軸AXLに対する傾き角度に応じて、正の屈折力を有する入射面52aで屈折する光束と、反射部材53および全反射面(側面52c)で反射される光束との割合を連続的に変化させる。これにより、従来よりも広い角度範囲において、明るく略均一な配光特性(つまりは、光照射側から射出面52aの全体が光って見える特性)が得られる。
次に、本実施例における望ましい各部材の位置関係、および光学部材の射出面の垂直方向と水平方向のサイズの関係について説明する。
本実施例では、(1)式におけるA/Lの値は、A/L≒2.6である。すなわち、(1)式の関係を満たす。また、(2)式のA/Bの値は、A/B≒1.3である。すなわち、(2)式の関係を満たす。
このように、本実施例でも、望ましい各部材の位置関係が設定されており、かつ射出面52bの垂直方向と水平方向の開口幅の比も望ましい値であることがわかる。
なお、本実施例では、光学部材52の射出面52bの外形形状を略楕円形状とした場合について説明したが、必ずしもこの形状に限定されるわけではない。射出面の外形形状としては、垂直方向と水平方向とで開口幅が異なる形状であればどのようなものでもよく、例えば、ひし形や六角形等の多角形でもよい。また、垂直断面および水平断面のうち少なくとも一方において非対称の形状としてもよい。
また、本実施例では、反射部材53として回転対称の形状を有する部材を用いたが、本発明における反射部材の形状が、必ずしも回転対称に限定されるわけではなく、任意の形状の反射部材を用いてもよい。
図19から図22には、本実施例の照明ユニットの構成を示している。本実施例の照明ユニットは実施例1の変形例である。実施例1では光学部材の入射面にトーリックレンズ面を形成した場合について説明したが、本実施例では光学部材の入射面に、フレネルレンズ面を形成している。なお、本実施例において、実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付している。
図19には、本実施例の照明ユニットを、光束照射光軸AXLを通る垂直方向(Z方向:第2の方向)の面で切断したときの垂直断面図(XZ断面図)を示す。また、図20には、本実施例の照明ユニットを、光束照射光軸AXLを通る水平方向(Y方向:第1の方向)の面で切断したときの水平断面図(XY断面図)を示す。
62は光学部材であり、その射出面(光学機器の外観に出る部分)62bは、正面視において垂直方向を長軸方向とする楕円形状に形成され、かつ平面で構成されている。また、入射面62aにはフレネルレンズが形成されている。
このように光学部材62の入射面62aにフレネルレンズを形成することによって、実施例1のようにトーリックレンズ面(シリンドリカルレンズ面)を形成する場合に比べて光学部材62を薄くすることができる。したがって、光学部材62の成形時間を短縮することができ、コストを抑えた照明光学系の設計が可能になる。また、形状が薄型化できるため、全体の重量を抑えることができ、軽量で持ち運びし易い撮像装置を実現することができる。
光学部材62は、LED1から射出して直接入射した光束を集光するとともに、反射部材3で反射した後に入射した光束を通過させる。光学部材2は、透明性の高い(減衰率が概ね0である)樹脂材料により形成されている。光学部材2は、垂直方向および水平方向に弱い屈折力を持つフレネルレンズ面が形成された入射面62aと、平面で構成された射出面62bとを有する。さらに、図19に示すように照射光軸AXLに略平行な垂直方向の外周面(上下面)62cと、図20に示すように照射光軸AXLに対して傾斜した面で構成された水平方向の外周面(側面)62dとを有している。側面62dは、照射光軸AXLに対して、射出面62b側ほど照射光軸AXLに近づくように傾斜している。
LED1から射出し、入射面62aに入射した光束は、該入射面62aで屈折することにより集光し、射出面62bから射出する。
このとき、実施例1と同様に、LED1と反射部材3は回転対称形状に形成されており、また、光学部材62の入射面62aにはフレネルレンズが形成され、射出面62bは平面である。このため、これらの部品で構成される照明光学系は、垂直方向と水平方向とで配光特性の異方性はなく、全ての方向に対して略均一な配光特性が得られる。
