JP2007031343A - 遺伝子組換えヒトデルタタンパク質 - Google Patents
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Abstract
【課題】産業上必要とされるヒトデルタタンパク質を、ヒトに対して抗原性のある糖鎖をもたず、未知病原体を含む危険性が低く、Notchとの結合能を有し、幹細胞の分化抑制(未分化維持)活性を持った形で安価に提供することを課題としている。
【解決手段】原核生物を用いてヒトデルタタンパク質を不溶性画分に発現させ、変性剤および還元剤を用いて精製することにより、望ましい遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を得ることができる。
【選択図】なし
【解決手段】原核生物を用いてヒトデルタタンパク質を不溶性画分に発現させ、変性剤および還元剤を用いて精製することにより、望ましい遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を得ることができる。
【選択図】なし
Description
本発明は幹細胞未分化維持に利用可能な遺伝子組換えヒトデルタタンパク質に関する。
我々の身体の各臓器や組織には、組織特異的な幹細胞(体性幹細胞、組織幹細胞)が存在し、この細胞は固有の系列への分化能を持つとともに、分裂した際自分と同じ能力を持った細胞を再生(自己複製)することにより、それぞれの組織が傷害を受けたとき、その修復及び維持を保っていると考えられる。近年、体性幹細胞の持つこのような能力を利用して再生医療を目指した様々な研究が行われ、臨床応用も広がろうとしている。その中で、造血幹細胞は最も研究の進んでいる体性幹細胞である。造血幹細胞はin vivoでは種々のサイトカインや骨髄ストローマ細胞に囲まれその生存や増殖が支持されていると考えられ、マウスでは骨髄ストローマ細胞との共存培養により造血幹細胞が維持できることが知られているが、ヒトでは安定的したストローマ細胞(支持細胞)株が得られない。そのため、異種動物ストローマ細胞を用いた増幅系を用いた場合、従来ヒトに感染しなかったウイルスなどの病原体がヒトに移植されることにより感染性を獲得すること、すなわちヒトに対する未知病原体を含む危険性が危惧されている。
幹細胞の分化を制御する細胞膜レセプターの一つでNotch分子とそのリガンド分子であるDelta、Serrate、Jaggedは、造血前駆細胞の分化を制御する機能を持つとして近年非常に注目されている。Notchは、1回膜貫通型受容体でありそのリガンドと結合するとγセクレターゼによって膜貫通部位を切断され、細胞内ドメインが核内に移行することにより、下流の遺伝子の発現を誘導しシグナル(Notchシグナル)を伝達する。細胞の分化制御シグナル伝達にはNotchへのリガンド刺激が重要な役割を持っており、Notchのリガンドを基材に固定化(人工支持細胞)し、造血幹細胞をその上で培養することによって幹細胞を分化制御しながら増幅させる技術が可能となれば、異種動物ストローマ細胞の利用による未知病原体のヒトへの感染リスクの少ない安全な移植・再生医療技術として、様々な分野で適用できることが考えられる。
このとき基材に固定するNotchリガンドの産業上必要とされる特性として、1.ヒト由来Notchリガンドであり、2.Notchとの結合能を有し、3.幹細胞の分化抑制(未分化維持)活性を持ち、4.未知病原体を含む危険性が低く、5.ヒトに対して抗原性のある糖鎖をもたない、6.安価に製造可能である、といった点が挙げられる。
ヒト由来Notchリガンドとして知られるDelta−1, Delta−3, Delta−4, Jagged−1, Jagged−2は、細胞外ドメインと膜貫通ドメイン、細胞内ドメインからなる膜タンパク質である。細胞外ドメインはと6つのシステイン残基を1つの構造体とするEpidermal Growth Factor(EGF)様配列の繰返しドメイン(EGF様リピート)と、システイン残基を多く含むDSLドメインを有しており、糖鎖修飾されている。これらNotchリガンドは隣接する細胞のNotch分子と、DSLドメインおよびEGF様リピートを介して結合し、Notchシグナルの伝達を引き起こす。Notchシグナルの伝達の過程では、一時的にHES−1遺伝子の発現量が増加することが知られている。
NotchとNotchリガンドの結合はNotchシグナル伝達を引き起こす上で重要な現象である。ショウジョウバエのNotchにおいて、Notchの糖鎖が必要であることが報告されている(非特許文献1参照)。一方、Notchリガンドにおいては、糖鎖構造は必ずしも必要ではない。ショウジョウバエのNotchは、Notch細胞外ドメインに存在するEGF様リピートのうち、11番目と12番目のEGF様リピートを介して、カルシウム依存的にNotchリガンドと結合することが知られている(非特許文献2参照)。哺乳類のNotchについても同様の機構でリガンドと結合すると考えられる。EGF様リピートは細胞間の情報伝達因子、細胞接着因子の機能的な領域として広範な遺伝子に存在することが知られている。
一方、Notchリガンドも細胞外ドメインにEGF様リピートを持つ。EGF様リピートを8個程度有するDelta類縁分子と15個程度有するSerrate/Jagged類縁分子が知られている。さらにヒト、マウスでは、DeltaホモログとしてDelta like−1、Delta like−3が知られており、これらもEGF様リピートを有している。下等生物のNotchリガンドもEGF様リピートを有している。
Notchリガンドの細胞外ドメインに存在するDSLドメインとEGF様リピートは、Notchとの結合において重要な機能を持つ。アラジール病の原因遺伝子であるヒトJagged−1遺伝子の変異23個のうち17までがDSLドメインおよび/もしくはEGF様リピートの変異であった(非特許文献3参照)。さらにヒトのデルタホモログであるDelta like−3において、DSLドメインの変異およびEGF様リピートの欠損、EGF様リピート中の1アミノ酸変異が骨格形成に影響を与えることが示唆されている(非特許文献4参照)。
