以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る硬貨処理装置の概略構成を説明するブロック図である。なお、図中太線は硬貨の流れを示すものである。さらに詳細には、図中破線(密)は入金硬貨の流れ、破線(粗)は、返却・入金時リジェクト硬貨の流れ、実線は出金硬貨の流れ、一点鎖線は補給硬貨の流れ、二点差線は出金時リジェクト硬貨の流れを示す。各硬貨の詳細は後述する。硬貨処理装置100は、例えば、図6で後述するような取引装置としての自動券売機200や自動販売機(不図示)等に内蔵されるものである。また、硬貨処理装置100は、典型的には、入金された硬貨と予め係員等により補給された硬貨とを釣銭として用いるいわゆる循環式の硬貨処理装置である。
硬貨処理装置100は、例えば日本円硬貨である1円、5円、10円、50円、100円、500円を、詰まりを起こさずに正常に扱えるものである。さらに、ここでは、硬貨処理装置100は、上記の硬貨のうち10円、50円、100円、500円の4金種を入金処理できるもので説明する。即ち、10円、50円、100円、500円の4金種は正硬貨として処理され、1円、5円硬貨は、後述の入金時リジェクト硬貨として処理される。
硬貨処理装置100は、利用者からの硬貨の投入を受け付ける投入部103と、投入部103で受け付けた硬貨を収容し、前記収容した硬貨を1枚ずつ繰り出す繰出部105と、繰り出された硬貨を搬送する入金搬送部110と、入金搬送部110により搬送される硬貨を識別する識別部120と、入金搬送部110により搬送される硬貨を振り分ける振分部130と、振分部130により振り分けられた硬貨を金種毎に一時的に保留する一時保留部140と、一時保留部140から放出された硬貨を、金種毎に収納し、収納した硬貨を放出可能に構成された循環釣銭部160と、循環釣銭部160から放出された硬貨を搬送する出金搬送部107と、出金搬送部107で搬送された硬貨を放出する出金部109とを含んで構成される。さらに、硬貨処理装置100は、循環釣銭部160が満杯になった際に、循環釣銭部160に収納した硬貨を回収する金庫部170と、後述する出金時リジェクト硬貨を装置内に収納保管するリジェクト部180と、循環釣銭部160の後述する収納部としてのホッパケース5(図2参照)に硬貨を補給する補給部190と、硬貨処理装置100の各構成を制御し、ホッパケース5に収納される金種と、後述する判別部としての磁気センサ70(図2参照)によって判別された金種とを比較する制御部としての制御装置150とを含んで構成される。なお、硬貨処理装置100は、ホッパケース5(図2で後述する)を複数備えており、磁気センサ70(図2で後述する)は、複数のホッパケース5毎に設置されている。さらに、補給部190は、複数のホッパケース5に金種毎に硬貨を補給するように構成され、制御装置150は、複数のホッパケース5毎に前記比較を行うように構成される。
以下、上記各構成について詳細に説明する。
投入部103は、利用者から投入された1枚又は複数枚の硬貨を受け付け、繰出部105へ供給するものである。投入部103は受け付けた硬貨を放出することで繰出部105へ供給できる。また出金部109は、出金搬送部107で搬送された硬貨を利用者に受け渡す(返却する)ものである。
繰出部105は、投入部103で受け付けた硬貨を収容し、前記収容した硬貨を1枚ずつ繰り出すものである。繰出部105は、投入部103の硬貨の流れる方向下流に配置されている。即ち、ここでは繰出部105は、投入部103から放出された硬貨が重力により繰出部105に供給される位置に配置されている。繰出部105は、本実施の形態では、回転円板を有したホッパ構造のものを用いる。
入金搬送部110は、繰出部105により1枚ずつ繰り出された硬貨を搬送するものである。本実施の形態では、入金搬送部110は、硬貨の搬送にベルトを使用するものを用いる。また、入金搬送部110の繰出部105と振分部130との間には、識別部120が配置されている。識別部120は、入金搬送部110で搬送される硬貨を識別するものである。識別部120は、硬貨の、正硬貨の種類の識別、正硬貨であるか否かの識別即ち、正硬貨か入金時リジェクト硬貨かの識別を行うものである。また識別部120は、この識別結果を制御装置150へ出力する。なおここでは、正硬貨は、10円、50円、100円、500円の4金種の硬貨である。またここでは、上記正硬貨以外の硬貨を入金時リジェクト硬貨という。即ち1円、5円はここでは入金時リジェクト硬貨である。
振分部130は、入金搬送部110により搬送される硬貨のうち正硬貨以外のもの即ち入金時リジェクト硬貨を振り分けるリジェクト機構131と、入金搬送部110により搬送される硬貨で、識別部120で正硬貨と識別された硬貨を種類毎に振り分ける振分板133とを有している。リジェクト機構131は、振分部130の最も識別部120側(図中左側)に配置されている。また、リジェクト機構131は、硬貨の振り分けを行うために、揺動可能に構成される振分爪132を有している。リジェクト機構131は、振分爪132を揺動させ、搬送路を落下方向に切り替えることにより、振分部130上を摺動搬送された硬貨を落下させることで振り分けることができる。また、振分爪132の揺動は、制御装置150により制御されている。リジェクト機構131の下部には、不図示のシュートが接続されている。このシュートは、出金搬送部107の上部近傍まで延設されており、リジェクト機構131で振り分けられた入金時リジェクト硬貨を出金搬送部107へ放出することができる。
振分板133は、入金搬送部110によりその上面に、硬貨を押し付けて摺動搬送可能である。また、振分板133は、振り分ける各硬貨の外径より僅かに大きい孔が、振り分ける硬貨の種類毎に形成されている。硬貨の外径より僅かに大きいとは、種類毎に各々形成された孔が、振分板133上を摺動搬送される硬貨を、対応する孔から落下させることで振り分けが可能な大きさである。これらの孔は、識別部120側から、対応する硬貨の外径の小さい順に形成されている。即ちここでは、識別部120側(図中左側)から50円用、100円用、10円用、500円用の各孔が順に形成されている。このような順に各硬貨に対応する孔が形成されていることにより、確実に正硬貨を種類毎に振り分けることができる。
また振分板133の下部には、各孔毎に対応して不図示のシュートが接続されている。シュートは、一時保留部140に接続されており、振り分けられた硬貨を種類毎に一時保留部140へ供給することができる。さらに振分板133と一時保留部140との間には、硬貨を計数するための不図示のセンサが配設されている。このセンサは、例えば振り分けられた硬貨の通過を種類毎に検知するものである。即ち、この検知結果に基づいて、振り分けられた硬貨を種類毎に計数できる。ここでは、この計数は各センサの検知結果に基づいて制御装置150で行う。振分板133は、このセンサによる検知結果を、随時的に制御装置150へ出力するように構成されている。
