JP2007021572A - 連続鋳造鋳片およびその製造方法 - Google Patents
連続鋳造鋳片およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2007021572A JP2007021572A JP2005211320A JP2005211320A JP2007021572A JP 2007021572 A JP2007021572 A JP 2007021572A JP 2005211320 A JP2005211320 A JP 2005211320A JP 2005211320 A JP2005211320 A JP 2005211320A JP 2007021572 A JP2007021572 A JP 2007021572A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- slab
- flow
- dendrite
- cast slab
- inclusions
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Landscapes
- Continuous Casting (AREA)
Abstract
【解決手段】 本発明は、鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
鋼の連続鋳造の場合、一般には、パウダーを鋳型内に供給し、かつ鋳型を上下方向にオシレーションさせ、鋳型と凝固シェル間に液体状スラグを流入させつつ鋳造している。そのため、鋳型内メニスカス近傍のフラックス流路中に生じる圧力変動によって、鋳片表面にはオシレーションマークと呼ばれる凹凸が形成される。
炭素鋼の場合、鋳片は加熱炉にておよそ1200℃×1〜2時間程度の高温酸化雰囲気中に保持した後、熱間圧延される。そのため、1mm〜2mm程度スケールが生成し、そのスケールが除去されるため、オシレーションマークそのものが問題となることは少ない。一方、ステンレス鋼においては、スケールオフ量が過小であるため、オシレーションマークの凹凸そのものが問題視される。そのため、オシレーションマークの凹凸を小さくするための方法が幾つか開示されている。
また、オシレーションマークの深さが250μm以下となるように、鋳型内に液体潤滑剤を流入されることを特徴とするステンレス鋼の連続鋳造方法が開示されている。(特許文献2参照)
しかし、気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片を得る為には上記特許文献に係る公知技術では満足されるものではなかった。
先に述べたように、オシレーションマークは、鋳型内メニスカス近傍のフラックス流路中での圧力変動によるメニスカスの変形の結果、生じるものであるが、メニスカス部の曲率に沿って強固な初期凝固シェルが形成された場合、その初期凝固シェルは圧力変動によって変形せず、その上方の溶鋼のみが変形することになる。その際、先に生成した初期凝固シェルの上に溶鋼がオーバーフローし、先に形成されている初期凝固シェルの上に新たに凝固することになり、その界面では凝固が不連続となる。この爪周囲は元々パウダーが存在していた領域にオーバーフローすることになるため、パウダーをかみこんだり、また、ストランドプール内に吹き込まれたAr気泡や介在物が浮上し、パウダー/溶鋼界面に滞留していたものが捕捉されやすい等、鋳片最表層部の清浄性に大きく影響する。
そこで、本発明は気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片を提供することを目的とする。
(1)本発明は、鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。なお、デンドライトの傾角とは、デンドライトの1次枝と長辺表面の法線とのなす角度として定義する。
(2)本発明は、上記項目(1)において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。
(3)本発明は、上記項目(1)乃至(2)において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。
即ち、デンドライト傾角が15゜以上であるならば、連続鋳造において電磁攪拌による溶鋼凝固時の溶鋼の流動が確実になされていた指標となり、爪深さも小さくなるので、気泡並びに介在物の少ない鋳片が得られている指標となる。また、爪深さが2mm以下と小さいので、鋳造時に溶鋼外部近傍に存在している連続鋳造用のパウダーやその他の介在物の噛み込みのおそれが少なくなり、介在物個数が少なくなる。
本発明の連続鋳造鋳片において、デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であるならば、気泡並びに介在物個数が少ない、高品質の鋳片である。即ち、相対する長辺間でのデンドライト傾角の違いが±10°以内であるならば、連続鋳造の凝固時に相対する長辺間での溶鋼の流速差が小さかったことを示し、鋳片の水平断面内で均一な攪拌流が形成されていたことを意味するので、介在物の少ない高品質の連続鋳造鋳片が得られる。
