JP2007031178A - CdTe系酸化物薄膜及びその形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 透明導電膜や導電性薄膜等に利用することができる新規なアモルファス状又はペロブスカイト型構造のCdTe系酸化物薄膜及びその形成方法を提供する。
【解決手段】 アモルファス状又はペロブスカイト型構造の新規なCd3TeO6薄膜により、上記課題を解決した。この酸化物薄膜において、Cd3TeO6薄膜の金属原子の一部が遷移金属原子又は磁性原子で置換されたものであってもよいし、Cd3TeO6薄膜にLa、Y、In及びBiの群から選ばれる1種又は2種以上の原子をドーピングされたものであってもよい。この酸化物薄膜は、RFマグネトロンスパッタリング法又は類似のスパッタリング法により形成することが好ましい。
【解決手段】 アモルファス状又はペロブスカイト型構造の新規なCd3TeO6薄膜により、上記課題を解決した。この酸化物薄膜において、Cd3TeO6薄膜の金属原子の一部が遷移金属原子又は磁性原子で置換されたものであってもよいし、Cd3TeO6薄膜にLa、Y、In及びBiの群から選ばれる1種又は2種以上の原子をドーピングされたものであってもよい。この酸化物薄膜は、RFマグネトロンスパッタリング法又は類似のスパッタリング法により形成することが好ましい。
Description
本発明は、CdTe系酸化物薄膜及びその形成方法に関し、更に詳しくは、透明導電膜として又は導電性薄膜として利用することができる新規なアモルファス状又はペロブスカイト型構造のCdTe系酸化物薄膜及びその形成方法に関するものである。
一般式ABO3(A,B:陽イオン、O:酸素イオン)で代表されるペロブスカイト型構造を有する酸化物は興味深い特性が種々見出され、例えば圧電セラミックスとして利用されているBaTiO3系、Pb(Zr,Ti)O3系、PbTiO3系等の金属酸化物や、ヒーター材料として利用されているLaCrO3等の金属酸化物のように、従来から多方面で研究され、実用化されている。また、近年では、酸化物型燃料電池(SOFC)の酸素極材料としての利用や、巨大な磁気抵抗効果(CMR効果)を持つMR素子としての利用が研究されている。
こうしたペロブスカイト型酸化物は、AサイトやBサイトのイオン種により、また、異種原子のドーピング等により、結晶物性や電子物性が変化して様々な機能を発現させることができる。特に近年においては、電子デバイスや光学デバイスへの利用が期待されており、ペロブスカイト型構造を有する機能性酸化物薄膜の開発が期待されている。例えば、下記特許文献1、2には、高誘電率のSrTiO3薄膜やPbTiO3薄膜をRFスパッタリング等で成膜する方法が報告されている。また、下記特許文献3には、透明導電性薄膜としてのLaNiO3組成のペロブスカイト型酸化物薄膜を塗布・焼成により成膜する方法が報告されている。また、下記特許文献4には、透光性のセラミックバルク体を焼成により形成する方法が報告されている。
特開平7−74358号公報
特開平5−119362号公報
特開2000−226216号公報
特開2004−91271号公報
本発明者らは、秩序配列したペロブスカイト型酸化物(以下、秩序ペロブスカイト型酸化物という)であるCd3TeO6に着目して研究している過程で、このCd3TeO6のバルク体が透明性を有し、電気導電性を有することを見出し、さらに、Cdの部分的置換により大幅に電気導電性が上昇することを見出した。
本発明は,これらの研究成果をさらに発展させ、例えば透明導電膜として又は導電性薄膜として利用することができる新規なアモルファス状又はペロブスカイト型構造のCdTe系酸化物薄膜及びその形成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の酸化物薄膜は、アモルファス状又はペロブスカイト型構造のCd3TeO6薄膜であることを特徴とする。この発明のCd3TeO6薄膜によれば、アモルファス状又はペロブスカイト型構造のいずれであっても、良好な透明性と高い電気導電性を示すので、新たな透明導電膜として利用できる。
本発明の酸化物薄膜においては、前記Cd3TeO6薄膜の金属原子の一部が遷移金属原子又は磁性原子で置換されたものであってもよいし、前記Cd3TeO6薄膜にLa、Y、In及びBiの群から選ばれる1種又は2種以上の原子をドーピングされたものであってもよい。この発明によれば、Cd3TeO6薄膜の金属原子を他の原子で置換したり、他の原子をドーピングしたりすることにより、透明性と電気導電性をさらに向上させることができると共に、キャリア密度やホール移動度を高めることも可能であるので、新たな機能を有する酸化物薄膜として利用できる。