Notchリガンドであるヒトデルタタンパク質の細胞外ドメインを、動物、昆虫細胞を用いて発現させた例は多数開示されているが(特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献5参照)、一般に動物細胞の作る糖タンパク質糖鎖は不均一で、同じ一つのタンパク質に付加する糖鎖から複数の糖鎖型が見出され、系統の離れた真核生物種(昆虫、酵母、植物)では糖鎖構造はヒトの糖鎖パターンとは異なる。こうしたヒトの糖鎖と異なる糖鎖のなかには、ヒトに対して抗原性を示す糖鎖構造もあり、ヒトへの臨床応用を考える場合重大な問題となる。
一方、一般に原核生物における遺伝子組換えタンパク質の製造においては、抗原性のある糖鎖が付加されない利点があり、動物細胞や昆虫細胞を用いる系で懸念されるべきウイルス等の感染因子、未知病原体の混入の恐れも低い。さらには動物細胞や昆虫細胞、酵母による製造方法と比較し、生産性の高さと操作性の容易さから製造にかかるコストを低くおさえることができるといった利点もある(非特許文献6参照)。しかし原核生物において多数のジスルフィド結合を形成するEGF様リピートを含むポリペプチドを発現させ、複数のジスルフィド結合を正常な位置で形成させ、水溶性の精製ポリペプチドを得ることは極めて困難である。ヒトデルタタンパク質の発現についても、EGF様リピートを含まず、DSLドメインのみをグルタチオンSトランスフェラーゼタグとの融合タンパク質として発現させた例が開示されているのみであり(非特許文献7参照)、ヒトデルタタンパク質の正常な機能発揮のために必要と考えられるEGF様リピートが含まれていない。このように、DSLドメインとEGF様リピート含む細胞外ドメインを原核生物細胞内で発現させ、水溶性の遺伝子組換えタンパク質として単離精製した例はこうした困難性ゆえに、これまで知られていなかった。
国際公開第97/19172号パンフレット
国際公開第98/51799号パンフレット
特開2005−13059号公報
Katja Bruckner et al.、 Nature、2000年、第406巻、p411−415
Rebay I. et al、Cell、1991年、第67巻、p687−699
Cecile Crosnier et al.、「Human mutation Mutation in Brief」、2000年、p385
Michael P. Bulman et al.、Nature Genetics、2000年、第24巻、p438−441
Barbara Varnum−Finney et al.、Journal of Cell Science、2000年、第113巻、p4313−4318
塚越規弘 編著、「生化学実験法45 組換えタンパク質生産法」、2001年、p7−8
Wei Han et al.、Blood、2000年、第95巻、p1616−1625
かかる状況に鑑み、本発明では産業上必要とされるヒトデルタタンパク質を、ヒトに対して抗原性のある糖鎖をもたず、未知病原体を含む危険性が低く、Notchとの結合能を有し、幹細胞の分化抑制(未分化維持)活性を持った形で安価に提供することを課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決できる手段を鋭意検討した結果、原核生物細胞を用いてヒトデルタタンパク質を不溶性画分に発現させ、変性剤および還元剤を用いて精製することにより課題を解決できることを見出し本発明に至ったものである。すなわち、本発明は、原核生物細胞により細胞内不溶性画分として発現させた後、変性剤および還元剤を用いて可溶化する工程を含む方法により製造された、DSLドメインとEGF様リピートをそれぞれ少なくとも1つ有する遺伝子組換えヒトデルタタンパク質、である。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は、ヒトに対して抗原性のある糖鎖をもたず、未知病原体を含む危険性の低い安全なヒトデルタタンパク質である。例えば、これを基材に固定化して人工支持細胞とし、造血幹細胞をその上で培養することによって幹細胞を分化制御しながら増幅させる技術に利用でき、異種動物ストローマ細胞の利用による未知病原体のヒトへの感染リスクの少ない安全な移植・再生医療技術を開発することができる。
この発明におけるその他の用語や概念は、発明の実施形態の説明や実施例において詳しく規定する。また、この発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, 「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., 「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等に記載されている。
本発明は、遺伝子組換えヒトデルタタンパク質である。本発明におけるヒトデルタタンパク質とは、ヒト由来Notchリガンドであり、ヒトDelta−1, ヒトDelta−3, ヒトDelta−4, ヒトJagged−1, ヒトJagged−2のいずれかのアミノ酸配列と同じまたは90%以上相同な配列をもつポリペプチドである。好ましくはヒトDelta−1のアミノ酸配列と同じまたは90%以上相同な配列をもつポリペプチドである。ヒトDelta−1のアミノ酸配列はSwiss−Prot accession number O00548として登録されている。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は、遺伝子組換え技術を用いて異種生物により作られるヒトデルタタンパク質のことである。具体的には原核生物細胞により細胞内不溶性画分として発現させた後、変性剤および還元剤を用いて可溶化する工程を含む方法により製造されたヒトデルタタンパク質である。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を原核生物細胞により細胞内不溶性画分として発現する方法に特に制限はなく、使用する原核生物種や使用菌株、使用ベクターの種類に良り最適なものを選択すれば良い。発現の方法としては恒常的に発現するプロモーター制御による発現でもよく、IPTGやアラビノース、トリプトファン、インドールアクリル酸、テトラサイクリン、ガラクトース、スクロースなど化合物による発現でも良く、また高温シフトもしくは低温シフトなど温度変化による発現であっても良い。
