JP2020134479A - 異常検出方法および異常検出装置 - Google Patents
異常検出方法および異常検出装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】回転機の音が異常か否かを精度良く判定できる異常検出方法および異常検出装置を提供する。【解決手段】異常検出方法は回転機MTの音の異常を検出する。異常検出方法は、工程S3と、工程S4と、工程S6と、工程S7と、工程S8とを含む。工程S3において、回転機MTの音を測定して、音を示す音信号を出力する。工程S4において、回転機MTの振動を測定して、振動を示す振動信号を出力する。工程S6において、音信号を周波数分析して、周波数ごとの音データを算出する。工程S7において、振動信号を周波数分析して、周波数ごとの振動データを算出する。工程S8において、第1音周波数帯域に含まれる音データと、第1振動周波数帯域に含まれる振動データとで定まる音響データについて、基準データ群に対する外れ度を算出する。外れ度は、音響データが基準データ群に対して外れている程度を示す。【選択図】図4
Description
本発明は、異常検出方法および異常検出装置に関する。
従来、回転機の異常診断方法では、回転機の振動音を検出してこれを周波数分析する。周波数分析した実測データのピークが閾値を超えるか否かで異常が発生しているか否かを判定するのであるが、周波数領域を複数の例えば8つの周波数帯域F1〜F8に分割し、各周波数帯域毎に閾値を設定し、各周波数帯域毎に実測データのピークが閾値を超えるか否かを判定する。さらに、各周波数帯域における閾値は、回転機の運転状態に応じて最適な閾値とすることで、回転機の運転状態に応じた異常の診断が可能となる(例えば、特許文献1)。
しかしながら、近年、回転機の音が異常か否かをより精度良く判定することが要求される場合がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転機の音が異常か否かを精度良く判定できる異常検出方法および異常検出装置を提供することにある。
本発明の例示的な異常検出方法は、回転機の音の異常を検出する。異常検出方法は、音測定工程と、振動測定工程と、音分析工程と、振動分析工程と、外れ度算出工程とを含む。音測定工程において、前記回転機が所定回転数で回転しているときに、前記回転機の前記音を測定して、前記音を示す音信号を出力する。振動測定工程において、前記回転機が前記所定回転数で回転しているときに、前記回転機の振動を測定して、前記振動を示す振動信号を出力する。音分析工程において、前記音信号を周波数分析して、周波数ごとの音データを算出する。振動分析工程において、前記振動信号を周波数分析して、周波数ごとの振動データを算出する。外れ度算出工程において、少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる前記音データと、少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる前記振動データとで定まる音響データについて、基準データ群に対する外れ度を算出する。前記外れ度は、前記音響データが前記基準データ群に対して外れている程度を示す。
本発明の例示的な異常検出装置は、回転機の音の異常を検出する。異常検出装置は、音センサと、振動センサと、音分析部と、振動分析部と、外れ度算出部とを備える。音センサは、前記回転機が所定回転数で回転しているときに、前記回転機の前記音を測定して、前記音を示す音信号を出力する。振動センサは、前記回転機が前記所定回転数で回転しているときに、前記回転機の振動を測定して、前記振動を示す振動信号を出力する。音分析部は、前記音信号を周波数分析して、周波数ごとの音データを算出する。振動分析部は、前記振動信号を周波数分析して、周波数ごとの振動データを算出する。外れ度算出部は、少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる前記音データと、少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる前記振動データとで定まる音響データについて、基準データ群に対する外れ度を算出する。前記外れ度は、前記音響データが前記基準データ群に対して外れている程度を示す。
例示的な本発明によれば、回転機の音が異常か否かを精度良く判定できる異常検出方法および異常検出装置を提供できる。
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図中、理解の容易のため、三次元直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸を適宜記載している。X軸およびY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。
(実施形態1)
図1〜図7を参照して、本発明の実施形態1に係る異常検出装置100を説明する。図1は、実施形態1に係る異常検出装置100を示すブロック図である。図1に示すように、異常検出装置100は、回転機MTの音の異常を検出する。つまり、回転機MTは音の異常の検出対象である。回転機MTは、例えば、モータである。異常検出装置100は、音センサ3と、振動センサ5と、回転機駆動部7と、ロボット駆動部9と、ロボットRBと、記憶部10と、音分析部11と、振動分析部12と、外れ度算出部13と、回転機制御部14と、ロボット制御部15とを備える。具体的には、異常検出装置100は制御部1を備える。そして、制御部1が、音分析部11と、振動分析部12と、外れ度算出部13と、回転機制御部14と、ロボット制御部15とを備える。
図1〜図7を参照して、本発明の実施形態1に係る異常検出装置100を説明する。図1は、実施形態1に係る異常検出装置100を示すブロック図である。図1に示すように、異常検出装置100は、回転機MTの音の異常を検出する。つまり、回転機MTは音の異常の検出対象である。回転機MTは、例えば、モータである。異常検出装置100は、音センサ3と、振動センサ5と、回転機駆動部7と、ロボット駆動部9と、ロボットRBと、記憶部10と、音分析部11と、振動分析部12と、外れ度算出部13と、回転機制御部14と、ロボット制御部15とを備える。具体的には、異常検出装置100は制御部1を備える。そして、制御部1が、音分析部11と、振動分析部12と、外れ度算出部13と、回転機制御部14と、ロボット制御部15とを備える。
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む。記憶部10は、記憶装置を含み、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。具体的には、記憶部10は、半導体メモリのような主記憶装置と、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブのような補助記憶装置とを含む。記憶部10は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。制御部1のプロセッサは、記憶部10の記憶装置が記憶しているコンピュータプログラムを実行して、音分析部11、振動分析部12、外れ度算出部13、回転機制御部14、およびロボット制御部15として機能する。
ロボット制御部15は、ロボットRBが回転機MTを所定の測定位置に設置するように、ロボット駆動部9を制御する。従って、ロボット駆動部9は、ロボットRBを駆動して、ロボットRBに回転機MTを所定の測定位置に設置させる。その結果、ロボットRBは、回転機MTを所定の測定位置に設置する。例えば、ロボットRBはアクチュエータを備え、アクチュエータはモータおよびシリンダを備える。ロボット駆動部9は、例えば、モータドライバを備える。所定の測定位置は、回転機MTの音および振動を測定するための回転機MTの設置位置を示す。
回転機制御部14は、回転機MTを駆動するように、回転機駆動部7を制御する。従って、回転機駆動部7は、回転機MTを駆動して、回転機MTを回転させる。その結果、回転機MTは回転する。回転機駆動部7は、例えば、モータドライバを含む。実施形態1では、回転機制御部14は、所定期間TM、所定回転数RTで回転機MTが回転するように、回転機駆動部7を制御する。従って、回転機駆動部7は、所定期間TM、所定回転数RTで回転機MTを回転させる。その結果、回転機MTは、所定期間TM、所定回転数RTで回転する。
音センサ3は音を測定する。実施形態1では、音センサ3は、音を表す音圧を測定する。例えば、音センサ3は、音圧を測定するマイクロフォンを含む。具体的には、音センサ3は、回転機MTが所定回転数RTで回転しているときに、回転機MTの音を測定して、回転機MTの音を示す音信号SAを出力する。実施形態1では、音信号SAは、回転機MTの音を表す音圧を示す音圧信号である。
