JP2007006632A - 3相回転電機 - Google Patents

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岩樹 石川
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Abstract

【課題】
コイル自動挿入機によりステータに多相コイルを挿入する場合でも、絶縁性の向上した3相回転電機を提供することにある。
【解決手段】
3相コイルのコイルエンド部は、それぞれ相間絶縁紙30により絶縁されている。上側相間絶縁紙30A及び下側相間絶縁紙30Bは、それぞれ、互いに平行であるとともに、ステータのスロットに挿入される第1及び第2のスロット挿入部32A,32A’,32B,32B’と、第1及び第2のスロット挿入部の一方の端部に一体的に形成された相間絶縁部34とからなる。第1及び第2の前記スロットの一方の端部側から、上側相間絶縁紙の第1及び第2のスロット挿入部32A,32A’がそれぞれ挿入された後、第1及び第2のスロットの他方の端部側から、下側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部32B,32B’がそれぞれ挿入される。
【選択図】 図7

Description

本発明は、3相回転電機に係り、特に、相間コイルの絶縁に好適な3相回転電機に関する。
従来の回転電機における相間コイルの絶縁方法としては、例えば、特開2003−333785号公報に記載されているように、平らな絶縁紙を切り抜いて、スロット挿入部と、コイルエンドの相間絶縁部からなるロ字形状としたものを用いるものが知られている。多相回転電機のステータの製造時には、ステータのスロットに第1のステータコイルを挿入し、コイルエンド部をプレスにより折り曲げた後、別のスロットに平らな相間絶縁紙のスロット挿入部を挿入し、さらに、同じスロットに、第2の相のコイルを挿入し、コイルエンド部を折り曲げ加工する。ここで、コイルとしては、エナメル等の絶縁皮膜による被覆の施された導線を用いているが、回転電機の定格電圧が例えば600Vのように高圧の場合には、コイルエンド部においては、第1の相のコイルと第2の相のコイルの間の絶縁耐圧が低いため、第1の相のコイルと第2の相のコイルの間を、平らな相間絶縁紙の相間絶縁部によって絶縁することにより、絶縁耐圧を向上させている。同様に、第2相コイルと第3相コイルの間にも、相間絶縁紙が介在され、絶縁耐圧を向上させている。
特開2003−333785号公報
ステータに対するコイルの挿入を手作業で行う場合には、絶縁紙の位置関係などを目視で確認しながら、コイル挿入作業を行えるため、第1相のコイルと第2相のコイルの間に、相間絶縁部を正確に位置づけることは可能であった。
しかしながら、コイルの挿入を自動挿入機を用いて行う場合には、第1相コイルを自動挿入した後、所定の位置に相間絶縁紙を位置付けた後、第2相コイルを自動挿入する際に、相間絶縁紙の位置がずれることがあり、コイルエンド部において、第1相コイルと第2相コイルの間にあるべき相間絶縁部の位置がずれて、絶縁性が低下するという問題があることが判明した。
本発明の目的は、コイル自動挿入機によりステータに多相コイルを挿入する場合でも、絶縁性の向上した3相回転電機を提供することにある。
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ロータと、ステータコアに分布巻で3相コイルが順次それぞれ巻回されるとともに、前記3相コイルのコイルエンド部をそれぞれ相間絶縁紙により絶縁されたステータとを有する3相回転電機であって、前記ステータのスロットに挿入される前記相間絶縁紙は、上側相間絶縁紙と、下側相間絶縁紙とからなり、前記上側相間絶縁紙及び下側相間絶縁紙は、それぞれ、互いに平行であるとともに、前記ステータのスロットに挿入される第1及び第2のスロット挿入部と、前記第1及び第2のスロット挿入部の一方の端部に一体的に形成された相間絶縁部とからなり、第1及び第2の前記スロットの一方の端部側から、前記上側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部がそれぞれ挿入された後、前記第1及び第2のスロットの他方の端部側から、前記下側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部がそれぞれ挿入され、前記第1のスロット内において、前記上側相間絶縁紙の前記第1のスロット挿入部と前記下側相間絶縁紙の前記第1のスロット挿入部が重なり、前記第2のスロット内において、前記上側相間絶縁紙の前記第2のスロット挿入部と前記下側相間絶縁紙の前記第2のスロット挿入部が重なるようにしたものである。
