JP2007021537A - 金属帯の形状矯正方法 - Google Patents

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【課題】 ハーフエッチングしてもそりの発生しない金属帯の形状矯正方法を提供する。
【解決手段】 片面または両面をエッチング面とする金属帯の形状を、前後の張力付加機構により所定の単位張力を付与しながら、少なくとも1本以上の形状矯正ロールと複数本のバックアップロールを千鳥配置した形状矯正ロールユニットにて矯正する、金属帯の形状矯正方法であって、前記金属帯に付与する単位張力を、金属帯の耐力の0.80〜0.95倍の範囲に制御するとともに、前記形状矯正ロールユニットの形状矯正ロールを金属帯に押し込むことにより付与する、金属帯の永久伸び率を0.1〜1.5%に制御することを特徴とする、金属帯の形状矯正方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属帯の形状矯正方法に関し、特に、ハーフエッチングを行っても反りが生じ難い等の厳しい形状特性が求められる金属箔、たとえば、ハードディスクのサスペンション材等の、金属帯の形状矯正方法に関するものである。
金属帯(鉄、非鉄金属帯板材)の形状矯正方法には、大別すれば、テンションレベリング法とヒートフラットニング法(テンションアニーリング法)の2種類の方法がある。前者のテンションレベリング法は、金属帯に比較的小さな張力(一般的には、金属帯の耐力の30〜40%)をかけた状態で小径ローラレベラを接触させてローラ曲げ応力を加える方法である。この方法によれば、張力付加状態で曲げ応力を加えることにより金属帯の一部が降伏点を越え塑性変形して金属帯の形状が矯正される。後者のヒートフラットニング法(テンションアニーリング法)は、金属帯に張力を加えた状態で加熱し、帯板材を伸し、あるいは加熱による変態を利用して形状を矯正する方法である。この場合、矯正温度でアニール(焼鈍)が行われると、テンションアニーリングとも言う。
前者のテンションレベリング法を適用した、ICリードフレーム用板条材の残留応力除去方法に関する発明として、直径50mm以上のロールによって圧延された薄板を、伸び率を0.1%以下に設定したフラットニングレベラーに通すことにより、打ち抜き加工しても変形の少ない十分平面性のあるICリードフレームを得ることができる発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この技術をしても、ハーフエッチングが施されるリードフレーム用途では、残留応力除去が十分ではなかった。このような問題を解決する発明として、第1のテンションレベラー工程において、圧延材に加える平均張力を約15kgf/mm2(約147N/mm2)とし伸びが一定になるようにしてテンションレベラーに通して、圧延材の急峻度を1%以下にし、第2のテンションレベラー工程において、圧延材に加える張力を第1のテンションレベラー工程における張力の1/3以下に設定して、圧延材をテンションレベラーに通して、圧延方向に平行の断面における厚さ方向の残留応力分布において圧縮応力の絶対値と引張応力の絶対値との和を12kgf/mm2(118N/mm2)以下にすることで、ハーフエッチングしても反りが発生しにくくすることのできる、ハーフエッチング用電気電子部品用板条材及びその製造方法に関する発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
後者のヒートフラットニング法を適用した、ハーフエッチングが施される半導体用銅系リード材およびその製造方法に関する発明として、圧延後の銅素材に、伸び率0.01%以上、0.30%未満を付与して矯正加工Aを施し、次いで加熱炉内で1N/mm2以上、50N/mm2未満の張力を付与して矯正加工Bを施し銅系板条材とすることでハーフエッチングしたときの反りの曲率を0.003以下とすることのできる発明が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平04−094815号公報 特開平07−227920号公報 特開2002−118223号公報
しかしながら、上記特許文献2ないし3に記載の発明は、いずれもハーフエッチングが施されるリードフレーム用素材に好適な発明ではあるが、ハーフエッチングを行っても反りが生じ難い等の厳しい形状特性が、リードフレームよりもさらに厳しく求められる金属箔、たとえば、ハードディスクのサスペンション材等の素材の形状矯正のための手段としては、その効果が十分とはいえない場合があった。
