本発明に係る圧縮機について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る圧縮機として機能するスクロール型圧縮機を示す。
このスクロール型圧縮機10は、図1に示されるように、カップ状に形成されたフロントハウジング12と、前記フロントハウジング12に連結されるリアハウジング(第2ハウジング)14とを備える。
フロントハウジング12の上部には、例えば、冷媒ガス等からなる流体をその内部へと導入する吸入口16が形成されている。一方、リアハウジング14の上部には、スクロール型圧縮機10により前記流体が圧縮された圧縮流体を、例えば、冷媒循環系へと吐出する吐出口18が形成されている。なお、フロントハウジング12及びリアハウジング14には、スクロール型圧縮機10を、例えば、エンジンや外部機器等に取り付けるための複数の取付部20が設けられている。
フロントハウジング12の内部には、その開口した一端部側から固定スクロール(第1ハウジング)22と、該固定スクロール22に対して旋回する可動スクロール24が挿入される。
この固定スクロール22は、フロントハウジング12とリアハウジング14とによって挟持される固定側基板部26と、該固定側基板部26から可動スクロール24側へと渦巻状に立設される固定側渦巻壁28とからなる。
固定側渦巻壁28は、図2及び図3に示されるように、該固定側渦巻壁28の最外周端から内周端側に向かって半径外方向に徐々に壁厚が厚くなるように形成され、スクロール型圧縮機10における鉛直上方向となる部位が最も厚く形成される。この固定側渦巻壁28における上部には、半径内方向に凹状に窪んだガイド通路30が形成される。
このガイド通路30は、断面略矩形状且つ固定スクロール22の軸線と略平行に形成され、該ガイド通路30と対向する固定側基板部26には給油孔32が形成される。前記給油孔32は、固定側基板部26を貫通した供給通路34と連通し、該供給通路34を介して固定スクロール22の背面22a側と連通している(図4参照)。また、ガイド通路30には、該ガイド通路30を中心としてその両側部に半径外方向へと立設された一組の堰止壁36が形成されている(図3参照)。なお、供給通路34も、前記ガイド通路30と同様に固定スクロール22の軸線と略平行に形成されている。これにより、リアハウジング14側から潤滑油(例えば、オイル)が供給通路34へと供給された際に、該潤滑油が前記給油孔32を介してガイド通路30へと吐出され、前記堰止壁36によって固定側渦巻壁28の周方向に流れることが防止されるためガイド通路30に沿って流通する。
一方、固定スクロール22における固定側基板部26の背面22aには、図1及び図2に示されるように、薄板状に形成されたガスケット38を介してリアハウジング14が装着される。この背面22aの略中央部には、圧縮室110からリアハウジング14との間に形成される吐出室40(後述する)へと連通する導出孔42が形成されている。
また、固定スクロール22の背面22aには、前記導出孔42を閉塞し、圧縮室110において圧縮された流体が所定圧となった際に撓曲して開動作する吐出弁44と、該吐出弁44の弁開度を規制するリテーナ46が設けられている。この吐出弁44は、その一端部が導出孔42と対向する位置に配置されると共に、他端部が該導出孔42より所定間隔離間した一直線上にリテーナ46と共にボルト48を介して固着されている(図5及び図6参照)。そして、吐出弁44が導出孔42を閉塞するように着座し、前記導出孔42に導入される圧縮流体の圧力によって吐出弁44が導出孔42から離間することにより、前記流体が導出孔42を通じて吐出室40へと供給される。
リテーナ46は、ボルト48によって固定された端部を基点として前記背面22aより離間する方向に所定角度で傾斜しているため、前記吐出弁44が導出孔42を通じて導出する圧縮流体によって弁開状態となった際に、該吐出弁44がリテーナ46に当接してその弁開度が規制される。
さらに、固定スクロール22の背面22aに開口した供給通路34は、図5及び図6に示されるように、該背面22aの上部に形成され、且つ、導出孔42と略一直線上に配置される。そして、前記背面22aには、導出孔42と供給通路34との間に形成され、所定深さだけ窪んだ第1凹部50と、該第1凹部50と隣接し、油分離管(油分離部材)52が配設される第2凹部54と、該背面22aの下部側に形成される第3及び第4凹部56、58を備える。なお、第1〜第4凹部50、54、56、58は、背面22aの表面より略同一の深さだけ窪んで形成されている。
この第1凹部50は、吐出弁44及びリテーナ46と略平行に形成され、リアハウジング14の吐出室40と対向する位置に形成されている。
また、第2凹部54は、導出孔42の中心を通る鉛直線に対して第1凹部50と略対称となる位置に配置され、背面22aの上下方向に延在してリアハウジング14の分離室62及び排出室64(後述する)と対向するように形成される。この第2凹部54の導出孔42側となる一端部には、略円形状に形成された円形凹部60を介して油分離管52が装着される(図7参照)。なお、第2凹部54の深さD1は、前記円形凹部60の深さD2より若干量だけ深く設定されている(D1>D2)(図8参照)。
この油分離管52は、図6及び図7に示されるように、円筒状に形成される筒部66(第1嵌合部)と、該筒部66の端部に形成されて半径外方向に拡径した円盤状のフランジ部68とを含む。前記筒部66は、円盤状のフランジ部68の中心に対して偏心して接続され、前記筒部66及びフランジ部68の内部には、軸線方向に貫通した通路70が形成されている。
また、このフランジ部68には、その周面から半径内方向に断面略三角形状に窪んだ係合溝72が形成され、前記油分離管52を円形凹部60に装着した際に、前記係合溝72が円形凹部60に形成された係合突部74と係合する。これにより、固定スクロール22に対する油分離管52の位置決めがなされると共に、フランジ部68の円形凹部60内における回転変位が規制される。換言すれば、円形凹部60に形成された係合突部74は、油分離管52の回り止めとして機能している。
