JP2007024150A - 変速機のシフト装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 変速機のシフト装置を軽量で構造も簡単なものにする。
【解決手段】 1対の変速ギヤ軸11,12に設けられて互いに噛合する複数対の変速ギヤを選択的に切り換えるシフト装置Sは、各変速ギヤ軸と平行に支持されて回動されるフォークシャフト20に半径方向に突出して固定されて揺動される駆動ピン21と、フォークシャフトに回動及び軸線方向摺動自在に支持されフォークシャフトを中心とする円弧状に湾曲された板状で円弧方向に沿ってカム溝24,25が設けられたカム部材22c,23cが一体的に形成されたシフタ22,23を備え、カム溝に摺動自在に係合される駆動ピンの揺動によりシフタは移動されて、複数対の変速ギヤの選択的な切り換えを行う。1本のフォークシャフトに複数のシフタを支持し、半径が異なる複数のカム部材は半径方向に重ねられて1本の駆動ピンが各カム溝を貫通するのがよい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車などに使用する選択歯車式変速機のギヤシフトを行う変速機のシフト装置に関する。
この種の変速機のシフト装置としては、セレクト及びシフトの2方向の移動(軸線方向移動及び回動)によりギヤシフトを行うものと、1方向の移動(回動)のみでギヤシフトを行うものがある。前者は、例えば特許文献1に示すように、シフトフォークを介してギヤシフトを行う複数のフォークシャフトを有し、シフトアンドセレクトシャフトの軸線方向移動により1つのフォークシャフトを選択してからシフトアンドセレクトシャフトの回動によりフォークシャフト及びシフトフォークを移動させてギヤシフトを行うものである。後者は、例えば特許文献2に示すように、フォーク軸に摺動自在に支持された複数のシフトフォークと外周面に複数のカム溝が形成された1個の円筒状のシフトドラムを有し、シフトドラムを回動させることにより各カム溝に係合された各シフトフォークを移動させてギヤシフトを行うものである。この両技術は、ギヤシフトを手動で行う場合と、自動車などの作動状態に応じた変速指令に基づいて制御されるモータなどのアクチュエータを用いて自動的に行う場合の何れにも適用することができる。
特開2004−308678号公報(段落〔0030〕〜〔0031〕、図1、図2)。 特開平07−139627号公報(段落〔0019〕〜〔0025〕、図1〜図4)。
特許文献1の技術では、シフトアンドセレクトシャフトの軸線方向移動及び回動によりギヤシフトを行うので、部品点数が増大して構造が複雑になるという問題があり、特にギヤシフトを自動的に行う場合には2個のアクチュエータを必要とするので、製造コストが増大する。これに対し特許文献2の技術では、シフトドラムを回動するだけであるので部品点数が比較的少なく構造も簡単で特許文献1の技術に比して製造コストが減少し、特にギヤシフトを自動的に行う場合にはアクチュエータは1個で足りるので、製造コストの減少は一層大きくなる。しかしながら特許文献2の技術では太くかつ長いシフトドラムを使用し、またシフトフォークを摺動自在に支持するために専用のフォーク軸を必要とするので重量が大となり、構造の簡略化も充分ではない。
本発明はこのような各問題を解決して、特許文献2の技術よりもさらに軽量で構造も簡単な変速機のシフト装置を提供することを目的とする。
このために、本発明による変速機のシフト装置は、ケーシング内に回転自在に支持された1対の変速ギヤ軸に設けられて互いに噛合する複数対の変速ギヤを、それらの何れか1対により各変速ギヤ軸の間の動力伝達がなされるように選択的に切り換える変速機のシフト装置において、各変速ギヤ軸と平行にケーシングに支持されて変速指令に応じて回動されるフォークシャフトと、このフォークシャフトに固定されて半径方向に突出し同フォークシャフトの回動とともに揺動される駆動ピンと、カム部材及びシフトフォークが一体的に形成されてフォークシャフトに回動及び軸線方向摺動自在に支持されかつケーシングに対する回動が拘束されたシフタを備え、カム部材はフォークシャフトの軸心を中心とする円弧状に湾曲された板状で円弧方向に沿ってカム溝が形成され、このカム溝に摺動自在に係合される駆動ピンの揺動によりシフタをフォークシャフトの軸線方向に沿って移動させて、シフトフォークにより複数対の変速ギヤの選択的な切り換えを行うことを特徴とするものである。