振動センサ5は振動を測定する。実施形態1では、振動センサ5は、振動を表す加速度を測定する。例えば、振動センサ5は、加速度を測定する加速度センサを含む。加速度センサは、例えば、1軸加速度センサ、2軸加速度センサ、または3軸加速度センサである。具体的には、振動センサ5は、回転機MTが所定回転数RTで回転しているときに、回転機MTの振動を測定して、回転機MTの振動を示す振動信号SBを出力する。実施形態1では、振動信号SBは、回転機MTの振動を表す加速度を示す加速度信号である。
制御部1は、音センサ3が出力した音信号SAをアナログ信号からデジタル信号に変換する。また、制御部1は、振動センサ5が出力した振動信号SBをアナログ信号からデジタル信号に変換する。具体的には、制御部1は、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ(Analog−to−Digital Converter)を含む。A/Dコンバータは、アナログ信号である音信号SAを、所定期間TM、所定サンプリング間隔でサンプリングして、音信号SAをアナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、記憶部10は、デジタル信号に変換された音信号SAを記憶する。また、A/Dコンバータは、アナログ信号である振動信号SBを、所定期間TM、所定サンプリング間隔でサンプリングして、振動信号SBをアナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、記憶部10は、デジタル信号に変換された振動信号SBを記憶する。
音分析部11は、デジタル信号に変換された音信号SAを周波数分析して、周波数ごとの音データFAを算出する。具体的には、音分析部11は、デジタル信号に変換された所定期間TMの音信号SAをフーリエ変換または高速フーリエ変換して、周波数ごとの振幅値を算出する。振幅値は、音信号SAの周波数成分を示す。実施形態1では、振幅値が音データFAである。なお、音分析部11は、デジタル信号に変換された所定期間TMの音信号SAをフーリエ変換または高速フーリエ変換して、音信号SAのパワースペクトルを算出することもできる。そして、パワースペクトルを構成する周波数ごとのスペクトル値が、音データFAであってもよい。なお、回転機MTを短いサイクルタイムで動作させるためには、音分析部11は、通常のフーリエ変換よりも高速フーリエ変換を実行することが好ましい。
振動分析部12は、デジタル信号に変換された振動信号SBを周波数分析して、周波数ごとの振動データFBを算出する。具体的には、振動分析部12は、デジタル信号に変換された所定期間TMの振動信号SBをフーリエ変換または高速フーリエ変換して、周波数ごとの振幅値を算出する。振幅値は、振動信号SBの周波数成分を示す。実施形態1では、振幅値が振動データFBである。なお、振動分析部12は、デジタル信号に変換された所定期間TMの振動信号SBをフーリエ変換または高速フーリエ変換して、振動信号SBのパワースペクトルを算出することもできる。そして、パワースペクトルを構成する周波数ごとのスペクトル値が、振動データFBであってもよい。なお、回転機MTを短いサイクルタイムで動作させるためには、振動分析部12は、通常のフーリエ変換よりも高速フーリエ変換を実行することが好ましい。
外れ度算出部13は、少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる音データFAと、少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBとで定まる音響データADについて、基準データ群GRに対する外れ度DGを算出する。音響データADは、例えば、音データFAおよび振動データFBを横軸および縦軸とした散布図におけるプロットされた点によって示される。外れ度DGは、音響データADが基準データ群GRに対して外れている程度を示す。
換言すれば、実施形態1では、回転機MTの音と振動との双方について、基準データ群GRに対する外れ度DGを算出する。さらに換言すれば、人間の聴覚に近い音データFAと、ばらつきの少ない振動データFBとの双方を組み合わせた音響データADの外れ度DGを算出する。その結果、外れ度DGに基づいて、回転機MTの音が異常か否かを精度良く判定できる。
実施形態1では、外れ度算出部13は、外れ度DGと閾値THとを比較して、比較結果に基づいて回転機MTの音が異常か否かを判定する。従って、人間の聴覚によって異常か否かを判定する場合と比較して、判定結果がばらつくことを抑制できる。閾値THは、例えば、実験的および/または経験的に定められる。
特に、実施形態1では、外れ度算出部13は、音響データADの外れ度DGを表すマハラノビス距離MDを算出する。従って、2変量(音データFAおよび振動データFB)を同時に処理できる。その結果、2変量を別々に処理する場合と比較して、外れ度DGを高速に導出できる。
この場合、外れ度算出部13は、マハラノビス距離MDと閾値THとを比較して、比較結果に基づいて回転機MTの音が異常か否かを判定する。具体的には、外れ度算出部13は、マハラノビス距離MDが閾値TH以上であるときに、回転機MTの音が異常であると判定する。一方、外れ度算出部13は、マハラノビス距離MDが閾値TH未満であるときに、回転機MTの音が正常であると判定する。
次に、音響データADを詳細に説明する。音響データADは、実施形態1では、第1音周波数帯域に含まれる音データFAの積算値と、第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBの積算値とで定められる。従って、外れ度算出部13は、第1音周波数帯域に含まれる音データFAの積算値と、第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBの積算値とを算出する。なお、例えば、音響データADは、第1音周波数帯域に含まれる音データFAの平均値と、第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBの平均値とで定められてもよい。
次に、基準データ群GRを詳細に説明する。基準データ群GRは、正常な音響データの集合である。正常な音響データは正常な音データと正常な振動データとで定まる。
具体的には、基準データ群GRは複数の基準音響データを含む。基準音響データとは、正常な音響データのことである。つまり、基準音響データは規定条件を満足する。規定条件は、基準音響データが正常であると判定される条件を示す。
複数の基準音響データの各々は、基準音データと基準振動データとで定まる。基準音響データは、例えば、基準音データおよび基準振動データを横軸および縦軸とした散布図におけるプロットされた点によって示される。
基準音データとは、正常な音データのことである。つまり、基準音データは音規定条件を満足する。音規定条件は、音データの音レベルが正常であると判定される条件を示す。基準音データは、音データFAと同様にして、音センサ3および音分析部11によって、回転機の音を測定して算出される。基準音データは第1音周波数帯域に含まれる。
基準振動データとは、正常な振動データのことである。つまり、基準振動データは振動規定条件を満足する。振動規定条件は、振動データの振動レベルが正常であると判定される条件を示す。基準振動データは、振動データFBと同様にして、振動センサ5および振動分析部12によって、回転機の振動を測定して算出される。基準振動データは第1振動周波数帯域に含まれる。
実施形態1では、基準音響データは、第1音周波数帯域に含まれる基準音データの積算値と、第1振動周波数帯域に含まれる基準振動データの積算値とで定められる。なお、例えば、基準音響データは、第1音周波数帯域に含まれる基準音データの平均値と、第1振動周波数帯域に含まれる基準振動データの平均値とで定められてもよい。
次に、音データFAおよび基準音データのサンプリング帯域である第1音周波数帯域と、振動データFBおよび基準振動データのサンプリング帯域である第1振動周波数帯域とを説明する。
実施形態1では、第1音周波数帯域と第1振動周波数帯域とは、同一の周波数帯域である。従って、第1音周波数帯域と第1振動周波数帯域とが異なる周波数帯域である場合と比較して、音データFAと振動データFBとの相関が高くなる。その結果、第1音周波数帯域と第1振動周波数帯域とが異なる周波数帯域である場合と比較して、より高い精度で外れ度DGを算出できる。なお、第1音周波数帯域と第1振動周波数帯域とは、互いに異なっていてもよいし、互いに重複した帯域を含んでいてもよい。
また、実施形態1では、少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域が、オクターブバンドを用いて定められる。加えて、少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域が、オクターブバンドを用いて定められる。従って、人間の聴覚に合った第1音周波数帯域および第1振動周波数帯域が採用される。その結果、人間の聴覚により合った外れ度DGを算出できる。実施形態1では、8つの第1音周波数帯域と8つの第1振動周波数帯域とが、オクターブバンドを用いて定められている。8つの第1音周波数帯域は、それぞれ、8つの第1振動周波数帯域と同一である。