さらに、フランジ部68には、円形凹部60と対向する面に筒部66側に向かって窪んだ溝部76が形成され、該円形凹部60にフランジ部68を挿入した際に、前記溝部76が第2凹部54と対向する(図8参照)。すなわち、溝部76を介して油分離管52の通路70と第2凹部54とが連通した状態となる。
そして、油分離管52は、そのフランジ部68が円形凹部60に挿入された状態で固定スクロール22の背面22aにガスケット38を当接し、且つ、該ガスケット38にリアハウジング14を当接させることにより、前記油分離管52が固定スクロール22とリアハウジング14との間に挟持されて保持される。
なお、上述した油分離管52の係合溝72及び円形凹部60の係合突部74を設ける代わりに、図9に示される油分離管52aのフランジ部68を円形凹部60に対して固定ボルト78で固定するようにしてもよい。これにより、油分離管52が固定スクロール22に対して位置決めされた状態で保持され、該油分離管52が固定ボルト78による締付力と固定スクロール22とリアハウジング14とによる挟持力によって一層確実に固定される。
第3凹部56は、図6に示されるように、導出孔42を中心として前記第2凹部54と略対称となる位置に配置され、第1凹部50と同様にリアハウジング14の吐出室40と対向する位置に形成されている。
第4凹部58は、吐出弁44及びリテーナ46と一直線上となる位置に配置され、リアハウジング14の貯油室80(後述する)と対向する位置に形成されている。
第2凹部54における円形凹部60と第4凹部58との間には、吐出弁44及びリテーナ46と略平行に第1連通路82が形成され、前記第1連通路82は、背面22aより所定深さだけ窪んで略一直線上に形成される。そして、固定スクロール22をリアハウジング14に対して組み付けた際に、第1連通路82の一端部が、リアハウジング14の分離室62に連通した供給通路34と対向すると共に、その他端部が貯油室80に対向するように配置される。
また、第4凹部58の下部には、吐出弁44及びリテーナ46の軸線と略直交するように第2連通路84が形成され、前記第2連通路84が前記第1連通路82と略同一の深さに窪んで略一直線上に形成される。そして、固定スクロール22をリアハウジング14に対して組み付けた際に、第2連通路84の一端部がフィルタ86が装着されるフィルタ室88(後述する)と対向すると共に、その他端部がリアハウジング14に形成された油供給溝90(後述する)の端部と対向するように配置される。
さらに、固定スクロール22の外周部近傍には、所定間隔離間して複数(例えば、4箇所)の第1ボルト孔92が形成され、該第1ボルト孔92に挿通される複数(例えば、4本)のボルト94が、ガスケット38の第2ボルト孔96及びリアハウジング14の第3ボルト孔98を介してフロントハウジング12のねじ孔100に螺合される。これにより、固定スクロール22が、リアハウジング14及びフロントハウジング12に対して一体的に固着される。この際、固定スクロール22の固定側基板部26には、環状溝を介してOリング102が装着され、該Oリング102によって固定スクロール22とフロントハウジング12とから形成される吸入室104が封止されて気密が保持される(図1参照)。
可動スクロール24は、図1に示されるように、可動側基板部106と、該可動側基板部106から固定スクロール22側へと渦巻状に立設され、前記固定側渦巻壁28に噛み合う可動側渦巻壁108とを有する。
そして、固定スクロール22における固定側基板部26及び固定側渦巻壁28と、可動スクロール24における可動側基板部106及び可動側渦巻壁108とによって圧縮室110が形成される。
この圧縮室110を封止するために、固定側渦巻壁28及び可動側渦巻壁108の各端部には、それぞれ可動側基板部106及び固定側基板部26に摺接するようにシール部材112が装着されている。
また、可動側基板部106が固定側渦巻壁28に当接することにより、該可動側基板部106によって固定スクロール22のガイド通路30の端部が閉鎖され、前記ガイド通路30と可動側基板部106によって囲繞されることにより潤滑油が所定量だけ貯えられる貯油槽114として機能する(図4参照)。
フロントハウジング12の他端部には、回転シャフト116の一端である軸部118が挿入される。この軸部118は、フロントハウジング12の他端部に保持された第1軸受120を介して回転自在に支持される。また、回転シャフト116の軸部118には、前記吸入室104を封止するための封止部材122が嵌挿される。前記封止部材122は、フロントハウジング12の開口肩部に支持され、例えば、金属材料からなるリング状のコアにゴム系材料、あるいは樹脂系材料を被覆することにより構成される。
一方、回転シャフト116の他端には、一端より拡径した支持体124が備えられている。前記支持体124は、その外周面がフロントハウジング12に保持された第2軸受126に嵌挿されることによって回転自在に支持される。この支持体124には、その軸心に対して偏心したピン128が固着されている。すなわち、回転シャフト116は、第1及び第2軸受120、126によって回転自在に支持されている。
可動スクロール24の可動側基板部106には、第2軸受126側に向かって開口した装着穴130が形成され、前記装着穴130には、旋回軸受132を介してブッシュ134が回転自在に支持されている。前記ブッシュ134には、その軸心に対して偏心した孔部136が形成され、前記孔部136に前記支持体124のピン128が挿入される。
このピン128の先端には、環状溝が形成され、該環状溝に係止リング138が嵌合される。従って、ピン128は前記環状溝に装着された係止リング138によってブッシュ134に対する軸線方向の移動が規制される。また、ブッシュ134の根元近傍にはを円盤状のバランスウェイト140が装着される。