次に、本実施例の照明ユニットの配光特性について、図21および図22を用いて説明する。図21および図22はそれぞれ、本実施例の照明ユニットの配光特性を説明するための垂直断面図および水平断面図であり、LED1から射出した光束の光線トレース図を示している。
図21(A)〜(H)および図22(A)〜(H)は、光学部材62からの射出光束の照射光軸AXLに対する角度を、0°から35°の範囲内で5°ずつ変化させたときの光線トレース図を示している。以下の説明においては、実施例1と同様に、該光束を逆トレースした順序に従ってその光線軌跡の説明を行う。なお、図21(A)〜(H)および図22(A)〜(H)には、逆トレースによってLED1の発光面1aに到達した光線のみを示している。
図21(A)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が0°の場合には、多くの光線が光学部材62の射出面62bの概ね全面を通り、該入射面62aで屈折してLED1の発光面1aに到達する。図21(A)に示す状態を光照射領域側(図21(A)の右側)から観察すると、光学部材62がレンズ口径全体(射出面62bの全体)で光っていることが観察できる。
ここで、図21(A)では、照射光軸AXLを含む中心部では、光学部材62の屈折作用のみで光線がLED1に導かれ、周辺部は光学部材62の屈折作用と反射部材3の反射作用で光線がLED1に導かれている。
次に、図21(B)に示すように、光照射側において照射光軸AXLに対して5°傾いた光線は、射出面62bの概ね全面を通り、入射面62aで屈折してLED1の発光面1aに到達する。すなわち、図21(A)に示す光束に対してほとんど変化がない。この場合も、光学部材62を光照射側から見たときに、射出面62bが全体で光っているように観察できる。
一方、図21(B)において、図21(A)と異なる点は、反射部材3の上側の部分で反射する光線が減少し、逆に反射部材3の下側の部分で反射する光線が増加している点である。
図21(C),(D),(E),(F)に示すように、射出面62bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度を10°,15°,20°,25°とした場合でも、図21(B)に示す光線とほぼ同様の状態となる。すなわち、光照射側からの光線は射出面62bの概ね全面に入射し、射出面62bが概ね全面で光っている状態が観察できる。また、射出面62bからの光束のうち一部の光束は、反射部材3の下側の部分で反射してLED発光面1aに到達する。
ただし、図21(A)の状態から図21(F)の状態になるにつれて、射出面62bから発光面1aに直接到達する光線が徐々に減少し、反射部材3を介して発光面1aに到達する光線が徐々に増加する。
ここで、図21(C)〜(F)においては、厳密には全ての光束が発光面1aに到達しているわけではない。すなわち、一部の光束はフレネルレンズのエッジ部(フレネルレンズの各面をつなぐ階段状の部分)に入射し、通常のレンズ面とは異なる作用によって発光面1aにそのまま導かれない。このため、厳密には、射出面62bの全面が光って見えるわけでなく、フレネルレンズ面のエッジ部に当たる光束の領域は光らない。図中の一部に光線の抜けが生じているのはこの影響である。
そして、射出面62bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度が30°以上となる場合には、図21(G),(H)に示すように、射出面62bから発光面1aに到達する光線は全くなくなる。
このように、本実施例の照明ユニットの垂直断面においては、図21(F)に示す光線の傾きが25°の状態までは、射出面2bが概ね全面で光っている状態が観察できるのに対し、図21(G),(H)に示す光線の傾きが30°以上の状態では、射出面62bが全く光らない。つまり、光線の傾きが25°から30°の間で急激に照明状態が変化する。これは、言い換えれば、LED1からの光束のうち光照射側において照射光軸AXLに対する傾きが25°となる光線までは略均一な照明に寄与し、これよりも傾きが大きくなる範囲には光線が照射されないことを意味する。したがって、垂直方向に関して極めて効率の良い照明光学系が構成されていると言える。
