JP2007033436A - シリカゲル担体及び該担体を用いる光学分割法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】0.5〜4μmのスルーポア及び2〜50nmのメソポアからなる二重細孔構造を有するシリカゲル表面に、光学活性有機化合物の被覆層を有するシリカゲル担体であって、該光学活性有機化合物は、分子内に少なくとも1つの不斉炭素原子を含み、該不斉炭素原子の2つの結合部位は、置換基を有していてもよいカルボニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、水酸基又はチオール基と結合しており、該不斉炭素原子の他の2つの結合部位は水素原子又は炭素原子と結合している光学活性有機化合物であることを特徴とするシリカゲル担体。
【選択図】なし。
Description
ところで、アミノ酸、カルボン酸のようなカルボニル化合物を液体クロマトグラフの高流速下にて分析する方法は知られていたが、カルボニル化合物の拡散係数が非常に小さいので分離能が低いという問題があった。分離能を高めるためにはシリカゲル粒子の粒子径を小さくして拡散距離を短くすればよいが、シリカゲル粒子の粒子径を小さくするとシリカゲル粒子間の空隙も小さくなり、液体クロマトグラフにおいて高圧で移動相を送液しなければならないという問題があった。
かかる問題に対し、細孔径0.5〜4μmのスルーポア及び細孔径2〜50nmのメソポアからなる二重細孔構造を有するシリカゲル表面にシリル化剤で化学修飾してなるシリカゲル担体を用いると、移動相の送液の際に高圧としなくとも高分離能でアミノ酸を分析できることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1には、光学分割剤及び光学異性体の光学分割方法については何ら開示されていない。
最近、かかるシリカゲル担体に多糖又はその誘導体を担持させた光学異性体分離剤が特許文献2に提案され、光学異性体分離剤の具体的な製造方法としては、セルロースに、3,5−ジメチルフェニルイソシアネートを反応させて得られるセルロース トリス(3,5−ジメチルフェニルカーバメート)を調製し、二重細孔構造を有するシリカゲル表面にセルロース誘導体を含む溶液を90〜100barの圧力をかけながら担持させる方法などが開示されている。
本発明の目的は、拡散係数が非常に小さい化合物についても、一層、高い分離能で光学分割することができ、しかも液体クロマトグラフに用いられても、移動相の送液に際して圧力損失の低いシリカゲル担体を提供することである。
中でも、シリカゲル表面と光学活性有機化合物の被覆層との間に、オクタデシルシリル化剤による化学修飾層を有するシリカゲル担体は、多くの不斉炭素原子を有するカルボニル化合物の光学分割に際して高い分離能を示し、光学活性有機化合物が式(1)で表されるペニシラミン誘導体又はその鏡像異性体であるシリカゲル担体は、とりわけ、高い分離能を示す。
本発明のシリカゲル担体は、0.5〜4μm、好ましくは0.8〜3μmのスルーポアと、2〜50nm、好ましくは8〜30nmのメソポアとの二重細孔構造を有するシリカゲル表面を有する担体を用いる。
スルーポアが4μm以下であると不斉炭素原子を有するカルボニル化合物を光学分割する際の分離能が向上する傾向があることから好ましく、0.5μm以上であると、液体クロマトグラフのカラム充填材として用いる際にカラムにかかる圧力が低減される傾向があることから好ましい。
メソポアが、2nm以上であるとメソポアにおける不斉炭素原子を有するカルボニル化合物の拡散が容易になることから好ましく、50nm以下であるとシリカゲル表面が増大してカルボニル化合物を光学分割する際の分離能が向上する傾向があることから好ましい。
シリカゲルとオクタデシルシリル化剤との反応後、残存しているシラノール量を最小にするため1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンなどのシリル化剤で二次シリル化する方法が推奨される。
不斉炭素原子は相異なる4つの置換基と結合している。
他の2つの置換基は、水素原子と炭素原子が不斉炭素原子に結合していてもよいし、置換基として異なっていれば炭素原子と炭素原子が不斉炭素原子に結合していてもよい。
高い鏡像体過剰率を有する光学活性有機化合物としては、光学活性酒石酸、光学活性ペニシラミンなどの天然物質から誘導される化合物などが挙げられる。
上記炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、2,4,5−トリメチルヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、3−メチル−4−エチルウンデシル、ヘンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコサニルなどのアルキル基、例えば、アリル、ブテニル、7−オクテニル、3,5−デカジエニル、6−ドデシニルなどのアルケニル基、例えば、ベンジル、フェニル、ナフチル、フェネチル、スチリル、2−フェニルプロピルなどの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