一時保留部140は、振分部130によって各金種毎に振り分けられた入金硬貨を一時保留して、例えば1つの取引の終了後に、一時保留された硬貨を一時保留部の下方の構成されている循環釣銭部160へ放出し、また利用者の返却動作時には一時保留された硬貨を出金部109へ返却するものである。本実施の形態では、硬貨処理装置100は、一時保留部140を複数備えており、ここでは、振分部130によって振り分けられた各金種毎に、50円用一時保留部140a、100円用一時保留部140b、10円用一時保留部140c、500円用一時保留部140dを備えている。なお、以下の説明では4つの一時保留部を区別して説明する必要のない場合には、単に「一時保留部140」という。一時保留部140は、硬貨を保留する保留部と、開閉可能なシャッタとで構成されている。一時保留部140は、シャッタを開くことにより保留された硬貨を放出して、一取引終了後に循環釣銭部160への硬貨収納と、利用者の取消操作に対応する返却動作のための硬貨放出に対応している。
循環釣銭部160は、一時保留部140の下部に設けられている。循環釣銭部160は、複数の後述するホッパ1(図2参照)、ここでは各硬貨の種類毎にホッパ1を備えている。ホッパ1は、振分板133に対応するように、図中左側から50円用ホッパ1a、100円用ホッパ1b、10円用ホッパ1c、500円用ホッパ1dが配置されている(以下、これらを特に区別しないときには単にホッパ1という)。即ち、循環釣銭部160は、上記各々のホッパ1が一体に形成されたものを含んで構成される。各ホッパ1は、それぞれに備えられたホッパ制御部50が制御装置150に接続されている。一時保留部140から放出された硬貨は、それぞれの金種に対応したホッパ1に収納される。
ホッパ1の詳細な構成については図2で説明する。
また各ホッパ1の硬貨の収納可能枚数は、1000枚程度とするとよい。ホッパ1は、利用者への釣銭としての硬貨を出金搬送部107へ放出したり、循環釣銭部160が満杯にならないように、収納した硬貨を金庫部170へ放出することができる。循環釣銭部160は、ホッパ1を備えることで、利用者により投入された硬貨を釣銭として放出できる。即ち硬貨を循環させることができる。
金庫部170は、循環釣銭部160で、循環によりオーバーフローする前に回収される硬貨を収納する。また、装置全体の集計処理時の回収硬貨も収納する。金庫部170は、例えば、回収カセット(不図示)を装着できるように構成されており、満杯時に循環釣銭部160より放出された硬貨を回収カセットに収納できるように構成されている。また、金庫部170は、回収カセットを装着した状態で、回収カセットに収納された硬貨に直接接触できないように構成されている。典型的には、制御装置150は、後述するホッパケース5(図2参照)が満杯状態であると検知された際に、ホッパケース5(図2参照)から硬貨を強制的に排出して、金庫部170に収納するようにホッパ1を制御する。
出金搬送部107は、循環釣銭部160のおよそ下部から出金部109まで延設されている。循環釣銭部160の出金部109とは反対側にはリジェクト部180が配設されている。出金搬送部107は、循環釣銭部160から放出された硬貨を出金部109まで搬送する。また、出金搬送部107は、振分部130のリジェクト機構131より振り分けられた入金時リジェクト硬貨を出金部109まで搬送するものでもある。さらに、出金搬送部107は、ベルトを出金部109に硬貨を搬送する場合とは逆回転で駆動させることで、後述する出金時リジェクト硬貨をリジェクト部180に搬送するように構成されている。
リジェクト部180は、釣銭等の出金時に循環釣銭部160から放出すべき種別ではない硬貨が放出された場合などに当該硬貨、すなわち、出金時リジェクト硬貨を装置内に収納保管するように構成されている。
補給部190は、補給する硬貨を貯留した補給カセット191の着脱機構などから構成され、循環処理における準備金および釣銭放出による不足金種を補給するものである。補給部190から補給された硬貨はシュート(不図示)などを経由して循環釣銭部160を構成するホッパ1の収納部としてのホッパケース5(図2で後述する)に直接補給される。補給カセット191は、補給部190に着脱自在で複数枚の硬貨を一括して補給するものである。補給カセット191の下部に設けられたシャッタ(不図示)が解放され、補給部190を経由して硬貨が補給される。
本実施の形態では、硬貨処理装置100は、50円用補給部190a、100円用補給部190b、10円補給部190c、500円用補給部190dの金種に応じた4つの補給部が備えられている(図示ではまとめて1つとして図示している。以下、これらを特に区別しないときには単に補給部190という)。補給部190は、循環釣銭部160に金種毎に硬貨を補給する。すなわち、50円用補給部190aは50円用ホッパ1aに、100円用補給部190bは100円用ホッパ1bに、10円補給部190cは10円用ホッパ1cに、500円用補給部190dは500円用ホッパ1dに各金種の硬貨を補給する。また、言い換えれば、4つの補給カセット191に各々、50円、100円、10円、500円が収納され、該4つの補給カセット191を、各補給部190に装填することで、循環釣銭部160に金種毎に硬貨を補給する。
制御装置150は、硬貨処理装置100の各部に電気的に接続されており、各部の動作を制御するものである。ここでは、制御装置150は、電源装置と一体に構成されている。制御装置150は、例えばパソコンやマイコンなどのコンピュータである。本実施の形態では、制御装置150はマイコンである。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る硬貨処理装置100の循環釣銭部160を構成するホッパ1を説明する図である。図2(a)は正面図、図2(b)は平面図、図2(c)は側面図である。ホッパ1は、硬貨を収納する収納部としてのホッパケース5と、前記収納した硬貨を検知するエンドセンサ6と、収納部5に収納された硬貨を放出する放出部としての繰出部10を備える。繰出部10は、典型的には、ホッパケース5によって収納した硬貨を1枚ずつ繰り出して、放出するように構成される。また、繰出部10は、放出される硬貨が通過する放出路40を含んで構成される。さらに、放出路40は、後述するホッパベース13の繰出面13aと放出シュート20を含んで構成されている。