また、これらの発明は、いずれも第1、第2のテンションレベラー工程ないし矯正工程A、矯正工程Bのように複数工程を前提とするものであり、生産性が悪いという問題もあった。
そこで、本発明は、上記の従来技術の問題点を有利に解決し、生産性を阻害することなく、ハーフエッチング用の金属帯の板厚方向の歪を均一にし、ハーフエンチングしても面と垂直方向に反りを発生しない、金属帯の形状矯正方法を提供することを目的とするものである。
まず、本発明に至るまでの予備的な検討について説明する。
すなわち、金属帯の形状矯正とハーフエッチング後の金属帯のそりについて基礎的なデータを収集するために、従来技術に類似の形状矯正装置を用いて予備試験を行った。図5は、この予備試験で用いた形状矯正装置の長手方向垂直断面図による概略説明図である。
この装置は、張力付加機構を構成する入側ブライドル装置4と出側ブライドル装置5との間に張力計8、伸長ロールユニット21、矯正ロールユニット22およびマルチロールユニット23を順に配置し、これらに金属帯1を通板して形状矯正を行うものである。なお、入出側のブライドル装置4、5のロールは、クロムメッキされた鉄ロールである。
張力付加機構は、金属帯1にその全体の伸び率が一定となるように張力を加えるもので、金属帯の伸び率を一定とすることにより、金属帯の過度の変形や破断を防ぐ。また、張力付加機構は、特開昭56−123331号公報、特開昭57−094424号公報などに記載された発明の張力付加装置と類似のもので、これら入出のブライドル装置が機械的に連結して(図示せず)、連動するようになしたものである。入側ブライドル装置4のロール径に対する出側ブライドル装置5のロール径の比率を所定の値として金属帯1の送り量を入側と出側とで変えることにより、金属帯の伸び率を一定とすることができる。
伸長ロールユニット21は、上下の伸長ロールユニットローラ41間に金属帯1を通して曲げ応力を付加し、金属帯1を伸長し、圧延歪を矯正するが、その反面で、金属帯1に強い残留曲率、長手そり(Lそり、カール)と幅そり(Cそり、ガター)を生じさせる。これを矯正するために矯正ロールユニット22が設置されている。更に、板厚の薄い(相対的に板厚変動の大きい)材料の板厚変動を抑制する狙いで、マルチロールユニット23が設置されている。
また、一般的には、金属帯に付与する単位張力は、耐力の0.3〜0.4倍、エッチングを行う金属帯では、0.60〜0.70倍であり、これに対応する伸長ロールユニット、矯正ロールユニット、マルチロールユニットのロールへの有効巻きつけ径に適合したロール径が選択される。
以上のような図5の実験装置を用いて、本発明者らは、永久伸び率を順次大きくしながら金属帯の形状を観察した。また、通板後、試験した金属帯を図2に示す大きさ(板幅3mm×長さ60mm)に切り出し、ハーフエッチング(全幅で長さ50mmを板厚の50%エッチンング)を行い、金属帯表面に垂直な方向のそり量を測定した。図6にその結果の一部を示す。
なお、実験に用いた金属帯1は、冷間圧延後、脱脂洗浄された、材質SUS304、板厚0.1mm、板幅420mm、耐力1200MPaのものであった。また、入出側のブライドル装置のロール径は400mm、伸長ロールユニットのロール径は40mm、矯正ロールユニットのロール径は150mm、マルチレベラーユニットのロール径は60mmであった。また、金属帯の単位張力は、840MPa(耐力の70%)とした。
永久伸び率を大きくしていくと、金属帯の形状の代表指標である急峻度(板材に生じる波状の歪みの高さを波のピッチで除した形状の指標。)は、概ね永久伸び率の増加に反比例して改善されていき、0.7%で概ね最小値に到達する。一方、エッチングした時の金属帯表面に垂直な方向のそり量(ハーフエッチング反り)は、長手方向(通板方向)は、永久伸び率が大きくなるにつれ、最初は、小さくなるが、すぐにそりの方向が変わり、急激にそり量が大きくなった後、ややそり量が小さくなる傾向ではあるもののそり量そのものは大きい。また、幅方向のそり量は、永久伸び率が大きくなるにつれ、そりの方向は変わらないもののそり量を安定して小さくすることはできなかった。結果として、形状(急峻度)が目標範囲に入る永久伸び率の領域(>0.5%)では、ハーフエッチング後のそりを目標値に入れることができなかった。