R1及びR2を連結する2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、メチルエチレン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン等が挙げられる。
R11、R12及びR13の合計炭素数は8以上、好ましくは8〜25、とりわけ好ましくは10〜20である。
ここで、炭化水素基としては化合物(1)で例示された1価の炭化水素基が例示される。R12及びR13が連結した2価の炭化水素基としては、通常、炭素数2〜10程度であり、好ましくは、3〜5である。R12及びR13が連結した2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン、トリメチレン、メチルエチレン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン等が挙げられる。
R11−CH(R12)−NH(R13)[式中、R11、R12およびR13は前記の意味]
で表される化合物またはその塩を反応させた後、保護基の脱離反応に付すことにより製造することができる。ヒドロキシ保護基およびその脱離法の例は、新実験化学講座第14巻第2497〜2516頁に記載されている。代表的な例はアセチルである。その他に例えば、酒石酸とアセトンを酸の存在下室温にて反応させ、イソプロピリデンアセタールを生成させる。脱離は酢酸の存在下室温または加熱して行う。酒石酸のカルボキシル基における反応性誘導体としては、酸ハライド、酸無水物、活性エステルおよび活性アミドが含まれる。そのうち酸ハライドとしては、酸クロライドが汎用される。酸無水物としては、対称無水物および混合酸無水物が含まれ、後者には例えばジアルキル燐酸混合無水物、ジアルキル亜燐酸混合無水物、アルキル炭酸混合無水物、脂肪族カルボン酸(例えばピバリン酸、トリクロロ酢酸)混合無水物等が含まれる。活性エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、シアノメチルエステル、p−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドとのエステル等が用いられる。活性アミドとしては、イミダゾール、ジメチルイミダゾール、トリアゾールとのアミドが用いられる。これらのうち、対称無水物が好ましい。対称無水物以外のものは、反応に使用しないカルボキシ基を保護することができる。このような保護基および脱離法の例は、例えば新実験化学講座第14巻第2535〜2544頁に記載されている。代表的な例は無水酢酸である。反応に使用するカルボキシ基を遊離酸または塩のまま用いる場合には、反応縮合剤の存在下に行なうのが有利である。縮合剤としては、SOCl2、SO2Cl2、PCl3、PCl5、POCl3、PBr3等のハロゲン化剤、またはN,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−シクロヘキシル−N'−モルホリノエチルカルボジイミド、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、ClCO2CH3、ClCO2C2H5、BrCO2CH3、 (CH3CO)2O、N−エチルベンズイソキサゾリウム塩、2−クロロ−1−メチルピリジウム塩、N,N'−カルボニルジイミダゾール(CDI)等が用いられる。この反応は通常不活性溶媒中で行なわれる。不活性溶媒としては、ジオキサン、メチレンクロライド、クロロホルム、エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン等が用いられる。反応は常温で充分進行するが、加温すると促進される。
R24は、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、メチルエチレン等の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
R25は、例えば、アスパラギン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、アラニン、β−アラニン、アルギニン、イソロイシン、オルニチン、グルタミン、グルタミン酸、セリン、チロシン、トリプトファン、トレオニン、ノルロイシン、バリン、ヒスチジン、フェニルグリシン、フェニルアラニン、メチオニン、リジン、ロイシン等の光学活性アミノ酸からアミノ基とカルボキシル基を除いた残基であるか、又は、プロリン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン等の光学活性イミノ酸からアミノ基とカルボキシル基を除いた残基である。
