JP2007031252A - ホウ化物単結晶及びその製造方法並びにそれを用いた半導体成長用基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 二ホウ化ジルコニウムと、所定の固溶度のV族二ホウ化物とからなる、固溶体単結晶である。V族二ホウ化物が二ホウ化ニオブである場合は、固溶度が5モル%から12モル%の範囲で、また、V族二ホウ化物が二ホウ化タンタルである場合は、固溶度が5モル%から9モル%の範囲で、二ホウ化ジルコニウム単結晶と同等の格子定数と熱膨張係数を有する固溶体単結晶が得られる。
【選択図】 図2
Description
結晶欠陥の少ないバルク形状の窒化ガリウム単結晶を製造することは、現状では極めて困難であるため、窒化ガリウム系半導体は、現在、主にサファイヤ基板上に窒化ガリウム系半導体をエピタキシャル成長することによって製造している。
しかしながら、図2に示すように、窒化ガリウム(GaN)とサファイヤ(Al2 O)とでは、格子定数や熱膨張係数が大きく異なり、その結果、形成される窒化ガリウム系半導体層は多くの欠陥を含有しているという課題がある。この課題を解決する基板として、図2に示すように、窒化ガリウム系半導体と格子定数が極めて近い二ホウ化ジルコニウム(ZrB2 )単結晶が見出され、二ホウ化ジルコニウム単結晶基板を窒化ガリウム系半導体成長用基板とすることにより、良質な窒化ガリウム系半導体の形成が可能となった(特許文献1参照)。
この課題を解決するために、原料棒中のホウ素濃度を大きくして、融帯の組成比を化学量論比組成に保持することにより、一致融解(congruent melt)の状態から成長する方法が提案された(特許文献2参照)。
くなるという課題がある。亜粒界が存在する単結晶を半導体成長用基板として窒化ガリウム系半導体を成長した場合には、亜粒界から転移が導入され、窒化ガリウム系半導体の優れた性能を実現することができない。
また本発明の他の目的は、その製造方法を提供することにある。さらに本発明の他の目的は、窒化ガリウム系半導体成長用基板として最適な、その二ホウ化物単結晶を用いた半導体成長用基板を提供することにある。
本発明の二ホウ化物単結晶は、二ホウ化ジルコニウムと、所定の固溶度のV族二ホウ化物とからなる、固溶体単結晶であることを特徴とする。この二ホウ化物固溶体単結晶は、二ホウ化ジルコニウム単結晶よりも溶融温度が低く、且つ、二ホウ化ジルコニウム単結晶と同等な格子定数と熱膨張係数を有する。
この方法によれば、二ホウ化ジルコニウム単結晶と同等な格子定数と熱膨張係数を有する、二ホウ化ジルコニウムとV族二ホウ化物とからなる固溶体単結晶を成長することができる。二ホウ化ジルコニウムとV族二ホウ化物とからなる固溶体単結晶は二ホウ化ジルコニウム単結晶よりも融点が低いので、浮遊帯域溶融法により成長する際の融帯の形成温度が低くて済み、従って、二ホウ化ジルコニウム単結晶よりも低コストで製造できる。また、V族二ホウ化物が添加されることで、融帯中のホウ素の蒸発が抑制され、その結果、金属ジルコニウムの塊からなるインクリュージョンの発生が抑制され、結晶欠陥の少ない結晶が製造できる。また、溶融温度が低いので、亜粒界が生じにくく、結晶欠陥の少ない結晶が製造できる。
初めに、本発明の二ホウ化物単結晶の成長に用いた浮遊帯域溶融結晶成長装置を説明する。図1は、浮遊帯域溶融結晶成長装置の構成を示す図である。浮遊帯域溶融結晶成長装置1は、図示しないガス供給系からアルゴンやヘリウム等の希ガスを導入し、所定のガス雰囲気に保つ容器2と、容器2内で、種棒3及び原料棒4をそれぞれ保持するとともに、回転及び上下移動可能な上部シャフト5,下部シャフト6と、シャフト5,6を回転及び上下させる駆動部7,8と、原料棒4の融帯部9を取り巻く高周波誘導加熱用の高周波コイル10と、シャフト5,6の回転及び上下移動、高周波コイル10に印加する電力等を制御する図示しないコンピュータとから構成されている。