本発明の酸化物薄膜は、可視光領域での平均透過率が80%以上であることが好ましい。この発明によれば、高い透過率を有するので、透明導電薄膜として利用可能である。
こうした本発明の酸化物薄膜は、透明導電膜、熱電変換素子又はn型導電性薄膜として用いることができる。
上記目的を達成するための本発明の酸化物薄膜の形成方法は、RFマグネトロンスパッタリング法又は類似のスパッタリング法により、アモルファス状又はペロブスカイト型構造のCdTe系酸化物薄膜を形成することを特徴とする。この発明によれば、良好な透明性と高い電気導電性を示すCdTe系酸化物を薄膜として形成することができる。その結果、電子デバイスや光学デバイスへの応用が可能である。
本発明の酸化物薄膜の形成方法においては、プラズマイオンプロセスにより、前記CdTe系酸化物薄膜にLa、Y、In及びBiの群から選ばれる1種又は2種以上の原子をドーピングすることが好ましい。この発明によれば、Cd3TeO6薄膜に他の原子をドーピングすることにより、透明性と電気導電性をさらに向上させた酸化物薄膜を形成することができると共に、キャリア密度やホール移動度を高めた酸化物薄膜を形成することもできる。
本発明の酸化物薄膜の形成方法においては、前記ペロブスカイト型構造のCdTe系酸化物薄膜が、結晶化しない温度で成膜した後の熱処理によって、又は、結晶化する温度での成膜によって得られることを特徴とする。この発明によれば、例えばas-depo.の薄膜が結晶化する温度が300℃であれば、300℃未満の温度で成膜し、その後に300℃以上で熱処理することにより、ペロブスカイト型構造のCdTe系酸化物薄膜を形成することができる。また、300℃以上の温度で成膜することにより、直接、ペロブスカイト型酸化物薄膜を形成することができる。
本発明の酸化物薄膜によれば、良好な透明性と高い電気導電性を示す新たな透明導電膜として利用できる。また、原子を置換したりドーピングしたりすることにより、透明性と電気導電性をさらに向上させることができると共に、キャリア密度やホール移動度を高めることも可能となる。こうした本発明の酸化物薄膜は、透明導電膜、熱電変換素子又はn型導電性薄膜として用いることが可能となり、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、光電子デバイス等の透明電極等、種々の分野での応用が可能である。
本発明の酸化物薄膜の形成方法によれば、良好な透明性と高い電気導電性を示すCdTe系酸化物を薄膜として形成することができるので、電子デバイスや光学デバイスへの応用が可能であり、また、原子を置換したりドーピングしたりすることにより、透明性と電気導電性をさらに向上させた酸化物薄膜を形成することができると共に、キャリア密度やホール移動度を高めた酸化物薄膜を形成することもできる。
以下、本発明の酸化物薄膜及びその形成方法について説明する。
本発明の酸化物薄膜は、アモルファス状のCd3TeO6薄膜と、それを結晶化してペロブスカイト型構造としたCd3TeO6薄膜とを包含する。基本的な薄膜組成は、CdとTeが3:1のモル比となっている酸化物であればよく、その結晶構造は、非晶質(アモルファス状)であっても、多結晶であっても、単結晶であっても構わない。なお、ペロブスカイト型構造のCd3TeO6は、BサイトにCd2+とTe6+が1:1で秩序配列した構造を持つペロフスカイト型の酸化物である。
本発明の酸化物薄膜は、Cd3TeO6薄膜の金属原子の一部が遷移金属原子又は磁性原子で置換されたものであってもよい。遷移金属原子としては、例えば、Mn、Fe、Co、Ni及びCuの群から選ばれる1種又は2種以上の原子を挙げることができる。
また、本発明の酸化物薄膜は、La、Y、In及びBiの群から選ばれる1種又は2種以上の原子をドーピングされたものであってもよい。これらの原子をドーピングすることにより、透明性と電気導電性をさらに向上させることができると共に、キャリア密度やホール移動度を高めることもできる。
