JP2007003721A - 光ファイバの処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 重水素処理が十分に行われていることを容易に確認することができ、かつ短期間に重水素処理を終えることができるとともに、損失の確認のために測定後廃棄する必要のない光ファイバの処理方法を提供する。
【解決手段】 第1の発明は、重水素に曝露して耐水素特性を高める光ファイバの処理方法において、重水素処理開始後、波長1714nmもしくはその付近での損失が所定の数値幅以上変化するまで処理を行うことを特徴とする光ファイバの処理方法であり、第2の発明は、複数の光ファイバを同時に処理装置内に配置し重水素に曝露して耐水素特性を高める光ファイバの処理方法において、前記複数の光ファイバのうち少なくとも1本の光ファイバの端部を処理装置外に引き出し、光源と受光部を有する測定装置により、波長1714nmもしくはその付近での損失をモニタし、該損失値が所定の数値幅以上変化するまで処理を行なうことを特徴としている。
【選択図】 図2

Description

本発明は通信分野で使用される光ファイバ、特に低損失で耐水素特性に優れた光ファイバを得る光ファイバの処理方法に関する。
従来、光ファイバを使用した通信においては、1400nm付近の波長帯は信号波長として使用されていなかった。その理由は、波長1383nm帯域に光ファイバ中のOH基に起因する吸収損失ピーク(以下、単にWPと称する)が存在するためである。
しかし、近年CWDMと呼ばれる通信技術やラマン増幅といった技術が研究され、そこに使用される光ファイバとしてWPが極めて小さい光ファイバが注目され、開発されてきている。このWPは、光ファイバが水素含有雰囲気に曝露された場合に増加することが知られている。従って、光ファイバが長期にわたって使用されることを考えると、初期の段階のみならず、水素含有雰囲気に晒された後も、WPが小さい状態を維持できる耐水素特性の高い光ファイバが要求されている。
これまで、耐水素特性の高い光ファイバの製造方法として、特許文献1〜3に示されるような、光ファイバを重水素含有雰囲気に晒して処理する方法が開発されている。
なお、光ファイバの損失は一般的に次式で表される。
Figure 2007003721
式中、Aはレーリー散乱係数、αIMは構造不完全性損失、αIRは赤外吸収損失、αother はその他の吸収損失であり、αotherにはWPなどの不純物などによる吸収損失ピークが含まれる。
光ファイバには構造上の欠陥が含まれていることが多く、その代表的なものとしてSi・(E'センター)、Si-O・(非架橋酸素ホールセンター、NBOHC)、Si-O-O・(パーオキシラジカル)などがある。このうち、NBOHCが拡散してきた水素と結合してOH基を形成しWPが増加する、というのが水素によるWP増のメカニズムと考えられている。
一方、光ファイバの損失を測定すると波長630nm付近に吸収ピークが生じることがある。一般的にこの吸収ピークは、NBOHCに起因すると考えられている。水素含有雰囲気に光ファイバを晒すとこの630nm付近の吸収ピークがなくなることが、例えば、非特許文献1にすでに報告されている。また、重水素含有雰囲気に晒していない光ファイバについては、特許文献4,5が630nmの吸収とWPの関係に言及している。
特許文献4は、630nm付近の吸収ピークの決定方法について言及しておらず、数1式において、レーリー散乱係数が光ファイバごとに異なる可能性を考慮すると、ルーチンな方法で決定するには、吸収ピークの決定方法が定められていないと、レーリー散乱係数の違いによっては、630nm付近の吸収ピークの大きさを見誤る可能性がある。また、重水素含有雰囲気に晒した場合の630nm付近の吸収ピークの挙動については何ら触れられていない。
特許文献5は、重水素処理によりNBOHCがなくなったことを630nmでの損失の変化を調べることで確認している。
また、光ファイバを重水素に晒すと重水素分子による吸収が波長1714nmを中心とするピークとして観察されることが、過去の研究より分かっている。これは、例えば、非特許文献2に記載されている。
特許第1721913号 GB2149392A EP1182176A1 特開平9-132430号公報 特開2004-317750号公報 OFC1999, PD22-1 IEE PROCEEDINGS, Vol.132, Pt.J, No.3, JUNE 1985, pp.172-176