かかる構成により、コイル自動挿入機によりステータに多相コイルを挿入する場合でも、絶縁性を向上し得るものとなる。
(2)上記(1)において、好ましくは、前記第1及び第2の前記スロットに、前記上側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部、及び前記下側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部がそれぞれ挿入された状態において、前記上側相間絶縁紙の前記第1のスロット挿入部と、前記下側相間絶縁紙の前記第1のスロット挿入部と、前記上側相間絶縁紙の前記第2のスロット挿入部と、前記下側相間絶縁紙の前記第2のスロット挿入部とは、前記第1及び第2のスロットの両端部から突出しているものである。
(3)上記(1)において、好ましくは、前記下側相間絶縁紙が挿入された側から、前記3相コイルの一つが前記スロット内に自動挿入されるものである。
本発明によれば、コイル自動挿入機によりステータに多相コイルを挿入する場合でも、3相回転電機の絶縁性を向上し得るものとなる。
以下、図1〜図13を用いて、本発明の一実施形態による3相回転電機の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による3相回転電機の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による3相回転電機の構成を示す側面図である。なお、図1においては、エンドブラケットを外した状態の側面形状を示している。
本実施形態による3相回転電機は、ロータ10と、ステータ20とから構成されている。ロータ10は、ステータ20に対して回転可能に支持されている。ロータ10は、シャフト12に固定された回転鉄心14を備えている。回転鉄心14は、薄い鋼板を積層したものである。回転鉄心14には、8個の断面が長方形状の穴が予め形成されており、この穴の中に、8個の永久磁石16が埋め込まれている。回転鉄心14の周方向に等間隔で配置された永久磁石16は、隣り合う永久磁石同士の極性が反対になるように着磁されている。
ステータ20の内周部と、ロータ10の外周部との間には所定の隙間が形成されている。ステータ20は、コア22と、3相のコイル24U,24V,24Wとから構成されている。コア22は、リング状のヨークコアと、ヨークコアの内周側に半径方向に突出して形成されたステータコアとからなる。隣接するステータコアの間には、コイルを挿入するためのスロットが形成されている。ここでは、48個のスロットが形成されている。ヨークコアとステータコアとは一体的に成形されている。コア22は、薄い鋼板を積層したものである。3相のコイル24U,24V,24Wは、複数の突極(ステータコア)に跨って配置される分布巻で巻回されている。最初に、8個のU相コイル24Uがコイル自動挿入機を用いてスロットに挿入され、次に、8個のV相コイル24Vが別のスロットに自動挿入される。なお、V相コイル24Vを挿入する前に、V相コイル24Vを挿入するスロットには、予め、8枚の第1の相間絶縁紙30が挿入され、位置決めされている。8個のV相コイル24Vの後に、8個のW相コイル24Wがさらに別のスロットに挿入される。なお、W相コイル24Wを挿入する前に、W相コイル24Wを挿入するスロットには、予め、8枚の第2の相間絶縁紙30Aが挿入され、位置決めされている。3相のコイル24U,24V,24Wのそれぞれの端部からは、リード線が取り出され、その先端には端子が固着される。従って、端子に通電することにより、3相のコイル24U,24V,24Wのそれぞれに通電することができる。