前項に記載の変速機のシフト装置は、1本のフォークシャフトに複数のシフタを支持させることが好ましい。
前項に記載の変速機のシフト装置において、駆動ピンは1本とし、複数のシフタの円弧状に湾曲された板状の各カム部材はフォークシャフトの軸心を中心とする半径が異なるものとし半径方向に重ねてそれらの各カム溝に1本の駆動ピンを貫通させることが好ましい。
前各項に記載の変速機のシフト装置において、フォークシャフトは変速指令に基づいて制御されるモータにより回動されることが好ましい。
前各項に記載の変速機のシフト装置は、駆動ピンにカム溝と転がり接触する環状部材を同軸的に設けることが好ましい。
上述のように、本発明によれば、シフタに一体的に形成されるカム部材は円弧状に湾曲された板状であるので軽量となり、またシフタはカム部材のカム溝に係合する駆動ピンを支持して揺動させるフォークシャフトにより支持されて専用の支持軸を必要としないので、重量及び部品点数が減少し構造が簡略化される。従って変速機のシフト装置の構造を特許文献2の技術よりさらに一層簡略化するとともに重量を減少させることができる。
1本のフォークシャフトに複数のシフタを支持させた変速機のシフト装置によれば、シフタの数を増やすだけで、変速機の変速段数を増やすことができるので、変速段数を増加してもそれほど構造が複雑化したり重量が増大することはない。
また駆動ピンは1本とし、複数のシフタの円弧状に湾曲された板状の各カム部材はフォークシャフトの軸心を中心とする半径が異なるものとし半径方向に重ねてそれらの各カム溝に1本の駆動ピンを貫通させた変速機のシフト装置によれば、各カム部材は半径方向に重ねて配置されるので複数のシフタは全体として長さが短くなり、しかも半径方向の寸法の増大はわずかであるので、変速機のシフト装置をコンパクトにまとめることができる。
フォークシャフトが変速指令に基づいて制御されるモータにより回動されるようにした変速機のシフト装置によれば、作動状態に応じて変速機を自動的に制御することができる。
また駆動ピンにカム溝と転がり接触する環状部材を同軸的に設けた変速機のシフト装置によれば、揺動する駆動ピンとカム溝の間の摩擦抵抗が減少するのでシフト装置の作動が軽くなり、またこれに伴い円弧状に湾曲された板状のカム部材の半径を小さくすることができるので、変速機のシフト装置を一層コンパクトにまとめることができる。
以下に、図1〜図6により、本発明による変速機のシフト装置を実施するための最良の形態の説明をする。この実施形態は本発明を自動車の変速機に適用したもので、図1に示す全体構造のように、ケーシング10内に支持された1対の変速ギヤ軸11,12に設けられて互いに噛合する複数対の変速ギヤ13a〜16a,13b〜16bを、それらの何れか1対により両変速ギヤ軸11,12の間の動力伝達がなされるように、シフト装置Sにより選択的に切り換えるものである。
図1に示すように、ケーシング10の外壁10aと仕切壁10bには、エンジンに連結されて回転駆動される入力軸11と、駆動車輪に連結される主軸12が、転がり軸受を介して互いに平行に回転自在に支持され、この入力軸11と主軸12が1対の変速ギヤ軸11,12を構成している。外壁10aと仕切壁10bの間に形成される変速室内には、入力軸11に回転自在に設けられた4個の駆動側変速ギヤ13a〜16aと、主軸12に一体的に回転するように設けられて変速ギヤ13a〜16aと常時噛合される4個の従動側変速ギヤ13b〜16bが位置している。互いに噛合する各1対の変速ギヤ13a,13bと、変速ギヤ14a,14bと、変速ギヤ15a,15bと、変速ギヤ16a,16bは、それぞれ第1速、第2速、第3速及び第4速の各歯車対を形成している。
入力軸11には、変速ギヤ13a,14aの間と変速ギヤ15a,16aの間にそれぞれクラッチハブ11aと11bが一体的に設けられ、各クラッチハブ11a,11の外周にはそれぞれ切換スリーブ17と18が軸線方向摺動自在にスプライン係合されている。また変速ギヤ13a,14aと変速ギヤ15a,16aには、クラッチハブ11a,11b側にそれぞれ形成されたボス部に、切換スリーブ17,18と係合可能なスプラインが形成されている。切換スリーブ17,18の外周には、シフト装置Sのシフトフォーク22d,23dを係合するための環状溝17a,18aが形成されている。なお説明は省略したが、各切換スリーブ17,18と各変速ギヤ13a〜16aの間には公知のシンクロメッシュ機構が設けられている。
