JP2007022837A - 調光ガラスおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化バナジウム膜が薄くても十分な調光機能を奏しうる調光ガラスを提供する。
【解決手段】ガラス板7と、酸化錫を主成分とする薄膜2と、二酸化バナジウムを含み、酸化バナジウムを主成分とする薄膜1と、を有する調光ガラスとする。酸化錫を主成分とする薄膜2により、酸化バナジウムを主成分とする薄膜1の結晶性が改善されるため、薄膜1が、例えば10nm以上50nm未満と薄くても、十分な調光機能を得ることができる。酸化バナジウムを主成分とする薄膜1の膜厚を減じると、窓ガラスにとって望ましくない黄色系の着色を排除できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築物または車両の窓ガラスに適した、光線透過率、特に赤外線の透過率を調整できる調光ガラスに関し、さらに、この調光ガラスの製造方法に関する。
二酸化バナジウム(VO2)は、68℃で単斜晶系から正方晶系ルチル構造に相転位する。この相転移は可逆的な半導体−金属転位であり、この相転移に伴って赤外線反射率が大きく増加する。この特性を利用すると、環境温度に応じて太陽光の透過率が自動的に調整される調光ガラスを実現できる可能性がある。
窓ガラスとしての使用を考慮すると、上記転移温度はやや高い。このため、酸化バナジウム膜に、他の金属を添加して転移温度を低下させることが検討されている。
特開平7−331430号公報には、反応性スパッタリング法により、酸化バナジウム膜にタングステンを添加して転位温度を下げることが開示されている。この公報によると、タングステンの添加により、−81℃〜67℃の範囲内で転移温度を任意に設定することが可能となる。この公報によると、V1-xx2(X=0.0004〜0.066)膜の最適厚さは50nm〜100nmである(段落0015)。
特開平8−3546号公報には、反応性スパッタリング法により、酸化バナジウム膜にモリブデンを添加して転位温度を下げることが開示されている。この公報によると、モリブデンの添加により、−38℃〜67℃の範囲内で転移温度を任意に設定することが可能となる。この公報によると、モリブデンを添加した酸化バナジウム膜の最適厚さは50nm〜100nmである(段落0015)。
酸化バナジウム膜を形成した調光ガラスに他の機能を付加することも検討されている。特開2003−94551号公報には、酸化バナジウム膜上に、光触媒機能を有する酸化チタン膜を形成することが開示されている。酸化チタン膜は、酸化バナジウム膜よりも低い屈折率を有するため、反射防止機能も発揮する。この公報には、大きな反射防止効果を得るために、酸化チタン膜で酸化バナジウム膜を挟持した膜構成も開示されている。この公報では、厚さ50nmの酸化バナジウム膜に対する、酸化チタン膜の反射防止効果が検証されている。
特表2002−516813号公報には、タングステンとフッ素とを添加した酸化バナジウム膜が記載されている。この公報によれば、タングステンとともにフッ素を添加することにより、酸化バナジウム膜の光学的特性は改善する。この公報には、反射を抑えて透過率を高めるために、酸化バナジウム膜とガラス等の基体との間に酸化チタン膜を挿入すること、さらに酸化バナジウム膜上に珪素オキシ窒化物層を形成すること、が記載されている。
特開平7−331430号公報 特開平8−3546号公報 特開2003−94551号公報 特表2002−516813号公報
二酸化バナジウムによる調光機能を十分に得るために酸化バナジウム膜を厚くするにつれて、酸化バナジウム膜を形成したガラス板からの反射色は黄色になり、さらに赤色系に着色する。これらの色は、建築物や車両の窓ガラスの商品価値を損なうため、避けるべきである。他方、好ましくない着色を避けるために酸化バナジウム膜を薄くすると、調光機能を十分に得ることはできない。
そこで、本発明は、酸化バナジウム膜が薄くても十分な調光機能を得ることができる新たな調光ガラスを提供し、さらに、この調光ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、ガラス板と、前記ガラス板上に形成された多層膜とを有し、前記多層膜が、酸化錫を主成分とする薄膜と、前記酸化錫を主成分とする薄膜上に形成された酸化バナジウムを主成分とする薄膜と、を有し、前記酸化バナジウムを主成分とする薄膜が二酸化バナジウムを含む調光ガラスを提供する。
また、本発明は、本発明の調光ガラスの製造方法として、原料に含まれる金属化合物の熱分解を伴う成膜方法により、ガラス板上に、酸化錫を主成分とする薄膜と酸化バナジウムを主成分とする薄膜とをこの順に形成する調光ガラスの製造方法を提供する。
