JP2007033244A - 駆動機構の亀裂検知方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 サーボモータが所定の周期の正弦波関数にしたがって変化するモータトルクで可動部を駆動するときの、モータトルクの瞬時値を計測して時系列データとするモータ状態量計測ステップ121、このモータトルクの瞬時値の時系列データに対してフーリエ変換を行うFFT演算ステップ、このフーリエ変換の結果について、正弦波関数の周期の2倍の周波数成分である2f成分の増加の有無を判定する2f成分判定ステップ、及びこの条件分岐手段で2f成分があると判定されたときは、可動部に亀裂があると判定する亀裂判定ステップを備えた。
【選択図】図6
Description
例えば、回転体の亀裂診断方法及びその装置は、回転体両端の軸受部の振動センサによって軸振動を検出し、同時に回転体及び軸受部のAEセンサによってAE信号を検出することで、当該回転体の亀裂発生位置及び深さを推定し、また、振動信号の周波数分析によって、亀裂振動に伴う回転周期の整数倍成分を抽出して、それを時間管理する形態を有することを特徴としている(例えば、特許文献1参照)。
図1は、本発明の亀裂検知方法の適用対象である工作機械の位置決めを行う駆動機構の一例であって、モータの回転運動を、ボールねじを介して直動運動に変換する一軸直動リンクを有する駆動機構の構成を示す図である。
図1において、サーボモータ10には回転部20を介してリニアガイド30及び可動部40が接続され、この可動部40の先端に手先部50が接続されている。
サーボモータ10の回転運動は、図示しないボールねじによって直動運動に変換されて可動部40に伝達され、この可動部40がリニアガイド30により支持されて直線運動することで、リニアガイド30の先端の手先部50が直線動作する。また、回転部20は、土台60に固定される回転支持部80により支持されているが、手先部50の直線運動とは直交する方向にプラスマイナス30度程度回転する自由度を持っている。
なお、この亀裂検知方法では、土台60にねじ締結された負荷70に、手先部50をねじ締結した状態にして行う。
また、サーボモータ10の駆動力を決めるサーボアンプ90の出力は、パーソナルコンピュータ100により制御される。一方、サーボモータ10の回転運動はモータエンコーダ110で計測されて、モータ回転角等がサーボアンプ90及びパーソナルコンピュータ100にフィードバックされる。
図2において、パーソナルコンピュータ100では、位置指令部101から与えられた目標位置に対して、UP/DOWNカウンタ102から取り込んだモータの位置情報であるモータエンコーダ110の信号との差分をとり、位置偏差として位置制御器103に入力する。位置制御器103では、この位置偏差と位置ゲインとの積算に基づいて速度指令を生成する。この速度指令は、速度司令部104においてD/A変換されて、サーボアンプ90に対して出力される。
サーボアンプ90では、速度司令部104の出力する速度指令と、モータエンコーダ110の信号の微分値との差分に基づいて速度制御器91、電流制御器92、PWM発生部93及び電流検出器94を介してサーボモータ10への出力制御が行われる。なお、PWM発生部93には電源電圧が入力されており、電流検出器94から電流制御器92にモータ電流がフィードバックされる。
また、モータトルク検出部95では、このモータ電流からモータトルクを算出する。
図1に示す構成において、土台60にねじ締結された負荷70に手先部50をねじ締結した状態にして、位置指令部101より一定振幅の正弦波位置指令を与え、可動部40を正弦波駆動させるものである。
この専用動作の間に、モータトルク検出部95からアナログ信号として取り出されるサーボアンプ90の内部状態量である、モータトルクに対して適切な信号処理を行うことによって、ボールねじ等の機械要素又は可動部の異常状態、すなわち亀裂を検知しようとするものである。
なお、以下ではモータトルクを直接計測して使用するものとして説明しているが、モータ電流等のモータトルクの変化を知ることのできる状態量であれば、モータトルクに代えて使用することが可能である。