本発明の連続鋳造鋳片において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されているならば、鋳片の凝固時にストランド内で生成させた溶鋼の流れがストランド内で偏りを生じることが無く凝固したことを意味し、更にその凝固時の流れが周期的に時間変化されたことを意味するので、凝固シェルの前面に確実に流動を与えたことになり、その結果として気泡および介在物の個数が低位に抑制された連続鋳造鋳片が得られたことを意味する。
本発明に係る連続鋳造鋳片は、鋳片の外形を横断面長方形状と見立てた場合、鋳片横断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角(デンドライトの1次枝が鋳片長辺側表面の法線に対して傾斜する角度)が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする。
この連続鋳造鋳片において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることが好ましい。
この連続鋳造鋳片において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることが好ましい。
本発明の連続鋳造鋳片は、上記の鋼種を連続鋳造で鋳造することにより得ることができる。このときの連続鋳造条件としては、鋳型内湯面近傍に電磁攪拌コイルを設置し、水平断面内で旋回流を付与することが好ましい。また必要に応じて、ストランド内電磁撹拌を付与してもよい。
成長しているデンドライトは、断面を研磨後ピクリン酸水溶液などによってエッチングすることにより観察される。この観察されたデンドライトの一次枝と鋳片厚み方向(鋳片長辺表面に対する法線)との角度を測定することによりデンドライト傾角を測定する。
デンドライト傾角の測定位置を表面から5mm位置とするのは、一般的に実施される鋳造速度の条件、0.6〜2.5mm/分では電磁攪拌によって形成されている流動によって偏向されたデンドライト傾角を測定できるので定義した。
なお、一つ一つのデンドライト傾角はばらつきを有しているので20本程度抽出し、それらの傾角を個々に測定し、その部位での平均値を求めた。このような測定を長辺全幅にわたって行い、全幅に亘ってのデンドライト傾角の平均値ならびに標準偏差を求めた。
その結果、デンドライト傾角の平均値の下限15°は、この値未満では気泡、介在物個数などが増えること、また、爪深さも深くなるのでこの条件に限定した。加えて、デンドライト傾角の標準偏差の上限10°は、この値を超えると気泡、介在物個数などが増えること、また、爪深さも深くなるのでこの条件に限定した。
また、上記測定を相対する長辺のデンドライト傾角についても同様の測定を行う。このときの相対する長辺でのデンドライト傾角の平均値は、対応する長辺のデンドライト傾角の平均値との差が±10°以内であることが好ましい。これを外れる場合は、鋳片表層部の気泡・介在物個数が増加することから限定した。
なお、ノズル吐出流が大きく偏流した場合、相対する長辺の一方は一様な攪拌流が形成されているが、相対する長辺側では攪拌流とノズル吐出反転流との干渉が生じる場合があるためであり、そのような場合には、デンドライト傾角の長辺の表裏差が±10°以内を外れる。
なお、以上の条件の他に、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることも好ましい。この負偏析線は、凝固組織を現出する方法と同様の方法により観察できる。層状とは、1mm〜30mmピッチで形成されているものをいい、負偏析線がある幅を持って存在することが必要である。層状の負偏析線を必要とするのは、凝固時に流れが付与されており、かつその流れが周期的に時間変化することでストランド内で偏りを発生させることなく、凝固シェル前面に流動を付与することができ、その結果として気泡および介在物の個数が低位に抑えられているため限定することが好ましい。
本発明者らは、連続鋳造鋳片における気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片に関し、以下の実験と考察の結果、以下の条件を見出した。
実験方法はPを0.05%含有した極低炭素鋼を溶解炉にて溶製し、その溶鋼中に鋳型に見立てた丸棒を所定速度で下降することで、丸棒周囲に凝固シェルを形成させた。その断面をピクリン酸水溶液を用いてエッチングし凝固組織を現出させ、爪深さを測定した。 また、得られた凝固組織の表面から5mmまでの領域について、顕微鏡にて100μm以上の介在物の個数を測定した。爪深さと介在物個数の関係について調査した結果を図2に示すが、爪深さが低減するに従い介在物個数は少なくなった。
特に爪深さが2mm以下の条件では、介在物個数密度が本発明者らが別途定めた200個/m2以下であった。ここで、介在物個数密度が200個/m2以下の場合、鋳片表面を手入れすることなく、熱延、冷延、焼鈍を行っても、表面疵が発生しないことを確認しており、介在物個数密度の目標としては200個/m2以下とする。