以上説明したように、図1に示した回転電機は、8極48スロットの分布巻の回転電機であり、モータとして用いる場合には、埋込磁石型同期モータである。このモータは、例えば、前後輪の一方をエンジンで駆動し、他方をモータで駆動する4輪駆動のハイブリッド車両のモータとして用いられる。定格電圧300Vで、出力500KWのモータの場合、ステータ20の外径R1は例えば250mmであり、内径R2は例えば150mmであり、軸方向の長さは例えば45mmの体格を有する。3相のコイル24U,24V,24Wのそれぞれは、線径0.8mmの銅線を3本並列に配置し、それを48T巻回したものである。
次に、図2〜図13を用いて、本実施形態による3相回転電機のステータの製造工程及び、相間の絶縁に用いられる相間絶縁紙の形状について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータの製造工程を示す正面図である。図3は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータの製造工程を示す正面図である。図4は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに用いる第1の上側相間絶縁紙の正面図である。図5は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに用いる第1の下側相間絶縁紙の正面図である。図6は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに対して第1の上側相間絶縁紙を挿入した状態を示す部分斜視図である。図7は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに対して第1の下側相間絶縁紙を挿入した状態を示す部分斜視図である。図8は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータの製造工程を示す正面図である。図9は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータの製造工程を示す正面図である。図10は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに用いる第2の上側相間絶縁紙の正面図である。図11は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに用いる第2の下側相間絶縁紙の正面図である。図12は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに対して第2の上側相間絶縁紙を挿入した状態を示す部分斜視図である。図13は、本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに対して第2の下側相間絶縁紙を挿入した状態を示す部分斜視図である。なお、図1と同一符号及び、各図の同一符号は、同一部分を示している。
最初に、予め成形された8個のU相コイル24Uを、コイル自動挿入装置(図示せず)に同時に取り付け、ステータコア22のスロツトSにU相コイル24Uの一端の方向から1列に並んだコイルを順番にスロツト開口部SOの側から挿入し、スロットの奥側方向に同時に挿入することによって、図2に示したようなU相コイル24Uの組立状態となる。
次に、図3に示すように、V相コイル24Vを他のスロットに挿入する前に、8枚の第1の相間絶縁紙30を、V相コイル24Vを挿入するスロットの位置に挿入する。
ここで、図4〜図7を用いて、第1の相間絶縁紙30の形状及びスロットへの装着状態について説明する。
第1の相間絶縁紙30は、図4に示す第1の上側相間絶縁紙30Aと、図5に示す第1の下側相間絶縁紙30Bとの上下に2分割された絶縁紙からなる。図4は、第1の上側相間絶縁紙30Aの平面形状を示し、図5は、第1の下側相間絶縁紙30Bの平面形状を示している。第1の相間絶縁紙30A,30Bは予め所定の位置において折り曲げられた立体的な形状をしており、図4及び図5において、破線は谷折り部を示し、一点鎖線は山折り部を示している。
図4に示すように、第1の上側相間絶縁紙30Aは、互いに平行なスロット挿入部32A,32A’と、スロット挿入部32A,32A’の上端に一体的に形成された相間絶縁部34Aとからなる。また、スロット挿入部32A,32A’と相間絶縁部34Aとが接続する位置には、円弧状の切り欠き部36A,36A’それぞれ設けられている。第1の上側相間絶縁紙30Aは、1枚の相間絶縁紙を図4に示すように打ち抜いた形状である。