フロントハウジング12の内部には、可動スクロール24を摺接面によって摺動可能に支持するスラストプレート142と、前記可動スクロール24の自転を規制し、且つ、該可動スクロール24の旋回を許容するオルダムリング144と、回転シャフト116の軸線に対して直交する一方向にオルダムリング144を往復変位可能に支持すると共に、前記可動スクロール24に付与される前記軸線方向のスラスト力を、スラストプレート142を介して受け止めるオルダムベース146とが配設される。
可動スクロール24における可動側基板部106の前面側には、該可動スクロール24を径方向にのみ往復変位可能とする一対の第1係合凹部148が形成されている。前記第1係合凹部148には、オルダムリング144の径方向に突出した一対の第1係合凸部150が摺動可能に係合される。
また、可動スクロール24を前記第1係合凹部148に対して直交する方向にのみ往復変位可能とするために、オルダムリング144には、前記第1係合凸部150に対して直交して径方向に突出した一対の第2係合凸部(図示せず)が形成されている。前記一対の第2係合凸部は、オルダムベース146の径方向に突出した図示しない一対の第2係合凹部に摺動可能に係合される。
さらに、オルダムベース146は、シム152を介して複数(例えば、2本)のボルト154によって締め付けられる。このシム152は、固定スクロール22と可動スクロール24との前記軸線方向の隙間を所定値に調節するために装着されるものであり、前記隙間が適切に調整される場合には、前記シム152を装着しなくてもよい。
フロントハウジング12の他端部には、その外周部に第3軸受156を介してプーリ158が装着されている。このプーリ158に図示しないエンジン等の回転駆動源から回転力が伝達され、該プーリ158の内部に配設される電磁クラッチ160のオン・オフ動作によって前記回転シャフト116への前記回転力の伝達あるいは切り離しが行われる。
図2に示されるように、フロントハウジング12の端面には、一対の第1位置決め孔162が対角線状に所定間隔離間して形成される。前記第1位置決め孔162には、その軸線方向の所定位置に一対の位置決めピン164が挿入されて固定されている。この位置決めピン164は、フロントハウジング12、固定スクロール22、ガスケット38及びリアハウジング14を組み付ける際の位置決め基準として機能する。
すなわち、前記位置決めピン164に対応して、固定スクロール22には一対の貫通した第2位置決め孔166が形成され、また、リアハウジング14には一対の第3位置決め孔168が形成されると共に、ガスケット38には一対の貫通する第4位置決め孔170が形成されている。
なお、位置決めピン164は、固定スクロール22の貫通する第2位置決め孔166内に予め挿入し、あるいは、リアハウジング14の第3位置決め孔168に予め嵌挿して固定させておいてもよい。
リアハウジング14は、図1に示されるように、固定スクロール22及びガスケット38を介してフロントハウジング12に連結される。このリアハウジング14は、固定スクロール22との間にガスケット38が挟持され、図5及び図10に示されるように、該ガスケット38が当接する接合面172側に開口し、圧縮室110において圧縮された流体が導入される吐出室40と、前記吐出室40と連通して前記流体に含有された潤滑油を分離する分離室62と、前記分離された潤滑油が貯えられる貯油室80と、前記潤滑油が分離された後に流体が導入される排出室64が形成される。
なお、図2に示されるように、リアハウジング14は、吐出室40と貯油室80とが第1境界壁(分割壁)174によって分離され、前記吐出室40と排出室64とが第2境界壁(分割壁)176によって分離されると共に、前記貯油室80と排出室64とが第3境界壁(分割壁)178で分離されている。また、分離室62は、該分離室62の周囲に形成された環状壁(分割壁)180によって吐出室40、貯油室80及び排出室64に対して分離されている。
吐出室40は、図11に示されるように、リアハウジング14に対して固定スクロール22を組み付けた際に、該固定スクロール22の導出孔42、第1及び第3凹部50、56と対向する位置に形成され、リアハウジング14の軸線方向に沿って所定深さだけ窪んで形成される。この吐出室40は、前記リアハウジング14の接合面172においてその表面積の約半分となる大きさに形成されている。なお、吐出室40の内部には、吐出弁44及びリテーナ46が挿入される。
分離室62は、環状壁180を介して吐出室40及び排出室64に隣接して設けられ、リアハウジング14に対して固定スクロール22を組み付けた際に、油分離管52と対向する位置に形成される(図12参照)。この分離室62は、図10及び図11に示されるように、断面略円形状でリアハウジング14の軸線方向に沿って所定深さで形成される。この分離室62には、吐出室40との間に環状壁180が切り欠かれた第1及び第2導入通路182、184が形成され、前記第1及び第2導入通路182、184を通じて吐出室40の流体が分離室62の内部へと導入される。第1及び第2導入通路182、184は、互いに略直交するように所定間隔離間して形成されると共に、分離室62の内周面に対してそれぞれ接線方向となるように形成される。そのため、第1及び第2導入通路182、184から分離室62へと導入された流体が、前記分離室62内においてその内周面に沿って旋回しながら流通する。
また、分離室62には、図12に示されるように、接合面172側となる開口部位から離間した底部62aに導出通路186が形成され、該導出通路186は、前記分離室62の軸線に対して所定角度傾斜し、前記接合面172に向かって延在している。詳細には、前記導出通路186は、その一端部が前記底部62aにおいて鉛直下方向となる内周面との境界部位に接続され、前記底部62aから所定角度下方に傾斜した状態で延在し、その他端部が接合面172の第1境界壁174に開口している(図10参照)。すなわち、導出通路186を通じて分離室62の内部と接合面172とが連通した状態にある。なお、この導出通路186は、第1境界壁174における環状壁180との接合部位近傍に接続されている。