このように図2に示す結果より、爪深さを最大2mm以下に抑制する必要があることを知見した。そこで、本発明においては、爪深さが2mm以下を満足することを条件とした。
流動下での凝固シェル成長は溶鋼側からの熱流束を受けるため、凝固が停滞あるいは再溶解することになる。この熱流束は流速によって規定されるため、凝固シェル前面に一定の流速を付与すればよいことになる。そこで、流速と爪深さの関係について調査した。
実験手法は前述した手法において丸棒を所定速度で回転させることで、流動下での凝固状態を模擬した。その結果を図3、図4に示すが、流速が増大するにつれ、爪深さは減少することがわかった。また、捕捉された介在物個数も併せて低減することがわかった。
具体的には流速0.2m/sを超える値から爪深さ2mmを下回るようになる傾向があり、流速0.2m/sを超える値から介在物個数が200個/m2を確実に下回るようになる。
そこで、鋳型内電磁攪拌の条件を幾つか変化させ、鋳片表皮下の爪発生および気泡・介在物の捕捉個数について調査した。
この構成の鋳型1においては、鋳型内電磁攪拌装置の電磁コイルKを配置する(例えば浸漬ノズル2の溶湯噴出口よりも上方側に配置する)と、図5の矢印A1、A2、A3、A4に示す水平断面での環流型の上位攪拌流が生成する。なお、攪拌流A1、A2、A3、A4は電磁コイルに近い側の流速が大きいので図5では矢印の長さの長い方が流速が大きいことを意味する。また、浸漬ノズル2の下端部には短辺1b側に開口する噴出口2Aが形成されて溶鋼Yは鋳型1内において浸漬ノズル2の先端部から短辺1b、1b側に向かって流動するが、その流動分が短辺1b、1bに衝突してから戻る吐出反転流3が鋳型1内に生成する。また、浸漬ノズル2からの溶湯流Y1、Y2に伴ってそれらの下流側では溶湯流Y3、Y4、Y5からなる循環流と、溶湯流Y6、Y7、Y8からなる循環流が生じて浸漬ノズル2よりも下位側に位置するストランドプール下部側の溶鋼のほぼ全体が循環流により循環される。
図5中の下流側とは、溶鋼Yの攪拌流の下流側であり、攪拌流と吐出反転流が逆向きの部位を示し、一方、上流側とは攪拌流の上流側であり、攪拌流と反転流が同じ向きの部位を意味する。加えて、それぞれ鋳型1の短辺1b、1bから200mmの部位からサンプルを切り出し、鋳造方向断面の鋳片表皮下の爪深さの測定を行い、表面から5mmの位置までの介在物個数測定に供した。
そこで本願発明では、IF鋼でかつP濃度が0.05%以上含有した鋼の条件を基準として偏向角度を指定することにした。
D=k(L/Vc)1/2
ここで、上記の式において、D:凝固シェル厚(m)、L:湯面からの距離(m)、Vc:鋳造速度(m/s)、k:凝固シェル成長速度係数(m・s−1/2)を示す。
連続鋳造設備において電磁攪拌コイルのコア厚Dk(図6(c)参照、コイルが巻回された磁性体コアの厚み寸法)はおよそ150〜300mmのものとした。
程度であり、またそのコイル内での流速はプール深さ方向の流速はほぼ一様とみなしてよい。なお、k値は鋳型銅板厚み、冷却水量、二次冷却条件、用いるパウダー等によって変化するが、およそ1.8×10−3〜3.2×10−3の範囲内である。(例えば、第3版鉄鋼便覧II製銑・製鋼 日本鉄鋼協会編p.619)
従って連続鋳造鋳片において、表面から5mm位置であれば、一般的に実施される鋳造速度の条件、0.01〜0.04m/s では電磁攪拌によって形成されている流動によって偏向されたデンドライト傾角を測定できることになる。
その結果を図10、図11に示すが、鋳片のほぼ全幅にわたって鋳片厚み方向に対するデンドライトの傾角が平均値として15°以上であり、また、その標準偏差が10°以内であれば鋳片表層部の介在物個数が少ないことがわかった。
図10に示す結果から、デンドライト傾角15゜以上で介在物個数が確実に200個/m2を下回り、図11に示す結果から、デンドライト傾角の標準偏差値が10゜以下になることで介在物個数が確実に200個/m2よりも少なくなっている。
図12に示す結果から、デンドライト傾角の表裏差±10゜以内であれば、介在物個数が確実に200個/m2を下回って150個/m2程度となり、デンドライト傾角の表裏差±5゜以内であれば、介在物個数が100個/m2程度となることが判明した。
鋳片の凝固組織がこのような特徴を有することは、凝固シェル前面に付与される流速が長辺全幅にわたってほぼ一様であり、加えて相対する長辺間での流速の差が小さい、すなわち、水平断面内で均一な攪拌流が形成されていることを意味する。また、相対する長辺で攪拌流の向きが反対であるため、相対する長辺でのデンドライトは全幅にわたってほぼ平行に揃っていることになる。
一般的に、Ar気泡ならびに介在物は溶鋼と比較して密度が小さいため、溶鋼のプール中での個数密度は湯面近傍で多く、溶鋼のプール深さとともにその個数密度は減少する。メニスカス近傍で凝固シェルへの気泡・介在物捕捉を防止するために、凝固シェル前面に流動を付与したように、鋳片内部においても凝固シェル前面に流動が付与されればよいことになる。但し、プール上部と異なり、できるだけ広範囲にわたって何某かの流動を付与できる方法が好ましい。
