JP2007022977A - プロブコールを有効成分とするメタロチオネイン誘導剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】プロブコールを有効成分とするメタロチオネイン(MT)誘導剤
【解決手段】プロブコールによるMT誘導作用により、副作用が少なく、安定性に優れ、種々の形態で使用できる皮膚疾患の予防ならびに治療に利用できる.
【解決手段】プロブコールによるMT誘導作用により、副作用が少なく、安定性に優れ、種々の形態で使用できる皮膚疾患の予防ならびに治療に利用できる.
Description
本発明は、副作用が少なく、安定性に優れ、種々の形態で使用できるメタロチオネイン誘導剤
従来ステロイド剤等が皮膚疾患治療剤として、例えば皮膚炎、日焼け症、神経皮膚炎、湿疹、等のごとき皮膚症状の治療に局所的に用いられてきた.しかしステロイド剤は副作用が強いため、大量、長期投与が困難であった.
化粧品にあっては、日焼け止め等を目的として、パラアミノ安息香酸誘導体、桂皮酸誘導体、カンファー誘導体、ウロカニン酸誘導体、ベンズフェノン誘導体および複素環誘導体などの紫外線吸収剤がもっぱら外用剤に配合され、利用されている.これら紫外線吸収剤は、紫外線による皮膚の紅斑や水泡の形成を抑制し、さらにはメラニン形成の抑制による色素沈着の予防効果、皮膚の老化予防を目的としたものである.ところでいわゆる日焼けは上記したように急性炎症性変化としてサンバーン(sunburn)とそれにひきつずいて生じるメラニン色素沈着、サンタン(suntan)の2つの異なった反応が含まれる.このサンバーンを起こす光の波長は320 nm以下の中波長紫外線(UVB)と呼ばれる領域であり、紅斑を発生させる.紫外線による紅斑反応は熱によるヤケド(burn)とは異なり、日光暴露の直後には発現せず、数時間の潜伏期間をおいて現れる. サンバーンを生じた皮膚を病理組織学的に観察すると、照射量に応じて種々の程度の炎症性変化が表皮および真皮に認められ、中でも特徴的といえる所見は表皮内に出現する日焼け細胞(サンバーンセル:sunburn cell (SBC))である.組織染色標本デミルと強く好酸性に染色され、これが表皮細胞の壊死を示す所見とされている(堀尾武Fragrance Journal 9; 15-20, 1991). かかる日焼けを防ぐために上記のごとくパラアミノ安息香酸誘導体、桂皮酸誘導体等の紫外線吸収剤使用されているが、必ずしもそれらの紫外線吸収効果は満足するものでなく、其の使用にあたっては使用感や安定性も悪いという問題を有し、他の配合剤との相溶性も低く、耐水性および耐油性においても問題を多々有している.
かかる事情から、皮膚疾患治療剤にあっては、副作用が少なく、製剤的にも外用だけでなく内服にも使用しうる新しい作用効果をもった皮膚疾患治療剤の開発が望まれ、化粧料にあっては、上記の使用感および製剤の安定性等の問題点を解決できる化粧料の開発画望まれている.従って本発明の目的は上記の特性を有するメタロチオネイン誘導剤を提供することにある.
生体の必須微量金属である亜鉛は、生殖器の発達促進、創傷治癒の促進、金属酵素の成分として、脱水素酵素の促進因子として、また免疫系の賦活化等さまざまな働きとともに、体のほとんどの臓器に存在する金属結合蛋白であるメタロチオネイン(MT)の誘導因子として知られる. MTは炎症時に生じるフリーラジカルのスカベンジャーとして強力な抗炎症作用を持つことが知られて(Hanada,K et al, Dermatologica, 179 (suppl.1) 143, 1989)、亜鉛製剤は化粧料,皮膚治療剤の成分として広く使用されている.近年、亜鉛以外にも活性型ビタミンD等により皮膚MTが強く誘導され、UVB(紫外線)によるSBC生成抑制等の皮膚障害を改善しうることが知られている(Hanada K,
et al. J Dermatol Sci. 1995 ; 9: 203).
et al. J Dermatol Sci. 1995 ; 9: 203).
