JP2007021857A - 流体機械の金属製回転子の樹脂コーティング方法ならびに樹脂被覆金属製回転子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インサート成形により流体機械の金属製回転子表面に樹脂をコーティングする方法であって、前記金属製回転子を30℃以上前記樹脂の溶融射出温度以下の範囲内で、また、インサート成形用金型を30℃以上前記樹脂の溶融射出温度−50℃以下の範囲内で、各々予め定められた温度に加熱する予加熱工程と、予加熱された前記金属製回転子が予加熱された前記インサート成形用金型内に位置された状態で、溶融樹脂を射出するインサート成形工程と、成形物を金型内で保持する保持工程と、前記インサート成形物を金型から取出し、室温まで徐冷する冷却工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
第4には、前記金属製回転子の表面にコーティングされる前記樹脂の厚さが、5μm〜10mmの範囲で、金属製回転子表面の各部位において任意の厚さで形成できることを特徴とする樹脂コーティング方法を提供する。
Tme−220℃≦Tca≦Tme−70℃
さらに、加熱冷却にともなう剥離応力をより大きくするためには、次式の範囲とすることが好適に考慮される。
Tme−150℃≦Tca≦Tme−80℃
このような関係は、動的回転子のスーパーチャージャー等の性能の観点からも好適なものとして導かれるものである。従って、従来のインサート成形の知見からは全く想到できず、しかもその効果は予見できないものである。
本発明の樹脂被覆金属製回転子を、エンジンに空気を過給するスーパーチャージャーであるルーツ型の送風機のアルミニウム合金製回転子として使用した例を示す。所定の大きさのまゆ型断面形状を有する、Si、Fe、Cu、Mn等を各1%未満含有するアルミニウム合金(JISH4100に記載の合金A6N01S−T5)製回転子1(図1、以下Al合金製回転子と呼ぶ)を用いた。Al合金製回転子の軽量化のために、まゆ型形状の断面2の2箇所の幅広部分3に貫通した中空部4を設け、各中空部の中央には、まゆ型形状の中心部5と長手方向頂点6をつなぐリブ7を形成するとともに、まゆ型形状の中心部5には、回転子の軸8(金属製)が圧入される穴部9が形成される構造である。
<2>評価方法
(室温試験)
1種類の成形条件下で、5個のインサート部材(Al合金製回転子)の樹脂コーティングを行い、金型から取り出し、冷却後、室温で7日間以上経過した成形品の樹脂の割れを調べた。
(加熱冷却試験)
樹脂被覆金属製回転子は、過酷な条件下で使用されるものであるので、同一のコーティング方法で得られた5個の成形品すべてが前記室温試験で樹脂の割れが生じなかった場合、その内の4個を、空気中−30℃で2時間保持、200℃で2時間保持し、再び−30℃で同時間保持、200℃で同時間保持という過熱冷却試験を10サイクル行い、成形品の樹脂の割れを調べた。
(熱水試験)
樹脂被覆金属製回転子は、高温多湿雰囲気中、水中、熱水中等の環境下で使用される場合があるので、前記加熱冷却試験で樹脂割れを生じなかった成形品2個を、このなかでも過酷な環境である90℃の熱水中に8時間浸漬する熱水試験を行った。
(剥離試験)
流体機械内において、樹脂被覆金属製回転子の外周表面とケーシング内壁との間隙は、狭く設計されており、前述のとおり、これら同士が接触したり、あるいは、流体に混入する異物と接触するなどの種々の応力を受ける場合がある。前記種々の試験を行った成形品の内、樹脂割れを生じなかった成形品2個について、ケーシング内壁に最も接近する回転子長手方向頂点部分(後述の図1の6)のコーティングされた樹脂層の複数箇所をカッターによって幅10mm、長さ30mmの短冊状に、インサート部材(アルミニウム)表面まで切断した。前記短冊状試験片の一端の樹脂層をインサート部材から剥離し、引張試験機を用いて、成形品本体を試験機の所定位置に固定し、前記剥離部分の樹脂端を把持し、剥離が起こるときの応力、すなわち、剥離応力を測定した。
(コーティング樹脂層の透過型電子顕微鏡観察)
成形品表面にコーティングされた樹脂の割れは、成形後の樹脂の構造的なひずみと密接に関係すると考えられるので、下記の方法によって、コーティングされた樹脂層の透過型電子顕微鏡(TEM)観察のための試料作製を行った。
前記成形方法によって得られた成形品表面のコーティング樹脂層を切り出し、まず、その一部(薄片)を四酸化オスミウム染色し、これをエポキシ樹脂包埋した後、ステンレスナイフで切削し、ピラミッド形のトリミング試料を作製した。
(スーパーチャージャーによる回転子の性能評価)
