JP2007022980A - 子宮内膜症の治療剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、5-リポキシゲナーゼ(5-LO)の活性化を阻害する化合物を有効成分として含有する子宮内膜症治療剤に関する。
子宮内膜症を治療する方法としては主に薬物療法と外科的療法とに分類される。
薬物療法としては、例えば鎮痛剤等の投与による対症療法、経口避妊薬等の投与によるホルモン療法等の本症治療が挙げられる[産婦人科治療、第78巻、2号、179-182頁(1999年)]。しかしながら、外科的療法も不十分な症例があり、また子宮内膜症を根治させる薬剤はこれまでに開発されていない。
薬物療法としては、例えば鎮痛剤等の投与による対症療法、経口避妊薬等の投与によるホルモン療法等の本症治療が挙げられる[産婦人科治療、第78巻、2号、179-182頁(1999年)]。しかしながら、外科的療法も不十分な症例があり、また子宮内膜症を根治させる薬剤はこれまでに開発されていない。
5-LOは細胞膜構成成分の代謝産物であるアラキドン酸を5-ヒドロパーオキシエイコサテトラエン酸(5-HPETE)に変換する酵素であり、5-HPETEは5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5-HETE)及びその重要な代謝産物であるロイコトリエン類(LTs)の前駆体となる[プロシーディングス・オブ・ジ・アソシエーション・オブ・アメリカン・フィジシャンズ(Proceedings of the Association of American Physicians)、第111巻、6号、525-536頁(1999年)]。ロイコトリエン類は種々の生物学的作用を示すことが報告されている。例えば、ロイコトリエンC4及びロイコトリエンD4はヒト気管支を強力に収縮する作用が知られており、ロイコトリエンB4及び5-HETEは多形核白血球を強力に炎症局所へ遊走させる作用が知られている[ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)、第73巻、889-897頁(1984年)]。
5-LOの活性化を阻害する化合物としては、zileuton(特許文献1参照)、CJ-13610[ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、第142巻、5号、861-868頁(2004年)]、MK-886[プログレス・イン・メディシナル・ケミストリー(Progress in Medicinal Chemistry)、第29巻、1-63頁(1992年)]等が知られている。Zileutonは気管支喘息治療薬として上市されており、さらに、慢性閉塞性肺疾患、皮膚疾患(にきび)治療薬としての開発が進められている。
有本らは子宮内膜症患者の子宮内膜病変と正常子宮内膜のマイクロアレイ解析を行い、5-LO活性化プロテインが病変群で発現亢進していることを報告している[インターナショナル・ジャーナル・オブ・オンコロジー(International Journal of Oncology)、第22巻、551-560頁(2003年)]。また、今野らはロイコトリエン拮抗薬montelukastが子宮内膜症患者の月経痛を抑制したことを報告している[メディシン(Medicine)、第36巻、8-9頁(2004年)]。
米国特許第4873259号明細書
本発明の目的は、5-LOの活性化を阻害する化合物を有効成分として含有する子宮内膜症治療剤することにある。
本発明は、以下の(1)〜(3)に関する。
(1)5-LOの活性化を阻害する化合物を有効成分として含有する子宮内膜症治療剤。
(2)5-LOの活性化を阻害する化合物が式(I)
(1)5-LOの活性化を阻害する化合物を有効成分として含有する子宮内膜症治療剤。
(2)5-LOの活性化を阻害する化合物が式(I)
(式中、Aは低級アルキレンを表し、R1a及びR1bは、同一または異なって水素原子または低級アルキルを表す)で表されるベンゾチオフェン誘導体またはその薬理学的に許容される塩である、前記(1)記載の子宮内膜症治療剤。
(3)5-LOの活性化を阻害する化合物が式(Ia)
(3)5-LOの活性化を阻害する化合物が式(Ia)
で表されるzileutonまたはその薬理学的に許容される塩である、前記(1)記載の子宮内膜症治療剤。
本発明により、5-LOの活性化を阻害する化合物を有効成分として含有する子宮内膜症治療剤が提供される。
以下、式(I)であらわされる化合物を化合物(I)という。
化合物(I)の各基の定義において、低級アルキルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
化合物(I)の各基の定義において、低級アルキルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
低級アルキレンは前記低級アルキルから水素原子を1つ除いた基を表す。
薬理学的に許容される塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等の酸付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩、モルホリン付加塩、ピペリジン付加塩等の有機アミン付加塩、グリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩等のアミノ酸付加塩等が挙げられる。
薬理学的に許容される塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等の酸付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩、モルホリン付加塩、ピペリジン付加塩等の有機アミン付加塩、グリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩等のアミノ酸付加塩等が挙げられる。