光ファイバの耐水素特性は、国際規格であるIEC 60793-2にその試験方法が定められている。この試験方法は、水素を1%含む室温・常圧の雰囲気に、波長1240nmでの損失が0.03dB/km以上に上昇するまで光ファイバを晒し、さらに、14日間大気中に放置した後WPを測定し、試験前の数値と比較するという方法である。
しかしながらこの方法は、1240nmでの損失が0.03dB/km以上に上昇するには、一般的な光ファイバで3日から7日程度を要するため、1本の光ファイバを試験するのに3週間程度かかることになる。しかもこの方法は、出荷する製品から1km以上をサンプリングして行う必要があり、試験に使用した光ファイバは試験後廃棄することになる。
以上の結果、製品の耐水素特性を確認するためにこの方法を採用すると、測定に長期間かかるだけでなく、廃棄される光ファイバが大量に出るという問題があった。また、水素試験による確認を行わない場合には、重水素含有雰囲気に曝露する設備の不具合または操作ミスにより、重水素含有雰囲気への曝露が不十分なまま出荷されてしまう虞があった。
また、特許文献5に記載されているような方法で、重水素処理がなされていることを確認することは可能であるが、630nmにおける損失は、欠陥がない状態でも約7dB/kmと非常に大きく、加えて、スプールには一般に25km以上の光ファイバが巻かれているため、スプール状態で測定することはできなかった。このため損失の測定が行なえるように、短い光ファイバをモニタ用に別途用意すると、測定後廃棄するしかなく、やはり廃棄される光ファイバが出るという問題があった。
そこで本発明は、重水素処理が十分に行われていることを容易に確認することができ、かつ短期間に重水素処理を終えることができるとともに、損失の確認のために測定後廃棄する必要のない光ファイバの処理方法を提供することを目的としている。
本発明は、耐水素特性を高めるために重水素含有雰囲気に光ファイバを晒すとNBOHCの消滅とともに重水素による吸収ピークが現れることに着目し、これを重水素処理の終了を確認する手段としたものである。
すなわち、光ファイバの処理方法に係る第1の発明は、重水素に曝露して耐水素特性を高める光ファイバの処理方法において、重水素処理開始後、波長1714nmもしくはその付近での損失が所定の数値幅以上変化するまで処理を行うことを特徴としている。
第2の発明は、複数の光ファイバを同時に処理装置内に配置し重水素に曝露して耐水素特性を高める光ファイバの処理方法において、前記複数の光ファイバのうち少なくとも1本の光ファイバの端部を処理装置外に引き出し、光源と受光部を有する測定装置により、波長1714nmもしくはその付近での損失をモニタし、該損失値が所定の数値幅以上変化するまで処理を行なうことを特徴としている。
いずれの発明においても、上記所定の数値幅とは0.01dB/km、好ましくは0.03dB/kmである。
本発明によれば、光ファイバの重水素処理中、波長1714nmで損失をモニターすることにより、重水素処理が十分に行われていることを最短期間で確認することができる。また、スプールに巻かれた長さ25kmの状態で測定かつ判定できるため、測定した光ファイバを廃棄することなく実用に供することができる。このように耐水素特性に優れた光ファイバを確実に低コストで提供することができる等、優れた作用・効果を奏する。
波長630nm付近で見られる光ファイバの吸収ピークは、構造欠陥NBOHCに起因すると言われているが、水素含有雰囲気に光ファイバが晒されると、NBOHCが拡散してきた水素と結合してOH基を形成し、波長1383nm帯域にOH基による損失が増加する。他方、NBOHCによる630nm付近での吸収ピークはなくなる。
従来、光ファイバの耐水素特性を高めるために、重水素処理が行われているが、光ファイバを出荷する際には、品質保証上、重水素処理が十分になされていることを確認する必要がある。光ファイバの耐水素特性は、国際規格IEC 60793-2で試験されるが、これには約2週間を要していた。
本発明によれば、重水素曝露中、重水素分子による吸収が現れる波長1714nmもしくはその付近での損失の変化幅をモニターし、損失が予め設定しておいた変化幅以上となるまで処理を続けることにあり、重水素処理を最短日数で終えることができる。また、十分な処理がモニターで確認されているため、耐水素特性試験が不要となり、廃棄とは無縁である。なお、上記において波長1714nmもしくはその付近とは、1714nmを中心とするその前後5nmの波長すなわち1714±5nmである。