そこで本発明者は紫外線等による日焼けなどの外的刺激による皮膚の炎症において、MTが炎症部位に集まる白血球、特に顆粒球の放出するフリーラジカルを補足し、これにより抗酸化作用を示し、リンパ球への障害を抑制し、免疫系を賦活化し、さらには抗酸化作用似より皮膚の老化促進を予防すると考えた.そしてプロブコールが単独または亜鉛化合物等と同時に投与することにより効率的にMTを皮膚角質層に誘導または増加させることにより、紫外線暴露後のサンバーンセル(SBC)の形成を抑制することができると考えた。
かかる実情において本発明者は種々の化合物について検討した所、高脂血症改善薬であるプロブコールが公知の薬理作用から全く予想困難な優れたMT誘導作用を有し、日焼け改善、日焼け予防、皮膚疾患改善等を目的とした化粧料や医薬として有用であることを見出し、本発明を完成した.
すなわち、本発明はプロブコールを有効成分とするメタロチオネイン誘導剤を提供するものである.
プロブコールは単独で優れたMT誘導作用を有する. プロブコールは以下に示した化学構造、性状を持ち、脂溶性を示す安全、安定な化合物であり、現在わが国で経口摂取可能な医薬品(高脂血症治療薬)として使用されている.
化学名:4,4’-isopropylidenedithiobis〔2,6-di-tert-butylphenol〕
分子式:C31H48O2S2
分子量:516.84
融点 :125-128℃性状 :プロブコールは白色の結晶性の粉末出、わずかに特異なにおいがあり、味はない.アセトン、クロロホルム、ジメチルホルムアルデヒドまたは二硫化炭素に極めて溶けやすく、エタノール、エーテルまたは四塩化炭素に溶けやすく、メタノールにやや溶けやすく、水にほとんど溶けない.光によって徐々に着色する.
化学名:4,4’-isopropylidenedithiobis〔2,6-di-tert-butylphenol〕
分子式:C31H48O2S2
分子量:516.84
融点 :125-128℃性状 :プロブコールは白色の結晶性の粉末出、わずかに特異なにおいがあり、味はない.アセトン、クロロホルム、ジメチルホルムアルデヒドまたは二硫化炭素に極めて溶けやすく、エタノール、エーテルまたは四塩化炭素に溶けやすく、メタノールにやや溶けやすく、水にほとんど溶けない.光によって徐々に着色する.
本発明においてプロブコールを有効成分として用いる場合、慣例の製剤担体とともに投与することができる. 投与形態は特に限定されず、必要に応じて適宜選択して使用される.かかる投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、各種経口用液剤などの経口剤;注射剤、座薬などの非経口剤;液状塗布剤、ローション剤、エアゾール剤、リニメント剤、軟膏剤、パップ剤などの外用剤等、一般的な医薬製剤の形態があげられる.また必要に応じてビタミン類,亜鉛化合物等と合剤にすることにより、効果の促進ならびに製剤の安定性を高めることが可能である.
またこれら本発明のMT誘導剤はヒトの皮膚炎、皮膚がん、日焼け症、神経皮膚炎、皮膚脈管炎、乾癬、多形成紅疹、ベージェット病、水痘性皮膚炎、セメント皮膚炎、湿疹、肛門性器そう痒症などの皮膚疾患、脱毛防止や育毛等に用いられる以外に、ヒト以外の哺乳動物(犬、猫等のペットや牛、馬等の家畜など)の皮膚疾患の治療にも用いることができる.
投与されるべきプロブコールの量としては特に限定がなく広い範囲から適宜選択されるが、初期の効果を発揮するためにはプロブコールの総量として10-1,000mgが好ましい.
また、本発明のMT誘導剤は外用剤として調整するに当たっては、通常の親油性または親水性基剤、例えば脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、ろう、グリコール類、グリセリン等を用いて定法に従って行なえばよい. 上記の外用剤には、必要に応じて通常添加されていることの知られている各種添加剤、例えば安定化剤、香料、着色剤等のほか、すでに公知の紫外線吸収剤として知られている成分を配合することができる.
かくして得られる外用剤に含有される前記成分の量は特に限定されず、広範囲から適宜選択されるが、通常製剤中にプロブコールの総量として0.001-30重量%の範囲が望ましい.また本治療剤の適用量および方法は、該製剤の形態、製剤中の有効成分量、これを適用される患者の年齢、生別其の他の条件、皮膚病変の程度等に応じて決定することができ、例えば本発明治療剤は、これを患部全体に行きわたる量で、1日に1-複数回、該患部に散布、塗布により適用することができる.