化合物(I)及びzileutonは、例えばUS4873259記載の方法により製造することができる。
本発明において用いられる5-LOの活性化を阻害する化合物としては、5-LOの活性化を阻害するものであればいかなるものでもよい。例えば、5-LOの酵素活性を阻害する化合物または5-LO活性化タンパク(FLAP)を阻害する化合物等が挙げられる。
本発明において用いられる5-LOの活性化を阻害する化合物としては、5-LOの活性化を阻害するものであればいかなるものでもよい。例えば、5-LOの酵素活性を阻害する化合物または5-LO活性化タンパク(FLAP)を阻害する化合物等が挙げられる。
本発明の子宮内膜症の治療剤としては、5-LOの活性化を阻害する化合物を有効成分として含有する医薬であればいかなるものでもよいが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。好ましくは水、あるいは食塩、グリシン、グルコース、ヒトアルブミン等の水溶液等の水性担体に溶解した無菌的な溶液が用いられる。また、製剤溶液を生理的条件に近づけるための緩衝化剤や等張化剤のような、薬理学的に許容される添加剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム等を添加することもできる。また、凍結乾燥して貯蔵し、使用時に適当な溶媒に溶解させて用いることもできる。
以下に本発明の子宮内膜症治療剤の薬理作用を、試験例によって示す。
試験例:マウス子宮内膜症モデルにおけるzileutonの子宮内膜症病変形成抑制作用
5-LOの活性化を阻害する化合物の子宮内膜症に対する有効性を検証するために、zileutonを用いて以下の実験を行った。
方法としては、公知の方法[ヒューマン・リプロダクション(Human Reproduction)、第14巻、2944-2950頁(1999年)]を改変して行った。
試験例:マウス子宮内膜症モデルにおけるzileutonの子宮内膜症病変形成抑制作用
5-LOの活性化を阻害する化合物の子宮内膜症に対する有効性を検証するために、zileutonを用いて以下の実験を行った。
方法としては、公知の方法[ヒューマン・リプロダクション(Human Reproduction)、第14巻、2944-2950頁(1999年)]を改変して行った。
マウスにおいて性成熟するとされる8週齢以上のBalb/c系雌性マウス(日本チャールス・リバー社)を実験に供した。購入後1週間の馴化期間の後、性ホルモン環境を均一にするため、全ての個体に左右卵巣摘出術を施したのち、エストロジェンを外因性に投与した。すなわち、ペントバルビタール[ソムノペンチル(登録商標)、武田シェリング・プラウアニマルヘルス社製]50 mg/kgの腹腔内投与により全身麻酔したマウスの背部皮膚を正中線に沿って約1 cm切開し、そこから左右卵巣のある位置の腹膜に切り込み(約3 mm)を入れた。その切り込みより、両側卵巣を摘出した後、速やかに背部皮膚を縫合し、飼育ケージに戻した。その後、エストロジェン[プロギノン(登録商標)・デポー10 mg、日本シェーリング、吉草酸エストラジオール注射液]100 μg/kgを左後肢筋肉内に注射した。なお、この処置により、マウスでは4日周期で認められる性周期のうち高エストロジェン期である発情前期のマウス子宮と同程度の重量まで子宮が膨大することを確認している。
次いで、卵巣摘出の1週間後、全ての個体をドナーマウスとレシピエントマウスに1:2の構成比で分け、ドナーマウスの子宮を摘出して調製した子宮内膜片をレシピエントマウスの腹腔内に播種した。すなわち、放血致死させたドナーマウスから摘出した左右の子宮から、周囲の脂肪組織や子宮頸部を取り除き、内膜が含まれる子宮体部を小型手術用ハサミで細切して調製した。子宮内膜片は抗生物質[ペニシリン(50 units/mL)/ストレプトマイシン(100 μg/mL)(Lot. No. 1220027、インビトロジェン社)]を含む滅菌HBSS液(Hank’s Balanced Salt Solution、シグマ社製)に浮遊させ、全ドナーマウス分をプールした。この子宮内膜片浮遊液0.8 mL(子宮内膜片として約50 mg相当)をペントバルビタール40 mg/kgで全身麻酔したレシピエントマウスに19G注射針(テルモ社製)をつけたシリンジにより腹腔内投与して播種した。子宮内膜片浮遊液のシリンジへの充填ならびに投与は、浮遊液をよく撹拌し、不均一にならぬよう実施した。その後、陽性対照群及び薬物評価群にはエストロジェン100 μg/kgを、陰性対照群にはエストロジェンの溶媒であるゴマ油を週1回筋肉内投与した。
子宮内膜片播種の3週間後、マウスを放血致死させたのち開腹し、子宮内膜症病変の評価(形成される病変重量の測定)を実施した。病変が複数形成された場合には、それらの総和を病変重量とした。試験は一群15匹(陰性対照群のみ10匹)で実施した。また、必要に応じて、病変部位の病理標本を定法にしたがって作製し、病理組織学的な解析を行った。
試験化合物として、zileuton[協和発酵工業医薬研究センターにてZyflo(登録商標)錠より抽出、30及び100 mg/kg、子宮内膜片播種日より1日1回投与]を0.5%メチルセルロース水溶液に懸濁して使用した。また、陽性対照群には溶媒である0.5%メチルセルロース水溶液を同条件で投与した。
病変重量についての結果を図1に示した。
病変重量についての結果を図1に示した。
子宮内膜片播種3週間後において、陽性対照群では100%の病変発症率であったが、陰性対照群では10匹中2匹の個体でのみ発症が認められた。また、形成された病変は、いずれも子宮内膜上皮で内張りされている嚢胞であり、子宮内膜症病変であることを病理組織学的に確認した。すなわち、本実験モデルはエストロジェン依存性に成長するとされる子宮内膜症を反映している有用なモデルであると考えられた。