酸化錫は、二酸化バナジウムの高温での結晶構造と同じルチル構造を示す。このため、本発明によれば、酸化バナジウムを主成分とする薄膜の結晶性が向上し、その結果、膜厚が薄くても十分な調光機能が得られる。本発明の製造方法によれば、本発明による上記効果がさらに顕著となる。
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に示す調光ガラスは、ガラス板7と、ガラス板7上に形成された多層膜5とを有し、多層膜5が、酸化錫を主成分とする薄膜2と、この薄膜2上に形成された酸化バナジウムを主成分とする薄膜1と、から構成されている。
本明細書において、主成分とは、慣用のとおり、含有率が50重量%以上を占める成分をいう。薄膜の特性は主成分によって概ね定まるので、主成分をもって薄膜の特性を判断することは妥当である。以下、記載の簡略化のために、酸化錫を主成分とする薄膜2を酸化錫膜、酸化バナジウムを主成分とする薄膜1を酸化バナジウム膜と表記することがあるが、この表記は、これら薄膜への副成分の添加を排除するものではない。
酸化錫膜2は、図1に示すようにガラス板7上に直接形成してもよく、図2に示すようにガラス板7上に形成した下地膜3の上に形成してもよい。酸化ナトリウム等のアルカリ成分を含むガラス板、例えばソーダライムガラス、をガラス板7として用いる場合には、アルカリバリア機能を有する下地膜3をガラス板7上に配置するとよい。
アルカリバリア機能を有する下地膜3としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸窒化シリコンおよび酸炭化シリコンから選ばれる少なくとも1種を含む、あるいは主成分とする、膜が適している。下地膜3の好ましい膜厚は、5nm以上100nm以下である。
アルカリ成分を含まないガラス板、例えばアルカリ成分を含まないアルミノシリケートガラスやホウ珪酸ガラス、あるいは石英ガラス、を用いる場合には、アルカリバリア機能を付与する必要はない。しかし、この場合も、反射率の調整、反射および透過色調の制御等のために、下地膜3を配置してもよい。
酸化錫膜2の膜厚は、特に制限されないが、酸化錫膜2が厚すぎると調光ガラスが反射干渉色を呈することがあるため、100nm以下、さらに80nm以下、特に50nm以下が好ましい。酸化バナジウム膜1の結晶性を改善するという目的のみを考慮する限りにおいて、酸化錫膜2は、膜がルチル構造を示しうる範囲で薄いことが好ましく、例えば40nm以下であってもよい。酸化錫膜2がルチル構造をとりうる膜厚の範囲の下限は、成膜法等に依存する。酸化錫膜2は、一般には10nm以上とするとよいが、いわゆる熱分解法による場合にはこれよりも薄い膜でもルチル構造をとりうる。熱分解法により成膜する場合における酸化錫膜2の好ましい膜厚は5nm以上である。以上より、酸化錫膜2の好ましい膜厚は、5nm以上100nm以下、特に5nm以上50nm以下、である。
従来、反射率低減の観点から用いられていた酸化チタン膜は、スパッタリング法により成膜された場合には、非晶質となるか、結晶になったとしてもアナターゼ構造を示し、熱分解法により成膜された場合には、アナターゼ構造またはアナターゼ構造とルチル構造とが混在した構造を示す。このため、酸化チタン膜は、酸化バナジウム膜の結晶性を改善するための下地としては酸化錫よりも劣る。
酸化バナジウム膜1は、ルチル構造を示す酸化錫膜2の表面上に堆積するため、その結晶性は良好となる。このため、膜厚が薄くても、酸化バナジウム膜1からは良好な調光機能を得ることができる。酸化バナジウム膜1の膜厚は、10nm程度であってもよいが、十分な調光機能を得るためには20nm以上であることが好ましい。一方、酸化バナジウム膜1が厚すぎると、調光ガラスの反射色は黄色味を帯びる。このため、酸化バナジウム膜1の膜厚は、70nm以下、さらには60nm以下が好ましく、50nm未満であってもよい。以上より、酸化バナジウム膜1の好ましい膜厚は、10nm以上70nm以下であり、特に10nm以上50nm未満である。
従来、酸化バナジウム膜は、厚く成膜されていたため、膜の反射色は黄色系ないし赤色系に明瞭に着色していた。このため、相転移に伴う色の変化の視認も容易であり、温度変化を視認できる特性が温度センサ等としての膜の利用につながってもいた。酸化バナジウム膜を代表的なサーモクロミック膜(熱変色性膜)に分類し、二酸化バナジウムが相転移する特性をサーモクロミック特性と呼ぶことがあるのも膜の明瞭な着色に由来している。本発明の調光ガラスでは相転移に伴う色の変化が明瞭に視認できない場合がある。しかし、窓ガラスに求められる調光機能は、主として熱線の透過率の制御であるため、色の変化を明瞭に視認できなくても差し支えはない。建築物、車両では、色調の変化が少ない窓ガラスが好まれることもある。