このように、本実施例の照明ユニットは、LED1からの射出光束の中で、正の屈折力を有する入射面(フレネルレンズ面)62aに直接入射して射出される屈折光と、反射部材3での反射を介して射出される反射光との割合を垂直方向で連続的に変化させながら、従来よりも広い角度範囲に対して略均一な照明が行える構成になっている。
次に、水平方向に関して説明する。前述したように、この断面では、光学部材62の側面62dは、LED側の開口が広く、射出面側に向かうにつれて開口が狭くなるテーパ形状で構成されている。
まず図22(A)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が0°の場合には、多くの光線が射出面62bの概ね全面を通り、入射面62aで屈折してLED1の発光面1aに到達する。図22(A)に示す状態を光照射側(図22(A)の右側)から観察すると、光学部材62がレンズ口径全体(射出面62b全体)で光っていることが観察できる。ここで、図22(A)では、光学部材62の屈折作用のみで光線がLED1に導かれている。
次に、図22(B)に示すように、光照射側において照射光軸Lに対する角度が5°の場合には、射出面62bの概ね全面を光線が通り、入射面62aで屈折してLED1の発光面1aに到達する。すなわち、図22(A)に示す光束に対してほとんど変化がない。この場合も、光学部材2を光照射側から見たときに、射出面2bの全体が光っているように観察できる。
一方、図22(B)において、図22(A)と異なる点は、反射部材3を介さずに光学部材62から直接LED1に到達する光線が減少し、反射部材3で反射する光線が現れている点である。
図22(C),(D),(E),(F)に示すように、射出面62bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度を10°,15°,20°,25°とした場合でも、図22(B)に示す光線とほぼ同様の状態となる。すなわち、光照射側からの光線は射出面62bの概ね全面に入射し、射出面62bが概ね全面で光っている状態が観察できる。また、射出面62bからの光束のうち一部の光束は、反射部材3の下側の部分で反射してLED発光面1aに到達する。
ただし、図22(A)の状態から図22(F)の状態になるにつれて、射出面62bから発光面1aに直接到達する光線が徐々に減少し、反射部材3を介して発光面1aに到達する光線が徐々に増加する。また、図22(D),(E),(F)においては、前述したフレネルレンズのエッジ部に当たる光束の領域は光らない。
そして、射出面62bを通る光線の照射光軸AXLに対する角度が30°以上となる場合には、図22(G),(H)に示すように、射出面62bから発光面1aに到達する光線は全くなくなる。
このように、本実施例の照明ユニットの水平断面においても、図22(F)に示す光線の傾きが25°の状態までは、射出面62bが概ね全面で光っている状態が観察できるのに対し、図22(G),(H)に示す光線の傾きが30°以上の状態では、射出面62bが全く光らない。つまり、光線の傾きが25°から30°の間で急激に照明状態が変化する。これは、言い換えれば、LED1からの光束のうち光照射側において照射光軸AXLに対する傾きが25°となる光線までは略均一な照明に寄与し、これよりも傾きが大きくなる範囲には光線が照射されないことを意味する。したがって、水平方向に関しても極めて効率の良い照明光学系が構成されていると言える。
ここで、この水平断面では、入射面62aおよび射出面62bの開口幅は図21に示す垂直断面に比べて狭いものの、光束の照射角度範囲は図21に示す垂直断面と同等の照射光軸AXLに対して少なくとも25°まで確保されている。つまり、本実施例の照明光学系は、開口は円形ではない異形(矩形)であるが、配光特性に関しては、開口が円形である場合と同じように、垂直断面と水平断面とでほぼ等価な特性が得られる。
特に、本実施例の照明ユニットは、光学部材62の水平方向の断面に現れる側面62dを傾斜面とし、水平方向における入射面62aの開口幅を射出面62bの開口幅より大きくすることによって、反射部材3からの射出光束がけられるのを防止している。これにより、周辺部でも暗くなりにくい照明光学系を実現している。