導出通路186には、図11及び図12に示されるように、固定スクロール22の第1連通路82の一端部が対向し、該第1連通路82の他端部は貯油室80に対向している。
さらに、分離室62には油分離管52の筒部66が挿入され、前記筒部66と前記分離室62の内周面との間には所定間隔のクリアランス188が設けられている。すなわち、吐出室40から分離室62へと導入された流体が、前記クリアランス188を介して底部側へと流通した後に、前記筒部66の通路70を通じて油分離管52のフランジ部68側へと流通し、該油分離管52の溝部76を介して第2凹部54へと導出される。
貯油室80は、リアハウジング14における下部側に設けられ、該リアハウジング14に対して固定スクロール22を組み付けた際に、該固定スクロール22の第4凹部58と対向する位置に形成されている。
また、貯油室80の下部には、図13に示されるように、潤滑油中の塵埃等を除去可能なフィルタ86が装着されるフィルタ室88が設けられ、該フィルタ室88は、軸線方向に沿って所定深さで有底状に形成されている。なお、前記フィルタ室88は、貯油室80に対して独立して形成されている。
このフィルタ86は、円筒状に形成され、メッシュ状に形成された網目を有する濾過部材190と、該濾過部材190を保持してフィルタ室88へと装着する保持ケース192とを含む。そして、図10に示されるように、フィルタ室88と貯油室80との間に形成された一組の第3及び第4導入通路194a、194bを介して潤滑油が前記フィルタ室88へと連通し、前記潤滑油が濾過部材190の外周側から内周側へと通過することにより、該潤滑油に含有される塵埃(例えば、鉄粉)が除去される。この際、前記塵埃が、有底状に形成されたフィルタ室88の内部に保持されることとなる。
図13に示されるように、第3及び第4導入通路194a、194bの深さD3は、フィルタ室88の軸線方向に沿った深さD4より浅く形成される(D3<D4)と共に、前記第3及び第4導入通路194a、194bにおける貯油室80側の深さは、前記第3及び第4導入通路194a、194bにおけるフィルタ室88側の深さより浅く形成されている。これにより、フィルタ室88へと進入した塵埃等が第3及び第4導入通路194a、194bを通じて再び貯油室80へと戻ることが防止され、且つ、第3及び第4導入通路194a、194bの深さはフィルタ室88側がより深くなるように形成されているため、該第3及び第4導入通路194a、194b内において塵埃がフィルタ室88側へと導かれ、前記塵埃をフィルタ室88で好適に収集することが可能となる。
排出室64には、図10に示されるように、該排出室64の内壁面に外部と連通した弁孔64aが形成され、該弁孔64aには前記排出室64内の流体を外部に排出する開放弁89が装着されている。この開放弁89は、排出室64内における流体の圧力が予め設定された所定値以上となった際に、その内部に設けられた弁体(図示せず)が弁開状態となり、前記流体が該開放弁89を通じて外部へと排出される。
そして、排出室64内の圧力が低下して所望の圧力値となることにより、前記弁体が再び弁閉状態となり、前記排出室64と外部との連通が遮断されて前記排出室64内の圧力が所望の圧力値に保持される。すなわち、開放弁89は、排出室64における圧力値が過大をなることを防止する安全弁として機能している。
一方、リアハウジング14の接合面172には、図10に示されるように、フィルタ86が装着されるフィルタ室88の近傍から該接合面172における吐出室40の外周部位に沿って延在し、該吐出室40と排出室64との間の第2境界壁176の端部近傍まで延在する油供給溝90が形成されている。この油供給溝90は、接合面172から所定深さだけ窪んで形成される。また、油供給溝90は、図11に示されるように、前記リアハウジング14に対して固定スクロール22を組み付けた際に、その一端部が固定スクロール22の背面22aに形成された第2連通路84の一端部と対向すると共に、他端部が供給通路34と対向した位置となる。
すなわち、この第2連通路84は、フィルタ室88の中心と油供給溝90にそれぞれ対向するように接続されているため、前記フィルタ室88において塵埃が除去された潤滑油が、前記第2連通路84から油供給溝90へと流通して供給通路34から給油孔32へと供給される。
ガスケット38は、図11及び図14に示されるように、固定スクロール22の背面22a及びリアハウジング14の接合面172に対応した形状に形成され、略一定の厚さからなる薄板状に形成される。
このガスケット38には、リアハウジング14の接合面172に当接させた際に、吐出室40と略同一形状に開口した吐出開口部196と、貯油室80と略同一形状に開口した貯油開口部198と、排出室64と対向した位置に形成される排出開口部200と、分離室62と対向した位置に形成され、該分離室62の一部を閉塞する分離開口部202とを含む。
排出開口部200と隣接した部位には、排出室64の一部を閉塞する第1隔壁部204が形成されている。
分離開口部202は、油分離管52の筒部66が挿通されるように形成され、前記分離開口部202には、前記筒部66の外周側となる分離室62を閉塞する第2隔壁部(封止部)206が隣接して形成される。なお、分離開口部202の直径は、筒部66の外周径と略同等に形成されるため、前記筒部66が挿通された後に分離室62が第2隔壁部206によって閉塞される。
また、フィルタ室88と対向する位置には、フィルタ86の中心部と対向する部位が開口したフィルタ開口部208が形成され、前記フィルタ開口部208の外周部位には、フィルタ室88の一部を閉塞する第3隔壁部210が形成される。この第3隔壁部210は、フィルタ86における保持ケース192の端面に当接するように配置されている。