以下、8つの第1音周波数帯域の各々および8つの第1振動周波数帯域の各々に対して、識別番号としてバンド番号#1〜#8を付記する場合がある。なお、標記を簡潔にするために、第1音周波数帯域と第1振動周波数帯域とで、同じバンド番号#1〜#8を使用する。
次に、図2および図3を参照して、第1音周波数帯域と第1振動周波数帯域とを説明する。図2は、第1音周波数帯域#1〜#4および第1振動周波数帯域#1〜#4を示す図である。図3は、第1音周波数帯域#5〜#8および第1振動周波数帯域#5〜#8を示す図である。
図2および図3では、一例として、「オクターブバンドA」によって定められた第1音周波数帯域#1〜#8および第1振動周波数帯域#1〜#8が示される。「オクターブバンドA」は、1/1オクターブバンドを示す。図2および図3では、「オクターブバンドA」によって定められた第1音周波数帯域#1〜#8および第1振動周波数帯域#1〜#8の中心周波数、下限周波数、および上限周波数が示される。
例えば、外れ度算出部13は、「オクターブバンドA」に基づく第1音周波数帯域#1〜#8のうちの少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる音データFAと、「オクターブバンドA」に基づく第1振動周波数帯域#1〜#8のうちの少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBとで定まる音響データADについて、基準データ群GRに対する外れ度DGを算出することが好ましい。人間の聴覚により合った外れ度DGを算出できるからである。
例えば、外れ度算出部13は、「オクターブバンドA」に基づく第1音周波数帯域#8に含まれる音データFAと、「オクターブバンドA」に基づく第1振動周波数帯域#8に含まれる振動データFBとで定まる音響データADについて、基準データ群GRに対する外れ度DGを算出することがさらに好ましい。人間の聴覚により合った異常判定結果を導出できるからである。
具体的には、第1音周波数帯域#8は、互いに異なる複数の音周波数帯域#1〜#8のうち、人間の聴覚による異常判定結果と最も近似する異常判定結果が導出されたときの音データを含む音周波数帯域を示す。加えて、第1振動周波数帯域#8は、互いに異なる複数の振動周波数帯域#1〜#8のうち、人間の聴覚による異常判定結果と最も近似する異常判定結果が導出されたときの振動データを含む振動周波数帯域を示す。「異常判定結果」は、回転機の音が異常か否かの判定結果を示す。「人間の聴覚による異常判定結果と最も近似する異常判定結果」は、基準データ群に対する音響データの外れ度に基づいて導出される。この場合の基準データ群、音響データ、および外れ度は、それぞれ、基準データ群GR、音響データAD、および外れ度DGと同様にして事前に得られる。
換言すれば、人間の聴覚による異常判定結果と最も近似する異常判定結果を導出できる第1音周波数帯域#8および第1振動周波数帯域#8が、音データFAおよび振動データFBのサンプリング帯域として選択される。その結果、実施形態1によれば、人間の聴覚により合った異常判定結果を導出できる。
また、図2および図3では、他の例として、「オクターブバンドB」によって定められた第1音周波数帯域#1〜#8および第1振動周波数帯域#1〜#8が示される。「オクターブバンドB」は、1/1オクターブバンドを改変したオクターブバンドを示す。図2および図3では、「オクターブバンドB」によって定められた第1音周波数帯域#1〜#8および第1振動周波数帯域#1〜#8の中心周波数、下限周波数、および上限周波数が示される。
例えば、外れ度算出部13は、「オクターブバンドB」に基づく第1音周波数帯域#1〜#8のうちの少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる音データFAと、「オクターブバンドB」に基づく第1振動周波数帯域#1〜#8のうちの少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBとで定まる音響データADについて、基準データ群GRに対する外れ度DGを算出することが好ましい。回転機MTの固有振動に起因する誤判定を抑制できるからである。
具体的には、第1音周波数帯域#5および第1振動周波数帯域#5の各々は、固有振動帯域f21の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。第1音周波数帯域#6および第1振動周波数帯域#6の各々は、固有振動帯域f11、f22、f23の各々の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。第1音周波数帯域#7および第1振動周波数帯域#7の各々は、固有振動帯域f12、f24、f25の各々の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。第1音周波数帯域#8および第1振動周波数帯域#8の各々は、固有振動帯域f13の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。固有振動帯域f11〜f13、f21〜f25の各々は、回転機の固有振動に基づく周波数帯域であり、回転機の固有振動数を含む。
換言すれば、固有振動帯域f21は、第1音周波数帯域#5および第1振動周波数帯域#5の各々の下限周波数および上限周波数から離隔している。同様に、固有振動帯域f22〜f25、f11〜f13の各々は、第1音周波数帯域#6〜#8および第1振動周波数帯域#6〜#8の各々の下限周波数および上限周波数から離隔している。第1音周波数帯域#1〜#4および第1振動周波数帯域#1〜#4は、固有振動帯域を含まない。
さらに換言すれば、固有振動帯域f11〜f13、f21〜f25の各々は、第1音周波数帯域#1〜#8のうち隣り合う第1音周波数帯域を跨がない。加えて、固有振動帯域f11〜f13、f21〜f25の各々は、第1振動周波数帯域#1〜#8のうち隣り合う第1振動周波数帯域を跨がない。従って、実施形態1によれば、外れ度DGに基づいて回転機MTの音の異常を判定するときに、回転機MTの固有振動に起因する誤判定を抑制できる。
例えば、固有振動帯域が、2つの第1音周波数帯域を跨ぐと、「ある回転機MT」が2つの第1音周波数帯域の「一方の第1音周波数帯域」で共振し、「別の回転機MT」が「他方の第1音周波数帯域」で共振する可能性がある。この場合、「一方の第1音周波数帯域」に含まれる音データFAに基づいて外れ度DGを算出すると、「別の回転機MT」の音が正常であると誤判定される可能性がある。そこで、固有振動帯域が、2つの第1音周波数帯域を跨がないように第1音周波数帯域を改変することで、回転機MTの固有振動に起因する誤判定を抑制する。この点は、第1振動周波数帯域についても同様である。
ここで、「固有振動数」とは、回転機が固有振動するときの周波数のことであり、回転機の剛性、質量、および形状によって定まる。「固有振動数」は回転機の回転数に依存しない。「固有振動帯域」は、固有振動数を中心とする帯域を示す。「固有振動帯域」では、回転機の振動振幅は、固有振動数に対応する振動振幅をピーク値として、略左右対称となるように、固有振動数から離れるに従って減少する。つまり、「固有振動帯域」では、回転機の振動振幅は略正規分布を示す。
図3では、ある回転機の固有振動帯域f11〜f13と、別の回転機の固有振動帯域f21〜f25とが示されている。固有振動帯域f11〜f13、f21〜f25は実測値である。1つの回転機が複数の固有振動帯域を有する理由は、回転機のパーツごとに、固有振動数が存在するからである。回転機のパーツは、シャフト、筐体、およびその他の部品である。なお、図3には、参考のために、固有振動数の理論値fA、fBが示されている。
ここで、例えば、外れ度算出部13は、「オクターブバンドB」に基づく第1音周波数帯域#8に含まれる音データFAと、「オクターブバンドB」に基づく第1振動周波数帯域#8に含まれる振動データFBとで定まる音響データADについて、基準データ群GRに対する外れ度DGを算出することがさらに好ましい。「オクターブバンドB」に基づく第1振動周波数帯域#8は、「オクターブバンドA」に基づく第1振動周波数帯域#8と同様に、人間の聴覚により合った異常判定結果を導出できるからである。
なお、固有振動帯域の下限周波数が、第1音周波数帯域の下限周波数よりも、第1音周波数帯域の中心周波数に近く、かつ、固有振動帯域の下限周波数が、第1振動周波数帯域の下限周波数よりも、第1振動周波数帯域の中心周波数に近くてもよい。また、固有振動帯域の上限周波数が、第1音周波数帯域の上限周波数よりも、第1音周波数帯域の中心周波数に近く、かつ、固有振動帯域の上限周波数が、第1振動周波数帯域の上限周波数よりも、第1振動周波数帯域の中心周波数に近くてもよい。固有振動帯域が2つの第1音周波数帯域に跨って存在することと、固有振動帯域が2つの第1振動周波数帯域に跨って存在することとを防止できるからである。
