JP2006281408A - 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超硬基体の表面に、(a)いずれも(Ti,Al,Y)Nからなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、上記薄層Aは特定の組成式:[Ti1-(A+B)AlAYB]N(Ti,Al,Y)N層、上記薄層Bは特定の組成式:[Ti1-(C+D)AlCYD]N(Ti,Al,Y)N層、からなり、(c)上記下部層は、単一相構造を有し特定の組成式:[Ti1-(E+F)AlEYF]N(Ti,Al,Y)N層、からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる。
【選択図】 なし
Description
組成式:[Ti1-(E+F) AlE YF]N(ただし、原子比で、Eは0.50〜0.65、Fは0.001〜0.05を示す)、
を満足するTiとAlとY(イットリウム)の複合窒化物[以下、(Ti,Al,Y)Nで示す]層からなる硬質被覆層を2〜6μmの平均層厚で蒸着形成してなる被覆超硬工具が知られており、前記(Ti,Al,Y)N層は、構成成分であるAlによって高温硬さと耐熱性、同Tiによって高温強度、さらに同Yによって高温耐酸化性の向上した特性を具備することも知られている。
(a)硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Y)N層において、Y成分の含有割合を多くすればするほど高温耐酸化性は向上するようになるが、上記の従来(Ti,Al,Y)N層における0.001〜0.05原子%程度のY含有割合では、前記耐熱合金の高熱発生を伴う高速切削加工で摩耗進行を充分に抑制するにたるすぐれた高温耐酸化性を具備せしめることはできず、前記耐熱合金の高速切削加工で摩耗進行を充分に抑制するに足る、すぐれた高温耐酸化性を確保するためには前記0.001〜0.05原子%をはるかに越えた15〜25原子%のY成分の含有が必要であり、一方15〜25原子%のY成分を含有した(Ti,Al,Y)N層は脆化がひどく、このため高温強度の向上に寄与するTi成分の所定量の含有が不可欠となるが、このように多量のY成分と所定量のTi成分を含有した場合、Al成分の含有余地はきわめて小さなものとなり、この結果高温硬さおよび耐熱性のきわめて低いものとなるので、これ単独では硬質被覆層として実用に供することができないこと。
組成式:[Ti1-(C+D)AlCYD]N(ただし、原子比で、Cは0.20〜0.35、Dは0.05〜0.10を示す)を満足する、相対的にAl成分の含有割合を多くした(Ti,Al,Y)N層、
を、それぞれの層厚を5〜20nm(ナノメーター)の薄層とした状態で、交互積層すると、この結果の(Ti,Al,Y)N層は、薄層の交互積層構造によって、上記の高Y含有の(Ti,Al,Y)N層(以下、薄層Aという)のもつすぐれた高温耐酸化性と、前記薄層Aに比して相対的にY含有割合を低く、かつ相対的にAl含有割合を高くした(Ti,Al,Y)N層(以下、薄層Bという)のもつ相対的に高い高温硬さと耐熱性とを具備するようになるので、硬質被覆層として実用に供することができるようになること。
組成式:[Ti1-(E+F)AlEYF]N(ただし、原子比で、Eは0.50〜0.65、Fは0.001〜0.05を示す)を満足する、単一相構造の(Ti,Al,Y)N層、
を設けた構造にすると、この結果の硬質被覆層は、一段とすぐれた高温耐酸化性に加えて、高温硬さと耐熱性、さらに高温強度を複合的に具備したものとなるので、この硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆超硬工具は、上記の耐熱合金の高熱発生を伴う高速切削加工でも、前記硬質被覆層の摩耗進行が著しく抑制されるようになることから、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
(a)いずれも(Ti,Al,Y)Nからなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの層厚をそれぞれ有し、
(b)上記上部層は、いずれも5〜20nm(ナノメ−タ−)の層厚を有する薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
上記薄層Aは、
組成式:[Ti1-(A+B)AlAYB]N(ただし、原子比で、Aは0.01〜0.06、Bは0.15〜0.25を示す)を満足する(Ti,Al,Y)N層、
上記薄層Bは、
組成式:[Ti1-(C+D)AlCYD]N(ただし、原子比で、Cは0.20〜0.35、Dは0.05〜0.10を示す)を満足する(Ti,Al,Y)N層、からなり、
(c)上記下部層は、単一相構造を有し、
組成式:[Ti1-(E+F)AlEYF]N(ただし、原子比で、Eは0.50〜0.65、Fは0.001〜0.05を示す)を満足する(Ti,Al,Y)N層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具に特徴を有するものである。
(a)下部層の組成式および層厚
上記の通り、硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Y)N層におけるAl成分には高温硬さおよび耐熱性を向上させ、一方同Ti成分には高温強度、さらに同Y成分には高温耐酸化性を向上させる作用があり、下部層ではAl成分の含有割合を全体的に多くして、高い高温硬さと耐熱性を具備せしめるが、Alの含有割合を示すE値がTiとYとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.50未満では、きわめて発熱の高い耐熱合金の高速切削加工に要求されるすぐれた高温硬さおよび耐熱性を確保することができず、摩耗進行促進の原因となり、一方Alの割合を示すE値が同0.65を越えると、高温強度が急激に低下し、この結果チッピング(微少欠け)などが発生し易くなることから、E値を0.50〜0.65と定めた。
また、Yの割合を示すF値がTiとAlの合量に占める割合で、0.001未満では、所定の最小限の高温耐酸化性を確保することができず、一方同F値が0.05を超えると、下部層の具備する上記のすぐれた特性、すなわち高温硬さと耐熱性、および高温強度が急激に低下するようになることから、F値を0.001〜0.05と定めた。