さらに、図6と対比して明らかなように、スロット挿入部32A,32A’の中央の破線で示す位置において、破線の両側を紙面の手前方向に折り曲げて、谷折りに折り曲げられている。また、相間絶縁部34Aの内周方向には、突起部34XAが形成されている。突起部34XAは、図6と対比して明らかなように、一点鎖線で示す位置において、山折りとされ、その両側で谷折りとすることにより、図6に示すように、突出している。
また、相間絶縁部34Aの外周方向には、折り曲げ耳部34YAが形成されている。折り曲げ耳部34YAは、図6と対比して明らかなように、破線で示す位置において、谷折りとすることにより、図6に示すように、折り曲げられている。
また、図5に示すように、第1の下側相間絶縁紙30Bは、互いに平行なスロット挿入部32B,32B’と、スロット挿入部32B,32B’の上端に一体的に形成された相間絶縁部34Bとからなる。また、スロット挿入部32B,32B’と相間絶縁部34Bとが接続する位置には、円弧状の切り欠き部36B,36B’それぞれ設けられている。第1の下側相間絶縁紙30Bは、1枚の相間絶縁紙を図5に示すように打ち抜いた形状である。
さらに、図7と対比して明らかなように、スロット挿入部32B,32B’の中央の破線で示す位置において、破線の両側を紙面の手前方向に折り曲げて、谷折りに折り曲げられている。また、相間絶縁部34Bの内周方向には、突起部34XBが形成されている。突起部34XBは、図7と対比して明らかなように、一点鎖線で示す位置において、山折りとされ、その両側で谷折りとすることにより、図7に示すように、突出している。
また、相間絶縁部34Bの外周方向には、折り曲げ耳部34YBが形成されている。折り曲げ耳部34YBは、図7と対比して明らかなように、破線で示す位置において、谷折りとすることにより、図7に示すように、折り曲げられている。
すなわち、図4に示した第1の上側相間絶縁紙30Aと、図5に示した第1の下側相間絶縁紙30Bとは、基本的に同一形状であるが、上下に対称な形状となっている。
次に、図6を用いて、第1の上側相間絶縁紙30Aのスロットへの装着状態について説明する。
図6に示すように、スロットS1,S6には、第1のU相コイル24U1が予め挿入され、また、スロットS7と別のスロットには、第2のU相コイル24U2が予め挿入されている。ここで、スロットS3及びスロットS8が次にV相コイルが挿入されるスロットである。そして、スロットS3,S8には、第1の上側相間絶縁紙30Aのスロット挿入部32A,32A’が、それぞれ、スロットS3,S8の上側,即ち、矢印A方向から挿入される。
相間絶縁部34Aの突起部34XAは、第1のU相コイル24U1と第2のU相コイル24U2とが、それぞれスロットに挿入された位置からコイルエンドとなる部分を覆う位置に設けられている。また、その他の相間絶縁部34Aは、コイル24U1,24U2のコイルエンド部そのものを覆う位置に設けられている。なお、図示の状態では、相間絶縁部34Aがコイル24U1,24U2から浮いた状態で示されているが、実際に相間絶縁紙30Aをスロットに装着した状態では、相間絶縁部34Aとコイル24U1,24U2とは接触若しくは近接した状態となっている。
ここで、折り曲げ耳部34YAについて、図3に戻り説明する。図3に示すように、8枚の相間絶縁紙がスロットに装着された状態では、折り曲げ耳部34YAは、ステータ20の内周方向に折り曲げられており、しかも、8個の相間絶縁紙30Aの折り曲げ耳部34YAが相互に接触するような寸法形状となっている。これは、その後、V相コイルを挿入した際、その挿入圧によって相間絶縁紙30Aが変形したとしても、折り曲げ耳部34YAにおいて互いに接触しているため、相間絶縁紙30がステータ20の内周方向に移動するのを防止でき、位置ずれを防止できるようにするためである。なお、8枚の相間絶縁紙30Aのスロットへの装着状態では、隣接する折り曲げ耳部34YAが互いに接触していてもいいし、または、V相コイルの挿入により、互いに接触するような状態で近接していてよいものである。