図1に示すAl合金製回転子に樹脂コーティングした前記樹脂被覆Al合金製回転子を、図2に示すスーパーチャージャーの回転子とした。なお、スーパーチャージャーのケーシング内壁と回転子の間隙を0.13mmとした。図3に示すスーパーチャージャー性能評価装置11を用い、前記樹脂被覆Al合金製回転子の性能試験を行った。
ηad ={κ/(κ−1)P01Q01/60[(P02/P01)(κ-1)κ−1)]}/L
試験条件B:スーパーチャージャーは、大気を吸入する構造であるため、固体粒子が混入することがある。スーパーチャージャーは、このような固体の異物が混入しても安定に作動する必要がある。そこで、試験開始10分後、回転子の回転数9,000rpmの稼動状態において、空気吸入口より、スーパーチャージャー内に、回転子とケーシング内壁の間隙0.15mmより大きな1.8mmφの鋼球500個を、30分かけて、徐々に挿入した以外は試験条件Aと同条件で試験を行い、異物混入による回転子およびケーシング内壁への影響を調べた。併せて、断熱効率を算出した。
<3>ショットブラスト処理したAl合金製回転子の樹脂コーティング
(実施例1)
ショットブラスト処理したAl合金製回転子(インサート部材)の表面温度220℃、金型温度80℃で、290℃の溶融ノリルGTX樹脂(日本GEプラスチックス(株)製ノリルGTX6601)を射出し、前記Al合金製回転子表面に0.7mm厚でコーティングし、その後、圧力98MPaで2分間保持し、金型から成形品を取り出し、これを室温まで40分間かけて徐冷した。表1に示したように、得られた成形品は、室温で7日間以上経過してもコーティングした樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験を行った結果、すべての成形品において、樹脂割れは生じなかった。また、加熱冷却試験後の剥離応力は、3.9MPa〜6.8MPaであった。これは、インサート部材のAl合金と樹脂が十分密着している値であり、この条件下で得られた成形品は、過酷な温度変化のある空気中での使用が可能であることを示している。
(実施例2)
金型温度を150℃、溶融樹脂温度を270℃、保持圧力を29.4MPa、金型から成形品を取り出した後の室温までの冷却時間を1時間とした以外は、実施例1と同様に成形を行った。表1に示したように、得られた成形品は、室温で7日間以上経過してもコーティングした樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験を行った結果、すべての成形品において、樹脂割れは生じなかった。また、加熱冷却試験後の剥離応力は、4.9MPa〜6.8MPaであった。これは、インサート部材のAl合金と樹脂が十分密着している値であった。この条件下で得られた成形品は、過酷な温度変化のある空気中での使用が可能であることを示しているが、剥離応力の値は、実施例1の場合より優れており、金型温度は80℃より150℃の方がより好ましいと言える。
(実施例3)
金型温度を180℃とした以外は、実施例2と同様に成形を行った。表1に示したように、得られた成形品は、室温で7日間以上経過してもコーティングした樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験を行った結果、すべての成形品において、樹脂割れは生じなかった。また、加熱冷却試験後の剥離応力は、実施例2とほとんど同様の結果であった。金型温度を実施例2の場合より30℃高くして成形したが、成形品の性能にほとんど差異がないことがわかった。
(実施例4)
インサート部材温度を160℃とした以外は、実施例2と同様に成形を行った。表1に示したように、得られた成形品は、室温で7日間以上経過してもコーティングした樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験を行った結果、すべての成形品において、樹脂割れは生じなかった。また、加熱冷却試験後の剥離応力は、実施例1とほとんど同様の結果であった。金型温度を実施例2と同一にして、インサート部材温度を実施例2の場合より60℃低い温度にして得られた成形品は、わずかに剥離応力が低下したことから、インサート部材温度は金型温度より高く設定することがより好ましいと言える。
(実施例5)
インサート部材温度を230℃とした以外は、実施例2と同様に成形を行った。表1に示したように、得られた成形品は、室温で7日間以上経過してもコーティングされた樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験後にも樹脂割れがなく、また、密着性は、実施例2とほとんど同様の結果であった。この結果も、インサート部材温度が金型温度より高い方が好ましいことを示している。すなわち、インサート部材と金型を、別々に異なる温度設定ができることが好ましい成形の態様であることを示している。