しかしながら、このような流動をストランドプールの溶鋼に定常的に付与すると偏流れとなってしまい、片方の短辺側で浸漬ノズル吐出流の侵入を助長することになるため好ましくない。そこで、推進流の推進方向を周期的に切り替える方法について、水モデル実験を行い検討した。この実験では連続鋳造装置と同等の寸法比のプールに対して両短辺にホースを取り付け、ホースとポンプを接続し、ポンプで水流を一方の短辺からプール内に送り込むと同時に他方の短辺から抜くことで幅方向に推進する流動を形成した。
鋳型内の一方の短辺側の溶鋼に上昇流を他方の短辺側の溶鋼に下降流を加えた場合、循環流の中心は幅中央部となり、幅中央部では常に溶鋼の流れはよどんでいることになる。 しかしながら、ノズル吐出流が短辺に衝突した後、短辺に沿って侵入する下降流e1、e2が存在し、その状態で一方の短辺では下降流f1、他方の短辺では上昇流f2を付与した場合、循環流の中心は幅中央部にはなく、どちらかの短辺側に移動する。その状態で図14(a)の推進方向a1から図14(b)の推進方向a2に推進方向を切り替えることで、凝固シェル前面のどの部位においても流動を付与することができる。
図14(a)、(b)に示すような溶湯流を発生させるためには、一例として、図15に示す如く、鋳型1の上部側(浸漬ノズル2の噴出口2Aよりも上位側)に電磁攪拌コイルK1を設置し、鋳型1の下部側(浸漬ノズル2の噴出口2Aよりも下位側)に電磁攪拌コイルK2を設置して図15に示す如く電磁攪拌コイルK1による水平断面方向の溶湯流と、電磁攪拌コイルK2による水平断面方向の溶湯流を生じさせることで実現できる。また、電磁攪拌コイルK2により発生させる磁界の向きを変更することでストランドプール下部側に発生させる溶湯流を図15の左右両方向に切り替えできるので、図14(a)に示す推進方向a1による攪拌流と図14(b)に示す推進方向a2による攪拌流を切り替えることができる。
図16(a)は鋳片短辺側の部分の横断面組織写真を示すが、図16(a)から、白く見える負偏析線が層状に形成されていることがわかる。負偏析は溶鋼の流れによってデンドライト樹間に濃化した溶鋼が洗浄されることで形成される。その負偏析領域がある幅を持って存在すれば、連続的に溶鋼に流動を付与したことになるが、層状に負偏析線が形成されていることは、溶鋼の流動が間欠的に付与されていることを意味する。また、図16(b)の短辺部鉛直断面内での凝固組織を詳細に観察すると、負偏析線F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8、F9、F10、F11のホワイトバンドを挟んでデンドライトの傾角が逆に変化しており(図16G1、G2、G3と他の補助線等参照)、溶鋼の流動方向が逆向きになっていたことを表している。
図16(a)、(b)に示す鋳片の製造条件は、ストランド電磁攪拌コイルを湯面から3.5mの位置に設置し、攪拌流速としては最大0.5m/sの流速が付与できるものを用い、攪拌方向の切り替えは30秒間、一方の短辺から他方の短辺に向かう攪拌流を付与した後、30秒間、逆向きの攪拌流が形成できる条件の繰り返しとした。なお、鋳造速度は1m/分であった。
また、図16(b)の短辺部鉛直断面内での凝固組織を詳細に観察すると、負偏析線F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8、F9、F10、F11を挟んでデンドライトの成長方向が変化しており(図16G1、G2、G3等参照)、溶鋼の流動方向が逆向きになるのに対応して成長方向が逆向きになっているものも観察される。
図17(a)と図17(b)は前記鋳片における相対する長辺の表面近傍の凝固組織を示す組織写真であるが、デンドライトが傾斜している状況が明確に示されている。なお、これらの図には、デンドライトの傾斜状態が判別しやすいようにデンドライトの傾斜に合わせた補助線H1、H2、H3、H4を描いている。
鋳片内部に気泡が捕捉されていると、冷延焼鈍板にブローホールと呼ぶふくれた欠陥が発生する。その程度は捕捉された気泡個数に依存する。気泡個数指数との関係を調査すると、気泡個数指数が20以下であれば、ブローホールの発生は認められないため、望ましい限界値として20と規定した。
転炉での精錬と還流式真空脱ガス装置での処理ならびに合金添加により極低炭素鋼を溶製した。なお、鋼中P濃度は0.05%の条件であった。この溶鋼を10.5mRの湾曲型連鋳機で厚み250mm、幅1800mmのスラブに鋳造した。鋳造速度は1m/minでノズル内にArガスを3Nl/min流した。鋳型内の電磁攪拌コイルは湯面での流速が最大1.2m/s付与できるコイルを用い、コイル中心を湯面から100mmの位置に設置した。
一方、上記に加えてストランドの電磁攪拌装置も用いた鋳造も実施した。ストランドの電磁攪拌装置に関しては、湯面から3.5mの位置に設置した。攪拌流速としては最大0.5m/sの流速が付与できるものを用いた。
*表層介在物個数指数とは、鋳型内電磁攪拌装置を用いない場合を100とし指標化したものである。
*内部気泡個数指数とは、ストランド内電磁攪拌装置を用いない場合を100とし指標化したものである。