また、この動作は駆動機構の内部、特にボールねじや可動部40等に負荷がかかるので、負荷70には弾性体を用いることが適当である。ただし、亀裂検知のための専用動作である正弦波動作とは、駆動部に一定振幅の正弦波位置指令を与えることであって、この専用動作を実施するために、リンク手先の負荷状態、すなわち重負荷なのか軽負荷なのかという状態には依存しない。
図1に示すように、駆動機構における可動部40の可動方向はX軸方向のみである。
手先部50と土台60にねじ締結された負荷70とをねじ締結して専用動作を実施すれば、手先部50についての位置指令は振幅が一定であって、負荷中立点、すなわち反力が零の位置からの動作であるから、そのときのモータトルクの波形の振幅は一定であって、当然のことながらその実効値も経時変化としては一定である。
ところが、可動部40にいったん亀裂が生じると、この亀裂を圧縮する方向には剛性が増加し、逆に亀裂を引っ張る方向には剛性が低下する。
このようにして、可動部40に亀裂41が生じた場合、駆動方向によって剛性が変化する方向依存性を持つ。
図4は、亀裂発生の前後のモータトルクの実効値の経時変化を示すものである。データの採取にあたって、前述の専用動作を行わせており、また、亀裂発生を早めるために連続して専用動作を行わせている。
また、モータトルクの実効値は、モータトルク検出部95から得られた時系列データを基に算出したものであって、縦軸は、モータトルクの実効値についてサーボモータ10の定格トルクで除算して正規化した値を、横軸は、専用動作開始からの累積時間を、それぞれ示している。
図4によれば、専用動作累積時間で約80000秒までは、モータトルクの実効値はほぼ横ばいであり、機械要素および部材に異常は生じていない。
このモータトルクの実効値の低下後に駆動機構の周辺を調査した結果、可動部40にリニアガイド30を境界とした亀裂が発見された。
図5(a)によれば、モータトルクの実効値の低下前におけるモータトルクの時系列データは、振幅が上下対称で一定の三角波状の波形が得られている。なお、このような三角波状の波形が得られる理由は、前述のように手先に固定された負荷の影響を直に受けた、剛性依存の負荷トルクだからである。
このモータトルクの時系列データをFFT解析すると、可動部40の揺動周期である基本成分(これを1f成分と呼ぶ)とその3倍の周期の成分(これを3f成分と呼ぶ)を持っていることが分かる。
このモータトルクの振幅の上下非対称性による2f成分の増加と、モータトルクの実効値の低下は、図3で説明した、可動部40に亀裂が生じた場合の剛性の方向依存性によるものである。
亀裂が発生した場合、モータトルクの実効値が低下するが、この実効値による評価方法では、誤検出の恐れがある。例えば、一般的な駆動機構の駆動部に存在する摩擦は、駆動部が正常であったとしても潤滑油温度の変化によっても摩擦は変化する。一定振幅の正弦波位置指令を与えたとき、この摩擦の増加によってモータトルクの実効値が増大し、逆に摩擦の減少によってモータトルクの実効値が減少する。したがって、亀裂によるモータトルクの上下非対称性に伴う、モータトルクの2f成分の発生とその増加により亀裂を判定することが有効である。
まず、前述の専用動作の開始からのモータトルクの瞬時値をモータ状態量計測ステップ121によって計測し、所定の区間の計測データを時系列データ131としてハードディスク等の記憶媒体に取り込む。なお、その際のデータサンプリングは、信号のエイリアシングを防止するために、正弦波駆動の運動周期よりも十分高い設定とし、かつ観測帯域を考慮して、適切なアンチエイリアシングフィルタを組み込む。
一方、モータトルクの2f成分が検出された場合は亀裂と判断し、ユーザにアラームを発する亀裂判定ステップ124に移行して終了する。
なお、前述のとおり、モータトルクの実効値の減少は位置決め装置を構成する機械要素の摩擦の変動によっても発生する。駆動部の摩擦が大きくなった場合にも、2f成分が増加することが有る。ただし、恒常的な2f成分の増加が見られない範囲の変動では、2f成分が継続して増大したときに、2f成分の検出を判定するようにすれば誤検出を回避できる。
