JP2007033221A - サファイア中微量元素の定量方法 - Google Patents

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【課題】高強度、高剛性、高耐磨耗性、高耐熱性および高耐腐食性といった特性を持っており溶液化が困難であるサファイア基板試料を、不純物および汚染の導入をできるだけ排除して、溶液化し、サファイア基板中の微量元素を定量する方法を提供する。
【解決手段】サファイア中微量元素の定量方法は、サファイア基板試料を酸分解法またはアルカリ融解法により分解し、得られた溶液中の微量元素を、フローインジェクション導入−ICP/質量分析法によって測定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度、高剛性、高耐磨耗性、高耐熱性および高耐腐食性といった特性を持っており溶液化が困難であるサファイア基板試料を溶液化し、サファイア基板中の微量元素を定量する方法に関するものである。
サファイア結晶は、近年、液晶プロジェクター用フィルター材料や青・白色LED用基板材料としての需要が高まっている。特に、青色・白色LEDはここ数年輝度が向上し、従来の単純な表示素子への応用に加え、照明用途への応用が現実化しており市場が拡大している。
従来のLEDに比べ、より高輝度な青・白色LEDは、一般にHB−LED(High−Brightness LEDs)とよばれ、携帯電話のバックライト、撮影用フラッシュなどの補助光源向け用途が増加している。HB−LEDはその用途が現在の補助光源から、今後は、一般照明用光源、自動車用ヘッドライトなどの分野に用途が拡大すると見られている。
一方、半導体材料として用いられる材料の重要な特性としては、特に含有される不純物濃度が挙げられる。サファイア結晶は不純物元素の含有により様々な色に着色してしまい、基板材料として使用する際に問題となる。したがって、サファイア結晶中の不純物量を把握することは極めて重要である。
日本セラミックス協会規格 JCRS 104−1993 ファインセラミックス用アルミナ微粉末の化学分析方法
しかし、サファイアは高強度、高剛性、高耐磨耗性、高耐熱性および高耐腐食性といった特性を持っており、試料を溶液化することが非常に困難であり、固体のまま測定する方法が望ましい。その方法としては、全反射蛍光X線法、2次イオン質量分析法などがあるが、どちらの方法においても標準試料の問題から定量は困難である。
また、サファイアを溶解する方法としてはアルカリ融解等が考えられるが、融剤中の不純物また融解時に使用する容器からのコンタミネーションの影響で定量は困難である。
本発明は、高強度、高剛性、高耐磨耗性、高耐熱性および高耐腐食性といった特性を持っており溶液化が困難であるサファイア基板試料を、不純物および汚染の導入をできるだけ排除して、溶液化し、サファイア基板中の微量元素を定量する方法を提供することを目的とする。
上記問題を解決する本発明は、高純度の乳鉢を作成し試料を粉砕し硫酸を加え、加圧分解によって溶液化する方法、または、ほう酸および水酸化リチウムを超純水に溶解し、pHを約10に調製した後、ランタン溶液を加え不純物を共沈分離し高純度の融剤を作成し、この融剤を用いて試料を溶解した後、ICP質量分析法により測定することを特徴サファイア中微量元素の定量方法である。
本発明によれば、サファイア基板を汚染なく溶液化することが可能となり、サファイア中微量元素を定量することが可能である。
サファイアは高強度、高剛性、高耐磨耗性、高耐熱性および高耐腐食性といった特性を持っており、試料を溶液化することが非常に困難である。ファインセラミックス用のアルミナ微粉末の溶解方法には、硫酸を加え加圧分解法で溶解する方法が確立されている前述の非特許文献1があるが、この非特許文献1記載の発明では、試料が微粉末でなければ完全に溶解できない。サファイア基板を微粉に粉砕する方法としては乳鉢で粉砕する方法があるが、この際、乳鉢からのコンタミネーションが問題となり、定量が困難である。またアルカリ融解法では融剤中の不純物量が高く、定量が困難であった。
本発明は、これら試料溶解の際の粉砕容器または試薬からのコンタミネーションを極力低減させ、試料を溶解することにより、微量元素の定量を可能とした。
本発明によるサファイア中の微量元素の定量方法をより詳細に述べると以下のようになる。
酸分解法では、試料を粉砕する際には高純度のジルコニア乳鉢を使用し、微粉末とした試料をポリ四フッ化エチレン樹脂製容器に秤量し、硫酸を加える。次にポリ四フッ化エチレン樹脂製容器を密閉し、さらにその容器を耐圧製のステンレス製容器あるいはセラミック製容器に収め、電気炉等で加熱する加圧分解法を用いる。その際、より高温で加熱することで分解時間の短縮が図れるが、ポリ四フッ化エチレン製容器が変形しない220〜230°C程度が好ましい。
