JP2007015060A - 難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン系サーメットからなる超硬基体の表面に、(a)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Y)AlXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.30〜0.70、Yは0.01〜0.10を示す)を満足する(Ti,Al,Si)N層からなる下部層、(b)0.1〜1.5μmの平均層厚を有するCrN層からなる密着接合層、(c)1〜5μmの平均層厚を有し、かつCr2O3の素地に、前記Cr2O3との合量に占める割合で0.1〜5原子%の金属Crが分散分布した組織を有するCr分散Cr2O3層からなる上部層、以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる。
【選択図】 なし
Description
組成式:(Ti1-(X+Y)AlXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.30〜0.70、Yは0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Si)Nで示す]層からなる硬質被覆層を1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆超硬工具が知られており、かつ前記被覆超硬工具の硬質被覆層である(Ti,Al,Si)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さと耐熱性、同Tiによって高温強度を具備し、さらにSiの含有によって一段と耐熱性の向上したものになっていることから、これを各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削加工に用いた場合にすぐれた切削性能を発揮することも知られている。
(a)上記従来被覆超硬工具の硬質被覆層である(Ti,Al,Si)N層を下部層として1〜5μmの平均層厚で形成し、これの上に上部層として酸化クロム(以下、Cr2O3で示す)層を同じく1〜5μmの平均層厚で形成すると、前記Cr2O3層は熱的安定性にすぐれ、特に切削時の発熱で高温加熱された状態でも上記の難削材との親和性がきわめて低く、かつ著しく低い粘着性を保持することから、前記下部層である(Ti,Al,Si)N層を十分に保護し、この結果(Ti,Al,Si)N層のもつすぐれた特性が長期に亘って十分に発揮されるようになること。
以上(a)〜(e)に示される研究結果を得たのである。
(a)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Y)AlXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.30〜0.70、Yは0.01〜0.10を示す)を満足する(Ti,Al,Si)N層からなる下部層、
(b)0.1〜1.5μmの平均層厚を有するCrN層からなる密着接合層、
(c)1〜5μmの平均層厚を有し、かつCr2O3の素地に、前記Cr2O3との合量に占める割合で、0.1〜5原子%のCrが分散分布した組織を有するCr分散Cr2O3層からなる上部層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる、難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬工具に特徴を有するものである。
(a)下部層の組成および平均層厚
下部層を構成する(Ti,Al,Si)N層におけるAl成分には高温硬さと耐熱性、同Ti成分には高温強度を向上させ、さらにSi成分には耐熱性を一段と向上させる作用があるが、Alの割合を示すX値がTiとSiの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.30未満になると、相対的にTiの割合が多くなり過ぎて、所定の高温硬さと耐熱性を確保することができなくなり、摩耗進行が急激に促進するようになり、一方Alの割合を示すX値が同0.70を越えると、相対的にTiの割合が少なくなり過ぎて、高温強度が急激に低下し、この結果切刃部にチッピングなどが発生し易くなることから、X値を0.30〜0.70と定めたものであり、さらにSiの割合を示すY値がAlとTiの合量に占める割合で0.01未満では所望の耐熱性向上効果が得られず、一方同Y値が0.10を超えると、高温強度が急激に低下するようになることから、Y値を0.01〜0.10と定めた。
また、その平均層厚が1μm未満では、自身のもつすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方その平均層厚が5μmを越えると、上記の粘性の高い難削材の切削加工では切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜5μmと定めた。
その平均層厚が0.1μm未満では、上部層と下部層の間に強固な接合強度を確保することができず、一方その平均層厚が1.5μmを越えると、硬質被覆層の強度が密着接合層部分で急激に低下するようになり、これがチッピング発生の原因となることから、その平均層厚を0.1〜1.5μmと定めた。
上部層を構成するCr分散Cr2O3層は、上記の通り難削材に対する粘着性および親和性がきわめて低く、これは切削時に前記難削材が高温加熱された状態でも変わることなく維持されることから、下部層である(Ti,Al,Si)N層を前記高温加熱された難削材から保護し、これのチッピング発生を抑制する作用を発揮するが、その平均層厚が1μm未満では、前記作用に所望の効果が得られず、一方その平均層厚が5μmを越えて厚くなり過ぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜5μmと定めた。
また、上記Cr分散Cr2O3層におけるCrには、上記の通り自身の高温強度を向上させ、もって切削時におけるチッピングの発生を著しく抑制する作用があるが、その割合が素地のCr2O3との合量に占める割合で0.1原子%未満では所望の高温強度向上効果を確保することができず、一方その割合が5原子%を越えると、被削材である上記難削材との間にきわめて低い粘着性および反応性を確保することができなくなり、特にその切粉との間にチッピング発生の原因となる粘着現象が現れるようになることから、その割合を0.1〜5原子%と定めた。
