JP2007022940A - ケモカイン受容体作用増強剤 - Google Patents
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Abstract
経済的であり、短時間で効果的に作用するケモカイン受容体CXCR4の作用増強剤を提供することを課題とする。また、CXCR4の作用増強剤を用いたCXCR4作用調節物質のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
N−アセチルノイラミン酸硫酸エステル若しくはN−アセチルノイラミン酸ホモポリマー硫酸エステル、又はその薬学的に許容される塩により、CXCR4作用増強剤が提供される。造血幹細胞のCXCR4作用を増強させることができれば、造血幹細胞移植後の骨髄へのホーミングや生着が増強されることが予想され、従来より少ない幹細胞数でも移植を成立させる可能性があり、造血幹細胞移植補助剤として使用することができる。さらに、このCXCR4作用増強剤のCXCR4増強作用を利用することで、効果的に感度よくCXCR4作用調節物質をスクリーニングすることができる。
Description
他のCXCR4アンタゴニストとしてAMD3100が、G−CSFによる造血幹細胞動員効果を増強させることが報告されている(非特許文献1)。
その他、CXCR4作用を増強させる方向に作用するものとして、フコイダン(非特許文献2)、TGF−β1(Transforming growth factor β1)(非特許文献3、4)や、リゾホスファチジルコリン(Lysophosphatidylcholine:LPC)(非特許文献5)が研究レベルで報告されている。TGF−β1は、造血幹・前駆細胞に対して、反応性の減弱したCXCR4の作用を定常状態にまで戻す作用があると報告されているが(非特許文献6)、その作用を通常より強める薬剤については未だ報告されていない。また、TGF−β1及びLPCのいずれも、効果発現のためには18〜48時間という比較的長時間にわたる暴露が必要といわれている(非特許文献3〜6)。
1.N−アセチルノイラミン酸硫酸エステルを有効成分として含有するケモカイン受容体CXCR4作用増強剤。
2.N−アセチルノイラミン酸硫酸エステルを有効成分として含有する造血幹細胞移植補助剤。
3.前項1又は2に記載のN−アセチルノイラミン酸硫酸エステルは、下記一般式(I):
で表されるN−アセチルノイラミン酸モノマー硫酸エステル若しくはN−アセチルノイラミン酸ホモポリマー硫酸エステル、又はその薬学的に許容される塩である、CXCR4作用増強剤又は造血幹細胞移植補助剤。
4.CXCR4の測定系において、前項3に記載の一般式(I)で表されるN−アセチルノイラミン酸硫酸エステルの相互作用を調べることを特徴とするCXCR4作用調節物質のスクリーニング方法。
5.CXCR4の測定系において、被験化合物を加えた系と、前項3に記載の一般式(I)で表されるN−アセチルノイラミン酸硫酸エステルを加えた系での測定結果を比較することを特徴とするCXCR4作用調節物質のスクリーニング方法。
硫酸化反応終了後は、公知の方法、例えば濃縮、ゲルろ過、イオン交換などの各種クロマトグラフィー、再沈殿、透析などの処理を行うことができる。
ジメチルホルムアミド20mLに平均分子量約17,000のコロミン酸90mg、サルファトリオキシド・ピリジン複合体477mg及びジメチルアミノピリジン37mgを加え、30℃にて24時間撹拌した。反応後氷冷し、反応液を1M炭酸水素ナトリウム50mLに滴下し、中和した。中和後、濾過により固形物を分離し、透析チューブ(VISKASE SALES社製、分画分子量12,000〜14,000)を用いて、透析を行った。
透析後、ナトリウムイオン型のイオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B、オルガノ(株)社製)カラムに通した。カラム流出液を減圧下で濃縮し、凍結乾燥により、平均分子量約22,000の標記化合物126mgを粉体として得た。