さらに、吐出開口部196と貯油開口部198との間には、リアハウジング14の導出通路186と対向する位置に、該導出通路186の通路径より縮径した絞り孔212が形成される。すなわち、導出通路186は、絞り孔212を通じて第1連通路82と連通している(図12参照)。この絞り孔212は、例えば、ガスケット38に対する打抜き加工等によって形成され、前記絞り孔212の直径は、該絞り孔212を介して流通させる所望の流量に応じて任意に設定される。
一方、ガスケット38の外周部位には、図14に示されるように、固定スクロール22の第1ボルト孔92、リアハウジング14の第3ボルト孔98に対向した第2ボルト孔96が形成され、該第2ボルト孔96より半径内方向には、ガスケット38の外周部位に沿って環状のビード214が形成される。このビード214が、ガスケット38の軸線方向に若干だけ膨出し、リアハウジング14における油供給溝90の内周側、第1及び第2境界壁174、176、環状壁180と対向する部位にそれぞれ形成されている。これにより、ガスケット38が固定スクロール22とリアハウジング14との間に挟持された際に、前記ビード214をガスケット38を固定スクロール22及びリアハウジング14に対して確実に当接させることができるため、そのシール性を高めることが可能となる。
本発明の第1の実施の形態に係るスクロール型圧縮機10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果について説明する。
電磁クラッチ160の動作作用下に、回転シャフト116に回転力が伝達されると、支持体124が第2軸受126を介して回転し、これによって支持体124に固着されたピン128が回転シャフト116の軸心に対して偏心した状態で旋回する。
そして、前記ピン128を介してブッシュ134が回転してオルダムリング144が摺動し且つその自転が規制され、さらにスラストプレート142の摺接面によって摺動自在に支持されているため、可動スクロール24が自転を拘束された状態で固定スクロール22に対して旋回する。
その結果、固定スクロール22と可動スクロール24との間で形成される圧縮室110が外周部位から徐々に中央部位へと変位し、シール部材112の封止作用下に吸入室104に導入された流体が徐々に圧縮される。そして、圧縮された流体がその圧力作用下に吐出弁44を導出孔42より離間させて該導出孔42から吐出室40へと導出される。
次いで、前記流体が、吐出室40から第1及び第2導入通路182、184を通じて分離室62に導入される。この際、流体は、分離室62の内周面に対して接線方向に導入されるため、油分離管52の筒部66と前記内周面との間のクリアランス188の内部を該内周面に沿って旋回しながら流通する。これにより、流体中に含有された潤滑油が、その流体の旋回流により生じる遠心力によって該流体から遠心分離されて前記内周面側へと分離される。
この潤滑油が分離された流体は、分離室62と筒部66との間のクリアランス188から油分離管52の通路70を通じてフランジ部68側へと流通し、一旦、固定スクロール22の第2凹部54に流通した後に、リアハウジング14の排出室64へと導入される。その結果、流体が前記排出室64と連通した吐出口18を介して図示しない冷媒循環系へと吐出される。
一方、流体から分離された潤滑油は、図12に示されるように、分離室62の内周面に沿って流動した後に、その底部62aに形成された導出通路186を通じて接合面172側へと流動し、前記導出通路186と対向したガスケット38の絞り孔212によってその流量が所定量に絞られる。そして、絞り孔212と対向した固定スクロール22の第1連通路82を通じてリアハウジング14の貯油室80に導入されて貯えられる。この際、貯油室80に導入される潤滑油の流量は、導出通路186を流通する流量に対して絞り孔212によって減少しているため、前記貯油室80に対して緩やかに導入させることができ、該貯油室80内の潤滑油の油面を乱すことなく常に安定した状態とすることができる。
次に、貯油室80に貯えられた潤滑油は、一組の第3及び第4導入通路194a、194bを通じて該貯油室80に隣接したフィルタ室88へと流通し、該フィルタ室88に設けられた濾過部材190によって該潤滑油中に含有される塵埃等が除去される。このフィルタ86によって除去された塵埃等は、フィルタ室88の内部に残存するため、前記塵埃が再び貯油室80内に進入することが防止される。
そして、フィルタ86によって濾過された潤滑油は、フィルタ開口部208、固定スクロール22の第2連通路84を通じてリアハウジング14の油供給溝90へと供給され、該油供給溝90に沿って流通することにより、該油供給溝90の他端部に接続された供給通路34へと流通する。
最後に、供給通路34から給油孔32を介して潤滑油がガイド通路30内に吐出され、該ガイド通路30に沿って可動スクロール24側へと流通する。この際、前記可動スクロール24の可動側基板部106と固定側渦巻壁28との摺動面に供給され、前記摺動面が潤滑される。
また、ガイド通路30の両側に設けられた堰止壁36及び該ガイド通路30と対向する可動スクロール24の可動側基板部106によって囲繞された貯油槽114に潤滑油が徐々に貯えられ、その油面高さが上昇する。そして、前記可動スクロール24の旋回作用下に可動側基板部106の端面が、前記油面高さより低い位置に変位した際(図4中、二点鎖線形状参照)に、潤滑油が前記可動側基板部106を乗り越えて前記可動スクロール24の外壁面に沿ってブッシュ134及び回転シャフト116側へと流通する。これにより、ブッシュ134及び回転シャフト116等が前記潤滑油によって潤滑される。
次に、固定スクロール22の背面22aに設けられる油分離管52の変形例について説明する。なお、上述した本実施の形態に係るスクロール型圧縮機10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図15に示されるように、第1変形例に係る油分離管(油分離部材)250では、リアハウジング14側に該油分離管250のフランジ部68を挿入可能な円形凹部252を設け、前記円形凹部252に前記フランジ部68を挿入した状態で該フランジ部68の端面にガスケット38を当接させ、前記リアハウジング14と固定スクロール22との間に挟持している。
