JP2007038374A - 難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットからなる超硬基体の表面に、(a)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Y)AlXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.30〜0.70、Yは0.01〜0.10を示す)を満足する(Ti,Al,Si)N層からなる下部層、(b)0.1〜1.5μmの平均層厚を有する窒化バナジウム層からなる層間密着層、(c)1〜5μmの平均層厚を有し、かつVOM(酸化バナジウム)の素地に、前記VOMとの合量に占める割合で、0.5〜7原子%の金属Vが分散分布した組織を有するV分散VOM層からなる上部層、以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる。
【選択図】 なし
Description
組成式:(Ti1-(X+Y)AlXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.30〜0.70、Yは0.01〜0.10を示す)、
を満足するTiとAlとSiの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Si)Nで示す]層からなる硬質被覆層を1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆超硬工具が知られており、かつ前記被覆超硬工具の硬質被覆層である(Ti,Al,Si)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さと耐熱性、同Tiによって高温強度を具備し、さらにSiの含有によって一段と耐熱性の向上したものになっていることから、これを各種の一般鋼や普通鋳鉄などの連続切削や断続切削加工に用いた場合にすぐれた切削性能を発揮することも知られている。
硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬工具を開発すべく、上記の従来被覆超硬工具に着目し、研究を行った結果、
(a)上記従来被覆超硬工具の硬質被覆層である(Ti,Al,Si)N層を下部層として1〜5μmの平均層厚で形成し、これの上に上部層として酸化バナジウム(以下、VOMで示す。ただし、Mは酸素のバナジウム(V)に対する相対含有割合の変化値を示し、原子比で、VO、V2O3、V2O5、およびVO2などを示す)層を同じく1〜5μmの平均層厚で形成すると、前記VOM層は表面滑り性にすぐれ、この結果切削時の発熱で被削材(難削材)およびその切粉が高温加熱された状態でも切刃部(すくい面および逃げ面と、これら両面が交わる切刃稜線部)と被削材および切粉との間には常にすぐれた滑り性が確保され、前記被削材および切粉の切刃部表面に対する粘着性および反応性が著しく低減し、前記下部層である(Ti,Al,Si)N層を十分に保護することから、(Ti,Al,Si)N層のもつすぐれた特性が長期に亘って十分に発揮されるようになること。
(c)一方、上記の上部層であるV分散VOM層と下部層である(Ti,Al,Si)N層との密着性は十分でなく、特に断続切削を行った場合に前記の層間の密着性不足が原因でチッピングが発生し易いが、前記V分散VOM層と(Ti,Al,Si)N層との間に窒化バナジウム(以下、VNで示す)層を0.1〜1.5μmの平均層厚で介在させると、前記VN層は前記V分散VOM層および(Ti,Al,Si)N層のいずれとも強固に密着することから、これら両層間にはすぐれた密着性が確保されるようになること。
以上(a)〜(e)に示される研究結果を得たのである。
(a)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Y)AlXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.30〜0.70、Yは0.01〜0.10を示す)を満足する(Ti,Al,Si)N層からなる下部層、
(b)0.1〜1.5μmの平均層厚を有するVN層からなる層間密着層、
(c)1〜5μmの平均層厚を有し、かつVOMの素地に、前記VOMとの合量に占める割合で、0.5〜7原子%の金属Vが分散分布した組織を有するV分散VOM層からなる上部層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる、難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬工具に特徴を有するものである。
下部層を構成する(Ti,Al,Si)N層におけるAl成分には高温硬さと耐熱性、同Ti成分には高温強度を向上させ、さらにSi成分には耐熱性を一段と向上させる作用があるが、Alの割合を示すX値がTiとSiの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.30未満になると、相対的にTiの割合が多くなり過ぎて、所定の高温硬さと耐熱性を確保することができなくなり、この結果摩耗進行が急激に促進するようになり、一方Alの割合を示すX値が同0.70を越えると、相対的にTiの割合が少なくなり過ぎて、高温強度が急激に低下し、この結果切刃部にチッピングなどが発生し易くなることから、X値を0.30〜0.70と定めたものであり、さらにSiの割合を示すY値がAlとTiの合量に占める割合で0.01未満では所望の耐熱性向上効果が得られず、一方同Y値が0.10を超えると、高温強度が急激に低下するようになることから、Y値を0.01〜0.10と定めた。
その平均層厚が0.1μm未満では、上部層と下部層の間に強固な接合強度を確保することができず、一方その平均層厚が1.5μmを越えると、硬質被覆層の強度が層間密着層部分で急激に低下するようになり、これがチッピング発生の原因となることから、その平均層厚を0.1〜1.5μmと定めた。
上部層を構成するV分散VOM層は、すぐれた表面滑り性を有し、上記の通り被削材(難削材)および切粉に対する粘着性および反応性がきわめて低く、これは切削時に前記被削材が高温加熱された状態でも変わることなく維持されることから、下部層である(Ti,Al,Si)N層を前記高温加熱された被削材および切粉から保護し、これのチッピング発生を抑制する作用を発揮するが、その平均層厚が1μm未満では、前記作用に所望の効果が得られず、一方その平均層厚が5μmを越えて厚くなり過ぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜5μmと定めた。
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記下部層形成用Ti−Al−Si合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記Ti−Al−Si合金によってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al−Si合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al,Si)N層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(d)上記の下部層形成用Ti−Al−Si合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を停止し、装置内の雰囲気を同じく4Paの窒素雰囲気に保持すると共に、超硬基体への直流バイアス電圧も同じく−100Vとした条件で、カソード電極の前記金属Vとアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって同じく表3に示される目標層厚のVN層を硬質被覆層の層間密着層として蒸着形成し、