図1は各切換スリーブ17,18がクラッチハブ11a,11bのみに係合されて両変速ギヤ軸11,12の間の動力伝達がなされていない変速機のニュートラル状態を示しており、後述するようにシフト装置Sにより各切換スリーブ17,18が往復動されれば、切換スリーブ17,18を介して各変速ギヤ13a〜16aの何れか1つが入力軸11に選択的に連結されて、第1速〜第4速の各変速段による動力伝達がなされる。
図1及び図2に示すように、この実施形態のシフト装置Sは、ケーシング10の外壁10aと仕切壁10bにより両変速ギヤ軸11,12と平行に回動自在に支持された1本のフォークシャフト20と、このフォークシャフト20に支持された第1及び第2シフタ22,23と、ラック27及びギヤ26を介してフォークシャフト20を回動させるサーボモータ28を備えている。フォークシャフト20の一端に固定したギヤ26には、サーボモータ28の出力軸にねじ係合されたラック27が噛合され、サーボモータ28が作動されればラック27が軸線方向に移動してフォークシャフト20は回動される。サーボモータ28は自動車などの作動状態に応じて制御装置(図示省略)から出力される変速指令に基づいて制御されるもので、フォークシャフト20はこのサーボモータ28により回動されて変速指令に応じた角度位置に停止される。フォークシャフト20に根本部が固定されて半径方向に突出する駆動ピン21はフォークシャフト20の回動とともに揺動されて、両端側に位置する2つの中立位置Nとその間の第1速〜第4速の各位置1st〜4th(図3参照)で停止される。
第1及び第2シフタ22,23は、図1〜図5に示すように、駆動ピン21の両側となるフォークシャフト20にそれぞれ回動及び軸線方向摺動自在に支持されたボス部22a,23bと、このボス部22a,23bに一体形成され半径方向に突出するとともにフォークシャフト20と平行になるようにL字状に折曲された帯板状のガイドプレート22b,23bと、このガイドプレート22b,23bの先端に一体形成されてフォークシャフト20の軸心を中心とする円弧状に湾曲された帯板状で円弧方向に沿って第1及び第2カム溝24,25がそれぞれ形成されたカム部材22c,23cを備えている。各シフタ22,23はさらにボス部22a,23bに一体形成されて半径方向に突出するシフトフォーク22d,23dを備えている。各カム溝24,25は、駆動ピン21がわずかの隙間をおいて挿通可能な幅を有している。
各シフタ22,23のカム部材22c,23cは、第1シフタ22のカム部材22cが、多少の隙間をおいて第2シフタ23のカム部材23cの半径方向内側に位置するように、フォークシャフト20の軸心を中心とする半径が異なり、これに伴いガイドプレート22b,23bの半径方向突出量も異なっている。各シフタ22,23は、ボス部22a,23bがフォークシャフト20に回動自在に支持されているが、二叉状の各シフトフォーク22d,23dの先端部が入力軸11に同軸的に設けられた各切換スリーブ17,18の外周に形成された環状溝17a,18aの両側に係合されているので、ケーシング10に対する回動は拘束されている。
図4は第1及び第2シフタ22,23の平面図を示す。図5は同じく両シフタ22,23の平面図であるが、カム部材22c,23c及びカム溝24,25を円周方向に沿って展開した状態で示す図であり、フォークシャフト20の軸心を中心とする回動角に対する各カム溝24,25の形状が同様に表示されるように、各カム部材22c,23cの外周面の半径を同一とした(この例ではカム部材22cの半径を仮想的にカム部材23cの半径に揃えた)状態で示した図である。