なお、本実施例では、光学部材62の射出面62bの外形形状を略楕円形状とした場合について説明したが、必ずしもこの形状に限定されるわけではない。射出面の外形形状としては、垂直方向と水平方向とで開口幅が異なる形状であればどのようなものでもよく、例えば、ひし形や六角形等の多角形でもよい。また、垂直断面および水平断面のうち少なくとも一方において非対称の形状としてもよい。
また、本実施例では、反射部材3として回転対称の形状を有する部材を用いたが、本発明における反射部材の形状が、必ずしも回転対称に限定されるわけではなく、任意の形状の反射部材を用いてもよい。
さらに、上記実施例1〜3では、光源として、円形の発光面を有する白色LEDを用いる場合について説明したが、光源については必ずしもこれに限定されず、発光面を円形以外の形状としてもよい。また、光源としてもLEDに限定されるわけではなく、白色有機EL(electroluminescence)等、LED以外の発光素子を用いてもよい。
以上説明したように、上記各実施例によれば、光源から射出した光束を反射部材で反射させて光学部材の狭い開口部から射出させるように構成しているため、光学系の射出部の開口面積を狭く構成することができる。またこのような構成を採ることによって、異形の開口部形状や射出面の凹凸にも対応することができ、デザイン面での設計自由度を大幅に高めることが可能になる。
また、各実施例では、正の屈折力を持ち、開口幅が小さい水平方向の側面形状を射出面側に向かって開口が狭くなるように形成した光学部材と、照射光軸方向に連続的に反射方向を変化させる反射部材とを組み合わせている。そしてこれにより、異形の開口を持つ照明光学系においても、光学特性への悪影響の少ない、すなわち狭い開口幅による光束の蹴られを最小限に抑えた効率の良い光学系を実現できる。
また、光源からの直接光と反射部材を介した反射光とを連続的に接続することで、中心部から周辺部に至るまでの広い角度範囲で、明暗差の少ない略均一な配光特性を持った照明を行うことが可能である。
さらに、反射部材を光源の発光部とほぼ同一の大きさの入射部とし、かつ光束が逃げないように反射部材を光源に対して至近距離に配置することにより、光源からの射出光束を被写体に対して効率良く照射することができる。
さらに、上記各実施例の構成では、特殊な光学部品を用いておらず、最小限の部品構成で、小型化することができる。
本発明の実施例1である照明ユニットの構成を示す垂直断面図。
実施例1の照明ユニットの構成を示す水平断面図。
実施例1の照明ユニットの分解斜視図。
実施例1の照明ユニットに用いられる光学部材の正面図。
実施例1の照明ユニットの配光特性を説明するための垂直断面図。
実施例1の照明ユニットの配光特性を説明するための水平断面図。
実施例1の照明ユニットを有するビデオカメラの正面図。
実施例1の照明ユニットを有するビデオカメラの外観斜視図。
実施例1の照明ユニットの配光特性を示すグラフ。
従来の集光レンズを用いた照明ユニットの配光特性を説明するための図。
実施例1において、光学部材の一部形状を変更した場合の比較説明図。
実施例1において、光源の一部形状を変更した場合の比較説明図。
本発明の実施例2である照明ユニットの構成を示す垂直断面図。
実施例2の照明ユニットの構成を示す水平断面図。
実施例2の照明ユニットの分解斜視図。
実施例2の照明ユニットに用いられる光学部材の正面図。
実施例2の照明ユニットの配光特性を説明するための垂直断面図。
実施例2の照明ユニットの配光特性を説明するための水平断面図。
本発明の実施例3である照明ユニットの構成を示す垂直断面図。
実施例3の照明ユニットの構成を示す水平断面図。
実施例3の照明ユニットの配光特性を説明するための垂直断面図。
実施例3の照明ユニットの配光特性を説明するための水平断面図。
符号の説明
1、21、31、51・・・白色LED
2、52、62・・・光学部材
2a、52a、62a・・・入射面
2b、52b、62b・・・射出面
2c、52c・・・光学部材の上下面
2d、52d・・・光学部材の側面
11・・・ビデオカメラ本体