さらに、その層厚が2μm未満では、自身のもつすぐれた高温硬さおよび耐熱性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その層厚が6μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その層厚を2〜6μmと定めた。
上部層の薄層Aの(Ti,Al,Y)NにおけるY成分は、上記の通りその含有割合をできるだけ高くして、高温耐酸化性を一段と向上させ、もって高熱発生を伴う耐熱合金の高速切削加工での摩耗進行を抑制する目的で含有するものであり、したがってB値が0.15未満では所望のすぐれた高温耐酸化性を確保することができず、一方B値が0.25を越えると、相対的にTi成分の含有割合が少なくなり過ぎて、層自体が具備すべき高温強度を確保することができなり、層として実用に供することができなくなることから、B値を0.15〜0.25と定めた。
また、Alの割合を示すA値がTiとYの合量に占める割合で、0.01未満では、最低限の高温硬さおよび耐熱性を確保することができず、摩耗促進の原因となり、一方同A値が0.06を超えると、高温強度が急激に低下するようになり、チッピング発生の原因となることから、A値を0.01〜0.06と定めた。
上部層の薄層Bにおいては、上記薄層Aに比してY成分の含有割合を相対的に低くし、かつAl成分の含有割合を相対的に高く維持することで、前記薄層Aに不足する高温硬さと耐熱性を具備せしめ、隣接する薄層Aの高温硬さおよび耐熱性不足を補強し、もって、前記薄層Aの有するすぐれた高温耐酸化性と、前記薄層Bの有する相対的にすぐれた高温硬さと耐熱性を具備した上部層を形成するものであるが、組成式におけるAlの含有割合を示すC値が0.20未満になると、所定の相対的にすぐれた高温硬さおよび耐熱性を確保することができず、摩耗進行が促進するようになり、一方同C値が0.35を越えると、上部層全体の高温強度低下は避けられず、チッピング発生の原因となることから、C値を0.20〜0.35と定めた。
また、Yの割合を示すD値がTiとAlの合量に占める割合で、0.05未満では、上部層全体の高温耐酸化性の低下が避けられず、一方同D値が0.10を超えると、上部層全体の高温強度が急激に低下するようになることから、D値を0.05〜0.10と定めた。
それぞれの層厚が5nm未満ではそれぞれの薄層を上記の組成で明確に形成することが困難であり、この結果上部層に所望のすぐれた高温耐酸化性、さらに所定の相対的に高い高温硬さと耐熱性を確保することができなくなり、またそれぞれの層厚が20nmを越えるとそれぞれの薄層がもつ欠点、すなわち薄層Aであれば高温硬さと耐熱性不足、薄層Bであれば高温耐酸化性不足が層内に局部的に現れ、これが原因でチッピングが発生し易くなったり、摩耗進行が促進するようになることから、それぞれの層厚を5〜20nmと定めた。
その層厚が0.5μm未満では、自身のもつすぐれた高温耐酸化性および所定の高温硬さと耐熱性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その層厚が1.5μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その層厚を0.5〜1.5μmと定めた。
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記下部層形成用Ti−Al−Y合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記Ti−Al−Y合金によってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記下部層形成用Ti−Al−Y合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3,4に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Ti,Al,Y)N層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(d)ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して2Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加した状態で、前記薄層A形成用Ti−Al−Y合金のカソード電極とアノード電極との間に50〜200Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、前記超硬基体の表面に所定層厚の薄層Aを形成し、前記薄層A形成後、アーク放電を停止し、代って前記薄層B形成用Ti−Al−Y合金のカソード電極とアノード電極間に同じく50〜200Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、所定層厚の薄層Bを形成した後、アーク放電を停止し(この場合薄層Bの形成から開始してもよい)、再び前記薄層A形成用Ti−Al−Y合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Aの形成と、前記薄層B形成用Ti−Al−Y合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Bの形成を交互に繰り返し行い、もって前記超硬基体の表面に、層厚方向に沿って表3,4に示される目標組成および一層目標層厚の薄層Aと薄層Bの交互積層からなる上部層を同じく表3,4に示される全体目標層厚で蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
被削材:JIS・SUH31の丸棒、
切削速度:70m/min.、
切り込み:1.0mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:3分、
の条件(切削条件A)での耐熱鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は30m/min.)、
被削材:質量%で、Co−25.5%Cr−7.5%W−10.5%Niの組成をもったCo合金の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:60m/min.、