熱線の透過率の変化の程度は、赤外域における特定の波長、例えば波長1500nmにおける透過率の変化によって示すのが簡便である。本発明の調光ガラスを用いると、25℃で測定した波長1500nmにおける光線透過率(以下、「T1500(25)」と表記することがある)よりも65℃で測定した波長1500nmにおける光線透過率(以下、「T1500(65)」と表記することがある)が低く、T1500(25)とT1500(65)との差分を7%以上、10%以上、さらには15%以上、とすることができる。膜厚その他を適切に制御すれば、T1500(25)とT1500(65)との差分を18%以上、さらには20%以上、場合によっては23%以上、とすることも可能である。
本発明によれば、酸化バナジウム膜1の膜厚が薄く、例えば10nm以上50nm未満であっても、T1500(25)とT1500(65)との差分を7%以上、10%以上、さらには15%以上、にまで拡大することができる。
酸化バナジウム膜1が薄いため、本発明の調光ガラスから、窓ガラスとして望ましくない着色を排除するのは比較的容易である。汎用の表色系であるL***表色系による表示において、大きなa*の値は赤色系の着色を、大きなb*の値は黄色系の着色を意味する。本発明の調光ガラスでは、ガラス板7における多層膜5が形成された表面(膜面)と反対側の表面(非膜面)9についてD65光源を用いて測定した反射色をL***表色系により表示したときに、a*の値を10以下、さらには8以下、b*の値を20以下、さらには15以下、とすることができる。D65光源は、より正確には、CIEにより規定されたD65光源である。
***表色系において、小さなa*の値(大きな絶対値を有する負のa*の値)は緑色系の着色を、小さなb*の値は青色系の着色を意味する。これらの着色は、赤色系、黄色系の着色とは異なり、窓ガラスとして一般に受け入れられやすいため、調光ガラスの上記反射色のa*の値やb*の値が負の方向に大きく振れても、実用上は大きな問題になりにくい。本発明の調光ガラスにおいて、上記反射色のa*の値やb*の値の下限は、特に制限されないが、過度な着色を排除するという観点からは、a*の値は−20以上、b*の値は−30以上が好ましい。
本発明によれば、十分な調光機能を有しながらも、望ましくない着色が排除された調光ガラスを提供することが可能となる。本発明は、例えば、T1500(25)よりもT1500(65)が低く、T1500(25)とT1500(65)との差分が7%以上、さらには10%以上であり、ガラス板7における多層膜5が形成された表面と反対側の表面9についてD65光源を用いて測定した反射色をL***表色系により表示したときに、a*の値が10以下、b*の値が20以下、である調光ガラスを提供できる。
窓ガラスについては、透過色についても望ましくない色調を避けることが好ましい。上記程度の調光機能(熱線透過制御機能)を実現しても、本発明による調光ガラスは、D65光源を用いて測定した透過色を、L***表色系により表示したときに、a*の値を10以下、好ましくは8以下、b*の値を20以下とすることができる。
透過色のa*およびb*の絶対値を小さくして透過色の色調を無色(ニュートラル)に近づけるためには、酸化錫膜2にアンチモンを含有させるとよい。酸化バナジウム膜1を透過する光は、酸化バナジウム膜1が薄くても黄色がかっていることが多いが(b*>0)、アンチモンを含有する酸化錫膜は、透過色が青味を帯びているために(b*<0)、透過色はニュートラルとなる。アンチモンの添加により、b*の絶対値を15以下、さらには10以下、にまで抑えることも可能である。
二酸化バナジウムが単斜晶から正方晶系ルチル構造に相転位する転位温度を68℃から低下させるために、酸化バナジウム膜1にはバナジウム以外の金属元素、例えばタングステン、を添加するとよい。本発明者の検討によると、転位温度を低減させる金属元素としては、タングステンの他に、クロム、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、インジウム等が有効であった。従って、酸化バナジウム膜1は、さらにタングステンを含有していてもよく、タングステンに代えて、またはタングステンとともに、クロム、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムおよびインジウムから選ばれる少なくとも1つを含有していてもよい。
これら元素のうち、タングステンは転移温度を効果的に低減させる点で有利であり、クロム、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、インジウムは原料が比較的安価である点で有利である。