ここで、円弧状の切り欠き部36A,36A’について、再び、図4を用いて説明する。円弧状の切り欠き部36A,36A’は、スロット挿入部32A,32A’と相間絶縁部34Aとが接続する位置にそれぞれ設けられている。したがって、切り欠き部36Aの位置における幅W4は、スロット挿入部32,32’の幅W3よりも狭く(W4<W3)なっている。スロット挿入部32A,32A’はV字形状に折り曲げている。一方、図3にて説明したように、折り曲げ耳部34YAは、スロット挿入部32A,32A’とは直交する方向に直線上に伸びている必要がある。スロット挿入部32A,32A’をV字形状に折り曲げた際に、その折り曲げ力によって折り曲げ耳部34YAが曲がることを防止するため、切り欠き部36A,36A’が形成されている。
次に、図7を用いて、第1の下側相間絶縁紙30Bのスロットへの装着状態について説明する。
図7に示すように、スロットS1,S6には、第1のU相コイル24U1が予め挿入され、また、スロットS7と別のスロットには、第2のU相コイル24U2が予め挿入されている。ここで、スロットS3及びスロットS8が次にV相コイルが挿入されるスロットである。そして、スロットS3,S8には、第1の上側相間絶縁紙30Aの上に、スロット挿入部が重なるようにして、第1の下側相間絶縁紙30Bのスロット挿入部32B,32B’が、それぞれ、スロットS3,S8の下側,即ち、矢印B方向から挿入される。
このとき、スロット挿入部32A,32A’,32B,32B’の長さは、スロットSの長さに比べて十分に長く、しかも、スロットS内に、第1の上側相間絶縁紙30A及び第1の下側相間絶縁紙30Bを挿入した状態では、互いにオーバラップするとともに、図7に示すように、スロット挿入部32B,32B’の先端は、相間絶縁部34Aの端部から突出している。同様にして、スロット挿入部32A,32A’の先端は、相間絶縁部34Bの端部から突出している。この突出量は、指でつまんで、それぞれ、スロット挿入部の挿入方向に引っ張ることができる程度の量であり、例えば、15〜20mm程度である。
ここで、第1の相間絶縁紙30A,30Bをスロット内に装着した後、第2相コイルが挿入されるとき、スロット挿入部32,32’に力が加わるため、切り欠き部36A,36B,36C,36Dにその力が集中すると、切り欠き部36A,36B,36C,36Dにおいて、相間絶縁紙30が破断する恐れがある。そのため、切り欠き部36A,36B,36C,36Dは円弧状として、応力が一部に集中して破断するのを防止している。
スロットSは、断面形状がコの字形となっており、入口(ステータの内周側)の幅W1は、奥(ステータの外周側)の幅W2よりも狭く(W1<W2)なっている。例えば、8極48スロットの分布巻の回転電機で、ステータ20の外径R1が例えば250mmの場合、幅W1は、3相のコイル24U,24V,24Wのそれぞれは、線径0.8mmより僅かに広い1mmであり、幅W2は6mmである。
それに対して、スロット挿入部32Aの幅は、折り曲げる状態の前において、スロットSの最大幅(最奥部の幅W2)よりも広くしている。具体的には、幅W2が6mmの場合、スロット挿入部32Aの幅は14mmとしている。スロット挿入部32Aは、V字形に折り曲げているため、スロット挿入部32AをステータのスロットSの内部に挿入した状態では、スロット挿入部32Aは、スロットSの最奥部に位置付けられる。
従来は、スロット挿入部の幅は、スロット幅の最大幅よりも狭い寸法であったため、スロット挿入部がスロット内に挿入された状態で、スロットの中の適当な位置に位置している。したがって、その後、第2相のコイルを挿入すると、コイルに押されてスロットの奥部に移動するが、そのとき、コイルが相間絶縁紙のスロット挿入部を避けてスロットの奥部に移動することがあり、このとき、相間絶縁紙の位置がずれることが発生する。
一方、本実施形態では、相間絶縁紙のスロット挿入部32Aは、スロットSの最奥部に位置付けられているので、第2相のコイルを挿入しても、常にスロットSの最奥部にあってその位置がずれることがないものである。したがって、相間絶縁紙のコイルエンド部の位置もずれないため、コイルエンド部において、第1相コイルと第2相コイルの間に確実に相間絶縁部を位置付けて、絶縁性が向上できる。
スロット挿入部32Aは、前述のように、V字形をしている。そして、図6に示すように、V字の開口方向をスロットSの開口方向に向けている。このような位置関係とすることにより、第2相のコイルを挿入した際には、スロット挿入部32AのV字形の開口部によって第2相のコイルを受けるため、スロット挿入部32Aの位置ずれが発生しにくくなっている。なお、スロット挿入部32Aはスロットの最大幅よりも広いため、逆V字(スロット挿入部32AのV字の開口方向をスロットSの最奥部方向に向けた場合)でも、同様に、スロット挿入部32Aはスロットの最奥部に位置決めされるため、コイルエンド部の位置ずれを防止できるという効果は達成できるものである。但し、スロット挿入部32Aが多少最奥部から浮いた状態になっている場合には、V字の開口方向をスロットSの開口方向に向けた方が、第2相コイルの挿入で最奥部に位置付けられる点で有利である。