アモルファス状のCd3TeO6薄膜は、例えばRFマグネトロンスパッタリング等により、結晶化しない温度条件で成膜して得ることができる。また、ペロブスカイト型構造のCd3TeO6薄膜は、例えばRFマグネトロンスパッタリング等により、結晶化しない温度でアモルファス状のCd3TeO6薄膜を成膜した後の熱処理によって、又は、結晶化する温度での成膜によって得ることができる。例えばas-depo.の薄膜が結晶化する温度が仮に300℃であれば、300℃未満の温度で成膜し、その後に300℃以上で熱処理することにより、ペロブスカイト型構造のCd3TeO6薄膜を形成することができる。また、300℃以上の温度で成膜することにより、直接、ペロブスカイト型構造のCd3TeO6薄膜を形成することができる。こうして得られたCd3TeO6薄膜は電子配置から絶縁体であると考えられが、わずかな酸素欠損により電子キャリアを持ち、半導体として振る舞うことができる。
本発明の酸化物薄膜の成膜方法としては、RFマグネトロンスパッタリング法又は類似のスパッタリング法を好ましく適用できるが、同様の構造及び特性を有する薄膜を成膜することが可能な他の成膜方法を適用してもよい。また、La、Y、In及びBi等に例示される原子をドーピングする方法としては、ターゲット中にドーパントを含有させる方法等を挙げることができる。ドーパントの含有量は、例えば、ターゲット中の含有量を調整すること等により行うことができる。
以下、具体的な実験例を示して本発明の酸化物薄膜について詳細に説明する。
(実験例1)
成膜装置としてRFマグネトリオンスパッタリング装置を使用した。ターゲットは、CdO(純度99.99%)粉末とTeO2(純度99.9%)粉末を3:1のモル比で混合したものを用いた。純Arガス中、スパッタ圧力0.5Pa、印加電圧20W、スパッタ時間30分間、室温下でシリカガラス上に厚さ0.2μmの酸化物薄膜を堆積した。
成膜装置としてRFマグネトリオンスパッタリング装置を使用した。ターゲットは、CdO(純度99.99%)粉末とTeO2(純度99.9%)粉末を3:1のモル比で混合したものを用いた。純Arガス中、スパッタ圧力0.5Pa、印加電圧20W、スパッタ時間30分間、室温下でシリカガラス上に厚さ0.2μmの酸化物薄膜を堆積した。
得られた酸化物薄膜の厚さは原子間力顕微鏡により測定した。その後、得られた酸化物薄膜を空気中で300℃、500℃、700℃の各温度で熱処理を行った。熱処理前の相及び熱処理後の相の同定は、CuKα線を用い、印加電圧40kV、印加電流40mAの条件下でのX線回折(XRD)法により行った。化学組成は、X線光電子分光分析装置(XPS:Physical Electronics社製)を用い、1253.6eVのMgKα線で測定した。また、(結晶性)は反射電子回折(RHEED:日本電子社製、電子ビーム200keV)により観察し、表面粗さは原子間力顕微鏡(AFM:Digital Instruments社製、DI NanoScopeIIIa)により測定した。また、シート抵抗は4端子法により測定し、ホール効果は、5テスラまでの磁場を印加できる物理特性測定システム(Quantum Design社製)により測定し、光学透過率は、UV/VIS/NIRスペクトルメータ(日本分光社製)で測定した結果から得た。
図1は、Ar雰囲気下で作製した酸化物(Cd3TeO6)薄膜の熱処理温度によるX線回折パターンの変化を示すグラフである。図1に示したように、室温で堆積させた薄膜はピークを示さずアモルファス相であり、300℃以上で熱処理することにより結晶化した。この結果より、得られた酸化物薄膜のX線回折パターンはCd3TeO6のみの反射ピークを示し、Cd3TeO6の単相であることが分かった。また、ピーク幅は熱処理温度の増加に従って小さくなり、得られた酸化物薄膜の粒子サイズが熱処理温度の増加に従って大きくなることが分かった。また、AFM測定から、得られた酸化物薄膜の平均表面粗さは、熱処理温度の増加に従って約2.1nmから約4.3nmまで増加することが分かった。
図2は、各温度で熱処理した後のCd3TeO6薄膜の室温における電気抵抗率、キャリア密度及びホール移動度を示すグラフである。この結果より、得られたCd3TeO6薄膜の電気抵抗率は熱処理温度の増加に従って1.9×10−2Ωcm(500℃での値)まで減少したが、より高い温度(700℃)で熱処理することにより、電気抵抗率はわずかに増加した。また、Cd3TeO6薄膜のキャリア密度及びホール移動度は、熱処理温度の増加に従って増加した。なお、Cd3TeO6薄膜の電気抵抗率は、500℃での熱処理により最も低い値(1.9×10−2Ωcm)となり、500℃でのキャリア密度及びホール移動度は、それぞれ5.4×1019cm−3及び6.8cm2V−1s−1であった。