本発明における細胞内不溶性画分とは、原核生物細胞を、変性剤および還元剤を添加していないリン酸緩衝溶液もしくはトリス緩衝溶液中で破砕した際に、不溶性の成分として存在する画分のことであり、破砕液を2G以上にて遠心分離もしくはろ過することなどにより容易に可溶性の画分と分離することが可能である。細胞内不溶性画分には細胞内の夾雑物質の混入が少なく、発現させた遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を比較的高純度に含むことから、遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の精製を容易にすることができる。さらに、原核生物細胞の生育に影響を与える遺伝子組換えタンパク質は一般にその発現量が少ないが、本発明の細胞内不溶性画分に発現させる方法により製造することで生育への影響を回避し、発現量を増大させることができるといった利点もある。
細胞内不溶性画分として発現させた本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は、変性剤および還元剤を用いて可溶化させ、幹細胞未分化維持活性を回復させる。通常、多数のジスルフィド結合を形成するEGF様リピート配列を含むヒトデルタタンパク質の活性を回復させることは困難を伴うが、本発明の方法によって製造すれば容易に実施可能となる。
本発明における変性剤および還元剤を用いて可溶化する工程とは、変性剤の働きによりタンパク質のコンフォメーションをランダムな構造にし、還元剤の働きによりタンパク質の分子内もしくは分子間ジスルフィド結合を解離させることによりタンパク質を可溶化する工程であり、遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の活性を回復させ、水溶性の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を得るために重要な工程である。その工程の条件にとくに制限はないが、好ましくは可溶化の効率を上げる目的で、工程の温度を10℃以上に上げる段階を含むことが望ましい。また、可溶化の効率を上げる目的で、振盪処理、超音波処理、攪拌処理、加圧処理、減圧処理などを行っても良い。また、ヌクレアーゼ処理により可溶化の効率を上げることもできる。さらに、タンパク質の分解を防ぐ目的で、プロテアーゼ阻害剤の存在下で行ってもよい。この工程により、細胞内不溶性画分として発現させたヒトデルタタンパク質が持つ多数の誤結合したジスルフィド結合を解離させることができる。解離したジスルフィド結合を誤結合を防止しながら正しい位置で結合させるために、変性剤の除去と還元剤の除去工程を含んでいても良い。
本発明の変性剤および還元剤を用いて可溶化する工程において、変性剤の除去と還元剤の除去の手法に特に制限はないが、変性剤を除去した後に還元剤を除去することが好ましい。本発明の変性剤を除去した後に還元剤を除去する工程では、変性剤および還元剤存在下で可溶化させた遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を含む溶液から、まず変性剤を透析もしくは希釈、脱塩カラムなどにより除去もしくは希釈する。ジスルフィドの誤結合を防止しながら変性剤を除去することで、遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の立体構造を天然型に近い形まで回復させることができる。その後、還元剤を透析もしくは希釈、脱塩カラムなどにより除去もしくは希釈、もしくは失活することにより、立体構造を回復させる中間段階でのジスルフィド結合の誤結合を防止し、ジスルフィド結合を天然型と同様に正常な部位で形成させることができる。好ましくは、グアニジン塩酸塩とジチオスレイトールにより可溶化させ、タグの親和性を利用して夾雑タンパク質から分離した遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を含む溶液から、透析もしくは脱塩カラムによりグアニジン塩酸塩を除き、ついでジチオスレイトールを除くことで水溶性の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を得ることができる。
また、原核生物細胞内で発現させた遺伝子組換えヒトデルタタンパク質には糖鎖が付加されないため、水溶液中での溶解性が低下すると考えられる。従って、変性剤を除去した後に還元剤を除去する工程は、溶液のpHを遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の等電点(pI)から1以上離れた溶液中で行い、遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の溶解性を高めた状態で行うことが好ましい。この工程により幹細胞未分化維持活性は回復する。また、還元剤を除去する工程を、システイン側鎖が解離する条件で、具体的にはpH10以下の条件で行うことにより、ジスルフィド結合の再結合を制御することもできる。
本発明における変性剤とは、ポリペプチド鎖をランダムなコンフォメーションにしうる化合物である。また変性剤は、タンパク質の2次、3次、四次構造を変化させることによりタンパク質の溶解性を向上させることもできる。変性剤の例としてはカオトロピック剤や界面活性剤が挙げられ、具体的には尿素、グアニジン、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩、チオシアネート、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、Tween、Triton、ラウリルサルコシン、NP40、コール酸などが単独または組み合わせて用いられるが、好ましくは尿素、グアニジン、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩が用いられ、さらに好ましくはグアニジン塩酸塩が用いられる。