さらに、ホッパ1は、放出路40を挟み込むように略コの字型に形成され、該略コの字の両端に該略コの字の内側に向かって突出した対称な突起部73(図3参照)を有する磁性体71(図3参照)と、前記突起部73に略円板状に形成されたコイル72(図3参照)とを含んで構成され、放出路40を通過する硬貨の金種を判別する判別部としての磁気センサ70を備える。本実施の形態では、磁気センサ70は、放出路40を通過する硬貨の金種を判別するのに加え、放出路40を通過する硬貨の枚数も検知するように構成される。さらに、ホッパ1は、ホッパ1の全体を制御するホッパ制御部50を含んで構成される。
以下各構成の詳細について説明する。
ホッパケース5は、ホッパ1の上部に配置されている。また、ホッパケース5は、上部に上部開口部5aを有しており、この上部開口部5aから硬貨が供給できるように構成されている。ホッパケース5は、透明な樹脂により形成されている。これにより収納された硬貨の状態を外部から目視することで確認できる。また本実施の形態では、ホッパケース5と繰出部10で協働して硬貨を収納するように構成される。ここでは、ホッパケース5は、硬貨を1000枚程度収納できる大きさを有している。さらに、ホッパケース5の底部近傍の側面には、繰出部10により繰り出される硬貨を繰出部10の放出路40に導く出口開口部5cが形成されている。ホッパケース5に収納される硬貨は、出口開口部5cから繰出部10により図中M1方向へ一枚ずつ繰り出される。
さらに、ホッパケース5には、収納された硬貨が無いことを検知するためのエンドセンサ6と、収納された硬貨が少ないことを検知するためのニヤエンドセンサ7が取り付けられている。なおニヤエンドセンサ7も収納した硬貨を検知する収納硬貨検知手段である。エンドセンサ6は、ホッパケース5の底部近傍に、ニヤエンドセンサ7は、エンドセンサ6の少なくとも上方に配置されている。さらに具体的には、エンドセンサ6は、後述のキャリングディスク11の上面とおよそ同じ高さの位置に配置されている。エンドセンサ6、ニヤエンドセンサ7は、光を投光する投光部と、投光部より投光された光を受光する受光部とで構成され、投光部で投光された光が物体で遮光されることにより、受光部で受光できなくなることでその物体の存在を検知する光学センサ、例えばフォトセンサである。以下、エンドセンサ6、ニヤエンドセンサ7は、フォトセンサを用いる場合で説明する。エンドセンサ6、ニヤエンドセンサ7は、それぞれ硬貨の検知結果をホッパ制御部50へ出力するように構成されている。
繰出部10は、所定方向の回転により硬貨を1枚ずつ繰り出せる繰出円板としてのキャリングディスク11を有している。キャリングディスク11は円板形状を有している。なお、キャリングディスク11の所定方向の回転については後述する。
また繰出部10は、キャリングディスク11を保持するホッパベース13と、キャリングディスク11を回転駆動する駆動手段とを有している。さらに、図1に示すように、駆動手段は、ギヤヘッド14とモータ15とを含んで構成される。モータ15には、トルクに優れるもの例えば直流モータ(DCモータ)を用いるとよい。以下モータ15は、DCモータ15の場合で説明する。ギヤヘッド14は、DCモータ15の回転を減速してキャリングディスク11に伝達するものである。キャリングディスク11は、ギヤヘッド14を介してDCモータ15により回転駆動可能に構成されている。また、ホッパベース13には、上面に水平面に対して所定の角度で傾斜した繰出面13aが形成されている。
キャリングディスク11は、ホッパベース13の繰出面13a上に回転可能に取り付けられている。即ちキャリングディスク11は、水平面に対して所定の角度で傾斜している。言い換えれば、鉛直方向から所定の角度で傾斜した軸回りに回転可能に取り付けられる。所定の角度は、好ましくは20〜40度程度である。なお、図2は30度程度の場合を示している。このようにすることで、例えばキャリングディスク11に収納された硬貨の荷重が適切に作用し、繰出部10は、収納した硬貨を安定して繰り出せる。
キャリングディスク11は、鉛直方向から所定の角度で傾斜した中心軸O(オー)回りで、前記駆動手段により回転駆動される。キャリングディスク11は、図中R1方向に回転駆動されることで硬貨を繰り出す。即ちキャリングディスク11の所定方向の回転は、ここでは図中R1方向に回転である(以下所定方向の回転を正回転という)。なお、キャリングディスク11は、所定方向と逆方向の図中R2方向にも回転駆動される(以下所定方向と逆方向の回転を逆回転という)。R2方向に回転した場合には、硬貨は繰り出されないように構成されている。
キャリングディスク11には、硬貨を受入可能な大きさの孔11aが1以上形成されている。さらに言えば、孔11aの形状は円形であり、その直径は、硬貨の直径よりも僅かに大きい。本実施の形態では、孔11aは、中心軸Oと同心のピッチ円上に5つ形成されている。
キャリングディスク11の裏面には、孔11aが受け入れた硬貨を繰り出すための段差11bが形成されている。この段差11bは、手裏剣形状の部位11cを残して、他の部位11dをおよそ硬貨1枚分の厚さだけ削ることにより形成されている。これにより段差11bの対面には、段差11eが形成されている。また、部位11cには、後述のゲートピン16が逃げるための溝11fが形成されている。
繰出部10についてさらに説明する。繰出部10は、キャリングディスク11の孔11aに受け入れられた硬貨を出口開口部5cへ案内するためのゲートピン16を有している。ゲートピン16は、不図示の板バネにより、ゲートピン16の長手方向に下から上へ付勢されて取り付けられている。即ちゲートピン16は、ホッパベース13の繰出面13aから、不図示の板バネの付勢力によりその一部を突出した状態にある。これにより、硬貨がキャリングディスク11とゲートピン16との間に挟まって噛み込まれた場合でも、ゲートピン16が板バネの付勢力に打ち勝って沈み込むことで、この噛み込みが解消しやすくなる。
また、繰出部10は、ホッパケース5の出口開口部5cの幅を規制するためのコインガイド17と、硬貨の放出を規制するとともに硬貨をはじき飛ばすための送出機構18とを有している。コインガイド17は、ホッパベース13の繰出面13aの出口開口部5c近傍に取り付けられている。コインガイド17は、硬貨の大きさに対応してホッパケース5の出口開口部5cの幅を規制する略台形の板状のものであり、扱う硬貨の金種毎に大きさ及び形状が異なる。さらに、コインガイド17は、後述の送出ローラ18aの回動によるバネ18cの伸び量が一定となるようにしてバネ18cの付勢力をほぼ一定に保つように放出される硬貨の動きを規制する構造となっている。
