JP2007031573A - 架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体、その架橋体ならびにそれを用いたプロトン伝導膜および燃料電池 - Google Patents
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Abstract
耐水性、低吸水性、低メタノール透過性と高プロトン伝導性を長期にわたり両立する、燃料電池、特に直接メタノール型燃料電池に用いる、架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体、その架橋体並びにそれらを用いたプロトン伝導膜及び燃料電池を提供する。
【解決手段】
疎水性ブロックと、芳香環に直接結合したプロトン酸基を含有し且つアルキル基を有さない親水性ブロックとからなり、疎水性ブロックにのみ架橋基を有し、かつその架橋基がプロトン酸基から誘導されず、且つ脱離成分の生成なしに架橋し得る架橋基である架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体及びその架橋体である。またそれらを用いたプロトン伝導膜及び燃料電池である。
【選択図】なし
Description
高分子電解質型燃料電池は、高分子電解質膜とこの両側に接触して配置される正極および負極から構成される。燃料の水素あるいはメタノールは負極において電気化学的に酸化されてプロトンと電子を生成する。このプロトンは高分子電解質膜内を、酸素が供給される正極に移動する。一方、負極で生成した電子は電池に接続された負荷を通り、正極に流れ、正極においてプロトンと電子が反応して水を生成する。そのため、電解質膜には高いプロトン伝導性が求められる。
これらプロトン酸基含有芳香族炭化水素高分子膜のプロトン伝導性を高めるためには、プロトン酸基の導入量を増やす、すなわちイオン交換基当量を小さくすることが必要であるが、プロトン酸基の導入量を増やすと、同時に親水性が増し、吸水率が増加したり水溶性になることが知られている(例えば、特許文献1)。燃料電池は、燃料と酸素の反応により水を副生することから、水溶性の樹脂は燃料電池用の高分子電解質膜として用いることはできない。また、水溶性とならなくても、吸水性が高い場合には、膜の膨潤や強度の低下、吸水した水を介してのメタノールの負極から正極への透過などの問題を生じる。
例えば、ポリエーテルエーテルケトンの膜中のスルホン酸同士を脱硫酸縮合させたスルホネート結合による架橋方法が報告されている(例えば、特許文献2)が、硫酸などの脱離を伴う架橋機構であり、膜表面と膜内部あるいは膜の裏面で架橋密度が異なる、厚膜化が困難である、膜にボイドができる、脱離した酸性ガスにより製造装置が腐食するといった問題を有していた。さらに、これらプロトン酸基を用いた架橋機構により得られる膜は、架橋密度を向上させるとプロトン酸基が減少(イオン交換基当量が増加)し、イオン伝導性が低下するといった問題があった。
しかしながら、いずれの方法においても耐水性、低吸水性、低メタノール透過性と高プロトン伝導性を充分に両立した高分子電解質膜は得られておらず、さらなる性能向上が求められていた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]に記載した事項により特定される。
[式(1)中、R1は−CmH2m+1(mは1〜10の整数)。A1、A2はそれぞれ独立して直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、gおよびhはそれぞれ独立して0または1を示す。式(1)中の芳香環の水素原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、−F、−CF3、−Si(CH3)3、−OSi(CH3)3または−CNに置換されていても良い。]
[2] ブロック(B)が一般式(2)あるいは(3)で表わされる繰り返し構造単位からなることを特徴とする、上記[1]に記載の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体。
[式(2)および(3)中、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立してHまたはプロトン酸基であり、少なくとも1つはプロトン酸基である。式(2)および(3)中、A3、A4、A5およびA6はそれぞれ独立して直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、i、j、kおよびmはそれぞれ独立して0または1を示す。式(2)および(3)の芳香環の水素原子は、プロトン酸基、−F、−CF3、−Si(CH3)3、−OSi(CH3)3または−CNに置換されていても良い。]
[3] ブロック(A)が一般式(4)、ブロック(B)が一般式(5)でであることを特徴とする、上記[1]又は[2]記載の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体。
[式(4)中、R6は−CmH2m+1(mは1〜10の整数)。A7は直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−である。式(4)中の芳香環のH原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、−F、−CF3に置換されていても良い。]