アルカリ融解法にて試料を溶解する際には、高純度の合成融剤を使用する。高純度融剤の合成方法を下記に示す。
ポリ四フッ化エチレン樹脂製ビーカーにほう酸(HBO)12.4gを秤取り、水を加え加熱溶解し、さらに、水酸化リチウム(LiOH・HO)8.4gを加え加熱溶解した。放冷後、10g/■ランタン溶液またはジルコニウム溶液を5ml加えて加熱し、不純物を沈殿分離した。上澄み液を別のポリ四フッ化エチレン樹脂製ビーカーに移し入れ、再度ランタン溶液(またはジルコニウム溶液)を加え加熱し不純物を沈殿分離した。この操作を5回繰り返した後、得られた上澄み液を加熱、乾固して融剤とした。
サファイア基板試料0.1gを高純度黒鉛るつぼに秤量し、合成した高純度融剤を加え、高周波誘導加熱装置により1300℃で20分間加熱し融解した後、得られた融解物を硝酸で溶解し溶液とした。
以上の方法で試料を分解、溶液化した後、水を加えて溶液量を一定の容量に合わせ試料溶液とし、これを適宜希釈した後、ICP質量分析法で溶液中の濃度を測定する。ICP質量分析装置は、高マトリックス試料を導入すると、導入系および検出器の汚染により、感度の低下が生じ、測定が困難となる。そのため、測定の際の試料導入方法は,試料の導入量が小容量で測定可能な、フローインジェクション法が好ましい。測定の際、分子イオンの影響により定量が困難な元素については、コリジョンガスを導入し測定した。コリジョンガスの種類および流量については、装置または定量元素によって異なるため、その都度最適な条件で測定する必要がある。
以上の方法によって、サファイア中微量元素を定量することが可能である。
本発明により、サファイア基板材料中のNa、Mg、SiおよびFeの定量を行った。以下、実施例に基づき本発明を説明する。
(実施例1)
サファイア基板試料を高純度ジルコニア乳鉢で微粉に粉砕し、0.1gをポリ四フッ化エチレン製容器に秤取り、4.5N硫酸を15ml加えて加熱、分解した。放冷後、分解した溶液をポリ四フッ化エチレン製容器に移し入れ、水を加えて容量を50mlに合わせこれを試料溶液とした。測定質量数およびコリジョンガス種は下記の表1の通りとし、ICP質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ製Agilent7500cs)を用いて測定を行った。この際、試料溶液の導入はフロ−インジェクション法で行った。
定量結果を下記の表2に示す。分析値の確かさを確認するため、標準溶液を添加し、同様の操作で試料溶液を調製して添加回収率を測定した。その結果、添加回収率はNaで104%、Mgで105%、Siで101%、Feで96%であった。なお、添加回収率が90〜110の範囲内であれば、定量値に影響がないと考えられる。
(実施例2)
サファイア基板試料0.1gを、高純度黒鉛るつぼに秤取り,上記方法で合成した融剤0.5gを加え,高周波誘導加熱炉で1300°C,20分間攪拌しながら加熱融解した。放冷後,得られた融解物をポリ四フッ化エチレン製容器に移し入れ、8N硝酸を10ml加え加熱溶解し、水を加えて容量を50mlに合わせこれを試料溶液とした。測定質量数およびコリジョンガス種は下記の表3の通りとし、ICP質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ製Agilent7500cs)を用いて測定を行った。この際、試料溶液の導入はフロ−インジェクション法で行った。
定量結果を下記の表4に示す。分析値の確かさを確認するため、標準溶液を添加し、同様の操作で試料溶液を調製して添加回収率を測定した。その結果,添加回収率は、Mgで102%、Feで103%であった。

Claims (3)

  1. サファイア基板試料を酸分解法またはアルカリ融解法により分解し、得られた溶液中の微量元素を、フローインジェクション導入−ICP/質量分析法によって測定することを特徴とするサファイア中微量元素の定量方法。
  2. 前記酸分解法は、高純度のジルコニア乳鉢を使用してサファイア基板試料を粉砕し、粉砕後、ポリ四フッ化エチレン樹脂製容器に秤量して、硫酸を加え、加圧分解によって行うものであることを特徴とする請求項1記載のサファイア中微量元素の定量方法。
  3. 前記アルカリ融解法は、放散及び水酸化リチウムを超純水に溶解した後、ランタン又はジルコニウム溶液を加え、不純物を水酸化物として共沈分離し、得られた上澄み液を乾固することにより得られた合成融剤を使用して、サファイア基板試料を分解するものであることを特徴とする請求項1記載のサファイア中微量元素の定量方法。
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