*表中のデンドライト傾角は平均値、並びに括弧内の数値は標準偏差を意味する。
*介在物ならびに気泡個数指数は20以下であれば非常に良好であることを意味する。
*切替周期とは、同一方向に推進力を付与する時間を意味している。
表1の中で、デンドライト傾角が15°以上であっても、表裏差が±10°より大きいものが見られるが(比較例5)、これは、浸漬ノズル詰りによりノズル吐出流が大きく偏流し、長辺間で流動パターンが大きく異なっていることを意味しており、その場合、表層介在物個数指数が大きく満足する鋳片は得られなかった。また、デンドライト傾角が過大のものが見られるが、この場合爪深さが2mmを越えるもの(比較例4:デンドライト傾角24゜)が見られ、結果として表層介在物個数指数が大きく満足する鋳片は得られなかった。この試料においては鋳型内電磁攪拌流速が1.2m/sであり、溶鋼の流速が大きすぎることが影響したと思われる。
これらのことから、過大な攪拌流速の付与は湯面の乱れを引き起こすため、デンドライト傾角の上限値の目安としてデンドライト傾角が最も小さい極低炭素鋼では23°、より好ましくは22゜と考えられる。
表2に示す結果から、ストランド内の電磁攪拌を行わない試料(比較例6)では内部気泡個数指数の値が大幅に増加し、ストランド内の電磁攪拌を一方向連続とした試料(比較例7)では内部気泡個数指数が増加した。
表2に示す結果から、本発明のデンドライト傾角の条件を満足し、爪深さを小さくすることができ、攪拌流速も好適な値とした試料は、いずれも内部凝固組織が層状負偏析を示し、内部気泡個数指数も小さい値を示し、優れた鋳片であることを実証できた。
なお、垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて上述の条件と同等の条件で操業した際にも、同様な結果を得ることができた。
Claims (3)
- 鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする連続鋳造鋳片。
- 請求項1において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることを特徴とする連続鋳造鋳片。
- 請求項1乃至2において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることを特徴とする連続鋳造鋳片。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005211320A JP4728724B2 (ja) | 2005-07-21 | 2005-07-21 | 連続鋳造鋳片およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005211320A JP4728724B2 (ja) | 2005-07-21 | 2005-07-21 | 連続鋳造鋳片およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007021572A true JP2007021572A (ja) | 2007-02-01 |
JP4728724B2 JP4728724B2 (ja) | 2011-07-20 |
Family
ID=37782997
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005211320A Active JP4728724B2 (ja) | 2005-07-21 | 2005-07-21 | 連続鋳造鋳片およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4728724B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010131628A (ja) * | 2008-12-04 | 2010-06-17 | Jfe Steel Corp | 連続鋳造用鋳型の振動方法 |
JP2019210544A (ja) * | 2018-05-31 | 2019-12-12 | Jfeスチール株式会社 | 方向性電磁鋼板の製造方法 |
CN110709188A (zh) * | 2017-03-24 | 2020-01-17 | 日铁不锈钢株式会社 | 奥氏体系不锈钢板坯的制造方法 |
CN114441579A (zh) * | 2022-01-07 | 2022-05-06 | 攀钢集团研究院有限公司 | 一种连铸坯枝晶间夹杂位置的检测方法 |
Citations (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH079098A (ja) * | 1993-06-24 | 1995-01-13 | Nippon Steel Corp | 連続鋳造方法 |
JPH0724558A (ja) * | 1993-07-12 | 1995-01-27 | Nippon Steel Corp | 連続鋳造におけるモールド内溶湯流動方法および装置 |