第1シフタ22のカム部材22cに円周方向に沿って形成された第1カム溝24は、カム部材22cの中心点22oから第1速位置1st側となるシフト溝24aと、第4速位置4th側となるニュートラル溝24bからなり、シフト溝24aは中心点22oと第1速位置1stの先の中立位置Nを結ぶ1サイクルの波形部とそれより先端側に位置してニュートラル溝24bと整列された短い直線部からなるスリットであり、ニュートラル溝24bは中心点22oと第4速位置4thの先の中立位置Nを結ぶフォークシャフト20と直交する直線状のスリットである。シフト溝24aの波形部の(図の右側を下側とした状態における)山部と谷部はそれぞれ第2速位置2ndと第1速位置1stに位置している。また第2シフタ23のカム部材23cに円周方向に沿って形成された第2カム溝25は、カム部材23cの中心点23oから第1速位置1st側となるニュートラル溝25aと、第4速位置4th側となるシフト溝25bからなり、ニュートラル溝25aは中心点23oと第1速位置1stの先の中立位置Nを結ぶフォークシャフト20と直交する直線状のスリットであり、シフト溝25bは中心点23oと第4速位置4thの先の中立位置Nを結ぶ1サイクルの波形部とそれより先端側に位置してニュートラル溝25aと整列された短い直線部からなるスリットである。シフト溝25bの波形部の谷部と山部は第3速位置3rdと第4速位置4thに位置している。
図1〜図3に示すように、両カム部材22c,23cが多少の隙間をおいて半径方向に重ねて配置された状態では、シフト溝24aとニュートラル溝25a及びニュートラル溝24bとシフト溝25bが全体として互いに重ねて配置される。フォークシャフト20から半径方向に突出する1本の駆動ピン21は、各カム部材22c,23cに形成されたカム溝24,25を摺動自在に貫通するように係合されている。前述のようにフォークシャフト20がサーボモータ28により回動されて、駆動ピン21が両端の中立位置Nの間の第1速〜第4速の各位置1st〜4thで順次停止されれば、第1及び第2シフタ22,23は駆動ピン21の停止位置に応じてフォークシャフト20に沿って移動されて、第1または第2シフトフォーク22d,23dにより、互いに噛合する複数対の変速ギヤ13a〜16a,13b〜16bの何れか1対による動力選択を選択して各変速ギヤ軸11,12の間の動力伝達が切り換えられる。
次に図6により、この作動の具体的説明をする。図6(a) に示すように、駆動ピン21が第1速位置1stの先の中立位置Nにある状態では、両シフタ22,23のシフトフォーク22d,23dは何れもフォーク中立位置にあり、各切換スリーブ17,18は、図1に示すようにクラッチハブ11a,11bのみに係合されている。この状態では各変速ギヤ13a〜16aは何れも入力軸11に対し回転自在であるので、変速機は両変速ギヤ軸11,12の間の動力伝達がなされないニュートラル状態にある。
このニュートラル状態からサーボモータ28によりフォークシャフト20を回動して、駆動ピン21を第1速位置1stに揺動させて停止すれば(図6(b) 参照)、第1シフタ22はシフト溝24aの谷部に駆動ピン21が係合されて図において左向きに移動され、第1シフトフォーク22dは第1フォーク中立位置から図6(b) の第1フォークシフト位置に移動されて、切換スリーブ17が左向きに移動される。これにより変速ギヤ13aは切換スリーブ17を介して入力軸11に連結されるが、変速ギヤ14aは入力軸11に対し回転自在のままである。一方、第2シフタ23はニュートラル溝25aに駆動ピン21が係合されているので移動されず、従って第2シフトフォーク23dは第2フォーク中立位置から移動しないので、変速ギヤ15a,16aは何れも入力軸11に対し回転自在のままである。この状態では変速機は、第1速歯車対を形成する変速ギヤ13a,13bにより両変速ギヤ軸11,12の動力伝達がなされる第1速状態となる。
この第1速状態からサーボモータ28によりフォークシャフト20を回動して、駆動ピン21を第2速位置2ndに揺動させて停止すれば(図6(c) 参照)、第1シフタ22はシフト溝24aの山部に駆動ピン21が係合されて図において右向きに移動され、第1シフトフォーク22dは第1フォーク中立位置から図6(c) の第1フォークシフト位置に移動されて、切換スリーブ17が右向きに移動される。これにより変速ギヤ14aは切換スリーブ17を介して入力軸11に連結され、変速ギヤ13aは入力軸11に対し回転自在となる。一方、変速ギヤ15a,16aは、第1速状態と同様、何れも入力軸11に対し回転自在のままである。この状態では変速機は、第2速歯車対を形成する変速ギヤ14a,14bにより両変速ギヤ軸11,12の動力伝達がなされる第2速状態となる。