実施の形態1では、モータトルクの時系列データのFFT解析結果のみに基づいて、亀裂発生と判定した。しかし、条件によっては、亀裂以外の理由でも恒常的に摩擦が増大して2f成分の増加が継続することが有る。この実施の形態2は、このような場合にも誤検出がない亀裂検知方法であって、モータトルクの2f成分検出と増加の具合をFFTによって検出し、かつモータトルクの実効値の減少が見られた場合に亀裂発生と判定する方法である。
まず、専用動作開始からのモータトルクをモータ状態量計測ステップ121によって計測する。その内容は、実施の形態1と同様である。
次に、モータ状態量計測ステップ121で記録されたモータトルクの時系列データ131を用いて、実効値演算ステップ125において実効値を演算する。また、実施の形態1と同様、FFT演算ステップ122において時系列データ131に対してFFT演算する。なお、この実施の形態2では、双方の演算のうちどちらが早く演算されるべきかの制約はない。また、実効値演算ステップ125で演算された実効値データ133及びFFT演算ステップ122の解析データ132は、モータトルクの時系列データ131と同様、ハードディスク等の記憶媒体に格納される。
一方、モータトルクの2f成分が検出された場合、実効値判定ステップ126に移行し、ここでは、実効値データ133を参照して、過去に記憶されているモータトルクの実効値と現在のモータトルクの実効値を比較し、低下していれば亀裂と判断し、ユーザにアラームを発する亀裂判定ステップ124に移行して終了する。この判定は、直前の実効値と現在の実効値との勾配がある閾値以上になったことで判定する、又はあらかじめ定めた実効値の下限値である閾値を下回ったことで判定する、などの方法により行う。
実施の形態1及び2では、モータトルクの時系列データのFFT解析により2f成分が検出されたときに、実効値を過去のデータと比較して判定を施す亀裂検知方法を示したが、この実施の形態2では、モータトルクの実効値を算出し、得られた実効値を過去のデータと比較し、実効値の低下と判断されたときにFFTによる判定を施す亀裂検知方法について説明する。
この図9のフローチャートは、図7のものとは、実効値判定ステップ126を2f成分判定ステップ123より前に設けている点が異なる。この実効値判定ステップ126は、過去の実効値と現時点での実効値の変化量を条件として与えるものであり、この判定には、前述のように直前の実効値と現在の実効値との時間変化の勾配がある閾値以上になったことで判定する、又はあらかじめ定めた実効値の下限値である閾値下回ったことで判定する等の方法が考えられる。
一方、瞬時値時の系列データに上下非対称性が生じて実効値判定ステップ126から2f成分判定ステップ123に移行した場合は、2f成分が検出されて亀裂発生と判断できる。
例えば、診断対象の任意の直動軸が上記専用動作を常時行っている場合は、診断対象を動作中断させることなく、本発明の亀裂検知方法をそのまま適用できる。
また、駆動軸が上記の専用動作を行っておらず、任意の駆動パターンで動作している場合でも、定期的に動作を中断し、前述の亀裂検知専用ターミナルへと手先を移動させ、専用動作を行わせてモータトルクの時系列データを採取することができれば、本発明の亀裂検知方法をそのまま適用して亀裂の有無を検知できる。
また、複雑な作業工程については、それを細分化して、簡単な動作で構成される作業工程について上記のような下限値を設定して検知することでも十分な効果が得られる。
40 可動部
41 亀裂
121 モータ状態量計測ステップ
122 FFT演算ステップ
123 2f成分判定ステップ
124 亀裂判定ステップ
125 実効値演算ステップ
126、126a 実効値判定ステップ
Claims (5)
- モータが所定の周期の正弦波関数にしたがって変化するモータトルクで可動部を駆動するときの、前記モータトルクの瞬時値を計測して時系列データとするモータ状態量計測ステップ、
前記モータトルクの瞬時値の時系列データに対して、フーリエ変換を行うFFT演算ステップ、
前記フーリエ変換の結果について、前記周期の2倍の周波数成分である2f成分の増加の有無を判定する2f成分判定ステップ、