(実施例6)
前記のノリルGTX樹脂95重量%、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(三井デュポンフロロケミカル社製TALP10F−1、平均粒径:3μm、粒径6μm以下の含量:90%、比表面積:8m2/g)5重量%の混合物を、予め溶融混練して作製したコンパウンドを樹脂素材とした以外は、実施例5と同様に成形を行った。表1に示したように、得られた成形品は、室温で7日間以上経過してもコーティングされた樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験後にも樹脂割れはなく、また、密着性は、実施例1とほとんど同様の結果であった。摺動特性に優れたPTFE自体は、他の材料との接着性がなく、また、溶融状態でも流動性がないため射出成形が困難な樹脂であるが、この実施例の結果は、ノリルGTXのようなエンジニアリング樹脂に、平均粒径3μmのPTFE粉末を5重量%添加したものであれば、射出成形によりインサート部材表面へ樹脂コーティングが可能であることおよび樹脂に、潤滑性、耐摩耗性等の摺動特性を付与できる可能性があることを示している。
(実施例7)
前記ノリルGTX樹脂90重量%、前記PTFE粉末10重量%の混合物を、予め溶融混練して作製したコンパウンドを樹脂素材とした以外は、実施例6と同様に成形を行った。表1に示したように、得られた成形品は、室温で7日間以上経過してもコーティングされた樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験後にも樹脂割れはなく、また、密着性も、実施例1とほとんど同様の結果であった。すなわち、PTFE粉末10重量%添加された成形品は、過酷な温度変化のある空気中での使用が可能であることを示している。さらに、一般に、固体潤滑剤であるPTFEが10重量%添加された樹脂は、潤滑特性に優れ、マトリックス樹脂(主成分)の耐摩耗性が向上することが知られているので、この発明の成形方法は、潤滑性、耐摩耗性等の摺動特性に優れた成形品を提供できるものとなる。
(比較例1)
インサート部材である前記Al合金製回転子の温度を25℃とした以外は、実施例1と同様に成形を行った。成形品3個を作製したが、表1に示したように、いずれも成形後、金型から取り出した時点で樹脂割れが発生していた。この結果は、インサート部材を予加熱せず、金型のみ予加熱する従来の技術では、成形品の樹脂割れが発生しやすいことを再現したものとなった。すなわち、実施例1〜7に示したように、インサート部材(金属製回転子)と金型の両方を、別々に予加熱して成形する態様のこの発明の特徴を立証するものと言える。
(比較例2)
金型温度を25℃とした以外は、実施例1と同様に成形を行った。成形品3個を作製したが、表1に示したように、いずれも成形後、金型から取り出した時点で樹脂割れが発生していた。この結果は、前記比較例1と同様に、インサート部材(金属製回転子)と金型のいずれか一方を予加熱する態様の成形方法では、樹脂割れのない成形品を製造することができないことを示している。
(比較例3)
実施例2と同様に成形を行い、金型から成形品を取り出した直後に、成形品を10℃の水に投入することによって急冷したところ、コーティング樹脂の複数箇所に亀裂が発生した。この結果は、インサート部材と金型の温度が室温より100℃以上高いような場合、コーティングされた高融点あるいは高ガラス転移温度を有する樹脂は、見掛け上固化していても、樹脂内部の高分子鎖は、ひずみの少ない安定な構造になっていないことを示している。従って、金型から成形品を取り出した後の徐冷工程が、非晶性高分子の構造的ひずみを低減したり、結晶性高分子の徐冷工程での二次結晶化を進める上で、重要な態様の一つであることを示している。なお、この徐冷工程に要する時間は高々1時間程度であり、数時間以内であれば、樹脂被覆金属製回転子の生産性に支障を来たすものではない。
<4>ショットブラスト処理し、さらにシランカップリング処理したAl合金製回転子の樹脂コーティング
(実施例8)
ショットブラスト処理したインサート部材(Al合金製回転子)を260〜270℃に予加熱した後、その表面にシランカップリング剤(信越化学工業(株)製KBP40)のエタノール溶液を塗布し、インサート部材の表面温度が230℃となった時点で、実施例2と同様に成形を行った。表1に示したように、得られた成形品は、室温で7日間以上経過してもコーティングされた樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験後にも樹脂割れはなかった。一方、加熱冷却試験後の剥離応力は、7.8MPa〜10.8MPaであった。これは、実施例2の場合の約1.6倍の値であり、シランカップリング処理によって密着性あるいは接着性が大きく向上したことを示すものである。この結果は、ショットブラスト処理とシランカップリング処理を併用することがより好ましい実施の態様であることを立証している。