これら金属元素の添加量が少なすぎると転移温度を十分に低下させることができず、逆に多すぎると二酸化バナジウムの結晶構造が過度に乱れて十分な調光機能を得ることができなくなる。このため、添加する金属元素の適切な濃度は、金属元素の種類にもよるが、全金属元素の0.01〜10原子%程度である。
酸化バナジウム膜1には、二酸化バナジウム(VO2)が含まれている必要があるが、調光機能が得られる限り、その他の価数のバナジウムの酸化物が含まれていてもよい。二酸化バナジウム含有の有無は、例えばX線回折法により判断することができる。調光ガラスが酸化バナジウム以外に調光機能を奏しうる材料を含まない場合には、膜の分析に代えて、光線透過率が室温から70℃程度の環境温度に応じて変化する調光機能を測定することにより、酸化バナジウム膜に二酸化バナジウムが存在することを確認してもよい。
酸化錫膜2および酸化バナジウム膜1を形成する手段としては、スパッタリング法等の物理的成膜法、CVD(Chemical Vapor Deposition法)やスプレー法等の化学的成膜法が挙げられ、本発明の調光ガラスは、いずれの成膜法を用いても得ることはできる。スプレー法としては、原料を溶液として供給する溶液スプレー法、原料を粉末として供給する粉末スプレー法等が挙げられる。ただし、原料に含まれる金属化合物の熱分解を伴う熱分解法を用いると、高温で膜が成長するため、薄くても良好な結晶性を有する膜を得やすい。少なくとも酸化錫膜2および酸化バナジウム膜1を熱分解法により成膜する際には、ガラス板7を、400℃以上、特に450℃以上、に保持しておくことが好ましい。
膜の形成方法が同じであれば、これらを一連の工程として実施でき、短時間の成膜も可能になる。このため、量産工程における生産効率を考慮すると、酸化錫膜2および酸化バナジウム膜1、さらには下地膜3を含む多層膜5のすべてを、同一の方法、特にCVD法により形成することが好ましい。
以下、CVD法により各膜を成膜する場合の原料を例示する。
酸化錫膜2を形成するための錫原料としては、塩化第二スズ(四塩化スズ)、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、テトラメチルスズ、テトラブチルスズ、ジオクチルスズジクロライド、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジアセテート等が挙げられ、特に塩化第二スズが好適である。錫原料を酸化するための酸化剤としては、酸素、水蒸気、乾燥空気等を用いるとよい。
酸化錫膜2にアンチモンを添加する場合のアンチモン原料としては、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン等を用いるとよい。
酸化バナジウム膜1を形成するためのバナジウム原料としては、塩化バナジウム、オキシ塩化バナジウム等の塩素を含むバナジウム化合物が好ましい。バナジウム化合物を酸化するための酸化剤としては、酸素、水蒸気、乾燥空気等が挙げられる。塩素を含むバナジウム化合物を用いる場合の酸化剤として水蒸気を用いると、バナジウム化合物の分解を促進できる。
酸化バナジウム膜1に添加すべき金属元素の原料を以下に例示する。タングステン原料としては、塩化タングステン、オキシ塩化タングステン等が挙げられる。クロム原料としては、塩化クロム、アセチルアセトンクロム等が挙げられる。鉄原料としては、塩化鉄、アセチルアセトン鉄等が挙げられる。コバルト原料としては、塩化コバルト、アセチルアセトンコバルト等が挙げられる。マンガン原料としては、塩化マンガン、アセチルアセトンマンガン等が挙げられる。ニッケル原料としては、塩化ニッケル、アセチルアセトンニッケル等が挙げられる。銅原料としては、塩化銅、アセチルアセトン銅等が挙げられる。亜鉛原料としては、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛等が挙げられる。アルミニウム原料としては、塩化アルミニウム、アセチルアセトンアルミニウム等が挙げられる。インジウム原料としては、塩化インジウム、アセチルアセトンインジウム等が挙げられる。
下地膜3として好適な酸化シリコン膜を形成するためのシリコン原料としては、モノシラン、ジシラン、トリシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、1,2−ジメチルシラン、1,1,2−トリメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメチルジシラン、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート等が挙げられる。この場合の酸化剤としては、酸素、水蒸気、乾燥空気、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、オゾン等が挙げられる。なお、シランを使用した場合にガラス板の表面に到達するまでにシランの反応を防止する目的で、エチレン、アセチレン、トルエン等の不飽和炭化水素ガスを併用してもかまわない。