及びこの条件分岐手段で前記2f成分があると判定されたときは、前記可動部に亀裂があると判定する亀裂判定ステップを備えたことを特徴とする駆動機構の亀裂検知方法。 - モータが所定の周期の正弦波関数にしたがって変化するモータトルクで可動部を駆動するときの、前記モータトルクの瞬時値を計測して時系列データとするモータ状態量計測ステップ、
前記モータトルクの瞬時値の時系列データから前記モータトルクの実効値を演算する実効値演算ステップ、
前記モータトルクの瞬時値の時系列データに対して、フーリエ変換を行うFFT演算ステップ、
前記フーリエ変換の結果について、前記周期の2倍の周波数成分である2f成分の増加の有無を判定する2f成分判定ステップ、
この条件分岐手段で前記2f成分があると判定されたときは、前記モータトルクの実効値から、所定の時間さかのぼった時点の値と現在の値とを比較して、前記モータトルクの実効値の低下の有無を判定する実効値判定ステップ、
及びこの実効値判定ステップで前記モータトルクの実効値の低下が有ると判定されたときは、前記可動部に亀裂があると判定する亀裂判定ステップを備えたことを特徴とする駆動機構の亀裂検知方法。 - モータが所定の周期の正弦波関数にしたがって変化するモータトルクで可動部を駆動するときの、前記モータトルクの瞬時値を計測して時系列データとするモータ状態量計測ステップ、
前記モータトルクの瞬時値の時系列データに対して、フーリエ変換を行うFFT演算ステップ、
前記フーリエ変換の結果について、前記周期の2倍の周波数成分である2f成分の増加の有無を判定する2f成分判定ステップ、
この条件分岐手段で前記2f成分があると判定されたときは、前記モータトルクの瞬時値の時系列データから前記モータトルクの実効値を演算する実効値演算ステップ
前記モータトルクの実効値について、所定の値と現在の実効値とを比較して、前記モータトルクの実効値の低下の有無を判定する実効値判定ステップ、
及びこの実効値判定ステップで前記モータトルクの実効値の低下が有ると判定されたときは、前記可動部に亀裂があると判定する亀裂判定ステップを備えたことを特徴とする駆動機構の亀裂検知方法。 - モータが所定の周期の正弦波関数にしたがって変化するモータトルクで可動部を駆動するときの、前記モータトルクの瞬時値を計測して時系列データとするモータ状態量計測ステップ、
前記モータトルクの瞬時値の時系列データから前記モータトルクの実効値を演算する実効値演算ステップ、
前記モータトルクの瞬時値の時系列データに対して、フーリエ変換を行うFFT演算ステップ、
前記モータトルクの実効値から、所定の時間さかのぼった時点の値と現在の値とを比較して、前記モータトルクの実効値の低下の有無を判定する実効値判定ステップ、
この実効値判定ステップで前記モータトルクの実効値の低下が有ると判定されたときは、前記フーリエ変換の結果から、前記周期の2倍の周波数成分である2f成分の増加の有無を判定する2f成分判定ステップ、
及びこの条件分岐手段で前記2f成分があると判定されたときは、前記可動部に亀裂があると判定する亀裂判定ステップを備えたことを特徴とする駆動機構の亀裂検知方法。 - モータが所定の周期の正弦波関数にしたがって変化するモータトルクで可動部を駆動するときの、前記モータトルクの瞬時値を計測して時系列データとするモータ状態量計測ステップ、
前記モータトルクの瞬時値の時系列データから前記モータトルクの実効値を演算する実効値演算ステップ、
前記モータトルクの実効値から、所定の時間さかのぼった時点の値と現在の値とを比較して、前記モータトルクの実効値の低下の有無を判定する実効値判定ステップ、
この実効値判定ステップで前記モータトルクの実効値の低下が有ると判定されたときは、前記モータトルクの瞬時値の時系列データに対して、フーリエ変換を行うFFT演算ステップ、
このフーリエ変換の結果について、前記周期の2倍の周波数成分である2f成分の増加の有無を判定する2f成分判定ステップ、
及びこの条件分岐手段で前記2f成分があると判定されたときは、前記可動部に亀裂があると判定する亀裂判定ステップを備えたことを特徴とする駆動機構の亀裂検知方法。
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