[式(5)中、R7とR8の少なくとも1つはプロトン酸基であり、それ以外はH原子である。式Y中のA8は直接結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、芳香環の水素原子は他の原子に置換されない。]
[4] プロトン酸基が、−CnH2n−SO3Z、−CnH2n−PO2Z2、−CnH2n−COOZ(nは0〜10の整数、ZはH、NaまたはKである)のいずれか一つでであることを特徴とする上記[1]〜[3]記載の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体。
[5] 上記 [1]〜[4]記載のいずれか一つの架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体の架橋基が架橋してなるプロトン伝導性ブロック共重合架橋体。
[6] 上記 [1]〜[5]記載の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体あるいはプロトン伝導性ブロック共重合架橋体を含んでなる燃料電池用プロトン伝導膜。
[7] 上記 [6]記載のプロトン伝導膜を用いてなる燃料電池。
[8] アルコールを直接燃料に用いることを特徴とする上記[7]記載の燃料電池。
本発明に係るプロトン伝導性ブロック共重合体は、耐水性に優れ吸水膨張が小さい特定の構造単位を繰り返し有するブロック(A)と、プロトン酸基を有するブロック(B)とからなることを特徴とする。
本発明に係るブロック(A)は、以下の一般式(1)で表される構造単位を繰り返し有する。
[式(1)中、R1は−CmH2m+1(mは1〜10の整数)。A1、A2はそれぞれ独立して直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、gおよびhはそれぞれ独立して0または1を示す。式(1)中の芳香環の水素原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、−F、−CF3、−Si(CH3)3、−OSi(CH3)3または−CNに置換されていても良い。]
[式(4)中、R6は−CmH2m+1(mは1〜10の整数)。A7は直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−である。式(4)中の芳香環のH原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、−F、−CF3に置換されていても良い。]
本発明にかかる疎水性ブロックは、前記ブロック(A)以外の複数種類の繰り返し構造単位からなっていても良いが、疎水性ブロックが加水分解や吸水による膨張を受けやすいエステル結合、アミド結合、イミド結合やプロトン酸基を含む場合には、ブロック共重合体の水への溶解性、吸水性が高くなるおそれがあるため、好ましくない。
本発明に係るブロック(B)は、芳香環に直接結合したプロトン酸基を含み、且つ、芳香環に直接結合したアルキル基を含まない構造単位を繰り返し有する。ブロック(B)は、芳香環に直接結合したアルキル基を含まない構造単位からなるので、ブロック(B)においては、カルボニル基とアルキル基とからなる架橋構造を生成しない。そのため、ブロック(B)は、プロトン伝導に必要な水分の吸収を行い、このブロック(B)においては高分子鎖の動きが制限されない。従って、ブロック(B)はブロック(A)に比べて親水性を示す。本発明に係る親水性ブロックを構成する繰り返し構造単位(B)は、好ましくは下記一般式(2)又は(3)の構造をとる。
[式(2)および(3)中、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立してHまたはプロトン酸基であり、少なくとも1つはプロトン酸基である。式(2)および(3)中、A3、A4、A5およびA6はそれぞれ独立して直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、i、j、kおよびmはそれぞれ独立して0または1を示す。式(2)および(3)の芳香環の水素原子は、プロトン酸基、−F、−CF3、−Si(CH3)3、−OSi(CH3)3または−CNに置換されていても良い。]
前記一般式(2)及び(3)のプロトン酸基は、電子吸引基である−SO2−または−CO−に直接結合した芳香環に結合しており、他の芳香環に結合したプロトン酸基に比べ結合力が強く、分解、解離を受けにくいため、特に好ましい。
−CnH2n−SO3Z(nは0〜10の整数、ZはH,NaまたはK) (6)
−CnH2n−COOZ(nは0〜10の整数、ZはH,NaまたはK) (7)
−CnH2n−PO3Z2(nは0〜10の整数、ZはH,NaまたはK) (8)
本発明の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体は、プロトン酸基を有するプロトン伝導を担うブロック(B)と、耐水性に優れ吸水膨張が小さく、架橋基を有するブロック(A)とからなる。プロトン伝導を担うブロック(B)は水へ溶解あるいは吸水膨張をしやすく、ブロック(A)は耐水性に優れ吸水膨張が小さいので、ブロック(B)で水への溶解あるいは吸水膨張をしようとしても、ブロック(A)がこれを抑制する。本発明の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体は、例えばプロトン伝導膜に使用した場合には、ブロック(A)とブロック(B)とが適度に相分離する。2つの相の界面は同一分子で結合されているため、ブロック(B)からなる相が水へ溶解あるいは吸水膨張しようとしても、耐水性に優れ吸水膨張が小さく架橋されたブロック(A)からなる相がこれを抑制する。その結果、該プロトン伝導膜はプロトン酸基の含有量が高く、高プロトン伝導性を有しながら、耐水性、低吸水性に優れ、水とともに伝搬するメタノールの透過量も低く抑えることができる。また、2つの相界面が同一分子で結合されているため、温度や湿度の変化による2つの相の膨張収縮の差が抑制され、膨張収縮の差によるクラックの発生が抑制される。
また、架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体と耐水性に優れ吸水膨張の小さい樹脂とからなる複合膜は、2つの樹脂の極性が極端に異なるため微細な相分離構造を形成しがたい、相間が分子鎖で結合されていないためプロトン伝導性樹脂の水への溶解や吸水膨張を抑制できない、温度や湿度の変化による2つの相の膨張収縮の差により相界面にクラックが入る等の問題があり、好ましくない。
本発明の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体の製造方法に特に制限はないが、具体的な製造方法を芳香族ポリエーテル構造を例として以下に例示する。
1.芳香族ジヒドロキシ化合物とプロトン酸基を有する芳香族ジハライド化合物、芳香族ジハライド化合物とプロトン酸基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物、あるいは、プロトン酸基を有する芳香族ジハライド化合物とプロトン酸基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物を縮合重合し、35℃における還元粘度が0.05〜0.4dl/gの繰り返し構造単位を有するプロトン酸基含有オリゴマーを合成する。これに芳香族ジヒドロキシ化合物と架橋基を有する芳香族ジハライド化合物芳香族ジハライド化合物と架橋基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物、または架橋基を有する芳香族ジハライド化合物と架橋基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物を、それぞれ添加して縮合重合することによりブロック共重合体とする。
2.芳香族ジヒドロキシ化合物とプロトン酸基を有する芳香族ジハライド化合物、芳香族ジハライド化合物とプロトン酸基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物、あるいは、プロトン酸基を有する芳香族ジハライド化合物とプロトン酸基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物を、それぞれ縮合重合し、35℃における還元粘度が0.05〜0.4dl/gの繰り返し構造単位を有するプロトン酸基含有オリゴマーを合成する。別途、芳香族ジヒドロキシ化合物と架橋基を有する芳香族ジハライド化合物、芳香族ジハライド化合物と架橋基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物、または架橋基を有する芳香族ジハライド化合物と架橋基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物を、それぞれ重縮合して疎水性オリゴマーを得る。
前記プロトン酸基含有オリゴマーに前記疎水性オリゴマーを添加して縮合重合することによりブロック共重合体とする。
プロトン酸基を有する芳香族ジハライド化合物としては、前記の芳香族ジハライド化合物のスルホン化物、アルキルスルホン化物のほか、2,5−ジクロロ安息香酸、2,5−ジフルオロ安息香酸、5,5’−カルボニルビス(2−フルオロ安息香酸)、5,5’−スルホニルビス(2−フルオロ安息香酸)、2,5−ジクロロフェニルホスホン酸、5,5’−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンホスホン酸)およびそのアルカリ金属塩などを挙げることができる。
なお、芳香族ジハライド化合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物のスルホン化物、アルキルスルホン化物は、前記芳香族ジハライド化合物及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物を、発煙硫酸などの公知のスルホン化剤でスルホン化(Macromol. Chem. Phys., 199, 1421(1998))する等の方法により得ることができる。
本発明のプロトン伝導膜は、本発明の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体を含んでなるプロトン伝導膜である。ここで、本発明のプロトン伝導膜には、自立膜のみならず、基材、電極膜や他のプロトン伝導膜等に密着した塗膜も含む。ここで、本発明にかかるプロトン伝導膜の厚みに特に制限はないが、自立膜である場合には10〜200μm、塗膜である場合には1〜100μmであることが好ましい。
本発明のプロトン伝導膜は、本発明の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体を含んでいればよく、電気導電性を有する導電材、水素の酸化反応、酸素の還元反応を促進する触媒などと複合化されていても良い。
などが上げられる。例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭および黒鉛等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して、粉末状あるいはシート状で使用される。
触媒としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であれば特に限定されないが、例えば鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムまたはそれらの合金が挙げられる。
本発明のプロトン伝導膜は、種々公知の燃料電池の電解質膜として使用することができ、燃料電池の燃料源としては、例えば、天然ガス、水素、メタノール等のアルコールを用いることができる。その中でもアルコールを直接燃料として用いるものが好ましい。本発明のプロトン伝導膜を用いた燃料電池は、膜の溶解、樹脂の溶出やプロトン酸基の脱離、燃料のクロスオーバーによる出力低下が生じにくく、発電効率と信頼性に優れる。
実施例中の各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
(i)還元粘度(ηinh)
プロトン伝導性ブロック共重合体またはそのオリゴマー0.50gをジメチルスルホキシド100mlに加熱溶解したのち、35℃において、ウベローデ粘度計で測定した。
(ii)イオン交換基当量(EW)
プロトン伝導性ブロック共重合体またはプロトン伝導膜を密閉できるガラス容器中に精秤し、そこに過剰量の塩化カルシウム水溶液を添加して一晩攪拌した。系内に発生した塩化水素を0.1N水酸化ナトリウム標準水溶液にてフェノールフタレイン指示薬を用いて滴定し、計算した。
(iii)吸水率
窒素通風下120℃12時間乾燥したプロトン伝導性ブロック共重合体またはプロトン伝導膜を、23℃純水に24時間浸漬し、その重量変化より算出した。
(iv)プロトン伝導度(25℃、膜厚方向)
1M硫酸で湿潤したサンプルフィルムを、1cm2の空孔を有する100μm厚PETフィルムの片面に白金電極を貼った測定用セル2個で挟み、空孔を1M硫酸水で満たした。これを25℃の恒温槽内に設置してその抵抗値を測定した。サンプルフィルムを挟まなかった場合の抵抗値との差から、サンプルフィルム単体の抵抗値を求め、イオン伝導度(25℃、膜厚方向)を算出した。なお、プロトン伝導度の計算に必要な膜厚は乾燥状態でマイクロメータを用いて測定した。
(v)メタノール透過性
室温にて蒸留水と、1mol/L メタノール水溶液を、直径23mmφのプロトン伝導膜を介して接し、3時間までの蒸留水側のメタノール濃度変化をガスクロにて測定した。得られたメタノール濃度増加直線の傾きより、膜厚50μmでのメタノール透過速度を計算し、これをメタノール透過性とした。
窒素導入管、温度計、トルエンで満たした分液器を備えた冷却器、及び撹拌装置を備えたフラスコに、3,3’−カルボニルビス(6−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)14.7802g(0.035mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン9.9877g(0.043mol)および無水炭酸カリウム5.80g(0.042mol)を精秤した。これにジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略す)99.0gおよびトルエン40.0gを加え、窒素ガスを通じ撹拌しながら、140℃まで昇温した後、5時間反応を行った。反応はトルエン還留下に行い、留出する水は分液器により分液回収した。冷却後、反応マスの一部をサンプリングし、DMSOで希釈、その上澄みをメタノールに排出してオリゴマーを析出させ、アセトンで洗浄したのち、窒素通風下150℃4時間乾燥してオリゴマーを得た。得られたオリゴマーは、芳香環に直接結合したプロトン酸基(スルホン酸ナトリウム基)を含み且つ芳香族環に直接結合したアルキル基を含まない化合物であり、その還元粘度は0.20dl/g(DMSO)であった。
得られたブロック共重合体4gを18.2gのN−メチルピロリドンに溶解し、ポリマー濃度18%のワニスを得た。得られたワニスをスペーサーを有するブレードを用いてガラス基板上にキャストし、窒素通風下室温から200℃まで2時間かけて昇温乾燥し、厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムはガラス基板上からはがし、メタルハライドランプを用いて両面に各7000mJ/cm2の光照射を行い架橋させ、フィルム状のプロトン伝導性ブロック共重合架橋体を得た。
架橋したフィルムを2N硫酸水溶液および蒸留水に1日づつ浸漬してスルホン酸ナトリウム基のプロトン交換を行い、フリーのスルホン酸基を有するフィルムを得た。
得られたフィルムのイオン交換基当量は770g/mol、吸水率は11%、プロトン伝導度は0.011S/cm、メタノール透過性は0.54μmol/cm2・minであった。
窒素導入管、温度計、トルエンで満たした分液器を備えた冷却器、及び撹拌装置を備えたフラスコに、3,3’−カルボニルビス(6−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)14.7802g(0.035mol)、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン8.7606g(0.043mol)および無水炭酸カリウム5.80g(0.042mol)を精秤した。これにジメチルスルホキシド94.0gおよびトルエン38.0gを加え、窒素ガスを通じ撹拌しながら、140℃まで昇温した後、4時間40分反応を行った。反応はトルエン還留下に行い、留出する水は分液器により分液回収した。冷却後、反応マスの一部をサンプリングし、DMSOで希釈、その上澄みをメタノールに排出してオリゴマーを析出させ、アセトンで洗浄したのち、窒素通風下150℃4時間乾燥してオリゴマーを得た。得られたオリゴマーは、芳香環に直接結合したプロトン酸基(スルホン酸ナトリウム基)を含み且つ芳香族環に直接結合したアルキル基を含まない化合物であり、オリゴマーの還元粘度は0.20dl/g(DMSO)であった。
得られたブロック共重合体4gを19.5gのN−メチルピロリドンに加熱溶解し、ポリマー濃度17%のワニスを得た。得られたワニスをスペーサーを有するブレードを用いてガラス基板上にキャストし、窒素通風下室温から200℃まで2時間かけて昇温乾燥し、厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムはガラス基板上からはがし、メタルハライドランプを用いて両面に各7000mJ/cm2の光照射を行い架橋させ、フィルム状のプロトン伝導性ブロック共重合架橋体を得た。
架橋したフィルムを2N硫酸水溶液および蒸留水に1日づつ浸漬してスルホン酸ナトリウム基のプロトン交換を行い、フリーのスルホン酸基を有するフィルムを得た。
得られたフィルムのイオン交換基当量は733g/mol、吸水率は10%、プロトン伝導度は0.013S/cm、メタノール透過性は0.48μmol/cm2・minであった。
窒素導入管、温度計、トルエンで満たした分液器を備えた冷却器、及び撹拌装置を備えたフラスコに、3,3’−カルボニルビス(6−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)14.7802g(0.035mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン14.7802g(0.043mol)および無水炭酸カリウム5.80g(0.042mol)を精秤した。これにDMSO118.0gおよびトルエン47.0gを加え、窒素ガスを通じ撹拌しながら、140℃まで昇温した後、9間反応を行った。反応はトルエン還留下に行い、留出する水は分液器により分液回収した。冷却後、反応マスの一部をサンプリングし、DMSOで希釈、その上澄みをメタノールに排出してオリゴマーを析出させ、アセトンで洗浄したのち、窒素通風下150℃4時間乾燥してオリゴマーを得た。得られたオリゴマーは、芳香環に直接結合したプロトン酸基(スルホン酸ナトリウム基)を含み且つ芳香環に直接結合したアルキル基を含まない化合物であり、オリゴマーの還元粘度は0.17dl/g(DMSO)であった。
得られたブロック共重合体4gを14.2gのN−メチルピロリドンに加熱溶解し、ポリマー濃度22%のワニスを得た。得られたワニスをスペーサーを有するブレードを用いてガラス基板上にキャストし、窒素通風下室温から200℃まで2時間かけて昇温乾燥し、厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムはガラス基板上からはがし、メタルハライドランプを用いて両面に各7000mJ/cm2の光照射を行い架橋させ、フィルム状のプロトン伝導性ブロック共重合架橋体を得た。
架橋したフィルムを2N硫酸水溶液および蒸留水に1日づつ浸漬してスルホン酸ナトリウム基のプロトン交換を行い、フリーのスルホン酸基を有するフィルムを得た。
得られたフィルムのイオン交換基当量は791g/mol、吸水率は9%、プロトン伝導度は0.012S/cm、メタノール透過性は0.64μmol/cm2・minであった。
窒素導入管、温度計、トルエンで満たした分液器を備えた冷却器、及び撹拌装置を備え
たフラスコに、3,3’−カルボニルビス(6−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)14.7802g(0.035mol)、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン11.2153g(0.043mol)および無水炭酸カリウム5.80g(0.042mol)を精秤した。これにジメチルスルホキシド104.0gおよびトルエン42.0gを加え、窒素ガスを通じ撹拌しながら、140℃まで昇温した後、8間反応を行った。反応はトルエン還留下に行い、留出する水は分液器により分液回収した。冷却後、反応マスの一部をサンプリングし、DMSOで希釈、その上澄みをメタノールに排出してオリゴマーを析出させ、アセトンで洗浄したのち、窒素通風下150℃4時間乾燥してオリゴマーを得た。得られたオリゴマーは、芳香環にプロトン酸基及びアルキル基が直接結合した化合物であり、還元粘度は0.20dl/g(DMSO)であった。
得られたブロック共重合体の還元粘度は1.10dl/g(N−メチルピロリドン)であった。
得られたブロック共重合体4gを14.2gのN−メチルピロリドンに加熱溶解し、ポリマー濃度22%のワニスを得た。得られたワニスをスペーサーを有するブレードを用いてガラス基板上にキャストし、窒素通風下室温から200℃まで2時間かけて昇温乾燥し、厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムはガラス基板上からはがし、メタルハライドランプを用いて両面に各7000mJ/cm2の光照射を行い架橋させた。
架橋したフィルムを2N硫酸水溶液および蒸留水に1日づつ浸漬してスルホン酸ナトリウム基のプロトン交換を行い、フリーのスルホン酸基を有するフィルムを得た。
得られたフィルムのイオン交換基当量は761g/mol、吸水率は19%、プロトン伝導度は0.013S/cm、メタノール透過性は0.85μmol/cm2・minであった。
Claims (8)
- 一般式(1)で表される構造単位を繰り返し有するブロック(A)と、芳香環に直接結合したプロトン酸基を含み且つ芳香環に直接結合したアルキル基を含まない構造単位を繰り返し有するブロック(B)とからなることを特徴とする架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体。
[式(1)中、R1は−CmH2m+1(mは1〜10の整数)。A1、A2はそれぞれ独立して直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、gおよびhはそれぞれ独立して0または1を示す。式(1)中の芳香環の水素原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、−F、−CF3、−Si(CH3)3、−OSi(CH3)3または−CNに置換されていても良い。] - ブロック(B)が一般式(2)あるいは(3)で表わされる繰り返し構造単位からなることを特徴とする、請求項1に記載の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体。
[式(2)および(3)中、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立してHまたはプロトン酸基であり、少なくとも1つはプロトン酸基である。式(2)および(3)中、A3、A4、A5およびA6はそれぞれ独立して直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、i、j、kおよびmはそれぞれ独立して0または1を示す。式(2)および(3)の芳香環の水素原子は、プロトン酸基、−F、−CF3、−Si(CH3)3、−OSi(CH3)3または−CNに置換されていても良い。] - ブロック(A)が一般式(4)、ブロック(B)が一般式(5)でであることを特徴とする、請求項1又は2記載の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体。
[式(4)中、R6は−CmH2m+1(mは1〜10の整数)。A7は直接結合,−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−である。式(4)中の芳香環のH原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数)、−F、−CF3に置換されていても良い。]
[式(5)中、R7とR8の少なくとも1つはプロトン酸基であり、それ以外はH原子である。式Y中のA8は直接結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−SO2−または−CO−であり、芳香環の水素原子は他の原子に置換されない。] - プロトン酸基が、−CnH2n−SO3Z、−CnH2n−PO2Z2、−CnH2n−COOZ(nは0〜10の整数、ZはH、NaまたはKである)のいずれか一つでであることを特徴とする請求項1〜3記載の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体。
- 請求項1〜4記載のいずれか一つの架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体の架橋基が架橋してなるプロトン伝導性ブロック共重合架橋体。
- 請求項1〜5記載の架橋型プロトン伝導性ブロック共重合体あるいはプロトン伝導性ブロック共重合架橋体を含んでなるプロトン伝導膜。
- 請求項6記載のプロトン伝導膜を用いてなる燃料電池。
- アルコールを直接燃料に用いることを特徴とする請求項7記載の燃料電池。
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