JPH0857584A (ja) * | 1994-08-18 | 1996-03-05 | Nippon Steel Corp | 表面品位並びに加工性の良好なステンレス鋼鋳片の製造方法 |
JPH08112652A (ja) * | 1994-10-13 | 1996-05-07 | Nippon Steel Corp | 鋼の連続鋳造方法 |
JPH0947853A (ja) * | 1995-08-02 | 1997-02-18 | Nippon Steel Corp | 連続鋳造鋳型内溶鋼の撹拌方法 |
JPH09192802A (ja) * | 1996-01-19 | 1997-07-29 | Nkk Corp | 極低炭素鋼スラブの連続鋳造方法 |
WO1999029452A1 (fr) * | 1997-12-08 | 1999-06-17 | Nippon Steel Corporation | Procede et appareil de moulage de metal en fusion et pieces ainsi obtenues |
JP2000246407A (ja) * | 1999-02-24 | 2000-09-12 | Nippon Steel Corp | 非金属介在物の少ない鋳片 |
JP2002178113A (ja) * | 2000-12-14 | 2002-06-25 | Nippon Steel Corp | 優れた凝固組織を有する鋳片及びそれを加工した鋼材 |
JP2004017147A (ja) * | 2002-06-20 | 2004-01-22 | Nippon Steel Corp | 焼入性を保証した構造用鋼の連続鋳造方法 |
JP2004149866A (ja) * | 2002-10-31 | 2004-05-27 | Nippon Steel Corp | 合金化亜鉛メッキ鋼板の製造方法 |
JP2005074460A (ja) * | 2003-08-29 | 2005-03-24 | Jfe Steel Kk | 極低炭素鋼のスラブ連続鋳造方法 |
-
2005
- 2005-07-21 JP JP2005211320A patent/JP4728724B2/ja active Active
Patent Citations (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH079098A (ja) * | 1993-06-24 | 1995-01-13 | Nippon Steel Corp | 連続鋳造方法 |
JPH0724558A (ja) * | 1993-07-12 | 1995-01-27 | Nippon Steel Corp | 連続鋳造におけるモールド内溶湯流動方法および装置 |
JPH0857584A (ja) * | 1994-08-18 | 1996-03-05 | Nippon Steel Corp | 表面品位並びに加工性の良好なステンレス鋼鋳片の製造方法 |
JPH08112652A (ja) * | 1994-10-13 | 1996-05-07 | Nippon Steel Corp | 鋼の連続鋳造方法 |
JPH0947853A (ja) * | 1995-08-02 | 1997-02-18 | Nippon Steel Corp | 連続鋳造鋳型内溶鋼の撹拌方法 |
JPH09192802A (ja) * | 1996-01-19 | 1997-07-29 | Nkk Corp | 極低炭素鋼スラブの連続鋳造方法 |
WO1999029452A1 (fr) * | 1997-12-08 | 1999-06-17 | Nippon Steel Corporation | Procede et appareil de moulage de metal en fusion et pieces ainsi obtenues |
JP2000246407A (ja) * | 1999-02-24 | 2000-09-12 | Nippon Steel Corp | 非金属介在物の少ない鋳片 |
JP2002178113A (ja) * | 2000-12-14 | 2002-06-25 | Nippon Steel Corp | 優れた凝固組織を有する鋳片及びそれを加工した鋼材 |
JP2004017147A (ja) * | 2002-06-20 | 2004-01-22 | Nippon Steel Corp | 焼入性を保証した構造用鋼の連続鋳造方法 |
JP2004149866A (ja) * | 2002-10-31 | 2004-05-27 | Nippon Steel Corp | 合金化亜鉛メッキ鋼板の製造方法 |
JP2005074460A (ja) * | 2003-08-29 | 2005-03-24 | Jfe Steel Kk | 極低炭素鋼のスラブ連続鋳造方法 |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010131628A (ja) * | 2008-12-04 | 2010-06-17 | Jfe Steel Corp | 連続鋳造用鋳型の振動方法 |