本発明における還元剤とは、分子内相互作用及び分子間相互作用とくにジスルフィド結合を伴う相互作用を失わせ得る化合物をである。さらにタンパク質の可溶性を向上させることもある。本発明において用いられる還元剤として、具体的にはジチオスレイトール、β―メルカプトエタノール、グルタチオンなどが挙げられ、単独または組み合わせて用いられるが、好ましくはジチオスレイトールが用いられる。
本発明におけるDSLドメインとは、下等生物のNotchリガンドであるDelta、Serrate、Lag−2において、EGF様リピート部位以外に共通の領域として見出された領域のアミノ酸配列と同じまたは90%以上相同な配列を持つポリペプチドを示す(Henderson S.T.ら著、Development、120、p2913、1994年)。このヒトDelta−1のDSL領域のアミノ酸配列はSwiss−Prot accession number O00548において記載されている。
本発明におけるEGF様リピート配列とは、Notch分子およびNotchリガンドに存在する6つのシステイン残基を含む領域を一つの単位とする繰返し配列のことであり、基本構造はC. Geoffry Davis著、「The New Biologist」、1990年、第2巻、p410−419にそのアミノ酸配列が記載されており、ヒトDelta−1のEGF様リピート配列のアミノ酸配列はSwiss−Prot accession number O00548において記載されている。本発明の遺伝子組換えタンパク質に含まれるEGF様リピートの数は、1から15であることが好ましい。発現のしやすさと可溶化を容易にするため、EGF様リピートの数を減少させてもよい。より好ましくは1から8のEGF様リピートを含み、さらに好ましくはEGF様リピートの数が3から5である。最も好ましくはEGF様リピートの数が5である。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を製造する宿主としては、遺伝子組換えタンパク質に糖鎖を付加することがないことから、原核生物細胞を用いることが好適である。具体的には、遺伝子組換えヒトデルタタンパク質に糖鎖を付加することがない宿主であれば特に制限はないが、中でも遺伝子組換えによるタンパク質の生産が容易である大腸菌(Escherichia属細菌)や枯草菌(Bacillus属細菌)、乳酸菌(Lactobacillus属細菌)、好熱性細菌(Bacillus属細菌、Thermus属細菌、Pyrococcus属細菌)、アミノ酸生産菌(Corynebacterium属細菌、Brevibacterium属細菌)、酢酸菌(Acetobacter属細菌)、Pseudomonas属細菌、Salmonella属細菌、Serratia属細菌、Zymomonas属細菌、Staphylococcus属細菌などが好適に用いられる。より好ましくは遺伝子工学的手法を容易に用いることが可能であり、種々の遺伝子組換えタンパク質を生産した実績を有する大腸菌が用いられる。
本発明において宿主として用いる大腸菌は、ヒトデルタタンパク質を遺伝子組換えにより発現可能であれば特に制限は無いが、遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の発現を効率的に行う目的で、タンパク質分解酵素遺伝子の変異や欠失、薬剤感受性の導入、薬剤耐性の導入、改変tRNAの導入、シャペロンの導入など、種々の改変が行われていても良い。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質に糖鎖が付加されていないことは実験的手法により確認することもできる。例えばレクチン染色、レクチンブロット、PAS染色、Pro−Qエメラルド染色(Invitrogen社製)ECL糖タンパク質検出法(アマシャムバイオサイエンス社製)、グリコペプチダーゼ処理、N−グリカナーゼ処理、などを単独または組み合わせて行うことにより、遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の糖鎖の有無を判定することができる。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は、好ましくは幹細胞未分化維持活性を有する。幹細胞未分化維持活性は、造血幹細胞をはじめとした体性幹細胞の未分化状態を維持する活性であり、その活性の測定法の一例として、活性を測定したいタンパク質を固相化したプレート上で、血球系幹細胞を培養しその細胞数を測定する方法があげられる。また他の例としては、活性を測定したいタンパク質を固相化したプレートで幹細胞を培養したときのNotchシグナルの下流転写因子にあたるHES1の発現量を測定し、HES1遺伝子の発現量の増加を、定量的PCRやReal−time PCR、Northern hybridizationなどにより確認する方法があげられる。転写因子であるHes1は未分化な神経前駆細胞などに発現し、神経分化を促進するMash1などの転写因子を抑制することにより神経分化を抑制することが知られている。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は、ヒトデルタタンパク質細胞外ドメインであることが好ましい。ヒトデルタタンパク質細胞外ドメインとはヒトデルタタンパク質の細胞外に存在する領域のことであり、その全長から膜貫通ドメインと細胞質ドメインを除いたドメインを示す。好ましくはその全長からシグナルペプチドドメインと膜貫通ドメイン、細胞質ドメインを除いたドメインである。膜貫通ドメインやシグナルペプチドドメインを除くことで、ヒトデルタタンパク質の水溶液への溶解性は向上する利点がある。DSLドメインと5つのEGF様リピートを持つヒトデルタタンパク質細胞外ドメインアミノ酸配列の一例を配列番号1に示す。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は、水溶性であることが好ましい。具体的には、リン酸緩衝溶液もしくはトリス緩衝溶液のいずれか一方において、25℃1L中1μg以上の濃度で可溶化し得るタンパク質が好ましい。