(e)上記金属Vとアノード電極とのアーク放電を停止し、前記蒸着装置内の雰囲気を0.5PaのAr雰囲気とすると共に、前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置したV分散VOM焼結体に、スパッタ出力:3kWの条件でスパッタリングを開始し、同じく表3に示される目標層厚を有し、かつ金属V目標含有割合に相当する金属Vをそれぞれ分散含有したV分散VOM層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
被削材:JIS・SUS316の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:280m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.25mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件A)でのステンレス鋼の乾式断続切削加工試験、
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:250m/min.、
切り込み:1.2mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件B)での軟鋼の乾式断続切削加工試験、
被削材:JIS・SCMnH1の丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件C)での高マンガン鋼の乾式連続切削加工試験、を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S15Cの板材、
切削速度:70m/min.、
溝深さ(切り込み):3mm、
テーブル送り:150mm/分、
の条件での軟鋼の乾式溝切削加工試験、本発明被覆エンドミル4〜6および従来被覆エンドミル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS316の板材、
切削速度:70m/min.、
溝深さ(切り込み):5mm、
テーブル送り:130mm/分、
の条件でのステンレス鋼の湿式(水溶性切削油使用)溝切削加工試験、本発明被覆エンドミル7,8および従来被覆エンドミル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCMnH1の板材、
切削速度:60m/min.、
溝深さ(切り込み):8mm、
テーブル送り:120mm/分、
の条件での高マンガン鋼の乾式溝切削加工試験をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表7にそれぞれ示した。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS316の板材、
切削速度:160m/min.、
送り:0.2mm/rev、
穴深さ:8mm、
の条件でのステンレス鋼の湿式穴あけ切削加工試験、本発明被覆ドリル4〜6および従来被覆ドリル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCMnH1の板材、
切削速度:140m/min.、
送り:0.25mm/rev、
穴深さ:16mm、
の条件での高マンガン鋼の湿式穴あけ切削加工試験、本発明被覆ドリル7,8および従来被覆ドリル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S15Cの板材、
切削速度:120m/min.、
送り:0.25mm/rev、
穴深さ:28mm、
の条件での軟鋼の湿式穴あけ切削加工試験、をそれぞれ行い、いずれの湿式穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表8にそれぞれ示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、
(a)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Y)AlXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.30〜0.70、Yは0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層からなる下部層、
(b)0.1〜1.5μmの平均層厚を有する窒化バナジウム層からなる層間密着層、
(c)1〜5μmの平均層厚を有し、かつ酸化バナジウムの素地に、前記酸化バナジウムとの合量に占める割合で、0.5〜7原子%の金属バナジウムが分散分布した組織を有する金属バナジウム分散酸化バナジウム層からなる上部層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる、難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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JP2005227909A JP2007038374A (ja) | 2005-08-05 | 2005-08-05 | 難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 |
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CN114988917A (zh) * | 2022-05-05 | 2022-09-02 | 滁州用朴新材料科技有限公司 | 一种纳米复合高硬度陶瓷刀具材料及其制备方法 |
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JPH10158861A (ja) * | 1996-12-04 | 1998-06-16 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 被覆切削工具およびその製造方法 |
JP2000063121A (ja) * | 1998-08-11 | 2000-02-29 | Toyota Motor Corp | 酸化物系水素吸蔵材料 |
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2005
- 2005-08-05 JP JP2005227909A patent/JP2007038374A/ja active Pending
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