結晶成長を行うには、下部シャフト6に保持された種棒3の先端と、上部シャフト5に保持された原料棒4の先端とが、融帯部9に配置されるように設定し、高周波コイル10に高周波電力を印加して融帯部9を誘導加熱により溶融させると共に、シャフト5,6の上下移動を制御して所定の成長速度を設定し、且つ、維持して行う。保持した種棒3と原料棒4の両先端を加熱溶融して接触させた後に融帯部9を形成し、シャフト5,6をゆっくり下方へ移動して融帯部9を徐々に原料棒の上部側に移動すると、種棒3側に単結晶11が成長する。
まず、原料の二ホウ化物粉末(ZrB2 )とV族二ホウ化物粉末とをよく混合した後、結合剤として少量の樟脳を加え、ラバープレス(2000kg/cm2 )により圧粉棒を作製する。この圧粉棒を真空中又は不活性ガス中で千数百℃に加熱し、原料焼結棒を作製する。図1に示した浮遊帯域溶融結晶成長装置1において、得られた原料焼結棒4を上部シャフト5に取り付け、下部シャフト6に種結晶(または初期融帯形成用の焼結棒)3を取り付ける。つぎに、数気圧の不活性ガスを容器2に充填した後、高周波コイル10に高周波電力を印加して原料焼結棒4の下端を誘導加熱して溶融させ、融帯9を形成し、シャフト5,6をゆっくりと下方に移動させて単結晶11を成長する。このとき、原料焼結棒4の密度が低いので、原料焼結棒4の下降速度を単結晶11の下降速度より大きくして、融帯9の容積を大きく保つ。雰囲気ガスは、数気圧のアルゴン又はヘリウムなどの不活性ガスを用い、ホウ素の蒸発を抑制すると共に、高周波コイル10で発生する放電を防止する。
mのゴム袋に詰め円柱形とした。これに2000kg/cm2 の静水圧を加えることにより圧粉棒を得た。この圧粉棒を真空中、1800℃で加熱し、直径1cm、長さ12cm程度の焼結棒を得た。密度は単結晶の密度の約55%であった。
この焼結棒を図1に示した浮遊帯域溶融結晶成長装置1の上部シャフト5に固定し、下部シャフト6にはZrB2 焼結棒を固定した。
容器2に6気圧のアルゴンを充填した後、高周波誘導加熱により焼結棒下端部を溶かし初期融帯を形成し、1.5cm/hの速度で4 時間かけて下方に移動させ、全長6cm、直径0.9cmの試料を得た。
結晶成長の際、融帯を形成するために必要な高周波電力はNbB2 の添加量が多いほど減少し、10モル%添加した試料では、NbB2 を添加しない場合に比較して、10%低下した。このことは、NbB2 を添加することによって融点が下がることを示している。なお、溶融時の温度は、融帯が高周波コイルに隠されているために放射温度計での測定が困難であり、測定していない。
NbB2 の添加量が10モル%の試料におけるa軸の格子定数は、a=0.316nmである。
図3はNbB2 を10モル%添加した試料の組成を示す図であり、左欄は、それぞれの成分元素の存在量を重量%で示し、右欄はモル%で示している。図から、原料棒と結晶におけるNb組成がほぼ同じであることから、蒸発によるNbの組成変化がなく、仕込み組成と同じNb成分量の結晶が得られることがわかる。また、NbB2 を添加することにより、融帯組成が定比組成に近づいていることが、図3における参考例からわかる。すなわち、融帯組成が成長する結晶組成との差が小さくなることで、ZrB2 の単結晶育成で課題であったインクリュージョンの生成が抑制されることを示している。
このことから、ZrB2 にNbB2 を添加すると、融点が下がるばかりでなく、インクリュージョン及び亜粒界といった結晶欠陥も生じにくくなることがわかる。
を得た。密度は単結晶の密度の約55%であった。
この焼結棒を図1に示した浮遊帯域溶融結晶成長装置1の上部シャフト5に固定し、下部シャフト6にはZrB2 焼結棒を固定した。
容器2に6気圧のアルゴンを充填した後、高周波誘導加熱により焼結棒下端部を溶かし初期融帯を形成し、1.5cm/hの速度で4 時間かけて下方に移動させ、全長6cm、直径0.9cmの試料を得た。
結晶成長の際に、高周波誘導加熱により融帯を形成するために必要な高周波電力はTaB2 の添加量に応じて減少し、8モル%添加した試料では、TaB2 を添加しない場合に比較して、7%低下した。このことは、TaB2 を添加することによって融点が下がることを示している。なお、溶融時の温度は、融帯が高周波コイルに隠されてしまうため放射温度計での測定が困難であり、測定していない。
TaB2 の添加量が8モル%の試料におけるa軸の格子定数はa=0.3162nmである。