この第2速状態からフォークシャフト20をさらに回動して、駆動ピン21を第3速位置3rdに揺動させて停止すれば(図6(d) 参照)、駆動ピン21はカム部材23cのシフト溝25bの谷部に係合されるともにカム部材22cのニュートラル溝24bに係合される。これにより第2シフトフォーク23dは第2フォーク中立位置から左向きに移動されて、変速ギヤ15aが入力軸11に連結されるとともに変速ギヤ16aは入力軸11に対し回転自在となり、一方、第1シフトフォーク22dは第1フォーク中立位置に位置して、変速ギヤ13a,14aは、何れも入力軸11に対し回転自在となる。この状態では第3速歯車対を形成する変速ギヤ15a,15bにより両変速ギヤ軸11,12の動力伝達がなされる第3速状態となる。
またこの第3速状態からフォークシャフト20をさらに回動して、駆動ピン21を第4速位置4thに揺動させて停止すれば(図6(e) 参照)、駆動ピン21はカム部材23cのシフト溝25bの山部に係合されるともにカム部材22cのニュートラル溝24bに係合される。これにより第2シフトフォーク23dは第2フォーク中立位置から右向きに移動されて、変速ギヤ16aが入力軸11に連結されるとともに変速ギヤ15aは入力軸11に対し回転自在となり、一方、変速ギヤ13a,14aは、第3速状態と同様、何れも入力軸11に対し回転自在である。この状態では第4速歯車対を形成する変速ギヤ16a,16bにより両変速ギヤ軸11,12の動力伝達がなされる第4速状態となる。
この第4速状態からフォークシャフト20をさらに回動して、駆動ピン21を第4速位置4thの先の中立位置Nまで揺動させて停止すれば(図6(f) 参照)、作動の最初に説明した状態と同様、両シフタ22,23のシフトフォーク22d,23dは何れもフォーク中立位置となり、各切換スリーブ17,18はクラッチハブ11a,11bのみに係合されて、各変速ギヤ13a〜16aは何れも入力軸11に対し回転自在となるので、両変速ギヤ軸11,12の間の動力伝達がなされないニュートラル状態となる。
このニュートラル状態からサーボモータ28によりフォークシャフト20を逆向きに回動して、駆動ピン21を第4速位置4thから第1速位置1stを経て最初の中立位置Nに戻せば、変速機は第4速状態から第1速状態を経てニュートラル状態に戻る。
上述した実施形態によれば、ガイドプレート22b,23bを介してボス部22a,23bに一体的に形成されるシフタ22,23のカム部材22c,23cは、フォークシャフト20を中心とする円弧状に湾曲された板状であるのでシフタ22,23は前述した特許文献1の円筒状のシフトドラムよりも軽量となり、またシフタ22,23はカム部材22c,23cのカム溝24,25に係合する駆動ピン21を支持して揺動させるフォークシャフト20により支持されて専用の支持軸を必要としないので、部品点数が減少し構造が簡略化される。従って変速機のシフト装置の構造を特許文献2の技術よりさらに一層簡略化するとともに重量を減少させて、製造コストを低減させることができる。
この種の変速機では1個のシフタにより2つの変速段が得られ、シフタの数を増やすことにより変速段数を増加させているが、シフタの数を増やせばそれに関連する部品の数も増大するのが普通である。しかし上述した実施形態では、1本のフォークシャフト20に2個のシフタ22,23を支持させており、このようにすればシフタ22,23の数を増やすだけで変速機の変速段数を増やすことができ、その他の部品が増えることはないので、変速段数を増加してもそれほど構造が複雑化したり重量が増大することはなく、製造コストが増大することもない。なおシフタの数は2個の限らずそれ以上として実施することも可能である。しかしながら本発明はこれらに限られるものではなく、シフタが1個の場合にも適用可能であり、そのようにしても前項で述べた効果は得られる。
また上述した実施形態では、2個のシフタ22,23の円弧状に湾曲された板状の各カム部材22c,23cはフォークシャフト20の軸心を中心とする半径が異なるものとし、半径方向に重ねて1本の駆動ピン21を各カム溝24,25に貫通させて各カム部材22c,23cを駆動するようにしており、このように各カム部材22c,23cを半径方向に重ねて配置することにより複数のシフタ22,23は全体として長さが短くなり、しかも半径方向の寸法の増大はカム部材22c,23cの板厚とそれらの間の隙間の寸法分であってわずかであるので、2個のシフタ22,23を有する変速機のシフト装置をコンパクトにまとめることができる。この場合もシフタの数は2個に限らずそれ以上として、半径がそれぞれ異なる各カム部材を半径方向に重ねて配置して実施することも可能である。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、各カム部材の半径を同一とし、各カム部材ごとに各1本の駆動ピンをフォークシャフトに設けるようにして実施することも可能である。