図3は、各温度で熱処理した後のCd3TeO6薄膜の可視光領域(400〜800nm)での光学透過率の測定結果である。この結果より、Cd3TeO6薄膜の光学透過率は熱処理温度に従って増加した。これは、薄膜表面の粒子サイズに起因している。このCd3TeO6薄膜においては、熱処理温度に伴う粒子サイズの増加により粒界が減少し、その結果、光の散乱が減少し、光学透過率は増加した。500℃以上での熱処理により、Cd3TeO6薄膜の光学透過率は、400〜800nmの範囲内でおよそ80%以上であり、その波長域での平均透過率は85%以上であった。
一方、上記Ar中で作製した薄膜と同様の方法で、Ar+25%O2雰囲気下で作製した薄膜についても上記同様の熱処理条件で電気抵抗率、光学透過率、ホール移動度及びキャリア濃度を測定した。その結果、電気抵抗率と光学透過率はAr中で作製した薄膜と同じ傾向を示した。また、ホール移動度は熱処理温度の増加に従って増加し、キャリア濃度も熱処理温度の増加に従って増加していることがわかった。
(実験例2)
InをドープしたCd3TeO6薄膜を形成した他は、実験例1と同様の方法により酸化物薄膜を形成した。成膜装置としてRFマグネトリオンスパッタリング装置を使用した。ターゲットは、CdO(純度99.99%)粉末とTeO2(純度99.9%)粉末を3:1のモル比で混合したものを用い、さらにその混合物に、In2O3(純度99.99%)粉末を任意の割合(In/(Cd+Te+In))で加えたものを用意した。成膜は、Ar又はAr+25%O2のスパッタガス中、スパッタ圧力0.5Pa、印加電圧20W、スパッタ時間30分間、室温から700℃の基板温度の条件下で、シリカガラス上に厚さ0.2μmの酸化物薄膜を堆積することにより行った。
InをドープしたCd3TeO6薄膜を形成した他は、実験例1と同様の方法により酸化物薄膜を形成した。成膜装置としてRFマグネトリオンスパッタリング装置を使用した。ターゲットは、CdO(純度99.99%)粉末とTeO2(純度99.9%)粉末を3:1のモル比で混合したものを用い、さらにその混合物に、In2O3(純度99.99%)粉末を任意の割合(In/(Cd+Te+In))で加えたものを用意した。成膜は、Ar又はAr+25%O2のスパッタガス中、スパッタ圧力0.5Pa、印加電圧20W、スパッタ時間30分間、室温から700℃の基板温度の条件下で、シリカガラス上に厚さ0.2μmの酸化物薄膜を堆積することにより行った。
なお、酸化物薄膜の厚さ測定、熱処理、X線回折(XRD)法による相の同定、化学組成の測定、反射電子回折(RHEED)測定、表面粗さ測定、シート抵抗、ホール効果、透過率等の各測定又は処理は、上記実験例1と同様であるのでこの実験例2では記載を省略する。
図4は、純Ar(図4(a))とAr+25%O2(図4(b))それぞれの雰囲気下で、異なる基板温度で作製したCd3TeO6薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。図4(a)(b)に示したように、室温で堆積させた薄膜はアモルファスであったが、基板温度が300℃のときには、Cd3TeO6の(112)、(211)、(004)面の回折ピークを持つ結晶構造を示した。また、図4(a)に示したように、純Ar雰囲気下で堆積させた酸化物薄膜は、基板温度の上昇と共に(112)面に優先配向を示し、図4(b)に示したように、Ar+25%O2の雰囲気下で堆積させた酸化物薄膜は、基板温度の上昇と共に(211)面に優先配向を示した。また、図4(c)のAFM像(高さレンジ30nm、スキャンサイズ1μm×1μm)に示すように、純Ar雰囲気、室温下で成膜した酸化物薄膜の平均粒径は、32nmであり、平均表面粗さは、基板温度とは関係なく、いずれの場合も3nm以下程度であった。
図5は、Ar(図5(a))とAr+25%O2(図5(b))のそれぞれの雰囲気下で、異なる基板温度で作製したCd3TeO6薄膜の室温における電気抵抗率(ρ)、キャリア密度(n)及びホール移動度(μ)を示すグラフである。図5(a)(b)のいずれの場合においても、基板温度が300℃以上で、電気抵抗率ρが10−3Ωcmオーダーに低下し、良好な電気伝導性を示した。また、キャリア密度及びホール移動度についても、基板温度が300℃以上で成膜することにより上昇し、例えば500℃の基板温度で純Ar雰囲気下において作製した酸化物薄膜については、それぞれ1.9×1020cm−3及び7.8cm2V−1s−1であった。