R26は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。R25とR26とが連結した2価の炭化水素基であってもよく、該炭化水素基に含まれるメチレン基は、カルボニル基、アミド基で置換されていてもよい。
具体的には、シリル化剤で化学修飾されていないシリカゲル担体のヒドロキシル基に、式(3−1)
(式(3−1)中、R21、R22、R23及びR24は前記と同じ意味を表す。)
で示されるアミノアルキルシランを反応させて、無機担体の表面にアミノアルキルシリル残基を導入し、次いでこれに式(3−2)
で示されるカルボン酸またはそのカルボキシ基における反応性誘導体を順次反応させ、脱水縮合させることにより目的とする充填剤が得られる。上式中、P1、P2、P3およびP4は、アミノ基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基の保護基である。
(式中、R31は低級アルキル基、単環性アリール低級アルキル基、低級アルコキシ置換単環性アリール低級アルキル基または低級シクロアルキル低級アルキル基を表わす。R32は置換基として低級アルコキシまたは単環性アリール低級アルコキシを有する単環性アリール基を表わす。X1およびX2はそれぞれ水素原子またはハロゲン原子を表わすか、または一緒になって基−CH2−CH=CH−CH2−を表す。)
(式中、R31、R32、X1及びX2は前記と同じ意味を表す。)
光学活性有機化合物の被覆層の形成方法としては、(I)前記の化学修飾されたシリカゲル担体に、前記の光学活性有機化合物を溶解した水溶液を直接導入し、被覆する方法、(II)前記の光学活性有機化合物を溶解した水溶液中に前記の化学修飾されたシリカゲル担体を浸漬する方法、(III)化学修飾されていない前記シリカゲル担体に光学活性有機化合物を化学修飾する方法などが挙げられる。
本発明のシリカゲル担体は、取扱いが容易ではないイソシアネート化合物、シランカップリング剤、三弗化硼素などを使用してシリカゲル表面に化学反応させたり、90〜100barの高圧で担持させなくとも、製造することができる。
また、上記水溶液を移動相として用いる場合、得られるクロマトグラフの再現性を向上させるために、pHが一定となるように緩衝液が含まれる移動相であることが好ましい。
さらに、上記水溶液には、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Co2+などの金属イオンを含有する塩、好ましくは、硫酸塩又は酢酸塩を0.1〜10mM程度溶解している溶液が好ましい。金属塩が該溶液に含有していると、光学活性有機化合物に含まれるカルボニル基、アミノ基、水酸基又はチオール基と錯塩を形成し、光学分割能を向上する傾向があることから好ましい。
具体的には、液体クロマトグラフィは、前記シリカゲル担体が充填されたカラムの入口側に送液ポンプおよび試料注入器と、また出口側に紫外検出器あるいは旋光度検出器等の検出器および必要に応じてフラクションコレクターを接続したものなどが挙げられる。分割方法は、例えば、不斉炭素原子を有するカルボニル化合物のラセミ体を試料注入器から注入後、送液ポンプにより、上記に例示された移動相を送液して注入したラセミ体をカラム中で展開し、分割し、カラムから溶出した溶出液は、紫外検出器等の検出器に導入され、分割された各鏡像体を例えば254nmにおける吸光度により検出し、記録計でそのクロマトグラムを記録して、溶出液を分離する方法などが挙げられる。
中でも、酒石酸、リンゴ酸等のジカルボン酸については一層、光学分割が容易になり、テトラヒドロ−2−フランカルボン酸、プロリンなどの環状カルボン酸等、従来、光学分割が困難であったカルボン酸についても、理論段数を大きくしても圧力が高くならないことから、高い分離能を示すことから好適に用いられる。
(N,S−ジ−n−オクチル−D−ペニシラミン、(1−1))の調製
D−ペニシラミン3.0g(20.1ミリモル)、よう化カリウム3.3g(20.1ミリモル)およびトリエチルアミン10.2g(100.5ミリモル)にクロロホルム255mlおよびメタノール45mlの混液を加えたのち、室温で12時間撹拌して溶解させた。これに、1−ブロモオクタン23.3g(120.6ミリモル)を加えたのち、浴温70〜80℃で加熱し、8時間還流した。この時反応液の温度は55℃であった。反応後、室温に冷却し、析出した沈澱物を濾別した。濾液を減圧濃縮したのち、残留物に酢酸エチル400mlおよび1N−塩酸300mlを加えてよく振り混ぜ、静置、分液した。酢酸エチル層に無水硫酸マグネシウム50gを加えて脱水し、濾過したのち、濾液を減圧濃縮した。残留物に酢酸エチル50mlを加えて溶かし、5℃に冷却して一夜静置した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥して、N,S−ジ−n−オクチル−D−ペニシラミンの微黄色結晶1.7gを得た(融点:123〜124℃)。