本発明者らは、金属帯の種類を変更し、あるいは、板厚を変更して、形状および片面エッチング後の金属帯のそりを調査したが、いずれも、ハーフエッチング後の金属帯のそりを安定して改善することはできなかった。
本発明者らは、さらに鋭意検討を重ね、従来設備のいわゆる伸長ロールユニットそのものが板厚方向の歪偏差を形成し、さらに、その後の矯正ロールユニット、マルチロールユニットもエッチングでのそり矯正という観点では、何ら有効な効果を得ることができないことを突き止めた。このことから、最初から板厚方向に歪の偏差の小さな形状矯正方法をとるという発想を得て、確証実験を行った。その結果、最初から板厚方向に歪偏差の小さな伸長を行うことで形状を改善するとともに、エッチング後のそりを安定して小さくすることが可能であることを見出し、本発明をなしたものである。
すなわち、本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1) 片面または両面をエッチング面とする金属帯の形状を、前後の張力付加機構により所定の単位張力を付与しながら、少なくとも1本以上の形状矯正ロールと複数本のバックアップロールを千鳥配置した形状矯正ロールユニットにて矯正する、金属帯の形状矯正方法であって、前記金属帯に付与する単位張力T(MPa)を、金属帯の耐力σ(MPa)の0.80〜0.95倍の範囲に制御するとともに、前記形状矯正ロールユニットの形状矯正ロールを金属帯に押し込むことにより付与する、金属帯の永久伸び率を0.1〜1.5%に制御することを特徴とする、金属帯の形状矯正方法。
(2) 前記金属帯が、ハードディスク用のサスペンション材であることを特徴とする、上記(1)に記載の金属帯の形状矯正方法。
本発明によれば、生産性を阻害することなく、ハーフエッチング用金属帯の板厚方向歪を均一にし、ハーフエッチングしても金属帯の表面に垂直な方向にそりを発生しない、金属帯の形状矯正方法を提供することが可能となった。特に、ハーフエッチングされても反りを生じない等の形状特性が、リードフレームよりも厳しく求められるハードディスクのサスペンション材等の用途での効果は絶大である。
図1は、本発明に係る金属帯の形状矯正装置の長手方向垂直断面図による概略説明図である。この装置は、張力付加機構を構成する入側ブライドル装置4と出側ブライドル装置5との間に張力計8、形状矯正ロールユニット11を順に配置し、これらに金属帯1を通板して形状矯正を行うものである。
張力付加機構は、金属帯1にその全体の伸び率が一定となるように張力を加えるもので、金属帯の伸び率を一定とすることにより、金属帯の過度の変形や破断を防ぐことができる。また、張力付加機構は、特開昭56−123331号公報、特開昭57−094424号公報等に記載された機械的な張力付加装置でも、あるいは、電気的にブライドル装置が連動するようになしたものでもよい。
なお、入出側のブライドル装置のロールは、張力の高い形状矯正ロールユニット11側から張力の低いアンコイラー2、あるいは、コイラー3にむかって、表面平滑ブライドルロール33、従来摩擦係数ブライドルロール31、高摩擦係数ブライドルロール32が配置されることが望ましい。この場合の各ロールの例としては、次のような例が挙げられる。すなわち、いわゆる従来摩擦係数ブライドルロール31は、クロムメッキされた鉄ロールである。形状矯正ロールユニット11に連なるブライドルロール33は、高い単位張力の金属帯が巻きつくため、ロール表面の模様の転写を防止する観点から平滑な表面が望ましい。一方、アンコイラー2、あるいは、コイラー3に連なるブライドルロール32は、低い単位張力の金属帯が巻きつくため、ブライドルロールの総本数を減らす観点から、高い摩擦係数のロール表面を持つロールが望ましい。ロール本数が増えれば、設備費が高くなるだけでなく、ロール起因の疵が増加し、板厚の薄い金属帯では安定生産の重大な障害となるからである。
図1の形状矯正ロールユニット11は、2対の形状矯正ロール16とバックアップロール17とに金属帯1を通して、金属帯を伸長するものである。
形状矯正ロール16は、個別に昇降機能を有しており、金属帯1をバックアップロール17と他の形状矯正ロールの間に押し込むことで、必要な形状矯正ロールへの有効巻きつけ径(図1の部分拡大図に点線で表示。)を得ることができる。
金属帯1に付与する単位張力Tは、金属帯の耐力の0.80未満であれば、板厚方向の歪偏差が大きく、エッチング後の金属帯の表面と垂直方向のそりが大きく、また、耐力の0.95倍超であれば、板幅間の張力偏差から幅方向の永久伸びの偏差を生じる可能性が高いので、金属帯1に付与する単位張力は、耐力の0.80倍以上、0.95倍以下とする。