本発明における原核生物細胞の破砕方法に特に制限はなく、ヒトデルタタンパク質のもつ幹細胞未分化維持活性が失われない方法であれば良い。具体的には超音波破砕、ホモジナイザー、グラスビーズ、ワーリングブレンダー、フレンチプレス、凍結融解、リゾチームなどの酵素、界面活性剤、などを用いる方法が単独もしくは組み合わせて用いられる。なかでも破砕効率および操作の簡便さから、超音波破砕が好ましく用いられる。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質には、精製の効率を向上させる目的で、タグを融合させても良い。タグの一例としてはカルモジュリン結合ペプチドタグ、グルタチオンS−トランスフェラーゼタグ、マルトース結合タンパク質タグ、Flagタグ、T7タグ、Sタグ、セルロース結合ドメインタグ、HATタグ、ビオチンタグ、ポリヒスチジンペプチドタグなどが挙げられる。グルタチオンS−トランスフェラーゼタグなど一部のタグが酵素活性などの生理活性を有するのに対して、種々のタグのなかでも、タグ自体が酵素活性などの生理活性を持たないこと、変性剤存在下での精製が可能であること、立体障害が起こりにくいことなどの理由から、少なくとも4残基以上の連続したヒスチジンからなるポリヒスチジンタグが好適に用いられる。タグ領域とヒトデルタタンパク質との間には、タグ領域を取り除くためのFactor Xaやトロンビン、エンテロキナーゼ、H64AズブチリシンTEVプロテアーゼ、IgAプロテアーゼ、GSTプロテアーゼ3Cなどの部位特異的プロテアーゼの認識配列が存在していても良く、またヒドロキシルアミンやシアノゲンブロマイドなどの化合物による切断部位が存在していても良い。生理活性を持つ他の可溶性タンパク質をタグとして用いた場合、細胞への影響を抑えるため、タグ領域を取り除くことが好ましい。大腸菌における遺伝子組換えタンパク質の生産と回収に関しては、Per Jonassonら著、「Biotechnology and Applied Biochemistry」、2002年、p91−p105に詳細な記載が有る。
また、本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は、幹細胞未分化維持活性が失われない限りにおいて、1から複数個のアミノ酸変異を有していても良い。アミノ酸変異とは生物種や品種、個体の違いによる遺伝子の変異に起因するものや、人為的に遺伝子工学的手法もしくは遺伝子変異手法により引き起こされた変異であっても良い。人為的なアミノ酸変異導入法として、例えば、ランダム変異導入法、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて行うことができる。例えば、亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換する方法や、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確性を低くする方法、部位特異的変異導入のための市販されている各種キットを用いることもできる。例えば、Sambrook等編「Molecular Cloning−A Laboratory Manual、第2版」Cold Spring Harbor Laboratory、1989、村松正實編「ラボマニュアル遺伝子工学」丸善株式会社、1988、エールリッヒ、HE.編「PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用」ストックトンプレス、1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができる。
本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は、他の可溶性タンパク質と融合タンパク質を形成していないことが好ましい。ここでいう他の可溶性タンパク質とは、本発明の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質以外の生理活性を持つ可溶性のタンパク質を示し、酵素活性を持つある種のタグポリペプチドも含む。他の可溶性タンパク質のもつ生理活性や酵素活性は、細胞の未分化維持や増殖に悪影響を与える可能性があるため、他の可溶性タンパク質との融合タンパク質は好ましくない。精製を簡便にする目的で融合させたタグ領域は、特異的プロテアーゼによる切断などの種々の方法により取り除かれることが望ましい。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
実施例1 ヒトデルタタンパク質(Delta−1)遺伝子の取得
ヒト胎盤由来cDNAライブラリー(Clontech社製)1μlをテンプレートとし、プライマー2(配列番号2)およびプライマー3(配列番号3)を用い、LA−Taq DNA polymerase(Takara社製)により、シグナル配列とDSLドメイン、8つのEGF様リピート、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインを含むヒトデルタタンパク質遺伝子のcDNA全長(GeneBank登録番号AF003522の塩基番号323〜2494番目)を増幅した。増幅産物をpT7Blue vector(Novagen社製)を用いて大腸菌E,coli JM109にクローニングした。塩基配列を決定し、変異がないことを確認した。
ヒト胎盤由来cDNAライブラリー(Clontech社製)1μlをテンプレートとし、プライマー2(配列番号2)およびプライマー3(配列番号3)を用い、LA−Taq DNA polymerase(Takara社製)により、シグナル配列とDSLドメイン、8つのEGF様リピート、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインを含むヒトデルタタンパク質遺伝子のcDNA全長(GeneBank登録番号AF003522の塩基番号323〜2494番目)を増幅した。増幅産物をpT7Blue vector(Novagen社製)を用いて大腸菌E,coli JM109にクローニングした。塩基配列を決定し、変異がないことを確認した。
実施例2 種々のヒトデルタタンパク質遺伝子のクローニング
実施例1記載のクローンからplasmidを回収し、1pgをテンプレートとしたPCRを行い、プライマー4(配列番号4)およびプライマー5(配列番号5)を用いてヒトデルタタンパク質遺伝子のcDNAの一部(GeneBank登録番号AF003522の塩基番号386〜1084番目:以下D1E)を増幅し、クローニングした。
実施例1記載のクローンからplasmidを回収し、1pgをテンプレートとしたPCRを行い、プライマー4(配列番号4)およびプライマー5(配列番号5)を用いてヒトデルタタンパク質遺伝子のcDNAの一部(GeneBank登録番号AF003522の塩基番号386〜1084番目:以下D1E)を増幅し、クローニングした。
同様にプライマー4(配列番号4)およびプライマー6(配列番号6)を用いてヒトデルタタンパク質遺伝子のcDNAの一部(GeneBank登録番号AF003522の塩基番号386〜1297番目:以下D3E)を増幅し、クローニングした。
同様にプライマー4(配列番号4)およびプライマー7(配列番号7)を用いてヒトデルタタンパク質遺伝子のcDNAの一部(GeneBank登録番号AF003522の塩基番号386〜1528番目:以下D5E)を増幅し、クローニングした。
同様にプライマー4(配列番号4)およびプライマー8(配列番号8)を用いてヒトデルタタンパク質遺伝子のcDNAの一部(GeneBank登録番号AF003522の塩基番号386〜1957番目:以下D8E)を増幅し、クローニングした。
実施例3 種々のヒトデルタタンパク質発現クローンの作製
実施例2記載の各クローンからDSLドメインとEGF様リピート配列をコードする領域を含むDNA断片をNdeIとHindIIIによって切断し、pET30a vector(Novagen社製)のNdeIおよびHindIII切断断片に連結し、大腸菌JM109株に形質転換し、カナマイシン存在下で形質転換体を選抜した。各クローンの配列を決定し、PCRによるエラーがないことを確認した。各クローンからplasmidを単離し、大腸菌E,coli BL21(DE3)株に形質転換した。
実施例2記載の各クローンからDSLドメインとEGF様リピート配列をコードする領域を含むDNA断片をNdeIとHindIIIによって切断し、pET30a vector(Novagen社製)のNdeIおよびHindIII切断断片に連結し、大腸菌JM109株に形質転換し、カナマイシン存在下で形質転換体を選抜した。各クローンの配列を決定し、PCRによるエラーがないことを確認した。各クローンからplasmidを単離し、大腸菌E,coli BL21(DE3)株に形質転換した。
実施例4 種々のヒトデルタタンパク質の発現
D1E、D3E、D5E、D8E各クローンをカナマイシン添加したL−Broth(LB培地)10mlにて37℃前培養した。前培養液をカナマイシン添加した1L LB培地に加え37℃にて2〜3時間培養した。IPTGを終濃度1mMになるように添加し、さらに37℃にて5hr培養した。3000rpm 5min 4℃遠心分離し菌体を沈澱させ、沈澱した菌体を60mlの50mM Tris−HCl pH8.0にて洗浄し、再び遠心分離し菌体を沈澱させた。菌体に60mlの50mM Tris−HCl pH8.0溶液を加え懸濁後、氷中にて冷却しながらデジタルソニケーター(BRANSON社製)を用い、添付のプロトコルにしたがって菌体を破砕した。破砕液トータル、9000rpm 15min 4℃遠心分離後の上清(可溶性画分)、沈澱(不溶性画分)を分画し、D1Eタンパク質、D3Eタンパク質、D5Eタンパク質、およびD8Eタンパク質の発現と局在をSDS−PAGEにより調べた。これらD1Eタンパク質、D3Eタンパク質、D5Eタンパク質の発現結果と局在をSDS−PAGEにより分離し、CBB染色により調べた結果を図1、図2に示す。全ての遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は細胞内不溶性画分に存在していた。
D1E、D3E、D5E、D8E各クローンをカナマイシン添加したL−Broth(LB培地)10mlにて37℃前培養した。前培養液をカナマイシン添加した1L LB培地に加え37℃にて2〜3時間培養した。IPTGを終濃度1mMになるように添加し、さらに37℃にて5hr培養した。3000rpm 5min 4℃遠心分離し菌体を沈澱させ、沈澱した菌体を60mlの50mM Tris−HCl pH8.0にて洗浄し、再び遠心分離し菌体を沈澱させた。菌体に60mlの50mM Tris−HCl pH8.0溶液を加え懸濁後、氷中にて冷却しながらデジタルソニケーター(BRANSON社製)を用い、添付のプロトコルにしたがって菌体を破砕した。破砕液トータル、9000rpm 15min 4℃遠心分離後の上清(可溶性画分)、沈澱(不溶性画分)を分画し、D1Eタンパク質、D3Eタンパク質、D5Eタンパク質、およびD8Eタンパク質の発現と局在をSDS−PAGEにより調べた。これらD1Eタンパク質、D3Eタンパク質、D5Eタンパク質の発現結果と局在をSDS−PAGEにより分離し、CBB染色により調べた結果を図1、図2に示す。全ての遺伝子組換えヒトデルタタンパク質は細胞内不溶性画分に存在していた。
実施例5 種々のヒトデルタタンパク質の精製
実施例4記載の方法により破砕後遠心分離し得られたD3Eタンパク質、D5Eタンパク質の不溶性画分を60mlの50mM Tris−HCl pH8.0にて洗浄し、再び遠心分離し不溶性画分を沈澱させた。不溶性画分に80mlの6Mグアニジン塩酸塩/1mM DTT/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液を加え、20℃2時間振盪し、ヒトデルタタンパク質を可溶化させた。9000rpm 15min 20℃遠心分離後の上清を6Mグアニジン塩酸塩/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で平衡化したニッケルセファロースカラム(Amersham Biosciences社製)10ml容量に通過させ、ポリヒスチジンタグ付き遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を吸着させた。カラムを100mlの6Mグアニジン塩酸塩/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で洗浄後、さらに100mlの50mMイミダゾール/6Mグアニジン塩酸塩/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で洗浄した。50mlの500mMイミダゾール/6Mグアニジン塩酸塩/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で溶出し、ヒトデルタタンパク質を含む画分を回収した。遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を含む画分2.5mlを1mM DTT/1mM EDTA/20mM NaBH4(pH9.2)溶液で平衡化したSepharose G−25カラム(Amersham Biosciences社製)に吸着させ、3.5ml遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を含む画分を回収した。その後16時間37℃でインキュベートした後、透析を行い1mM EDTA/20mM NaBH4(pH9.2)溶液に置換した。得られた遺伝子組換えヒトデルタタンパク質溶液のタンパク濃度をCoomassie Plus− The Better Bradford Assay Kit(PIERCE社製)を用いて測定した結果、7.23mg (361.5μg/ml、20ml)であった。精製した水溶性のD5Eタンパク質、D8Eタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、CBB染色により調べたの電気泳動結果を図3に示す。
実施例4記載の方法により破砕後遠心分離し得られたD3Eタンパク質、D5Eタンパク質の不溶性画分を60mlの50mM Tris−HCl pH8.0にて洗浄し、再び遠心分離し不溶性画分を沈澱させた。不溶性画分に80mlの6Mグアニジン塩酸塩/1mM DTT/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液を加え、20℃2時間振盪し、ヒトデルタタンパク質を可溶化させた。9000rpm 15min 20℃遠心分離後の上清を6Mグアニジン塩酸塩/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で平衡化したニッケルセファロースカラム(Amersham Biosciences社製)10ml容量に通過させ、ポリヒスチジンタグ付き遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を吸着させた。カラムを100mlの6Mグアニジン塩酸塩/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で洗浄後、さらに100mlの50mMイミダゾール/6Mグアニジン塩酸塩/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で洗浄した。50mlの500mMイミダゾール/6Mグアニジン塩酸塩/50mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で溶出し、ヒトデルタタンパク質を含む画分を回収した。遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を含む画分2.5mlを1mM DTT/1mM EDTA/20mM NaBH4(pH9.2)溶液で平衡化したSepharose G−25カラム(Amersham Biosciences社製)に吸着させ、3.5ml遺伝子組換えヒトデルタタンパク質を含む画分を回収した。その後16時間37℃でインキュベートした後、透析を行い1mM EDTA/20mM NaBH4(pH9.2)溶液に置換した。得られた遺伝子組換えヒトデルタタンパク質溶液のタンパク濃度をCoomassie Plus− The Better Bradford Assay Kit(PIERCE社製)を用いて測定した結果、7.23mg (361.5μg/ml、20ml)であった。精製した水溶性のD5Eタンパク質、D8Eタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、CBB染色により調べたの電気泳動結果を図3に示す。
実施例6 種々の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の幹細胞未分化維持活性の測定1
96ウェルプレートに種々の濃度のD5Eタンパク質溶液100μlを添加して37℃、2時間インキュベートした。PBS(−) 100μlで3回洗浄後、10%FCSを含むα−MEM培地に懸濁させた血球系幹細胞1×104個ずつ播種して37℃、CO2存在下で1週間培養を行った。D5Eタンパク質を固相化していない96ウェルプレートに、前述の血球系幹細胞を再播種し、増殖用サイトカイン(IL−3: 10ng/ml, c−kit ligand: 20ng/ml, GM−CSF 1000U/ml, IL−1 beta 100U/ml, IL−11 100ng/ml, IL−6 20ng/ml, FLT3 ligand 100ng/ml, G−CSF 1000U/ml, Epo 10U/ml)を加えて培養を行った。再播種してから1週間後、トリチウム取り込み試験法を用いて細胞数を測定した。その結果を図4に示す。縦軸はトリチウムチミジンの取り込み量を、横軸は添加したD5Eタンパク質量を示す。