このように構成することにより、油分離管250を固定スクロール22又はリアハウジング14に対して固定する固定手段を設ける必要がなく、前記油分離管250を前記固定スクロール22とリアハウジング14との間に挟持して簡便且つ確実に保持することができる。
第2変形例に係る油分離管(油分離部材)260では、図16に示されるように、該油分離管260をガスケット262に一体的に成形している。詳細には、ガスケット262における分離室62と対向する部位を、該分離室62側に向かって円筒状に突出させている。
このように構成することにより、ガスケット262と油分離管260とを単一の部品から構成することができるため、スクロール型圧縮機10における部品点数の削減を図ることができると共に、前記ガスケット262を固定スクロール22とリアハウジング14との間に挟持するという簡単な作業のみで油分離管260を分離室62に対向する位置に確実に配設することが可能となる。
次に、第3変形例に係る油分離管(油分離部材)270では、図17に示されるように、該油分離管270の筒部272をガスケット38の分離開口部202に対して軽圧入して固定している。詳細には、筒部272は、その根元部に外周径が分離開口部202の直径より若干だけ大きく形成された拡径部274を有し、前記筒部272を分離室62側に向かって所定の押圧力で押圧して前記拡径部274を前記分離開口部202に圧入させる。
このように構成することにより、固定スクロール22、ガスケット38及びリアハウジング14を組み付ける際に、油分離管270の拡径部274がガスケット38に対して軽圧入されて仮留めされているため、前記油分離管270を固定スクロール22又はリアハウジング14に対して何らかの保持手段によって予め保持しておく必要がなく、前記固定スクロール22とリアハウジング14とを組み付ける際に、油分離管270をより一層簡便且つ確実に装着することができる。
第4変形例に係る油分離管(油分離部材)280では、図18に示されるように、ガスケット38の分離開口部202に対して固定スクロール22側から筒部66を挿入し、フランジ部68を前記ガスケット38の側面に係合させると共に、前記筒部66の外周径と略同等の内周径を有する嵌合筒体(第2嵌合部)282を前記筒部66に対してリアハウジング14側から挿入し、前記嵌合筒体282と筒部66とを嵌合させている。
このように構成することにより、油分離管280のフランジ部68と、筒部66に嵌合された嵌合筒体282の鍔部284によってガスケット38を挟持し、前記油分離管280を前記ガスケット38に対して確実に保持することができる。すなわち、前記フランジ部68のガスケット38に対する係合作用下に前記油分離管280のリアハウジング14側への変位が規制されると共に、前記嵌合筒体282の鍔部284による前記ガスケット38に対する係合作用下に前記筒部66が固定スクロール22側への変位が規制されている。
なお、嵌合筒体282を筒部66に嵌合する手段としては、該嵌合筒体282を筒部66に挿入した後に半径内方向に一体的に加締めてもよいし、該嵌合筒体282の内周径を筒部66の外周径より小さく設定し、前記筒部66に対して前記嵌合筒体282を圧入させてもよい。また、前記嵌合筒体282を半径内方向に向かった弾発力を有する弾性体から形成し、前記嵌合筒体282と筒部66とに係合部(例えば、凹凸部、爪部)を設け、前記弾発力によって前記嵌合筒体282を筒部66に対して係合させるようにしてもよい。なお、これらの油分離管280及び嵌合筒体282の嵌合による接合方法は、上述した加締め、圧入、弾性体からなる嵌合筒体282と係合部とのスナップ固定等を、単独で行うようにしてもよいし、複数を組み合わせて行うようにしてもよい。
さらに、従来、単一の部材から構成されていた油分離管を、嵌合筒体282と油分離管280という2部品より構成することにより、前記油分離管280における強度を向上させることが可能となる。詳細には、嵌合筒体282が嵌合される筒部66の根元部近傍の強度を向上させることができる。換言すれば、従来の単一の油分離管と同等の強度に設定する場合には、前記油分離管280、嵌合筒体282のそれぞれ単体の強度を低く設定することが可能となる。そのため、例えば、油分離管280及び嵌合筒体282を薄板状のプレス材から簡易に形成することができると共に、前記油分離管280に要するコストを低減することができる。
さらにまた、油分離管280のフランジ部68と嵌合筒体282の鍔部284によってガスケット38を挟持することにより、筒部66が挿通されるガスケット38の分離開口部202を好適に閉塞することができる。
またさらに、筒部66とフランジ部68との接合部位に、該筒部66より拡径した段付部286を設け、前記段付部286の直径をガスケット38の分離開口部202の内周径と略同等に設定することにより、前記筒部66に対して嵌合筒体282を挿通する際に、該嵌合筒体282の変位が段付部286によって規制されるため、前記筒部66に対する嵌合筒体282の位置決めを確実行うことができ、且つ、フランジ部68と嵌合筒体282との間のガスケット38を挟持するための間隙を常に略一定に管理することができる。
一方、第4変形例に係る油分離管280とは反対に、図19に示される油分離管(油分離部材)290のように、ガスケット38の分離開口部202に対して鍔部294を有する嵌合筒体(第1嵌合部)292を挿入し、固定スクロール22側から油分離管290の筒部66を嵌合筒体292の外周側に挿通させ、前記筒部66を嵌合筒体292に対して嵌合させるようにしてもよい。これにより、油分離管290は、筒部66に嵌合された嵌合筒体292の鍔部294とフランジ部296との間に挟持されたガスケット38に対して確実に保持される。
最後に、第5変形例に係る油分離管(油分離部材)300では、図20に示されるように、ガスケット38の分離開口部202に対して固定スクロール22側から筒部66を挿入し、フランジ部68を前記ガスケット38の端面に係合させると共に、前記筒部66に対してリアハウジング14側からリング体302を挿入して該筒部66の根元部に嵌合させている。