この微黄色結晶の赤外吸収スペクトル(臭化カリウム混合法および流動パラフィン混合法)において、3400cm-1付近にN−H伸縮振動に基づく吸収、2850〜2950cm-1に直鎖状アルキル基のC−H伸縮振動に基づく強い吸収、および1590cm-1にカルボキシル基に基づく吸収が観測され、また、FDマススペクトルにおいて分子イオン+1に基づく質量数374のスペクトルが観測された。これらから微黄色結晶はN,S−ジ−n−オクチル−D−ペニシラミンであることが確認された。
0.5〜4μmのスルーポアと2〜50nmのメソポアとの二重細孔構造のシリカゲル表面にオクタデシルシリル化剤を化学修飾されたシリカゲル担体が充填されたChromolith ODSのカラム(内径4.6mm、長さ150mm、MERCK社製)に、まず、メタノール50容量%と水50容量%とからなる混合液を通液した。ついで、前記N,S−ジ−n−オクチル−D−ペニシラミンの微黄色結晶の0.06%メタノール40容量%と水60容量%の混合溶液500mlを、毎分0.8mlの速度でカラムに通液したのち、水20mlを毎分0.8mlの速度でカラムに通液した。続いて1ミリモル/lの硫酸銅水溶液500mlを毎分1.0mlの速度で通液して、カラムに充填された本発明のシリカゲル担体を得た。
前記シリカゲル担体を含むカラムを具備し、検出器として紫外線吸収計(波長:254nm)を接続した液体クロマトグラフィに移動相として表1に記載の硫酸銅溶液を用い、流速1.0ml/分で送液した。表1に記載のラセミ体を0.02重量%含有する水溶液5μlを注入し、ラセミ体を展開し、結果を表1に記載した。
カルボン酸の光学分割性能は分離係数αで表1に表した。αが大きいほど光学分割の性能に優れることを表す。
ここで、分離係数αとは
α=(t2−t0)/(t1−t0)
(式中、t1はより弱く吸着される鏡像体の保持時間(分)を示し、t2はより強く吸着される鏡像体の保持時間(分)を示す。t0はカラムに全く吸着されない物質の保持時間を示す。)
(1)2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液と2−プロパノールの混合液(容量比95:5)
(2)2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液と2−プロパノールの混合液(容量比85:15)
(3)2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液と2−プロパノールの混合液(容量比80:20)
(4)2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液とメタノールの混合液(容量比95:5)
(5)2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液とメタノールの混合液(容量比85:15)
(6)2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液
(7)2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液とメタノールの混合液(容量比70:30)
実施例7と同様のカラム(内径4.6mm、長さ150mm)を2本または3本の直列に接続し、0.02重量%のアスパラギン酸水溶液(L−アスパラギン酸:D−アスパラギン酸を1:2の重量比で含有)を5μlを注入し、2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液と2−プロパノールを体積比95:5で混合した溶液を移動相として、1.0ml/分の流速で送液した。このようにしてアスパラギン酸の光学異性体を分割した結果の比較を表3に示す。カラム2本を直列に接続した上記のクロマトグラムを図1に示す。
実施例1と同様のシリカゲル担体を具備した液体クロマトグラフィに、0.02重量%のロイシン酸水溶液(L−ロイシン酸:D−ロイシン酸を1:1の重量比で含有)を2μlを注入し、2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液とメタノールを体積比70:30で混合した溶液を移動相として、1.0ml/分から3.0ml/分の流速で送液した。このようにして3種類の流速でロイシンの光学異性体を分割した結果の比較を表4に示す。3.0ml/分の流速における上記のクロマトグラムを図2に示す。