本モデルにおいて、zileuton 100 mg/kg投与群は、図1に示すように、陽性対照群に比べ約70%の抑制作用を示した。
なお、子宮内膜片のかわりに同重量の小腸粘膜片を播種した場合には、エストロジェンの投与によっても病変は全く形成されなかった。
本発明の治療剤の投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与または静脈内等の非経口投与を挙げることができるが、経口投与が好ましい。
なお、子宮内膜片のかわりに同重量の小腸粘膜片を播種した場合には、エストロジェンの投与によっても病変は全く形成されなかった。
本発明の治療剤の投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与または静脈内等の非経口投与を挙げることができるが、経口投与が好ましい。
経口投与に適当な製剤としては、例えばカプセル剤、錠剤等が挙げられる。カプセル剤、錠剤等は、例えば乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、例えば注射剤等が挙げられる。注射剤は、例えば塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製する。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
本発明の治療剤の投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10 μg/kg〜100 mg/kgである。
本発明の治療剤の投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10 μg/kg〜100 mg/kgである。
以下に本発明の態様を説明する。
製剤例1:錠剤
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。zileuton 100 g、乳糖200 g及びデンプン84 gを混合し、これに10%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液120 gを加える。この混合物を定法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム4 gを加えて混合し、経8 mmの杵を用い打錠機(菊水社製RT-15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分50 mgを含有する)を得る。
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。zileuton 100 g、乳糖200 g及びデンプン84 gを混合し、これに10%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液120 gを加える。この混合物を定法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム4 gを加えて混合し、経8 mmの杵を用い打錠機(菊水社製RT-15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分50 mgを含有する)を得る。
処方 zileuton 50 mg
乳糖 100 mg
デンプン 42 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 2 mg
200 mg
乳糖 100 mg
デンプン 42 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 2 mg
200 mg
製剤例2:注射剤
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。zileuton 0.1 g及びD-マンニトール5 gを注射用蒸留水に添加して混合し、さらに塩酸水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6に調整した後、注射用蒸留水で全量を1000 mLとする。得られた混合液をガラスバイアルに10 mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分1 mgを含有する)を得る。
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。zileuton 0.1 g及びD-マンニトール5 gを注射用蒸留水に添加して混合し、さらに塩酸水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6に調整した後、注射用蒸留水で全量を1000 mLとする。得られた混合液をガラスバイアルに10 mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分1 mgを含有する)を得る。
処方 zileuton 1 mg
D-マンニトール 50 mg
塩酸水溶液 適量
水酸化ナトリウム水溶液 適量
注射用蒸留水 適量
10 mL
D-マンニトール 50 mg
塩酸水溶液 適量
水酸化ナトリウム水溶液 適量
注射用蒸留水 適量
10 mL
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005209532A JP2007022980A (ja) | 2005-07-20 | 2005-07-20 | 子宮内膜症の治療剤 |
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