このように構成することにより、油分離管300は、そのフランジ部68とリング体302とによってガスケット38が挟持されているため該ガスケット38に対して確実に保持される。なお、このリング体302は、筒部66に対して半径内方向に加締めるようにしてもよいし、該筒部66に対して圧入するようにしてもよいし、あるいは、前記リング体302を弾性体(例えば、スナップリング)から形成してその弾発力によって筒部66に保持されるようにしてもよい。
これにより、油分離管300の筒部66に対してリング体302を装着し、該リング体302とフランジ部68との間にガスケット38を挟持するという簡素な構成で前記油分離管300を確実に保持することができる。
また、フランジ部68とリング体302によってガスケット38を挟持することにより、筒部66が挿通されるガスケット38の分離開口部202を好適に閉塞することができる。
なお、上述した油分離管250、270、280、290、300の接合手段は、ガスケット38に一体的に接合され、且つ、該ガスケット38を固定スクロール22とリアハウジング14との間に組み付ける際に脱落が防止されるものであれば特にその方法は限定されるものではない。また、その接合強度も、前記ガスケット38に対して強固に接合するようにしてもよいし、仮留め程度の強度で接合してもよい。
次に、第2の実施の形態に係る圧縮機として機能する往復動式圧縮機350を図21に示す。
この往復動式圧縮機350は、ケーシングとしてリアハウジング(第2ハウジング)352、リアシリンダブロック354(以下、単にリアブロック354という)、フロントシリンダブロック356(以下、単にフロントブロック356という)及びフロントハウジング(第2ハウジング)358が、図21における左方からこの順序で連結されて構成される。このリアハウジング352とリアブロック354との間、及びフロントブロック356とフロントハウジング358との間には、それぞれバルブプレート(第1ハウジング)360a、360bが配設されている。
また、リアハウジング352、リアブロック354、フロントブロック356及びフロントハウジング358とバルブプレート360a、360bとの間には、シート状のガスケット362a〜362dがそれぞれ挟持されている。
そして、リアブロック354及びフロントブロック356の内部には、複数のシリンダ364が互いに所定角度離間して形成され、前記シリンダ364の内部にはそれぞれピストン366が軸線方向に沿って変位自在に配設されている。
フロントハウジング358の一端部には、略中央部に中空円筒部368が突出形成され、該中空円筒部368の外周部には電磁クラッチ370がベアリング372を介して回転自在に嵌合されている。
また、リアブロック354には、導入ポート374及び導出ポート376が形成されると共に、前記リアブロック354及びフロントブロック356の内部には、それぞれシリンダ364内で圧縮された流体が導出される吐出室378と、前記吐出室378から導入された前記流体中に含有される潤滑油を分離する分離室380と、該分離室380で分離された潤滑油が貯えられる貯油室382とが形成される。この吐出室378、分離室380及び貯油室382は、リアブロック354及びフロントブロック356の境界壁(分割壁)384a〜384cを介してそれぞれ独立して形成されると共に、その軸線方向に沿って所定深さで窪んで形成される。
吐出室378は、バルブプレート360a、360bに形成された吐出口386を介してシリンダ364と連通するように設けられ、図示しない通路を通じて分離室380とも連通している。
また、分離室380は、リアブロック354及びフロントブロック356の内部に形成された流路388a、388bを介して導出ポート376と連通し、前記リアブロック354及びフロントブロック356の軸線に対して略平行に形成された前記流路388a、388bと略一直線上に配置されている。この分離室380は、バルブプレート360a、360bから離間するように断面略円形状で窪んで形成され、前記分離室380の内部には油分離管(油分離部材)390の一部が挿入されている。さらに、前記分離室380に対向するガスケット362a〜362dには、該分離室380の開口部と略同一形状に開口した分離開口部392が形成されると共に、前記分離室380と対向するバルブプレート360a、360bには、連通孔394が形成されている。すなわち、分離室380は、分離開口部392及び連通孔394を通じて流路388a、388bと連通した状態となる。
この油分離管390は、図21及び図22に示されるように、管状の筒部(第1嵌合部)396と、該筒部396の端部に拡径したフランジ部398とを有し、ガスケット362a、362dの分離開口部392に対して分離室380側に向かって前記筒部396が挿入され、フランジ部398がバルブプレート360a、360bに形成された円形凹部400に係合されている。そして、前記フランジ部398は、ガスケット362a、362dを介してリアハウジング352及びフロントハウジング358とバルブプレート360a、360bとの間にそれぞれ挟持される。さらに、前記筒部396の外周径と略同等の内周径を有する嵌合筒体(第2嵌合部)402を前記筒部396に対して分離室380側から挿入し、前記嵌合筒体402と筒部396とを嵌合させている。
また、分離室380は、図示しない通路を通じて流体が吐出される吐出室378と連通しているため、前記吐出室378の流体が前記通路を通じて前記分離室380へと導入される。
すなわち、分離室380は、流路388a、388bを介して導出ポート376に連通しており、導入ポート374から往復動式圧縮機350内に導入された流体(冷媒ガス)は、シリンダ364内にてピストン366で圧縮された後、吐出口386、分離室380を介して導出ポート376から導出される。