図8は、第2相コイル(V相コイル)24Vをスロット内に挿入し終わった状態を示している。図6にて説明したように、相間絶縁紙30がスロットS3,S8に挿入される場合、第2相コイル24Vも同じく、スロットS3,S8に挿入される。
次に、図9に示すように、W相コイル24Wを他のスロットに挿入する前に、8枚の第2の相間絶縁紙30Vを、W相コイル24Wを挿入するスロットの位置に挿入する。
ここで、図10〜図13を用いて、第2の相間絶縁紙30Wの形状及びスロットへの装着状態について説明する。
第2の相間絶縁紙30Wは、図10に示す第2の上側相間絶縁紙30WAと、図11に示す第2の下側相間絶縁紙30WBとの上下に2分割された絶縁紙からなる。図10は、第2の上側相間絶縁紙30WAの平面形状を示し、図11は、第2の下側相間絶縁紙30WAの平面形状を示している。第2の相間絶縁紙30WA,30WBは予め所定の位置において折り曲げられた立体的な形状をしており、図10及び図11において、破線は谷折り部を示し、一点鎖線は山折り部を示している。
図10に示すように、第2の上側相間絶縁紙30WAは、互いに平行なスロット挿入部32A,32A’と、スロット挿入部32A,32A’の上端に一体的に形成された相間絶縁部34A’とからなる。また、スロット挿入部32A,32A’と相間絶縁部34A’とが接続する位置には、円弧状の切り欠き部36A,36A’それぞれ設けられている。第2の上側相間絶縁紙30WAは、1枚の相間絶縁紙を図10に示すように打ち抜いた形状である。
さらに、図12と対比して明らかなように、スロット挿入部32A,32A’の中央の破線で示す位置において、破線の両側を紙面の手前方向に折り曲げて、谷折りに折り曲げられている。また、相間絶縁部34A’の内周方向には、突起部34XA’が形成されている。突起部34XA’は、図12と対比して明らかなように、一点鎖線で示す位置において、山折りとされ、その両側で谷折りとすることにより、図12に示すように、突出している。
また、相間絶縁部34A’の外周方向には、折り曲げ耳部34YAが形成されている。折り曲げ耳部34YAは、図12と対比して明らかなように、破線で示す位置において、谷折りとすることにより、図12に示すように、折り曲げられている。
また、図11に示すように、第2の下側相間絶縁紙30WBは、互いに平行なスロット挿入部32B,32B’と、スロット挿入部32B,32B’の上端に一体的に形成された相間絶縁部34B’とからなる。また、スロット挿入部32B,32B’と相間絶縁部34B’とが接続する位置には、円弧状の切り欠き部36B,36B’それぞれ設けられている。第2の下側相間絶縁紙30WBは、1枚の相間絶縁紙を図13に示すように打ち抜いた形状である。
さらに、図13と対比して明らかなように、スロット挿入部32B,32B’の中央の破線で示す位置において、破線の両側を紙面の手前方向に折り曲げて、谷折りに折り曲げられている。また、相間絶縁部34B’の内周方向には、突起部34XB’が形成されている。突起部34XB’は、図13と対比して明らかなように、一点鎖線で示す位置において、山折りとされ、その両側で谷折りとすることにより、図13に示すように、突出している。
また、相間絶縁部34B’の外周方向には、折り曲げ耳部34YBが形成されている。折り曲げ耳部34YBは、図13と対比して明らかなように、破線で示す位置において、谷折りとすることにより、図13に示すように、折り曲げられている。
すなわち、第2の相間絶縁紙30WA,30WBは、第1の相間絶縁紙30A,30Bと比較すると、スロット挿入部32,32’は同一形状である。また、相間絶縁部34A’,34B’において、突起部34XA’,34XB’の位置形状が、第1の相間絶縁紙30A,30Bの突起部34XA,34XBと異なっているが、他の形状は同一である。
次に、図12を用いて、第2の上側相間絶縁紙30WAのスロットへの装着状態について説明する。なお、第1の相間絶縁紙30A,30Bの装着状態については図示を省略している。