また本発明における前記有効成分を紫外線防止等の化粧料の成分として用いる場合、当該化粧料は、前記化合物を有効成分として含有させる以外は、通常の化粧料と同様にして、各種の形態に調製される.例えば、洗浄用化粧料、化粧水、クリーム、乳液、メイクアップクリーム、化粧用オイル、パック等の基礎化粧料、ファウンデイション、口紅、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドー、マニキュア、白粉等の仕上げ化粧料、整髪剤、養毛剤等の頭髪用化粧料、浴用剤、美白剤、サンスクリーン剤、ニキビ剤等の各種形態とすることができ、おのおのは定法に従って製造することができる。
またかかる化粧料の製造の際には必要に応じて公知の各種化粧料基剤、例えば賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等を使用することができ、さらに必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で各種の油脂、ろう、炭化水素、脂肪酸、高級アルコール、エステル油、金属石鹸等の油脂原料、動物/植物抽出液、ビタミン剤、ホルモン剤、アミノ酸等の薬効剤、界面活性剤、色素、染料、顔料、香料、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、増粘剤、酸化防止剤、金属封鎖剤のほか、すでに公知の紫外線吸収剤として知られている成分、其の他の添加剤を組み合わせて使用しうる.
本発明のプロブコールを有効成分とするMT誘導剤は、皮膚疾患の予防ならびに治療に利用できる.
本発明のMT誘導剤は皮膚疾患、SBC産生抑制, 紫外線防止作用等の優れた効果をもち,日焼け症改善効果,日焼け予防効果, 皮膚疾患改善効果等を有する.従って本発明, MT誘導剤は皮膚疾患治療剤としてヒトの皮膚炎,皮膚がん、日焼け症, 神経皮膚炎,皮膚脈管炎,乾癬,多形性紅疹,ベージェット病,水痘製皮膚炎,セメント皮膚炎,湿疹,肛門性そう痒症などの皮膚疾患の治療用として有用であり,また本発明の化粧料は日焼けの予防や皮膚の老化の予防に有用なものである.
本発明のMT誘導剤は皮膚疾患、SBC産生抑制, 紫外線防止作用等の優れた効果をもち,日焼け症改善効果,日焼け予防効果, 皮膚疾患改善効果等を有する.従って本発明, MT誘導剤は皮膚疾患治療剤としてヒトの皮膚炎,皮膚がん、日焼け症, 神経皮膚炎,皮膚脈管炎,乾癬,多形性紅疹,ベージェット病,水痘製皮膚炎,セメント皮膚炎,湿疹,肛門性そう痒症などの皮膚疾患の治療用として有用であり,また本発明の化粧料は日焼けの予防や皮膚の老化の予防に有用なものである.
次に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない.
実施例1
へアレスマウス(BALB/c Jcl-hr, 6週令、雌、日本クレア)を用い、プロブコールの白色ワセリン混合物を皮膚外用に用いて、MTの誘導およびSBC産生抑制について検討した.ヘアレスマウスを、3.6%抱水クロラールの腹腔注射(0.8ml/100g)による麻酔下、背部皮膚に被検サンプルを8時間ごとに3回塗布した.
へアレスマウス(BALB/c Jcl-hr, 6週令、雌、日本クレア)を用い、プロブコールの白色ワセリン混合物を皮膚外用に用いて、MTの誘導およびSBC産生抑制について検討した.ヘアレスマウスを、3.6%抱水クロラールの腹腔注射(0.8ml/100g)による麻酔下、背部皮膚に被検サンプルを8時間ごとに3回塗布した.