実施例1と同様のシリカゲル担体を具備した液体クロマトグラフィに、0.02重量%のフェノキシプロピオン酸水溶液(L−フェノキシプロピオン酸:D−フェノキシプロピオン酸を1:1の重量比で含有)を5μlを注入し、2mmol/Lの硫酸銅水溶液と2−プロパノールを体積比80:20で混合した溶液を移動相として、1.0ml/分から3.0ml/分の流速で送液した。このようにして3種類の流速でフェノキシプロピオン酸の光学異性体を分割した結果の比較を表5に示す。3.0ml/分の流速における上記のクロマトグラムを図3に示す。
0.5〜4μmのスルーポアと2〜50nmのメソポアとの二重細孔構造のシリカゲル表面にオクタデシルシリル化剤を化学修飾されたシリカゲル担体が充填されたChromolith ODSのカラム(内径4.6mm、長さ50mm、MERCK社製)に、まず、メタノール50容量%と水50容量%とからなる混合液を通液した。ついで、前記N,S−ジ−n−オクチル−D−ペニシラミンの微黄色結晶の0.06%メタノール40容量%と水60容量%の混合溶液500mlを、毎分0.8mlの速度でカラムに通液したのち、水20mlを毎分0.8mlの速度でカラムに通液した。続いて1mmol/lの硫酸銅水溶液500mlを毎分1.0mlの速度で通液して、カラムに充填された本発明のシリカゲル担体を得た。
前記カラムを具備し、検出器として紫外線吸収計(波長:254nm)を接続した液体クロマトグラフィに、0.02重量%の酒石酸水溶液(L−酒石酸:D−酒石酸を1:1の重量比で含有)を5μlを注入し、1mmol/Lの酢酸銅水溶液に0.1ミリモル/Lの酢酸アンモニウム水溶液を適量加えてpHを4.5に調製した水溶液と2−プロパノールを体積比85:15で混合した溶液を移動相として、2.0ml/分の流速で送液した。この際のカラム圧力は約4.3MPaに達した。このようにして酒石酸の光学異性体を分割したクロマトグラムを図4に示す。
光学活性有機化合物が(R,R)−酒石酸−モノ−L−バリン−1−(R)−(α−ナフチル)エチルアミド(2−1)である場合のシリカゲル担体の調製
(R,R)−酒石酸−モノ−L−バリン−1−(R)−(α−ナフチル)エチルアミドの微黄褐色結晶を、N.Oi, H.Kitahara and F.Aoki, J.Chromatogr.A.,666,457(1994)及びN.Oi, H.Kitahara and F.Aoki, J.Liq.Chromatogr.,16,893(1993)の記載に基づいて調製した。
前記カラムを具備し、検出器として紫外線吸収計(波長:254nm)を接続した液体クロマトグラフィに、0.02重量%のアラニン水溶液(L−アラニン:D−アラニンを1:1の重量比で含有)を5μl注入し、2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液とメタノールを体積比95:5で混合した溶液を移動相として、1.0ml/分の流速で送液した。この際のカラム圧力は約3.2MPaに達した。このようにしてアラニンの光学異性体を分割した結果のクロマトグラムを図5に示す。
オクタデシルシランによって表面処理された平均粒径5μmを有する多孔質シリカゲル1.5gを充填したステンレス製カラム(内径4.6mm、長さ50mm)に、まず、メタノール50容量%と水50容量%とからなる混合液を通液した。ついで、前記N,S−ジ−n−オクチル−D−ペニシラミンの微黄色結晶を0.06%含有し、メタノール40容量%と水60容量%からなる混合溶液500mlを、毎分0.8mlの速度でカラムに通液したのち、水20mlを毎分0.8mlの速度でカラムに通液した。続いて1mmol/lの硫酸銅水溶液500mlを毎分1.0mlの速度で通液し、カラムの充填されたシリカゲル担体を得た。
前記カラムを具備し、検出器として紫外線吸収計(波長:254nm)を接続した液体クロマトグラフィに、0.02重量%の酒石酸水溶液(L−酒石酸:D−酒石酸を1:1の重量比で含有)を5μl注入し、1ミリモル/Lの酢酸銅水溶液に0.1ミリモル/Lの酢酸アンモニウム水溶液を適量加えてpHを4.5に調製した水溶液と2−プロパノールを体積比85:15で混合した溶液を移動相として、1.0ml/分の流速で送液した。この際のカラム圧力は約3.7MPaに達した。このようにして酒石酸の光学異性体を分割した結果を実施例53とともに表6に示す。上記のクロマトグラムを図6に示す。クロマトグラフからも明らかなように、実施例は比較例に比べてピークがシャープで保持時間が短く、分離係数が示すように光学分割能に優れることがわかる。
オクタデシルシランによって表面処理された平均粒径5μmを有する多孔質シリカゲル1.5gを充填したステンレス製カラム(内径4.6mm、長さ150mm)に、まず、メタノール50容量%と水50容量%とからなる混合液を流した。ついで、(R,R)−酒石酸−モノ−L−バリン−1−(R)−(α−ナフチル)エチルアミドの微黄褐色結晶の0.07%含有し、メタノール40容量%と水60容量%からなる混合溶液500mlを、毎分0.8mlの速度でカラムに通液したのち、水20mlを毎分0.8mlの速度でカラムに通液した。続いて1mmol/lの硫酸銅水溶液500mlを毎分1.0mlの速度で通液し、カラムに充填されたシリカゲル担体を得た。