上述した実施形態では、4つの変速段を第1速〜第4速とした場合について説明したが、後進及び第1速〜第3速の4つの変速段とすることも可能である。その場合は各歯車対を後進及び第1速〜第3速の順で並べ、カム部材22cのシフト溝24aの形状を、先端部のニュートラル溝24bと整列された短い直線部を波形部の山部と谷部の間に移動するように変更すればよい。そのようにすれば中立位置Nを含む各変速位置は、後進位置、中立位置N、第1速位置1st〜第3速位置3rdの順で配置される。
また上述した実施形態では、フォークシャフト20は変速指令に基づいて制御されるモータ28により回動されるようにしており、このようにすれば、自動車の作動状態に応じて変速機を自動的に制御することができる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、手動変速機に適用することも可能である。
上述した実施形態では、カム溝24,25に係合される駆動ピン21は単純な棒状のものとしたが、図7に示す変形例のように、駆動ピン21は根本部がフォークシャフト20に圧入などにより固定されて半径方向の突出する本体部21aと、本体部21aの先端部に同軸的に形成した小径部21bにスペーサ21dを間に挟んで回転自在に係合した2個のローラ(環状部材)21cよりなるものとしてもよい。各ローラ21cは本体部21a及びスペーサ21dより多少大径であり、ローラ21cの先端にかしめ固定された座金21eにより、スペーサ21dとともに回転自在に抜け止めされている。この変形例の駆動ピン21は、カム溝24,25に挿入した状態では、フォークシャフト20に近い一方のローラ21cの外周面が第1カム部材22cの第1カム溝24の内面に転がり接触され、他方のローラ21cの外周面が第2カム部材23cの第2カム溝25の内面に転がり接触されるようになっている。
この変形例の駆動ピン21では、各ローラ21cがカム溝24,25と転がり接触することにより、揺動する駆動ピン21とカム溝24,25の間の摩擦抵抗が減少するのでシフト装置Sの作動を軽くすることができる。前述したシフト装置Sのように単純な棒状の駆動ピン21では、円弧状のカム部材22c,23cの半径を小さくするとカム溝24,25のシフト溝24a,25bの傾斜が急になって、駆動ピン21とカム溝24,25の間の摩擦により駆動ピン21の揺動によるシフタ22,23のフォークシャフト20に沿った方向の移動が不円滑になるおそれが生じるが、図7に示す変形例の駆動ピン21によれば駆動ピン21とカム溝24,25の間の摩擦抵抗が減少するので、シフト装置Sの作動が軽くなり、またシフト装置Sの作動が不円滑になるおそれなしに円弧状のカム部材22c,23cの半径を小さくしてシフト装置Sを一層コンパクトにまとめることができる。
この変形例も、シフタの数を1個とした場合及び2個以上とした場合に適用することが可能である。なおローラ21cの代わりにミニアチュアベアリング使用すれば駆動ピンとカム溝の間の摩擦抵抗は一層減少するので、シフト装置の作動を一層軽くでき、シフト装置を一層コンパクトにまとめることができる。ミニアチュアベアリング使用する場合は、その外輪がカム溝24,25と転がり接触する環状部材21cとなる。
上述した実施形態では、2個の切換スリーブ17,18は何れも入力軸11に設け、各シフタ22,23のシフトフォーク22d,23dにより切換スリーブ17,18を移動させてその両側に設けた変速ギヤ13a〜16aを選択的に入力軸11に連結するようにしたが、入力軸11と主軸12にそれぞれ1個の切換スリーブを設け、各シフタ22,23のシフトフォークにより各切換スリーブを移動させてその両側に回転自在に設けた変速ギヤを選択的に入力軸11または主軸12に連結するようにしてもよい。またフォークシャフト20はラック27とギヤ26を介してサーボモータ28により回動しているが、ウオームとウオームホイールあるいは1対のピニオンなどの任意の連動機構を介してサーボモータにより回動するようにしてもよい。また変速歯車列は切換スリーブにより変速段の切り換えを行う常時噛合式のものとしたが、これに限られるものではなく、その他の形式の常時噛合式のものあるいは変速ギヤを移動して変速段の切り換えを行う摺動選択式のものなどとしてもよい。