また、形状矯正ロールへの有効巻きつけ径D(mm)は、上記単位張力Tの範囲で、永久伸びを与える径であり、以下で規定される。
T=(1−β)σ
D=Et/(2βσ)
β=0.05〜0.20
尚、E:ヤング率(MPa)、t:板厚(mm)、T:単位張力(MPa)、σ:耐力(MPa)
したがって、形状矯正ロールの実ロール径は、D(mm)以下となる。
この矯正方法により、金属帯1に加える永久伸び率は、金属帯の材質、寸法、矯正の度合などによって異なるが、0.1〜1.5%とする。0.1%未満では、形状矯正が不十分であり、一方、1.5%超では、片面エッチング後のそりが大きくなり目標値を達成できないからである。
図4は、本発明に係る別の金属帯の形状矯正装置の長手方向垂直断面図による概略説明図である。形状矯正ロールユニット11が、1本の形状矯正ロール16と2本のバックアップロール17からなることを除いて図1と同じである。
コイラー3での金属帯の長手方向のそりが問題ない場合には、この簡易な設備でも使用可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実験に用いた金属帯1は、冷間圧延後、脱脂洗浄された材質SUS304、厚み0.1mm、板幅420mm、耐力1200MPaであった。
上記のように準備した金属帯を、図1に示す形状矯正装置で通板し、形状を観察するとともに、通板後、図2に示す大きさ(板幅3mm×長さ60mm)に切り出し、ハーフエッチンング(全幅で長さ50mmを板厚の50%)を行い、そのそり量を測定した。図3にその結果の一部を示す。また、入出のブライドル装置のロール径は400mm、形状矯正ロールのロール径は150mmであった。単位張力は、1050MPa(耐力の87.5%)であった。
永久伸び率を大きくしていくと、形状の代表指標である急峻度は永久伸び率0.1%程度で大きく改善され、それ以降は漸減の状態であった。一方、片面エッチングした時の金属帯の表面に垂直な方向のそり量は、長手方向(通板方向)では、永久伸び率を大きくするにつれて減少し、0.1%で概ね零となり、その後もそり量は若干大きくなるものの安定して小さいことがわかる。また、幅方向のそり量も、永久伸び率が大きくなっても安定して小さいままであることがわかる。その結果、形状が目標範囲に入る永久伸び率の領域(>0.1%)では、ハーフエッチング後のそりを目標値に入れることが可能となった。
本発明に係る、ハーフエッチング用の金属帯の形状矯正装置の長手方向垂直断面図による概略説明図である。 ハーフエッチング(板厚の50%エッチング)後の金属帯の表面に垂直方向のそり量の測定方法を説明する図である。 本発明に係る、ハーフエッチング用の金属帯の形状矯正結果(急峻度、そり量)を示す図である。 本発明に係る、別のハーフエッチング用の金属帯の形状矯正装置の長手方向垂直断面図による概略説明図である 従来の板厚の薄い金属帯の形状矯正装置の長手方向垂直断面図による概略説明図である。 従来法によるハーフエッチング用の金属帯の形状矯正結果(急峻度、そり量)を示す図である。
符号の説明
1 金属帯
2 アンコイラー
3 コイラー
4 入側ブライドル装置
5 出側ブライドル装置
7 デフレクターロール
8 張力計
11 形状矯正ロールユニット
16 形状矯正ロール
17 バックアップロール
21 伸張ロールユニット
22 矯正ロールユニット
23 マルチロールユニット
31 従来摩擦係数ブライドルロール
32 高摩摩擦係数ブライドルロール
33 表面平滑ブライドルロール
41 伸長ロールユニットローラ

Claims (2)

  1. 片面または両面をエッチング面とする金属帯の形状を、前後の張力付加機構により所定の単位張力を付与しながら、少なくとも1本以上の形状矯正ロールと複数本のバックアップロールを千鳥配置した形状矯正ロールユニットにて矯正する、金属帯の形状矯正方法であって、前記金属帯に付与する単位張力T(MPa)を、金属帯の耐力σ(MPa)の0.80〜0.95倍の範囲に制御するとともに、前記形状矯正ロールユニットの形状矯正ロールを金属帯に押し込むことにより付与する、金属帯の永久伸び率を0.1〜1.5%に制御することを特徴とする、金属帯の形状矯正方法。
  2. 前記金属帯が、ハードディスク用のサスペンション材であることを特徴とする、請求項1に記載の金属帯の形状矯正方法。
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