引き続き図2および図3を参照して、「オクターブバンドB」によって定められた第1音周波数帯域#1〜#8および第1振動周波数帯域#1〜#8を説明する。第1音周波数帯域#2および第1振動周波数帯域#2の各々は、トルクリップル周波数帯域f1の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。第1音周波数帯域#5および第1振動周波数帯域#5の各々は、トルクリップル周波数帯域f2、f3の各々の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。第1音周波数帯域#6および第1振動周波数帯域#6の各々は、トルクリップル周波数帯域f4、f5の各々の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。第1音周波数帯域#7および第1振動周波数帯域#7の各々は、トルクリップル周波数帯域f6の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。第1音周波数帯域#8および第1振動周波数帯域#8の各々は、トルクリップル周波数帯域f7の下限周波数から上限周波数までの帯域を含む。トルクリップル周波数帯域f1〜f7の各々は、回転機のトルクリップルに基づく周波数帯域である。トルクリップル周波数帯域f1〜f7の次数は互いに異なる。トルクリップルとは、回転機の周期的なトルクの脈動のことである。トルクリップル周波数帯域は、回転機の構造によって定まる。また、トルクリップル周波数帯域は、回転機の回転数に依存する。
換言すれば、トルクリップル周波数帯域f1は、第1音周波数帯域#2および第1振動周波数帯域#2の各々の下限周波数および上限周波数から離隔している。同様に、トルクリップル周波数帯域f2〜f7の各々は、第1音周波数帯域#5〜#8および第1振動周波数帯域#5〜#8の各々の下限周波数および上限周波数から離隔している。第1音周波数帯域#1、#3、#4および第1振動周波数帯域#1、#3、#4は、トルクリップル周波数帯域を含まない。
さらに換言すれば、トルクリップル周波数帯域f1〜f7の各々は、第1音周波数帯域#1〜#8のうち隣り合う第1音周波数帯域を跨がない。加えて、トルクリップル周波数帯域f1〜f7の各々は、第1振動周波数帯域#1〜#8のうち隣り合う第1振動周波数帯域を跨がない。従って、実施形態1によれば、第1音周波数帯域#1〜#8のうちの少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域と、第1振動周波数帯域#1〜#8のうちの少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域とを採用することで、外れ度DGに基づいて回転機MTの音の異常を判定するときに、回転機MTのトルクリップルに起因する誤判定を抑制できる。
例えば、トルクリップル周波数帯域が、2つの第1音周波数帯域を跨ぐと、「ある回転機MT」が2つの第1音周波数帯域の「一方の第1音周波数帯域」でトルクリップルにより振動し、「別の回転機MT」が「他方の第1音周波数帯域」でトルクリップルにより振動する可能性がある。この場合、「一方の第1音周波数帯域」に含まれる音データFAに基づいて外れ度DGを算出すると、「別の回転機MT」の音が正常であると誤判定される可能性がある。そこで、トルクリップル周波数帯域が2つの第1音周波数帯域を跨がないように第1音周波数帯域を改変することで、回転機MTのトルクリップルに起因する誤判定を抑制する。この点は、第1振動周波数帯域についても同様である。
なお、トルクリップル周波数帯域の下限周波数が、第1音周波数帯域の下限周波数よりも、第1音周波数帯域の中心周波数に近く、かつ、トルクリップル周波数帯域の下限周波数が、第1振動周波数帯域の下限周波数よりも、第1振動周波数帯域の中心周波数に近くてもよい。また、トルクリップル周波数帯域の上限周波数が、第1音周波数帯域の上限周波数よりも、第1音周波数帯域の中心周波数に近く、かつ、トルクリップル周波数帯域の上限周波数が、第1振動周波数帯域の上限周波数よりも、第1振動周波数帯域の中心周波数に近くてもよい。トルクリップル周波数帯域が2つの第1音周波数帯域に跨って存在することと、トルクリップル周波数帯域が2つの第1振動周波数帯域に跨って存在することとを防止できるからである。
次に、図1を参照して、マハラノビス距離MDの算出方法を説明する。外れ度算出部13は、式(1)〜式(6)に基づいてマハラノビス距離MDを算出する。式(6)の「D」がマハラノビス距離MDを示す。
外れ度算出部13は、所定数Nの基準音データと所定数Nの基準振動データとを、「N×M型」の基準データ群行列として用意する。「N」は2以上の整数を示す。つまり、「N」は、変量ごとのデータ数を示す。「M」は、変量の数であり、2以上の整数を示す。実施形態1では、変量(音データFAおよび振動データFB)の数は「2」であるため、「M」は「2」である。つまり、基準データ群行列は、「N×2型」の行列である。
実施形態1では、基準データ群行列のi行1列の各成分が、所定数Nの基準音データであり、基準データ群行列のi行2列の各成分が、所定数Nの基準振動データである。「i」は、1〜Nのいずれかの整数を示す。以下、基準データ群行列の各成分をYijと記載する。「j」は、「1」または「2」を示す。
外れ度算出部13は、基準データ群行列の各成分Yijを式(1)に入力して、偏差行列を導出する。式(1)において、Xijは、偏差行列のi行j列の成分を示す。mjは、基準データ群行列のj列の平均値を示す。具体的には、m1は、基準データ群行列の成分Y11〜成分Y91の平均値である。つまり、m1は、所定数Nの基準音データの平均値である。m2は、基準データ群行列の成分Y12〜成分Y92の平均値である。つまり、m2は、所定数Nの基準振動データの平均値である。
外れ度算出部13は、式(2)、式(3)、および式(4)に基づいて、「Q×P型」の分散共分散行列を導出する。式(2)において、rpqは、分散共分散行列のq行p列の成分を示す。「Q」および「P」の各々は、変量の数である。実施形態1では、「Q」および「P」の各々は、「2」である。「k」は、1〜Nのいずれかの整数を示す。
外れ度算出部13は、式(5)に基づいて、偏差データUjを算出する。式(5)において、ujは、異常判定の対象データを示す。具体的には、u1は、音データFAであり、u2は、振動データFBである。Ujは、「1×P型」の行列の成分である。
外れ度算出部13は、式(6)によって、マハラノビス距離MDを算出する。式(6)の「D」が、マハラノビス距離MDを示す。式(6)において、Uは、式(5)の各成分を有する「1×P型」の行列を示す。R−1は、Rの逆行列を示す。Rは、式(2)の各成分を有する「Q×P型」の分散共分散行列を示す。UTは、Uの転置行列を示す。
なお、式(6)において、「D2」を算出することは、実質的には、マハラノビス距離MDを算出することに相当する。従って、「マハラノビス距離の算出」は、式(6)の「D2」を算出することであってもよいし、式(6)の「D」を算出することであってもよい。
次に、図1および図4を参照して、実施形態1に係る異常検出方法を説明する。異常検出方法によって、回転機MTの音の異常が検出される。図4は、異常検出方法を示すフローチャートである。異常検出方法は、図1に示す異常検出装置100によって実行される。図4に示すように、異常検出方法は、工程S1〜工程S12を含む。
工程S1において、異常検出装置100のロボットRBは、回転機MTを所定の測定位置に設置する。
工程S2において、回転機制御部14は、回転機MTを駆動するように、回転機駆動部7を制御する。その結果、回転機MTは回転する。
工程S3において、音センサ3は、回転機MTが所定回転数RTで回転しているときに、回転機MTの音を測定して、音を示す音信号SAを出力する。工程S3は音測定工程の一例に相当する。
工程S4において、振動センサ5は、回転機MTが所定回転数RTで回転しているときに、回転機MTの振動を測定して、振動を示す振動信号SBを出力する。工程S4は振動測定工程の一例に相当する。
実施形態1では、工程S4と工程S5とは、並列に実行される。従って、工程S4と工程S5とが異なる時間帯に実行される場合と比較して、異常検出方法の実行時間を短縮できる。
工程S5において、回転機制御部14は、回転機MTを停止するように、回転機駆動部7を制御する。その結果、回転機MTは停止する。
工程S6において、音分析部11は、音信号SAを周波数分析して、周波数ごとの音データFAを算出する。工程S6は音分析工程の一例に相当する。
工程S7において、振動分析部12は、振動信号SBを周波数分析して、周波数ごとの振動データFBを算出する。工程S7は振動分析工程の一例に相当する。
工程S8において、外れ度算出部13は、少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる音データFAと、少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBとで定まる音響データADについて、基準データ群GRに対する外れ度DGを算出する。工程S8は外れ度算出工程の一例に相当する。
特に、外れ度算出部13は、オクターブバンドBに基づく第1音周波数帯域#8(図3)に含まれる音データFAと、オクターブバンドBに基づく第1振動周波数帯域#8(図3)に含まれる振動データFBとで定まる音響データADについて、基準データ群GRに対する外れ度DGを表すマハラノビス距離MDを算出することが好ましい。
工程S9において、外れ度算出部13は、外れ度DGと閾値THとを比較して、比較結果に基づいて回転機MTの音が異常か否かを判定する。工程S9は判定工程の一例に相当する。
特に、外れ度算出部13は、外れ度DGを表すマハラノビス距離MDと閾値THとを比較して、比較結果に基づいて回転機MTの音が異常か否かを判定することが好ましい。
具体的には、外れ度算出部13は、マハラノビス距離MDが閾値TH以上であるか否かを判定する。
工程S9でマハラノビス距離MDが閾値TH以上であると判定されると(工程S9でYes)、処理は工程S10に進む。マハラノビス距離MDが閾値TH以上であると判定されることは、回転機MTの音が異常であると判定されたことに相当する。
工程S10において、記憶部10は、回転機MTの音が異常であることを示す情報を、回転機MTの識別情報と関連付けて記憶する。
一方、工程S9でマハラノビス距離MDが閾値TH未満であると判定されると(工程S9でNo)、処理は工程S11に進む。マハラノビス距離MDが閾値TH未満であると判定されることは、回転機MTの音が正常であると判定されたことに相当する。
工程S11において、記憶部10は、回転機MTの音が正常であることを示す情報を、回転機MTの識別情報と関連付けて記憶する。
工程S12において、ロボットRBは、回転機MTを所定の測定位置から移動する。具体的には、ロボットRBは、音が異常と判定された回転機MTを、異常用搬送路に移動する。一方、ロボットRBは、音が正常と判定された回転機MTを、正常用送路に移動する。
以上、図4を参照して説明したように、実施形態1に係る異常検出方法によれば、人間の聴覚に近い音データFAと、ばらつきの少ない振動データFBとの双方を組み合わせた音響データADの外れ度DGを算出する。その結果、外れ度DGに基づいて、回転機MTの音が異常か否かを精度良く判定できる。
なお、なお、工程S4と工程S5とは、異なる時間帯に実行されてもよい。また、工程S6と工程S7との実行順番は、特に限定されず、工程S7の後に工程S6が実行されてもよいし、並列に実行されてもよい。
次に、図5および図6を参照して、音センサ3および振動センサ5を説明する。図5は、音センサ3、振動センサ5、および回転機MTを示す側面図である。図6は、音センサ3、振動センサ5、および回転機MTを示す斜視図である。
図5に示すように、回転機MTは、回転機本体21と、回転軸23と、筐体25と、蓋27とを備える。回転機本体21は、回転軸線AXの回りに回転軸23を回転させる。回転機本体21は、例えば、モータ本体である。実施形態1では、回転機MTが回転することは、回転機本体21が駆動されて回転軸23が回転することを示す。筐体25は、回転機本体21を収容する。筐体25は、例えば、略有底円筒形状を有する。蓋27は、筐体25の上部開口を閉塞する。蓋27は、例えば、略円板形状を有する。回転軸23は蓋27から突出している。
音センサ3は、回転機MTの回転軸23の突出している側と反対側において、回転機MTと間隔をあけて配置されて、回転機MTの音を測定することが好ましい。また、音センサ3は、回転機MTの回転軸線AX上に配置されて、回転機MTの音を測定することが好ましい。これらの好ましい例では、人間の聴覚によって回転機MTの音が異常か否かを判定する場合と同様の条件で、回転機MTの音を測定できる。従って、人間の聴覚による判定結果に近づけることができる。
なお、一般的には、人間の聴覚によって回転機MTの音が異常か否かを判定する場合は、人間は、回転機MTの回転軸23の突出している側と反対側において、回転機MTの音を聴く場合が多いし、回転軸線AX上で回転機MTの音を聴く場合が多い。
振動センサ5は、回転機MTの表面のうち回転軸23の突出している側の面27aに接触して、回転機MTの振動を測定することが好ましい。この好ましい例では、振動の大きい位置である面27aに振動センサ5を接触させることで、容易に回転機MTの振動を測定できる。実施形態1では、面27aは、蓋27の上面である。
特に、振動センサ5は、面27aのうちの平坦面に接触して、回転機MTの振動を測定することがさらに好ましい。この好ましい例では、面接触により回転機MTの振動が振動センサ5に伝達されるため、精度良く振動を測定できる。
図6に示すように、異常検出装置100は、チャックMTCと、音センサ支持部材31と、振動センサ支持部材51とをさらに備える。チャックMTCは、回転機MTを挟持して、回転機MTを所定の測定位置で保持する。具体的には、チャックMTCは、回転機MTの筐体25を挟持する。音センサ支持部材31は音センサ3を支持する。振動センサ支持部材51は振動センサ5を支持する。
次に、図7を参照して、異常検出装置100を説明する。図7は、異常検出装置100を示す斜視図である。図7に示すように、異常検出装置100は、壁部材WLと、少なくとも1つの振動絶縁体61と、ベース部材63と、支持体65と、コネクタ67と、配線69と、支持体71とをさらに備える。実施形態1では、異常検出装置100は複数の振動絶縁体61を備えている。
複数の振動絶縁体61の各々は、所定の測定位置に設置された回転機MTを、ベース部材63および支持体65を介して間接的に支持している。複数の振動絶縁体61の各々は、振動を減衰させて、振動の伝播を抑制する。従って、回転機MTの振動以外の振動に起因する音が測定されることと、回転機MTの振動以外の振動が測定されることとを抑制できる。その結果、外れ度DGをより精度良く算出できる。振動絶縁体61は、例えば、振動絶縁ゴム、防振ゴム、または制振ゴムである。
複数の振動絶縁体61はベース部材63を支持する。ベース部材63は、例えば、略平板状である。ベース部材63には支持体65が設置される。支持体65は、チャックMTCおよびコネクタ67を支持する。回転機MTはコネクタ67に連結される。従って、回転機MTには、コネクタ67に接続された配線69から、電力および制御信号が供給される。その結果、回転機MTが、駆動されて回転する。
支持体71は振動センサ支持部材51を支持する。支持体71はベース部材63に設置される。なお、図7では、音センサ支持部材31(図6)は、支持体65に隠れているため、図示されていない。
ロボットRBは、回転機MTを回転機MTの待機位置からチャックMTCまで移動する。そして、回転機MTの音および振動の測定後に、ロボットRBは、回転機MTをチャックMTCから取り出して、異常用搬送路または正常用搬送路に移動する。
具体的には、ロボットRBは、ハンド81と、昇降機構83と、支持体85と、レール87とを備える。ハンド81と昇降機構83とはアクチュエータを構成する。ハンド81は回転機MTを挟持する。ハンド81は、例えば、モータによって駆動される。昇降機構83は、ハンド81を支持して、ハンド81を上昇または下降させる。昇降機構83は、例えば、シリンダによって駆動される。支持体85は昇降機構83を支持する。支持体85は、ハンド81を支持した昇降機構83を、レール87に沿って水平方向に移動する。支持体85は、例えば、モータによって駆動される。
さらに具体的には、ハンド81は、待機位置に位置する回転機MTを挟持する。そして、昇降機構83は、回転機MTを挟持したハンド81を上昇させる。さらに、支持体85は、ハンド81を支持した昇降機構83を、チャックMTCの直上に移動する。そして、昇降機構83は、回転機MTを挟持したハンド81を下降させる。さらに、ハンド81は、チャックMTCに回転機MTを引き渡す。そして、昇降機構83は、ハンド81を上昇させる。
壁部材WLは、チャックMTCに挟持された回転機MTを包囲する。つまり、壁部材WLは、所定の測定位置に設置された回転機MTを包囲する。壁部材WLは、例えば、略筒形状を有する。壁部材WLは、音を反射または吸収する。従って、回転機MTの音以外の音が測定されることと、回転機MTの音以外の音に起因する振動が測定されることとを抑制できる。その結果、外れ度DGをより精度良く算出できる。壁部材WLは、例えば、遮音材または吸音材を含む。
(実施形態2)
図8〜図10を参照して、本発明の実施形態2に係る異常検出装置100Aを説明する。実施形態2に係る異常検出装置100Aがエンベロープ処理を実行する点で、実施形態2は実施形態1と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
図8〜図10を参照して、本発明の実施形態2に係る異常検出装置100Aを説明する。実施形態2に係る異常検出装置100Aがエンベロープ処理を実行する点で、実施形態2は実施形態1と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
図8は、実施形態2に係る異常検出装置100Aを示すブロック図である。図8に示すように、異常検出装置100Aは、回転機MTの音の異常を検出する。異常検出装置100Aは、実施形態1に係る異常検出装置100の構成に加えて、低周波音抽出部91と、低周波音分析部92と、低周波振動抽出部93と、低周波振動分析部94とをさらに備える。具体的には、異常検出装置100Aは制御部1Aを備える。そして、制御部1Aが、実施形態1に係る制御部1の構成に加えて、低周波音抽出部91と、低周波音分析部92と、低周波振動抽出部93と、低周波振動分析部94とをさらに備える。
制御部1Aのハードウェア構成は、図1に示す制御部1のハードウェア構成と同様である。制御部1Aのプロセッサは、記憶部10の記憶装置が記憶しているコンピュータプログラムを実行して、音分析部11、低周波音抽出部91、低周波音分析部92、振動分析部12、低周波振動抽出部93、低周波振動分析部94、外れ度算出部13、回転機制御部14と、およびロボット制御部15として機能する。
低周波音抽出部91は、音センサ3が出力した音信号SAから、第1音周波数帯域の周波数よりも低い低周波音成分LAを抽出する。例えば、低周波音抽出部91は、音信号SAに対してエンベロープ処理(包絡線処理)を実行して、低周波音成分LAを抽出する。例えば、低周波音抽出部91は、ローパスフィルターによって音信号SAから低周波音成分LAを抽出する。
低周波音分析部92は、低周波音成分LAを周波数分析して、周波数ごとの低周波音データLFAを算出する。
低周波振動抽出部93は、振動センサ5が出力した振動信号SBから、第1振動周波数帯域の周波数よりも低い低周波振動成分LBを抽出する。例えば、低周波振動抽出部93は、振動信号SBに対してエンベロープ処理(包絡線処理)を実行して、低周波振動成分LBを抽出する。例えば、低周波振動抽出部93は、ローパスフィルターによって振動信号SBから低周波振動成分LBを抽出する。
低周波振動分析部94は、低周波振動成分LBを周波数分析して、周波数ごとの低周波振動データLFBを算出する。
外れ度算出部13は、音響データADaについて、基準データ群GRaに対する外れ度DGを算出する。外れ度DGは、音響データADaが基準データ群GRaに対して外れている程度を示す。音響データADaは、第1音周波数帯域に含まれる音データFAと、第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBと、第1音周波数帯域よりも低い第2音周波数帯域に含まれる低周波音データLFAと、第1振動周波数帯域よりも低い第2振動周波数帯域に含まれる低周波振動データLFBとで定まる。
換言すれば、実施形態2では、4変量(音データFA、振動データFB、低周波音データLFA、および低周波振動データLFB)について、基準データ群GRaに対する外れ度DGを算出する。従って、外れ度DGに基づいて、回転機MTの音が異常か否かをより精度良く判定できる。特に、低周波音データLFAと低周波振動データLFBとに基づく音響データADaの外れ度DGを算出することは、回転機MTのベアリングに起因する異常音の検出に有効である。
具体的には、外れ度算出部13は、外れ度DGと閾値THとを比較して、比較結果に基づいて回転機MTの音が異常か否かを判定する。閾値THは、例えば、実験的および/または経験的に定められる。実施形態2に係る閾値THは、実施形態1に係る閾値THと、同じでもよいし、異なっていてもよい。
特に、実施形態2では、外れ度算出部13は、回転機MTの音響データADaの外れ度DGを表すマハラノビス距離MDを算出する。従って、4変量(音データFA、振動データFB、低周波音データLFA、および低周波振動データLFB)を同時に処理できる。その結果、4変量を別々に処理する場合と比較して、外れ度DGを高速に導出できる。
この場合、外れ度算出部13は、マハラノビス距離MDと閾値THとを比較して、比較結果に基づいて回転機MTの音が異常か否かを判定する。具体的には、外れ度算出部13は、マハラノビス距離MDが閾値TH以上であるときに、回転機MTの音が異常であると判定する。一方、外れ度算出部13は、マハラノビス距離MDが閾値TH未満であるときに、回転機MTの音が正常であると判定する。
なお、例えば、外れ度算出部13は、実施形態2においても、実施形態1に係る式(1)〜式(6)に基づいて、マハラノビス距離MDを算出する。
次に、音響データADaを詳細に説明する。音響データADaは、実施形態2では、第1音周波数帯域に含まれる音データFAの積算値と、第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBの積算値と、第2音周波数帯域に含まれる低周波音データLFAの積算値と、第2振動周波数帯域に含まれる低周波振動データLFBの積算値とで定められる。従って、外れ度算出部13は、第1音周波数帯域に含まれる音データFAの積算値と、第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBの積算値と、第2音周波数帯域に含まれる低周波音データLFAの積算値と、第2振動周波数帯域に含まれる低周波振動データLFBの積算値とを算出する。なお、例えば、音響データADaは、第1音周波数帯域に含まれる音データFAの平均値と、第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBの平均値と、第2音周波数帯域に含まれる低周波音データLFAの平均値と、第2振動周波数帯域に含まれる低周波振動データLFBの平均値とで定められてもよい。
次に、基準データ群GRaを説明する。基準データ群GRaは、正常な音響データの集合である。正常な音響データは正常な音データと正常な振動データと正常な低周波音データと正常な低周波振動データとで定まる。
具体的には、基準データ群GRaは複数の基準音響データを含む。基準音響データとは、正常な音響データのことである。つまり、基準音響データは規定条件を満足する。規定条件は、基準音響データが正常であると判定される条件を示す。
複数の基準音響データの各々は、基準音データと基準振動データと基準低周波音データと基準低周波振動データとで定まる。
実施形態2に係る基準音データは、実施形態1に係る基準音データと同様である。実施形態2に係る基準振動データは、実施形態1に係る基準振動データと同様である。
基準低周波音データとは、正常な低周波音データのことである。つまり、基準低周波音データは低周波音規定条件を満足する。低周波音規定条件は、低周波音データの音レベルが正常であると判定される条件を示す。基準低周波音データは、低周波音データLFAと同様にして、音センサ3、低周波音抽出部91、および低周波音分析部92によって、回転機の音を測定して算出される。基準低周波音データは第2音周波数帯域に含まれる。
基準低周波振動データとは、正常な低周波振動データのことである。つまり、基準低周波振動データは低周波振動規定条件を満足する。低周波振動規定条件は、低周波振動データの振動レベルが正常であると判定される条件を示す。低周波基準振動データは、低周波振動データLFBと同様にして、振動センサ5、低周波振動抽出部93、および低周波振動分析部94によって、回転機の振動を測定して算出される。基準低周波振動データは第2振動周波数帯域に含まれる。
実施形態2では、基準音響データは、第1音周波数帯域に含まれる基準音データの積算値と、第1振動周波数帯域に含まれる基準振動データの積算値と、第2音周波数帯域に含まれる基準低周波音データの積算値と、第2振動周波数帯域に含まれる基準低周波振動データの積算値とで定められる。なお、例えば、基準音響データは、第1音周波数帯域に含まれる基準音データの平均値と、第1振動周波数帯域に含まれる基準振動データの平均値と、第2音周波数帯域に含まれる基準低周波音データの平均値と、第2振動周波数帯域に含まれる基準低周波振動データの平均値とで定められてもよい。
次に、図8〜図10を参照して、実施形態2に係る異常検出方法を説明する。異常検出方法によって、回転機MTの音の異常が検出される。図9および図10は、異常検出方法を示すフローチャートである。異常検出方法は、図8に示す異常検出装置100Aによって実行される。図9および図10に示すように、異常検出方法は、工程S21〜工程S36を含む。
図9に示す工程S21〜工程S25は、それぞれ、図4に示す工程S1〜工程S5と同様であり、説明を省略する。また、図10に示す工程S33〜工程S36は、それぞれ、図4に示す工程S9〜工程S12と同様であり、説明を省略する。
図9に示すように、工程S26において、音分析部11は、音信号SAを周波数分析して、周波数ごとの音データFAを算出する。工程S26は音分析工程の一例に相当する。