切り込み:1.2mm、
送り:0.15mm/rev.、
切削時間:4分、
の条件(切削条件B)でのCo合金の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は30m/min.)、
被削材:質量%で、Ni−15.5%Cr−0.9%Co−8%Feの組成をもったNi合金の丸棒、
切削速度:80m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.15mm/rev.、
切削時間:4分、
の条件(切削条件C)でのNi合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は35m/min.)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもった上記組成(質量%で、Ni−15.5%Cr−0.9%Co−8%Fe)のNi合金の板材、
切削速度:45m/min.、
溝深さ(切り込み):3mm、
テーブル送り:280mm/分、
の条件でのNi合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)、本発明被覆超硬エンドミル4〜6および比較被覆超硬エンドミル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SUH31の板材、
切削速度:45m/min.、
溝深さ(切り込み):4mm、
テーブル送り:300mm/分、
の条件での耐熱鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)、本発明被覆超硬エンドミル7,8および比較被覆超硬エンドミル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもった上記組成(質量%で、Co−25.5%Cr−7.5%W−10.5%Ni)のCo合金の板材、
切削速度:75m/min.、
溝深さ(切り込み):5mm、
テーブル送り:160mm/分、
の条件でのCo合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は35m/min.)をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表8,9にそれぞれ示した。
被削材−平面:100mm×250、厚さ:50mmの寸法をもった上記組成(質量%で、Co−25.5%Cr−7.5%W−10.5%Ni)のCo合金の板材、
切削速度:45m/min.、
送り:0.3mm/rev、
穴深さ:6mm、
の条件でのCo合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)、本発明被覆超硬ドリル4〜6および比較被覆超硬ドリル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもった上記組成(質量%で、Ni−15.5%Cr−0.9%Co−8%Fe)のNi合金の板材、
切削速度:50m/min.、
送り:0.2mm/rev、
穴深さ:15mm、
の条件でのNi合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は25m/min.)、本発明被覆超硬ドリル7,8および比較被覆超硬ドリル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SUH31の板材、
切削速度:60m/min.、
送り:0.25mm/rev、
穴深さ:30mm、
の条件での耐熱鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は30m/min.)、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表8にそれぞれ示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、
(a)いずれもTiとAlとY(イットリウム)の複合窒化物からなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、
(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
上記薄層Aは、
組成式:[Ti1-(A+B)AlAYB]N(ただし、原子比で、Aは0.01〜0.06、Bは0.15〜0.25を示す)を満足するTiとAlとYの複合窒化物層、
上記薄層Bは、
組成式:[Ti1-(C+D)AlCYD]N(ただし、原子比で、Cは0.20〜0.35、Dは0.05〜0.10を示す)を満足するTiとAlとYの複合窒化物層、からなり、
(c)上記下部層は、単一相構造を有し、
組成式:[Ti1-(E+F)AlEYF]N(ただし、原子比で、Eは0.50〜0.65、Fは0.001〜0.05を示す)を満足するTiとAlとYの複合窒化物層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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JP2003311507A (ja) * | 2002-04-26 | 2003-11-05 | Mitsubishi Materials Corp | 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 |
-
2005
- 2005-04-04 JP JP2005107569A patent/JP4645818B2/ja not_active Expired - Fee Related
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US8475943B2 (en) | 2011-07-08 | 2013-07-02 | Kennametal Inc. | Coated article having yttrium-containing coatings applied by physical vapor deposition and method for making the same |
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