前記カラムを具備し、検出器として紫外線吸収計(波長:254nm)を接続した液体クロマトグラフィに、0.02重量%のアラニン水溶液(L−アラニン:D−アラニンを1:1の重量比で含有)を5μl注入し、2ミリモル/Lの硫酸銅水溶液とメタノールを体積比95:5で混合した溶液を移動相として、1.0ml/分の流速で送液した。この際のカラム圧力は約5.8MPaに達した。このようにしてアラニンの光学異性体を分割し、このクロマトグラムを図7に示す。クロマトグラフからも明らかなように、保持時間が、L−アラニン=3.1分、D−アラニン=4.7分であり、前述した実施例54のように、L−アラニン=3.4分、D−アラニン=4.3分であり、実施例は比較例に比べてピークがシャープで保持時間が短く、光学分割能に優れることがわかる。
Claims (8)
- 0.5〜4μmのスルーポア及び2〜50nmのメソポアからなる二重細孔構造を有するシリカゲル表面に、光学活性有機化合物の被覆層を有するシリカゲル担体であって、該光学活性有機化合物は、分子内に少なくとも1つの不斉炭素原子を含み、該不斉炭素原子の2つの結合部位は、置換基を有していてもよいカルボニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、水酸基又はチオール基と結合しており、該不斉炭素原子の他の2つの結合部位は水素原子又は炭素原子と結合している光学活性有機化合物であることを特徴とするシリカゲル担体。
- シリカゲル担体が、シリカゲル表面と光学活性有機化合物の被覆層との間に、オクタデシルシリル化剤による化学修飾層を有するシリカゲル担体であることを特徴とする請求項1に記載のシリカゲル担体。
- 光学活性有機化合物の分子量が2000以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリカゲル担体。
- 光学活性有機化合物の光学純度が90%ee以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリカゲル担体。
- 光学活性有機化合物が、下記(1)〜(4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物又は該化合物の鏡像異性体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシリカゲル担体。
(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。R1及びR2は連結して2価の炭化水素基であってもよい。R3は水素原子又は炭化水素基を表す。R1、R2及びR3の合計炭素数は8以上である。
式(2)中、R11及びR12はヒドロキシ基が結合していてもよい炭化水素基又はヒドロキシ基が結合していてもよいN−アルキルカルバモイル基を表し、R11及びR12は互いに異なる基である。R13は水素原子又は炭化水素基を表す。R12及びR13は連結して2価の炭化水素基であってもよい。
R11、R12及びR13の合計炭素数は8以上である。
式(3)中、R21、R22及びR23はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基またはハロゲン原子を表す。R21、R22及びR23の少なくとも1つはアルコキシ基又はハロゲン原子である。R24はアルキレン基を表し、R25は光学活性アミノ酸からアミノ基とカルボキシル基を除いた残基又は光学活性イミノ酸からアミノ基とカルボキシル基を除いた残基を表す。R26は水素またはアルキル基を表す。R25とR26とが連結した2価の炭化水素基であってもよく、該炭化水素基に含まれるメチレン基は、カルボニル基、アミド基で置換されていてもよい。
式(4)中、R31はアルキル基、単環性アリールアルキル基、低級アルコキシ置換単環性アリールアルキル基またはシクロアルキルアルキル基を表わす。R32は置換基としてアルコキシ基または単環性アリールアルコキシ基を有する単環性アリール基を表す。X1およびX2はそれぞれ独立に水素原子もしくはハロゲン原子を表わす、または一緒になって基−CH=CH−CH=CH−を表す。) - 請求項1〜5に記載のシリカゲル担体が充填されたカラムを有する液体クロマトグラフィ装置を用いることを特徴とする光学分割方法。
- シリカゲル担体が充填されたカラムを複数用いることを特徴とする請求項6に記載の光学分割方法。
- カラムの移動相に金属塩を含有することを特徴とする請求項6又は7に記載の光学分割方法。
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