送出機構18は、ホッパベース13の繰出面13aの出口開口部5c近傍に、コインガイド17に対向して取り付けられている。送出機構18は、硬貨の放出を規制するとともに硬貨をはじき飛ばすための送出ローラ18aと、送出ローラ18aを回動可能に支持するリンク18bと、送出ローラ18aを付勢するバネ18cとを含んで構成される。
ここで、キャリングディスク11の回転による硬貨の繰り出しについて説明する。キャリングディスク11の孔11a受け入れられた硬貨は、キャリングディスク11の正回転(R1方向の回転)により出口開口部5cまで案内された位置で、コインガイド17と送出機構18の送出ローラ18aによりその移動が規制される。しかし硬貨は、正回転するキャリングディスク11の段差11bにより、バネ18cによる付勢力に打ち勝って送出ローラ18aを回動させながら、M1方向に押出される。硬貨は、さらに段差11bにより押出されると、送出ローラ18aの回動により蓄積されたバネ18cの弾性エネルギーにより、はじき飛ばされるように繰り出される。また、キャリングディスク11が逆回転(R2方向の回転)しているときには、キャリングディスク11の孔11a受け入れられた硬貨は、出口開口部5cまで案内されても、コインガイド17と送出ローラ18aによりその移動が規制され、繰り出されることはない。これは、キャリングディスク11が逆回転しているときには、段差11eにより、硬貨が孔11a内に留まる方向の力が作用するためである。
繰出部10は、出口開口部5cの下流に放出路40を備える。放出路40は、ホッパベース13の繰出面13aと放出シュート20を含んで構成されている。放出シュート20は、板状の部材を断面形状が略コの字型になるように曲げ加工して形成される。さらに、放出シュート20は、該略コの字の開口側がホッパベース13の繰出面13aと対向するよう、該繰出面13aに接して配設される。すなわち、放出路40は、ホッパベース13の繰出面13aと、放出シュート20とによって、筒状に空間を画成するように形成される。出口開口部5cを介して繰り出される硬貨は、該繰出面13aと放出シュート20とにより画成された空間を通過して、外部に放出される。放出シュート20、繰出面13aは、本実施の形態では、金属、例えば、ステンレス合金や鉄板にメッキを施したもの等を用いる。硬貨が頻繁に通過する放出シュート20、繰出面13aに金属を用いることで耐摩耗性に優れたホッパ1とすることができる。さらに、ホッパ1は、上述したように、放出路40を挟み込むように略コの字型に形成され、該略コの字の両端に該略コの字の内側に向かって突出した対称な突起部73(図3参照)を有する磁性体71(図3参照)と、前記突起部73に略円板状に形成されたコイル72(図3参照)とを含んで構成され、放出路40を通過する硬貨の金種を判別する磁気センサ70を備える。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る硬貨処理装置100の放出路40及び磁気センサ70を説明する図である。図3(a)は磁気センサ70の正面、側面、平面を示す図、図3(b)は磁気センサ70のコイル72部分の分解斜視図、図3(c)は磁気センサ70の構成を示すブロック図、図3(d)は放出シュート20の平面図、図3(e)はホッパベース13の繰出面13aの上面の平面図である。
図3(a)に示すように、磁気センサ70を構成する磁性体71は、略コの字型に形成され該略コの字の両端に該略コの字の内側に向かって突出した対称な突起部73を有するものである。各突起部73には、各々コイル72が巻回されている。各コイル72は、図3(b)に示すように、2つのコイル72が互いに対向する側の端面72bと、各コイル72が配設されている突起部83の端面とがほぼ同一面となるように巻回されている。突起部73は、略コの字の内側に向かって突出して端面が互いに対向するように形成されることで、磁束が一方の突起部73から他方の突起部73へ跳びやすくなるようにしている。また、突起部73は、硬貨の判別に有効な漏れが少ない磁束を形成できるようにスポット(点)状に形成され、端面から発せられる磁束を集中させて高密度化している。
各コイル72は、各突起部73を巻回する銅線72aにより所定の直径φ及び厚みtで形成されている。2つのコイル72は、銅線72aの一方の端部77で互いに接続されている。また、2つのコイル72は、各々他方の端部77が後述する検出回路78に接続されている。2つのコイル72は、一方の端面72b(突起部73の端面、コイル82の端面)が互いに対向するように配設される。具体的には、2つのコイル72と突起部73とは磁束に影響を与えない接着剤を用い直接、あるいは、薄いボビン形状の樹脂(不図示)などを用いて固定されている。コイル72をこのように固定することで磁気センサ70のより小型化を図ることができる。なお、取り付け場所に余裕がある場合、コイル72の外周面を覆うようなポットコアを用い、磁束を制御するようにしてもよい。
2つのコイル72の各端面72bは、図3(a)に示すように、所定間隔あけて各突起部73側に対向して配設されている。一方のコイル72からの磁力線により、一方のコイル72と他方のコイル72との間では所定の強さの磁界が形成されている。ここでの所定間隔とは、ホッパベース13の繰出面13aと放出シュート20とで区画された硬貨の厚みに対する間隔であり、繰り出された硬貨が通過でき、所定の強さの磁界を硬貨が通過するときに硬貨中に生じるうず電流の影響によって生じる磁気変化を検出できる間隔として決められている。また、磁気センサ70は、上述したように、略コの字型の内側に繰出面13aと放出シュート20を挟み込むように形成され、硬貨の判別に好ましい硬貨の中心軸付近にコイル72の中央が位置することで、繰出面13aと放出シュート20とにより画成された空間を通過する硬貨の金種を判別する。
ここで、ホッパベース13の繰出面13aと放出シュート20とにより画成された空間の間隔、すなわち、硬貨の厚みに対する間隔は、硬貨1枚が通過できる範囲で放出シュート20の加工や通路幅としてのマージンを加味してできるだけ小さくすることが好ましく、ここでは、4.5mm以下としている。また、コイル72間の間隙については、硬貨の通過を阻害しない間隔以上で最大10mm以下とするのが好ましい。さらに、コイル72間の間隙とコイルの直径φ、厚みtにも相関関係があり、ホッパベース13の繰出面13aと放出シュート20とにより画成された空間の間隙、すなわち、硬貨の厚みに対するコイル72間の間隙、又は、コイル72の直径φを小さくすることで、磁気センサ70を小型化することができる。したがって、磁気センサ70の取り付け位置を比較的自由に定めることができ、汎用性も高まる。例えば、本実施の形態のように、ホッパ1の放出シュート20部分のように、取り付けスペースの極めて狭い部分にも取り付けることができる。
磁気センサ70では、銅線72aに電力を供給すると両側の突起部73の間に集中するように各コイル72の間に磁力線が発生する。この状態で2つのコイル72の間を硬貨が通過すると、通過する硬貨の厚さや材質に応じて、異なるうず電流が硬貨に発生して磁力線に作用する。このとき、上述したように、磁気センサ70の小型化を図るために各コイル72の直径φを小さくしている。このため、例えば、上述したような外周部(不図示)を備えただけのホットコアに巻回されたコイル72を対向させた場合、一方のコイル72と他方のコイル72との間の磁力線と、各々の突起部73から各々の外周部(不図示)への磁力線が発生する。磁力線の密度が大きければ各々の突起部73から各々の外周部(不図示)への磁力線は無視することができるが、本実施の形態のように各コイル72の直径を小さくすることで、磁力線の密度が小さくなる場合は無視することができなくり、硬貨の種類による変化量が出にくくなることがある。この現象は、磁気センサ70の周囲の板金構成(放出シュート20や繰出面13a)などでも発生する。しかしながら、本実施の形態では、略コの字に形成される磁性体71の両端に、該略コの字の内側に互いに向かって突出して突起部73が形成され、該突起部73に略円板状にコイル72を形成することで、磁性体71の突起部73間に磁力線が集中し、硬貨の種類による変化量を検出することができる。
図3(c)に示すように、磁気センサ70は、さらに、2つのコイル72の前記他方の端部77に接続された検出回路78と、検出回路78に接続された判別回路(整流回路)79とを含んで構成される。検出回路78は、コイル72と内部回路とにより発振器を構成する。検出回路78は、上述したホッパ制御部50に接続されており、ホッパ制御部50から動作信号を受けるとコイル72への電力供給がなされ、ホッパ制御部50から動作信号が停止されるとコイル72への電力供給が停止される。すなわち、検出回路78は、放出路40を通過する硬貨の金種を判別する時には動作信号の入力により電力供給が行われ、一方のコイル72から所定周波数の磁力線が発生する。検出回路78は、2つのコイル72間の磁力線により、所定の磁力密度の磁界を形成し、コイル72間を硬貨が通過することで発生する、コイル72のインダクタンス及びインピーダンスを内部回路で処理し、増幅器(不図示)等を介して、検出信号を判別回路79に出力する。
判別回路79は、検出回路78からの検出信号と、ホッパ制御部50に記憶される各金種毎に予め定められる基準信号との比較を行ない、その結果を判別信号としてホッパ制御部50に出力する。すなわち、繰出面13aと放出シュート20との間を、言い換えれば2つのコイル72間の磁界を硬貨が通過すると、硬貨の材質など応にじて、突起部73間の磁界変化が発生し、それに基づく検出回路78での検出信号も変化する。検出信号を入力した判別回路79は、内部回路で処理し整流回路を介して検出信号に基づく電圧信号を生成する。そこで、ホッパ制御部50に予め記憶している電圧値と当該生成された電圧信号の値とを比較することで、硬貨の金種を判別することができる。なお、基準信号は、ホッパ制御部50に記憶する代わりに、ホッパ1の上位装置の制御装置、ここでは、ホッパ制御部50に接続され、硬貨処理装置100の全体を制御する制御装置150に記憶しておいてもよい。このように、磁気センサ70では、簡単な構成ながら、特に材質を確実に識別することができ、例えば、簡単な構成の光学センサでは判別が難しい、直径の似た青銅製の10円硬貨と白銅製の100円硬貨とを確実に識別することができる。また、言い換えれば、例えば、光学センサを用いて硬貨の直径の大きさに基づいて硬貨の判別を行うものがあるが、この場合、10円硬貨と100円硬貨の直径の差が小さいため判別が難しく、判別するための機構及び制御系が追加され装置の大型化を招く問題もあるが、以上の構成であればこの問題点も解決することができる。
磁気センサ70は、2つのコイル72間の磁界を通過する硬貨の金種だけでなく、計数も行うことができることはいうまでもない。本実施の形態では、磁気センサ70は、繰出部10(図2参照)のキャリングディスク11(図2参照)、コインガイド17(図2参照)、送出機構18(図2参照)等により協動して繰り出され、放出路40を介して放出される硬貨の検知の結果を硬貨検知信号としてホッパ制御部50へ出力し、計数される。なお、硬貨の計数用のセンサは磁気センサ70とは別に設けてもよい。例えば、計数用センサとして光学センサを併設することで、夫々の特徴を生かした運用を図ることができ、何れかのセンサが故障しても装置自体の停止を回避することが可能となる。
放出路40の繰出面13a、放出シュート20は、前述したように、キャリングディスク11(図2参照)等により繰り出された硬貨が移動するものであり、金属、例えば、ステンレス合金や鉄板にメッキを施したもの等を用いる。放出シュート20は、図3(d)に示すように、コイル72が位置する部分、さらに具体的には、2つのコイル72の間に位置する部分に穿孔21が形成されている。さらに、放出シュート20は、当該穿孔21から出口開口部5c(図2参照)方向に向かって、放出シュート20の一部を分断する切り欠き22が形成されている。言い換えれば、切り欠き22は、穿孔21を起点として、出口開口部5cを介して繰り出される硬貨の流れの下流方向に向かって形成されている。
ここで、本実施の形態では、放出シュート20が金属により形成され、磁気センサ70が2つのコイル72の間に放出シュート20を挟み込むように配設されていることから、放出シュート20にも渦電流が発生する。放出シュート20に生じる渦電流は、放出シュート20の形状や、2つのコイル72間に発生する磁界からの距離等が影響するため、予め放出シュート20に生じる渦電流を考慮する場合、放出シュート20の取り付け位置や形状を極めて高い精度で決めなければならない。しかしながら、本実施の形態のように、放出シュート20の2つのコイル72の間に位置する部分に穿孔21を形成し、さらに、当該穿孔21から出口開口部5c(図2参照)方向に向かって、放出シュート20の一部を分断する切り欠き22を形成することで、放出シュート20に生じる渦電流の影響を低減することができる。さらに言えば、放出シュート20あるいは磁気センサ70の設置の際に、高い取付精度を要しない。これは、放出シュート(金属体)20の表面に、コイル72に対して外円状に還流して渦電流が発生ことがあるが、切り欠き22を設けることで、当該渦電流の発生が抑止されるからであると考えられる。
同様にホッパベース13の繰出面13aも金属製の板金により形成されていることから、ホッパベース13の繰出面13aも放出シュート20と同様に、図3(e)に示すように、放出シュート20の穿孔21に対応する部分、すなわち、繰出面13aに対して平行な方向に対して穿孔21の位置と一致する位置に穿孔23が形成されている。さらに、ホッパベース13の繰出面13aには、穿孔23から出口開口部5c(図2参照)とは反対方向に向かって切り欠き24が形成されている。これにより、ホッパベース13の繰出面13aに生じる渦電流の影響も低減することができる。要するに、放出路40を構成する放出シュート20、繰出面13aの他にも、磁気センサ70の2つのコイル72の間に挟み込まれるように配設される部材が存在し、当該部材が金属により形成されている場合、挟み込まれるように配設される部材の2つのコイル72の間に位置する部分に穿孔を形成し、さらに穿孔から切り欠きを形成することで、当該部材に生じる渦電流の影響を低減することができる。また、繰出面13aのように、硬貨の片面が接触して通過する部分の場合、硬貨の移動方向と切り欠きの方向とを略平行とすることで、硬貨の引っかかりが少なくなる。
図2に戻って、ホッパ制御部50は、例えばマイクロコンピュータといったいわゆるコンピュータである。ここでは、ホッパ制御部50は、硬貨処理装置100(図1参照)に内蔵される場合で説明する。本実施の形態では、ホッパ制御部50は、制御装置150(図1参照)から出力される硬貨を放出する旨を示す信号である払出指示信号を入力することで、硬貨の放出を行うように構成されている。なお、払出指示信号には、硬貨の必要枚数即ち放出する枚数の情報も含まれる。また、ホッパ制御部50は、磁気センサ70による硬貨の検知に基づいて、繰出部10を制御する。すなわち、ホッパ制御部50は、払出指示信号に応じた枚数の硬貨を放出した後、硬貨の放出を終了するように繰出部10を制御する。
また、ホッパ制御部50は、繰出部10により硬貨の繰り出しを行っている期間に、エンドセンサ6で硬貨を検知出来ない期間があったときには、繰出部10による硬貨の繰り出しを行った後、キャリングディスク11を所定方向と逆方向即ち逆回転方向(図2中R2方向)に断続的に回転させるように制御する。ここで、断続的に回転させるとは、例えば周期的に回転、停止を行うことであるが、例えば回転を停止させずに、その回転力を変化させることも含むものとする。ここでは、周期的に回転、停止を行う場合で説明する。またここでは、エンドセンサ6で硬貨を検知出来ない期間があったか否かの判断は、検知出来ない時間がごく短い時間例えばエンドセンサ6の出力を規定のサンプリング間隔で取得した複数のデータの1つでも硬貨を検知出来ないときがあったら、硬貨を検知出来ない期間があったと判断するように設定する。なおここでは、サンプリングは、例えば複数のデータを10個ずつ繰り返し取得する。そしてその中で1回のサンプリング間隔は、40msである。
このようにすることで、ホッパ制御部50は、硬貨の繰り出しを行っている期間のホッパケース5内の硬貨の収納状態をエンドセンサ6で監視できる。そしてホッパ制御部50は、前記監視に基づいて、繰出部10の制御を行えるので、適宜な硬貨収納状態とすることができる。
さらに、ホッパ制御部50は、判別回路79(図3参照)による検出信号と基準信号との比較としての判別信号を得ると、当該判別信号に基づいた放出路40を通過した硬貨の金種を上述した制御装置150(図1参照)に送信する。制御装置150は、ホッパケース5に収納される金種と磁気センサ70によって判別された金種とを比較するように構成される。言い換えれば、制御装置150は、ホッパケース5に収納される金種と、実際にホッパケース5から放出された金種とを比較する。ここで、複数のホッパケース5に収納される金種は、予め50円用ホッパ1a、100円用ホッパ1b、10円用ホッパ1c、500円用ホッパ1dに対応づけて、制御装置150の記憶部(不図示)に記憶させておけばよい。
また、上述したように、循環釣銭部160(図1参照)は、各硬貨の種類毎にホッパ1を備えている。制御装置150は、複数のホッパ1毎に設置されている磁気センサ70毎に得られる判別信号に応じて、ホッパ1のホッパケース5に収納される金種と、当該ホッパ1に備えられている磁気センサ70によって判別された金種とを比較するように構成される。さらに、制御装置150は、当該比較結果に応じて、通常の釣銭の払い出す出金処理や、循環釣銭部160から放出すべき種別ではない硬貨、例えば、金種の定められたホッパ1に誤って補給されてしまった異なる金種の硬貨が放出された場合などに当該硬貨を出金時リジェクト硬貨としてリジェクト部180に回収するリジェクト処理を行うように、出金搬送部107等を制御する。
具体的な例で説明すると、例えば、係員の硬貨の補充ミスなどによって、100円用ホッパ1bに10円硬貨が混入している場合、釣銭を出金する際に100円用ホッパ1bから100円硬貨を放出すべきにもかかわらず混入してしまっていた10円硬貨が放出され、利用客にとって損失となり、トラブルの原因ともなる。制御装置150は、ホッパケース5に収納される金種として予め100円用ホッパ1bに対応づけて記憶部(不図示)に記憶させておいた金種、ここでは100円と、実際にホッパケース5から放出され、磁気センサ70によって判別された金種、ここでは10円とを比較する。比較の結果、ホッパケース5に収納される金種と、磁気センサ70によって判別された金種とが一致しないことから、100円用ホッパ1bから放出された10円硬貨は出金時リジェクト硬貨であると判断し、リジェクト部180に回収する。逆に、比較の結果、ホッパケース5に収納される金種と、磁気センサ70によって判別された金種とが一致していた場合には、通常の釣銭の払い出す出金処理を実行する。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る硬貨処理装置100の動作の概略について説明するフロー図である。なお、以下の説明では硬貨処理装置100の各構成については適宜図1又は図2を参照する。
まず、硬貨処理装置100の準備金を各金種毎に補給カセット191に用意し、各補給部190にそれぞれの金種の補給カセット191を装填する(S100)。次に、各補給カセット191からシュート(不図示)等を経由し、各金種に対応するホッパ1のホッパケース5に硬貨を直接補給し(S102)、 上位装置、例えば後述する自動券売機200(図6参照)を介しての利用者からの入金を待機する(S104)。
次に、利用者により投入部103へ硬貨が投入される(S106)。硬貨処理装置100の制御装置150は、硬貨の投入を不図示の検知器により検知すると入金処理を開始する(S108)。具体的には、利用者により投入部103に投入された硬貨は投入部103より受け付けられ、繰出部105に供給される。繰出部105は供給された硬貨を収納し、収納した硬貨を1枚ずつ入金搬送部110に繰り出す。次に繰出部105から1枚ずつ繰り出された硬貨は、入金搬送部110で搬送され、入金搬送部110に設けられた識別部120に到達する。識別部120は搬送されてきた硬貨を識別し、識別結果を制御装置150に出力する。そして識別部120を通過した硬貨は、入金搬送部110により振分部130へと搬送される。振分部130まで搬送された硬貨は、制御装置150により識別結果に基づいて正硬貨と判別されたものを振分板133を介して一時保留部140に一時収納し、それ以外のものはリジェクト機構131を介して入金時リジェクト硬貨として返却する。振分部130と一時保留部140との間にはセンサ(不図示)が設けられており、各一時保留部140に収納される硬貨の枚数を検知する。この検知結果は入金データとして制御装置150へ出力される。一時保留部140に保留さた硬貨は、上位装置での取引終了後に、釣銭通路部(不図示)を経由し、金種毎に循環釣銭部160へ収納される。
次に、 制御装置150は、入金された金額と、例えば利用者の操作で確定されたサービスに必要な金額とを比較して、釣銭金額、すなわち、釣銭に必要な硬貨の金種と各々の金種の枚数を算出する。制御装置150は、この算出結果に基づいて、釣銭があるか否かを判定し(S110)、釣銭が必要ない場合(S110;No)には、出金処理を行なわず動作を終了し、入金を待機する。釣銭が必要な場合には(S110;Yes)、制御装置150は、出金処理として、該当する金種のホッパ1へ必要枚数の繰出しを指示する払出指示信号を出力する。これにより各ホッパ1は必要枚数の硬貨を出金搬送部107に放出する(S112)。このとき、各ホッパ1の磁気センサ70により各ホッパ1から放出された硬貨の金種が判別される。硬貨の判別結果に問題がない場合には出金搬送部107を出金部109側に硬貨が移動するように駆動し、出金部109まで搬送し、出金処理が終了する。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る硬貨処理装置100の出金処理ついて説明するフロー図である。まず、硬貨処理装置100の電源ONと同時にホッパ制御部50は、制御装置150から電源ONの指示を入力すると、ホッパ1の電源を投入し、各センサの初期化処理であるイニシャル処理を行う(S200)。イニシャル処理は、基本的に各センサが正常に機能しているか否かやホッパケース5内の硬貨有無などの確認を行う処理である。このときに磁気センサ70の出力が所定値の範囲でない場合には、判別として用いないことも可能となる。
イニシャル処理が正常に終了すると、ホッパ制御部50は、エンドセンサ6による収納された硬貨の監視を開始し、待機する(S202)。そして、ホッパ制御部50は、制御装置150からの払出指示信号の入力を監視する(S204)。なお、ホッパ制御部50は、エンドセンサ6の監視と同時に、ニヤエンドセンサ7による収納された硬貨の監視も行う。
制御装置150から払出指示信号が入力された場合には(S204;Yes)、払い出す金種を収納しているホッパ1に該当する繰出部10を起動する。すなわち、繰出部10のDCモータ15を回転駆動させることでキャリングディスク11を正回転させ、払い出しを開始する(S206)。制御装置150から払出指示信号が入力されない場合には(S204;No)、S202に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ホッパ制御部50は、硬貨の放出を開始すると、磁気センサ70により硬貨が1枚放出されたか否かを検知し、計数を行う(S208)。さらに、磁気センサ70により放出され、放出路40を通過した硬貨の材質等に基づいて金種の判別がなされる(S210)。
次に、制御装置150は、放出を行なったホッパ1の金種(言い換えれば、払出指示信号により払い出しを指示した金種)と、実際に磁気センサ70により判別された金種とが一致するか否かの比較を行い、正しい金種の硬貨が放出されたか否かを判別する(S212)。
正しい金種の硬貨が放出されたと判別された場合(S212;Yes)、ホッパ制御部50は、硬貨が計数処理により計数された硬貨の枚数が必要枚数に達したか否かを監視し、払い出しが終了したか否かを判定する(S214)。払い出しが終了したと判定した場合(S214;Yes)、キャリングディスク11の正回転を停止させ、硬貨の放出を終了し、出金搬送部107を正転する(S216)。言い換えれば、出金部109側に硬貨が移動するようにベルトを駆動させ、釣銭を出金部109に出金し、出金処理を終了する。払い出しが終了していないと判定した場合(S214;No)、S208の処理に戻り以降の処理を繰り返し実行する。
S212で誤った金種の硬貨が放出されたと判別された場合(S212;No)、ホッパ1による硬貨の放出を一旦停止し、出金搬送部107を逆転する(S218)。リジェクト部180側に硬貨が移動するようにベルトを駆動させ、出金時リジェクト硬貨をリジェクト部180に搬送し、回収する(S220)。ここで、S218とS220が上述したリジェクト処理に相当する。
次に、制御装置150は、リジェクトした出金時リジェクト硬貨の枚数を確認し、所定枚数連続したか否かを判定する(S222)。本実施の形態では、所定枚数として3枚の出金時リジェクト硬貨が連続してリジェクトされた場合(S222;Yes)は、例えば、係員による硬貨の補給作業で、予め金種が定められているホッパ1に、間違えて異なる金種の硬貨を補給したと推測することができるので、制御装置150は、異常処理として、不図示の報知手段に異常信号を送信し、係員に異常を報知し(S224)、終了する。なお、係員に対する報知に代えて、ホッパ1に収納されている硬貨の回収処理を実行するようにしても良い。また、ここでは、所定枚数は3枚としているが、使用環境に応じて適宜変更してもよい。
出金時リジェクト硬貨が、3枚連続しなかった場合(S222;No)には、予め金種が定められているホッパ1に混入した異なる金種の硬貨の枚数は、1枚または数枚程度であると推測できるので、再びS208に戻って、通常の払出し動作を繰り返し実行する。このように処理することで、異なる金種の硬貨が数枚程度混入しているに過ぎない場合には、硬貨処理装置100の動作を停止する必要がないため、硬貨処理装置100の稼働率を向上させることができる。
以上で説明した本発明の第1の実施の形態に係る硬貨処理装置100によれば、磁気センサ70が放出路40を挟み込むように形成されるため、取り付け位置に汎用性をもたせることができる。また、略コの字型の磁性体71を用い、その突起部73にコイル72を設けることで、コイル72を小型化しても2つのコイル72間に所定の磁束密度の磁力線をある程度確保するとともに、その磁力線内を通過する硬貨の材質等の検出が可能となりホッパ1に補給された硬貨の種別を判別可能とすることができる。さらにその判別結果に基づき制御装置150が誤補給された硬貨を釣銭としないことが可能となる。すなわち、間違った硬貨の放出を防止することのできる硬貨処理装置を提供することができる。
また、以上のように、利用者が投入した硬貨は識別部120で正確に識別されて振り分けられる上に、補給部190には銀行等から持ち込まれる確実に検証された硬貨が充填される。したがって、本来、識別部120及び補給部190より下流側には、硬貨識別のための装置は設ける必要はないと考えられる。しかしながら、本実施の形態では、補給部190より下流側、典型的には、補給部190と出金部109との間、ここでは、循環釣銭部160に判別部としての磁気センサ70を設けることで、例えば、補給部190から硬貨を補給する時点で既に異なる金種が混入しているというような、ごくまれにしか起こり得ない人為的ミスに基づく出金硬貨金種の間違い等も防止することができる。
以上で説明した本発明の第1の実施の形態に係る硬貨処理装置100によれば、磁気センサ70の2つのコイル72の間に挟み込まれるように配設される部材、すなわち、放出路40構成する放出シュート20、ホッパベース13の繰出面13aの2つのコイル72の間に位置する部分に穿孔を形成し、さらに穿孔から切り欠きを形成することで、当該部材に生じる渦電流の影響を低減することができる。すなわち、当該部材に金属等を用いて耐久性を高めつつ、磁気センサ70の検出能力も高めることができる。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る取引装置としての自動券売機200の概略構成を示すブロック図である。本発明の第2の実施の形態に係る取引装置としての自動券売機200は、上述した硬貨処理装置100と利用者の操作を受け付ける接客部210とを備える。さらに、自動券売機200は、貨幣としての紙幣を処理する貨幣処理装置としての紙幣処理装置202と、プリペードカード等カード類を処理する貨幣処理装置としてのカード処理装置203と、切符等を発行する券印刷装置204とを含んで構成される。
接客部210には自動券売機200が乗車券を発売中であるか否かを表示するための案内表示部211と、各口座に対応した口座選択ボタン212が配設されている。さらに、接客部210は、硬貨を投入するための硬貨投入口213と、紙幣を挿入する紙幣挿入口214と、プリペードカードを挿入するためのカード挿入口215と、乗車券が放出される券放出口216と、釣銭が放出される硬貨放出口217、紙幣放出口218と、金額を表示する表示部219を有している。ここで、表示部219に表示される金額は、硬貨投入口213から投入された硬貨の累計金額、紙幣挿入口214から挿入された紙幣の累計金額、カード挿入口215から挿入されたプリペードカードの残額、釣銭金額等である。
また、硬貨投入口213は、硬貨処理装置100の投入部103(図1参照)に連通され、硬貨投入口213から投入された硬貨は、投入部103を介して硬貨処理装置100内部に取り込まれ、硬貨処理装置100によって識別、計数された後に収納される。紙幣挿入口214は、紙幣処理装置202と連通され、紙幣挿入口214から挿入された紙幣は紙幣処理装置202によって識別、計数された後に収納される。カード挿入口215は、カード処理装置203に連通され、カード挿入口215から挿入されたプリペードカードはカード処理装置203によって識別、残額検出された後に、カード処理装置203に保留される。また、釣銭が放出される硬貨放出口217は、上述した硬貨処理装置100の出金部109(図1参照)に連通されている。
硬貨処理装置100の制御装置150、紙幣処理装置202の制御装置220、カード処理装置203の制御装置221は主制御部223に接続され、硬貨、紙幣、プリペードカード(以下単に貨幣という。)が投入あるいは挿入されると、投入あるいは挿入された貨幣のデータを主制御部223に送信する。主制御部223には、案内表示部211、口座選択ボタン212、表示部219が接続され、口座選択ボタン212の入力により口座が確定される。
また、主制御部223には券印刷装置204の制御装置222が接続されており、券印刷装置204は、主制御部223の指令に基づき、口座に対応する乗車券を印刷し、券放出口216から乗車券を発券する。取引の内容に応じて釣銭があるときは、硬貨処理装置100、紙幣処理装置202は、主制御部223の指令に基づき、釣銭を硬貨放出口217、紙幣放出口218から放出する。プリペードカードが使用された場合には、カード処理装置203は、主制御部223の指令に基づき、プリペードカードをカード挿入口215に戻し、カード挿入口215から所定の長さだけ突き出て、利用者に返却される。
以上で説明した本発明の第2の実施の形態に係る自動券売機200によれば、上述した硬貨処理装置100を備えるので、例えば、取引の料金が細分化され、釣銭を多く取り扱うことから、硬貨の補給が頻繁に行なわれる自動券売機でも、誤って異なる金種を補給してしまった場合に、当該誤補給した硬貨を釣銭としないことが可能となり、釣銭等の硬貨を正確に処理することができる。また、ホッパから誤って放出された硬貨を出金時リジェクト硬貨として回収することができるので稼働率を向上させることができる。
なお、硬貨を取り扱う取引装置の別の形態として金融関係のATM等があるが、この装置の場合には補給された硬貨を、以上の説明での循環釣銭部にあたる出金部の収納前に監査し、さらに出金された硬貨を監査していたので装置が大型になっていた。しかしながら、本実施の形態の場合、上述したように、磁気センサ70は、取り付け位置の汎用性が高く、また、比較的小型であることから、これらの装置の小型化にも応用可能といえる。また、これにより、装置内での硬貨の循環経路を短縮することができるので、取引に要する時間も短縮することができる。また、以上で説明した実施の形態によれば、本来あり得ないはずであるが、特に人為的ミスによりまれに起こることのある間違い硬貨の放出を防止することができる。