96ウェルプレートに種々の濃度のD5Eタンパク質溶液100μlを添加して37℃、2時間インキュベートした。PBS(−) 100μlで3回洗浄後、10%FCSを含むα−MEM培地に懸濁させた血球系幹細胞1×104個ずつ播種して37℃、CO2存在下で1週間培養を行った。D5Eタンパク質を固相化していない96ウェルプレートに、前述の血球系幹細胞を再播種し、増殖用サイトカイン(IL−3: 10ng/ml, c−kit ligand: 20ng/ml, GM−CSF 1000U/ml, IL−1 beta 100U/ml, IL−11 100ng/ml, IL−6 20ng/ml, FLT3 ligand 100ng/ml, G−CSF 1000U/ml, Epo 10U/ml)を加えて培養を行った。再播種してから1週間後、トリチウム取り込み試験法を用いて細胞数を測定した。その結果を図4に示す。縦軸はトリチウムチミジンの取り込み量を、横軸は添加したD5Eタンパク質量を示す。
実施例7 種々の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質の幹細胞未分化維持活性の測定2
96ウェルプレートにPenta−His抗体(QIAGEN社製)20μg/ml 50μlずつ加えて4℃で16時間インキュベート後、1%BSA/PBS 100μlで3回洗浄、1% BSA/PBS 100μlを加えて37℃1時間インキュベートした。1%BSA/NaBH4 (pH9.2) 100μlで3回洗浄後、D5Eタンパク質溶液を0.1、1、10μg/ml 50μl加えて37℃ 2時間インキュベートした。1%BSA/PBS 100μlで3回洗浄後、マウスの筋芽細胞であるC2C12細胞を1×105個ずつ播種して37℃、CO2存在下で培養を行った。播種してから3時間後細胞を回収した。回収した細胞よりTRIzol Reagent(INVITROGEN社製)を用いてRNAを回収し、逆転写反応試薬(TaKaRa社製)を用いてRT−PCRを行った。得られたcDNAを鋳型としてSYBR Premix Ex taq (TaKaRa社製)を用い、プライマー9(配列表9),10(配列表10)を用いてHES−1のreal−time PCR(Mx3000P、STRATAGENE社製)を行った。内部標準としてGAPDHを用いた。real−time PCRの結果を図5に示す。縦軸はHES1発現量の相対値を、横軸はそれぞれ1: Control(何も固相化していない)、2:His抗体のみ固相化、3:His抗体+D5Eタンパク質0.1μg/ml固相化、4: His抗体+D5Eタンパク質1μg/ml固相化、5: His抗体+D5Eタンパク質10μg/ml固相化を示す。
96ウェルプレートにPenta−His抗体(QIAGEN社製)20μg/ml 50μlずつ加えて4℃で16時間インキュベート後、1%BSA/PBS 100μlで3回洗浄、1% BSA/PBS 100μlを加えて37℃1時間インキュベートした。1%BSA/NaBH4 (pH9.2) 100μlで3回洗浄後、D5Eタンパク質溶液を0.1、1、10μg/ml 50μl加えて37℃ 2時間インキュベートした。1%BSA/PBS 100μlで3回洗浄後、マウスの筋芽細胞であるC2C12細胞を1×105個ずつ播種して37℃、CO2存在下で培養を行った。播種してから3時間後細胞を回収した。回収した細胞よりTRIzol Reagent(INVITROGEN社製)を用いてRNAを回収し、逆転写反応試薬(TaKaRa社製)を用いてRT−PCRを行った。得られたcDNAを鋳型としてSYBR Premix Ex taq (TaKaRa社製)を用い、プライマー9(配列表9),10(配列表10)を用いてHES−1のreal−time PCR(Mx3000P、STRATAGENE社製)を行った。内部標準としてGAPDHを用いた。real−time PCRの結果を図5に示す。縦軸はHES1発現量の相対値を、横軸はそれぞれ1: Control(何も固相化していない)、2:His抗体のみ固相化、3:His抗体+D5Eタンパク質0.1μg/ml固相化、4: His抗体+D5Eタンパク質1μg/ml固相化、5: His抗体+D5Eタンパク質10μg/ml固相化を示す。
Claims (9)
- 原核生物細胞により細胞内不溶性画分として発現させた後、変性剤および還元剤を用いて可溶化する工程を含む方法により製造された、DSLドメインとEGF様リピートをそれぞれ少なくとも1つ有する遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
- 変性剤および還元剤を用いて可溶化する工程が、変性剤および還元剤を用いて可溶化せしめ、変性剤を除去した後に還元剤を除去する工程であることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
- 還元剤を除去する工程を、ヒトデルタタンパク質の等電点からpHが1以上離れた溶液中で行うことを特徴とする請求項2に記載の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
- ヒトデルタタンパク質細胞外ドメインであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
- EGF様リピート数が1〜8であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
- 原核生物細胞が大腸菌であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
- 水溶性であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
- 他の可溶性タンパク質と融合タンパク質を形成していないことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
- 幹細胞未分化維持活性を持つことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の遺伝子組換えヒトデルタタンパク質。
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---|---|---|---|
JP2005217147A JP2007031343A (ja) | 2005-07-27 | 2005-07-27 | 遺伝子組換えヒトデルタタンパク質 |
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