工程S27において、低周波音抽出部91は、音センサ3が出力した音信号SAから、第1音周波数帯域の周波数よりも低い低周波音成分LAを抽出する。工程S27は音成分抽出工程の一例に相当する。
工程S28において、低周波音分析部92は、低周波音成分LAを周波数分析して、周波数ごとの低周波音データLFAを算出する。工程S28は低周波音分析工程の一例に相当する。
図10に示すように、工程S29において、振動分析部12は、振動信号SBを周波数分析して、周波数ごとの振動データFBを算出する。工程S29は振動分析工程の一例に相当する。
工程S30において、低周波振動抽出部93は、振動センサ5が出力した振動信号SBから、第1振動周波数帯域の周波数よりも低い低周波振動成分LBを抽出する。工程S30は振動成分抽出工程の一例に相当する。
工程S31において、低周波振動分析部94は、低周波振動成分LBを周波数分析して、周波数ごとの低周波振動データを算出する。工程S31は低周波振動分析工程の一例に相当する。
工程S32において、外れ度算出部13は、少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる音データFAと、少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる振動データFBと、第2音周波数帯域に含まれる低周波音データLFAと、第2振動周波数帯域に含まれる低周波振動データLFBとで定まる音響データADaについて、基準データ群GRaに対する外れ度DGを算出する。具体的には、外れ度算出部13はマハラノビス距離MDを算出する。工程S32は外れ度算出工程の一例に相当する。
以上、図9および図10を参照して説明したように、実施形態2に係る異常検出方法によれば、外れ度DGに基づいて、回転機MTの音が異常か否かをより精度良く判定できる。特に、低周波音データLFAと低周波振動データLFBとに基づく音響データADaの外れ度DGを算出することは、回転機MTのベアリングに起因する異常音の検出に有効である。
なお、工程S28以前に工程S27が実行されるとともに、工程S31以前に工程S30が実行される限りにおいては、工程S26〜工程S31の実行順番は、特に限定されない。
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
本発明の実施例を図11〜図15Bを参照して説明する。本実施例では、図1〜図7を参照して説明した異常検出装置100を使用した。第1音周波数帯域としては、図3に示す「オクターブバンドB」に基づく第1音周波数帯域#8および第1振動周波数帯域#8を採用した。第1音周波数帯域#8と第1振動周波数帯域#8とは、同じであった。音響データADは、第1音周波数帯域#8に含まれる複数の音データFAの積算値と、第1振動周波数帯域#8に含まれる複数の振動データFBの積算値とで定められた。以下、本実施例の説明において、複数の音データFAの積算値を単に「音データFA」と記載し、複数の振動データFBの積算値を単に「振動データFB」と記載する。また、本実施例では、外れ度DGを表すマハラノビス距離MDが算出された。マハラノビス距離MDは、式(1)の「D」によって示された。
具体的には、異常検出装置100は、回転機「No.1」、回転機「No.2」、回転機「No.3」、および回転機「No.4」ごとに、音データFAおよび振動データFBの各々を30回算出して、マハラノビス距離MDを30回算出した。
一方、回転機「No.1」、回転機「No.2」、回転機「No.3」、および回転機「No.4」に対して、検査員「#1」、検査員「#2」、検査員「#3」、検査員「#4」、検査員「#5」、および検査員「#6」が、聴覚によって音が異常か否かを判定した。
図11は、本実施例に係る異常検出装置100によって算出されたマハラノビス距離MDと、検査員「#1」〜検査員「#6」による判定結果とを示す図である。図11において、「NG」は回転機の音が異常であると判定されたことを示す。「OK」は回転機の音が正常であると判定されたことを示す。
図11に示すように、回転機「No.1」および回転機「No.2」の各々に対して、2.0以上のマハラノビス距離MDが30回算出された。マハラノビス距離MDが2.0以上であることは、異常検出装置100によって、回転機「No.1」および回転機「No.2」の各々が異常であると判定されたことに相当した。
一方、検査員「#1」〜検査員「#6」の全員が、回転機「No.1」および回転機「No.2」の各々の音が異常であると判定した。
また、回転機「No.3」では、0.0であるマハラノビス距離MDが30回算出された。回転機「No.4」では、0.0であるマハラノビス距離MDが23回算出され、0.1であるマハラノビス距離MDが7回算出された。マハラノビス距離MDが0.1以下であることは、異常検出装置100によって、回転機「No.3」および回転機「No.4」の各々が正常であると判定されたことに相当した。
一方、検査員「#1」〜検査員「#6」の全員が、回転機「No.3」および回転機「No.4」の各々の音が正常であると判定した。
以上、図11を参照して説明したように、異常検出装置100による異常判定結果と、人間である検査員「#1」〜検査員「#6」による異常判定結果とが、一致した。従って、本実施例に係る異常検出装置100が、人間の聴覚により合った異常判定結果を導出できることを確認できた。特に、図3に示す「オクターブバンドB」に基づく第1音周波数帯域#8および第1振動周波数帯域#8を採用することが有効であることを確認できた。
次に、図12A〜図13Bを参照して、異常な回転機「No.1」の音データFAおよび振動データFB、ならびに、基準音データおよび基準振動データを説明する。
図12Aは、本実施例に係る異常検出装置100によって得られた異常な回転機「No.1」の音データFAの発生頻度を示す図である。図12Aにおいて、横軸は、音データFAの振幅(音圧振幅)を示し、縦軸は、振幅ごとの音データFAの発生頻度を示す。横軸は任意単位である。
図12Bは、本実施例に係る異常検出装置100によって使用される基準音データの発生頻度を示す図である。図12Bにおいて、横軸は、基準音データの振幅(音圧振幅)を示し、縦軸は、振幅ごとの基準音データの発生頻度を示す。横軸は任意単位である。
図12Aに示すように、音データFAは、振幅が132〜144の範囲で発生した。振幅が140の音データFAが、発生頻度のピークを示した。一方、図12Bに示すように、基準音データは、振幅が16〜56の範囲で発生した。振幅が20の音データFAが、発生頻度のピークを示した。
図12Aおよび図12Bから理解できるように、音が異常な回転機「No.1」では、発生頻度の多い音データFAの振幅は、発生頻度の多い基準音データの振幅よりも大きかった。
図13Aは、本実施例に係る異常検出装置100によって得られた異常な回転機「No.1」の振動データFBの発生頻度を示す図である。図13Aにおいて、横軸は、振動データFBの振幅(振動振幅)を示し、縦軸は、振幅ごとの振動データFBの発生頻度を示す。横軸は任意単位である。
図13Bは、本実施例に係る異常検出装置100によって使用される基準振動データの発生頻度を示す図である。図13Bにおいて、横軸は、基準振動データの振幅(振動振幅)を示し、縦軸は、振幅ごとの基準振動データの発生頻度を示す。横軸は任意単位である。
図13Aに示すように、振動データFBは、振幅が44〜70の範囲で発生した。振幅が54の振動データFBが、発生頻度のピークを示した。一方、図13Bに示すように、基準振動データは、振幅が4〜10の範囲で発生した。振幅が6の振動データFBが、発生頻度のピークを示した。
図13Aおよび図13Bから理解できるように、音が異常な回転機「No.1」では、発生頻度の多い振動データFBの振幅は、発生頻度の多い基準振動データの振幅よりも大きかった。
図12Aに示す音データFAと図13Aに示す振動データFBとに基づいて算出されたマハラノビス距離MDは、29〜67であった。一方、図12Bに示す基準音データおよび図13Bに示す基準振動データに基づいて算出されたマハラノビス距離MDは、ゼロであった。なぜなら、基準音データと基準振動データとで定まる基準音響データが単位空間を形成したからである。
以上、図12A〜図13Bを参照して説明したように、発生頻度の多い音データFAの振幅が、発生頻度の多い基準音データの振幅よりも大きく、かつ、発生頻度の多い振動データFBの振幅が、発生頻度の多い基準振動データの振幅よりも大きいと、マハラノビス距離MDが大きくなることを確認できた。
次に、図14A〜図15Bを参照して、正常な回転機「No.3」の音データFAおよび振動データFB、ならびに、基準音データおよび基準振動データを説明する。
図14Aは、本実施例に係る異常検出装置100によって得られた正常な回転機「No.3」の音データFAの発生頻度を示す図である。図14Aの縦軸および横軸は、それぞれ、図12Aの縦軸および横軸と同じである。図14Bの内容は、図12Bの内容と同じである。