同じく下地膜3として好適な酸化アルミニウム膜を形成するためのアルミニウム原料としては、トリメチルアルミニウム、アルミニウムトリイソポプロポキサイド、塩化ジエチルアルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、塩化アルミニウム等が挙げられる。この場合の酸化剤としては、酸素、水蒸気、乾燥空気等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
150×150mmに切断した厚さ1mmのアルミノシリケートガラス板をメッシュベルトに乗せて加熱炉を通過させ、約600℃にまで加熱した。この加熱したガラス板をさらに搬送しながら、搬送路上方に設置したコータから、塩化第二スズ(蒸気)、水蒸気および窒素からなる混合ガスを供給し、ガラス板上に厚さ約20nmの酸化錫膜を形成した。このガラス板を徐冷した後に、再度、メッシュベルトに乗せて加熱炉を通過させ、約500℃にまで加熱した。この加熱したガラス板をさらに搬送しながら、ガラス搬送路上方に設置したコータから、塩化バナジウム(蒸気)、水蒸気、塩化タングステン(蒸気)および窒素からなる混合ガスを供給し、酸化錫膜上に、膜厚約40nmの酸化バナジウム膜を形成した。この際、塩化タングステンは、タングステンが酸化バナジウム膜における全金属元素(V+W)の0.8原子%となるように、混合した。
こうして得た調光ガラスの調光機能を評価するため、分光光度計(日立製「U−4100」)にクライオスタット(オックスフォード・インストルメンツ製「オプティスタット」)を設置し、測定温度を室温(25℃)と65℃に設定した場合の透過率曲線を測定し、波長1500nmでの透過率差を求めた。さらに、上記分光光度計「U−4100」およびCIEのD65光源を用い、室温において非膜面入射の反射色(L***表色系でのa*、b*)および透過色(L***表色系でのa*、b*)を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
(実施例2〜10)
塩化タングステンに代えて、アセチルアセトンクロム(実施例2)、アセチルアセトン鉄(実施例3)、アセチルアセトンコバルト(実施例4)、アセチルアセトンマンガン(実施例5)、アセチルアセトンニッケル(実施例6)、アセチルアセトン銅(実施例7)、アセチルアセトン亜鉛(実施例8)、アセチルアセトンアルミニウム(実施例9)、アセチルアセトンインジウム(実施例10)を用いた以外は、実施例1と同様にして調光ガラスを得た。これらの金属有機化合物も、塩化タングステンと同様、蒸気としてガラス板上に供給した。酸化バナジウム膜の原料は、添加する各金属元素Mが酸化バナジウム膜における全金属元素(V+M)の0.3〜0.9原子%となるように、混合した。
各調光ガラスについて、実施例1と同様にして特性を測定した。測定結果を表1に示す。
(実施例11)
酸化錫膜を成膜するための混合ガスに、三塩化アンチモン(蒸気)をさらに添加した以外は実施例1と同様にして調光ガラスを得た。
この調光ガラスについて、実施例1と同様にして特性を測定した。測定結果を表1に示す。
(比較例1)
150×150mmに切断した厚さ1mmのアルミノシリケートガラス板をメッシュベルトに乗せて加熱炉を通過させ、約600℃にまで加熱した。この加熱したガラス板をさらに搬送しながら、搬送路上方に設置したコータから、チタンイソプロポキシドおよび窒素からなる混合ガスを供給し、ガラス上に厚さ約20nmの酸化チタン膜を形成した。その後、実施例1と同様にして、酸化チタン膜上に、膜厚約40nmのタングステンが添加された酸化バナジウム膜を形成した。
この調光ガラスについて、実施例1と同様にして特性を測定した。測定結果を表1に示す。
(比較例2)
比較例1と同様にして、150×150mmに切断した厚さ1mmのアルミノシリケートガラス板上に、厚さ約20nmの酸化チタン膜を形成し、さらにタングステンが添加された酸化バナジウム膜を形成した。ただし、酸化バナジウム膜の膜厚は、約80nmとした。