このとき、処理終了の基準とする損失の変化幅を予め設定しておくことで、重水素処理のレベルを適宜選択することができる。変化幅としては、例えば0.01dB/km、より好ましくは0.03dB/kmである。
本発明の光ファイバの処理方法を、実施例1,2を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されず、様々な態様が可能である。
(実施例1)
WPの小さい光ファイバを製造しスプールに25km巻き取った。このスプールに巻き取った25kmの光ファイバと長さ2kmに切断した光ファイバとを重水素処理に供した。なお、2kmの光ファイバは、25kmの光ファイバの重水素処理終了の判定の妥当性を確認するためのものである。
重水素処理に先立ち、損失スペクトルを測定したところ、630nmにおいて、2kmの光ファイバは6dB/kmという大きな吸収損失ピークが認められたが、25kmの光ファイバは630nmでの損失は大きく測定できなかった。いずれの光ファイバも1714nmでの損失は0.750dB/kmであった。
長さ2kmと長さ25kmの光ファイバを共に重水素1%、窒素99%で室温、常圧の雰囲気に調整された重水素処理装置に収め、スプールに巻かれた25kmの光ファイバの端部を装置外に引き出して光源と受光部を有する光損失測定器に接続し、1714nmでの損失の増加幅の設定値を0.01dB/kmとし、損失の変化をインラインでモニターした。
3日間重水素雰囲気に曝露した時点で、モニターしている1714nmでの損失が0.760 dB/kmとなり、曝露する前に比べて0.01dB/km上昇しているのを確認して処理を終了した。なお、630nmにおける損失は大幅に低下していた。重水素処理による損失スペクトルの変化を長さ2kmの光ファイバについて測定し、図1,2に示した。
長さ25kmの光ファイバによる1714nmでの重水素処理終了の判定の妥当性を確認するために、同時に処理した長さ2kmの光ファイバについて、耐水素特性を国際規格であるIEC
60793-2に規定された試験方法で試験したところ、WPの増加は0.003dB/km と僅かであった(図3,4参照)。
なお、1600nm以上の波長での損失測定は、光ファイバの曲げによる影響を強く受けるため、重水素曝露中及びその前後の損失測定中、光ファイバの状態が変化しないように光ファイバを固定しておいた。
(実施例2)
重水素処理中モニターする1714nmでの損失の増加幅の設定値を0.03dB/kmとした以外は、実施例1と同様にして長さ25kmと2kmの光ファイバについて、重水素処理を行った。
4日間重水素雰囲気に曝露した時点で、モニターしている1714nmでの損失が0.780 dB/km となり、曝露する前に比べて0.03dB/km上昇しているのを確認して処理を終了した。再度損失スペクトルを測定したところ、630nmにおける損失は大幅に低下していた。
同時に処理した2kmの光ファイバについて、耐水素特性をIEC 60793-2に規定された試験方法で試験したところ、WPの増加は皆無であった。
耐水素特性に優れた光ファイバを確実に低コストで提供することができる。
重水素処理による損失スペクトルの変化を示すグラフである。 図1の1200〜1700nm帯域を拡大して示すグラフである。 重水素雰囲気に曝露した光ファイバの水素試験による損失の変化を示すグラフである。 重水素雰囲気に曝露していない光ファイバの水素試験による損失の変化を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 重水素に曝露して耐水素特性を高める光ファイバの処理方法において、重水素処理開始後、波長1714nmもしくはその付近での損失が所定の数値幅以上変化するまで処理を行うことを特徴とする光ファイバの処理方法。
  2. 複数の光ファイバを同時に処理装置内に配置し重水素に曝露して耐水素特性を高める光ファイバの処理方法において、前記複数の光ファイバのうち少なくとも1本の光ファイバの端部を処理装置外に引き出し、光源と受光部を有する測定装置により、波長1714nmもしくはその付近での損失をモニタし、該損失値が所定の数値以上変化するまで処理を行なうことを特徴とする光ファイバの処理方法。
  3. 上記所定の値が0.01dB/kmである請求項1又は2に記載の光ファイバの処理方法。
  4. 上記所定の値が0.03dB/kmである請求項1又は2に記載の光ファイバの処理方法。

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