図14Aに示すように、音データFAは、振幅が20〜24の範囲で発生した。振幅が24の音データFAが、発生頻度のピークを示した。
図14Aおよび図14Bから理解できるように、音が正常な回転機「No.3」では、発生頻度の多い音データFAの振幅は、発生頻度の多い基準音データの振幅と大体等しかった。
図15Aは、本実施例に係る異常検出装置100によって得られた正常な回転機「No.3」の振動データFBの発生頻度を示す図である。図15Aの縦軸および横軸は、それぞれ、図13Aの縦軸および横軸と同じである。図15Bの内容は、図13Bの内容と同じである。
図15Aに示すように、振動データFBは、振幅が6〜8の範囲で発生した。振幅が8の振動データFBが、発生頻度のピークを示した。
図15Aおよび図15Bから理解できるように、音が正常な回転機「No.3」では、発生頻度の多い振動データFBの振幅は、発生頻度の多い基準振動データの振幅と大体等しかった。
図14Aに示す音データFAと図15Aに示す振動データFBとに基づいて算出されたマハラノビス距離MDは、0.01〜0.04であった。一方、図14Bに示す基準音データおよび図15Bに示す基準振動データに基づいて算出されたマハラノビス距離MDは、ゼロであった。
以上、図14A〜図15Bを参照して説明したように、発生頻度の多い音データFAの振幅が、発生頻度の多い基準音データの振幅と大体等しく、かつ、発生頻度の多い振動データFBの振幅が、発生頻度の多い基準振動データの振幅と大体等しいと、マハラノビス距離MDが小さくなることを確認できた。
以上、図面を参照して本発明の実施形態および実施例について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
本発明は、異常検出方法および異常検出装置を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
3 音センサ
5 振動センサ
11 音分析部
12 振動分析部
13 外れ度算出部
100、100A 異常検出装置
MT 回転機
5 振動センサ
11 音分析部
12 振動分析部
13 外れ度算出部
100、100A 異常検出装置
MT 回転機
Claims (12)
- 回転機の音の異常を検出する異常検出方法であって、
前記回転機が所定回転数で回転しているときに、前記回転機の前記音を測定して、前記音を示す音信号を出力する音測定工程と、
前記回転機が前記所定回転数で回転しているときに、前記回転機の振動を測定して、前記振動を示す振動信号を出力する振動測定工程と、
前記音信号を周波数分析して、周波数ごとの音データを算出する音分析工程と、
前記振動信号を周波数分析して、周波数ごとの振動データを算出する振動分析工程と、
少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる前記音データと、少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる前記振動データとで定まる音響データについて、基準データ群に対する外れ度を算出する外れ度算出工程と
を含み、
前記外れ度は、前記音響データが前記基準データ群に対して外れている程度を示す、異常検出方法。 - 前記外れ度算出工程では、前記外れ度を表すマハラノビス距離を算出する、請求項1に記載の異常検出方法。
- 前記第1音周波数帯域と前記第1振動周波数帯域とは、同一の周波数帯域である、請求項1又は請求項2に記載の異常検出方法。
- 前記少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域が、オクターブバンドを用いて定められ、
前記少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域が、オクターブバンドを用いて定められる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の異常検出方法。 - 前記第1音周波数帯域および前記第1振動周波数帯域の各々は、固有振動帯域の下限周波数から上限周波数までの帯域を含み、
前記固有振動帯域は、前記回転機の固有振動に基づく周波数帯域であり、前記回転機の固有振動数を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異常検出方法。 - 前記第1音周波数帯域および前記第1振動周波数帯域の各々は、トルクリップル周波数帯域の下限周波数から上限周波数までの帯域を含み、
前記トルクリップル周波数帯域は、前記回転機のトルクリップルに基づく周波数帯域である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の異常検出方法。 - 前記音信号から、前記第1音周波数帯域の周波数よりも低い低周波音成分を抽出する音成分抽出工程と、
前記低周波音成分を周波数分析して、周波数ごとの低周波音データを算出する低周波音分析工程と、
前記振動信号から、前記第1振動周波数帯域の周波数よりも低い低周波振動成分を抽出する振動成分抽出工程と、
前記低周波振動成分を周波数分析して、周波数ごとの低周波振動データを算出する低周波振動分析工程と
をさらに含み、
前記音響データは、前記第1音周波数帯域に含まれる前記音データと、前記第1振動周波数帯域に含まれる前記振動データと、前記第1音周波数帯域よりも低い第2音周波数帯域に含まれる前記低周波音データと、前記第1振動周波数帯域よりも低い第2振動周波数帯域に含まれる前記低周波振動データとで定まる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の異常検出方法。 - 前記外れ度と閾値とを比較して、比較結果に基づいて前記回転機の前記音が異常か否かを判定する判定工程をさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の異常検出方法。
- 回転機の音の異常を検出する異常検出装置であって、
前記回転機が所定回転数で回転しているときに、前記回転機の前記音を測定して、前記音を示す音信号を出力する音センサと、
前記回転機が前記所定回転数で回転しているときに、前記回転機の振動を測定して、前記振動を示す振動信号を出力する振動センサと、
前記音信号を周波数分析して、周波数ごとの音データを算出する音分析部と、
前記振動信号を周波数分析して、周波数ごとの振動データを算出する振動分析部と、
少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域に含まれる前記音データと、少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域に含まれる前記振動データとで定まる音響データについて、基準データ群に対する外れ度を算出する外れ度算出部と
を備え、
前記外れ度は、前記音響データが前記基準データ群に対して外れている程度を示す、異常検出装置。 - 前記外れ度算出部は、前記外れ度を表すマハラノビス距離を算出する、請求項9に記載の異常検出装置。
- 前記第1音周波数帯域と前記第1振動周波数帯域とは、同一の周波数帯域である、請求項9又は請求項10に記載の異常検出装置。
- 前記少なくとも一つ以上の第1音周波数帯域が、オクターブバンドを用いて定められ、
前記少なくとも一つ以上の第1振動周波数帯域が、オクターブバンドを用いて定められる、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の異常検出装置。
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JP2019032511A JP2020134479A (ja) | 2019-02-26 | 2019-02-26 | 異常検出方法および異常検出装置 |
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Cited By (3)
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CN113933035A (zh) * | 2021-09-30 | 2022-01-14 | 中国船舶重工集团公司第七一九研究所 | 基于相关性分析的旋转机械装备故障诊断方法和系统 |
WO2022065103A1 (ja) * | 2020-09-25 | 2022-03-31 | 株式会社バルカー | 振動解析システム、および振動解析方法 |
WO2022260221A1 (ko) * | 2021-06-11 | 2022-12-15 | 한국수력원자력 주식회사 | 진동 측정 오류 판단 방법 및 이를 이용하는 진동 오류 판별 시스템 |
-
2019
- 2019-02-26 JP JP2019032511A patent/JP2020134479A/ja active Pending
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