図12に示すように、スロットS1,S6には、第1のU相コイル24U1が予め挿入され、また、スロットS7と別のスロットには、第2のU相コイル24U2が予め挿入されている。スロットS3及びスロットS8に、第1の相間絶縁紙30A,30Bのスロット挿入部32,32’がそれぞれ挿入された後、第2のV相コイル24V2が自動挿入されている。第2のV相コイル24V2は、自動挿入機を用いて、矢印B方向から挿入される。
このとき、第2のV相コイル24V2の挿入前には、第1の上側相間絶縁紙30Aが矢印A方向に挿入された後、第1の下側相間絶縁紙30Bは、矢印B方向から挿入されているので、第1の下側相間絶縁紙30Bが内周側に位置している。そして、第1の下側相間絶縁紙30Bの挿入方向と同じ方向から、自動挿入機を用いて第2のV相コイル24V2が挿入されるため、第1の相間絶縁紙30A,30Bが位置ズレを生じないものである。
また、スロットS2と別のスロットには第1のV相コイル24V1が挿入され、スロットS9と別のスロットには第3のV相コイル24V3が挿入されている。ここで、スロットS5及びスロットS10が、次にV相コイルが挿入されるスロットである。そして、スロットS5,S10には、第2の上側相間絶縁紙30WAのスロット挿入部32,32’がそれぞれ挿入される。
相間絶縁部34A’の突起部34XA’は、第2のV相コイル24V2と第3のV相コイル24V3とが、それぞれスロットに挿入された位置からコイルエンドとなる部分を覆う位置に設けられている。また、その他の相間絶縁部34A’は、コイル24V2,24V3のコイルエンド部そのものを覆う位置に設けられている。なお、図示の状態では、相間絶縁部34A’がコイル24V2,24V3から浮いた状態で示されているが、実際に相間絶縁紙30WAをスロットに装着した状態では、相間絶縁部34A’とコイル24V2,24V3とは接触若しくは近接した状態となっている。
そして、図1は、第3相コイル24Wをスロット内に挿入し終わった状態を示している。図12にて説明したように、相間絶縁紙30WAがスロットS5,S10に挿入される場合、第3相コイル24Wも同じく、スロットS5,S10に挿入される。
次に、図13を用いて、第2の下側相間絶縁紙30WBのスロットへの装着状態について説明する。
図13に示すように、スロットS5,S10には、第2の上側相間絶縁紙30WAのスロット挿入部32,32’がそれぞれ挿入された後、同じスロットに、第2の下側相間絶縁紙30WBのスロット挿入部32,32’がそれぞれ矢印B方向から挿入される。
その後、第3相コイル24Wが所定のスロット内に挿入される。その時点で、相間絶縁紙のスロット挿入部32,32’は、スロットの端部から突出している。そして、コイルエンド成形後に、この突出部を指でつまんで、それぞれ、スロット挿入部の挿入方向に引っ張ることにより、相間絶縁紙の装着位置を調整することができる。
なお、本実施形態は、3相分布巻電動機だけでなく、3相分布巻発電機に対しても同様に適用できるものである。
以上説明したように、本実施形態によれば、コイル自動挿入機によりステータに多相コイルを挿入する場合でも、相間絶縁紙の位置ずれを防止して、3相回転電機の絶縁性を向上し得るものとなる。
本発明の一実施形態による3相回転電機の構成を示す側面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータの製造工程を示す正面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータの製造工程を示す正面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに用いる第1の上側相間絶縁紙の正面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに用いる第1の下側相間絶縁紙の正面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに対して第1の上側相間絶縁紙を挿入した状態を示す部分斜視図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに対して第1の下側相間絶縁紙を挿入した状態を示す部分斜視図