図4はTaB2 を8モル%添加した試料の組成を示す図であり、左欄は、それぞれの成分元素の存在量を重量%で示し、右欄はモル%で示している。図から、原料棒と結晶におけるTa組成がほぼ同じであることから、蒸発によるTaの組成変化がなく、仕込み組成と同じTa成分量の結晶が得られることがわかる。また、TaB2 を添加することにより、融帯組成がほぼ定比組成になったことがわかる。すなわち、融帯組成が成長する結晶組成に近づくことで、ZrB2 の単結晶育成で課題であったインクリュージョンの生成が抑制されることを示している。
このことから、ZrB2 にTaB2 を添加すると、融点が下がるばかりでなく、インクリュージョン及び亜粒界といった結晶欠陥も生じにくくなることがわかる。
実施例1で作製した、ZrB2 に10モル%のNbB2 を添加して作製した単結晶から(0001)面を主面とする基板を切り出し、この(0001)面を鏡面研磨して半導体成長用基板とし、プラズマ補助分子線エピタキシー装置を用いてこの半導体成長用基板上にGaN膜を成膜した。プラズマ補助分子線エピタキシー装置に上記半導体成長用基板を配置し、真空中加熱処理により基板表面を清浄化した後、基板温度を630℃に保ってG
a分子線および活性窒素を試料表面に60分間照射して成膜した。
成膜中のRHEEDパターンは基板のRHEEDパターンとほとんど変わらなかったが、このことは、成膜中には、基板と格子定数がほとんど同じGaN膜がエピタキシャル成長していることを示しており、結果として、この半導体成長用基板の面内格子定数が極めてGaNの面内格子定数に近く、且つ、単結晶であることを示している。
また、成膜が完了し室温まで冷却した後に、GaNの表面に特有な3×3の周期を持つ表面再構成構造が観察された。一般に、表面再構成構造は膜表面が広い面積に亘って単結晶である場合にのみ現れるので、成膜したGaNの(0001)面は広い面積に亘って単結晶であることを示しており、このことは、この半導体成長用基板の面内格子定数が極めてGaNの面内格子定数に近く、且つ、単結晶であることを示している。エピタキシーの方位関係は、
(0001)GaN//(0001)Zr0.9 Nb0.1 B2 かつ、
<10−10>GaN//<10−10>Zr0.9 Nb0.1 B2 である。
なお、結晶の中のある面を示す面指数は(hkl)と記載するのが通常である。ある面が結晶軸と原点に関し負の側で交わるとき、その指数は負号を指数の上につけるが、本明細書においては便宜上その指数の前に負号の「−」を付けた。
(a)においては、ZrとNbとBのオージェ電子スペクトルが観測されることから、この基板がZrとNbとBを含有していることがわかる。(b)においては、GaとNのオージェスペクトルのみが観測されることから、この膜はGaN膜であることが確認できた。また、膜の厚さはラザフォード後方散乱(RBS)法により測定した結果、21nmであった。
実施例2で作製した、ZrB2 に8モル%のTaB2 を添加して作製した単結晶から(0001)面を主面とする基板を切り出し、この(0001)面を鏡面研磨して半導体成長用基板とし、プラズマ補助分子線エピタキシー装置を用いてこの半導体成長用基板上にGaN膜を成膜した。プラズマ補助分子線エピタキシー装置に上記半導体成長用基板を配置し、真空中加熱処理により基板表面を清浄化した後、基板温度を630℃に保ってGa分子線および活性窒素を試料表面に60分間照射して成膜した。
成膜中のRHEEDパターンは基板のRHEEDパターンとほとんど変わらなかったが、このことは、成膜中には、基板と格子定数がほとんど同じGaN膜がエピタキシャル成長していることを示しており、結果として、この半導体成長用基板の面内格子定数が極めてGaNの面内格子定数に近く、且つ、単結晶であることを示している。エピタキシーの方位関係は、
(0001)GaN//(0001)Zr0.92Ta0.08B2 、かつ、
<10−10>GaN//<10−10>Zr0.92Ta0.08B2
である。成膜が完了し室温まで冷却した後には、GaNの表面再構成構造が観察されなかった。