この調光ガラスについて、実施例1と同様にして特性を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1〜11の調光ガラスでは、比較例1の調光ガラスと比較して、波長1500nmにおける温度変化に伴う透過率変化が大きくなった。これは、酸化タングステン膜にとって、酸化錫膜が酸化チタン膜よりも優れた下地であることを示している。比較例2の調光ガラスの反射色は、b*値が大きく黄色系であるが、実施例1〜11の調光ガラスの反射色は、b*値が小さく、さらに実施例11を除いては負の値をとっている。実施例11の調光ガラスの透過色は、a*値とともにb*値の絶対値が小さく(ともに絶対値10未満)、ニュートラル(無色)に近くなった。
実施例1の調光ガラスについて測定した分光透過率曲線を図3に示す(測定温度25℃、45℃、55℃、65℃)。昇温により、赤外域における透過率は大きく減少したが、可視域における透過率の変化の程度は小さかった。また、55℃で測定した分光透過率曲線と65℃で測定した同曲線との間に実質的な差異はなかった。波長1500nmにおける透過率の温度変化を図4に示す。図3および図4における矢印の長さが、T1500(25)とT1500(65)との差分に相当する。
本発明は、窓ガラスに有用な、環境応答性を有する調光ガラスを提供するものとして、当該技術分野において多大な利用価値を有する。
本発明の調光ガラスの一例を示す断面図である。 本発明の調光ガラスの別の一例を示す断面図である。 実施例1の調光ガラスの分光透過率曲線である。 実施例1の調光ガラスの波長1500nmにおける透過率の温度変化を示す図である。
符号の説明
1 酸化バナジウム膜
2 酸化錫膜
3 下地膜
5 多層膜
7 ガラス板
9 ガラス板の非膜面

Claims (11)

  1. ガラス板と、前記ガラス板上に形成された多層膜とを有し、前記多層膜が、酸化錫を主成分とする薄膜と、前記酸化錫を主成分とする薄膜上に形成された酸化バナジウムを主成分とする薄膜と、を有し、前記酸化バナジウムを主成分とする薄膜が二酸化バナジウムを含む調光ガラス。
  2. 前記酸化バナジウムを主成分とする薄膜が、タングステンを含有する請求項1に記載の調光ガラス。
  3. 前記酸化バナジウムを主成分とする薄膜が、クロム、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムおよびインジウムから選ばれる少なくとも1つを含有する請求項1または2に記載の調光ガラス。
  4. 25℃で測定した波長1500nmにおける光線透過率T1500(25)よりも65℃で測定した波長1500nmにおける光線透過率T1500(65)が低く、T1500(25)とT1500(65)との差分が7%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の調光ガラス。
  5. 前記酸化錫を主成分とする薄膜が、アンチモンを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の調光ガラス。
  6. 前記酸化バナジウムを主成分とする薄膜の膜厚が、10nm以上70nm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の調光ガラス。
  7. 前記酸化バナジウムを主成分とする薄膜の膜厚が、10nm以上50nm未満である請求項6に記載の調光ガラス。
  8. 25℃で測定した波長1500nmにおける光線透過率T1500(25)よりも65℃で測定した波長1500nmにおける光線透過率T1500(65)が低く、T1500(25)とT1500(65)との差分が7%以上である請求項7に記載の調光ガラス。
  9. 1500(25)とT1500(65)との差分が15%以上である請求項8に記載の調光ガラス。
  10. 25℃で測定した波長1500nmにおける光線透過率T1500(25)よりも65℃で測定した波長1500nmにおける光線透過率T1500(65)が低く、T1500(25)とT1500(65)との差分が7%以上であり、
    前記ガラス板における前記多層膜が形成された表面と反対側の表面についてD65光源を用いて測定した反射色をL***表色系により表示したときに、a*の値が10以下、b*の値が20以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載の調光ガラス。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の調光ガラスの製造方法であって、原料に含まれる金属化合物の熱分解を伴う成膜方法により、ガラス板上に、酸化錫を主成分とする薄膜と酸化バナジウムを主成分とする薄膜とをこの順に形成する調光ガラスの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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