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータの製造工程を示す正面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータの製造工程を示す正面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに用いる第2の上側相間絶縁紙の正面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに用いる第2の下側相間絶縁紙の正面図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに対して第2の上側相間絶縁紙を挿入した状態を示す部分斜視図である。 本発明の一実施形態による3相回転電機のステータに対して第2の下側相間絶縁紙を挿入した状態を示す部分斜視図である。
符号の説明
10…ロータ
20…ステータ
22…ステータコア
24U…U相コイル
24V…V相コイル
24V…V相コイル
S…スロット
30A,30B,30WA,30WB…相間絶縁紙
32A,32A’,32B,32B’…スロット挿入部
34A,34B,34VA,34VB…相間絶縁部
34XA,34XB,34XA’,34XB’…突起部
34YA,34YB…折り曲げ部
36A,36A’,36B,36B’…切り欠き部

Claims (3)

  1. ロータと、ステータコアに分布巻で3相コイルが順次それぞれ巻回されるとともに、前記3相コイルのコイルエンド部をそれぞれ相間絶縁紙により絶縁されたステータとを有する3相回転電機であって、
    前記ステータのスロットに挿入される前記相間絶縁紙は、上側相間絶縁紙と、下側相間絶縁紙とからなり、
    前記上側相間絶縁紙及び下側相間絶縁紙は、それぞれ、互いに平行であるとともに、前記ステータのスロットに挿入される第1及び第2のスロット挿入部と、前記第1及び第2のスロット挿入部の一方の端部に一体的に形成された相間絶縁部とからなり、
    第1及び第2の前記スロットの一方の端部側から、前記上側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部がそれぞれ挿入された後、前記第1及び第2のスロットの他方の端部側から、前記下側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部がそれぞれ挿入され、
    前記第1のスロット内において、前記上側相間絶縁紙の前記第1のスロット挿入部と前記下側相間絶縁紙の前記第1のスロット挿入部が重なり、前記第2のスロット内において、前記上側相間絶縁紙の前記第2のスロット挿入部と前記下側相間絶縁紙の前記第2のスロット挿入部が重なることを特徴とする3相回転電機。
  2. 請求項1記載の3相回転電機において、
    前記第1及び第2の前記スロットに、前記上側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部、及び前記下側相間絶縁紙の前記第1及び第2のスロット挿入部がそれぞれ挿入された状態において、前記上側相間絶縁紙の前記第1のスロット挿入部と、前記下側相間絶縁紙の前記第1のスロット挿入部と、前記上側相間絶縁紙の前記第2のスロット挿入部と、前記下側相間絶縁紙の前記第2のスロット挿入部とは、前記第1及び第2のスロットの両端部から突出していることを特徴とする3相回転電機。
  3. 請求項1記載の3相回転電機において、
    前記下側相間絶縁紙が挿入された側から、前記3相コイルの一つが前記スロット内に自動挿入されることを特徴とする3相回転電機。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010178562A (ja) * 2009-01-30 2010-08-12 Honda Motor Co Ltd 相間絶縁紙及びアキシャルギャップ型モータ
CN102957248A (zh) * 2011-08-22 2013-03-06 现代摩比斯株式会社 牵引发动机
WO2024158003A1 (ja) * 2023-01-26 2024-08-02 株式会社小松製作所 モータ

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