また本発明は、変速ギヤ13a〜16a,13b〜16bと並列に、変速ギヤ軸11,12の間に第5速以上の高速段及び後進段の変速ギヤよりなる第2の変速歯車列を設け、シフト装置Sと同様の1または2以上のシフタを設けたシフト装置によりこの変速ギヤを切り換えるようにして実施することも可能である。このような変速機の場合は、第1の変速歯車列を前述のようにニュートラル状態から第4速状態に順次切り換える間は第2の変速歯車列はニュートラル状態としておき、第1の変速歯車列を第4速位置4thの先の中立位置Nとした状態で、第2の変速歯車列をそのシフト装置により第5速以上の高速段及び後進段に切り換えて使用する。なおこのように第2の変速歯車列を及びそれを切り換えるシフト装置を設けない場合は、第4速位置4thの先の中立位置Nは不要である。また第1の変速歯車列を後進及び第1速〜第3速とした場合は、第2の変速歯車列は第5速以上の高速段だけにすればよい。
本発明による変速機のシフト装置の一実施形態の、変速機を含む全体構造を示す断面図である。 図1に示す実施形態のシフト装置の平面図である。 図1の3−3断面図である。 図1に示す実施形態の第1及び第2シフタを分離して示す平面図である。 図1に示す実施形態の第1及び第2シフタのカム部材及びカム溝を円周方向に沿って展開した状態で示す図4と同様の平面図であって、各カム部材の外周面の半径を同一とした状態で示す図である。 図1に示す実施形態の作動を説明する図である。 カム溝に挿通される駆動ピンの変形例を示す側面図である。
符号の説明
10…ケーシング、11,12…変速ギヤ軸(入力軸,主軸)、13a〜16a…変速ギヤ、13b〜16b…変速ギヤ、20…フォークシャフト、21…駆動ピン、21c…環状部材、22,23…シフタ、22c,23c…カム部材、22d,23d…シフトフォーク、24,25…カム溝、28…モータ(サーボモータ)、S…シフト装置。

Claims (5)

  1. ケーシング内に回転自在に支持された1対の変速ギヤ軸に設けられて互いに噛合する複数対の変速ギヤを、それらの何れか1対により前記各変速ギヤ軸の間の動力伝達がなされるように選択的に切り換える変速機のシフト装置において、前記各変速ギヤ軸と平行に前記ケーシングに支持されて変速指令に応じて回動されるフォークシャフトと、このフォークシャフトに固定されて半径方向に突出し同フォークシャフトの回動とともに揺動される駆動ピンと、カム部材及びシフトフォークが一体的に形成されて前記フォークシャフトに回動及び軸線方向摺動自在に支持されかつ前記ケーシングに対する回動が拘束されたシフタを備え、前記カム部材は前記フォークシャフトの軸心を中心とする円弧状に湾曲された板状で円弧方向に沿ってカム溝が形成され、このカム溝に摺動自在に係合される前記駆動ピンの揺動により前記シフタを前記フォークシャフトの軸線方向に沿って移動させて、前記シフトフォークにより前記複数対の変速ギヤの選択的な切り換えを行うことを特徴とする変速機のシフト装置。
  2. 請求項1に記載の変速機のシフト装置において、1本の前記フォークシャフトに複数の前記シフタを支持させたことを特徴とする変速機のシフト装置。
  3. 請求項2に記載の変速機のシフト装置において、前記駆動ピンは1本とし、前記複数のシフタの円弧状に湾曲された板状の各カム部材は前記フォークシャフトの軸心を中心とする半径が異なるものとし半径方向に重ねてそれらの各カム溝に前記1本の駆動ピンを貫通させたことを特徴とする変速機のシフト装置。
  4. 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の変速機のシフト装置において、前記フォークシャフトは変速指令に基づいて制御されるモータにより回動されることを特徴とする変速機のシフト装置。
  5. 請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の変速機のシフト装置において、前記駆動ピンに前記カム溝と転がり接触する環状部材を同軸的に設けたことを特徴とする変速機のシフト装置。
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