一方、Ar+25%O2雰囲気下で作製した薄膜のほうが純Ar雰囲気下で作製した薄膜よりもキャリア密度は低いがホール移動度は大きいことが分かった。これは、製膜時にO2を導入することで酸素欠損が減少し、結晶性が向上したためである。
図6は、SrTiO3(100)単結晶基板上に成膜したInドープCd3TeO6薄膜の、XRDパターン(図6(a))と、RHEEDパターン(図6(b))と、そのシミュレイトスポットパターン(図6(c))とを示している。図6(a)に示すXRDパターンには、Cd3TeO6の(002)反射及び(004)反射のみが現れている。その(004)反射のロッキングカーブから見積もられた半値幅は、0.32°であり、良好な配向性を示していることがわかった。また、図6(b)に示す観測したRHEEDパターンは、図6(c)に示すシミュレイトスポットパターンとよく一致しており、c軸方向のエピタキシャル成長が確認できた。また、これらのエピタキシャル薄膜の室温における電気抵抗率は、2.1×10−3Ωcmであり、結晶性の向上により、多結晶性薄膜のものよりもその値がわずかに減少していることがわかった。キャリア密度及びホール移動度は、それぞれ、5.6×1019cm−3及び53cm2V−1s−1であり、特にホール移動度は結晶性の向上により大幅に増加することが分かった。
図7は、Ar雰囲気下で異なる基板温度で作製したInドープCd3TeO6薄膜の可視光領域(400〜800nm)での光学透過率の測定結果である。この結果より、実験例1で示したCd3TeO6薄膜と同様、熱処理温度に従ってInドープCd3TeO6薄膜の光学透過率は増加した。500℃以上の基板温度で作製したInドープCd3TeO6薄膜の光学透過率は、可視光領域での平均透過率はおよそ85%以上であった。
以上の実験例1及び実験例2で説明したように、本発明の酸化物薄膜は、300℃未満の温度条件で成膜することによりアモルファス状となり、そのときの電気抵抗率は、0.1Ωcmで400〜800nmの範囲内でおよそ80%以上の平均透過率を示した。一方、本発明の酸化物薄膜は、300℃以上の温度条件で成膜することにより又は300℃未満の温度条件で成膜した後に300℃以上の温度条件で熱処理することにより、ペロブスカイト型構造となり、そのときの電気抵抗率は、1.9×10−2Ωcmで400〜800nmの範囲内でおよそ85%以上の平均透過率を示した。また、本発明の酸化物薄膜にInをドープすることにより、電気抵抗率をより低下させることができた。
こうした特徴を有する本発明の酸化物薄膜は、導電性がよく透明性がよいので、ITO等の透明導電膜の代替材料として有望である。また、熱電変換特性がよいので、熱電変換素子としても利用可能である。
Claims (8)
- アモルファス状又はペロブスカイト型構造のCd3TeO6薄膜であることを特徴とする酸化物薄膜。
- 前記Cd3TeO6薄膜の金属原子の一部が、遷移金属原子又は磁性原子で置換されていることを特徴とする請求項1に記載の酸化物薄膜。
- 前記Cd3TeO6薄膜に、La、Y、In及びBiの群から選ばれる1種又は2種以上の原子がドーピングされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物薄膜。
- 可視光領域での平均透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物薄膜。
- 透明導電膜、熱電変換素子又はn型導電性薄膜として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物薄膜。
- RFマグネトロンスパッタリング法又は類似のスパッタリング法により、アモルファス状又はペロブスカイト型構造のCdTe系酸化物薄膜を形成することを特徴とする酸化物薄膜の形成方法。
- プラズマイオンプロセスにより、前記CdTe系酸化物薄膜にLa、Y、In及びBiの群から選ばれる1種又は2種以上の原子をドーピングすることを特徴とする請求項6に記載の酸化物薄膜の形成方法。
- 前記ペロブスカイト型構造のCdTe系酸化物薄膜が、結晶化しない温度で成膜した後の熱処理によって、又は、結晶化する温度での成膜によって得られることを特徴とする請求項6又は7に記載の酸化物薄膜の形成方法。
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