(実施例9)
前記ノリルGTX樹脂90重量%、PTFE粉末(三井デュポンフロロケミカル社製TALP10F−1、平均粒径:3μm、粒径6μm以下の含量:90%、比表面積:8m2/g)10重量%の混合物を、予め溶融混練して作製したコンパウンドを樹脂素材とした以外は、実施例8と同様に成形を行った。表1に示したように、得られた成形品は、室
温で7日間以上経過してもコーティングされた樹脂に割れは生じなかった。加熱冷却試験後にも樹脂割れがなかった。一方、加熱冷却試験後の剥離応力は、5.9MPa〜8.2MPaであった。これは、実施例7の場合の1.5倍近い値であり、密着性あるいは接着性が向上したことがわかる。また、この結果は、フッ素樹脂を含む耐熱性樹脂に対しても、ショットブラスト処理とシランカップリング処理を併用することがより好ましい実施の態様であることを立証している。
(実施例10)
実施例8で得られた成形品を、90℃の熱水中に8時間浸漬する熱水試験を行った。その結果、樹脂割れも見掛けの剥離も起こらなかった。また、熱水試験後の剥離応力は、6.8MPa〜8.8MPaであった。この結果は、ショットブラスト処理とシランカップリング処理を併用する実施の態様が、広い温度範囲の空気中での使用のみならず、熱水中のような水環境下でも、耐熱性樹脂をコーティングした樹脂被覆金属製回転子が、安定的に使用可能であることを立証するものである。
(実施例11)
実施例9で得られた成形品を、90℃の熱水中に8時間浸漬する熱水試験を行った。その結果、樹脂割れも見掛けの剥離も起こらなかった。また、熱水試験後の剥離応力は、4.9MPa〜6.9MPaであった。この結果は、ショットブラスト処理とシランカップリング処理を併用する実施の態様が、広い温度範囲の空気中での使用のみならず、熱水中のような水環境下でも、フッ素樹脂を含む耐熱性樹脂をコーティングした樹脂被覆金属製回転子が安定的に使用可能であることを立証するものである。
(比較例4)
実施例1と同様にショットブラスト処理したAl合金製回転子を誘導加熱によって320℃まで加熱し、加振させながら底部から空気を供給する機構により、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体粉末(ETFE樹脂、商品名アフロン)を流動状態とした装置(流動槽)内に、該回転子を没入させ、90秒間保持し、次いで、流動槽内で該回転子を30秒間再加熱し、その後、さらに該回転子を60秒間保持することにより、該Al合金製回転子表面にETFE樹脂をコーティングした。その後、回転子表面に融着した過剰のETFE樹脂を切削によって除去し、ETFE樹脂のコーティング厚さを0.7mmとした。
(実施例12)
実施例8と同様の条件下で成形して得られた樹脂被覆Al合金製回転子5個について、自動車用過給機(スーパーチャージャー)に装着し、前記試験条件Aにより、その性能評価を行った。その結果、5個の試料(試験)すべてにおいて、9,000rpm、1,000時間までの運転中、回転子表面とケーシング内壁との接触に基づくかじり音の発生はなかった。また、試験終了後にスーパーチャージャーから取り出した樹脂コーティング回転子の表面状態を調べたところ、コーティング樹脂の剥離や割れはなく、樹脂表面にわずかに回転方向に沿ったすじ(摩耗痕)が観察された。
(実施例13)
実施例9と同様の条件下で成形して得られた樹脂被覆Al合金製回転子5個を用いた以外は、実施例12と同様の試験条件Aにより、その性能評価を行った。その結果、5個の試料(試験)すべてにおいて、9,000rpm、1,000時間までの運転中、回転子表面とケーシング内壁との接触に基づくかじり音の発生はなかった。また、試験終了後にスーパーチャージャーから取り出した樹脂コーティング回転子の表面状態を調べたところ、コーティング樹脂の剥離や割れはなく、樹脂表面にわずかに回転方向に沿ったすじ(摩耗痕)が観察されたが、摩耗痕量は実施例12の場合より少ないことがわかった。この結果は、ノリルGTX樹脂にPTFE微粒子10重量%を含むコンパウンドをコーティングしたAl合金製回転子が、ノリルGTX樹脂をコーティングした回転子よりも摺動性に優れていることを示唆している。
(実施例14)
実施例8と同様の条件下で成形して得られた樹脂被覆Al合金製回転子5個について、自動車用過給機(スーパーチャージャー)に装着し、前記試験条件Bにより、30分間かけて徐々に1.8mmφの鋼球500個を吸気口から導入し、その性能評価を行った。その結果、鋼球を導入している間は、スーパーチャージャーの騒音は高かったが、その後は、実施例12の試験条件Aと同様の稼動状態が、1,000時間まで継続した。