最終塗布から24時間後、マウスを屠殺し、背部の皮膚を6mmトレパンにて採取した.採取した皮膚を用いて、抗ラット肝MT抗体を用いて免疫染色を行い、MTが誘導されているか確認した.免疫組織化学的染色法は特開平2-247200号に記載した方法に従った.即ち、採取した皮膚をホルマリン固定し、パラフィン包埋した後,常法に従って切り出し,ガラス切片をキシレン/アルコール濃度勾配にて脱水した後,其のガラス切片プレート上に固定した.次にプレートをPBS(20mMトリス、500mM NaCl(pH7.5)に10分間浸し,振盪した後,ブロッキング液(PBSに3%ゼラチンを加えたもの)にプレートをしたし,5分間振盪した.これをもう一度繰り返した後,PBSに1%ゼラチンを加えた抗体希釈液で400倍に希釈した1次抗体(抗ラットMT兎IgG抗体の希釈液)にプレートをしたし、一晩振盪した.ついで,TPBS液(PBSに0.05%Tween-20を加えたもの)にプレートを5分間振盪した.この操作をもう一度繰り返した後,GAR-HRP二次抗体液(ヤギ抗兎IgG抗体,ホースラヂシュペルオキシダーゼコンジュゲートの抗体希釈液による400倍希釈液)にプレートをしたし,1時間以上振盪した.さらにTPBSにプレートをしたし,5分間振盪する操作を二回くりかえした後,PBSにプレートをしたし,5分間振盪する操作を一回繰り返した.基質液〈60mgの基質を含む20ml氷冷メタノールと30%H2O2を60μlを含む100mlPBSを使用直前に混合して調製〉にプレートをしたし、45分間振盪した.蒸留水にプレートをしたし、軽く洗い封入した後写真をとり、染色性の検討を行った.各群における表皮核、真皮、および毛包とMT抗体との反応性を表1に示した.該表中,(―)はMT染色でMTと反応なし,(+)は弱い反応あり,(++)は反応あり,(+++)は強い反応ありを示す.
プロブコール(2mM含有白色ワセリン)はマウス皮膚の表皮核、真皮、毛包に強いMT誘導効果(+++)を示すことが認められた.対象として白色ワセリンのみを塗布したマウス表皮核、真皮、毛包においてはいずれも(+)で、MT誘導効果は認められなかった.従ってプロブコールは皮膚に強いMT誘導効果をもつことが示された.
前記の被検サンプル最終塗布から24時間後,マウス背部皮膚に紫外線(2000J/m2)照射を行なった.照射の24時間後,マウスを屠殺し,皮膚を6mmトレパンにて採取し,10%ホルマリンで固定した後,組織切片を作製し,これをヘマトキシリン・エオジン染色した.作製した組織染色標本長さ1mmあたりのSBCヲ数えた.其の結果を表2に示す.
プロブコール(2mM含有白色ワセリン)を塗布したマウスにおいては、紫外線照射後の細胞障害の指標であるSBCの産生数が0.6個/mm(平均)を示し、対象群である蒸留水塗布の場合の2.1個/mm(平均)に比べて、明らかな抑制効果が認められた.従って、プロブコールはMT誘導に伴う皮膚細胞障害の抑制効果をもつことが認められた.
さらにプロブコールの生体におけるMT誘導能を確認するため、種々の薬剤等によってMTが誘導されることが良く知られている肝臓,腎臓におけるプロブコールのMT誘導能を検討した.DDY雌マウス〈4週令〉にプロブコールを0、5、10、20mg/kg(0.5%CMC生理食塩水にて溶解),塩化亜鉛に20ミmg/kgを腹腔内投与し、投与後0、6,12時間にマウスを頚椎脱臼にて屠殺した. すべての固体の肝、腎を上記と同様な方法によりホルマリンにて固定し、パラフィン切片を作製し、HE染色とMT免疫染色を行なった. 抗MT抗体はN端7個のアミノ酸ペプチドにて作製されたPolyclonal抗体を使用した. またプロブコールによるMTの誘導がmRNAの誘導を伴う蛋白合成によることを確認するため.肝臓、腎臓を摘出し、その一部をグアニジン・ホットフェノール法で全RNAを抽出し.そのRNAを1.5%アガロースゲルで電気泳動後、泳動像をナイロンメンブレンに転写し、32Pを標識したMT-1, MT-II のcDNAプローブを用いたハイブリダイゼイションをおこなった後、オートラジオグラフィ(3−5日)にてmRNAを検出した.以下の表1に示した該表中のMT染色、mRNA反応性の程度は、(―)はで反応なし,(+)は弱い反応あり,(++)は反応あり,(+++)は強い反応ありを示す.
表1よりプロブコールは皮膚のみでなく肝臓,腎臓においても、強いMT誘導効果を示すことが認められた.
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- プロブコールを有効成分とするメタロチオネイン誘導剤
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