一方、分離室380では、該分離室380と油分離管390の筒部396との間で流体が旋回しながら流通し、前記流体中に含有された潤滑油が、その流体の旋回流により生じる遠心力によって該流体から遠心分離されて内周面側へと分離される。そして、この潤滑油が、分離室380と貯油室382とを連通した油通路404を介して該貯油室382へと流通し、該貯油室382の内部に所定量だけ貯えられることとなる。
また、リアブロック354、フロントブロック356及びフロントハウジング358の内部には、軸線方向に沿って貫通した貫通孔406を介して回転軸408が挿通されている。なお、前記貫通孔406には、回転軸408を回転自在に支持するラジアルベアリング410がそれぞれ配設されている。なお、フロントハウジング358における貫通孔406と回転軸408との間は、シール部材412によってその気密が保持されている。
フロントハウジング358の貫通孔406は、中空円筒部368の内部と連通し、回転軸408の一端部が、前記中空円筒部368より突出するように配設されている。この突出した回転軸408の一端部にはボルト穴414が形成されており、該ボルト穴414に螺着されたボルト416により回転軸408と電磁クラッチ370を構成するハブ418とが互いに連結されている。
また、回転軸408の軸線方向に沿った略中央部には、第1〜第4ディスク420a〜420dが嵌合されており、前記第1及び第2ディスク420a、420bの間には第1スラストベアリング422が配設されると共に、第2及び第3ディスク420b、420cの間には斜板426が配設され、さらに、第3及び第4ディスク420c、420dの間には第2スラストベアリング424が配設されている。そして、第1〜第4ディスク420a〜420d、第1及び第2スラストベアリング422、424、斜板426が、それぞれ回転軸408に対して嵌合されている。
斜板426の円盤部は、リアブロック354、フロントブロック356及びバルブプレート360a、360bにより画成されるシリンダ364内に延在している。そして、この円盤部には、半球状シュー428(後述する)を介してピストン366が嵌合されており、斜板426が回転動作することに伴って前記ピストン366がシリンダ364内を軸線方向に沿って往復動作する。
ピストン366には、導入ポート374から導入された流体を吐出口386側へと送気する吸気口430が貫通形成され、前記ピストン366の端面には、吸気口430の開口部に開閉自在な吸気弁432がそれぞれ装着されている。そして、ピストン366の略中央部には、バルブプレート360a、360b側に向かって突出するようにリベット434が装着され、該リベット434の頭部にはストッパ部436が突出形成されている。これにより、吸気弁432が開弁した際に、該吸気弁432がストッパ部436に当接する。
また、ピストン366の内部には、半球状溝438を介して一組の半球状シュー428が収容され、前記一組の半球状シュー428によって斜板426が挟持され、前記ピストン366が斜板426に対して嵌合される。
リアブロック354、リアハウジング352、フロントブロック364及びフロントブロック356には、ピン440を挿通させるためのピン孔442が設けられ、前記ピン孔442にピン440を挿通させることにより、前記リアブロック354、リアハウジング352、リアハウジング358及びフロントブロック356において互いの位置決めがなされる。
吐出口386の開口部には、図示しない吐出弁が開閉自在に設けられ、該吐出弁の外側にはバルブストッパ444が配置されている。
フロントハウジング358における中空円筒部368に嵌合された電磁クラッチ370は、回転軸408を回転動作または回転停止させる機能を有する。
この電磁クラッチ370は、ハブ418と、該ハブ418にボルト416を介して連結されたクラッチ板446と、ロータ448と、該ロータ448内に収容されたコイル450とを含む。また、ハブ418にはボルト416を介して回転軸408が連結されている。
以上のように、第2の実施の形態に係る往復動式圧縮機350では、油分離管390のフランジ部398と、筒部396に嵌合された嵌合筒体402の鍔部452によってガスケット362a、362dを挟持し、前記油分離管390を前記ガスケット362a、362dに対して確実に保持することができる。これにより、前記フランジ部398のガスケット362a、362dに対する係合作用下に前記油分離管390のリアハウジング352及びフロントハウジング358側への変位が規制されると共に、前記嵌合筒体402の鍔部452による前記ガスケット362a、362dに対する係合作用下に前記筒部396のバルブプレート360a、360b側への変位が規制されている。
なお、嵌合筒体402を筒部396に嵌合する手段としては、該嵌合筒体402を筒部396に挿入した後に半径内方向に一体的に加締めてもよいし、該嵌合筒体402の内周径を筒部396の外周径より小さく設定し、前記筒部396に対して前記嵌合筒体402を圧入させてもよい。
さらに、従来、単一の部材から構成されていた油分離管を、嵌合筒体402と油分離管390という2部品より構成することにより、前記油分離管390における強度を向上させることが可能となる。詳細には、嵌合筒体402が嵌合される筒部396の根元部近傍の強度を向上させることができる。換言すれば、従来の単一の油分離管390と同等の強度に設定する場合には、前記油分離管390、嵌合筒体402のそれぞれ単体の強度を低く設定することが可能となる。そのため、例えば、油分離管390及び嵌合筒体402を薄板状のプレス材から簡易に形成することができると共に、前記油分離管390に要するコストを低減することができる。
なお、上述した第2の実施の形態に係る往復動式圧縮機350には、油分離管390が適用される場合に限定されるものではなく、第1の実施の形態に係るスクロール型圧縮機10における第1〜第5変形例の油分離管250、260、270、280、290、300、のいずれかを適用するようにしてもよい。