(a)においては、ZrとTaとBのオージェスペクトルが観測されることから、この基板がZrとTaとBを含有していることがわかる。(b)においては、GaとNのオージェ電子スペクトルのみが観測されることから、この膜はGaN膜であることが確認できた。また、膜の厚さはラザフォード後方散乱(RBS)法により測定した結果、11.6nmであった。
V族二ホウ化物であるNbB2 またはTaB2 を固溶させた試料は、それぞれ、組成領域全域において格子定数がベガード則に従い変化し、一見全域固溶するように見られるが、組成比が10モル%を越えると,回折ピークの半値幅が大きくなり、このことから、NbB2 及びTaB2 の固溶限界は10モル%程度であることがわかった。また、アーク溶融後の冷却速度が遅い程半値幅が大きくなることから,固溶限界以上の組成比では、高温において完全固溶していたものが、冷却過程において分離することが分かる。
VB2 またはCrB2 を固溶させた試料は、組成比が10モル%以上になると、VB2 とCrB2 にそれぞれ固有な回折ピークが現れることから、この組成範囲では、VB2 及びCrB2 はZrB2 と共晶(eutectic)関係にあることがわかった。この共存状態に於けるZrB2 の格子定数から、VB2 とCrB2 がそれぞれ3モル%程度以下と1モル%程度以下の固溶範囲と見積もられ、非常に小さいことが判明した。その結果を図7に示す。
図7は、ZrB2 へのV族二ホウ化物及びV族二ホウ化物の固溶度を示す図であり、これらの二ホウ化物の格子定数及び融点も示している。図から、二ホウ化物のZrB2 への固溶度は格子定数がZrB2 の格子定数に近いほど固溶度が大きいことを示している。
以上の結果より、ZrB2 に固溶する組成範囲は、図7が示すように、ZrB2 との格子定数の差が大きくなるほど小さくなることが分かる。従って、NbB2 およびTaB2 がZrB2 に最も多く(10%程度)固溶することが判明した。よって、本実験に従って、本発明に於けるZrB2 への添加物質をNbB2 とTaB2 に決定し、結晶育成を行ったものである。
また本発明の二ホウ化物単結晶の製造方法によれば、高品質の二ホウ化物単結晶を低コストで製造できるので、二ホウ化物単結晶の製造に用いれば極めて有用である。
さらに、本発明の二ホウ化物単結晶を用いた半導体成長用基板は、格子定数及び熱膨張係数が、窒化ガリウム系半導体と極めて類似しているので、窒化ガリウム系半導体成長用基板として用いれば極めて有用である。
2 容器
3 種棒
4 原料棒
5 上部シャフト
6 下部シャフト
7 駆動部
8 駆動部
9 融帯
10 高周波コイル
11 結晶
Claims (8)
- 二ホウ化ジルコニウムと所定の固溶度のV族二ホウ化物とからなる、固溶体単結晶であることを特徴とする、二ホウ化物単結晶。
- 前記V族二ホウ化物は二ホウ化ニオブであり、前記所定の固溶度が5モル%から12モル%であることを特徴とする、請求項1に記載の二ホウ化物単結晶。
- 前記V族二ホウ化物は二ホウ化タンタルであり、前記所定の固溶度が5モル%から9モル%であることを特徴とする、請求項1に記載の二ホウ化物単結晶。
- 二ホウ化ジルコニウム粉末とV族二ホウ化物粉末とを所定の混合比で混合し、静水圧を印加して圧粉棒を形成する工程と、
この圧粉棒から焼結棒を形成する工程と、
この焼結棒を、高圧希ガス中で、二ホウ化ジルコニウムの融点より低い温度で、浮遊帯域溶融法により、二ホウ化ジルコニウムとV族二ホウ化物とからなる固溶体単結晶を成長することを特徴とする、二ホウ化物単結晶の製造方法。 - 前記V族二ホウ化物は二ホウ化ニオブであり、前記所定の混合比は5モル%から12モル%の範囲であることを特徴とする、請求項4に記載の二ホウ化物単結晶の製造方法。
- 前記V族二ホウ化物は二ホウ化タンタルであり、前記所定の混合比は5モル%から9モル%の範囲であることを特徴とする、請求項4に記載の二ホウ化物単結晶の製造方法。
- 請求項1〜3の何れかに記載の二ホウ化物単結晶から成ることを特徴とする、半導体成長用基板。
- 請求項4〜6の何れかに記載の二ホウ化物単結晶の製造方法により製造した二ホウ化物単結晶から成ることを特徴とする、半導体成長用基板。
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