(実施例15)
実施例9と同様の条件下で成形して得られた樹脂被覆Al合金製回転子5個を用いた以外は、実施例14と同様の試験条件Bにより、その性能評価を行った。その結果、鋼球を導入している間のスーパーチャージャーの騒音は、実施例14の場合と大差はなく、その後は、実施例13の試験条件Aと同様の稼動状態が、1,000時間まで継続した。
(比較例5)
実施例8および9に記載の樹脂コーティングしたAl合金製回転子と同じ形状と大きさのAl合金製回転子を用いた以外は、実施例12と同様に、回転子表面とケーシング内壁との間隙を0.15mmとし、試験条件Aにより、その性能試験を行った。その結果、スーパーチャージャーの運転開始30分後に、回転子とケーシングの接触音が発生し始め、この接触音は、時間とともに徐々に大きくなった。すなわち、Al合金製回転子の場合には、回転子とケーシング内壁との間隙をさらに大きくする必要があることが確認された。従って、さらに長時間運転を続けることは意味がないと判断し、運転開始後1時間で試験を終了した。
(比較例6)
比較例4で得られたETFE被覆Al合金製回転子を用いて、実施例12と同様に、試験条件Aにより、その性能評価を行った。その結果、断熱効率は55%であり、実施例12の断熱効率とほぼ同等であった。また、試験後の回転子表面の傷も、実施例12の場合と同程度あったが、実施例13のノリルGTX樹脂90重量%、PTFE10重量%をコーティングした回転子の場合より多い傾向であった。
2 まゆ型形状の断面
3 幅広部分
4 貫通中空部
5 中心部
6 長手方向頂点
7 リブ
8 軸
9 穴部
10 張り出した軸部分
11 スーパーチャージャー性能評価装置
12 モータ
13 トルク計
14 スーパーチャージャー
15 エアーフィルター
16 バルブ
17 マフラー
18 吸気温度計
19 吸気圧力計
20 排気温度計
21 排気圧力計
22 流量計
Claims (8)
- インサート成形により流体機械の金属製回転子表面に樹脂をコーティングする方法であって、前記金属製回転子を30℃以上前記樹脂の溶融射出温度以下の範囲内で、また、インサート成形用金型を30℃以上前記樹脂の溶融射出温度−50℃以下の範囲内で、各々予め定められた温度に加熱する予加熱工程と、予加熱された前記金属製回転子が予加熱された前記インサート成形用金型内に位置された状態で、溶融樹脂を射出するインサート成形工程と、成形物を金型内で保持する保持工程と、前記インサート成形物を金型から取出し、室温まで徐冷する冷却工程とを含むことを特徴とする流体機械用の金属製回転子の樹脂コーティング方法。
- 前記金属製回転子が、鋼、鉄、銅、アルミニウム、チタンまたはそれらを含む合金、あるいはそれらの複合部材より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
- 前記樹脂が、熱可塑性樹脂であって、単独重合体、共重合体、ポリマーブレンド物、ポリマーアロイ、およびポリマーを主成分とする複合材料の群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし2に記載の樹脂コーティング方法。
- 前記金属製回転子の表面にコーティングされる前記樹脂の厚さが、5μm〜10mmの範囲で、金属製回転子表面の各部位において任意の厚さで成形できることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂コーティング方法。
- 前記金属製回転子の表面が、研磨処理、エッチング処理、ショットブラスト処理、ローレット加工およびシランカップリング処理から選ばれた少なくとも1種によって予め表面処理されたものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂コーティング方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂コーティング方法により得られた回転子であって、−40℃〜200℃の温度範囲の空気雰囲気中で樹脂割れが発生しないことを特徴とする樹脂被覆金属製回転子。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂コーティング方法により得られた回転子であって、0℃〜100℃の温度範囲の水中において樹脂割れ、もしくは樹脂剥離が発生しないことを特徴とする樹脂被覆金属製回転子。
- 請求項6および7のいずれかに記載の樹脂コーティング金属製回転子であって、耐異物噛み込み性に優れていることを特徴とする樹脂被覆金属製回転子。
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