(b)まず、装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を700℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記金属Crとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記金属Crによってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al−Si合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al,Si)N層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(d)上記の下部層形成用Ti−Al−Si合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を停止し、装置内の雰囲気を同じ4Paの窒素雰囲気に保持すると共に、超硬基体への直流バイアス電圧(−100V)も同じくしたままで、カソード電極の前記金属Crとアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって同じく表3に示される目標層厚のCrN層を硬質被覆層の密着接合層として蒸着形成し、
(e)上記金属Crとアノード電極とのアーク放電を停止し、前記蒸着装置内の雰囲気を0.5PaのAr雰囲気とすると共に、前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置したCr分散Cr2O3焼結体に、スパッタ出力:3kWの条件でスパッタリングを開始し、同じく表3に示される目標層厚のCr分散Cr2O3層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
被削材:JIS・SUS316の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:200m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.35mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件A)でのステンレス鋼の乾式断続切削加工試験、
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:200m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.4mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件B)での軟鋼の乾式断続切削加工試験、
被削材:JIS・SCMnH1の丸棒、
切削速度:150m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件C)での高マンガン鋼の乾式連続切削加工試験を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S15Cの板材、
切削速度:60m/min.、
溝深さ(切り込み):3mm、
テーブル送り:150mm/分、
の条件での軟鋼の乾式溝切削加工試験、本発明被覆エンドミル4〜6および従来被覆エンドミル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS316の板材、
切削速度:50m/min.、
溝深さ(切り込み):5mm、
テーブル送り:140mm/分、
の条件でのステンレス鋼の湿式(水溶性切削油使用)溝切削加工試験、本発明被覆エンドミル7,8および従来被覆エンドミル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCMnH1の板材、
切削速度:50m/min.、
溝深さ(切り込み):10mm、
テーブル送り:80mm/分、
の条件での高マンガン鋼の乾式溝切削加工試験をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表7にそれぞれ示した。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS316の板材、
切削速度:100m/min.、
送り:0.15mm/rev、
穴深さ:8mm、
の条件でのステンレス鋼の湿式穴あけ切削加工試験、本発明被覆ドリル4〜6および従来被覆ドリル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCMnH1の板材、
切削速度:80m/min.、
送り:0.15mm/rev、
穴深さ:16mm、
の条件での高マンガン鋼の湿式穴あけ切削加工試験、本発明被覆ドリル7,8および従来被覆ドリル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S15Cの板材、
切削速度:70m/min.、
送り:0.25mm/rev、
穴深さ:32mm、
の条件での軟鋼の湿式穴あけ切削加工試験、をそれぞれ行い、いずれの湿式穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表8にそれぞれ示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、
(a)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Y) AlX SiY)N(ただし、原子比で、Xは0.30〜0.70、Yは0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層からなる下部層、
(b)0.1〜1.5μmの平均層厚を有する窒化クロム層からなる密着接合層、
(c)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ酸化クロムの素地に、前記酸化クロムとの合量に占める割合で、0.1〜5原子%の金属クロムが分散分布した組織を有するクロム分散酸化クロム層からなる上部層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる、難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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