本実施例において、得られたN−アセチルノイラミン酸ホモポリマー硫酸エステルを、便宜上、硫酸化コロミン酸(SCA)と呼ぶ。
マウス造血前駆細胞株(FDCP−mix)を、リン酸緩衝液(PBS)に浮遊させ、106/mLの細胞浮遊液を調製した。実施例1で調製した硫酸化コロミン酸(SCA)をPBSに溶解したものを、最終濃度が1mg/mLになるように該細胞浮遊液に加え、37℃で30分処理した。対照としてSCAを加えないPBSのみの系について同様の処理を行った。その後、PBSで細胞を2回洗浄し、CXCL12/SDF−1α受容体検出用キット(FLUOROKINE Receptor Detection Kit CXCL12/SDF-1, R&D Systems社製)を用いて、SDF−1のFDCP−mixへの特異結合を調べた。具体的には、キットの使用説明書に従い、フローサイトメトリーを用いて計測した。測定機器は、FACScan (Becton Dickinson社)を使用した。
マウス造血前駆細胞株(FDCP−mix)を、Iscove's Modified Dulbecco's Medium(IMDM)に浮遊させ、107/mLの細胞浮遊液を調製した。実施例1で調製した硫酸化コロミン酸(SCA)を最終濃度が1mg/mLになるようにPBSに溶解したものを該細胞浮遊液に加え、37℃で30分処理した。その後、IMDM+0.5v/v%ウシ血清アルブミン(BSA)で細胞を2回洗浄した。トランスウエル(Transwell, 直径6.5mm、ポアサイズ5μm、 Corning社)の下層(600μL容量)に、PBS若しくは遺伝子組換SDF−1(R&D Systems社)10μg/mLを12μL(最終濃度200ng/mL)加えた。トランスウェルの上層に106個の細胞を加え、37℃で3時間放置した後、下層に遊走した細胞数を血球計算板を用いた目算により計測し、細胞の走化性を調べた。その結果を図3に示した。
これにより、N−アセチルノイラミン酸硫酸エステルを有効成分として含有するCXCR4作用増強剤が得られる。造血幹細胞のCXCR4作用を増強させることができれば、造血幹細胞移植後の骨髄へのホーミングや生着が増強されることが予想され、従来より少ない幹細胞数でも移植を成立させられる可能性がある。したがって、本発明のCXCR4作用増強剤は、造血幹細胞移植補助剤として使用することができる。
さらに、被験化合物のCXCR4作用調節能の測定において、N−アセチルノイラミン酸硫酸エステルを測定系に使用することで、CXCR4作用調節物質を効果的に感度よくスクリーニングすることができる。そこで、新規なCXCR4作用調節物質、例えばCXCR4アゴニスト若しくはアンタゴニスト等を得ることができ、各種疾患の治療に応用されうる。
b 抗SDF−1抗体を加えた場合(図1)
c FDCP−mixとコントロールタンパク質の結合(図1)
Claims (5)
- N−アセチルノイラミン酸硫酸エステルを有効成分として含有するケモカイン受容体CXCR4作用増強剤。
- N−アセチルノイラミン酸硫酸エステルを有効成分として含有する造血幹細胞移植補助剤。
- 請求項1又は2に記載のN−アセチルノイラミン酸硫酸エステルは、下記一般式(I):
で表されるN−アセチルノイラミン酸モノマー硫酸エステル若しくはN−アセチルノイラミン酸ホモポリマー硫酸エステル、又はその薬学的に許容される塩である、CXCR4作用増強剤又は造血幹細胞移植補助剤。 - CXCR4の測定系において、請求項3に記載の一般式(I)で表されるN−アセチルノイラミン酸硫酸エステルの相互作用を調べることを特徴とするCXCR4作用調節物質のスクリーニング方法。
- CXCR4の測定系において、被験化合物を加えた系と、請求項3に記載の一般式(I)で表されるN−アセチルノイラミン酸硫酸エステルを加えた系での測定結果を比較することを特徴とするCXCR4作用調節物質のスクリーニング方法。
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