CN110709188A (zh) * | 2017-03-24 | 2020-01-17 | 日铁不锈钢株式会社 | 奥氏体系不锈钢板坯的制造方法 |
JP2019210544A (ja) * | 2018-05-31 | 2019-12-12 | Jfeスチール株式会社 | 方向性電磁鋼板の製造方法 |
CN114441579A (zh) * | 2022-01-07 | 2022-05-06 | 攀钢集团研究院有限公司 | 一种连铸坯枝晶间夹杂位置的检测方法 |
CN114441579B (zh) * | 2022-01-07 | 2024-05-28 | 攀钢集团研究院有限公司 | 一种连铸坯枝晶间夹杂位置的检测方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP4728724B2 (ja) | 2011-07-20 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6129435B1 (ja) | 連続鋳造法 | |
WO2013190799A1 (ja) | 高清浄度鋼鋳片の製造方法及びタンディッシュ | |
JP5321528B2 (ja) | 鋼の連続鋳造用装置 | |
JP4728724B2 (ja) | 連続鋳造鋳片およびその製造方法 | |
JP4772798B2 (ja) | 極低炭素鋳片の製造方法 | |
WO2011111858A1 (ja) | 鋼の連続鋳造方法および鋼板の製造方法 | |
JP5245800B2 (ja) | 連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法 | |
JP6164040B2 (ja) | 鋼の連続鋳造方法 | |
EP1837100A1 (en) | Induction stirring coil | |
KR102442885B1 (ko) | 박슬래브 주조에 있어서의 주형 내 유동 제어 장치 및 주형 내 유동 제어 방법 | |
JP4821932B2 (ja) | 鋼の連続鋳造方法および鋼板の製造方法 | |
JPWO2018056322A1 (ja) | 鋼の連続鋳造方法 | |
JP4725244B2 (ja) | 連続鋳造用取鍋及び鋳片の製造方法 | |
JP6330542B2 (ja) | 連鋳鋳片の製造方法 | |
JP4427429B2 (ja) | ストランドプール内流動制御方法ならびに装置 | |
JP4432263B2 (ja) | 鋼の連続鋳造方法 | |
JP3573096B2 (ja) | 連続鋳造鋳片の製造方法 | |
JP4448452B2 (ja) | 鋼の連続鋳造方法 | |
JP5044981B2 (ja) | 鋼の連続鋳造方法 | |
JPH09192802A (ja) | 極低炭素鋼スラブの連続鋳造方法 | |
JP3375862B2 (ja) | ブローホールの発生しない極低炭素鋼の製造方法 | |
JP5549346B2 (ja) | 鋼の連続鋳造装置及び連続鋳造方法 | |
JP3817209B2 (ja) | 表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法 | |
JP4441384B2 (ja) | 連続鋳造方法ならびにストランドプール内流動制御装置 | |
JP4319072B2 (ja) | 介在物浮上性に優れるタンディシュ |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080306 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20100826 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100914 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20101115 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20110405 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20110415 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 4728724 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140422 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140422 Year of fee payment: 3 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140422 Year of fee payment: 3 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |